JP2006256510A - 車両用走行伝動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 荷台を備えた作業車両において、エンジン、伝動機構を収納するミッションケース、及び、駆動的に該エンジンと該伝動機構との間に介設されるHSTを、十分な荷台容積を確保し、かつ車両自体のコンパクト性を確保できるように、荷台の下方に配置する。
【解決手段】 HSTを構成する油圧ポンプ21と油圧モータ22は、互いに別体であるポンプハウジングEcまたは21c、及び、モータハウジング1aまたは22cに、それぞれ収納されて、該ポンプハウジングと該モータハウジングとの間に、該油圧ポンプ21と該油圧モータ22とを流体接続する可撓性のある圧油管20を介設しており、該油圧モータのモータ軸21bを、該伝動機構の入力軸11に対して同心上に駆動連結している。
【選択図】図2
【解決手段】 HSTを構成する油圧ポンプ21と油圧モータ22は、互いに別体であるポンプハウジングEcまたは21c、及び、モータハウジング1aまたは22cに、それぞれ収納されて、該ポンプハウジングと該モータハウジングとの間に、該油圧ポンプ21と該油圧モータ22とを流体接続する可撓性のある圧油管20を介設しており、該油圧モータのモータ軸21bを、該伝動機構の入力軸11に対して同心上に駆動連結している。
【選択図】図2
Description
本発明は、エンジンの動力を、油圧式無段変速機構(以下、「HST」)及び伝動機構を介して駆動輪に伝達する構成の走行伝動装置であって、小型運搬車等の作業車両に適用されるものに関する。
従来、主に小型運搬車に適用される走行用伝動装置であって、ベルト式無段変速機構(CVT)と、複数の変速ギア列を有するギア式有段変速機構とをタンデムに組み合わせてなる走行用伝動装置が、特許文献1に開示されている。
欧州特許出願公開第1325831号明細書
また、本出願人は、特許文献1に示す走行用伝動装置に関して、無段変速機構としてHSTを用いるようにした改良構成、また、所謂四輪駆動式の運搬車を提供すべく、該走行用伝動装置の出力を、車両の前後に複数配した駆動輪に伝達するようにした改良構成について、特許出願済である。この中で、HSTについては、ギア式有段変速機構を内装するミッションケースに外付けしたHSTハウジングや、該ミッションケース内に形成したHST内に、油圧ポンプ・モータを組み合わせた形で組み入れている。
前述の、特許文献1に開示される如き走行用伝動装置においては、エンジンがその振動を車体に伝播させないように、シャシに対して防振ゴム等を介して防振支持されており、一方、ギア式有段変速機構を内装するミッションケースは、その支持する車軸の中心がぶれないように、シャシに対して剛的に固定されている。従って、エンジンの振動を、ミッションケースに伝えないことが重要となる。特許文献1の走行用伝動装置は、エンジンとギア式有段変速機構との間に介設されたCVTのベルトがその振動を吸収できる。しかし、油圧ポンプと油圧モータとを一体状に組み合わせた構成、即ち、内部に油路を穿設した油路板(センタセクション)に油圧ポンプと油圧モータとを組み付けた構成のHSTでは、シャシに固設されたミッションケースに内装したギア式有段変速機構に対するモータ軸の駆動連結と、シャシに防振支持されたエンジンに対するポンプ軸の駆動連結が問題となる。
更に、油圧ポンプと油圧モータとを一体状に組み合わせたHSTはそれ自体大がかりであり、これを前述の如くミッションケースに外付けしたハウジング部やその内部に形成した室内に組み付けるとなると、ミッションケースが大型化する。特許文献1に開示される小型運搬車では、ミッションケースの上方に荷台が配設されており、ミッションケースの大型化は、荷台の容積減少につながるので、回避したい。また、当該開示の小型運搬車は、エンジンがミッドマウントとなっていて、これも荷台の下方に配設されており、ミッションケースと近接しているので、ミッションケースの大型化は、エンジンバリエーションの拡張においても妨げとなる。
本発明の目的は、荷台を備えた車両に適用される車両用走行伝動装置であって、該車両は、該荷台の下方にてエンジンを車体に防振支持するとともに伝動機構を収納するミッションケースを該荷台下方の車体部分に固設する構造としている状態において、該エンジンと該伝動機構との間に駆動的に介設されるHSTを、該荷台の容積を十分に確保可能に、かつ、車体に防振支持されるエンジンと、車体に固定れるミッションケース内の伝動機構とに、該HSTの入力部・出力部を適切に駆動連結可能に、該荷台の下方に配設した構造の、作業車両用の走行用伝動装置を提供することである。
この目的を達成すべく、本発明に係る車両用走行伝動装置は、請求項1記載の如く、荷台を備えた作業車両の、該荷台下方の車体部分に、エンジンを防振支持し、かつ、車軸駆動用のギア式有段変速機構を収納するミッションケースを固設した構成の車両用走行伝動装置であって、該エンジンから該伝動機構へと動力を伝達するためのHSTを該荷台下方に配設しており、該HSTを構成する油圧ポンプと油圧モータは、互いに別体であるポンプハウジング及びモータハウジングにそれぞれ収納されて、該ポンプハウジングと該モータハウジングとの間に、該油圧ポンプと該油圧モータとを流体接続する可撓性のある圧油管を介設しており、該油圧モータのモータ軸を、該伝動機構の入力部に対して同心上に駆動連結している。
このような車両用走行伝動装置は、第一様態として、請求項2記載の如く、前記ポンプハウジングを前記エンジンに連設し、前記油圧ポンプのポンプ軸を該エンジンの出力部に同心上に駆動連結するとともに、前記モータハウジングを前記ミッションケースに連設している。
また、前記第一様態において、好ましくは、請求項3記載の如く、PTO伝動機構を前記車両に備え、前記ポンプ軸を該PTO伝動機構の入力部にユニバーサルジョントを介して駆動連結している。
或いは、第二様態として、請求項4記載の如く、前記ポンプハウジング及び前記モータハウジングの少なくとも一方を車体に支持している。
前記第二様態において、好ましくは、請求項5記載の如く、前記ポンプハウジングを前記車体に支持し、前記油圧ポンプのポンプ軸を該エンジンの出力軸にユニバーサルジョントを介して駆動連係するとともに、前記モータハウジングを前記ミッションケースに連設している。
或いは、前記第二様態において、好ましくは、請求項6記載の如く、前記ポンプハウジング及び前記モータハウジングを前記車体に支持し、前記油圧ポンプのポンプ軸を該エンジンの出力部にユニバーサルジョイントを介して駆動連結している。
或いは、前記第二様態において、好ましくは、請求項7記載の如く、前記ポンプハウジングを前記エンジンに連設し、前記油圧ポンプのポンプ軸を該エンジンの出力部に同心上に駆動連結するとともに、前記モータハウジングを前記車体に支持している。
本発明は、以上のような手段により、以下のような効果を奏する。まず、請求項1記載の如く構成することにより、HSTにおいては、油圧ポンプを収納するポンプハウジングと油圧モータを収納するモータハウジングとを、別々の場所に支持することができ、個々のハウジング自体がコンパクトで、荷台下方のデッドスペースを有効に利用して配置することができ、その上方の荷台の容積確保に貢献する。また、車体に防振支持されるエンジンの振動は、油圧ポンプと油圧モータのうち、ミッションケース内の伝動機構にモータ軸を同心上に駆動連結される油圧モータには少なくとも伝わらないようにすることができる。そして、可撓性のある圧油管を用いることで、別体にしたポンプハウジングとモータハウジングとの間でも、油圧ポンプと油圧モータとの流体接続を確保することができる。更に、モータ軸は、該伝動機構の入力部に対し、同心上に駆動連結することで、モータ軸と該入力部との間のギア列等を省略することができ、コンパクトかつ部品点数の少ない駆動連結構成とすることができる。また、車体のレイアウト上、エンジンとミッションケース各々がどれだけ離れていようと分離型の油圧ポンプと油圧モータとにより両者を伝動連結できる。
また、本発明の第一様態として、請求項2記載の如く構成することで、ポンプハウジング、油圧ポンプ、及びポンプ軸は、エンジンの振動に伴って振動する状態となるものの、モータハウジングは、ポンプハウジングとは別に、ミッションケースに連設されており、また、モータ軸は、伝動機構に同心上に駆動連結されていて、油圧モータが、可撓性のある圧油管を介して油圧ポンプに流体接続されているので、エンジンの振動、及びそれに伴うポンプハウジングや油圧ポンプの振動の、伝動機構及び車軸への伝播が回避される。
また、請求項3記載の如く、PTO伝動機構を設ける場合にも、ポンプ軸とPTO伝動機構の入力部との間にユニバーサルジョイントを介することで、エンジンとともに振動するポンプ軸の振動の、該PTO伝動機構に対する伝播が抑制される。
また、本発明の第二様態として、請求項4記載の如く構成することで、エンジンまたはミッションケースから、ポンプハウジング或いはモータハウジングを切り離すことができ、当該エンジンまたはミッションケースをコンパクト化できるとともに、そのバリエーションの拡張に貢献することができる。
この第二様態において、請求項5、或いは請求項6記載の如く構成することで、ポンプハウジングから切り離されたモータハウジング及びこれに収納される油圧モータのみならず、車体に支持されたポンプハウジングと、これに収納される油圧ポンプについても、ポンプ軸をエンジン出力部にユニバーサルジョントを介して駆動連結することで、エンジンからの振動の伝播を低減することができる。そして、請求項5記載の如く、モータハウジングをミッションケースに連設することで、ハウジング点数を低減することができ、また、請求項6記載の如く、モータハウジングを車体に支持することで、ミッションケースをコンパクト化することができる。
或いは、前記第二様態において、請求項7記載の如く、ポンプハウジングをエンジンに連設し、油圧ポンプのポンプ軸をエンジン出力部に同心上に駆動連結した状態、即ち、ポンプハウジング及び油圧ポンプにエンジン振動が直接的に伝播される状態であっても、車体に支持したモータハウジング及びこれに収納される油圧モータについては、該ポンプハウジングとモータハウジングとの間に介設した可撓性のある圧油管にて油圧ポンプと油圧モータの流体接続を確保することで、エンジン振動からは免れる状態となり、このような状態の油圧モータのモータ軸を、ミッションケース内の伝動機構に同心上に駆動連結することで、該伝動機構及び車軸にも、エンジン振動を伝えないようにすることができる。
以上の、また、それ以外の目的、特徴、効果については、以下の、添付の図面をもととする詳細な説明によって、更に明らかになるであろう。
本出願においては、本発明に係る車両用走行伝動装置について、図1及び図2に示す第一実施例、図3及び図4に示す第二実施例、図5に示す第三実施例、図6に示す第四実施例、図7に示す第五実施例を開示しており、それぞれの実施例に係る走行伝動装置を搭載する作業車両として、運搬車を採用している。この運搬車の、各実施例に共通の構造について、図1乃至図7より説明する。
運搬車は、車両フレーム101の後部にリアカバー102を溶接などで固定搭載してひとつの剛体を構成し、この中に、エンジンE及びミッションケース1を収納している。エンジンEは、該車両フレーム101の床面に、ゴム製等の防振支持部材Eaを介して防振支持されており、ミッションケース1は、このような防振手段を施すことなく、リアカバー102或いは車両フレーム101に剛的に固設されている。
ミッションケース1には、後述のHSTを介して該エンジンEの出力により駆動されるギア式有段変速部を備える伝動機構と、該伝動機構にて駆動される後輪差動機構RDとを内装している。また、車両フレーム101の後端部の左右側方には、左右一対の後輪5を操舵不能にサスペンション支持しており、該ミッションケース1より左右外側に、後輪差動機構RDで互いに差動連結された左右一対の差動出力軸67を延出して、それぞれ、プロペラ軸68及びユニバーサルジョイントJを介して、左右各後輪5の中心軸たる後輪車軸5aに駆動連結している。
また、車両フレーム101の前端部の左右中心部には、前輪差動機構FDを内装する前輪差動ハウジング2を支持し、また、車両フレーム101の前端部の左右側方には、左右一対の前輪3を操舵自在にサスペンション支持している。また、該伝動機構の出力を、ミッションケース1側方に連設した前輪駆動PTOハウジング部1bより前方に延設したプロペラ軸51a・51a及びユニバーサルジョイントJを介して前輪差動ハウジング2内の前輪差動機構FDに伝達している。そして、前輪差動ハウジング2より左右外側に、前輪差動機構FDで互いに差動連結された左右一対の差動出力軸57を延出して、それぞれ、プロペラ軸58及びユニバーサルジョイントJを介して、左右各前輪3の中心軸たる前輪車軸3aに駆動連結している。
後輪差動機構RDには、特許文献2及び特許文献3に示す如きノースピンデフ装置を適用しており、また、前輪差動機構FDには、特許文献4に示す如き、2輪・4輪駆動切換機能を有するクラッチ機構を用いたデフ装置を適用している。後輪差動機構RDとして採用されるノースピンデフ装置は、デフケージ内の中央部に対し、その両側から各車軸を、クラッチを介して係合しており、左右車軸に回転速度差が生じた場合、速い方の車軸と該デフケージ内の中央部との間のクラッチを切って、当該車軸を空転させるものである。一方、前輪差動機構FDは、デフケージ内にクラッチ機構を介して左右一対の車軸を嵌入しており、通常はクラッチが切れて該左右一対の車軸には駆動力(デフケージの回転力)を伝達せず、デフケージへの入力回転速度に対して車軸の回転速度が相対的に遅くなった時にのみ、クラッチが入って該左右一対の車軸にデフケージの回転力が付与される構成としている。このような構成の前輪差動機構FDと後輪差動機構RDとの組み合わせによる効果については、後の、走行伝動装置の構成についての説明の中で触れる。
実公昭48−44346号公報
特公平7−109238号公報
特開2003−278804号公報
リアカバー102内には、更に、駆動的にエンジンEとミッションケース1内の伝動機構との間に介設されるHSTを構成すべく、油圧ポンプ21と油圧モータ22とが設けられている。これら油圧ポンプ21及び油圧モータ22は、互いに別体のポンプハウジングとモータハウジングとにそれぞれ収納されていて、該ポンプハウジングとモータハウジングとの間に、可撓製のある圧油管20を配管して、油圧ポンプ21と油圧モータ22とを流体連結している。
ポンプハウジングは、エンジンEに連接したポンプハウジングEcか、或いは車体(この場合にはリアカバー102の左右一側面)に取付支持したポンプハウジング21cとするものであり、モータハウジングは、ミッションケース1に連設したモータハウジング1aか、或いは車体(リアカバー102の左右一側面)に取付支持したモータハウジング22cとするものである。図1乃至図7に示す後述の走行用伝動装置の各実施例は、これらポンプハウジングEc・21c、モータハウジング1a・22cのうちから、どのハウジングを選択したかによって態様を変化させたものである。
リアカバー102の上方には荷台103が昇降可能に載置されており、その直前のリアカバー102前端部上に座席104が搭載されている。該車両フレーム101上の、該リアカバー102の前端より前方には踏板105が敷設され、該踏板105の前方にフロントコラム(フロントカバー)106が搭載されている。
座席104に座るオペレータの操作具として、フロントコラム106の足元部における踏板105上方にアクセルペダル6及び図略のブレーキペダルが、座席104の側傍に変速レバー7が、フロントコラム106の上方に(丸形)ステアリングハンドル8が、それぞれ配置されている。
ハンドル8は、操舵可能な左右一対の前輪3に連動連係されていて、その回動方向及び回動量に応じて、前輪3が左右に旋回される。アクセルペダル6は、エンジンEのスロットルと、HSTの後記油圧ポンプ21の可動斜板21aとに連動連係されており、その踏み込み量(及び実際の車速)に応じて、エンジンEの出力及びHSTの出力が制御される。
ここで、変速レバー7は、図8に示す如き操作盤91の案内溝91a・91b・91cに挿通されて案内されている。前進変速用の案内溝91aは前後方向に形成されており、その前端に3速位置(高速位置)、後端に1速位置(低速位置)、該3速位置と該1速位置との間にて、前方には2速位置(中速位置)、後方には中立位置を設定している。該操作盤91には、該案内溝91aに沿って、1〜3速位置それぞれを表す1〜3の数字、及び中立位置を表す記号Nが印されている。この案内溝91aの中立位置Nより左右方向に案内溝91bが延設され、更に、90度曲折して後方に延設されて、案内溝91cを形成している。該案内溝91cの後端は、後進位置として設定されており、操作盤91には、該後進位置近傍にて、該後進位置を表す記号Rが印されている。
該案内溝91a及び案内溝91cの各位置は、ミッションケース1内のギア式有段変速機構のギア列選択状態を決定するために設けられており、また、案内溝91bを介して案内溝91a・91b間にて変速レバー7を移動させることにより、HSTにおける油圧ポンプ21の可動斜板21aの傾倒方向を、前進用傾倒方向と後進用傾倒方向とに切り換えるのである。この変速レバー7と可動斜板21aとの間の連動連係構造については、図9乃至図12に三つの実施例を開示している。
次に、図2乃至図8に示す車両用走行伝動装置の第一乃至第五の各実施例について説明する。これらの実施例に共通の構造として、まず、前述の後輪差動機構RD及び前輪差動機構FDの構成について説明する。なお、これらの構造は、図2及び図4に図示されているが、図5乃至図7に示すミッションケース1及び前輪差動ハウジング2に、同様の構造の前輪差動機構RD、前輪差動機構FDのそれぞれが内装されている。
後輪差動機構RDは、ミッションケース1内のギア式有段変速機構の出力により回転するファイナルピニオン63と噛合するブルギア64と一体のデフケージ65内に、クラッチ機構66を介して左右両差動出力軸67・67を嵌入しており、両差動出力軸67・67の回転速度が略均等であれば両方にデフケージ65の回転力が伝達され、左右両後輪5・5が駆動される。そして、両差動出力軸67・67の回転速度に差があれば、該クラッチ機構66におけるデフケージ65と回転速度が高い方の差動出力軸67との間のクラッチが切れ、その差動出力軸67に駆動連結されている一側の後輪5に駆動力が付与されなくなる。
一方、前輪差動機構FDは、該ギア式有段変速機構の出力により回転するファイナルピニオン53と噛合するブルギア54と一体のデフケージ55内に、クラッチ機構56を介して左右両差動出力軸57・57を嵌入されている。このクラッチ機構56は、デフケージ55の(入力側)回転速度に対して、差動出力軸57・57の回転速度が相対的に遅くなると、クラッチが入って、両前輪3・3に駆動力が付与される状態になり、それ以外にはクラッチは切れて、両前輪3・3に駆動力は付与されない。なお、このクラッチは、前進・後進両方に対応できるよう、ツーウェイクラッチとなっている。
以上のような前輪差動機構FDと後輪差動機構RDとを有する車両が走行している状態において、通常直進時で左右後輪5・5に均等に駆動力が付与されている場合であれ、或いは通常旋回時で左右後輪5・5のいずれか一方に駆動力が付与されて、左右後輪5・5が差動している場合であれ、後輪差動機構RDが、左右後輪5・5の少なくともいずれかに駆動力を付与している限り、前輪3・3も、前輪差動機構FDの入力トルク(デフケージ55の回転力)に見合う速度で回転しているので、クラッチ機構56のクラッチは切れて前輪3・3には駆動力が伝達されない状態となっており、車両は後輪駆動(基本的に二輪駆動)にて走行していることとなる。よって、燃料消費が少なく経済的な走行状態となっており、旋回も小回りが効くのである。
後輪5・5の少なくとも片輪が溝や泥地にはまる等でスリップ状態になると、前輪差動機構FDにはトランスミッションTからの駆動力が入力されてはいるものの、前輪3・3の回転速度は落ちる。そして、前輪差動機構FDの入力回転速度に対し、前輪3・3の回転速度が相対的に遅くなると、自動的にクラッチ機構56が入り、前輪差動機構FDが前輪3・3に駆動力を付与する状態となり、この前輪3・3の駆動力により、車両は当該スリップ状態から脱出できるのである。また、後輪5・5の片輪がスリップしたときでも後輪差動機構RDの特有の作用により他輪には駆動力が自動的に付与され続けるのでデフロック操作をすること無しに牽引性能が極端に落ちることは無い。
なお、前輪差動機構FDは、前輪差動ハウジング2内に収納されていて、該前輪差動ハウジング2に軸支した前輪駆動軸52に固設したファイナルピニオン53にブルギア54を噛合させている。前輪駆動軸52は前輪差動ハウジング2より後方に突出されていて、ユニバーサルジョイントJを介して前記プロペラ軸51に駆動連結されている。このように、後方延出状の前輪駆動軸52と左右延出状の差動出力軸57・57との軸芯が垂直に交わる状態なので、噛合し合うファイナルピニオン53とブルギア54とはベベルギアとなっている。
一方、後輪差動機構RDは、ミッションケース1の下方延出部内に収納されており、そのブルギア64は、該ミッションケース1内に収納される伝動機構の出力軸12に固設されたファイナルピニオン63に噛合している。また、出力軸12と差動出力軸67・67との軸芯がともに左右方向で平行なので、噛合し合うファイナルピニオン63・ブルギア64には平ギアが用いられる。
次に、図2及び図4に図示されるミッションケース1内の伝動機構について説明する。なお、この構造の伝動機構が、図5乃至図7に示す各ミッションケース1内にも配設されているものである。
ミッションケース1には、左右方向延伸状の入力軸11及び出力軸12が平行に軸支されている。入力軸11には低速(1速)駆動ギア31、中速(2速)駆動ギア33、高速(3速)駆動ギア35が固設され、出力軸12には低速(1速)従動ギア32、中速(2速)従動ギア34、高速(3速)従動ギア36が相対回転自在に環設されていて、ギア31・32同士が噛合して低速(1速)段ギア列30aを、ギア33・34同士が噛合して中速(2速)段ギア列30bを、ギア35・36同士が噛合して高速(3速)段ギア列30cを、それぞれ構成している。
出力軸12には、クラッチスライダ37が、軸心方向摺動自在かつ出力軸12と一体に回転可能に取り付けられていて、これに噛合すべく、各従動ギア32・34・36にそれぞれ、クラッチ歯部32a・34a・36aか形成されている(図2参照。図4において符号略)。クラッチスライダ37が出力軸12に沿って摺動してクラッチ歯部32a・34a・36aのいずれかに噛合することで、その従動ギアが出力軸12に係合され、入力軸11の回転が、選択した該当のギア列を介して出力軸12に伝達されるものとなる。
クラッチスライダ37の出力軸12に沿っての摺動は、前述の、案内溝91aに沿っての変速レバー7の回動と連動している。変速レバー7を低速(1速)位置にセットすると、クラッチスライダ37がクラッチ歯部32aと噛合し、入力軸11・出力軸12間の駆動列として低速(1速)ギア列30aが選択される。変速レバー7を中速(2速)位置にすると中速(2速)ギア列30bが選択され、変速レバー7を高速(3速)位置にすると高速(3速)ギア列39cが選択される。また、変速レバー7を中立位置Nにすると、クラッチスライダ37は、クラッチ歯部32a・34a・36aのいずれにも噛合せず、従って、入力軸11の回転が出力軸12に伝わらない状態となる。
こうして、変速ギア列30a・30b・30cのいずれかを選択した状態において、アクセルペダル6の踏み込みによりエンジンEの出力速度及びHST出力(油圧モータ22の出力)速度を変更することで、入力軸11の回転速度が変更され、その速度での入力軸11の回転力が、択一した変速ギア列を介して出力軸12に伝えられるのである。
出力軸12にはファイナルピニオン63が固設され、前述の如く、後輪差動機構RDのブルギア64に噛合している。後輪差動機構RDから後輪5・5に至る伝動系構造は前述のとおりであり、これにより、出力軸12の回転力を後輪5・5に伝達するものとしている。
また、ミッションケース1の左右一側方(好ましくは、HSTの配置される側と反対側)に、前輪駆動PTOハウジング部1bを連設しており、この中に、左右方向の第一PTO軸13aと前後方向の第二PTO軸15とが軸支されていて、第一PTO軸13aに固設したベベルギア13と、第二PTO軸15に固設したベベルギア14とを噛合させている。第一PTO軸13aは、出力軸12と同心上に配設され、カップリングCを介して出力軸12に一体回転可能に駆動連結されている。第二PTO軸15は、前輪駆動PTOハウジング部1bより前方に突出して、ユニバーサルジョイントJを介して前輪駆動用のプロペラ軸51aに駆動連結されている。プロペラ軸51aは、リアカバー102の一側面に沿って、図2、図4乃至図7に示すように、平面視ではまっすぐ前方に延設され、その前端部付近を、リアカバー102の側面に固設したベアリングブロック107にて軸支している。該ベアリングブロック107の直前にて、プロペラ軸51aの前輪が、図2、図4乃至図7に示すように、平面視で左右傾斜状のプロペラ軸51bの後端と、ユニバーサルジョイントJを介して駆動連結されており、該プロペラ軸51bの前端は、前輪差動ハウジング2より後方に突出する前輪駆動入力軸52の後端と、ユニバーサルジョイントJを介して連結されている。
なお、プロペラ軸51a及びプロペラ軸51bの上下傾斜角度については、運搬車における各部レイアウトに応じて様々に設定すればよい。図1及び図3に示す運搬車においては、前側のプロペラ軸51bについては、その上方の踏板105を高くしてしまわないように、側面視水平状に(上下に傾斜を設けずに)延設しており、これに応じて、後側のプロペラ軸51aを前下方に傾斜させている。
前輪差動ハウジング2内にて、該前輪駆動入力軸52の前端にベベル状のファイナルピニオン53が固設され、前輪差動機構FDのベベル状のブルギア54に噛合している。前輪差動機構FDから前輪3・3に至る伝動系は前述の如くである。以上の如き出力軸12から前輪3・3に至る伝動系構造により、出力軸12の回転が前輪3・3に伝達可能とされている。
HSTについては、油圧ポンプ21は可変容積型であって、可動斜板21aが具備されている。該可動斜板21aは、HSTの出力を入力軸11に伝達している場合に、アクセルペダル6の踏込量に応じて、その中立位置を挟んで両側に配される前進傾動域・後進傾動域それぞれにおいて傾倒角度を決定され、かつ、変速レバー7のシフトにより、その傾倒方向が前進傾動域・後進傾動域のいずれかに選択される。この可動斜板21aの傾動角度及び傾動方向に従って、油圧モータ22のモータ軸22bの回転速度及び回転方向が設定される。
油圧モータ22も可変容積型としており、可動斜板22aを具備している。これは、車輪3・5に地面からの負荷が強くかかった場合に、例えばHSTの高圧側回路の異常上昇を検知して電気的に作動するアクチュエータを設け、該アクチュエータの作動により可動斜板22aの傾倒角度を大きくして、油圧モータ22の容積を増大し減速比を一時的に大きくして、エンジン・ストップを防ぐためである。なお、可動斜板22aの傾倒域は、その中立位置から一側のみとなっており、前後進の切換はあくまで油圧ポンプ21の可動斜板21aの傾倒方向を切り換えることで行われる。
図1乃至図7に示す各実施例の走行伝動装置は、以上の如き共通の構造を有しつつ、かつ、各実施例によって、HSTのレイアウトを異ならせているのである。各実施例のHSTのレイアウトについて説明する。
図1及び図2に示す第一実施例と、図3及び図4に示す第二実施例では、エンジンEに連設したポンプハウジングEcに油圧ポンプ21を、ミッションケース1の左右一側(前輪駆動ハウジング部1bとは左右反対側)に連設したモータハウジング1aに油圧モータ22を、それぞれ内装している。油圧ポンプ21のポンプ軸21bは、エンジンEの出力軸Ebに対して同心上に配しており、カップリングCを介して該出力軸Ebに駆動連結している。一方、油圧モータ22のモータ軸22bは、入力軸11に対して同心上に配しており、カップリングCを介して該出力軸11に駆動連結している。
ポンプハウジングEc、油圧ポンプ21、ポンプ軸21aは、エンジンEとともに振動するが、ミッションケース1に外付けされた油圧モータ22が油圧ポンプ21の駆動力を受けるのは、ポンプハウジングEcとモータハウジング1aとの間に介設した可撓製のある圧油管20のみによるので、エンジンEとともに振動する油圧ポンプ21やポンプハウジングEcの振動の、モータハウジング1a、油圧モータ22、そして、ミッションケース1及びその内部構造への伝播は抑止される。
なお、可撓性のある圧油管20をポンプハウジングEcとモータハウジング1aとの間に介設することで、油圧ポンプ21と油圧モータ22とを流体連結しているので、油圧ポンプ21と油圧モータ22との位置や方向の関係が限定されない。図1及び図2に示す第一実施例では、エンジンEを、その出力軸Ebが左右方向に向くように配設して、ポンプハウジングEcをその左右一側に連設し、該出力軸Ebに駆動連結したポンプ軸21bと、モータ軸22bとが、ともに左右方向に向くようにしている。一方、図3及び図4に示す第二実施例では、出力軸Ebが前後方向を向くようにエンジンEを配設して、ポンプハウジングEcをその後端に連設し、ポンプ軸21bが、左右方向のモータ軸22bに対し直角方向の前後方向を向くようにしている。
図3及び図4に示す第二実施例では、リアPTOハウジング70をリアカバー102の後方に配設し、該リアPTOハウジング70より後方にリアPTO軸18を突設して、運搬車後方に配される作業機(例えば耕耘機等)への動力伝達を可能としている。リアPTOハウジング70内には、前後方向のリアPTO軸18とリアPTO入力軸17とが平行に軸支されている。リアPTO入力軸17には駆動ギア71を固設し、リアPTO軸18には従動ギア72を相対回転自在に環設して、両ギア71・72を噛合して、リアPTO減速ギア列を構成している。なお、従動ギア72とリアPTO軸18との間にはリアPTOクラッチ73が介設されている。該リアPTOクラッチ73としては、油圧作動型クラッチや電磁クラッチ等が考えられる。
エンジン出力軸Eb及び油圧ポンプ21のポンプ軸21bは、前後方向に向いたリアPTO入力軸17に簡単な伝動経路で効率よく伝動できるように前後方向を向いている。ポンプハウジングEcから後方にポンプ軸21bを延設しており、ポンプハウジングEcとリアPTOハウジング70との間に配設した伝動軸16を介して、ポンプ軸21bとリアPTO入力軸17とを駆動連結している。なお、伝動軸16の両端はユニバーサルジョイントJにて、各軸21b・17に接続されるものである。ユニバーサルジョイントJを設けることで、油圧ポンプ21の振動の、リアPTO軸18への伝播を低減でき、また、ポンプハウジングEcとリアPTOハウジング70との位置ずれを吸収できる。
次に、図5の第三実施例、図6の第四実施例、図7の第五実施例について説明する。これらは、ポンプハウジング・モータハウジングの少なくともいずれかが、リアカバー102の側面に取付支持されている。
図5の第三実施例及び図6の第四実施例では、油圧ポンプ21をリアカバー102の内側面に取付支持したポンプハウジング21c内に配設し、ポンプ軸21bを該ポンプハウジング21cより突出して、エンジンEの出力軸Ebに対し、伝動軸19及びユニバーサルジョイントJ・Jを介して駆動連結している。このように、ユニバーサルジョイントJを用いることで、エンジンEの振動の、油圧ポンプ21への伝播を低減できて耐久性や吐出性能の向上を図り、また、ポンプハウジング21cとエンジンEとの位置ずれを吸収できる。
そして、油圧モータ22については、図5の第三実施例では、ミッションケース1に連設したモータハウジング1a内に収納し、また、図6の第四実施例では、ミッションケース1からは分離されて、リアカバー102の内側面に取付支持したモータハウジング22c内に収納している。モータ軸22bは、いずれの実施例においても、ミッションケース1の入力軸11と同心上に配設されて、カップリングCを介して該入力軸11に一体回転可能に駆動連結されている。なお、図6においては、モータハウジング22cとミッションケース1との間にて、モータ軸22bと入力軸11との間に、カップリングC・Cを介して、伝動軸10を同心上に介設している。
図7の第五実施例では、油圧ポンプ21はエンジンEに連設したポンプハウジングEb内に収納され、そのポンプ軸21bをエンジン出力軸Ebと同心上に配して一体状に駆動可能に連結している。そして、油圧モータ22は、リアカバー102の側面に取付支持したモータハウジング22c内に収納し、そのモータ軸22bを、ミッションケース11の入力軸11と同心上(左右方向)に配し、モータハウジング22cより突出させて、伝動軸10及びカップリングC・Cを介して入力軸11に一体回転可能に駆動連結している。
このように、図7の第五実施例では、油圧ポンプ21は、エンジンEに連設されたポンプハウジングEc内に配され、エンジン出力軸EbにカップリンクCを介してポンプ軸21bが同心上に直接的に駆動連結されるため、油圧ポンプ21及びポンプハウジングEcにエンジンEの振動が直接的に伝播されるが、リアカバー102に取付支持したモータハウジング22c内の油圧モータ22に対しては、可撓性のある圧油管20を介して油圧ポンプ21からの圧油を供給する構造なので、油圧モータ22への振動の伝播は抑止されるのである。
なお、ポンプハウジング21cやモータハウジング22cをリアカバー102に取付支持する際は、両者の間に防振部材を挟み込ませるのが好ましい。これによれば、油圧ポンプ21や油圧モータ22自身から発生する振動も車体フレーム101側へは伝え難くすることができ、乗り心地を更に向上させ得る。
図1は、特には図2の第一実施例として表れている運搬車の側面図として描かれているが、図1中のポンプハウジングは、エンジンEの側方に連設したポンプハウジングEcとしても見られるし、リアカバー102の側面に取付支持したポンプハウジング21cにも見られる。また、図1中のモータハウジングは、ミッションケース1の側方に連設したモータハウジング1aにも見られるし、リアカバー102の側面に取付支持したモータハウジング22cにも見られる。従って、図1の運搬車の側面図を、図5、図6、図7に示す第三乃至第五実施例の運搬車の側面図として活用してもよい。
また、図3は、特には図4の第二実施例として表れている運搬車の側面図として描かれている。該第二実施例は、リアPTO軸18を軸支するリアPTOハウジング70を備えたものであるが、このリアPTOハウジング70については、図6や図7に示すように、リアカバー102の側面にモータハウジング22cを取付支持した構造の運搬車に適用してもよい。従って、図3において、モータハウジングを、リアカバー102に取付支持したモータハウジング22cとして見てもよい。但し、ポンプハウジングについては、リアPTOハウジング70に軸支する前後方向のリアPTO入力軸17に対してポンプ軸21bを略同心上に配置できるように、図3に示すように、エンジンEの出力軸Ebを後方に向け、油圧ポンプ21をエンジンE後端に連設したポンプハウジングEcに収納する構造とするのが好ましい。
次に、図1乃至図7の各実施例に共通の、アクセルペダル6、変速レバー7、及び油圧ポンプ21の可動斜板21aの連動連係構造に関する第一乃至第三実施例について、図9乃至図12より説明する。なお、変速レバー7は、前述の如く、図8に示す操作盤91の案内溝91a・91b・91cにて案内されるものである。
これらの連動連係構造は、一つのアクセルペダル6の踏み込みに応じて、変速レバー7を前進設定時、即ち、案内溝91a内の低速(1速)位置、中速(2速)位置、高速(3速)位置のいずれかに配置した状態の時に、可動斜板21aを前進用傾倒方向に傾倒させ、変速レバー7を後進設定、即ち、案内溝91cの後進位置Rに配置した状態の時は、可動斜板21aを後進用傾倒方向に傾倒させるようにするものである。
まず、図9及び図10に示す第一実施例について説明する。車両フレーム101等の車体に、ステー95を固設しており、該ステー95の長手方向に分かれて前進用枢支ピン嵌入溝95aと後進用枢支ピン嵌入溝95bとが形成されている。これらの溝95a・95bは、該ステー95の長手方向と直角方向において、互いに反対側に開口している。
アクセルペダル6は枢支軸6aにて枢支されており、アクセルペダル6と一体に回動可能なアーム6bが該アクセルペダル6の枢支ボス部より延設されている。このアーム6bよりワイヤ93が延設され、回動アーム94の端部に接続されている。回動アーム94には、その長手方向に分かれて、前進用枢支ピン94aと後進用枢支ピン94bとが突設さており、前進用枢支ピン94aはステー95の前進用枢支ピン嵌入溝95aに、後進用枢支ピン94bはステー95の後進用枢支ピン嵌入溝95bに嵌入可能としている。アクセルペダル6を中立にしている時(図9及び図10で中立位置のアクセルペダル6が実線で表されている)、両枢支ピン94a・95bともに、それぞれの嵌入溝95a・95bに嵌入されている。
ポンプハウジングEcまたは21cには、油圧ポンプ21の可動斜板21aと連動連係するコントロールアーム21dが枢支されている。このコントロールアーム21dの先端よりワイヤ96が延設され、回動アーム94の両枢支ピン94a・94b間の部分に接続されている。前述の如く両枢支ピン94a・94bが嵌入溝95a・95bに嵌入されている時は、コントロールアーム21dが中立位置Nに配されるものとしている。回動アーム94が枢支ピン94aを中心にその中立位置より回動する場合は、コントロールアーム21dを中立位置Nから最大前進速度位置Fに向けて回動し、これにより、可動斜板21aをその前進用傾倒方向に傾倒させる。回動アーム94が枢支ピン94bを中心にその中立位置より回動する場合には、コントロールアーム21dは、中立位置Nより、前記の最大前進速度位置Fとは反対側の後進最大速度位置Rに向けて回動する。これにより、可動斜板21aはその後進用傾倒方向へと傾倒される。
このような構造において、回動アーム94が枢支ピン94a・94bのうちいずれを枢支軸としてアクセルペダル6に追従して回動するかが、変速レバー7の、案内溝91bを介しての案内溝91a・91c間での切換により決定される。前後切換レバー7は、その途中部に枢支点7bを有していて、車体に枢支されており、それより上方の部分が、計器パネル91に形成した案内溝91aを介して上方に突設し、その上端に、オペレータにより把持されるグリップ7aが形成されている。この案内溝91aの一端が前進位置F、他端が後進位置Rとして設定されている。図9は変速レバー7が前進用の案内溝91a内の1〜3速位置及び中立位置のいずれかにある状態、図10は変速レバー7が案内溝91c内の後進位置Rにある状態を表す。
変速レバー7は、グリップ7aとは反対に、前記枢支点7bより下方にも延伸し、その下端7bcを、係止アーム92の中間部に形成した嵌入溝92cに嵌入している。係止アーム92の一端には、枢支ピン94aを嵌入させるためのフック溝92aを、他端には、枢支ピン94bを嵌入させるためのフック溝92bを形成している。両フック溝92a・92b間のピッチは、枢支ピン94a・94b間及び嵌入溝95a・95b間のピッチよりも短くなっていて、フック溝92a・92bの一方に枢支ピン94a・94bのいずれかが嵌入すれば、もう一方の枢支ピン94bまたは94aは、もう一方のフック溝92bまたは92aより外れるようになっている。
変速レバー7を案内溝91a内に配置すると、図9の如く、係止アーム92のフック溝92aに回動アーム94の枢支ピン94aが嵌入することとなり、枢支ピン94aは、両溝95a・92aに嵌入した状態で位置固定される。この状態で、図9にて仮想線で示す如くアクセルペダル6を踏み込めば、アーム6bの回動でワイヤ93が引かれて、該枢支ピン94aを中心に回動アーム94が回動する。回動アーム94のワイヤ96との接続点は、ワイヤ93により引かれる回動アーム94の端部とは、枢支ピン94aを介して反対側なので、ワイヤ96が回動アーム94により押され、コントロールアーム21dを、図9で仮想線にて描くように、最大前進速度位置Fに向けて回動する。従って、アクセルペダル6の踏込量に応じて、可動斜板21aが前進傾倒方向に傾倒し、油圧モータ22の前進回転方向の回転速度が設定される。
一方、変速レバー7を案内溝91c内の後進位置Rにすると、図10の如く、係止アーム92のフック溝92bに回動アーム94の枢支ピン94bが嵌入することとなり、枢支ピン94bは、両溝95b・92bに嵌入した状態で位置固定される。この状態で、図10にて仮想線で示す如くアクセルペダル6を踏み込めば、アーム6bの回動でワイヤ93が引かれて、該枢支ピン94bを中心に回動アーム94が回動する。回動アーム94のワイヤ96との接続点と、該ワイヤ93にて引かれる回動アーム94の端部とは、枢支ピン94bからは同一側にあるので、ワイヤ96が回動アーム94に引かれて、コントロールアーム21dを、図10で仮想線にて描くように、最大前進速度位置Rに向けて回動する。従って、アクセルペダル6の踏込量に応じて、可動斜板21aが後進傾倒方向に傾倒し、油圧モータ22の後進回転方向の回転速度が設定される。
次に、図11に示す第二実施例について説明する。変速レバー7は、図8、図9、図10と同様に車体に枢支され、また、案内溝91a・91b・91cのいずれかに挿通されている。車体には軸受にて軸芯回りに回転自在に回転筒111が支持されており、これにシフタ110が軸芯方向摺動自在かつ相対回転自在に貫通されている。シフタ110の回転筒111より突出した部分には環状溝110aが形成され、これに変速レバー7の下端7cが嵌入されている。回転筒111には、リング112・113・114が環設されている。
リング112はスプラインにて回転筒111に相対回転不能に嵌合されている。一方、リング113とシフタ110との間に、回転筒111を貫通して進退可能にボールクラッチ113bが介設されており、また、リング114とシフタ110との間に、回転筒111を貫通して進退可能にボールクラッチ114bが介設されている。また、回転筒111内にて、シフタ110の長手方向途中部には小径部110aが形成されており、シフタ110の回転筒111に対する摺動位置に応じてボールクラッチ113b・114bのいずれか一方が嵌入される。
この小径部110aに嵌入されたボールクラッチは、それに対応するリング113または114からは外れた状態となり、該リング113または114は回転筒111に対し相対回転自在となる。一方、小径部110aに入り込まない限り、ボールクラッチ113bまたは114bは、シフタ110の小径部110b以外の大径部の外周面に押されて、回転筒111とそのボールクラッチに対応するリング113または114とに貫通状に形成した孔(溝)にボールクラッチが嵌まり込み、そのリング113または114は回転筒111に係合され、一体に回転可能となる。
即ち、変速レバー7を、前進用の案内溝91a内のいずれかの設定位置に配すると、図11に示すように、その時の摺動位置のシフタ110の小径部110bにボールクラッチ114bが嵌入し、リング114は回転筒111に対し相対回転自在となる。一方、ボールクラッチ113bは小径部111bより外れており、回転筒111はリング113と一体に回転可能である。
また、変速レバー7を案内溝91cの後進位置Rに配すると、その時の摺動位置にあるシフタ111の小径部111bにボールクラッチ113bが嵌入し、ボールクラッチ114bは小径部111bより外れる。これにより、回転筒111はリング114と一体に回転可能となり、リング113に対しては相対回転自在であるである。
なお、シフタ110が、案内溝91bを介しての案内溝91a・91c間の変速レバー7のシフトに対応して位置決めされるように、回転筒111の内周部に、シフタ110の外周面に対峙するデテント溝110a・110bがシフタ110の軸芯方向に分かれて形成されており、一方、シフタ110にはデテントボール115が遠心方向に付勢されて具備されている。
変速レバー7を前進用の案内溝91aに配すると、図11に示すように、デテントボール115がデテント溝110aに嵌入して、回転筒111に対し、シフタ110の軸芯方向の位置がその前進位置に固定され、前述の如くボールクラッチ114bがシフタ110と係合する。そして、変速レバー7を案内溝91cの後進位置Rに配すると、デテントボール115がデテント溝110bに嵌入して、回転筒111に対し、シフタ110の軸芯方向の位置がその後進位置に固定され、ボールクラッチ113bがシフタ110と係合する。なお、こうしてシフタ110が回転筒111に対し軸芯方向に位置固定された場合にも、回転筒111はシフタ110に対して相対回転自在となっている。
ポンプハウジングEcまたは21cにおいては、油圧ポンプ21の可動斜板21aに連動連係する前進用コントロールアーム21eと後進用コントロールアーム21fとが枢支軸21gにより枢支され、互いに反対方向に延伸している。両コントロールアーム21c・21d同士は相対回動自在であり、前進用コントロールアーム21eが図11に示す前進最大速度位置Fへと回動することで、可動斜板21aは前進用傾倒方向に傾倒され、後進用コントロールアーム21fが図11に示す後進最大速度位置Rへと回動することで、可動斜板21aは後進用傾倒方向に傾倒される。
変速レバー7を案内溝91a内における1〜3速位置のいずれかにセットしている時にアクセルペダル6を踏み込むと、アーム部6bがワイヤ116を引いて、一体状のリング112、回転筒111、及びリング113がシフタ110を回動軸として回動し(リング114は停止したままで)、これによりアーム113aが回動して、ワイヤ117を介して前進用コントロールアーム21eを前進最大速度位置Fへと引く。一方、変速レバー7を案内溝91c内の後進位置Rにしている時にアクセルペダル6を踏み込むと、アーム部6bがワイヤ116を引いて、一体状のリング112、回転筒111、及びリング114がシフタ110を回動軸として回動し(リング113は停止したままで)、これによりアーム114aが回動して、ワイヤ118を介して後進用コントロールアーム21fを後進最大速度位置Rへと引く。
次に、図12に示す実施例について説明する。車体に回転軸121が軸受にて回転自在に支持されており、その軸芯方向途中部がスプラインハブ121aとなっている。スプラインハブ121a上には、クラッチスライダ122が軸芯方向に摺動自在、かつ相対回転不能に環設されており、該クラッチスライダ122の両側にて、リング123・124が回転軸121に対し相対回転自在に環設されている。クラッチスライダ122は、その回転時121上の軸芯方向における摺動により、リング123のみに噛合した状態と、リング124のみに噛合した状態とに切り換えられる。
クラッチスライダ122の外周部にはシフタリング120が係合して、該回転軸121の軸芯方向にて、シフタリング120がクラッチスライダ122と一体に摺動可能となっている。シフタリング121の軸芯方向中央部には、環状溝120aが形成されており、これに変速レバー7の下端7cが嵌入されている。前述の如く変速レバー7が前進用の案内溝91aにおけるいずれかの設定位置に配されると、シフタクラッチ120は、リング124からは離間し、リング123と一体回転可能に噛合する。従って、シフタクラッチ120を介してリング123と回転軸121とが一体回転可能に係合される。また、変速レバー7を案内溝91cの後進位置Rに配すると、シフタクラッチ120はリング123から離間し、リング124に一体回転可能に噛合する。これにより、シフタクラッチ120を介してリング124と回転軸121とが一体回転可能に係合される。
リング123・124及びシフタクラッチ122から軸芯方向に外れて、リング125が回転軸121に一体回転自在に係合されており、該リング125よりアーム部125aが延設されて、該アーム部125aとアクセルペダル6のアーム部6aとの間にワイヤ116が介設されている。また、リング123・124からはそれぞれアーム部123a・124aが延設され、前進用コントロールアーム21cとアーム部123aとの間にワイヤ117を、アーム部124aと後進用コントロールアーム21dとの間にワイヤ118を介設している。前進用コントロールアーム21c・後進用コントロールアーム21dは、図11の場合と同様にポンプハウジングEcまたは21cに枢支され、可動斜板21aに係合している。
変速レバー7を案内溝91aにおける1〜3速位置のいずれかにセットした状態でアクセルペダル6を踏むと、アーム部6bがワイヤ116を引いて、リング125を回動する。このリング125と一体回転可能に係合された回転軸121及びリング123が回動して、ワイヤ117を引き、前進用コントロールアーム21eを最大前進速度位置Fへと回動し、可動斜板21aを前進傾倒方向にて傾倒させる。一方、変速レバー7を案内溝91cの後進位置Rにした状態でアクセルペダル6を踏むと、アーム部6bがワイヤ116を引いて、リング125を回動する。このリング125と一体回転可能に係合された回転軸121及びリング124が回動して、ワイヤ118を引き、後進用コントロールアーム21fを最大後進速度位置Rへと回動し、可動斜板21aを後進傾倒方向にて傾倒させる。
以上の実施の形態は、本発明の推奨例であって、特許請求の範囲を逸脱しない限りの変更、例えば細部の変容や部材等の組み合わせの変更等が可能であることは当業者に理解できよう。
本発明に係るHSTと伝動機構との組み合わせによる車両用走行伝動装置は、運搬車等の作業車両に適用されて、荷台の下方のような限られた空間内にコンパクトにHSTを配設することで、該車両の小型化を実現しつつ荷台の容積を十分に確保できる。また、HSTの油圧モータや油圧ポンプへとエンジンの振動伝播を抑止可能なことから、その耐久性を向上することができる。
E エンジン
Ea 防振支持部材
Eb エンジン出力軸
Ec ポンプハウジング
1 ミッションケース
1a モータハウジング
3 前輪
3a 前輪車軸
5 後輪
5a 後輪車軸
6 アクセルペダル
7 変速レバー
11 (ギア式有段変速機構の)入力軸
12 (ギア式有段変速機構の)出力軸
20 (可撓性のある)圧油管
21 油圧ポンプ
21a 可動斜板
21b ポンプ軸
21c ポンプハウジング
22 油圧モータ
22b モータ軸
22c モータハウジング
Ea 防振支持部材
Eb エンジン出力軸
Ec ポンプハウジング
1 ミッションケース
1a モータハウジング
3 前輪
3a 前輪車軸
5 後輪
5a 後輪車軸
6 アクセルペダル
7 変速レバー
11 (ギア式有段変速機構の)入力軸
12 (ギア式有段変速機構の)出力軸
20 (可撓性のある)圧油管
21 油圧ポンプ
21a 可動斜板
21b ポンプ軸
21c ポンプハウジング
22 油圧モータ
22b モータ軸
22c モータハウジング
Claims (7)
- 荷台を備えた作業車両の、該荷台下方の車体部分に、エンジンを防振支持し、かつ、車軸駆動用の伝動機構を収納するミッションケースを固設した構成の車両用走行伝動装置であって、該エンジンから該伝動機構へと動力を伝達するための油圧式無段変速機構を該荷台下方に配設しており、該油圧式無段変速機構を構成する油圧ポンプと油圧モータは、互いに別体であるポンプハウジング及びモータハウジングにそれぞれ収納されて、該ポンプハウジングと該モータハウジングとの間に、該油圧ポンプと該油圧モータとを流体接続する可撓性のある圧油管を介設しており、該油圧モータのモータ軸を、該伝動機構の入力部に対して同心上に駆動連結していることを特徴とする車両用走行伝動装置。
- 前記ポンプハウジングを前記エンジンに連設し、前記油圧ポンプのポンプ軸を該エンジンの出力部に同心上に駆動連結するとともに、前記モータハウジングを前記ミッションケースに連設していることを特徴とする請求項1記載の車両用走行伝動装置。
- PTO伝動機構を前記車両に備え、前記ポンプ軸を該PTO伝動機構の入力部にユニバーサルジョントを介して駆動連結していることを特徴とする請求項2記載の車両用走行伝動装置。
- 前記ポンプハウジング及び前記モータハウジングの少なくとも一方を車体に支持していることを特徴とする請求項1記載の車両用走行伝動装置。
- 前記ポンプハウジングを前記車体に支持し、前記油圧ポンプのポンプ軸を該エンジンの出力軸にユニバーサルジョントを介して駆動連係するとともに、前記モータハウジングを前記ミッションケースに連設していることを特徴とする請求項4記載の車両用走行伝動装置。
- 前記ポンプハウジング及び前記モータハウジングを前記車体に支持し、前記油圧ポンプのポンプ軸を該エンジンの出力部にユニバーサルジョイントを介して駆動連結していることを特徴とする請求項4記載の車両用走行伝動装置。
- 前記ポンプハウジングを前記エンジンに連設し、前記油圧ポンプのポンプ軸を該エンジンの出力部に同心上に駆動連結するとともに、前記モータハウジングを前記車体に支持していることを特徴とする請求項4記載の車両用走行伝動装置。
Priority Applications (1)
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JP2005077870A JP2006256510A (ja) | 2005-03-17 | 2005-03-17 | 車両用走行伝動装置 |
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ID=37096197
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US9475384B2 (en) | 2013-09-11 | 2016-10-25 | Kanzaki Kokyukoki Mfg. Co., Ltd. | Powertrain system for vehicle |
JP2021088268A (ja) * | 2019-12-04 | 2021-06-10 | 株式会社クボタ | 多目的車両 |
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-
2005
- 2005-03-17 JP JP2005077870A patent/JP2006256510A/ja active Pending
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