JP2004253650A - 超伝導素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】超伝導層における誘電体基体側の領域の超伝導特性を向上させ、高周波特性に優れた超伝導素子を提供する。
【解決手段】Ca2PbO4を含有するBi系2223相酸化物の前駆体を準備し、誘電体基板11の両主面上に、前駆体を含有する超伝導厚膜12aを形成し、加熱することにより、誘電体基板11の両主面上に超伝導中間体層12bを形成し、超伝導中間体層12b上に金属厚膜13aを形成し、加熱することにより、誘電体基板11の両主面上に、超伝導層12および金属層13を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】Ca2PbO4を含有するBi系2223相酸化物の前駆体を準備し、誘電体基板11の両主面上に、前駆体を含有する超伝導厚膜12aを形成し、加熱することにより、誘電体基板11の両主面上に超伝導中間体層12bを形成し、超伝導中間体層12b上に金属厚膜13aを形成し、加熱することにより、誘電体基板11の両主面上に、超伝導層12および金属層13を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波帯域で伝送線路や共振器として用いられる超伝導素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、超伝導体のマイクロ波帯域における表面抵抗が小さいことを利用した高周波用デバイスの開発が進められている。このような高周波用デバイスでは、誘電体基板上に超伝導電極が形成された超伝導素子が用いられている。
【0003】
図10は、従来の超伝導素子を示す断面図である。図10に示すように、超伝導素子60は、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系セラミックからなる誘電体基板61と、誘電体基板61の両主面上に形成されたBi系2223相酸化物からなる超伝導層62と、超伝導層62上に形成されたAg層63と、からなる。また、超伝導層62およびAg層63により超伝導電極64が構成されている。
【0004】
この超伝導素子60は、例えば、誘電体基板61の両主面上に、焼き付け後に超伝導層62となる超伝導ペースト、焼き付け後にAg層63となるAgペーストを順に塗布し、焼き付けることにより作製される。この焼き付けの際に、Bi系2223相酸化物とAgとが反応し、Bi系2223相酸化物の粒成長およびc軸配向が促進され、超伝導素子60の超伝導特性が向上する。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
【特許文献1】
特開2000−196155号公報(図10、段落番号0027)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記超伝導ペーストは、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する。この前駆体は、例えば、Bi2O3,PbO,CaCO3,CuOなどの原料粉末を混合して仮焼することにより得られるものであり、Bi系2212相酸化物、Bi系2201相酸化物、Ca2PbO4、CuOなどで構成される。
【0007】
Bi系2223相酸化物は、上記前駆体が加熱されることにより合成されるものである。このときの合成反応は、以下のような化学式で模式的に表すことができる。
【0008】
しかし、従来のように、超伝導ペーストとAgペーストとを重ねて焼き付けると、上記化学式の左辺に示されたCa2PbO4がAgペースト側に偏析することが確認されている。すると、超伝導素子において、超伝導ペーストの誘電体基板側の領域では上記合成反応が起こらず、超伝導層における誘電体基板側の領域、特に超伝導層における誘電体基板との界面付近では、優れた超伝導特性を有するBi系2223相酸化物が生成されない。
【0009】
一方、超伝導素子を流れる高周波電流は、主に誘電体基板と超伝導層との界面に集中して流れる。つまり、超伝導素子の高周波特性は、超伝導層における誘電体基板側の領域の超伝導特性に大きく左右される。
【0010】
したがって、従来の方法では、超伝導層における誘電体基板側の領域の超伝導特性を向上させることができず、高周波特性に優れた超伝導素子を作製することができなかった。
【0011】
本発明は、超伝導層における誘電体基体側の領域の超伝導特性を向上させ、高周波特性に優れた超伝導素子を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の超伝導素子の製造方法は、Ca2PbO4を含有するBi系2223相酸化物の前駆体を準備する工程と、誘電体基体の外表面上に、前記前駆体を含有する超伝導厚膜を形成し、加熱することにより、前記誘電体基体の外表面上に超伝導中間体層を形成する工程と、前記超伝導中間体層上に金属厚膜を形成し、加熱することにより、前記誘電体基体の外表面上に、超伝導層および金属層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、前記超伝導中間体層において、Ca2PbO4(110)/{Bi系2212相酸化物(008)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(0010)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る第2の超伝導素子の製造方法は、Ca2PbO4(110)/{Bi系2201相酸化物(115)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であるBi系2223相酸化物の前駆体を準備する工程と、誘電体基体の外表面上に、前記前駆体を含有する超伝導厚膜を形成する工程と、前記超伝導厚膜上に金属厚膜を形成し、加熱することにより、前記誘電体基体の外表面上に、超伝導層および金属層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記第1、第2の超伝導素子の製造方法においては、前記超伝導厚膜を形成する際に、加熱後の前記超伝導層の厚さが300μm以下となるように、前記超伝導厚膜の厚さを調整することが好ましい。また、前記金属厚膜に含有される金属は、AgまたはAgを主体とした合金であることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る第1の超伝導素子の製造方法を示す工程断面図である。以下、図1を用いながら本実施形態の説明を行う。
【0017】
まず、Ca2PbO4を含有するBi系2223相酸化物の前駆体を準備する。この前駆体は、例えば、Bi2O3,PbO,CaCO3,CuOなどの原料粉末を混合して仮焼することにより得られるものであり、Bi系2212相酸化物、Bi系2201相酸化物、Ca2PbO4、CuOなどで構成される。なお、上記のように原料粉末を混合、仮焼して前駆体を作製する場合、仮焼の度合いにより、前駆体中にBi系2223相酸化物が含有されることもある。
【0018】
次に、図1(a)に示すように、誘電体基体となる誘電体基板11を準備する。誘電体基板11は、例えば、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系セラミック、Ba(Sn,Zr,Mg,Ta)O3系セラミックなどの多結晶誘電体や、MgO系セラミックなどの誘電体で構成される。
【0019】
次に、図1(b)に示すように、誘電体基板11の両主面上に、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する超伝導厚膜12aを形成する。超伝導厚膜12aには、Bi系2223相酸化物の前駆体の他に、例えば、有機ビヒクルなどが含有されている。
【0020】
なお、本願明細書において、「厚膜」とは、加熱により焼結する粉粒体を含有し、一定の保形性を有するもの全般を指す。典型的なものとしては、無機粉末に有機ビヒクルを混合したペーストが挙げられる。この場合、「厚膜を形成する」とは、ペーストを対象物上に塗布することを意味する。他にも、無機粉末に有機ビヒクルを混合してなるスラリーをシート状に成形したグリーンシートを対象物上に配置することや、上記スラリーを対象物上に噴霧することも、「厚膜を形成する」という定義に含まれる。本願明細書において、「超伝導厚膜」、「金属厚膜」と記載する場合、「厚膜」の解釈は上記定義に基づくものとする。例えば、超伝導厚膜12aにおいては、Bi系2223相酸化物の前駆体が粉粒体を構成する。
【0021】
次に、超伝導厚膜12aを加熱することにより、図1(c)に示すように、誘電体基板11の両主面上に超伝導中間体層12bを形成する。加熱時には、超伝導厚膜12aにおいてほぼ均一にBi系2223相酸化物の合成反応が進む。また、前駆体に含有されているCa2PbO4はBi系2223相酸化物に合成されるため、超伝導中間体層12bにおけるCa2PbO4の含有量が減少する。
【0022】
ここで、「超伝導中間体」とは、Bi系2223相酸化物の前駆体と、Bi系2223相酸化物と、が混在しているものを意味する。なお、超伝導厚膜12aを十分に加熱すれば、この時点で前駆体がすべてBi系2223相酸化物となることも考えられるが、便宜上、そのようなものも含めて「超伝導中間体」と定義するものとする。
【0023】
また、Ca2PbO4の偏析の影響を抑えるためには、超伝導中間体層12bにおいて、Ca2PbO4(110)/{Bi系2212相酸化物(008)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(0010)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であることが好ましい。なお、上記ピーク強度比の式において、カッコ内の数字は格子面を規定するMiller指数を表す。また、上記ピーク強度比の式にはBi系2223相酸化物(0010)が含まれているが、これは、上述した通り、前駆体の段階でBi系2223相酸化物が含有されている場合があるためである。
【0024】
Ca2PbO4の偏析の影響を完全になくすためには、超伝導中間体層12bにおけるCa2PbO4の含有量がゼロ、つまり、上記ピーク強度比がゼロとなるように加熱条件を調節すればよい。なお、Ca2PbO4の含有量がゼロになるとは、必ずしも前駆体がすべてBi系2223相酸化物に合成されることを意味するわけではなく、その他の前駆体が未反応のまま残留している場合もある。
【0025】
次に、図1(d)に示すように、超伝導中間体層上12b上に金属厚膜13aを形成する。金属厚膜13aにおいて粉粒体を構成する金属材料としては、例えば、Ag,Au,Ptなどを用いることができる。中でも、AgまたはAgを主体とした合金を用いることが好ましく、金属厚膜13aを加熱する際に、超伝導中間体層12bを構成する超伝導体の粒成長やc軸配向が促進されやすい。
【0026】
次に、金属厚膜13aを加熱することにより、図1(e)に示すように、誘電体基板11の両主面上に、超伝導層12および金属層13からなる超伝導電極14を形成し、超伝導素子10を完成させる。この加熱により、未反応のまま残留していた前駆体からBi系2223相酸化物が合成される。
【0027】
なお、超伝導厚膜12aや金属厚膜13を加熱する際には、一旦厚膜を加圧してから、加熱することが好ましい。加圧手段としては、静水圧プレスや一軸プレスなどを用いることができる。これにより、超伝導層12および金属層13を緻密化させると同時に、超伝導体のc軸配向を促進させることができる。
【0028】
また、超伝導中間体層12bの厚さが厚くなるにつれて、すなわち、金属厚膜13aが誘電体基板11から遠ざかるにつれて、超伝導中間体層12bにおける誘電体基板11側の領域では、粒成長やc軸配向が促進されにくくなる。上述した通り、超伝導素子の高周波特性は、超伝導中間体層12bにおける誘電体基板11側の領域の超伝導特性に支配されるため、超伝導中間体層12bが厚くなりすぎると、高周波特性は低下することになる。本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、最終的に超伝導層12の厚さが300μm以下となるように超伝導厚膜12aの厚さを調整すれば、十分に本発明の効果が得られることを確認している。このことは、後述する実施例4で検証する。
【0029】
以上のように、本発明に係る第1の超伝導素子の製造方法では、超伝導厚膜をあらかじめ単独で加熱することにより、Ca2PbO4の含有量を減少させ、金属厚膜を加熱する際に生じるCa2PbO4の偏析の影響を抑えることができる。
【0030】
なお、Bi2O3,PbO,CaCO3,CuOなどの原料粉末を焼成してBi系2223相酸化物を完全に合成し、このBi系2223相酸化物を用いて超伝導厚膜を形成すれば、超伝導厚膜を単独で加熱する必要はない。しかし、この場合は、焼成済みの不活性なBi系2223相酸化物を含有する超伝導厚膜を焼き付けることになり、緻密な超伝導層を形成することができない。したがって、超伝導厚膜において、Bi系2223相酸化物の前駆体の存在は必須である。
【0031】
また、本発明の主旨からすれば、Bi系2223相酸化物の前駆体にはCa2PbO4が含有されないことが理想的である。しかし、後述するように、前駆体からCa2PbO4を除くためには、やや複雑なプロセスを必要とする。つまり、本発明に係る第1の超伝導素子の製造方法は、原料粉末を混合して仮焼するといった単純なプロセスを用いてもCa2PbO4の影響を低減できるため、工業的メリットが非常に大きい。
【0032】
(実施形態2)
図2は、本発明に係る第2の超伝導素子の製造方法を示す工程断面図である。以下、図2を用いながら本実施形態の説明を行う。
【0033】
まず、Ca2PbO4(110)/{Bi系2201相酸化物(115)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であるBi系2223相酸化物の前駆体を準備する。この前駆体は、例えば、Bi系2212相の単相酸化物、Ca2CuO3およびCuOの混相酸化物などの成分を含有する。なお、前駆体であってもBi系2223相酸化物を含有する場合があるため、ピーク強度比を表す上記の式には、Bi系2223相酸化物(115)のピーク強度を含めている。
【0034】
次に、図2(a)に示すように、誘電体基板21の両主面上に、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する超伝導厚膜22aを形成する。次に、図2(b)に示すように、超伝導厚膜22a上に金属厚膜23を形成する。次に、超伝導厚膜22aおよび金属厚膜23を加熱することにより、図2(c)に示すように、誘電体基板21の両主面上に、超伝導層22および金属層23からなる超伝導電極を形成する。なお、実施形態1と共通する構成や工程については、その詳細な説明を省略する。
【0035】
以上のように、本発明に係る第2の超伝導素子の製造方法では、あらかじめBi系2223層の前駆体におけるCa2PbO4の含有量を減少させることにより、金属厚膜を加熱する際に生じるCa2PbO4の偏析の影響を抑えることができる。
【0036】
なお、超伝導素子の形状は、図1(e)や図2(c)に示されたものに限定されない。例えば、図3に示すように、貫通孔31aを有する直方体形状の誘電体ブロック31の外周面上に、超伝導層32および金属層33からなる超伝導電極34が形成されていてもよい。
【0037】
また、図4に示すように、直方体形状の誘電体ブロック41に形成された貫通孔41aの内周面上に、超伝導層42および金属層43からなる超伝導電極44が形成されていてもよい。なお、貫通孔41aの内周面上に超伝導層42を形成する場合、例えば、超伝導ペーストを付着させたブラシを貫通孔41a内部に挿入し、貫通孔41aの内周面に超伝導ペーストを塗布し、これを加熱すればよい。同様にして、金属層43も形成することができる。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
実施形態1における超伝導素子の製造方法に基づき、以下のようにして超伝導素子を作製し、評価した。
【0039】
まず、誘電体基体として、直径35mm、厚さ3mmのBa(Sn,Mg,Ta)O3系多結晶誘電体からなる円板状の誘電体基板を準備した。なお、この多結晶誘電体の比誘電率εrを、別途、両端短絡型誘電体共振器法(Hakki&Coleman法)により、共振周波数10GHzにて測定したところ、εr=24であった。
【0040】
次に、超伝導厚膜用の原料粉末として、Bi2O3,PbO,SrCO3,BaCO3,CaCO3,CuOの各粉末を準備した。次に、各原料粉末を、焼結後の組成がBi1.85Pb0.35Sr1.90Ba0.20Ca2.05Cu3.35O10.625(Bi系2223相酸化物)となるように調合した。
【0041】
次に、このようにして得られた調合物を、エタノールおよびイソプロピルアルコールの混合溶媒中でボールミル粉砕した後、780℃で12時間仮焼して仮焼物を得た。
【0042】
ここで、この仮焼物をボールミル粉砕して得られたBi系2223相酸化物の前駆体粉末についてX線回折を行った。装置にはリガク社製RAD−RXを用い、X線にはCu−Kα線を用いた。測定時の走査速度は10℃/min、走査ステップは0.02°とした。その結果得られたX線回折パターンを図5に示す。
【0043】
図5からわかるように、この前駆体粉末では、「□」で表されるBi系2212相酸化物と、「●」で表されるBi系2201相酸化物と、「△」で表されるCa2PbO4と、「▽」で表されるCuOと、が検出された。また、得られたX線回折パターンから、Ca2PbO4(110)/{Bi系2212相酸化物(008)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(0010)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるピーク強度比を求めたところ、その値は0.6であった。
【0044】
次に、前駆体粉末にテルピネオールおよびアルキッド樹脂を混合して、超伝導ペーストを作製した。
【0045】
一方、金属厚膜用の原料粉末としてAg粉末を準備し、このAg粉末にテルピネオールおよびアルキッド樹脂を混合して金属ペーストを作製した。
【0046】
次に、スクリーン印刷により、誘電体基板の両主面上に超伝導ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行い、誘電体基板の両主面上に超伝導中間体層を形成した。
【0047】
ここで、この超伝導中間体層について、上記仮焼粉末と同じ条件でX線回折を行った。その結果得られたX線回折パターンを図6に示す。図6からわかるように、この超伝導中間体層では、「〇」で表されるBi系2223相酸化物と、「×」で表されるBa(Sn,Mg,Ta)O3(基板の結晶相)と、が検出されたが、Ca2PbO4は検出されなかった。つまり、この超伝導中間体層において、上記ピーク強度比はゼロである。
【0048】
次に、スクリーン印刷により、超伝導中間体層上に金属ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスによる200MPaの加圧処理、および8%酸素雰囲気中における835℃、50時間の焼き付けを、この順に2回繰り返して行った。
【0049】
このようにして、誘電体基板の両主面上に、1層目として厚さ10μmの超伝導層、2層目として厚さ10μmの金属層が形成された超伝導素子を作製した。これを試料1とした。
【0050】
一方、試料1と同様にして、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系誘電体基板、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する超伝導ペースト、およびAgを含有する金属ペーストを準備した。
【0051】
次に、スクリーン印刷により、誘電体基板の両主面上に超伝導ペーストを塗布し、さらに超伝導ペースト上に金属ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行い、静水圧プレスによる200MPaの加圧処理、および8%酸素雰囲気中における835℃、50時間の焼き付けを、この順に3回繰り返して行った。
【0052】
このようにして、誘電体基板の両主面上に、1層目として厚さ10μmの超伝導層、2層目として厚さ10μmの金属層が形成された超伝導素子を作製した。これを試料2とした。
【0053】
以上のようにして作製された試料1,2を用いて、図7に示すようなTM010モードの誘電体共振器を作製した。誘電体共振器51は、無酸素銅からなる金属キャビティ52の開口部を覆うようにして無酸素銅からなる金属蓋53が載置されてなる金属ケース54と、金属ケース54内に樹脂シート55を介して載置された超伝導素子50(試料1,2)と、金属蓋53の一端側に設けられた励振ケーブル56aと、金属蓋53の他端側に設けられた励振ケーブル56bと、からなる。この誘電体共振器の無負荷Qを、誘電体共振器法により、温度30K〜100K、共振周波数2.1GHzにて測定した。その結果を図8のグラフに示す。
【0054】
図8からわかるように、超伝導厚膜を単独で加熱した試料1のほうが、試料2に比べて高いQが得られている。また、試料1では、Bi系2212相とBi系2223相とが混在しているときに見られる2段転移(70K付近におけるグラフの屈曲)が起こっていない。この2点から、試料1では、Ca2PbO4の偏析が防止され、超伝導層における誘電体基板側の領域でBi系2223相酸化物が主結晶相になっていることが伺える。
【0055】
(実施例2)
実施例1における試料1と同様にして、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系誘電体基板、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する超伝導ペースト、およびAgを含有する金属ペーストを準備した。
【0056】
次に、スクリーン印刷により、誘電体基板の両主面上に超伝導ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、超伝導ペーストを加熱することにより、誘電体基板の両主面上に超伝導中間体層を形成した。
【0057】
本実施例では、このときの加熱条件を調節することにより、両主面上に超伝導中間体層が形成された誘電体基板を8種類作製した。次に、各誘電体基板の超伝導中間体層について実施例1と同じ条件でX線回折を行い、得られたX線回折パターンから、Ca2PbO4(110)/{Bi系2212相酸化物(008)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(0010)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるピーク強度比を求めた。その結果を下記の表1に示す。
【0058】
次に、各誘電体基板において、超伝導中間体層上に金属ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行い、静水圧プレスによる200MPaの加圧処理、および8%酸素雰囲気中における835℃、50時間の焼き付けを、この順に3回繰り返して行った。
【0059】
このようにして、誘電体基板の両主面上に、1層目として厚さ10μmの超伝導層、2層目として厚さ10μmの金属層が形成された超伝導素子の試料11〜18を作製した。次に、各試料を用いて、実施例1と同様にTM010モードの誘電体共振器を作製し、温度70K、共振周波数2.1GHzにおける無負荷Qを測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1からわかるように、超伝導中間体層におけるピーク強度比が0.4以上を超える試料18については、無負荷Qが低くなっている。
【0062】
(実施例3)
実施形態2における超伝導素子の製造方法に基づき、以下のようにして超伝導素子を作製し、評価した。
【0063】
まず、実施例1における試料1と同様にして、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系誘電体基板、およびAgを含有する金属ペーストを準備した。
【0064】
次に、超伝導厚膜用の原料粉末として、Bi2O3,PbO,SrCO3,BaCO3,CaCO3,CuOの各粉末を準備した。次に、仮焼後にBi1.85Pb0.35Sr1.90Ba0.20Ca1.00Cu2.00O8.225(Bi系2212相酸化物)が生成するように各原料粉末を調合し、得られた調合物を仮焼、粉砕して、仮焼粉末を作製した。本実施例では、下記の表2に示すように、このときの仮焼条件を調節することにより、合計8種類の第1の仮焼粉末を作製した。
【0065】
一方、CaCO3およびCuOを、仮焼後の組成がCa1.05Cu1.35O2.40となるように調合し、得られた調合物を大気中において900℃で仮焼、粉砕することにより、Ca2CuO3およびCuOからなる第2の仮焼粉末を作製した。
【0066】
次に、焼結後の組成がBi1.85Pb0.35Sr1.90Ba0.20Ca2.05Cu3.35O10.625(Bi系2223相酸化物)となるように、上記8種類の第1の仮焼粉末に対してそれぞれ第2の仮焼粉末を混合し、8種類のBi系2223相酸化物の前駆体粉末を作製した。次に、各前駆体粉末について実施例1と同じ条件でX線回折を行い、得られたX線回折パターンから、Ca2PbO4(110)/{Bi系2201相酸化物(115)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるピーク強度比を求めた。その結果を下記の表2に示す。
【0067】
次に、各前駆体粉末にテルピネオールおよびアルキッド樹脂を混合して、超伝導ペーストを作製した。次に、スクリーン印刷により、誘電体基板の両主面上に超伝導ペーストを塗布し、さらに超伝導ペースト上に金属ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行い、静水圧プレスによる200MPaの加圧処理、および8%酸素雰囲気中における835℃、50時間の焼き付けを、この順に3回繰り返して行った。
【0068】
このようにして、誘電体基板の両主面上に、1層目として厚さ10μmの超伝導層、2層目として厚さ10μmの金属層が形成された超伝導素子の試料21〜28を作製した。次に、各試料を用いて、実施例1と同様にTM010モードの誘電体共振器を作製し、温度70K、共振周波数2.1GHzにおける無負荷Qを測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表2からわかるように、Bi系2223層酸化物の前駆体におけるピーク強度比が0.4を超える試料28については、無負荷Qが低くなっている。
【0071】
(実施例4)
超伝導ペーストの膜厚を変化させる以外は、実施例1の試料1と同じ作製条件にして、最終的に超伝導層の厚さが、3μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、290μm、300μm、310μm、320μmとなる超伝導素子の試料を作製し、これらを試料群Aとした。
【0072】
一方、超伝導ペーストの膜厚を変化させる以外は、実施例1の試料2と同じ作製条件にして、最終的に超伝導層の厚さが、3μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、290μm、300μm、310μm、320μmとなる超伝導素子の試料を作製し、これらを試料群Bとした。
【0073】
次に、各試料について、実施例1と同様にTM010モードの誘電体共振器を作製し、温度70K、共振周波数2.1GHzにおける無負荷Qを測定した。その結果を図9のグラフに示す。図9のグラフは、超伝導層の厚さに対する無負荷Qの値を、各試料群ごとにプロットしたものである。図9からわかるように、本発明に係る超伝導素子の試料群Aと従来の超伝導素子の試料群Bとでは、超伝導層の厚さが300μmを超えると、ほぼ無負荷Qが同じになっている。このことから、本発明の効果を十分に発揮させるためには、超伝導層の厚さが300μm以下であることが好ましいと言える。
【0074】
なお、この実験結果は、実施例1(請求項1)における超伝導素子の製造方法に基づくものであるが、実施例3(請求項3)における超伝導素子の製造方法においても、同様の結果が導かれるものと推測される。
【0075】
【発明の効果】
本発明に係る超伝導素子の製造方法では、金属厚膜を加熱する前に、超伝導中間体層あるいは超伝導厚膜におけるCa2PbO4の含有量を減少させることにより、Ca2PbO4が金属厚膜側に偏析しても、その影響を小さく抑えることができる。したがって、超伝導層における誘電体基体側の領域の超伝導特性を向上させ、高周波特性に優れた超伝導素子を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1における超伝導素子の製造方法を示す工程断面図である。
【図2】実施形態2における超伝導素子の製造方法を示す工程断面図である。
【図3】本発明により作製される超伝導素子の変形例を示す斜視図である。
【図4】本発明により作製される超伝導素子の変形例を示す斜視図である。
【図5】実施例1における前駆体粉末のX線回折パターンである。
【図6】実施例1における超伝導中間体層のX線回折パターンである。
【図7】実施例における誘電体共振器を示す断面図である。
【図8】試料1,2について、温度と無負荷Qとの関係を示すグラフである。
【図9】試料群A,Bについて、超伝導層の厚さと無負荷Qとの関係を示すグラフである。
【図10】従来の超伝導素子を示す断面図である。
【符号の説明】
10,20 超伝導素子
11,21 誘電体基板(誘電体基体)
12,22 超伝導層
12a,22a 超伝導厚膜
12b 超伝導中間体層
13,23 金属層
13a,23a 金属厚膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波帯域で伝送線路や共振器として用いられる超伝導素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、超伝導体のマイクロ波帯域における表面抵抗が小さいことを利用した高周波用デバイスの開発が進められている。このような高周波用デバイスでは、誘電体基板上に超伝導電極が形成された超伝導素子が用いられている。
【0003】
図10は、従来の超伝導素子を示す断面図である。図10に示すように、超伝導素子60は、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系セラミックからなる誘電体基板61と、誘電体基板61の両主面上に形成されたBi系2223相酸化物からなる超伝導層62と、超伝導層62上に形成されたAg層63と、からなる。また、超伝導層62およびAg層63により超伝導電極64が構成されている。
【0004】
この超伝導素子60は、例えば、誘電体基板61の両主面上に、焼き付け後に超伝導層62となる超伝導ペースト、焼き付け後にAg層63となるAgペーストを順に塗布し、焼き付けることにより作製される。この焼き付けの際に、Bi系2223相酸化物とAgとが反応し、Bi系2223相酸化物の粒成長およびc軸配向が促進され、超伝導素子60の超伝導特性が向上する。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
【特許文献1】
特開2000−196155号公報(図10、段落番号0027)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記超伝導ペーストは、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する。この前駆体は、例えば、Bi2O3,PbO,CaCO3,CuOなどの原料粉末を混合して仮焼することにより得られるものであり、Bi系2212相酸化物、Bi系2201相酸化物、Ca2PbO4、CuOなどで構成される。
【0007】
Bi系2223相酸化物は、上記前駆体が加熱されることにより合成されるものである。このときの合成反応は、以下のような化学式で模式的に表すことができる。
【0008】
しかし、従来のように、超伝導ペーストとAgペーストとを重ねて焼き付けると、上記化学式の左辺に示されたCa2PbO4がAgペースト側に偏析することが確認されている。すると、超伝導素子において、超伝導ペーストの誘電体基板側の領域では上記合成反応が起こらず、超伝導層における誘電体基板側の領域、特に超伝導層における誘電体基板との界面付近では、優れた超伝導特性を有するBi系2223相酸化物が生成されない。
【0009】
一方、超伝導素子を流れる高周波電流は、主に誘電体基板と超伝導層との界面に集中して流れる。つまり、超伝導素子の高周波特性は、超伝導層における誘電体基板側の領域の超伝導特性に大きく左右される。
【0010】
したがって、従来の方法では、超伝導層における誘電体基板側の領域の超伝導特性を向上させることができず、高周波特性に優れた超伝導素子を作製することができなかった。
【0011】
本発明は、超伝導層における誘電体基体側の領域の超伝導特性を向上させ、高周波特性に優れた超伝導素子を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の超伝導素子の製造方法は、Ca2PbO4を含有するBi系2223相酸化物の前駆体を準備する工程と、誘電体基体の外表面上に、前記前駆体を含有する超伝導厚膜を形成し、加熱することにより、前記誘電体基体の外表面上に超伝導中間体層を形成する工程と、前記超伝導中間体層上に金属厚膜を形成し、加熱することにより、前記誘電体基体の外表面上に、超伝導層および金属層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、前記超伝導中間体層において、Ca2PbO4(110)/{Bi系2212相酸化物(008)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(0010)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る第2の超伝導素子の製造方法は、Ca2PbO4(110)/{Bi系2201相酸化物(115)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であるBi系2223相酸化物の前駆体を準備する工程と、誘電体基体の外表面上に、前記前駆体を含有する超伝導厚膜を形成する工程と、前記超伝導厚膜上に金属厚膜を形成し、加熱することにより、前記誘電体基体の外表面上に、超伝導層および金属層を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記第1、第2の超伝導素子の製造方法においては、前記超伝導厚膜を形成する際に、加熱後の前記超伝導層の厚さが300μm以下となるように、前記超伝導厚膜の厚さを調整することが好ましい。また、前記金属厚膜に含有される金属は、AgまたはAgを主体とした合金であることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る第1の超伝導素子の製造方法を示す工程断面図である。以下、図1を用いながら本実施形態の説明を行う。
【0017】
まず、Ca2PbO4を含有するBi系2223相酸化物の前駆体を準備する。この前駆体は、例えば、Bi2O3,PbO,CaCO3,CuOなどの原料粉末を混合して仮焼することにより得られるものであり、Bi系2212相酸化物、Bi系2201相酸化物、Ca2PbO4、CuOなどで構成される。なお、上記のように原料粉末を混合、仮焼して前駆体を作製する場合、仮焼の度合いにより、前駆体中にBi系2223相酸化物が含有されることもある。
【0018】
次に、図1(a)に示すように、誘電体基体となる誘電体基板11を準備する。誘電体基板11は、例えば、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系セラミック、Ba(Sn,Zr,Mg,Ta)O3系セラミックなどの多結晶誘電体や、MgO系セラミックなどの誘電体で構成される。
【0019】
次に、図1(b)に示すように、誘電体基板11の両主面上に、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する超伝導厚膜12aを形成する。超伝導厚膜12aには、Bi系2223相酸化物の前駆体の他に、例えば、有機ビヒクルなどが含有されている。
【0020】
なお、本願明細書において、「厚膜」とは、加熱により焼結する粉粒体を含有し、一定の保形性を有するもの全般を指す。典型的なものとしては、無機粉末に有機ビヒクルを混合したペーストが挙げられる。この場合、「厚膜を形成する」とは、ペーストを対象物上に塗布することを意味する。他にも、無機粉末に有機ビヒクルを混合してなるスラリーをシート状に成形したグリーンシートを対象物上に配置することや、上記スラリーを対象物上に噴霧することも、「厚膜を形成する」という定義に含まれる。本願明細書において、「超伝導厚膜」、「金属厚膜」と記載する場合、「厚膜」の解釈は上記定義に基づくものとする。例えば、超伝導厚膜12aにおいては、Bi系2223相酸化物の前駆体が粉粒体を構成する。
【0021】
次に、超伝導厚膜12aを加熱することにより、図1(c)に示すように、誘電体基板11の両主面上に超伝導中間体層12bを形成する。加熱時には、超伝導厚膜12aにおいてほぼ均一にBi系2223相酸化物の合成反応が進む。また、前駆体に含有されているCa2PbO4はBi系2223相酸化物に合成されるため、超伝導中間体層12bにおけるCa2PbO4の含有量が減少する。
【0022】
ここで、「超伝導中間体」とは、Bi系2223相酸化物の前駆体と、Bi系2223相酸化物と、が混在しているものを意味する。なお、超伝導厚膜12aを十分に加熱すれば、この時点で前駆体がすべてBi系2223相酸化物となることも考えられるが、便宜上、そのようなものも含めて「超伝導中間体」と定義するものとする。
【0023】
また、Ca2PbO4の偏析の影響を抑えるためには、超伝導中間体層12bにおいて、Ca2PbO4(110)/{Bi系2212相酸化物(008)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(0010)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であることが好ましい。なお、上記ピーク強度比の式において、カッコ内の数字は格子面を規定するMiller指数を表す。また、上記ピーク強度比の式にはBi系2223相酸化物(0010)が含まれているが、これは、上述した通り、前駆体の段階でBi系2223相酸化物が含有されている場合があるためである。
【0024】
Ca2PbO4の偏析の影響を完全になくすためには、超伝導中間体層12bにおけるCa2PbO4の含有量がゼロ、つまり、上記ピーク強度比がゼロとなるように加熱条件を調節すればよい。なお、Ca2PbO4の含有量がゼロになるとは、必ずしも前駆体がすべてBi系2223相酸化物に合成されることを意味するわけではなく、その他の前駆体が未反応のまま残留している場合もある。
【0025】
次に、図1(d)に示すように、超伝導中間体層上12b上に金属厚膜13aを形成する。金属厚膜13aにおいて粉粒体を構成する金属材料としては、例えば、Ag,Au,Ptなどを用いることができる。中でも、AgまたはAgを主体とした合金を用いることが好ましく、金属厚膜13aを加熱する際に、超伝導中間体層12bを構成する超伝導体の粒成長やc軸配向が促進されやすい。
【0026】
次に、金属厚膜13aを加熱することにより、図1(e)に示すように、誘電体基板11の両主面上に、超伝導層12および金属層13からなる超伝導電極14を形成し、超伝導素子10を完成させる。この加熱により、未反応のまま残留していた前駆体からBi系2223相酸化物が合成される。
【0027】
なお、超伝導厚膜12aや金属厚膜13を加熱する際には、一旦厚膜を加圧してから、加熱することが好ましい。加圧手段としては、静水圧プレスや一軸プレスなどを用いることができる。これにより、超伝導層12および金属層13を緻密化させると同時に、超伝導体のc軸配向を促進させることができる。
【0028】
また、超伝導中間体層12bの厚さが厚くなるにつれて、すなわち、金属厚膜13aが誘電体基板11から遠ざかるにつれて、超伝導中間体層12bにおける誘電体基板11側の領域では、粒成長やc軸配向が促進されにくくなる。上述した通り、超伝導素子の高周波特性は、超伝導中間体層12bにおける誘電体基板11側の領域の超伝導特性に支配されるため、超伝導中間体層12bが厚くなりすぎると、高周波特性は低下することになる。本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、最終的に超伝導層12の厚さが300μm以下となるように超伝導厚膜12aの厚さを調整すれば、十分に本発明の効果が得られることを確認している。このことは、後述する実施例4で検証する。
【0029】
以上のように、本発明に係る第1の超伝導素子の製造方法では、超伝導厚膜をあらかじめ単独で加熱することにより、Ca2PbO4の含有量を減少させ、金属厚膜を加熱する際に生じるCa2PbO4の偏析の影響を抑えることができる。
【0030】
なお、Bi2O3,PbO,CaCO3,CuOなどの原料粉末を焼成してBi系2223相酸化物を完全に合成し、このBi系2223相酸化物を用いて超伝導厚膜を形成すれば、超伝導厚膜を単独で加熱する必要はない。しかし、この場合は、焼成済みの不活性なBi系2223相酸化物を含有する超伝導厚膜を焼き付けることになり、緻密な超伝導層を形成することができない。したがって、超伝導厚膜において、Bi系2223相酸化物の前駆体の存在は必須である。
【0031】
また、本発明の主旨からすれば、Bi系2223相酸化物の前駆体にはCa2PbO4が含有されないことが理想的である。しかし、後述するように、前駆体からCa2PbO4を除くためには、やや複雑なプロセスを必要とする。つまり、本発明に係る第1の超伝導素子の製造方法は、原料粉末を混合して仮焼するといった単純なプロセスを用いてもCa2PbO4の影響を低減できるため、工業的メリットが非常に大きい。
【0032】
(実施形態2)
図2は、本発明に係る第2の超伝導素子の製造方法を示す工程断面図である。以下、図2を用いながら本実施形態の説明を行う。
【0033】
まず、Ca2PbO4(110)/{Bi系2201相酸化物(115)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であるBi系2223相酸化物の前駆体を準備する。この前駆体は、例えば、Bi系2212相の単相酸化物、Ca2CuO3およびCuOの混相酸化物などの成分を含有する。なお、前駆体であってもBi系2223相酸化物を含有する場合があるため、ピーク強度比を表す上記の式には、Bi系2223相酸化物(115)のピーク強度を含めている。
【0034】
次に、図2(a)に示すように、誘電体基板21の両主面上に、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する超伝導厚膜22aを形成する。次に、図2(b)に示すように、超伝導厚膜22a上に金属厚膜23を形成する。次に、超伝導厚膜22aおよび金属厚膜23を加熱することにより、図2(c)に示すように、誘電体基板21の両主面上に、超伝導層22および金属層23からなる超伝導電極を形成する。なお、実施形態1と共通する構成や工程については、その詳細な説明を省略する。
【0035】
以上のように、本発明に係る第2の超伝導素子の製造方法では、あらかじめBi系2223層の前駆体におけるCa2PbO4の含有量を減少させることにより、金属厚膜を加熱する際に生じるCa2PbO4の偏析の影響を抑えることができる。
【0036】
なお、超伝導素子の形状は、図1(e)や図2(c)に示されたものに限定されない。例えば、図3に示すように、貫通孔31aを有する直方体形状の誘電体ブロック31の外周面上に、超伝導層32および金属層33からなる超伝導電極34が形成されていてもよい。
【0037】
また、図4に示すように、直方体形状の誘電体ブロック41に形成された貫通孔41aの内周面上に、超伝導層42および金属層43からなる超伝導電極44が形成されていてもよい。なお、貫通孔41aの内周面上に超伝導層42を形成する場合、例えば、超伝導ペーストを付着させたブラシを貫通孔41a内部に挿入し、貫通孔41aの内周面に超伝導ペーストを塗布し、これを加熱すればよい。同様にして、金属層43も形成することができる。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
実施形態1における超伝導素子の製造方法に基づき、以下のようにして超伝導素子を作製し、評価した。
【0039】
まず、誘電体基体として、直径35mm、厚さ3mmのBa(Sn,Mg,Ta)O3系多結晶誘電体からなる円板状の誘電体基板を準備した。なお、この多結晶誘電体の比誘電率εrを、別途、両端短絡型誘電体共振器法(Hakki&Coleman法)により、共振周波数10GHzにて測定したところ、εr=24であった。
【0040】
次に、超伝導厚膜用の原料粉末として、Bi2O3,PbO,SrCO3,BaCO3,CaCO3,CuOの各粉末を準備した。次に、各原料粉末を、焼結後の組成がBi1.85Pb0.35Sr1.90Ba0.20Ca2.05Cu3.35O10.625(Bi系2223相酸化物)となるように調合した。
【0041】
次に、このようにして得られた調合物を、エタノールおよびイソプロピルアルコールの混合溶媒中でボールミル粉砕した後、780℃で12時間仮焼して仮焼物を得た。
【0042】
ここで、この仮焼物をボールミル粉砕して得られたBi系2223相酸化物の前駆体粉末についてX線回折を行った。装置にはリガク社製RAD−RXを用い、X線にはCu−Kα線を用いた。測定時の走査速度は10℃/min、走査ステップは0.02°とした。その結果得られたX線回折パターンを図5に示す。
【0043】
図5からわかるように、この前駆体粉末では、「□」で表されるBi系2212相酸化物と、「●」で表されるBi系2201相酸化物と、「△」で表されるCa2PbO4と、「▽」で表されるCuOと、が検出された。また、得られたX線回折パターンから、Ca2PbO4(110)/{Bi系2212相酸化物(008)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(0010)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるピーク強度比を求めたところ、その値は0.6であった。
【0044】
次に、前駆体粉末にテルピネオールおよびアルキッド樹脂を混合して、超伝導ペーストを作製した。
【0045】
一方、金属厚膜用の原料粉末としてAg粉末を準備し、このAg粉末にテルピネオールおよびアルキッド樹脂を混合して金属ペーストを作製した。
【0046】
次に、スクリーン印刷により、誘電体基板の両主面上に超伝導ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行い、誘電体基板の両主面上に超伝導中間体層を形成した。
【0047】
ここで、この超伝導中間体層について、上記仮焼粉末と同じ条件でX線回折を行った。その結果得られたX線回折パターンを図6に示す。図6からわかるように、この超伝導中間体層では、「〇」で表されるBi系2223相酸化物と、「×」で表されるBa(Sn,Mg,Ta)O3(基板の結晶相)と、が検出されたが、Ca2PbO4は検出されなかった。つまり、この超伝導中間体層において、上記ピーク強度比はゼロである。
【0048】
次に、スクリーン印刷により、超伝導中間体層上に金属ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスによる200MPaの加圧処理、および8%酸素雰囲気中における835℃、50時間の焼き付けを、この順に2回繰り返して行った。
【0049】
このようにして、誘電体基板の両主面上に、1層目として厚さ10μmの超伝導層、2層目として厚さ10μmの金属層が形成された超伝導素子を作製した。これを試料1とした。
【0050】
一方、試料1と同様にして、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系誘電体基板、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する超伝導ペースト、およびAgを含有する金属ペーストを準備した。
【0051】
次に、スクリーン印刷により、誘電体基板の両主面上に超伝導ペーストを塗布し、さらに超伝導ペースト上に金属ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行い、静水圧プレスによる200MPaの加圧処理、および8%酸素雰囲気中における835℃、50時間の焼き付けを、この順に3回繰り返して行った。
【0052】
このようにして、誘電体基板の両主面上に、1層目として厚さ10μmの超伝導層、2層目として厚さ10μmの金属層が形成された超伝導素子を作製した。これを試料2とした。
【0053】
以上のようにして作製された試料1,2を用いて、図7に示すようなTM010モードの誘電体共振器を作製した。誘電体共振器51は、無酸素銅からなる金属キャビティ52の開口部を覆うようにして無酸素銅からなる金属蓋53が載置されてなる金属ケース54と、金属ケース54内に樹脂シート55を介して載置された超伝導素子50(試料1,2)と、金属蓋53の一端側に設けられた励振ケーブル56aと、金属蓋53の他端側に設けられた励振ケーブル56bと、からなる。この誘電体共振器の無負荷Qを、誘電体共振器法により、温度30K〜100K、共振周波数2.1GHzにて測定した。その結果を図8のグラフに示す。
【0054】
図8からわかるように、超伝導厚膜を単独で加熱した試料1のほうが、試料2に比べて高いQが得られている。また、試料1では、Bi系2212相とBi系2223相とが混在しているときに見られる2段転移(70K付近におけるグラフの屈曲)が起こっていない。この2点から、試料1では、Ca2PbO4の偏析が防止され、超伝導層における誘電体基板側の領域でBi系2223相酸化物が主結晶相になっていることが伺える。
【0055】
(実施例2)
実施例1における試料1と同様にして、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系誘電体基板、Bi系2223相酸化物の前駆体を含有する超伝導ペースト、およびAgを含有する金属ペーストを準備した。
【0056】
次に、スクリーン印刷により、誘電体基板の両主面上に超伝導ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、超伝導ペーストを加熱することにより、誘電体基板の両主面上に超伝導中間体層を形成した。
【0057】
本実施例では、このときの加熱条件を調節することにより、両主面上に超伝導中間体層が形成された誘電体基板を8種類作製した。次に、各誘電体基板の超伝導中間体層について実施例1と同じ条件でX線回折を行い、得られたX線回折パターンから、Ca2PbO4(110)/{Bi系2212相酸化物(008)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(0010)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるピーク強度比を求めた。その結果を下記の表1に示す。
【0058】
次に、各誘電体基板において、超伝導中間体層上に金属ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行い、静水圧プレスによる200MPaの加圧処理、および8%酸素雰囲気中における835℃、50時間の焼き付けを、この順に3回繰り返して行った。
【0059】
このようにして、誘電体基板の両主面上に、1層目として厚さ10μmの超伝導層、2層目として厚さ10μmの金属層が形成された超伝導素子の試料11〜18を作製した。次に、各試料を用いて、実施例1と同様にTM010モードの誘電体共振器を作製し、温度70K、共振周波数2.1GHzにおける無負荷Qを測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1からわかるように、超伝導中間体層におけるピーク強度比が0.4以上を超える試料18については、無負荷Qが低くなっている。
【0062】
(実施例3)
実施形態2における超伝導素子の製造方法に基づき、以下のようにして超伝導素子を作製し、評価した。
【0063】
まず、実施例1における試料1と同様にして、Ba(Sn,Mg,Ta)O3系誘電体基板、およびAgを含有する金属ペーストを準備した。
【0064】
次に、超伝導厚膜用の原料粉末として、Bi2O3,PbO,SrCO3,BaCO3,CaCO3,CuOの各粉末を準備した。次に、仮焼後にBi1.85Pb0.35Sr1.90Ba0.20Ca1.00Cu2.00O8.225(Bi系2212相酸化物)が生成するように各原料粉末を調合し、得られた調合物を仮焼、粉砕して、仮焼粉末を作製した。本実施例では、下記の表2に示すように、このときの仮焼条件を調節することにより、合計8種類の第1の仮焼粉末を作製した。
【0065】
一方、CaCO3およびCuOを、仮焼後の組成がCa1.05Cu1.35O2.40となるように調合し、得られた調合物を大気中において900℃で仮焼、粉砕することにより、Ca2CuO3およびCuOからなる第2の仮焼粉末を作製した。
【0066】
次に、焼結後の組成がBi1.85Pb0.35Sr1.90Ba0.20Ca2.05Cu3.35O10.625(Bi系2223相酸化物)となるように、上記8種類の第1の仮焼粉末に対してそれぞれ第2の仮焼粉末を混合し、8種類のBi系2223相酸化物の前駆体粉末を作製した。次に、各前駆体粉末について実施例1と同じ条件でX線回折を行い、得られたX線回折パターンから、Ca2PbO4(110)/{Bi系2201相酸化物(115)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(115)}で表されるピーク強度比を求めた。その結果を下記の表2に示す。
【0067】
次に、各前駆体粉末にテルピネオールおよびアルキッド樹脂を混合して、超伝導ペーストを作製した。次に、スクリーン印刷により、誘電体基板の両主面上に超伝導ペーストを塗布し、さらに超伝導ペースト上に金属ペーストを塗布し、400℃で加熱して有機成分を揮発燃焼させた。次に、静水圧プレスにより200MPaの加圧処理を施した後、8%酸素雰囲気中において835℃で50時間焼き付けを行い、静水圧プレスによる200MPaの加圧処理、および8%酸素雰囲気中における835℃、50時間の焼き付けを、この順に3回繰り返して行った。
【0068】
このようにして、誘電体基板の両主面上に、1層目として厚さ10μmの超伝導層、2層目として厚さ10μmの金属層が形成された超伝導素子の試料21〜28を作製した。次に、各試料を用いて、実施例1と同様にTM010モードの誘電体共振器を作製し、温度70K、共振周波数2.1GHzにおける無負荷Qを測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表2からわかるように、Bi系2223層酸化物の前駆体におけるピーク強度比が0.4を超える試料28については、無負荷Qが低くなっている。
【0071】
(実施例4)
超伝導ペーストの膜厚を変化させる以外は、実施例1の試料1と同じ作製条件にして、最終的に超伝導層の厚さが、3μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、290μm、300μm、310μm、320μmとなる超伝導素子の試料を作製し、これらを試料群Aとした。
【0072】
一方、超伝導ペーストの膜厚を変化させる以外は、実施例1の試料2と同じ作製条件にして、最終的に超伝導層の厚さが、3μm、5μm、10μm、20μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、290μm、300μm、310μm、320μmとなる超伝導素子の試料を作製し、これらを試料群Bとした。
【0073】
次に、各試料について、実施例1と同様にTM010モードの誘電体共振器を作製し、温度70K、共振周波数2.1GHzにおける無負荷Qを測定した。その結果を図9のグラフに示す。図9のグラフは、超伝導層の厚さに対する無負荷Qの値を、各試料群ごとにプロットしたものである。図9からわかるように、本発明に係る超伝導素子の試料群Aと従来の超伝導素子の試料群Bとでは、超伝導層の厚さが300μmを超えると、ほぼ無負荷Qが同じになっている。このことから、本発明の効果を十分に発揮させるためには、超伝導層の厚さが300μm以下であることが好ましいと言える。
【0074】
なお、この実験結果は、実施例1(請求項1)における超伝導素子の製造方法に基づくものであるが、実施例3(請求項3)における超伝導素子の製造方法においても、同様の結果が導かれるものと推測される。
【0075】
【発明の効果】
本発明に係る超伝導素子の製造方法では、金属厚膜を加熱する前に、超伝導中間体層あるいは超伝導厚膜におけるCa2PbO4の含有量を減少させることにより、Ca2PbO4が金属厚膜側に偏析しても、その影響を小さく抑えることができる。したがって、超伝導層における誘電体基体側の領域の超伝導特性を向上させ、高周波特性に優れた超伝導素子を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1における超伝導素子の製造方法を示す工程断面図である。
【図2】実施形態2における超伝導素子の製造方法を示す工程断面図である。
【図3】本発明により作製される超伝導素子の変形例を示す斜視図である。
【図4】本発明により作製される超伝導素子の変形例を示す斜視図である。
【図5】実施例1における前駆体粉末のX線回折パターンである。
【図6】実施例1における超伝導中間体層のX線回折パターンである。
【図7】実施例における誘電体共振器を示す断面図である。
【図8】試料1,2について、温度と無負荷Qとの関係を示すグラフである。
【図9】試料群A,Bについて、超伝導層の厚さと無負荷Qとの関係を示すグラフである。
【図10】従来の超伝導素子を示す断面図である。
【符号の説明】
10,20 超伝導素子
11,21 誘電体基板(誘電体基体)
12,22 超伝導層
12a,22a 超伝導厚膜
12b 超伝導中間体層
13,23 金属層
13a,23a 金属厚膜
Claims (5)
- Ca2PbO4を含有するBi系2223相酸化物の前駆体を準備する工程と、
誘電体基体の外表面上に、前記前駆体を含有する超伝導厚膜を形成し、加熱することにより、前記誘電体基体の外表面上に超伝導中間体層を形成する工程と、
前記超伝導中間体層上に金属厚膜を形成し、加熱することにより、前記誘電体基体の外表面上に、超伝導層および金属層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする超伝導素子の製造方法。 - 前記超伝導中間体層において、
Ca2PbO4(110)/{Bi系2212相酸化物(008)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(0010)+Bi系2223相酸化物(115)}
で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であることを特徴とする、請求項1に記載の超伝導素子の製造方法。 - Ca2PbO4(110)/{Bi系2201相酸化物(115)+Bi系2212相酸化物(115)+Bi系2223相酸化物(115)}
で表されるX線回折パターンにおけるピーク強度比が0.4以下であるBi系2223相酸化物の前駆体を準備する工程と、
誘電体基体の外表面上に、前記前駆体を含有する超伝導厚膜を形成する工程と、
前記超伝導厚膜上に金属厚膜を形成し、加熱することにより、前記誘電体基体の外表面上に、超伝導層および金属層を形成する工程と、
を備えることを特徴とする超伝導素子の製造方法。 - 前記超伝導厚膜を形成する際に、加熱後の前記超伝導層の厚さが300μm以下となるように、前記超伝導厚膜の厚さを調整することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の超伝導素子の製造方法。
- 前記金属厚膜に含有される金属は、AgまたはAgを主体とした合金であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の超伝導素子の製造方法。
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2003
- 2003-02-20 JP JP2003043092A patent/JP2004253650A/ja active Pending
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