JP2006250222A - スラストころ軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】 潤滑性を良好にして、高速運転した場合でも優れた耐久性を確保できる構造を実現する。
【解決手段】 保持器3aの内径側部分のうちの、各ポケット5の内径側に存在する部分の両側面のみを、内径側に向かう程互いに近付く方向に傾斜したテーパ面9、9とする。そして、これら各テーパ面9、9を、上記潤滑油を上記各ポケット5内に導く為の案内とする。これにより、上記保持器3aの内径側から供給される潤滑油が、これら各テーパ面9、9に沿って、上記各ポケット5内に保持した各ころ2の転動面と、レース4a、4bのそれぞれのレース面8a、8bとの各接触部分に入り込み易くなる。この結果、潤滑性を良好にでき、高速運転時に於ける温度上昇を抑えられる。
【選択図】 図1

Description

この発明に係るスラストころ軸受(スラストニードル軸受を含む)は、自動車のトランスミッション等の回転部分に加わるスラスト荷重を支承する為、この回転部分に組み付けた状態で利用する。
トランスミッション等の回転部分にはスラストころ軸受を装着して、回転軸等に加わるスラスト荷重を支承する様にしている。図9〜10は、この様な回転部分に使用されるスラストころ軸受の1例を示している。このスラストころ軸受1は、放射方向に配列された複数本のころ2(ニードルを含む)と、これら複数本のころ2を保持する保持器3と、これら各ころ2を両側から挟持する1対のレース4a、4bとから成る。このうちの保持器3は、合成樹脂製で射出成形により円輪状に形成されており、それぞれが放射方向(径方向)に長い略矩形のポケット5を、円周方向複数個所に設けている。そして、これら各ポケット5内にそれぞれ上記各ころ2を配置して、これら各ころ2をこれら各ポケット5内に保持している。
上述の様に構成されるスラストころ軸受1をトランスミッション等の回転部分に組み込む場合、一般的に外輪と呼ばれるレース4aを図示しないハウジングに固定し、内輪と呼ばれるレース4bを図示しない相手部材に固定する。そして、これらハウジングと相手部材との相対回転を自在とすると共に、これらハウジングと相手部材との間に作用するスラスト荷重を支承する。尚、上記各レース4a、4bのうちの一方又は双方を省略し、ハウジング或は相手部材に、直接上記各ころ2を当接させる場合もある。
又、上述の様に、保持器3を合成樹脂製とすれば、複雑な形状を安価に形成する事ができ、且つ、金属製の保持器に比べて大幅に軽量化できる。この為、この保持器3を合成樹脂製とする事により、上記スラストころ軸受1を組み込んだ装置の軽量化、低コスト化、高効率化に貢献できる。但し、上記保持器3を合成樹脂製とした場合には、耐久性が問題となる。即ち、自動車用トランスミッション等の回転部分に組み込まれるスラストころ軸受1の場合、高速で運転される場合がある。そして、高速運転時には、軸受内の温度が著しく上昇する。上記合成樹脂製の保持器3は、金属製の保持器と比べて耐熱性が低い為、温度上昇により変形したり破損する可能性がある。
又、上記合成樹脂製の保持器3は、金属製の保持器と比べて耐摩耗性も低い。高速運転時には、この保持器3の各ポケット5内に保持した上記各ころ2に大きな遠心力が作用し、これら各ポケット5の外径側内側面6とこれら各ころ2の外径側端面7とが強く当接する。これら各ころ2は金属製である為、これら各面6、7同士の当接により、上記外径側内側面6が著しく摩耗する。この為に、例えば特許文献1〜2に記載されている様に、ポケットの外径側内側面ところの外径側端面との間に鋼球又は金属製のリングを設ける構造が知られている。
上述の様に、スラストころ軸受1に合成樹脂製の保持器3を組み込んだ構造の場合、金属性の保持器に比べて耐熱性及び耐摩耗性が劣る為、軸受内の潤滑性を十分に確保する必要がある。自動車用トランスミッション等の回転部分に組み込んで使用する上記スラストころ軸受1の場合、図9に矢印で示す様に、通常、保持器3の内径側から潤滑油が供給される。この様に供給される潤滑油は、上記各レース4a、4bのそれぞれのレース面8a、8bと上記各ポケット5内に保持される各ころ2の転動面との各接触部分に入り込んで、これら各接触部分を潤滑する。そして、遠心力に基づいて上記保持器3の外径側から排出される。
上記保持器3が合成樹脂製の場合、高速回転時に於ける耐久性を確保すべく、供給する潤滑油の量を増やす事が行なわれる。しかし、上述した従来構造の場合、図11に示す様に、上記保持器3の内径側の断面形状を矩形としている為、供給する潤滑油の量を増やしても、この潤滑油が上記各レース面8a、8bと各ころ2の転動面との各接触部分に十分に供給されにくい。即ち、上記保持器3の内径側部分は、断面形状が矩形で、径方向に関して厚さが均等である。この為、この保持器3の内径側部分(内径側リム部)の両側面と上記各レース4a、4bの各内側面との間のそれぞれの隙間が、この保持器3の径方向のほぼ全長に亙って狭く、この保持器3の内径側から供給される潤滑油がこれら各隙間内に入り込みずらい。言い換えれば、この保持器3の内径側から供給される潤滑油の多くがこの保持器3の内周面に堰き止められ、上記各隙間に流れ込む潤滑油の量が限られる。この結果、上記潤滑油の量を増やしたとしても、上記各ころ2の転動面と上記各レース面8a、8bとの各接触部分に潤滑油を十分に供給できず、この接触部分の潤滑性を確保しにくい。
これに対して、特許文献3に記載された構造では、保持器の内径側部分の厚さを全周に亙って小さくしたり、全周に亙って内径側に向かう程厚さを小さくする構造が記載されている。この様に構成すれば、上記保持器の内径側から供給される潤滑油が、各ころの転動面と各レース面との各接触部分に供給され易くなる。但し、上記特許文献3に記載された構造の場合、全周に亙って、保持器の内径側部分の厚さを小さくする為、この保持器の強度を確保しにくい。又、上記潤滑油を上記各接触部分に効率良く供給できない。即ち、全周に亙って、上記内径側部分の厚さを小さくしたり、内径側に向かう程厚さを小さくしている為、上記各接触部分以外の場所(円周方向に隣り合うポケット同士の間に存在する柱部が対向する部分)にも潤滑油が送られる。この様にポケットから円周方向に外れた部分に送り込まれる潤滑油の殆どは、上記各接触部分の潤滑に使用される事なく排出される。従って、上記内径側部分の厚さを全周に亙って小さく、若しくは、内径側に向かう程小さくする構造の場合、潤滑油を上記各接触部分に効率的に供給できない。
特開2003−343564号公報 特開2003−120684号公報 実開平2−4026号公報
本発明のスラストころ軸受は、上述の様な事情に鑑み、潤滑性を良好にして、高速運転した場合でも、優れた耐久性を確保できる構造を実現すべく発明したものである。
本発明のスラストころ軸受は、前述の図9〜10に示した従来構造と同様に、円輪状の保持器と、複数本のころとを備える。
このうちの保持器は、それぞれが放射方向に長い略矩形のポケットを円周方向複数個所に形成している。
又、上記各ころは、これら各ポケット内に転動自在に設けられている。
そして、上記保持器の内径側から潤滑油を供給している。
特に、本発明のスラストころ軸受に於いては、この保持器の内径側部分のうち、上記各ポケットの内径側に存在する部分のみを、内径側に向かう程厚さが小さくなる様に(内周縁が尖った、断面くさび状に)形成している。そして、この部分を、上記潤滑油を上記各ポケット内に導く案内としている。
上述の様に構成する本発明の場合、保持器の内径側から供給される潤滑油が、各ポケット内に存在する各ころとこれら各ころが転がり接触する相手部材との接触部分に効果的に供給できる。この結果、軸受内の潤滑性を良好にでき、高速運転した場合でも十分な耐久性を確保できる。
上述した本発明は、請求項2に記載した様に、保持器を合成樹脂製とした場合に、より優れた効果を得られる。即ち、前述した様に、保持器を合成樹脂製とした場合、スラストころ軸受の軽量化及び低コスト化が図れる反面、高速運転に於ける耐久性を確保しにくかったが、本発明を適用する事により、軸受内の潤滑性を良好にでき、この軸受内の温度上昇を抑える事ができる。この為、合成樹脂製の保持器を使用したスラストころ軸受でも、高速運転時に於ける耐久性を十分に確保できる。
又、本発明を実施する為により好ましくは、請求項3に記載した様に、保持器の外径側部分のうちで各ポケットの外径側に存在する部分(外径側リム部)の厚さを、この外径側部分のうちでこれら各ポケットから円周方向に外れた部分の厚さよりも小さくする。
この様に構成すれば、各ころとこれら各ころが転がり接触する相手部材との接触部分に入り込んだ潤滑油が、保持器の外径側から排出され易くなる為、軸受内を通過する潤滑油の流量をより多くして、この軸受内の潤滑性をより良好にできる。
図1〜2は、請求項1、2に対応する、本発明の実施例1を示している。尚、本発明の特徴は、軸受内の潤滑性を良好にすべく、保持器3aの形状を工夫する点にある。具体的には、この保持器3aの内径側から供給される潤滑油を、各ポケット5内に設けた各ころ2の転動面とレース4a、4bのそれぞれのレース面8a、8bとの各接触部分に供給し易くする為に、上記保持器3aの内径側部分の形状を工夫した点にある。その他の構造及び作用は、前述の図9〜10に示した従来構造と同様であるから、同等部分に関する説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本実施例の特徴部分を中心に説明する。
本実施例のスラストころ軸受1aの場合、上記保持器3aを合成樹脂製としている。又、この保持器3aの内径側部分のうち、この保持器3aの円周方向に関して各ポケット5の内径側に存在する部分のみを、内径側に向かう程厚さを小さくしている。即ち、この保持器3aの内径側部分のうち、上記各ポケット5と円周方向に関して同じ位置に存在する部分のみ、この保持器3aの内径側部分の径方向に関して厚さを変化させ、他の部分は径方向に関して厚さを変化させていない。この為に、上記各ポケット5の内径側に存在し、これら各ポケット5の円周方向に関する幅と同じ大きさの幅を有する部分の両側面を、内径側に向かう程互いに近付く方向に傾斜したテーパ面9、9としている。そして、これら各テーパ面9、9を、上記保持器3aの内径側から供給される潤滑油を上記各ポケット5内に導く為の案内としている。尚、この様にテーパ面9、9を形成するのは、上記保持器3aを射出成形により形成する際に使用する金型の形状を工夫する事により、容易に行なえる。
上述の様に構成する本実施例のスラストころ軸受1aの場合、上記保持器3aの内径側から供給される潤滑油が、この保持器3aの内径側部分のうち、上記各テーパ面9、9を形成した部分を集中して流れる。即ち、この保持器3aの内径側部分のうち、上記各テーパ面9、9を形成していない部分では、潤滑油がこの保持器3aの両側面とレース4a、4bとの内側面との各隙間に入り込みにくい。これに対して、この保持器3aの内径側部分のうち、上記各テーパ面9、9を形成した部分では、潤滑油がこの保持器3aの両側面とレース4a、4bとの内側面との各隙間に入り込み易い。この為、図2に矢印で示す様に、潤滑油が、上記保持器3aの内径側部分のうち、上記各テーパ面9、9を形成した部分に集中する。
尚、上記各テーパ面9、9の基端部(各ポケット5側の端部)での、上記保持器3aの両側面と上記各レース4a、4bの内側面との各隙間の大きさは、前述の図9〜10に示した従来構造と変わらない。但し、本実施例の場合、上記保持器3aの内径側部分のうち、上記各ポケット5内の内径側に存在する部分の両側面を、上述の様に、テーパ面9、9としている為、この保持器3aの内径側に向かう程、上記隙間が大きくなる。この為、図1に矢印で示す様に、この保持器3aの内径側から供給される潤滑油が、この保持器3aの内周面に堰き止められる事なく、上記各テーパ面9、9に沿って上記各隙間内に効率良く取り込まれる。そして、これら各隙間から上記各接触部分に十分量の潤滑油が供給される。特に、スラストころ軸受1aの高速運転時には、潤滑油に作用する遠心力が大きくなり、これら各接触部分に、より多くの量の潤滑油が供給される。
この結果、上記各テーパ面9、9を形成した部分の外径側に存在する上記各ポケット5内に保持される各ころ2の転動面と上記各レース4a、4bのそれぞれのレース面8a、8bとの各接触部分により多くの量の潤滑油を供給できる。この様に本実施例の場合、上記各ころ2が保持する上記各ポケット5の内径側部分に多くの量の潤滑油を集中させて、この潤滑油を上記接触部分に効率良く供給する。従って、本実施例のスラストころ軸受1aの場合、この潤滑油の量が少なくても、この接触部分の潤滑性を確保し易い。又、上記スラストころ軸受1a内を径方向に通過する潤滑油は、上記保持器3aを冷却して、この保持器3aの温度上昇を抑える。従って、この保持器3aが合成樹脂製であっても、高速運転時に於けるこの保持器3aの耐久性を確保できる。又、この様に保持器3aを合成樹脂製とする事により、上記スラストころ軸受1aを組み込む装置の軽量化、低コスト化、更には高効率化を図れる。
図3〜4は、やはり請求項1、2に対応する、本発明の実施例2を示している。本実施例のスラストころ軸受1bの場合も、上述した実施例1と同様に、保持器3bの内径側部分のうち、各ポケット5の内径側に存在する部分の両側面のみを、内径側に向かう程互いに近付く方向に傾斜したテーパ面9a、9aとしている。特に、本実施例の場合には、これら各テーパ面9a、9aの円周方向に関する幅も、上記保持器3bの径方向に関して変化させている。即ち、この保持器3bの内径側部分のうち、上記各ポケット5の内径側に存在する部分の両側面に形成する上記各テーパ面9a、9aを、内径側に向かう程互いに近付く方向に傾斜させると共に、内径側に向かう程円周方向に関する幅が広くなる様にしている。
上述の様に構成する本実施例のスラストころ軸受1bの場合、図4に矢印で示す様に、各ころ2を保持した上記各ポケット5の内径側部分により多くの量の潤滑油を集めて、この潤滑油をこれら各ころ2との転動面とレース面8a、8bとの各接触部分に効率良く供給できる。特に、本実施例の場合には、上記各テーパ面9a、9aの幅を内径側に向かう程広くしている為、上述した実施例1の構造よりも、上記各ポケット5の内径側部分に多くの量の潤滑油を集める事ができる。その他の構造及び作用は上述の実施例1と同様である。
図5〜6は、請求項1〜3に対応する、本発明の実施例3を示している。本実施例のスラストころ軸受1cの場合、上述した実施例2と同様に、保持器3cの内径側部分のうち、各ポケット5の内径側に存在する部分の両側面のみを、テーパ面9a、9aとしている。更に本実施例の場合には、上記保持器3cの外径側部分(外径側リム部)のうち、上記各ポケット5の外径側に存在する部分の厚さを、他の部分よりも小さくしている。この為に、この部分の両側面にそれぞれ溝部10、10を形成している。尚、これら各溝部10、10は、上記保持器3cの内径側部分に形成した上記各テーパ面9a、9aと異なり、径方向に関して傾斜させていない。従って、上記各溝部10、10を形成した部分の厚さ及び幅は、径方向に関して変化しない。
又、本実施例の場合には、上記各ころ2の外径側端面7と上記各ポケット5の外径側内側面6との間にそれぞれ、これら各ころ2と同等の硬度を有する、例えば玉軸受用の玉等に使用される鋼球11を設けている。即ち、これら各ポケット5の外径側内側面6のうち、上記各ころ2の外径側端面7の中心に対向する部分にそれぞれ、これら各鋼球11の半部を埋め込み、これら各ころ2の外径側端面7の中心とこれら各鋼球11の外周面とを当接させている。この様に構成すれば、これら各ころ2の外径側端面7と当接するのは、この外径側端面7の中央部に対向する、これら各ころ2と同等の硬度を有する上記各鋼球11である為、これら各ころ2の転動に対する摩擦抵抗を低く抑えると共に、上記各ポケット5の外径側内側面6が摩耗する事を防止できる。
本実施例の場合、上述した様に、保持器3cの外径側部分のうち、上記各ポケット5の外径側に存在する部分の厚さを小さくしている為、これら各ポケット5の外径側内側面6の面積が小さくなる。スラストころ軸受1cの運転時には、上記各ポケット5内に保持する各ころ2に遠心力が作用する。従って、上述した様に、これら各ポケット5の外径側内側面6とこれら各ころ2の外径側端面7同士の間に上記各鋼球11を設けなければ、これら各ころ2の外径側端面7が上記各ポケット5の外径側内側面6に直接当接する。
特に、上記スラストころ軸受1cを高速で運転した場合には、上記各ころ2に作用する遠心力が大きくなり、これら各ころ2の外径側端面7が上記各ポケット5の外径側内側面6と強く当接する。そして、これら各ポケット5の外径側内側面6の摩耗量が多くなる。従って、本実施例の様に、これら各ポケット5の外径側内側面6の面積が小さいと、上記各ころ2の外径側端面7との当接による摩耗に伴って、これら各ポケット5の外径側に存在する部分で破損が生じ易くなる。
これに対して、上述した様に、上記各ポケット5の外径側内側面6と上記各ころ2の外径側端面7との間に上記各鋼球11を設ければ、これら各面6、7同士が直接当接する事がない為、上記外径側内側面6が摩耗する事を防止できる。この為、前記スラストころ軸受1cを高速運転した場合にも、上記各ポケット5の外径側に存在する部分で破損が生じる事を防止できる。尚、上記各鋼球11を設ける位置は、前述の特許文献1に記載された構造と同様に、各ころ2の端面中央部としても良い。又、前述の特許文献2に記載されている様に、各ポケット5の外径側内側面の全周に亙って、金属製のリングを埋め込む様にしても良い。
上述の様に構成する本実施例のスラストころ軸受1cの場合、上記保持器3cの外径側部分のうち、上記各ポケット5の外径側に存在する部分の両側面に溝部10、10を形成している為、上記各ころ2の転動面とレース面8a、8bとの各接触部分に流れ込んだ潤滑油が、これら各溝部10、10から排出される。従って、これら各接触部分に流れ込んだ潤滑油が排出され易くなる。本実施例の場合、この様に潤滑油が排出され易くなる分、上記各接触部分に潤滑油が流れ込み易くなる。この結果、これら各接触部分により多くの量の潤滑油を供給できる。この為、本実施例は、高速運転時の温度上昇を抑えるべく潤滑油の供給量を増やしたい場合等に適用する事が好ましい。その他の構造及び作用は、上述の実施例2と同様である。
図7〜8は、やはり請求項1〜3に対応する、本発明の実施例4を示している。本実施例のスラストころ軸受1dの場合にも、上述した実施例3と同様に、保持器3dの内径側部分のうち、各ポケット5の内径側に存在する部分の両側面のみをテーパ面9b、9bとしている。又、上記保持器3dの外径側部分のうちの、これら各ポケット5の外径側に存在する部分の両側面に溝部10a、10aを形成している。但し、本実施例の場合には、上記各テーパ面9b、9bとこれら各溝部10a、10aとを、それぞれ径方向に対し傾斜した、部分螺旋状に形成している。
即ち、上記各テーパ面9b、9bは、上記保持器3dの内径側に向かう程この保持器3dの回転方向(矢印αで示す様に図8の上方向)に向かう方向に湾曲させた形状としている。従って、この保持器3dの内径側部分の両側面に形成した上記各テーパ面9b、9bは、内径側に向かう程互いに近付く方向に傾斜していると共に、上記保持器3dの回転方向に向かう方向に湾曲している。一方、上記各溝部10a、10aは、上記各テーパ面9b、9bとは逆方向に傾斜した、部分螺旋状としている。即ち、これら各溝部10a、10aは、外径側に向かう程上記保持器3eの回転方向とは逆方向(図8の下方向)に向かう方向に湾曲した形状としている。
又、本実施例の場合、上記保持器3dの厚さ方向中間部に、各ころ2と同等の硬度を有する金属製のリング12の外径側半部を、全周に亙って埋め込んでいる。そして、このリング12の一部の内周縁部を、上記各ポケット5の外径側内側面6の中間部に露出させている。この為、上記各ころ2の外径側端面7は、上記リング12の一部と当接する。勿論、上述した実施例3と同様に、鋼球を埋め込んでも良い。
上述の様に構成する本実施例のスラストころ軸受1dの場合、上記各テーパ面9b、9b及び各溝部10a、10aを、それぞれ部分螺旋状に形成している為、上記保持器3dの回転時にポンピング作用が働いて、上記各ころ2の転動面とレース面8a、8bとの各接触部分への潤滑油の給排出が効率良く行なわれる。即ち、上記保持器3dが図8の上方に回転した場合、矢印で示す様に、潤滑油が上記各テーパ面9b、9bに沿って上記各接触部分に流れ込む。又、これら各接触部分に流れ込んだ潤滑油が上記各凹溝10a、10aに沿って排出される。本実施例の場合、上記各テーパ面9b、9b及びこれら各凹溝10a、10aを、上述の様に、それぞれ部分螺旋状に形成している為、上記保持器3dの回転に伴い、例えば、流体軸受に使用されるスパイラルグルーブ軸受と同様の原理により、ポンピング作用が働く。この為、上記各テーパ面9b、9b及び各凹溝10a、10aに沿って行なわれる潤滑油の給排が、効率良く行なわれる。この結果、上述の実施例3と比べて、上記各接触部分により多くの量の潤滑油を送り込む事ができる。
尚、本実施例の構造は、上記保持器3dの回転方向が一定の場合にのみ、上述した効果が得られる。この為、本実施例は、スラストころ軸受1dの回転方向が限定される場合や、両方に回転する場合でも、一方の回転に対して潤滑性を向上させたい場合に適用する事が好ましい。その他の構造及び作用は、上述の実施例3と同様である。
尚、上述した各実施例の場合、保持器3a〜3dの内径側部分にテーパ面9、9a、9bを形成しているが、これら各テーパ面9、9a、9bに代えて湾曲面としても良い。即ち、本発明の場合、上記保持器3a〜3dの内径側部分のうち、各ポケット5の内径側に存在する部分のみを、内径側に向かう程厚さが小さくなる様にできれば良い。この為、この内径側に存在する部分の両側面のみを湾曲させる事により、この部分の厚さを内径側に向かう程小さくする事もできる。
本発明の実施例1を示す部分断面図。 ころと保持器のみを取り出して、軸方向から見た部分側面図。 本発明の実施例2を示す部分断面図。 ころと保持器のみを取り出して、軸方向から見た部分側面図。 本発明の実施例3を示す部分断面図。 ころと保持器のみを取り出して、軸方向から見た部分側面図。 本発明の実施例4を示す部分断面図。 ころと保持器のみを取り出して、軸方向から見た部分側面図。 従来構造の1例を示す部分断面図。 ころと保持器のみを取り出して、軸方向から見た部分側面図。
符号の説明
1、1a〜1d スラストころ軸受
2 ころ
3、3a〜3d 保持器
4a、4b レース
5 ポケット
6 内側面
7 端面
8a、8b レース面
9、9a、9b テーパ面
10、10a 溝部
11 鋼球
12 リング

Claims (3)

  1. それぞれが放射方向に長い略矩形のポケットを円周方向複数個所に形成した円輪状の保持器と、これら各ポケット内に転動自在に設けられた複数本のころとを備え、この保持器の内径側から潤滑油を供給するスラストころ軸受に於いて、この保持器の内径側部分のうち、上記各ポケットの内径側に存在する部分のみを、内径側に向かう程厚さが小さくなる様に形成して、上記潤滑油をこれら各ポケット内に導く為の案内とした事を特徴とするスラストころ軸受。
  2. 保持器が合成樹脂製である、請求項1に記載したスラストころ軸受。
  3. 保持器の外径側部分のうちで各ポケットの外径側に存在する部分の厚さを、この外径側部分のうちでこれら各ポケットから円周方向に外れた部分の厚さよりも小さくした、請求項1〜2の何れかに記載したスラストころ軸受。
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