JP2006237237A - 積層セラミックコンデンサ - Google Patents

積層セラミックコンデンサ Download PDF

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Abstract

【課題】誘電体層が2μmを下回る薄層体においても大きな比誘電率と、高い絶縁的信頼性を示し、X7R特性を満足する積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、Ba及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物(BT型結晶粒子)と、BT型結晶粒子のAサイトの一部がCaで置換されたペロブスカイト型チタン酸バリウム結晶粒子(BCT型結晶粒子)と、Mg及び希土類元素とを含有し、該Mg及び希土類元素の一部が前記BT型結晶粒子及び前記BCT型結晶粒子に固溶してなる誘電体層を具備した積層セラミックコンデンサであって、前記誘電体層1が、BT型結晶粒子311及びBCT型結晶粒子32を主結晶粒子とする第1層11と、BT型結晶粒子312を主結晶粒子とする第2層12の積層構造からなるとともに、前記第1層11のBT型結晶粒子311及びBCT型結晶粒子32の平均粒径が前記第2層12のBT型結晶粒子312の平均粒径よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、誘電体層が2μm以下の薄層に形成された誘電体磁器で構成される単位体積当たり容量の大きな積層セラミックコンデンサに関する。
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサの小型化、大容量化の要求が高まってきている。このような要求に応えるために、積層セラミックコンデンサにおいては、誘電体層を薄層化することにより静電容量を高めると共に、誘電体層の積層数を増やすことにより小型・高容量化が図られている。
そこで、薄層においても、負荷電界の増大による信頼性低下の抑制、十分な絶縁的寿命を実現する為に、積層セラミックコンデンサの誘電体層として、粒径のより小さい誘電体材料が使用されるようになってきた。これにより、信頼性を向上させることができている。
しかしながら、従来使用されてきたBaTiOにおいては、粒径を小さくすると、比誘電率が小さくなるという問題があった。すなわち、粒径を小さくする事により信頼性を向上でき、薄層化を実現できるが、比誘電率も減少してしまう為、小型・高容量・高信頼性を同時に満足する事はできなかった。また、粒径を小さくすると温度特性も良好になるが、125℃での特性を保証するX7R特性を実現するまでには到達しなかった。
例えば、特許文献1には、平均粒径が0.1〜0.3μmであり、温度特性の異なる2種類以上の微粒子結晶により構成された誘電体磁器が提案されており、この誘電体磁器は、平坦な温度特性(誘電特性の温度依存性が小さい)と、優れたDCバイアス特性を有していることが記載されている。
しかるに、上述したように、BaTiO(BT型結晶粒子系材料)においては、比誘電率が粒子サイズと共に単調に減少する。この結果、0.1〜0.3μmの様な粒子サイズでは、最大でも2100程度の比誘電率しか得られず、高容量化に限界があった。また、原料の粒子サイズが0.3μm以下になると、焼結時に容易に固溶体を形成し粒成長してしまうため、原料粒子サイズを維持したまま緻密な焼結体を作製するには種々の条件が必要であり、上記特許文献1記載の誘電体磁器は作製が困難であった。
また、BaTiOは、125℃近傍において常誘電性−強誘電性相転移が起こるため、125℃近傍で不安定状態であり、125℃での特性を保証するX7Rを満足することは困難であった。
特開平9−241075号公報
そこで、信頼性と高誘電率を実現する為に、比誘電率が大きい相対的に粒径の大きなBT型結晶粒子と、比誘電率は小さいが薄層化に適した相対的に粒径の小さなBT型結晶粒子のコンポジットが考えられる。
しかしながら、粒径が異なると焼結温度が明らかに異なり、粒径の小さいBT型結晶粒子が粒成長を抑制する添加元素の固溶拡散を伴って、過焼結もしくは粒成長を生じるか、もしくは、低温で焼成すると焼結不足を容易に生じ、2種類の粒子の共存状態を実現する事は困難であった。
一方、粒径の異なるBT粉末原料を用いた2種類以上のテープで積層構造を形成する事も考えられる。しかしながら、上記2種類の粒子混合の場合と同様、焼結温度が異なり、十分に焼結した2相共存誘電体磁器を形成することは困難であった。
積層セラミックコンデンサの誘電体層形成に使用される誘電体磁器には、小型・高容量化の為に高い比誘電率が要求されることはもちろんのこと、誘電損失が小さく、誘電特性の温度に対する依存性(温度依存性)や直流電圧に対する依存性(DCバイアス依存性)が小さいこと等の種々の特性が要求される。
従って、本発明の目的は、誘電体層が2μmを下回る薄層体においても大きな比誘電率と、高い絶縁的信頼性を示し、X7R特性を満足する積層セラミックコンデンサを提供することにある。
本発明は、Ba及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物(BT型結晶粒子)と、BT型結晶粒子のAサイトの一部がCaで置換されたペロブスカイト型チタン酸バリウム結晶粒子(BCT型結晶粒子)と、Mg及び希土類元素とを含有し、該Mg及び希土類元素の一部が前記BT型結晶粒子及び前記BCT型結晶粒子に固溶してなる誘電体層を具備した積層セラミックコンデンサであって、前記誘電体層が、BT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子を主結晶粒子とする第1層と、BT型結晶粒子を主結晶粒子とする第2層の積層構造からなるとともに、前記第1層のBT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子の平均粒径が前記第2層のBT型結晶粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする積層セラミックコンデンサである。
絶縁的信頼性向上のためにはBT型結晶粒子を微粒化して粒界を増やすのが好ましいが、微粒化すると比誘電率が低下してしまう。一方、BCT型結晶粒子はBT型結晶粒子に比して比誘電率が低下する傾向があるが、薄膜化によりこの比誘電率は上昇する。詳しくは、BT型結晶粒子においては、粒径を小さくしていくと強誘電性が小さくなり、強誘電相において、AC電圧増大による誘電分極率の増大が抑制されてしまうが、BCT型結晶粒子においては、BT型結晶粒子に比べ強誘電性が大きく、微粒においてもこの効果は変わらない。この為、誘電体層の厚みが2μmを下回るように薄層化されるとAC電界強度が増大するため、比誘電率が増大する。
また、BCT型結晶粒子においては、X7R特性を実現する上で問題となる急峻な比誘電率の変化を示す相転移ピークが125℃より高温に存在していることが知られている。BT型結晶粒子(BaTiO)の比誘電率は相転移点より高温、即ち常誘電相において急激に減少する為、相転移点が125℃より高温にあるBCT型結晶粒子を用いることで、125℃においても比誘電率の急激な低下が生じ難くなる。
さらに、BT型結晶粒子を用いて、粒径の小さい層と粒径の大きい層の2層構造とすると、前述のように粒径の大きい層が焼結温度が高くなるという問題が生じるが、BT型結晶粒子よりも焼結温度の低いBCT型結晶粒子を粒径の大きい層に混合させるとこの層の焼結温度を低下させることができる。
このような見知のもと、BT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子を主結晶粒子とする第1層と、BT型結晶粒子を主結晶粒子とする第2層の積層構造にするとともに、第1層のBT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子の平均粒径を第2層のBT型結晶粒子の平均粒径よりも大きくすることで、均一焼結することができ、誘電体層が2μmを下回る薄層体においても大きな比誘電率と、高い絶縁的信頼性を示し、X7R特性を実現することを可能としたものである。
ここで、BT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子の平均粒径が0.15〜0.4μmであるのが好ましい。これにより、比誘電率がより高められるとともに、誘電体層厚の均一性が保たれる。
本発明の積層セラミックコンデンサは、薄層化においてもDCバイアス電圧による容量の低下が小さく、容量の温度依存性が小さく、高い信頼性を示すことができ、特に比誘電率が2500以上で、比誘電率の温度特性が−55℃〜125℃の範囲で±15%以内であり、かつ2.5V/μmのDCバイアス印加による比誘電率の変化率が20%以内の特性を有することができる。
本発明の実施形態について説明する。
(積層セラミックコンデンサ)
本発明の積層セラミックコンデンサは、好ましくは2μmを下回る薄層の誘電体層1と、卑金属からなる内部電極層2とを交互に積層して構成され、通常、この積層体の上下面には保護層が設けられ、この積層体の側面には内部電極層と電気的に接続された外部電極が設けられる。そして、この外部電極を通じて静電容量が取り出されるようになっている。
内部電極層を形成する卑金属としては、Ni、Cu等があるが、特に安価という点からNiが好適に使用される。
誘電体層1について、以下に詳細に説明する。
(誘電体層1)
本発明の積層セラミックコンデンサにおける誘電体層1は、図1に示すように、BT型結晶粒子31とBCT型結晶粒子32とを含有するものであり、この誘電体層1は、BT型結晶粒子311及びBCT型結晶粒子32を主結晶粒子とする第1層11と、BT型結晶粒子312を主結晶粒子とする第2層12の積層構造からなっており、第1層のBT型結晶粒子311及びBCT型結晶粒子32の平均粒径が第2層のBT型結晶粒子312の平均粒径よりも大きくなっている。ここで、誘電体層1の厚みとしては好ましくは1〜2μmであり、第1層11の厚みは誘電体層1の厚みの40〜60%であるのが好ましい。
第1層に含まれるBCT型結晶粒子32は、Aサイト(Baサイト)の一部がCaで置換されたペロブスカイト型チタン酸バリウムであり、理想的には(Ba1−xCaTiO(xは0.01〜0.1が好ましく、m≧1)で表されるが、本発明においてはMg及び希土類元素が、通常Bサイトに固溶している(Aサイトに固溶していることもある)。
一方、第1層および第2層に含まれるBT型結晶粒子31(311,312)は、Ca非置換型のペロブスカイト型チタン酸バリウムであり、上記のBCT型結晶粒子32と同様、このBT型結晶粒子31においても、Bサイトに通常Mg及び希土類元素が固溶している。
ここで、上記BCT型結晶粒子におけるAサイト中のCa置換量は、1〜15モル%、特に2〜10モル%であることが好ましい。Ca置換量がこの範囲内であれば、室温付近の相転移点が十分低温にシフトし、BT型結晶粒子との共存構造により、コンデンサとして使用する温度範囲において優れたDCバイアス特性を確保できるからである。
また、BT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子は、比誘電率を高めるとともに、誘電体層厚の均一性を考慮して、何れも0.15〜0.4μmの平均粒径を有しているのが好ましく、特に比誘電率を高め、且つ比誘電率の温度依存性を抑制するためには、0.2〜0.35μmの平均粒径を有しているのが好ましい。このような粒径の範囲内で、第1層は第2層に比して平均粒径が大きくなっている。ここで、第1層におけるBT型結晶粒子とBCT型結晶粒子の平均粒径は、共存構造を形成する上で、ほぼ等しくなっているのが好ましい。
本発明においては、BT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子のいずれにも、Mg及び希土類元素が固溶している。これらの元素成分は、原料粒子の焼結性を高め、粒成長を抑制し、前述した平均粒径の結晶粒子を形成するための焼結助剤として使用されるMg化合物及び希土類元素化合物に由来するものである。そして、用いたMg及び希土類元素のほとんどがBT型結晶粒子中及びBCT型結晶粒子中に固溶し、一部は粒界に存在する場合があるが、この場合主として非晶質として存在することとなる。希土類元素としては、特に制限されるものではないが、Y、Tb、Dy、Ho、Er及びYbを例示することができ、これら希土類元素は、一種単独でも二種以上であってもよい。
Mg及び希土類元素が固溶したBT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子は、いずれの結晶粒子においても粒子表面側にMg及び希土類元素が偏在したいわゆるコアシェル構造を有している。ここで、コアシェル構造とは、粒子中心側をコアとし、粒子表面近傍をシェルとし、このコアとシェルとで結晶構造、組成が異なる構造を意味する。尚、ここでいう粒子表面近傍とは、粒界から5nm(粒子表面から粒子の中心へ向けて5nm)までの領域のことを意味するものである。この領域は透過型電子顕微鏡(TEM)で測定することができる。
このようなコアシェル構造が形成される理由は以下の通りである。
BT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子は、いずれも焼結時に原子拡散による粒成長を起こしやすく、微小粒径の緻密焼結体を得にくい。特に、用いた原料粒子サイズがサブミクロンより小さい場合、粒子体積に対して表面積が大きな割合を占め、表面エネルギーが大きいことによってエネルギー的に不安定な状態になってしまう。このため、焼成に際して、原子拡散による粒成長を生じ、表面積の比率が小さくなって表面エネルギーの低下による安定化が生じる。従って、粒成長が起こりやすく、微小サイズの粒子からなる緻密焼結体は得にくいものとなっている。具体的には、0.1μmより小さい径の微小サイズからなるBT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子の焼結体は、容易に固溶・粒成長を生じ、粒子間の原子の移動を抑制するものを粒子間に導入しなければ1μmを超える大きな粒子サイズからなる焼結体が形成されてしまい、サブミクロン以下の微小サイズからなる緻密な焼結体を得るのは困難である。
しかるに、微小結晶原料とともに、MgとYのような希土類元素を添加剤として導入し、さらに焼成条件を調整することにより、原料結晶粒子のサイズを反映した微小粒子焼結体を得ることができる。これらの添加物は、粒子表面に拡散し液相を形成することにより、焼結を促進するとともに、粒界近傍及び粒界に存在して母相であるBT、BCT結晶粒子間におけるBa、Ca、Ti原子の移動を抑制し、粒成長を抑制する。この結果、結晶粒子表面に、Mg及び希土類元素が拡散固溶した結晶相が形成されることとなる。すなわち、Mg及び希土類元素が粒子表面側に偏在したコアシェル構造が形成される。
尚、Mg及び希土類元素の含有量は、それぞれ酸化物換算で、0.05〜0.5重量%、特に0.1〜0.5重量%のMgと、0.1〜1.7重量%、特に0.1〜1.5重量%の希土類元素とを含有していることが好ましい。この範囲であると、焼結性及びコアシェル構造の形成性がよく、温度特性やDCバイアス特性も向上する。
さらに、本発明の積層セラミックコンデンサにおける誘電体層は、上述した結晶粒子やMg、希土類元素成分以外の他の成分、例えば、MnをMnCO換算で0.05〜0.4重量%の割合で含有していてもよい。Mnは、還元雰囲気における焼成によって生成するBT結晶、BCT結晶中の酸素欠陥を補償し、絶縁的信頼性を向上させるために使用される助剤に由来するものであり、このようなMn成分を含有させることにより、誘電体磁器の電気的絶縁性が増大し、また高温負荷寿命を大きくし、コンデンサとしての信頼性が高められる。尚、Mn含量が上記範囲よりも多量となると、誘電体磁器の絶縁性が低下するおそれがある。このようなMnは、主として非晶質で粒界に存在するが、その一部は結晶粒子内に拡散固溶し(表面に偏在する)、コアシェル構造を形成する。
また、耐還元性を向上するとともに異常粒成長を抑制するために、少量のBaCO3を含有していてもよい。
さらに、結晶粒子の焼結性を高めるために、少量のガラス成分を含有していてもよいし、少量のフィラー等を含有していてもよい。
(積層セラミックコンデンサの製造)
かかる積層セラミックコンデンサは、以下のように製造される。
例えばゾルゲル法、蓚酸法、水熱合成法により生成された、所定の組成を有するBT粉末(BT型結晶粒子を形成する原料粉末)及びBCT粉末(BCT型結晶粒子を形成する原料粉末)を用いる。これらBT粉末及びBCT粉末は、Mgや希土類元素が固溶していないものである。ここで、焼成によって僅かであるが平均粒径の変動を生じることがあるため、前述したサブミクロンオーダーの平均粒径を有するBT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子を析出させるために、用いるBT粉末及びBCT粉末の平均粒径は0.1〜0.4の範囲にあるのがよい。
そして、第1層を形成するために使用されるBT粉末とBCT粉末は、焼結温度をそろえるために好ましくは混合比が重量比で40〜60の範囲となるように設定され、混合される。この混合粉末に、所定量のMg及び希土類元素の酸化物あるいは炭酸塩、更に必要により、Mnの炭酸塩やガラス等の任意成分を加えて回転ミルなどで10〜30時間湿式混合し、乾燥する。次いで、ポリビニルアルコール等の有機バインダや有機溶媒を所定量添加して成形用スラリーを調製する。このスラリーを、引き上げ法、ドクターブレード法、リバースロールコータ法、グラビアコータ法、スクリーン印刷法、グラビア印刷等の周知の成形法を用いて所定形状に成形し、第1層用セラミックグリーンシートが得られる。
また、第2層については、BT粉末に、所定量のMg及び希土類元素の酸化物あるいは炭酸塩、更に必要により、Mnの炭酸塩やガラス等の任意成分を加えて、第1層と同様の方法で成形し、第2層用セラミックグリーンシートが得られる。
これらのセラミックグリーンシートを積層、具体的には、第1層用セラミックグリーンシートのスラリーを基体フィルム上に塗布し、その上に第2層用セラミックグリーンシートのスラリーを塗布することより、積層成形体(誘電体層用セラミックグリーンシート)を成形する。この誘電体層用セラミックグリーンシートの厚みは、電子部品の小型、大容量化という見地から、1〜5μm、特に3μm以下であることが望ましい。このように、基体フィルム上に大きな粒径に起因した大きな表面粗さの第1層用セラミックグリーンシート、小さな粒径の第2層用セラミックグリーンシートをこの順に積層することで、第1層用セラミックグリーンシートの基体フィルム側は平坦となり、これと反対側には小さな粒径の層により大きな粒径の凹凸が緩和され平坦となるので、平坦な表面のセラミックグリーンシートを形成できる。特に、2μmを下回る層厚の誘電体層を形成する上で、粒径に起因した表面粗さは層厚の均一性を実現する上で大きな影響を及ぼし、この誘電体層の厚さの不均一に起因した電極間の大きさのバラツキが、高い信頼性を実現する上で大きな課題となるが、上記のような順に積層して製造してなる積層構造を用いる事により、大きな誘電率と高い信頼性を両立することが可能となる。
次に、この誘電体層用セラミックグリーンシートの表面に、Ni等の卑金属を含有する導電性ペーストを、スクリーン印刷法、グラビア印刷、オフセット印刷法等の周知の印刷方法により塗布し内部電極パターンを形成する。内部電極パターンの厚みは、コンデンサの小型、高信頼性化という点から2μm以下、特に1μm以下であることが望ましい。
このようにして表面に内部電極パターンが塗布された誘電体層用セラミックグリーンシートを複数枚積層圧着し、この積層成形体を、大気中250〜300℃、または酸素分圧0.1〜1Paの低酸素雰囲気中500〜800℃で脱脂した後、非酸化性雰囲気で1150〜1350℃で2〜3時間焼成する。さらに、所望により、酸素分圧が0.1〜10−4Pa程度の低酸素分圧下、900〜1100℃で5〜15時間再酸化処理を施すことにより、還元された誘電体層が酸化され、良好な絶縁特性を有する誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層体が得られる。
最後に、得られた積層焼結体に対し、各端面にCuペーストを塗布して焼き付け、Ni/Snメッキを施し、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成して積層セラミックコンデンサが得られる。
表1に示すような粒径と混合割合の第1層を形成するために、水熱合成BaTiO(BT粉末)及びBCT粉末にMgCO、MnCO、Y、BaCOを混合し、更に、ブチラール樹脂およびトルエンを加えてセラミックスラリーを調製し、第1層用スラリーを得た。尚、BCT粉末は、水熱合成法により得られたBaTiO(平均粒径0.1μm)粉末と、CaCO粉末(平均粒径0.3μm)と、TiO粉末(平均粒径0.1μm)を混合し、1000℃以上の温度で大気中熱処理を行うことにより得られたものである。また、表1において、Ca置換量は、式:(Ba1−xCaTiO(m≧1)におけるxの値で示した。
また、表1に示すような粒径の第2層を形成するために、水熱合成BT粉末に、MgCO、MnCO、Y、BaCOを混合し、更に、ブチラール樹脂およびトルエンを加えてセラミックスラリーを調製し、第2層用スラリーを得た。
尚、スラリー作製のための原料粉末の粒径は、表1に示す第1層及び第2層中の主結晶粒子の粒径とほぼ同一のものである。
これらの第1層用スラリー及び第2層用スラリーを、順にドクターブレード法によりPETフィルム上に塗布し、乾燥機内で60℃で15秒間乾燥後、これを剥離して厚み9μmのセラミックグリーンシート(第1層の厚み4.5μm、第2層の厚み4.5μm)を形成し、これを10枚積層して端面セラミックグリーンシート層(焼成後に保護層(本発明の誘電体層とは異なる)となる)を形成した。この端面セラミックグリーンシート層を、90℃で30分の条件で乾燥させた。そして、端面セラミックグリーンシート層を台板上に配置し、プレス機により圧着して台板上にはりつけた。
一方、上記と同様に、第1層用スラリー及び第2層用スラリーを、順にドクターブレード法によりPETフィルム上に塗布し、60℃で15秒間乾燥後、これを剥離して厚み2.3μm(第1層の厚み1.15μm、第2層の厚み1.15μm)のセラミックグリーンシート(焼成後に誘電体層となる)を多数作製した。
次に、平均粒径0.2μmのNi粉末の合量45重量%に対して、エチルセルロース5.5重量%とオクチルアルコール94.5重量%からなるビヒクル55重量%を3本ロールで混練して内部電極ペーストを作製した。
この後、得られたセラミックグリーンシートの一方の表面に、スクリーン印刷装置を用いて、上記した内部電極ペーストを内部電極パターン状に印刷し、セラミックグリーンシート上に長辺と短辺を有する長方形状の内部電極パターンを複数形成し、乾燥後、剥離した。
この後、端面セラミックグリーンシート層の上に、内部電極パターンが形成されたグリーンシートを300枚積層し、この後、端面セラミックグリーンシートを積層し、コンデンサ本体成形体を作製した。
次に、コンデンサ本体成形体を金型上に載置し、積層方向からプレス機の加圧板により圧力を段階的に増加して圧着し、この後さらにコンデンサ本体成形体の上部にゴム型を配置し、静水圧成形した。
この後、このコンデンサ本体成形体を所定のチップ形状にカットし、大気中300℃または0.1Paの酸素/窒素雰囲気中500℃に加熱し、脱バインダーを行った。さらに、10−7Paの酸素/窒素雰囲気中、1200〜1250℃で2時間焼成し、さらに、10−2Paの酸素/窒素雰囲気中にて1000℃で再酸化処理を行い、電子部品本体を得た。焼成後、電子部品本体の端面にCuペーストを900℃で焼き付け、さらにNi/Snメッキを施し、内部電極層と接続する外部端子を形成した。
作製した積層セラミックコンデンサを研磨し、電極の有効面積を求めた。また、破断面のSEM観察により誘電体層の層厚を求めた。このようにして得られた積層セラミックコンデンサの内部電極層間に介在する誘電体層の厚みは1.6μmであった。また誘電体層の有効積層数は300層であった。
各試料についての測定結果を表1に示す。
尚、DCバイアス依存性△ε/εは、下記式:
{ε(4V)−ε(0V)}×100/ε(0V)
より求めた。
電気特性は、LCRメータを用いて−55℃〜125℃の温度範囲で、AC1V、測定周波数:1kHzの条件で静電容量を測定し、比誘電率を算出した。比誘電率の温度変化率TCCを、下記式:
TCC(%)={ε(T)−ε(20℃)}×100/ε(20℃)
より求めた。20℃を基準温度としている。
MTTFは、サンプル数30個について125℃の温度下で32Vの電圧をかけたときの絶縁破壊するまでの時間を求め、その平均値を表したものである。
Figure 2006237237
この表1から、BT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子の粒径が全て等しい試料No.7、10、13、15(本発明範囲外)においては、比誘電率は2500以上と大きいが、高温負荷試験(125℃、DC32V印加)による平均故障時間MTTFは34時間以下と、本発明品に対して小さな値であった。また、340℃での熱衝撃試験ではクラックの発生が見られた。尚、このクラックは第1層のほうが焼成時に焼けすぎてしまうことにより、生じたものと考えられる。
また、比較例(本発明範囲外)としてのスラリー1のみから作製したもの(試料No.17)については、平均故障時間MTTF(信頼性)が28時間と小さな値を示し、比較例(本発明範囲外)としてのスラリー2のみから作製したもの(試料No.17)については、比誘電率が1930と小さな値を示した。
これに対し、平均粒径が大きいBT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子を主結晶粒子とする第1層と、平均粒径が小さいBT型結晶粒子を主結晶粒子とする第2層の積層構造からなる誘電体層を有する本発明範囲内の試料では、比誘電率2500以上、特には3000以上、比誘電率の変化率も−55℃〜125℃において±15%以内であり、かつDCバイアス依存性も−20%以内であり、更にMTTFも50時間以上で、熱衝撃試験についても各300個に対してクラック発生率は0と優れていた。
本発明の積層セラミックコンデンサにおける誘電体層1の説明図である。
符号の説明
1・・・誘電体層
11・・第1層
12・・第2層
2・・・内部電極層
311、312・・BT型結晶粒子
32・・BCT型結晶粒子

Claims (2)

  1. Ba及びTiを含有するペロブスカイト型酸化物(BT型結晶粒子)と、BT型結晶粒子のAサイトの一部がCaで置換されたペロブスカイト型チタン酸バリウム結晶粒子(BCT型結晶粒子)と、Mg及び希土類元素とを含有し、該Mg及び希土類元素の一部が前記BT型結晶粒子及び前記BCT型結晶粒子に固溶してなる誘電体層を具備した積層セラミックコンデンサであって、
    前記誘電体層が、BT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子を主結晶粒子とする第1層と、BT型結晶粒子を主結晶粒子とする第2層の積層構造からなるとともに、前記第1層のBT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子の平均粒径が前記第2層のBT型結晶粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
  2. BT型結晶粒子及びBCT型結晶粒子の平均粒径が0.15〜0.4μmであることを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。
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