JP2006238530A - スピンドル装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
熱膨張の影響を回避して高精度な加工を行うのに適したスピンドル装置を提供する。
【解決手段】
モータケース104aに、2列の磁石104b、104bに対向するようにして配置された2つのコイル104c、104cを有するので、1列の磁石及び1つのコイルからなる場合に比べ、全体的に同レベルのトルクで主軸102を回転駆動させることができるにもかかわらず、発熱体となる磁石104b、104bを分散配置させることで、主軸102において局所的に高温となる部位が生じることを回避している。又、主軸102に設けた磁石104b、104bの面積が増大することで、磁石104b、104bに発熱が生じても、1列に磁石を配置した場合に比べ、より高い冷却効果を得ることができる。
【選択図】 図5

Description

本発明は、スピンドル装置に関し、特に高精度な加工を行える工作機械に用いられると好適なモータビルトイン型のスピンドル装置に関する。
従来、この種のスピンドル装置としては、その主軸の回転を、玉軸受あるいはころ軸受に代表される転がり軸受や、油又は空気に代表される作動流体の静圧を利用した静圧軸受で支承しているものが一般的であった。
ここで、転がり軸受を用いたスピンドル装置は、ボールあるいはコロが内外輪の間を転走するので、低速回転においては特に問題が生じないものの、高速回転においては振動や摩擦熱が発生し、スピンドル主軸の振れ回りや発熱等の問題が生じていた。また、内外輪の転走面を潤滑する必要があり、ランニングコストが嵩む他、メインテナンスに手間がかかるという問題点もあった。
一方、静圧軸受は圧力伝達媒体の静圧によって軸を支承するので、これを用いたモータビルトイン型のスピンドル装置(特許文献1参照)は、転がり軸受を用いたものに比べ高い回転精度を期待できるという利点がある。従って静圧軸受は、光学素子の光学面を成形する光学素子用成形金型の転写光学面を加工する加工機に用いると好適である。
特開平10−19043号公報
ところで、静圧軸受を用いたスピンドル装置を用いて高精度な加工を実現する加工機において、その加工効率を向上させるにはスピンドル主軸の回転数を高くすれば良い。しかし、スピンドル主軸を高速で回転させると、静圧軸受における静圧スキマ(静圧パッドとスピンドル主軸との間の微小スキマ)に供給した圧力伝達媒体の剪断が生じ、それにより発熱が生じるという問題がある。また圧力伝達媒体の剪断抵抗も生じるため、スピンドル主軸を回転駆動するモータの駆動力が、それに消費されてしまうという特徴がある。特に高速回転を要求される用途に用いられるモータビルトイン型スピンドル装置においては、ある一定速度に達した後は、スピンドル主軸を回転駆動するモータへの電力供給を増大させても、回転速度が増加する代わりに、増大した電力のほとんどが熱に変換されてしまい、それにより局所的にスピンドル主軸の温度が上がって無視できない変形が生じ、かじりや焼き付きなどの破損を招く恐れがある。つまり、静圧軸受によって支持され高速回転を行うスピンドル主軸において重要な課題の一つは、効率的な冷却を如何に実現するかである。
ここで、静圧軸受の静圧パッドなどは、冷却水などを通す配管などを設けて冷却することができる。また、モータについても、そのコア側はエアを吹き付けたり、冷却水を循環したりして冷却を行うことができる。例えば、特許文献1に示すようなタイプのモータでは、モータのコアが接するハウジング内部にウォータジャケットを設け、ここに冷却水を通して水冷することはできる。しかしながら、スピンドル主軸は、静圧軸受によってハウジングに対して非接触で支持されているので、接触による効果的な放熱が期待できないことから、電力供給によってモータのコイルや磁石の発熱によりスピンドル主軸の温度も増大した場合、その冷却をハウジング側からの冷却のみに頼ることは困難である。
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、冷却の問題を解消して迅速且つ高精度な加工を行うのに適したスピンドル装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載のスピンドル装置は、ハウジングと主軸とを備えたモータビルトイン型のスピンドル装置において、
前記ハウジングに対して前記主軸を回転自在に支持する静圧軸受と、
前記主軸に、その周方向に交互に異極が並ぶように配置された2列の磁石と、
前記ハウジングに、前記磁石にそれぞれ対向するようにして配置された2対のコイルとを有することを特徴とする。
本発明のスピンドル装置によれば、前記主軸に、その周方向に交互に異極が並ぶように配置された2列の磁石と、前記ハウジングに、前記磁石にそれぞれ対向するようにして配置された2対のコイルとを有するので、1列の磁石及び1つのコイルからなる場合に比べ、全体的に同レベルのトルクで前記主軸を回転駆動させることができるにもかかわらず、発熱体となるコイルや磁石を分散配置させることで、前記主軸において局所的に高温となる部位が生じることを回避している。又、前記主軸に設けた磁石の面積が増大することで、前記磁石に発熱が生じても、1列に磁石を配置した場合に比べ、より高い冷却効果を得ることができる。
請求項2に記載のスピンドル装置は、ハウジングと主軸とを備えたモータビルトイン型のスピンドル装置において、
前記ハウジングに対して前記主軸を回転自在に支持する静圧軸受と、
前記主軸に配置された2列の導体と、
前記ハウジングに、前記導体にそれぞれ対向するようにして配置された2対のコイルとを有することを特徴とする。
本発明のスピンドル装置によれば、前記主軸に配置された2列の導体(例えば銅やアルミ等)と、前記ハウジングに、前記導体にそれぞれ対向するようにして配置された2対のコイルとを有するので、1列の導体及び1つのコイルからなる場合に比べ、全体的に同レベルのトルクで前記主軸を回転駆動させることができるにもかかわらず、発熱体となるコイルや導体を分散配置させることで、前記主軸において局所的に高温となる部位が生じることを回避している。又、前記主軸に設けた導体の面積が増大することで、前記導体に発熱が生じても、1列に磁石を配置した場合に比べ、より高い冷却効果を得ることができる。なお、導体とコイルとを用いるモータとしては、誘導モータがある。
請求項3に記載のスピンドル装置は、請求項1又は2に記載の発明において、前記2列の磁石は、異極が並ぶ位相を周方向に互いにずらしていることを特徴とする。
ところで、前記主軸の高速回転を実現するには、その慣性モーメントを極力小さく抑えることが望ましい。このためには、前記主軸の外径を極力抑えることが望ましいといえる。ところが、モータビルトイン型のスピンドル装置において、スピンドル主軸の外径を小さくすると、その外周に配置する磁石及びコアの数が制限されるという問題がある。例えば、10000min-1以上の回転速度のスピンドル装置では、周方向に配置する磁石は一般的には4極または8極に制限される。このように磁極数が少ないと、1回転あたり4回又は8回のトルク変動が生じることとなり、それにより振動が発生して主軸に取り付けられたワークや工具が回転角に同期して変位するため、加工面にうねりなどを生じて面精度が低下する恐れがある。これを回避するには、主軸を太くして多極化を図る必要があり、それにより慣性モーメントの増大を招き、高速回転の実現が困難である一因となっている。
本発明によれば、前記2列の磁石が、異極が並ぶ位相を周方向に互いにずらしているので、例えば4極の磁石配置であった場合でも、実質的に8極の磁石配置と同等のトルク変動に抑えることができる。これにより、前記主軸の小径化を図り高速回転を実現しながらも、トルクムラが大幅に抑制されて回転精度が向上し、高い加工精度を得ることができる。なお、2列の磁石の位相は、互いに1/2ピッチでずれていると、トルク変動が効果的に抑制されるので好ましい。
請求項4に記載のスピンドル装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記2対のコイルはそれぞれコアを巻回しており、前記2対のコアは、その位相配置を周方向に互いにずらしていることを特徴とするので、上述と同様に前記主軸の小径化を図り高速回転を実現しながらも、トルクムラが大幅に抑制されて回転精度が向上し、高い加工精度を得ることができる。なお、2列のコアの位相は、互いに1/2ピッチでずれていると、トルク変動が効果的に抑制されるので好ましい。
請求項5に記載のスピンドル装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記2列の磁石は、スキュウの傾き方向を互いに逆方向としていることを特徴とする。
少ない磁極数でありながらトルク変動を抑えるために、磁石にスキュウを与える技術が知られている。スキュウとは、コイルのコアや磁石を回転軸線方向に対して斜めに配置することをいい、一般的には傾き角度は5〜15度程度であるが、ステータ側のコイルのコアやロータ側の磁石に対して、回転に伴い磁極がコアを断続的に横切って磁界が切り替わるのではなく、コアに対して1つの磁極が部分的に(一端から他端へと連続的に)切り変わることで滑らかにトルクが働くようにする作用効果がある。ところが、1列の磁石において一方向にスキュウを与えた場合、それにより主軸にスラスト分力が発生し、加工時に軸線方向に変位するという恐れがある。これを回避するために、コアと磁石の隙間を大きくしたりして磁界を広がらせることで、このスラスト分力を低減させることはできるが、かかる手法ではモータの駆動力も弱まるため主軸の高速回転の実現が難しくなる。一方、スラスト力を受ける静圧軸受の面積を増大して剛性を高めることもできるが、それにより慣性モーメントの増大を招き、同様に高速回転の実現が困難となる。
本発明によれば、前記2列の磁石は、スキュウの傾き方向を互いに逆方向としているので、前記主軸に作用するスラスト分力を釣り合わせることができ、それにより前記主軸の小径化を図り高速回転を実現しながらも、トルクムラが大幅に抑制されて回転精度が向上し、高い加工精度を得ることができる。なお、前記2列の磁石のスキュウによる傾き角度は、軸線に平行な角度を0度として絶対値が等しく且つ正負が逆になる値とすることが望ましい。
請求項6に記載のスピンドル装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記2対のコイルはそれぞれコアを巻回しており、前記2対のコアは、スキュウの傾き方向を互いに逆方向としているので、上述と同様に前記主軸に作用するスラスト分力を釣り合わせることができ、それにより前記主軸の小径化を図り高速回転を実現しながらも、トルクムラが大幅に抑制されて回転精度が向上し、高い加工精度を得ることができる。なお、前記2対のコアのスキュウによる傾き角度は、軸線に平行な角度を0度として絶対値が等しく且つ正負が逆になる値とすることが望ましい。
請求項7に記載のスピンドル装置は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記ハウジングは、外部から冷却媒体を供給される冷却ジャケットを有することを特徴とするので、冷却効果を高めることができる。冷却媒体としては、冷却水などが考えられるが、それに限らず液体、気体などを用いることができる。
請求項8に記載のスピンドル装置は、請求項7に記載の発明において、前記静圧軸受と前記主軸との間に圧力伝達媒体が供給されることによって、前記主軸は前記ハウジングに対して回転自在に支持されることを特徴とする。
本発明によれば、冷却の問題を解消して迅速且つ高精度な加工を行うのに適したスピンドル装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して説明する。本発明の実施の形態にかかるモータビルトイン型のスピンドル装置は、図1に示す2軸旋削精密加工機に用いることができる。図1において、不図示の制御装置によってX軸方向に駆動されるX軸テーブル2が、定盤1上に配置されている。X軸テーブル2上には、ダイヤモンド工具3が工具取り付け部7を介して取り付けられている。又、不図示の制御装置によってZ軸方向に駆動されるZ軸テーブル4が、定盤1上に配置されている。Z軸テーブル4上には、駆動制御機構6と、駆動制御機構6により制御されるスピンドル装置SDが設けられている。スピンドル装置SDの主軸は、例えば光学素子用成形金型の被加工物Mを取り付け可能となっている。かかる2軸旋削精密加工機を用いて、光学素子用成形金型の転写光学面を高精度に切削できる。
更に、本発明の実施の形態にかかるモータビルトイン型のスピンドル装置は、図2に示す旋削精密加工機に用いることができる。図2において、定盤11上にX軸方向に駆動されるX軸テーブル12とZ軸方向に駆動されるZ軸テーブル14が取り付けられている。X軸テーブル12上には、工具13を旋回することが出来る旋回軸(B軸)18が取り付けられており、その旋回軸18の上には、工具取り付け部17が取り付けられている。Z軸テーブル14上には、駆動制御機構16と、駆動制御機構16により制御されるスピンドル装置SDが設けられている。スピンドル装置SDの主軸は、例えば光学素子用成形金型の被加工物Mを取り付け可能となっている。かかる旋削精密加工機を用いて、光学素子用成形金型の転写光学面を高精度に切削できる。
更に、本発明の実施の形態にかかるモータビルトイン型のスピンドル装置は、図3に示す、直交3軸の可動ステ一ジと、ダイヤモンド工具を回転させる回転機構とを有する超精密加工機に用いることができる。図3において、定盤21上にX軸方向に駆動するX軸テーブル22とZ軸方向に駆動するZ軸テーブル24が取り付けられている。X軸テーブル22上には、Y軸方向に駆動するY軸ステージ26が取り付けられ、Y軸ステージ26上にスピンドル機構SDが配置され、その主軸が、ダイヤモンド工具23を回転させるための回転部27に連結されている。その回転軸はZ軸と平行である。また、Z軸テーブル24上には、被加工物Mが固定されている。
更に、本発明の実施の形態にかかるモータビルトイン型のスピンドル装置は、図4に示すミーリング加工機に用いることができる。図4において、定盤41上にX軸方向に駆動するX軸ステージ42とZ軸方向に駆動するZ軸ステージ44が取り付けられている。X軸テーブル42上には、Y軸方向に駆動するY軸ステージ46が取り付けられ、Y軸ステージ46にはダイヤモンド工具43を回転させるスピンドル装置SDがアーム45により支持されている。アーム45内に組み込まれたスピンドル装置SDの主軸の端面に、回転中心から半径方向に例えば15mm離れた位置に工具刃先がくるように取り付け、Z軸ステージ44上に固定された被加工物Mに対して、Y軸方向に切り込みを与え、X軸方向にダイヤモンド工具43を送って切削加工を行う。
図5は、本実施の形態にかかるモータビルトイン型のスピンドル装置の断面図である。図5のスピンドル装置SDは、例えば図4のミーリング加工機に組み込むことができるが、それに限られず、図1〜3の加工機或いはそれ以外の加工機にも組み込むことができるのはいうまでもない。
図5において、中空円筒状のハウジング101内に、円筒状の主軸102が嵌入されている。両者のスキマは10μm程度である。主軸102は、図5で左端近傍にフランジ102aを有し、中央に貫通孔102bを有している。ハウジング101は、フランジ102aに対して右方に配置された主ハウジング101Aと、フランジ102aに対して左方に配置された副ハウジング101Bと、フランジ102aの半径方向外方において主ハウジング101Aと副ハウジング101Cを連結してなるリングブロック101Cとからなる。
主ハウジング101Aは、一端が外周面に開口し外部の流体源である正圧ポンプP+に接続された供給通路101aを有している。供給通路101aの他端は、主ハウジング101Aの内周面において、軸線方向に並んで3列で且つ周方向に120度等間隔で主軸102の外周面に対向して開口している(これらを吐出口A,B、Cという)と共に、主ハウジング101Aの端面において、フランジ102aに対向して、周方向に120度等間隔で開口している(これを吐出口Dという)。供給通路101aの各吐出口においては、小穴(供給通路の最小断面積を規定する)のあいた絞り部材103が嵌合されている。供給通路101aの吐出口A,B、Cに接続するようにして、主ハウジング101Aの内周面には周溝101cが形成されている。本実施の形態においては、主ハウジング101Aの内周面全体が静圧で満たされ、ラジアル用の静圧軸受として機能する。尚、主ハウジング101Aは、その内部に、冷却水を流す冷却ジャケット101fを有しているが、これは供給通路101aとは非接続状態にある。
副ハウジング101Bは、一端が外周面に開口し外部の流体源である正圧ポンプP+に接続された供給通路101bを有している。供給通路101bの他端は、副ハウジング101Bの内周面において、軸線方向に並んで2列で且つ周方向に120度等間隔で主軸102の外周面に対向して開口している(これらを吐出口E,F)と共に、副ハウジング101Bの端面において、フランジ102aに対向して、周方向に120度等間隔で開口している(これを吐出口Gという)。供給通路101bの各吐出口においては、小穴のあいた絞り部材103が嵌合されている。供給通路101bの吐出口E,Fに接続するようにして、副ハウジング101Bの内周面には周溝101dが形成されている。本実施の形態においては、副ハウジング101Bの内周面全体が静圧で満たされ、ラジアル用の静圧軸受として機能する。
リングハウジング101Cには、その内周と主軸102のフランジ102aとの間のスキマから、外周に抜ける排気口101kが設けられている。
主ハウジング101Aに隣接して、駆動手段であるモータ104が設けられている。モータ104は、ハウジングの一部を構成するモータケース104aと、周方向に異極が交互になる(N極、S極、N極、S極、・・・)ように主軸102に取り付けられた4極2列(軸線方向に並んだ)の磁石104b、104bと、磁石104b、104bの半径方向外方であってモータケース104a内に配置された2対のコイル104c、104cと、コイル104c、104cにそれぞれ巻回されたコア104d、104dとからなる。コイル104c、104cに外部から電力を供給することによって、公知の態様で主軸102を回転駆動することができる。なお、このモータケース104aには、冷却水が通る孔104eが設けられ、ここを通過する冷却水によりコイル104c、104cの発熱に起因するモータケース104aの温度上昇を抑えている。
図5で左列の磁石104bはスキュウを与えられ、軸線に対して+θ度傾けられており、図5で右列の磁石104bもスキュウを与えられているが、軸線に対して−θ度傾けられている。又、2列の磁石104b、104bは、位相配置が周方向に互いに1/2ピッチずれている。
主軸102の右端には、縮径円筒部102dが同軸に形成されている。縮径円筒部102dは、その外周に一体的に回転するエンコーダ板105bを取り付けている。エンコーダ105aは、エンコーダ板105bの回転角度を検出し、それにより主軸102の回転角度を求めることができる。
縮径円筒部102dの先端は、吸引ケース106に挿入されている。吸引ケース106は、ハウジング101に取り付けられており、その開口端には、縮径円筒部102dに対向して円管多孔質状の静圧パッド106aを配置している。静圧パッド106aの背面側で吸引ケース106に設けられた供給通路106cは、正圧ポンプP+に接続され、これを介して縮径円筒部102dの外周面と、静圧パッド106aの内周面との間に加圧された空気を供給することで、吸引ケース106と縮径円筒部106dとの接触が回避される。吸引ケース106の内部空間は、主軸102の貫通孔102b及び排出口106bに連通しており、排出口106bに接続された負圧ポンプP−により、貫通孔102b内の空気が吸引されるようになっている。
主軸102の左端は平坦面となっており、またボルト孔102gが設けられているため、これを利用して、工具Tを保持するホルダHDを取り付けることができる。ホルダHDの取り付け面を主軸102に押し当てた状態で、負圧ポンプP−を駆動すると、吸引ケース106を介して貫通孔102b内の空気が吸引されて負圧になるので、大気圧との差圧によりホルダHDは主軸102に対して固定される。かかる段階で主軸102を回転しながら、ホルダHDの芯出しを行う。ホルダHDの芯出しが行われた後、ボルトBTをボルト孔102gに螺合することでホルダHDを主軸102に固定する。ホルダHDをボルトBTを用いて主軸102に固定すれば、主軸102を例えば10000min-1以上の高速で回転駆動させた場合でも、遠心力などにより脱落やずれを招くことはない。
図5のスピンドル装置SDを、図4のミーリング加工機に組み込んだ状態で動作させたとき、正圧ポンプP+から供給通路101a、101bの吐出口A,B、C、E,Fを介して主ハウジング101A及び副ハウジング101Bの内部に供給される空気によって、主軸102は、主ハウジング101A及び副ハウジング101Bに対して非接触状態で支持されるため、工具Tから受けるラジアル方向の荷重を受けることができる。
又、正圧ポンプP+から供給通路101a、101bの吐出口D、Gを介して主ハウジング101A及び副ハウジング101Bの内部に供給される空気によって、主軸102のフランジ102aが主ハウジング101A及び副ハウジング101Bに対して非接触状態で支持されるため、工具Tから受けるスラスト方向の荷重を受けることができる。即ち、フランジ102aの両側面と、これに対向する主ハウジング101A及び副ハウジング101Bの端面とでスラスト用の静圧軸受を構成する。
かかる状態でモータ104を駆動すると、主軸102が回転する。本実施の形態によれば、モータケース104aに、2列の磁石104b、104bにそれぞれ対向するようにして配置された2対のコイル104c、104cを有するので、1列の磁石及び1つのコイルからなる場合に比べ、全体的に同レベルのトルクで主軸102を回転駆動させることができるにもかかわらず、発熱体となる磁石104b、104bを分散配置させることで、主軸102において局所的に高温となる部位が生じることを回避している。又、主軸102に設けた磁石104b、104bの面積が増大することで、磁石104b、104bに発熱が生じても、1列に磁石を配置した場合に比べ、より高い冷却効果を得ることができる。加えて、モータケース104aの孔104eに供給された冷却水により、コイル104c、104cの発熱によるモータケース104aの温度上昇を抑えることができる。
特に、2列の磁石104b、104bが、異極が並ぶ位相を周方向に互いにずらしているので、4極の磁石配置でありながら、実質的に8極の磁石配置と同等のトルク変動に抑えることができる。これにより、主軸102の小径化を図り高速回転を実現しながらも、トルクムラが大幅に抑制されて回転精度が向上し、高い加工精度を得ることができる。加えて、2列の磁石104b、104bは、スキュウの傾き方向を互いに逆方向(+θ度、−θ度)としているので、主軸102に作用するスラスト分力を抑えつつ主軸102の小径化を図り高速回転を実現しながらも、トルクムラが大幅に抑制されて回転精度が向上し、高い加工精度を得ることができる。
更に、回転駆動時にモータ104からの伝熱等で主軸102が加熱されたとしても、冷却ジャケット101fに供給される冷却水により冷却され、その熱膨張が抑えられるようになっている。又、例え回転する主軸102と縮径円筒部102dとが偏心していたような場合にも、静圧パッド106aから吐出される空気の静圧を用いて、縮径円筒部102dと吸引ケース106とのスキマは維持され、互いに接触することが防止される。
このとき、主ハウジング101Aにおいて供給通路101aの吐出口を周溝101cにつなげており、副ハウジング101Bにおいて供給通路101bの吐出口を周溝101dにつなげているので、例え主ハウジング101A、副ハウジング101B又は主軸102の断面が真円でない場合でも、周溝101c、101dが供給通路101a、101bから供給される空気が全周にわたりほぼ均一な圧力の一時的な蓄積領域となって、回転に伴う静圧スキマと吐出口との位置関係によらず、主軸102の外周面に付与される圧力変動を抑えて、その振動を抑制できる。
尚、供給通路101aから供給された空気は、主軸102と主ハウジング101Aとの間を通過し、モータ104の間のスキマから外部へ流出する。又、供給通路101bから供給された空気は、主軸102と副ハウジング101Bとの間を通過し、ホルダHDの近傍から外部へ流出する。従って、内周に開放した軸線方向に並んだ供給通路101aの吐出口A、B、Cと、供給通路101bの吐出口E,Fの間に排出路を設けていないことから、供給された流体は、主軸102の外周面とハウジング101A、101Bの内周面との間を通って外部へと流出するのみであるので、それにより静圧を増大させて支持剛性を高めることができる。また、発熱による高温限界が同じであれば、本発明では従来よりも径の大きな、静圧面積の大きなローターシャフトが使用できるので、かかる場合剛性が高くでき、回転精度をより向上できる。
比較例として、主軸外径φ40mm、フランジ外径φ85mmのスピンドル装置を、単一のコア付きサーボモータで駆動し、22℃のほぼ室温の冷却水をハウジングとモータケースに流して水冷し35000min-1で回転させたところ、冷却水の温度は45℃まで上昇した。これに対し、実施例として同じ静圧構造のスピンドル装置に同じモータを2つ並べ、お互いにコアと磁石は同じ位置で取り付け、モータケースに並行して冷却水が供給されるように配管を分岐して接続した。かかる状態で、両モータに同相の電流を流し同じ35000min-1で駆動したところ、冷却水温度は34℃となり、比較例に比べ11℃低下し冷却効果が確認できた。
更に、上記実施例の2連モータによるスピンドル装置で、スピンドルヘッドの回転精度を測定したところ、径方向で50nmPP(PP:Peak to Peak)、軸方向で約10nmPPであった。この状態で、主軸に取り付けた2つの4極の永久磁石を、極間角度の半分の角度(1/2ピッチ)だけずらして、90度位相の異なる位相の電流をコイルに供給してそれぞれの回転磁界を整合させ、見かけ上8極モータとして駆動したところ、回転精度は径方向30nmPP、軸方向10nmPPとなり、更に高精度な回転が行えることがわかった。
更に、主軸に取り付けた磁石に同じ方向のスキュウ(傾き角度+10度、+10度)を与え、同様に35000min-1で駆動したところ、回転精度は径方向25nmPP、軸方向30nmPPとなった。これに対し、主軸に取り付けた磁石に、異なる方向のスキュウ(傾き角度+10度、−10度)を与え、かつ前述したように磁極の位相を1/2ピッチずらして取り付け、同様に35000min-1で駆動したところ、回転精度は径方向21nmPP、軸方向8nmPPとなった。以上の比較結果より、軸方向精度を落とすことなく、径方向回転精度を2倍以上に向上できた。この時、発熱による温度上昇は、単一モータのスピンドル装置に比較して半分となった。
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、上述した実施の形態では、2列の磁石104b、104bにおいて、互いに位相配置をずらし、スキュウの傾き角度を逆としているが、2つのコイル104c、104cのコアについて、位相配置をずらし、スキュウの傾き角度を逆としても良いし、コア及び磁石にスキュウ(ただし対向し合うコアと磁石のスキュウ角度は異なる)を与えても良い。
更に、スピンドル装置を駆動するモータの種類は問わない。コア付き、コア無しのACサーボモータであっても良いし、上述した磁石の代わりに導体を用いた誘導モータであっても良い。特に誘導モータは、ACサーボモータと比較してスベリによる損失があるので発熱しやすく、本発明の効果はより顕著である。
2軸旋削精密加工機の斜視図である。 旋削精密加工機の斜視図である。 直交3軸の可動ステ一ジと、ダイヤモンド工具を回転させる回転機構とを有する超精密加工機の斜視図である。 ミーリング加工機の斜視図である。 本実施の形態のスピンドル装置の断面図である。
符号の説明
1 定盤
2 X軸テーブル
3 ダイヤモンド工具
4 Z軸テーブル
6 駆動制御機構
7 工具取り付け部
11 定盤
12 X軸テーブル
13 工具
14 Z軸テーブル
16 駆動制御機構
17 工具取り付け部
18 旋回軸
21 定盤
22 X軸テーブル
23 ダイヤモンド工具
24 Z軸テーブル
26 Y軸ステージ
27 回転部
41 定盤
42 X軸ステージ
43 ダイヤモンド工具
44 Y軸ステージ
45 アーム
46 Y軸ステージ
47 アーム
47 回転機構
101 ハウジング
101A 主ハウジング
101B 副ハウジング
101C リングハウジング
101a 供給通路
101b 供給通路
101c 周溝
101d 周溝
101f 冷却ジャケット
102 主軸
102 縮径円筒部
102a フランジ
102b 貫通孔
102c 排気口
102d 縮径円筒部
103 部材
104 モータ
105 エンコーダ
106 吸引ケース
106a 静圧パッド
106b 排出口
P+ 正圧ポンプ
P− 負圧ポンプ
S 主軸
SD スピンドル装置
T 工具

Claims (8)

  1. ハウジングと主軸とを備えたモータビルトイン型のスピンドル装置において、
    前記ハウジングに対して前記主軸を回転自在に支持する静圧軸受と、
    前記主軸に、その周方向に交互に異極が並ぶように配置された2列の磁石と、
    前記ハウジングに、前記磁石にそれぞれ対向するようにして配置された2対のコイルとを有することを特徴とするスピンドル装置。
  2. ハウジングと主軸とを備えたモータビルトイン型のスピンドル装置において、
    前記ハウジングに対して前記主軸を回転自在に支持する静圧軸受と、
    前記主軸に配置された2列の導体と、
    前記ハウジングに、前記導体にそれぞれ対向するようにして配置された2対のコイルとを有することを特徴とするスピンドル装置。
  3. 前記2列の磁石は、異極が並ぶ位相を周方向に互いにずらしていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピンドル装置。
  4. 前記2対のコイルはそれぞれコアを巻回しており、前記2対のコアは、その位相配置を周方向に互いにずらしていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスピンドル装置。
  5. 前記2列の磁石は、スキュウの傾き方向を互いに逆方向としていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のスピンドル装置。
  6. 前記2対のコイルはそれぞれコアを巻回しており、前記2対のコアは、スキュウの傾き方向を互いに逆方向としていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスピンドル装置。
  7. 前記ハウジングは、外部から冷却媒体を供給される冷却ジャケットを有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のスピンドル装置。
  8. 前記静圧軸受と前記主軸との間に圧力伝達媒体が供給されることによって、前記主軸は前記ハウジングに対して回転自在に支持されることを特徴とする請求項7に記載のスピンドル装置。

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