JP2006236979A - 酸化物超電導体厚膜およびその製造方法、並びに、酸化物超電導体厚膜製造用ペースト - Google Patents

酸化物超電導体厚膜およびその製造方法、並びに、酸化物超電導体厚膜製造用ペースト Download PDF

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Abstract

【課題】高いJcを発揮する超電導特性と、厚膜と基体との間の強い密着強度とを両立させ得る酸化物超電導体厚膜およびその製造方法、並びに、当該酸化物超電導体厚膜を製造するための酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを提供する。
【解決方法】Bi、PbO、SrCO、CaCO、CuOの各粉末を、所定のモル比となるように混合して混合粉とし、これを仮焼して仮焼粉とし、これを粉砕して超電導合成粉を得た。この超電導合成粉中へ易移動Pb化合物を添加混合し、さらに、有機バインダー等を添加して本発明に係るPb添加Bi2223ペーストを得た。一方、所定の基体上に、Bi2212組成の超電導ペーストを塗布、焼成してBi2212部分熔融層を得、この上へ、本発明に係るPb添加Bi2223ペーストを塗布、焼成し、本発明に係る酸化物超電導体厚膜が成膜された基体を得た。
【選択図】図5

Description

本発明は、Bi(ビスマス)、Pb(鉛)、Sr(ストロンチウム)、Ca(カルシウム)、Cu(銅)を含む酸化物超電導体厚膜、およびその製造方法、並びに、当該酸化物超電導体厚膜を製造する為の酸化物超電導体厚膜製造用ペーストに関する。
MgO、アルミナ、YSZなどの酸化物基板もしくは酸化物基体、または、Ag、Au、Pt、Niなどの金属基板もしくは金属基体に、酸化物超電導体を厚膜状に形成し、当該酸化物超電導体を機能させることにより、様々な応用製品が考案されている。
この各種の基板、基体上に酸化物超電導体厚膜を成膜する方法として、酸化物超電導体粉末に適当な有機バインダーを添加してペースト状にして酸化物超電導体厚膜製造用ペーストとし、当該酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スプレー法等を用いて当該基板、基体上に塗布し焼成して、多結晶体の酸化物超電導体厚膜を成膜する手法が試みられている。
この酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを用いて、酸化物超電導体厚膜を成膜する手法は、高価な単結晶基板や、PVD、CVDなどに代表される高真空系を必要とする大規模かつ高価な装置を必要としないことより、製造コストの面で非常に安価、有利であり、実用化に最も近い手法であると考えられている。
そして、この酸化物超電導厚膜の実用的な製品への応用を考えた場合、要求される超電導特性、および原材料から製造工程を含めた製造コストの2つの観点より、酸化物超電導厚膜材料として一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCu(但し、0<a<0.3が一般的である。)を含む酸化物超電導体厚膜(以下、Bi2223厚膜と記載する。)を用いることが有望であると考えられる。尚、当該一般式において(Bi、Pb)2+aとは、BiとPbとをあわせたもののモル比が、2+aであることを意味する。
酸化物超電導体厚膜を実用的な製品に応用する場合、高い臨界温度を有することは勿論重要であるが、同時に高い臨界電流値(以下、Icと記載する。)も求められる。ここで、酸化物超電導厚膜において高いIcを実現するためには、Ic=酸化物超電導厚膜の断面積×Jc(但し、Jcとは臨界電流密度のことである。)の関係より、酸化物超電導厚膜の断面積および/またはJcの増加が求められる。
特許文献1には、基板上に膜厚を130μm以上のBi2223厚膜を形成することで、Jcが5,000A/cm以上の厚膜が得られる旨、記載されている。
また、特許文献2には、基体とBi2223厚膜との間に、BiSrCaCuの組成を有する厚膜(以下、Bi2212厚膜と記載する。)を形成して、Bi2223厚膜と基体との間に破断面を存在させないことで強い密着強度を発揮させ、十分な膜厚が得られる旨、記載されている。
特許文献1.特開2004− 26625号
特許文献2.特開2004−182570号
しかしながら、本発明者らの検討によると、上述した特許文献1に記載された発明において、さらにIcの値の向上を目的として、酸化物超電導体厚膜の膜厚を厚くしようとすると、当該酸化物超電導体厚膜が基板または基体から剥がれやすくなり、高い生産性を保ちながら酸化物超電導体厚膜を製造することが困難であった。
次に、本発明者らは特許文献2に記載された発明を用い、酸化物超電導体厚膜と、基板または基体との接着性を上げた上で、酸化物超電導体厚膜の膜厚を厚くしIcの値の向上を図ったが、Jcは5000A/cm程度に留まってしまいIc値の向上が図れなかった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、6,000A/cm以上の高いJcを発揮しながら、厚膜や基体から剥がれることのない酸化物超電導体厚膜およびその製造方法、並びに、当該酸化物超電導体厚膜を製造するための酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを提供することである。
即ち、上述の課題を解決するための第1の手段は、
基板または基体の表面上に形成された酸化物超電導体厚膜であって、
一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)で標記される酸化物超電導体を含み、
前記基板または基体と、酸化物超電導体厚膜との界面におけるPbのEPMA信号強度を1と規格化したとき、
前記酸化物超電導体厚膜の表面におけるPbのEPMA信号強度が0.75以上であることを特徴とする酸化物超電導体厚膜である。
第2の手段は、
基板または基体の表面上に形成された一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)で標記される酸化物超電導体厚膜であって、
前記酸化物超電導体厚膜の表面における一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)において、Pbのモル比が0.15以上であることを特徴とする酸化物超電導体厚膜である。
第3の手段は、
一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)で標記される酸化物超電導体を製造するための酸化物超電導体厚膜製造用ペーストであって、
一般式BiSrCaCuで標記される酸化物超電導体と、CaPbOと、CaCuOと、CuOと、PbOと、を含み、当該酸化物超電導体厚膜製造用ペーストの全体組成を一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、0≦a≦0.5)で標記した際、Pbのモル比が、0.4以上、0.6以下であることを特徴とする酸化物超電導体厚膜製造用ペーストである。
第4の手段は、
一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)で標記される酸化物超電導体を製造するための酸化物超電導体厚膜製造用ペーストであって、
複合酸化物である(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、0≦a≦0.5)と、Pb化合物とを含むことを特徴とする酸化物超電導体厚膜製造用ペーストである。
第5の手段は、
基板又は基体の表面上に、第3または第4の手段に記載の酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを塗布してこれを焼成し、さらに圧縮することを特徴とする酸化物超電導体厚膜の製造方法である。
第6の手段は、
基板又は基体の表面上に、BiSrCaCuの組成を有する酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを塗布して焼成し、
次に、当該焼成された厚膜上に、第3または第4の手段に記載の酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを塗布してこれを焼成し、さらに圧縮することを特徴とする酸化物超電導体厚膜の製造方法である。
第1の手段によれば、当該酸化物超電導体厚膜は、厚み方向の部分的な特性劣化が抑制され、当該酸化物超電導体厚膜全体のJcが向上した。
第2の手段によれば、当該酸化物超電導体厚膜の表面部分においても、高Jcを発揮させることができた。
本発明者らは、基板又は基体上に形成されたBi2223厚膜に高いJcを発揮させるため、当該Bi2223厚膜の膜厚と、Jcとの関連を検討した。
その結果、当該Bi2223厚膜の膜厚が130μm以下では、Jcが急激に減少することを見出した。本発明者らは、当該Jcの急激な減少は、Bi2223厚膜の製造時に行う焼成工程において、Pbが揮発し、焼成後のBi2223厚膜中に残存するPb量が減少することによる特性劣化に起因することに想到した。
そこで、当該特性劣化を回避し、高Jcを実現するため、Bi2223厚膜の膜厚を厚くすることを検討した。すると、当該膜厚が200μmを超える辺りから、金属製またはセラミック製の基板または基体と、当該Bi2223厚膜との間に、破断面が生じて接着性が低下して膜が剥離し、その剥離した膜は非常にもろい為に、当該膜が破損してしまうという問題が発生した。
ここで、本発明者らは、前記基板または基体とBi2223厚膜との間に、Bi2212厚膜を存在させる構成をとることで、前記基板または基体と、Bi2223厚膜との間の破断面の発生を抑制し、膜厚200μmを超えながら強い密着強度を有するBi2223厚膜を得ることが出来た。しかし、前記構成を有するBi2223厚膜においても5000A/cm以上のJcを発揮させることができなかった。
ここで、本発明者らは、前記構成を有するBi2223厚膜が、所望のJcを発揮しない原因を追求した。
比較例1にて再度説明するが、MgO基板とBi2223厚膜との間に、Bi2212厚膜を存在させる構成を有する、膜厚300μmのBi2223厚膜を製造し、当該Bi2223厚膜の断面のPb濃度を基板から膜表面にわたって、EPMA(Electro Prove Micro Analysis)により測定した。なお、EPMAの測定倍率は500倍とした。
当該測定結果を図2(A)(B)を用いて説明する。図2(A)は、縦軸にMgのEPMA信号強度をとり、横軸に膜厚をとったグラフであり、図2(b)は、縦軸にPbのEPMA信号強度をとり、横軸に膜厚をとったグラフである。
図2(A)(B)より、基板を構成するMgの信号強度が0となり、Pbの信号が立ち上がる位置が、基体と酸化物超電導体厚膜との界面(以下、単に「界面」と記載する場合がある。)であることが認められた。一方、Pbの信号強度が0に迄急激に減少し始める位置が、酸化物超電導体厚膜の表面(以下、単に「厚膜表面」と記載する場合がある。)であることが認められた。
そして、当該界面の位置から、厚膜表面の位置までのPbの信号強度をみると、界面位置から厚膜表面の位置まで、ほぼ単調に減少していることが判明した。これは、たとえBi2223厚膜の膜厚が200μm以上あったとしても、焼成中における、当該Bi2223厚膜表面からのPb揮散を抑止することが出来ず、当該Bi2223厚膜表面に近い領域ほど、Pb濃度が減少した為であると考えられる。
次に、当該Bi2223厚膜の超電導特性を測定した。
上記厚膜と同条件で作成した厚膜を用いて、当該Bi2223厚膜のIcを測定した。次に、当該Bi2223系厚膜の表面から約50μmを削除し、残り約250μmのBi2223系厚膜のIcを測定した。以下同様に、当該Bi2223厚膜を、新たな表面から約50μmづつを削除しIcを測定した。そして、上述した
Ic=酸化物超電導厚膜の断面積×Jc
の式より、前記削除による各膜厚におけるJcを算定し、当該算定結果を図4に示した。図4は縦軸にJcの値をとり、横軸に膜厚をとったグラフである。この図4に、前記各膜厚毎のJc測定値を破線を用いて記載した。
すると、当該厚膜のJcの値が、厚膜外表面より約100μmの位置から厚膜表面に向かって大きく低下してることが判明した。当該Jcの値の大きな低下は、上述したPb濃度の減少に伴うものであると考えられた。一方、前記厚膜外表面より約100μmの位置から界面の位置へ向かっては、Jcの値が殆ど変化していないことも判明した。当該領域においては、界面の位置へ向かってPb濃度が上昇していくことから、Jcの値も増加することを見込んでいたにも拘わらず、当該結果である理由について、さらに検討を行った。
上記検討の結果、以下のような理由が考えられた。
即ち、当該領域においては、焼成時に、Bi2223厚膜のPbがBi2212厚膜に拡散する為、Bi2223厚膜の結晶成長時にPb不足が起こる。その結果、Bi2223厚膜内に異相が生成し、当該異相がJcの値を下げていると考えられる。
当該検討結果より、本発明者らは、当該Bi2223厚膜のJc値を向上させるためには、第1に、焼成時において、厚膜表面からのPb揮散によるPbの減少を抑制することが肝要であることに想到した。第2に、界面とBi2223厚膜との間に、Bi2212厚膜を作成する場合には、焼成時において、Bi2223厚膜に含まれるPbがBi2212厚膜に拡散することによるPbの減少を抑制することにより、Bi2223厚膜からPbが失われ、異相が生じるのを抑制することが肝要であることに想到した。
ここで、本発明者らは鋭意研究の結果、Bi2223の組成を有する酸化物超電導体厚膜を製造するための酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを塗布した基板や基体を焼成し、当該酸化物超電導体厚膜製造用ペーストの一部が液相化した際、中間生成相中のPb元素の拡散速度が速いことに注目し、当該液相中での拡散速度が大きく且つ揮発し易いPb成分(以下、「易移動Pb化合物」と記載する場合がある。)を、当該酸化物超電導体厚膜製造用ペースト中へ添加する構成に想到した。そして、当該易移動Pb化合物として、PbO、PbO等の鉛酸化物、Pb金属、PbCO等の鉛の炭酸塩、等の他の金属元素を含まず、分解してPbが移動できる粉体が好ましい。中でもPbOは、高温で安定であることから好ましいことにも想到した。(以下、易移動Pb化合物を含む酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを「Pb添加Bi2223ペースト」、易移動Pb化合物を含まない酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを「Bi2223ペースト」と記載する場合がある。)また、この添加される易移動Pb化合物粉の粒径は、10μm以下で上記の拡散効果が得られるが、さらに好ましくは5μm以下とすることで、更なる拡散効果を得られることにも想到した。
ここで、まず、Bi2223ペーストについて簡単に説明する。
当該Bi2223ペーストは、酸化物超電導粉体と、適宜な樹脂と、適宜なビヒクルと、適宜な溶剤とを、含んでいる。ここで、Bi2223ペーストに含まれる酸化物超電導粉体は、臨界温度:Tc〜約110Kを有するBi2223相の酸化物超電導粉体ではなく、臨界温度:Tc〜約80Kを有するBi2212相の酸化物超電導粉体を、主相として含み、他にCaPbO、CaCuO、CuO等の中間生成相を含む複合相を含むものである。この、Bi2212相と中間生成相との混合相を焼成することで、まずCaPbO、CaCuO、CuO等の中間生成相を液相化し、当該液相とBi2212相との反応によって、Bi2223相が生成するものである。
次に、Bi2223ペースト中へ、易移動Pb化合物の添加した場合の効果について説明する。
まず、上述したBi2212相の酸化物超電導粉体を主相として含み、他にCaPbO、CaCuO、CuO等の中間生成相を含む複合酸化物(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、0≦a≦0.3)(以下、「Bi2223厚膜原料」と記載する場合がある。)へ、さらに易移動Pb化合物を添加し、組成を(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、0≦a≦0.5、0.4≦Pb≦0.60)とし、他は、通常のBi2223ペーストと同様にして、Pb添加Bi2223ペーストを製造した。
実施例1にて再度説明するが、通常のBi2223ペーストを、Pb添加Bi2223ペーストに代替した以外は、従来と同様にして、MgO基板上にBi2223厚膜を形成した。そして、EPMAを用いて当該Bi2223厚膜中のPb濃度を測定し、当該測定結果を、図2(A)(B)と同様の形式を有する図1(A)(B)に記載した。次に、当該Bi2223厚膜の表面から約50μmを削除し、残り約250μmのBi2223厚膜のJcを測定した。以下同様に、当該Bi2223厚膜を、新たな表面から約50μmづつを削除しJcを測定した。当該測定結果を図4に実線を用いて記載した。
図1(A)(B)の結果より、当該界面の位置から、厚膜表面の位置までのPbの信号強度をみると、前記基板または基体と、酸化物超電導体厚膜との界面に存在するPb量を1と規格化したとき、前記酸化物超電導体厚膜の表面に存在するPb量が0.75以上であり、界面位置から厚膜表面の全域に亘って、ほぼ均一な信号強度が確認できた。即ち、焼成中における、当該Bi2223厚膜表面からのPb揮散を抑止出来たものと考えられる。
次に、図4の結果より、該厚膜のJcの値は、界面の位置から厚膜表面に向かって、緩やかに低下していることが判明した。当該Jcの値の緩やかな低下は、Pb濃度の減少が抑止された効果であると考えられる。さらに、上述した従来品と異なり、厚膜外表面より100μmの位置から界面の位置へ向かう部分も、Jc値の上昇を担っていることが判明した。
以上のことから、通常のBi2223ペーストを、Pb添加Bi2223ペーストに代替したことにより、次の2つの効果が得られた。
(1)厚膜表面側での効果
従来はBi2223厚膜の外表面付近では、焼成時の加熱により、Bi2223厚膜原料中のPbが揮発すると、CaPbO相が分解して減少し、相バランスが崩れ、Bi2223相の結晶粒間に異相が生じて超電導電流パスを遮断し、さらにPb濃度が減少することにより超電導転移温度(以下臨界温度:Tcと略す)が上昇し、高Jcの膜が得られない。ところが、Pb添加Bi2223ペーストを用いて密閉容器中で焼成することで、Pb添加Bi2223ペーストの焼結時において、まず、当該易移動Pb化合物中のPb成分が優先的に外界へ揮散する。この結果、焼成時の雰囲気中のPb分圧が増加し、Bi2223厚膜原料中のPb成分が外界へ揮散することが抑止される。それによって、Pbの揮発により生じたPb濃度勾配を解消し、CaPbO相の分解も抑制される結果、異相生成が抑制され、Pb濃度の減少によるTcの上昇を防ぎ、高いJcを保持したBi2223厚膜が得られるのだと考えられる。
(2)厚膜界面側での効果
上述したように、基板との界面に近い部分において、当該界面に向かってJc値が減少して行くのは、当焼成時に該領域において、Bi2223厚膜の原料の液相と、Bi2212厚膜の原料とが反応し、Bi2223厚膜原料液相中のPbが、Pbを含まないBi2212厚膜原料液相中へ拡散するためであると考えられる。つまり、Bi2223厚膜原料中のCaPbO相が分解して減少し、相バランスが崩れ、Bi2223相の結晶粒間に異相が生じて超電導電流パスを遮断して高Jcの膜が得られないことになると考えられる。ところが、Bi2223ペーストに易移動Pb化合物を添加しておくことで、Pb添加Bi2223ペーストの焼結時において、まず、当該易移動Pb化合物中のPb成分が、Bi2212厚膜の原料液相中へ優先的に拡散する。この結果、Bi2223厚膜原料中のPb成分が、Bi2212厚膜の原料液相中へ拡散することが抑止される。それによってCaPbO相の分解も抑制される結果、異相生成が抑制され、高いJcを保持したBi2223厚膜が得られるのだと考えられる。
次に、Pb添加Bi2223ペーストに含まれるBi2223厚膜原料中への、易移動Pb化合物の好ましい添加量について説明する。
当該Bi2223厚膜原料中への易移動Pb化合物の好ましい添加量は、当該易移動Pb化合物添加後のPb添加Bi2223ペーストに含まれる酸化物超電導粉体の組成式を(Bi、Pb)2+aSrCaCuと表記したとき、0<a<0.5、0.40<Pb<0.60であることが好ましい。
上述の易移動Pb化合物添加後のPb量を、0<a<0.5、0.40<Pbとすれば、
Pb元素が基体との界面から膜の外表面に向かって徐々に減少して行くことや、基板との界面に近い部分の100μmにおいて、当該界面に向かってJc測定値が徐々に減少して行くことを回避することが出来る。一方、0.60>Pbとする構成をとれば、焼成によるPbの揮散、拡散を経ても、Bi2223結晶中に残存するPbOの量が過剰となり、当該過剰な量のPbが却って異相を形成し、それら形成された異相が有効な超電導電流パスを遮ってしまい、超電導特性に悪影響を与えるという事態を回避できる。
以上説明したように、本発明は、Bi2223ペースト中へ、揮発、拡散により減少するPb量を添加、好ましくは易移動Pb化合物を添加混合することでPb添加Bi2223ペーストとし、この易移動Pb化合物の液相中における速い拡散速度を利用し、Pb揮発速度よりも早く拡散させる。この結果、厚膜表面のPb濃度を、厚膜界面のPb濃度の75%以上とすることができ、高Jcを有する厚膜を提供するものである。
ここで、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、さらに詳細に説明する。
まず、本実施の形態で使用したBi2212ペースト、およびPb添加Bi2223ペーストの好ましい製造方法について、好ましい製造工程例を示したフロー図である図5を参照しながら説明する。
まず、Bi2212ペーストの製造について説明する。
図5に示すように、Bi、SrCO、CaCO、CuOの各種粉末11を、全体がBi2212のモル比となるように秤量、混合し、混合粉12とする。このとき、CaCOはCaO、またはCa(OH)へ代替可能である。また、上述の粉体混合ではなく、湿式共沈法等にてBi、Sr、Ca、Cuの各元素を所望のモル比になるよう調製して混合粉12を得ても良い。
次に、混合粉12を仮焼し仮焼粉13を調製する。仮焼条件は、大気下で温度600℃〜1000℃好ましくは750℃〜850℃で、時間は、3時間〜50時間である。得られた仮焼粉13を、Zrボール、トルエンなどの有機溶媒とともにセラミックスポットに入れて、回転台にセットして、ボール粉砕をおこなう。この操作は、仮焼粉13を細かく粉砕して均一性を向上させるとともに、次の焼成における熱的反応性を上げることが目的である。粉砕が終了したスラリー状の仮焼粉13を乾燥機で乾燥させる。次にこれら仮焼粉13を再度、同条件にて仮焼する。この仮焼後、再度、ボール粉砕、焼成を行いBi2212組成を有する合成粉14を得る。
このBi2212組成を有する合成粉14へ、適宜な有機バインダーおよび有機ビヒクル15を混合し、3本ローラー等を用いて混練することによりBi2212組成の配合比を有する酸化物超電導ペースト1を得た。
次に、Pb添加Bi2223ペーストの製造について説明する。
Bi、PbO、SrCO、CaCO、CuOの各種粉末16を加え、全体がBi2223のモル比となるように秤量、混合し混合粉17とする。このとき、CaCOはCaO、またはCa(OH)へ代替可能である。また、上述の各種粉体ではなく、湿式共沈法等にてBi、Sr、Ca、Cuの各元素を所望のモル比になるよう調製して混合粉17を得ても良く、また、湿式共沈法等にてBi、Pb、Sr、Ca、Cuの各元素を所望のモル比になるよう調製した原料を使用してもよい。
この段階において、PbOの添加を完了して、塗布原料に含まれる超電導合成粉の組成式を(Bi、Pb)2+aSrCaCuと表記したとき、原料の混合比を0<a<0.5、0.40<Pb<0.60としても良い。しかし、好ましくは、この段階において(Bi、Pb)2+aSrCaCu(但し、但し、0≦a≦0.3)としておき、後工程で得られる合成粉に易移動Pb化合物を添加することが良い。当該合成粉への易移動Pb化合物添加については、再度、後述する。
次に、混合粉17を仮焼し、Bi2223組成の配合比を有する仮焼粉18を得る。仮焼条件は、大気中において温度600℃〜1000℃、好ましくは750℃〜850℃で、時間は3時間〜50時間である。得られたBi2223組成の配合比を有する仮焼粉18は、Bi2212相およびCaPbO、CaCuO、CuO等の中間生成相を含み全体としてBi2223組成の配合比を有する粉体である。
Bi2223組成の配合比を有する仮焼粉18を、Zrボール、トルエンなどの有機溶媒とともにセラミックスポットに入れて、回転台にセットして、ボール粉砕をおこなう。この操作は、仮焼粉を細かく粉砕して均一性を向上させるとともに、次の焼成における熱的反応性を上げることが目的である。粉砕が終了したスラリー状のBi2223組成の配合比を有する仮焼粉18を乾燥機で乾燥させ、再度、仮焼する。この後、再度、ボール粉砕、焼成を行いBi2223組成の混合比を有する合成粉19を得る。
上述したように、この段階において塗布原料に含まれる合成粉19が、一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCu(但し、0≦a≦0.3)の組成比で混合した複合酸化物である場合は、当該複合酸化物へ、0.40<Pb<0.60となるように易移動Pb化合物21を秤量・添加し、易移動Pb化合物を含んだ合成粉22を得る。
合成粉22は、PbOが残留するような条件でさらに焼成、混合、乾燥させてもよい。
得られた合成粉22へ、適宜な有機バインダーおよび有機ビヒクル20を混合し、3本ローラー等を用いて混練することにより複合酸化物である(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、0≦a≦0.3)と、易移動Pb化合物とを含むPb添加Bi2223ペースト2を得た。
次に、上述したBi2212ペースト1、およびPb添加Bi2223ペースト2を用いた本発明の実施の形態に係る酸化物超電導体厚膜の製造工程について説明する。
図6は、本発明に係る酸化物超電導体厚膜を基板または基体上に成膜する工程であって、前記基体としてMgO円筒基体を用いた場合を例として示したフロー図である。
図6に示すように、基体または基板(以下、基体と記載する)3を準備し、Pb添加Bi2223ペースト2を用いてBi2223厚膜5が成膜された基体3を製造するが、このとき、基体とBi2223厚膜との密着強度を向上させるため、この基体とBi2223厚膜との間に、Bi2212組成の配合比を有するBi2212部分熔融層4を製造したものを使用すると好ましい。
このBi2212部分熔融層4の製造方法としては、基体3上へBi2212組成の配合比を有する塗布原料として、Bi2212ペースト1を塗布し乾燥させる。そして乾燥が完了したら、Bi2212ペースト1を塗布した基体3を大気中にて880〜885℃、10〜30min加熱し、Bi2212ペースト1をその融点に近い温度で焼成する。融点に近い温度で焼成されたBi2212ペースト1は、部分的に熔融状態となる。この結果、基体3上に、実質的にBiSrCaCuの組成を有する第1の厚膜であるBi2212部分熔融層4が形成された状態となる。
次に、Bi2212部分熔融層4が形成された基体3上へ、Pb添加Bi2223ペースト2を塗布し乾燥させる。そして乾燥が完了したら、基体3を大気中にて830〜860℃、50〜100hr加熱し、Pb添加Bi2223ペースト2を焼成する。この焼成は、焼成雰囲気中のPb分圧を上げるために、密閉容器の中に入れて行うことが好ましい。このPb添加Bi2223ペースト2が焼成された基体3を、CIP(冷間静水圧プレス)装置を用いて2〜3t/cmの圧力で圧縮をおこない、その後、所定回数の焼成、圧縮をおこない、最終焼成の後、Bi2223厚膜5が成膜された基体3を得た。
次に、上述した、所望の酸化物超電導体厚膜5が成膜された基体3を得る迄を、工程ごとにより詳細に説明する。
まず、基体3としては、MgO、アルミナ、YSZ等のセラミックス素材、Ag、Au、Pt、Ni等の金属素材で形成された円筒形等の基体、板状の基板を用いることができるので、最終的な製造目的に応じて適宜、材質、形状およびサイズを選択すればよい。但し、Bi2212との反応性の小ささ、密着性(結合強さ)等の観点より、MgOは、基体3の材質として好ましい材質である。
Bi2212ペースト1を基体3へ塗布するには、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、浸漬、スプレー塗布等の方法が適用可能だが、大きな面積へ生産性良く塗布するためにはスプレー塗布が好ましい方法である。
Bi2212ペースト1を基体3へ塗布する際の膜厚は、10〜100μmであることが好ましい。膜厚が10μm以上あると部分的な塗布ムラが生ずることなく後述する均一な接合強度を得ることができ好ましい。また、膜厚が100μm以下であると、後述する後工程においてBi2212の膜が十分にPb添加Bi2223ペーストと反応を起こすことから好ましい。
基体3上へBi2212ペースト1を塗布したら、これを十分に乾燥させた後に、大気中にて880〜885℃まで加熱し、10〜30分間焼成した後、室温へ戻す。この温度はBi2212の大気中における融点に非常に近ため、塗布されたBi2212の膜の一部が熔融し、基体3上に、Bi2212部分熔融層4が存在する状態となる。
次に、基体3上に設けられたBi2212部分熔融層4の上へ、さらに塗布原料として、Pb添加Bi2223ペースト2を塗布する。塗布方法は上述したBi2212ペースト1の塗布方法と同様でよい。このとき塗布する際の膜厚は、厚いほど好ましく200μm以上であることが好ましい。
Bi2212部分熔融層4の上へPb添加Bi2223ペースト2を塗布したら、これを十分に乾燥させた後に、密閉容器内に設置し、大気中にて830〜860℃より好ましくは835〜850℃まで加熱し、50〜100時間焼成した後、室温へ戻し、全体をCIP装置内へ設置し、2〜3ton/cmの圧力をかけて圧縮する。この圧縮により、焼成により生成した、密度が3g/cc未満のBi2223厚膜の密度は4g/cc以上となり、Jcも、板状結晶がab面を通電方向にそろえるように配向して超電導電流が流れやすくなる。
圧縮が完了したら全体をCIP装置より取り出し、再び密閉容器内に設置し、大気中にて830〜860℃より好ましくは835〜850℃まで加熱し、50〜100時間維持して焼成した後室温へ戻し、基体3上に成膜されたBi2223の焼結膜5を得た。
ここで、上述してきた基体または基板上に形成された基体または基板上にものとは異なる構成を有する、基体または基板上に形成されたPb添加したBi2223厚膜について説明する。
図3は、本発明に係るBi2223厚膜および従来の技術に係るBi2223厚膜を、3.5mm幅のMgO基板に作製した場合において、膜厚とIcとの関係を測定したグラフであり、縦軸にIc(A)、横軸に膜厚(μm)をとったグラフである。このグラフに、後述する実施例1に係るBi2223厚膜のデータを実線、比較例に係るBi2223厚膜のデータを破線で記載した。
すると、例えばIc値40Aを達成するのに、従来の技術に係るBi2223厚膜では、約300μmを要していた。そして当該約300μmの膜厚を要することが、Bi2223厚膜の基体または基板からの剥がれを招いていた。
これに対し、本発明に係るBi2223厚膜はIc値40Aを達成するのに、約200μmの膜厚で十分なことが判明した。
以上のことより、本発明に係るBi2223厚膜は、基体または基板との間にBi2212層を中間層として介さなくても、剥離が抑えられる200μm以下の膜厚において、膜幅3.5mmの試料でも40A以上の通電が可能となり、従来のBi2223厚膜と比較して、約3割程度Ic値を向上させることができた。この結果、本発明によれば、従来技術で必要とされる膜厚よりも薄い膜厚であっても、所定のIcを得ることが可能となり、作製される膜の膜厚が薄くなることによる剥離の抑制効果を得ることができる。従って、所望のIc値によっては、所定のIcを有しながら剥離の起こらないBi2223厚膜を、Bi2212層の作製を行わずに得ることも可能になり低コスト化が可能となる。
以下、実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
Bi、PbO、SrCO、CaCO、CuOの各粉末を、Bi:Pb:Sr:Ca:Cuのモル比で、1.90:0.30:1.90:2.05:3.05なるように秤量し混合して混合粉とした。この混合粉を、大気雰囲気下で780℃、10時間仮焼して仮焼粉とした。この仮焼粉と、粉砕メディアとしてのジルコニアボール、溶媒としてのトルエンと共にセラミックスポットに入れて、回転台にセットしボール粉砕をおこない、ボール粉砕が終了したスラリー状の仮焼粉を乾燥機で乾燥させた。この乾燥が完了した仮焼粉を、再度、大気雰囲気下で780℃、10時間焼成した後、ボール粉砕し、乾燥させた。尚、粉砕条件、乾燥条件は1回目と同条件で行った。そしてこの「焼成−粉砕−乾燥」の一連の操作を3回行って、BiSrCaCu相(以下、Bi2212相と記載する。)を主相として含み、他にCaPbO、CaCuO、CuO等の中間生成相を含む複合相を有する超電導合成粉を得た。
次に、当該超電導合成粉へ粒径5μmのPbO粉を、添加、混合して混合粉とした。このときのPbO添加量は、超電導合成粉の全体を(Bi、Pb)2+aSrCaCuと表記したとき、a=0.3、かつPb=0.4となるように定めた。
得られた混合粉へ、有機溶媒として、テルピネオール、フタル酸ブチルを各20Wt%、有機バインダーとして、ポリイソブチルメタクリレートを30Wt%混合し、3本ローラー等を用いて混練することによりPb添加Bi2223ペーストを得た。
Bi2212ペーストは、Bi、SrCO、CaCO、CuOの各粉末を、Bi:Sr:Ca:Cuのモル比で、2:2:1:2となるように秤量し混合して混合粉とすること、および、PbO粉を添加しないこと以外は、上述したPb添加Bi2223ペーストと同様の工程により製造した。
ここで、超電導厚膜を塗布する基体として、外径50φ×内径40φ×長さ100mmのシリンダー形状を有するMgO多結晶体であるMgO基体を準備した。
次に、Bi2212組成の配合比を有する超電導ペーストを、前記MgO基体にスプレー塗布し、乾燥させた後、大気中、焼成温度880〜885℃、30分間焼成した。この温度はBi2212相の大気中における融点に非常に近いものである。この結果、塗布されたBi2212相が部分溶融され、Bi2212部分熔融層が得られた。尚、Bi2212ペーストの塗布量は、当該Bi2212部分熔融層の厚さが約40μmとなる量に設定した。
得られた、MgO基体上に成膜されたBi2212部分熔融層上へ、Pb添加Bi2223ペーストをスプレー塗布し、乾燥させた。このとき、Pb添加Bi2223ペーストの膜厚は600μmとした。そして、当該Pb添加Bi2223ペーストが塗布されたMgO基体を、密閉容器内にて、焼成温度850℃、50時間焼成し、酸化物超電導体厚膜が成膜されたMgO基体を得た。
当該酸化物超電導体厚膜が成膜されたMgO基体を、CIP(冷間静水圧プレス)装置内へ設置し、3トン/cmの圧力で圧縮を行い、さらに続けて、再度、同条件にて、焼成、CIPによる圧縮、焼成を3回繰り返し行った。このとき、MgO基体上の酸化物超電導体厚膜は、300μmの膜厚となった。
(実施例2)
異なる量のPbOを添加、混合して混合粉とし、実施例2に係る9種類の試料を製造した。各試料のPbO添加量は、超電導合成粉の全体を、Bi1.90PbxSr1.90Ca2.05Cu3.05と表記したとき、Xの値が、0.30〜0.70の範囲で0.05毎の値をとるように、PbOの添加量を9段階としたものである。
当該9種類の超電導合成粉の試料を用い、実施例1と同様にして、実施例2に係る9種類のPb添加Bi2223ペーストを製造した。
そして、当該9種類のPb添加Bi2223ペーストを用い、実施例1と同様にして、実施例2に係るMgO基体上の9種類の酸化物超電導体厚膜を製造した。得られた厚膜試料の最終的な膜厚は、いずれも約300μmであった。尚、各MgO基体において、当該酸化物超電導体厚膜の剥離は認められなかった。
上述したMgO基体上の9種類の酸化物超電導体厚膜の、PbのEPMA信号強度比(Bi2223膜の表面におけるEPMA信号強度)/(Bi2223膜の界面におけるEPMA信号強度)、Ic、Jc、厚膜組成をBi1.90Pb Sr 1.90 Ca 2.05 Cu 3.05と表記したときの界面部分のYの値、表面部分のYの値を表1に示す。
Figure 2006236979
表1の結果から、Xの値が0.40以上、0.60以下で、PbのEPMA信号強度比が0.75以上となったとき、酸化物超電導体厚膜の表面においてPbのモル比が0.15以上となり、Jcも約6500A/cmを示した。
上記の結果より、前記超電導合成粉の原料混合時の組成を、(Bi、Pb)2+aSrCaCuと表記したとき、0.40<Pb<0.60となるようにPbOを添加した場合において、易移動Pbが機能していると考えられる。
(実施例3)
まず、実施例2説明した方法により、超電導合成粉の全体を、Bi1.90PbxSr1.90Ca2.05Cu3.05と表記したとき、Xの値が0.30である超電導合成粉を製造した。
次に、当該超電導合成粉へ後添加の形で、異なる量のPbOを添加、混合して混合粉とし、実施例3に係る9種類の試料を製造した。各試料のPbO添加量は、Xの値で0.30〜0.70の範囲で0.05毎の値をとるように、PbOの添加量を9段階としたものである。
当該9種類の超電導合成粉の試料を用い、実施例1と同様にして、実施例3に係る9種類のPb添加Bi2223ペーストを製造した。
そして、当該9種類のPb添加Bi2223ペーストを用い、実施例1、2と同様にして、実施例3に係るMgO基体上の9種類の酸化物超電導体厚膜を製造した。得られた厚膜試料の最終的な膜厚は、いずれも約300μmであった。尚、各MgO基体において、当該酸化物超電導体厚膜の剥離は認められなかった。
上述したMgO基体上の9種類の酸化物超電導体厚膜の、PbのEPMA信号強度比(Bi2223膜の表面におけるEPMA信号強度)/(Bi2223膜の界面におけるEPMA信号強度)、Ic、Jc、厚膜組成をBi1.90Pb Sr 1.90 Ca 2.05 Cu 3.05と表記したときの界面部分のYの値、表面部分のYの値を表2に示す。
Figure 2006236979
表2の結果から、Xの値が0.35以上、0.60以下で、PbのEPMA信号強度比が0.75以上となったとき、酸化物超電導体厚膜の外表面においてPbのモル比が0.15以上となり、Jcも大きく上昇して約6500A/cmを示した。
上記の結果より、超電導複合酸化物に易移動Pbを添加して、全体組成を、(Bi、Pb)2+aSrCaCuと表記したとき、0.35<Pb<0.60となるようにPbOを添加した場合において、易移動Pbが機能していると考えられる。
(比較例1)
実施例1で製造した超電導合成粉へPbOを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして比較例1に係るBi2223ペーストを製造した。そして当該比較例1に係るBi2223ペーストを用いて、実施例1と同様にして、比較例1に係るMgO基体上の酸化物超電導体厚膜を製造した。
ここで、実施例1および比較例に係る酸化物超電導体厚膜の、特性測定方法、測定結果について図面を参照しながら説明する。
図1(A)は、実施例1で得られた厚膜の断面をEPMA(electro probe micro analysis)を用いて、Mgの厚さ方向の濃度分析を行った結果であり、図1(B)は、同厚膜の断面をEPMAを用いて、Pbの厚さ方向の濃度分析を行った結果である。
図2(A)は、比較例で得られた厚膜の断面をEPMAを用いて、Mgの厚さ方向の濃度分析を行った結果であり、図2(B)は、同厚膜の断面をEPMAを用いて、Pbの厚さ方向の濃度分析を行った結果である。
図3は、実施例1および比較例1で得られたBi2223厚膜において、膜厚とIcとの関係を示したグラフであり、縦軸にIc値、横軸に膜厚をとったグラフである。
当該Icの測定は、各Bi2223厚膜を3.5mm幅で短冊状に切り出し、300μmの厚みを有する膜に、銀ペーストを用いて当該短冊状試料の両端部に電流端子、中央部付近に電圧端子を設け、当該試料を液体窒素により77Kに冷却して、4端子法(通電法)にて行った。そして、膜厚300μmのときの臨界電流値Icを測定した。次に、当該Bi2223厚膜を約50μm研磨し、膜厚が約250μmのときの臨界電流値Icを測定した。以下同様にして、測定と研削とを繰り返し行い、膜厚が約50μmのときの臨界電流値Icまで測定した。
そして、実施例1に係る当該測定結果を実線で、比較例に係る当該測定結果を破線で示したものである。
図4は、実施例1および比較例1で得られたBi2223厚膜において、膜厚毎のJcの値を示したグラフであり、縦軸にJc値、横軸に膜厚をとったグラフである。
図3に示した膜厚とIcとの関係を示したグラフのデータから、膜厚毎のJcの値を算定し、実施例1に係る当該測定結果を実線で、比較例に係る当該測定結果を破線で示したものである。
図1(A)(B)の結果より、実施例1では、当該界面の位置から、厚膜表面の位置までのPbの信号強度をみると、前記基板または基体と、酸化物超電導体厚膜との界面におけるPbのEPMA信号強度を1と規格化したとき、前記酸化物超電導体厚膜の表面におけるPbのEPMA信号強度が0.75以上であり、界面位置から厚膜表面の全域に亘って、ほぼ均一な信号強度が確認できた。これに対し、図2(A)(B)の結果より、比較例では、界面におけるPbのEPMA信号強度を1と規格化したとき、前記酸化物超電導体厚膜の表面におけるPbのEPMA信号強度が0.75未満であり、界面位置から厚膜表面に向かって、信号強度が減少していることが判明した。
即ち、実施例1では、焼成中における、当該Bi2223厚膜表面からのPb揮散を抑止出来たものと考えられる。この結果、前記酸化物超電導体厚膜の表面において、Pbのモル比が0.15以上である酸化物超電導体厚膜を得ることが出来たのに対し、比較例では、酸化物超電導体厚膜の表面において、Pbのモル比が0.15未満である。
この結果、図3、4に示すように、実施例1に係る酸化物超電導体厚膜では、全体が高いJcを発揮しているのに対し、比較例では、酸化物超電導体厚膜の表面に向かうに従ってJcの値が低下したものと考えられる。
(A)実施例1に係る厚膜の断面における、Mgの厚さ方向のEPMAによる濃度分析結果である。(B)実施例1に係る厚膜の断面における、Pbの厚さ方向のEPMAによる濃度分析結果である。 (A)比較例に係る厚膜の断面における、Mgの厚さ方向のEPMAによる濃度分析結果である。(B)比較例に係る厚膜の断面における、Pbの厚さ方向のEPMAによる濃度分析結果である。 実施例1および比較例に係るBi2223厚膜において、膜厚とIcとの関係を示したグラフである。 実施例1および比較例に係るBi2223厚膜において、膜厚毎のJcの値を示したグラフである。 酸化物超電導体製造用ペーストの製造工程例を示したフロー図である。 酸化物超電導体厚膜の製造工程例を示したフロー図である。
符号の説明
3.基体
4.Bi2212部分熔融層
5.Bi2223厚膜

Claims (6)

  1. 基板または基体の表面上に形成された酸化物超電導体厚膜であって、
    一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)で標記される酸化物超電導体を含み、
    前記基板または基体と、酸化物超電導体厚膜との界面におけるPbのEPMA信号強度を1と規格化したとき、
    前記酸化物超電導体厚膜の表面におけるPbのEPMA信号強度が0.75以上であることを特徴とする酸化物超電導体厚膜。
  2. 基板または基体の表面上に形成された一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)で標記される酸化物超電導体厚膜であって、
    前記酸化物超電導体厚膜の表面における一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)において、Pbのモル比が0.15以上であることを特徴とする酸化物超電導体厚膜。
  3. 一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)で標記される酸化物超電導体を製造するための酸化物超電導体厚膜製造用ペーストであって、
    一般式BiSrCaCuで標記される酸化物超電導体と、CaPbOと、CaCuOと、CuOと、PbOと、を含み、当該酸化物超電導体厚膜製造用ペーストの全体組成を一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、0≦a≦0.5)と標記した際、Pbのモル比が、0.4以上、0.6以下であることを特徴とする酸化物超電導体厚膜製造用ペースト。
  4. 一般式(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、−0.1≦a≦0.5)で標記される酸化物超電導体を製造するための酸化物超電導体厚膜製造用ペーストであって、
    複合酸化物である(Bi、Pb)2+aSrCaCuZ(但し、0≦a≦0.5)と、Pb化合物とを含むことを特徴とする酸化物超電導体厚膜製造用ペースト。
  5. 基板又は基体の表面上に、請求項3または4に記載の酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを塗布してこれを焼成し、さらに圧縮することを特徴とする酸化物超電導体厚膜の製造方法。
  6. 基板又は基体の表面上に、BiSrCaCuの組成を有する酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを塗布して焼成し、
    次に、当該焼成された厚膜上に、請求項3または4に記載の酸化物超電導体厚膜製造用ペーストを塗布してこれを焼成し、さらに圧縮することを特徴とする酸化物超電導体厚膜の製造方法。
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