JP2006253087A - 高分子電解質およびそれを用いた電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 優れた放電特性を得ることができる高分子電解質およびそれを用いた電池を提供する。
【解決手段】 正極21と負極22とをセパレータ24を介して巻回したのち、外装部材の内部に収納して、溶媒と、ポリビニルアセタールと、六フッ化リン酸リチウムとを含む電解質組成物を添加する。ポリビニルアセタールは、六フッ化リン酸リチウムを触媒として重合し高分子化合物となる。これにより高分子電解質23が形成される。高分子電解質23における高分子化合物の含有量は2質量%以上5質量%以下の範囲内であり、電解液の漏液が抑制されると共に、放電特性が改善されるようになっている。
【選択図】 図2
【解決手段】 正極21と負極22とをセパレータ24を介して巻回したのち、外装部材の内部に収納して、溶媒と、ポリビニルアセタールと、六フッ化リン酸リチウムとを含む電解質組成物を添加する。ポリビニルアセタールは、六フッ化リン酸リチウムを触媒として重合し高分子化合物となる。これにより高分子電解質23が形成される。高分子電解質23における高分子化合物の含有量は2質量%以上5質量%以下の範囲内であり、電解液の漏液が抑制されると共に、放電特性が改善されるようになっている。
【選択図】 図2
Description
本発明は、電解液と高分子化合物とを含む高分子電解質およびそれを用いた電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(videotape recorder)、携帯電話あるいは携帯用コンピューターなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。それに伴い、電子機器のポータブル電源として、電池、特に二次電池の開発が活発に進められている。中でも、リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を実現できるものとして注目されており、薄型で折り曲げ可能な形状の自由度が高いものについても多く研究されている。
このような形状の自由度が高い電池には、高分子化合物に電解質塩を溶解させた全固体状の高分子電解質や、あるいは高分子化合物に電解液を保持させたゲル状の高分子電解質などが用いられている。中でも、ゲル状の高分子電解質は、電解液を保持しているために全固体状に比べて活物質との接触性およびイオン伝導率に優れており、また、電解液に比べて漏液が起こりにくいという特徴を有していることから注目を浴びている。
このゲル状の高分子電解質に用いられる高分子については、エーテル系の高分子をはじめとして、メタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデンなどの様々な物質が研究されており、この中にポリビニルホルマールあるいはポリビニルブチラールといったポリビニルアセタールを用いたものがある。
例えば、特許文献1,2には、ポリビニルブチラールを用いたイオン電導性固形体組成物が記載されており、特許文献3には、ポリビニルホルマールと電解液とを含むゲル状電解質が記載されている。また、特許文献4には、ポリビニルホルマールに含まれる水酸基の量を調整することにより、電解液の量を増やしたゲル状電解質が記載されている。更にまた、特許文献5には、エポキシ系の架橋剤や触媒を用いることにより形成されたゲル状電解質が記載されている。
特開昭57−143355号公報
特開昭57−143356号公報
特開平3−43909号公報
特開2001−200126号公報
米国特許第3985574号明細書
しかしながら、これらの高分子電解質では、電解液の含有量が十分ではなく、優れたイオン伝導性を得ることができないという問題があった。
また、特許文献1〜4記載の高分子電解質は、ポリビニルアセタールを希釈溶剤に溶解させ、製膜したのちに希釈溶剤を揮発させるキャスト法により作製しており、電解液に低沸点溶媒を混合しても希釈溶剤と共に揮発してしまうので、イオン伝導性を更に向上させることは難しかった。
更にまた、特許文献5に記載の高分子電解質では、反応性の高い架橋剤などが電極において分解することにより、放電特性などが低下してしまうという問題もあった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、イオン伝導性を向上させることにより、優れた放電特性を得ることができる高分子電解質およびそれを用いた電池を提供することにある。
本発明による高分子電解質は、溶媒および六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液と、ポリビニルアセタールおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を重合した構造を有する高分子化合物とを含み、高分子化合物の含有量は、2質量%以上5質量%以下の範囲内のものである。
本発明による電池は、正極および負極と共に、セパレータおよび高分子電解質を外装部材の内部に備えたものであって、高分子電解質は、溶媒および六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液と、ポリビニルアセタールおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を重合した構造を有する高分子化合物とを含み、高分子電解質における高分子化合物の含有量は、2質量%以上5質量%以下の範囲内のものである。
本発明の高分子電解質によれば、六フッ化リン酸リチウムにより、ポリビニルアセタールおよびその誘導体を重合させ、高分子化合物の含有量を2質量%以上5質量%以下の範囲内とするようにしたので、漏液を抑制しつつ、イオン伝導性を向上させることができる。また、例えば、低沸点溶媒を容易に含有させることができるので、イオン伝導性を更に向上させることもできる。加えて、架橋剤などを用いなくてもよく、これらの電極における分解反応による放電容量の低下を抑制することもできる。よって、この高分子電解質を用いた本発明の電池によれば、漏液を抑制しつつ、放電特性を向上させることができる。
特に、高分子電解質における高分子化合物の含有量を2質量%以上3.5質量%以下の範囲内にするようにすれば、高い効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係る高分子電解質は、ポリビニルアセタールおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を重合した構造を有する高分子化合物と、電解液とを含んでおり、いわゆるゲル状となっている。
ポリビニルアセタールは、化1(A)に示したアセタール基を含む構成単位と、化1(B)に示した水酸基を含む構成単位と、化1(C)に示したアセチル基を含む構成単位とを繰り返し単位に含む化合物である。具体的には、例えば、化1(A)に示したRが水素のポリビニルホルマール、またはRがプロピル基のポリビニルブチラールが挙げられる。
ポリビニルアセタールにおけるアセタール基の割合は60mol%以上80mol%以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内において溶媒との溶解性を向上させることができると共に、高分子電解質の安定性をより高めることができるからである。また、ポリビニルアセタールの重量平均分子量は、10000以上500000以下の範囲内であることが好ましい。分子量が低すぎると重合反応が進行しにくく、高すぎると電解液の粘度が上昇してしまうからである。
高分子化合物の含有量は、高分子電解質全体に対して2質量%以上5質量%以下の範囲内が好ましく、特に2質量%以上3.5質量%以下の範囲内であればより好ましい。少ないと電解液を保持する能力が低下してしまう場合があり、多いと電解液の割合が低下し、イオン伝導性が低下してしまうからである。
この高分子化合物は、ポリビニルアセタールのみ、またはその誘導体の1種のみを重合したものでも、それらの2種以上を重合したものでもよく、更に、ポリビニルアセタールおよびその誘導体以外のモノマーとの共重合体でもよい。
また、この高分子化合物は、電解質塩としても機能する六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を触媒として重合したものであり、これにより重合が促進され、少ない含有量で電解液を保持することができるようになっている。
電解液は、溶媒に電解質塩を溶解したものである。溶媒としては、例えば、γ−ブチロラクトン,γ−バレロラクトン,δ−バレロラクトンあるいはε−カプロラクトンなどのラクトン系溶媒、炭酸エチレン,炭酸プロピレン,炭酸ブチレン,炭酸ビニレン,炭酸ジメチル,炭酸エチルメチルあるいは炭酸ジエチルなどの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン,1−エトキシ−2−メトキシエタン,1,2−ジエトキシエタン,テトラヒドロフランあるいは2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、スルフォラン系溶媒、リン酸類、リン酸エステル溶媒、またはピロリドン類などの非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
電解質塩は、溶媒に溶解してイオンを生ずるものであればいずれを用いてもよく、上述した六フッ化リン酸リチウムに加えて、他の電解質塩を混合して用いてもよい。他の電解質塩としては、例えば、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 ),六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 ),過塩素酸リチウム(LiClO4 ),トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 ),ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 ),ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 F5 SO2 )2 ),トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム(LiC(CF3 SO2 )3 ),四塩化アルミン酸リチウム(LiAlCl4 )あるいは六フッ化ケイ酸リチウム(LiSiF6 )などが挙げられる。
この高分子電解質は、例えば、次のようにして電池に用いられる。なお、本実施の形態では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明する。
図1は本実施の形態に係る高分子電解質を用いた二次電池を分解して表すものである。この二次電池は、正極端子11および負極端子12が取り付けられた電池素子20をフィルム状の外装部材30の内部に封入したものである。正極端子11および負極端子12は、外装部材30の内部から外部に向かい例えば同一方向にそれぞれ導出されている。正極端子11および負極端子12は、例えば、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されている。
外装部材30は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に張り合わせた矩形状のラミネートフィルムにより構成されている。外装部材30は、例えば、ポリエチレンフィルム側と電池素子20とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材30と正極端子11および負極端子12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム31が挿入されている。密着フィルム31は、正極端子11および負極端子12に対して密着性を有する材料により構成され、例えば、正極端子11および負極端子12が上述した金属材料により構成される場合には、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
なお、外装部材30は、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムなどにより構成するようにしてもよい。
図2は、図1に示した電池素子20のI−I線に沿った断面構造を表すものである。電池素子20は、正極21と負極22とが本実施の形態に係る高分子電解質23およびセパレータ24を介して対向して位置し、巻回されているものであり、最外周部は保護テープ25により保護されている。
正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面あるいは片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aには、長手方向における一方の端部に正極活物質層21Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に正極端子11が取り付けられている。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
正極活物質層21Bは、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電剤および結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、硫化チタン(TiS2 ),硫化モリブデン(MoS2 ),セレン化ニオブ(NbSe2 )あるいは酸化バナジウム(V2 O5 )などのリチウムを含有しないカルコゲン化物、またはリチウムを含有するリチウム含有化合物、またはポリアセチレンあるいはポリピロールなどの高分子化合物が挙げられる。
中でも、リチウム含有化合物は、高電圧および高エネルギー密度を得ることができるものがあるので好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、またはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が挙げられ、特にコバルト(Co),ニッケル,マンガン(Mn)および鉄(Fe)のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。より高い電圧を得ることができるからである。その化学式は、例えば、Lix MIO2 あるいはLiy MIIPO4 で表される。式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属元素を表す。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物の具体例としては、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz O2 (z<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )などが挙げられる。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物の具体例としては、例えばリチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-v Mnv PO4 (v<1))が挙げられる。
負極22は、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aには、長手方向における一方の端部に負極活物質層22Bが設けられず露出している部分があり、この露出部分に負極端子12が取り付けられている。負極集電体22Aは、例えば、銅箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔により構成されている。
負極活物質層22Bは、例えば、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料、または金属リチウムのいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて導電剤および結着剤を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料,金属酸化物あるいは高分子化合物が挙げられる。炭素材料としては、難黒鉛化炭素材料あるいは黒鉛系材料などが挙げられ、より具体的には、熱分解炭素類,コークス類,黒鉛類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維あるいは活性炭などがある。このうち、コークス類にはピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては、酸化鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブテンなどが挙げられ、高分子化合物としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
このような金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,インジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),ガリウム(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀(Ag),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr)およびイットリウム(Y)が挙げられる。中でも、長周期型周期表における14族の金属元素あるいは半金属元素が好ましく、特に好ましいのはケイ素あるいはスズである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン(Ti),ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
セパレータ24は、例えば、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の合成樹脂よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜など、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の薄膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン系の多孔質膜を含むものは、正極21と負極22との分離性に優れ、内部短絡や開回路電圧の低下をより低減できるので好ましい。
この二次電池は例えば次のようにして製造することができる。
まず、正極21を作製する。例えば、粒子状の正極活物質を用いる場合には、正極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて正極合剤スラリーを作製する。そののち、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型して正極活物質層21Bを形成する。
また、負極22を作製する。例えば、粒子状の負極活物質を用いる場合には、負極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて負極合剤スラリーを作製する。そののち、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層22Bを形成する。
次いで、正極21に正極端子11を取り付けると共に、負極22に負極端子12を取り付けたのち、セパレータ24,正極21,セパレータ24および負極22を順次積層して巻回し、最外周部に保護テープ25を接着して巻回電極体を形成する。続いて、この巻回電極体を外装部材30で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とする。
そののち、上述したポリビニルアセタールおよびその誘導体のうちの少なくとも1種のモノマーと、六フッ化リン酸リチウムを含む電解液とを含有する電解質組成物を用意し、外装部材30の開口部から巻回電極体の内部に注入して、外装部材30の開口部を熱融着し封入する。これにより、外装部材30の内部において、六フッ化リン酸リチウムを触媒としてモノマーが重合することにより高分子電解質23が形成され、図1および図2に示した二次電池が完成する。よって、低沸点溶媒を容易に混合することができる。
なお、この二次電池は次のようにして製造してもよい。例えば、巻回電極体を作製してから電解質組成物を注入するのではなく、正極21および負極22の上、またはセパレータ24に電解質組成物を塗布したのちに巻回し、外装部材30の内部に封入するようにしてもよい。また、正極21および負極22の上、またはセパレータ24にポリビニルアセタールおよびその誘導体のうちの少なくとも1種のモノマーを塗布して巻回し、外装部材30の内部に収納したのちに六フッ化リン酸リチウムを含む電解液を注入するようにしてもよい。これらの場合にも、低沸点溶媒を容易に混合することができるので好ましい。但し、外装部材30の内部でモノマーを重合させるようにした方が高分子電解質23とセパレータ24との接合性が向上し、内部抵抗を低くすることができるので好ましい。また、外装部材30の内部に電解質組成物を注入して高分子電解質23を形成するようにした方が、少ない工程で簡単に製造することができるので好ましい。
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、高分子電解質23を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、高分子電解質23を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。その際、リチウムイオンの移動度は高分子電解質23に含まれる電解液に依存する。本実施の形態では、高分子化合物の割合が所定の範囲となっているので、リチウムイオンの移動が容易となり、高いイオン伝導性が得られると共に、漏液が抑制される。
このように本実施の形態によれば、六フッ化リン酸リチウムにより、ポリビニルアセタールおよびその誘導体を重合させ、高分子化合物の含有量を2質量%以上5質量%以下の範囲内とするようにしたので、漏液を抑制しつつ、イオン伝導性を向上させることができる。また、例えば、低沸点溶媒を容易に含有させることができるので、イオン伝導性を更に向上させることもできる。加えて、架橋剤などを用いなくてもよく、これらの電極における分解反応による放電容量の低下を抑制することもできる。よって、漏液を抑制しつつ、放電特性を向上させることができる。
特に、高分子電解質23における高分子化合物の含有量を2質量%以上3.5質量%以下の範囲内にするようにすれば、高い効果を得ることができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−5)
図1,2に示したようなラミネートフィルム型の二次電池を作製した。
図1,2に示したようなラミネートフィルム型の二次電池を作製した。
まず、炭酸リチウム(Li2 CO3 )0.5molと炭酸コバルト(CaCO3 )1molとを混合し、この混合物を空気中において900℃で5時間焼成して正極活物質であるリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を合成した。次いで、このリチウムコバルト複合酸化物85質量部と、導電剤である黒鉛5質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して正極合剤を調製したのち、分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーを作製した。続いて、この正極合剤スラリーを厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体21Aの両面に均一に塗布し乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成型して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製した。そののち、正極21に正極端子11を取り付けた。
また、粉砕した黒鉛粉末を負極活物質として用い、この黒鉛粉末90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調製したのち、分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合剤スラリーを作製した。続いて、この負極合剤スラリーを厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体22Aの両面に均一に塗布し乾燥させたのち圧縮成型して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製した。そののち、負極22に負極端子12を取り付けた。
そののち、作製した正極21および負極22を、厚み25μmの微孔性ポリエチレンフィルムよりなるセパレータ24を介して密着させ、長手方向に巻き回し、最外周部に保護テープ25を接着して巻回電極体を作製した。次いで、この巻回電極体を、外装部材30に挟んだのち、外装部材30の外周縁部を一辺を除いて貼り合わせ袋状とした。外装部材30には、最外層から順に厚み25μmのナイロンフィルム、厚み40μmのアルミニウム箔および厚み30μmのポリプロピレンフィルムを積層した防湿性のアルミラミネートフィルムを用いた。
そののち、電解質組成物を外装部材30の開口部から注入し、開口部を減圧下において熱融着して封入したのち、電池形状を一定に保つためガラス板に挟んで24時間放置することにより高分子電解質23を形成し、図1,2に示した二次電池を作製した。
電解質組成物には、ポリビニルホルマールと、電解液とを、ポリビニルホルマール:電解液=2:98,3:97,3.5:96.5,4:96または5:95の質量比で混合溶解して作製した混合溶液を用いた。その際、電解液は、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを炭酸エチレン:炭酸ジエチル=3:7の質量比で混合した溶媒に、六フッ化リン酸リチウムを1.0mol/lの濃度で溶解したものとした。また、ポリビニルホルマールは、重量平均分子量を約50000とし、ホルマール基と水酸基とアセチル基とのモル比を、ホルマール基:水酸基:アセチル基=75.5:12.3:12.2とした。
更に、実施例1−1〜1−5で用いた電解質用組成物および形成された高分子電解質23の一部を抽出し、これらをそれぞれN−メチル−2−ピロリドンで300倍に希釈して、GPC(Gel Permeation Chromatography ;ゲル浸透クロマトグラフ)専用システム(昭和電工(株)製、Shodex GPC−101)により分析を行った。その結果、いずれにおいても高分子電解質23の重量平均分子量は、電解質用組成物の重量平均分子量よりも大きくなっており、ポリビニルホルマールが重合されたことが確認された。
実施例1−1〜1−5に対する比較例1−1として、六フッ化リン酸リチウムに代えて、過塩素酸リチウムを用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。その際、電解質用組成物におけるポリビニルホルマールと電解液との混合比(質量比)を、ポリビニルホルマール:電解液=3:97とした。
比較例1−2として、ポリビニルホルマールを用いなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。
比較例1−3,1−4として、電解質用組成物におけるポリビニルホルマールと電解液との混合比(質量比)を、ポリビニルホルマール:電解液=1.5:98.5または6:94としたことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。
比較例1−5として、高分子電解質におけるポリビニルホルマールの含有量が10質量%となるようにしたことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。その際、高分子電解質を次のように形成して二次電池を作製した。
まず、電解液と、ポリビニルホルマールと、混合溶剤であるテトラヒドロフランとを、電解液:ポリビニルホルマール:テトラヒドロフラン=90:10:100の質量比で混合して、キャスト液を作製した。電解液には、炭酸エチレンと炭酸プロピレンとを炭酸エチレン:炭酸プロピレン=1:1の質量比で混合した混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウムを1mol/lとなるように溶解したものを用いた。続いて、実施例1−1〜1−5と同様にして作製した正極および負極の両面に、キャスト液を塗布し、50℃で乾燥させることによりテトラヒドロフランを揮発させ、高分子電解質を形成した。そののち、高分子電解質が形成された正極および負極を積層して巻回し、外装部材の間に装填して4辺を熱融着して密閉することにより二次電池を作製した。
作製した実施例1−1〜1−5および比較例1−1〜1−5の二次電池について、漏液試験を次のようにして行った。まず、実施例1−1〜1−5および比較例1−1〜1−5の二次電池を各20個ずつ作製し、外装部材30に直径0.5mmの穴を開け、9.8MPaの圧力でプレスした。このとき、電解液が漏れた電池の数を求めた。結果を表1に示す。
また、放電容量を次にようにして調べた。まず、23℃で500mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで2時間行い、次に100mAの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行い、このときの放電容量を求めた。また、同様の条件で定電流定電圧充電を行い、1500mAの定電流放電を終止電圧3.0Vまで行い、このときの放電容量を求めた。結果を表1および図3に示す。
表1および図3から分かるように、六フッ化リン酸リチウムを用いてポリビニルホルマールを重合し、ポリビニルホルマールの混合量が2質量%以上5質量%以下の範囲内である実施例1−1〜1−5では、電解液の液漏れが観られなかったのに対し、六フッ化リン酸リチウムに代えて過塩素酸リチウムを用いた比較例1−1、あるいはポリビニルホルマールを用いなかった比較例1−2では、すべての電池について電解液の液漏れが観られた。また、ポリビニルホルマールの混合量が2質量%未満である比較例1−3では、一部の電池について液漏れが観られ、5質量%超である比較例1−4,1−5では、放電容量が実施例1−1〜1−5よりも低下し、特に、キャスト法により作製した比較例1−5では、放電容量が著しく低下した。加えて、ポリビニルホルマールの混合量が2質量%以上3.5質量%以下の範囲内である実施例1−1〜1−3において、放電容量について特に高い値が得られた。
すなわち、六フッ化リン酸リチウムを用いて、ポリビニルホルマールを重合し、重合された高分子化合物の含有量を高分子電解質23に対して2質量%以上5質量%以下の範囲内にするようにすれば、電解液の漏液を抑制しつつ、放電特性を向上させることができ、特に高分子化合物の含有量を2質量%以上3.5質量%以下の範囲内にすれば、放電特性をより向上させることができることが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、正極21および負極22を積層して巻回した電池素子20を備える場合について説明したが、一対の正極と負極とを積層した平板状の電池素子、または複数の正極と負極とを積層した積層型の電池素子を備える場合についても本発明を適用することができる。また、上記実施の形態および実施例では、フィルム状の外装部材30を用いる場合について説明したが、外装部材に缶を用いたいわゆる円筒型、角型、コイン型、ボタン型などの他の形状を有する電池についても同様に適用することができる。更に、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
加えて、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウム(Mg)あるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても、本発明を適用することができる。
11…正極端子、12…負極端子、20…電池素子、21…正極、21A…正極集電体、21B…正極活物質層、22…負極、22A…負極集電体、22B…負極活物質層、23…高分子電解質、24…セパレータ、25…保護テープ、30…外装部材、31…密着フィルム。
Claims (6)
- 溶媒および六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液と、
ポリビニルアセタールおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を重合した構造を有する高分子化合物とを含み、
前記高分子化合物の含有量は、2質量%以上5質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする高分子電解質。 - 前記高分子化合物の含有量は、3.5質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質。
- 正極および負極と共に、セパレータおよび高分子電解質を外装部材の内部に備えた電池であって、
前記高分子電解質は、溶媒および六フッ化リン酸リチウムを含有する電解液と、
ポリビニルアセタールおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を重合した構造を有する高分子化合物とを含み、
前記高分子電解質における前記高分子化合物の含有量は、2質量%以上5質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする電池。 - 前記高分子電解質における前記高分子化合物の含有量は、3.5質量%以下であることを特徴とする請求項3記載の電池。
- 前記高分子化合物は、前記外装部材の内部で重合されたことを特徴とする請求項3記載の電池。
- 前記外装部材は、フィルム状の材料よりなることを特徴とする請求項3記載の電池。
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