JP2006233077A - 樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた樹脂結合型磁石及びその製造方法 - Google Patents

樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた樹脂結合型磁石及びその製造方法 Download PDF

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Takashi Sato
崇志 佐藤
Shinichi Hayashi
真一 林
Hidetoshi Yamabe
秀敏 山辺
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Abstract

【課題】磁性粉末と熱硬化性樹脂バインダーと有機過酸化物を含有し、工業的に優れた可使時間と硬化特性とを有する樹脂結合型磁石用組成物、及びそれを用いて磁性粉末を十分に高配向化させ、磁気特性や機械強度などに優れた樹脂結合型磁石を効率的に生産しうる製造方法を提供する。
【解決手段】構成元素中に希土類元素および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とを主として含有する樹脂結合型磁石用組成物において、磁性粉末(A)は、無機燐酸または無機燐酸化合物で表面処理した後、さらにチタネート系カップリング剤または有機シランモノマーで表面処理し、樹脂バインダー(B)は、有機過酸化物(B−2)を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、さらに光重合開始剤(C)が配合されていることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物によって提供。
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂結合型磁石用組成物、それを用いた樹脂結合型磁石及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、磁性粉末と熱硬化性樹脂バインダーと有機過酸化物を含有し、工業的に優れた可使時間と硬化特性とを有する樹脂結合型磁石用組成物、及びそれを用いて磁性粉末を十分に高配向化させ、磁気特性や機械強度などに優れた樹脂結合型磁石を効率的に生産しうる製造方法、並びにそれから得られる樹脂結合型磁石に関する。
従来から、フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石等は、モーターをはじめとする種々の用途に用いられている。しかし、これらの磁石は、主に焼結法により製造されるために、一般に脆く、薄肉のものや複雑な形状のものが得難いという欠点を有している。それに加えて、焼結時の収縮が15〜20%と大きいため、寸法精度の高いものが得られず、精度を上げるには研磨等の後加工が必要であるという欠点をも有している。
一方、樹脂結合型磁石は、これらの欠点を解決すると共に新しい用途をも開拓するために、近年になって開発されたものであるが、通常は、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性樹脂をバインダーとし、これに磁性粉末を充填することにより製造されている。
しかし、こうした熱可塑性樹脂をバインダーとして用いる樹脂結合型磁石は、成形時に200℃以上の高温に晒されるため、磁気特性、特に保磁力や角型性の低下を免れず、成形後の保磁力などの磁気特性の低下を低く抑えた樹脂結合型磁石成形物を得るのが難しかった。
また、エポキシ樹脂やビス・マレイミドトリアジン樹脂などの熱硬化性樹脂をバインダーとし、これに磁性粉末を充填したものも提案されているが、バインダー量が希少であるため圧縮成形法による単純成形物しか得られていない。
こうした状況下、近年、小型モーター、音響機器、OA機器等に用いられる樹脂結合型磁石は、機器の小型化の要請から、磁気特性に優れ、かつ複雑形状のものが要求されている。しかし、従来の方法によって得られる単純形状の樹脂結合型磁石では、上記用途に使用するには不十分であり、これら樹脂結合型磁石の早期改良が望まれていた。
この点を改良するため、熱硬化性樹脂をバインダーとした樹脂結合型磁石用組成物を射出成形法で成形することによって樹脂結合型磁石を作製することが提案されている(特許文献1参照)。これは、磁性粉末と不飽和ポリエステル樹脂との組成物を射出成形法やトランスファー成形法で製造することで、特に保磁力や配向度に優れた磁気特性を有するだけでなく、形状自由度、成形性、機械強さをも有する樹脂結合型磁石を得ようとするものである。
この樹脂結合型磁石は、圧縮成形によるためバインダー量が少ないので高磁気特性ではあるが成形性が悪く単純形状しか得られない従来の熱硬化性樹脂結合型磁石が有する欠点を解消したものであるが、原料組成物の可使時間が短いため、製造ロスが生じていた。
そのため、本出願人は、磁気特性だけでなく、形状自由度、成形性、機械強さにも優れた樹脂結合型磁石を効率的に製造することを目的として、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂を樹脂バインダーとし、有機過酸化物を含み、さらに、N−オキシル類化合物を配合した、可使時間に優れる樹脂結合型磁石用組成物を提案した(特許文献3参照)。ここで有機過酸化物は、熱硬化反応を開始させる硬化剤として、また、N−オキシル類化合物は、可使時間を著しく低下させるラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂の複雑な反応促進効果を抑制するために添加されている。
これにより、特に、高温成形時に磁性粉末が酸化劣化して磁気特性が低下するのを防止し、配向性が重要となる異方性磁石材料を高配向化することができ、優れた性能を有する樹脂結合型磁石が得られるようになった。しかし、工業的には、磁石材料の配向を完了させてから、熱硬化性樹脂を熱硬化させなければならず、成形に長い時間を要するので生産性に課題を抱えていた。特に、高磁気特性を得るためには、異方性磁石材料のさらなる高配向化が要求されており、これを実現するためには、樹脂粘度が低下している時間をある程度確保しなければならない。そこで、金型の温度を低く設定するが、硬化のための熱量が少ないため、さらに成形に長時間を費やすことになってしまう。
このような状況下、金型の温度を低く設定して異方性磁石材料の高配向化を実現しながら、硬化のための成形時間を長時間化しなくてすむ樹脂結合型磁石用組成物及びその成形方法が切望されていた。
特開2000−119498号公報 特開2003−92209号公報
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、磁性粉末と熱硬化性樹脂バインダーと有機過酸化物を含有し、工業的に優れた可使時間と硬化特性とを有する樹脂結合型磁石用組成物、及びそれを用いて磁性粉末を十分に高配向化させ、磁気特性や機械強度などに優れた樹脂結合型磁石を効率的に生産しうる製造方法を提供することにある。
本発明者らは、かかる課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダーに、光重合開始剤を配合することにより樹脂結合型磁石用組成物を調製し、これを加熱・流動化し、金型のキャビティ内に充填してから、紫外線を照射すると短時間で硬化することを確認し、このような樹脂結合型磁石用組成物を用いれば磁性粉末の配向時間を十分に確保できるようになり、特に保磁力や配向度などの磁気特性や、形状自由度、成形性などに優れた樹脂結合型磁石がきわめて効率的に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、構成元素中に希土類元素および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とを主として含有する樹脂結合型磁石用組成物において、磁性粉末(A)は、無機燐酸または無機燐酸化合物で表面処理した後、さらにチタネート系カップリング剤または有機シランモノマーで表面処理し、一方、樹脂バインダー(B)は、有機過酸化物(B−2)を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、さらに光重合開始剤(C)を配合することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、磁性粉末(A)は、異方性磁場が4000kA/m(50kOe)以上であり、全磁性粉末中に粒径が100μm以下の粒子を50重量%以上含有することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、熱硬化性樹脂(B−1)が、150℃以下の温度において液状であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、有機過酸化物(B−2)は、150℃以下の温度において熱硬化性樹脂(B−1)を硬化可能であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、さらに、N−オキシル類化合物(D)を配合することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、光重合開始剤(C)の添加量が、熱硬化性樹脂(B−1)100重量部に対して、0.1〜15重量部であることを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物が提供される。
一方、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明の樹脂結合型磁石用組成物を、光透過窓を有する金型を用いて、射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、またはトランスファー成形法のいずれかの成形方法で成形することを特徴とする樹脂結合型磁石の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、前記成形方法は、樹脂結合型磁石用組成物を、光透過窓を有する金型のキャビティ内に供給する工程、キャビティ内に供給された樹脂結合型磁石用組成物の成形物を150℃以下の温度で加熱し、成形物中の磁性粉末が配向するまで半硬化状態で保持する工程、及び、引き続き半硬化状態の成形物に光透過窓から光を照射して十分に硬化する工程を含むことを特徴とする樹脂結合型磁石の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、光の照射時間が、10〜30秒であることを特徴とする樹脂結合型磁石の製造方法が提供される。
一方、本発明の第10の発明によれば、第7〜9のいずれかの発明に係る製造方法により得られた樹脂結合型磁石が提供される。
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、特定の被覆剤で表面処理された磁性粉末と、有機過酸化物を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダーに、さらに光重合開始剤を含有しているため、この樹脂結合型磁石用組成物の成形時に紫外線を照射することにより、高配向で高磁気特性を有する樹脂結合型磁石を短時間で得ることができる。
得られた樹脂結合型磁石は、高配向で高磁気特性を有するだけでなく、薄肉で複雑形状に成形できることから、工業的に極めて優れたものになる。したがって、一般家電製品、通信・音響機器、医療機器、一般産業機器にいたる幅広い分野で特に有用であり、その工業的価値は極めて大きい。
次に、本発明の樹脂結合型磁石用組成物、及びそれを用いた樹脂結合型磁石の製造方法について、図1〜3を用いて詳細に説明する。
1.樹脂結合型磁石用組成物
本発明の樹脂結合型磁石用組成物は、構成元素中に希土類元素および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とを主として含有する樹脂結合型磁石用組成物において、磁性粉末(A)は、無機燐酸または無機燐酸化合物で表面処理した後、さらにチタネート系カップリング剤もしくは有機シランモノマーで表面処理し、樹脂バインダー(B)が、有機過酸化物(B−2)を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、さらに光重合開始剤(C)を配合することを特徴とする。また、長期保存性や可使時間などを改良するために、この他にN−オキシル類化合物などの各種添加剤(D)を配合することができる。
(A)磁性粉末
本発明において磁性粉末(A)は、その構成元素中に希土類元素および遷移金属元素を含み、かつ後で詳述する被覆剤で表面処理された磁性粉末であれば、特に制限はない。
希土類元素としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)からなる群から選択される1種又は2種以上である。
遷移金属元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)からなる群から選択される1種又は2種以上であって、これ以外にCr、V又はCuのいずれかを含有してもよい。特に好ましい希土類元素は、NdまたはSmのいずれか、遷移金属類元素は、Fe又はCoのいずれかである。
具体的な磁性粉末としては、例えば、異方性磁場(HA)が4000kA/m(50kOe)以上の磁性粉末である希土類−コバルト系、希土類−鉄−ほう素系、希土類−鉄−窒素系の磁性粉末の単独もしくは混合粉、または前記希土類磁石粉とフェライト系磁性粉末との混合粉などが挙げられる。
これら磁性粉末として、(I)還元拡散法によって得られるSmFe系合金粗粉を窒化処理、微粉砕して得られるSm−Fe−N系の合金微粉末、(II)同じく還元拡散法によって得られたSmCo系合金粗粉を微粉砕して得られる合金微粉末、(III)Nd−Fe−B系の液体急冷法によって得られた合金粉末、又は(IV)HDDR(Hydrogenation−Disproportionation−Desorption−Recombination)法によって得られた異方性Nd−Fe−B系合金粉末を用いることができる。尚、液体急冷法によって得られたNd−Fe−B系や、HDDR法によって得られた異方性Nd−Fe−B系の磁性粉末は、特異な形状を有した比較的大きな粒子を大量に含んでいるため、ジェットミルやボールミル等で粉砕して用いることが望ましい。
磁性粉末は、粒径が100μm以下のものを粉末全体の50重量%以上含むと、本発明の効果を著しく発揮する。また、本発明においては、磁場中成形が必至となる異方性の磁性粉末の方が配向特性の面で効果が著しいが、等方性の磁性粉末であってもよい。
本発明において磁性粉末は、予め無機燐酸または無機燐酸化合物で表面処理し、さらにチタネート系カップリング剤もしくは、1分子中に少なくとも1以上3以下のアルコキシ基を有する有機シランモノマーで表面処理することが必要である。これにより、大気中の酸素や塩水に対する酸化や腐食に対してより安定した磁性粉末を得ることができる。
無機燐酸または無機燐酸化合物は、磁性粉末表面でホパイト、フォスフォフェライト等からなる燐酸亜鉛系、ショルツァイト、フォスフォフィライト、ホパイト等からなる燐酸亜鉛カルシウム系、マンガンヒューリオライト、鉄ヒューリオライト等からなる燐酸マンガン系、ストレンナイト、ヘマタイト等からなる燐酸鉄系などの被膜を形成させるために用いる材料であり、無機燐酸をはじめ種々の燐酸化合物、キレート剤、中和剤等と混合して処理剤とするのが一般的である。これらの燐酸系表面処理剤は、これら処理剤を単独もしくは複数で使用することも可能である。
燐酸または燐酸化合物による表面処理は、湿式処理法や乾式処理法によって磁性粉末をあらかじめ処理した後、100℃前後の温度で加熱処理を行う。
無機燐酸または無機燐酸化合物の添加量は、その成分の種類や濃度により異なるが、基本的には磁性粉末に対して0.01重量%以上10重量%以下でよく、好ましくは0.05重量%以上7重量%であるが、より顕著な効果を得るためには、0.1重量%以上5重量%以下がより好ましい。添加量が0.01重量%未満の場合は、酸化防止効果、耐候性が十分に得られず、また10重量%を超えると密度の低下に伴う磁気特性の低下、機械強度の低下等のため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることができない。
上記の無機燐酸または無機燐酸化合物で表面処理された磁性粉末は、さらにチタネート系カップリング剤、もしくは、1分子中に少なくとも1以上3以下のアルコキシ基を有する有機シランモノマーで表面処理されている。
チタネート系カップリング剤としては、例えば、一般に市販されているイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート等が挙げられる。これらのチタネート系カップリング剤は、単独もしくは二種以上で用いることができる。
これらの中では、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネートが特に好ましい。
また、被覆剤の有機シランモノマーとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、へプチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルエリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、へプチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン系、ジメチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルブチルジメトキシシラン、エチルプロピルジメトキシシラン、エチルブチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、エチルプロピルジメトキシシラン、エチルブチルジメトキシシラン、エチルヘプチルジメトキシシラン、エチルヘキシルジメトキシシラン、エチルオクチルジメトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、プロピルブチルジメトキシシラン、プロピルヘキシルジメトキシシラン、プロピルヘプチルジメトキシシラン、プロピルオクチルジメトキシシラン、ブチルペンチルジメトキシシラン、ブチルヘキシルジメトキシシラン、ブチルヘプチルジメトキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ヘキシルオクチルジメトキシシラン、ヘキシルデシルジメトキシシラン、ジオクチルジメトキシシラン、ジへプチルジメトキシシラン、ジデシルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルブチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルプロピルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルプロピルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルプロピルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルプロピルジメトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルエチルジメトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルプロピルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、メチルブチルジエトキシシラン、エチルプロピルジエトキシシラン、エチルブチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルプロピルジエトキシシラン、エチルブチルジエトキシシラン、エチルヘプチルジエトキシシラン、エチルヘキシルジエトキシシラン、エチルオクチルジエトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、プロピルブチルジエトキシシラン、プロピルヘキシルジエトキシシラン、プロピルヘプチルジエトキシシラン、プロピルオクチルジエトキシシラン、ブチルペンチルジエトキシシラン、ブチルヘキシルジエトキシシラン、ブチルヘプチルジエトキシシラン、ジヘキシルジエトキシシラン、ヘキシルオクチルジエトキシシラン、ヘキシルデシルジエトキシシラン、ジオクチルジエトキシシラン、ジへプチルジエトキシシラン、ジデシルジエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルブチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルプロピルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルプロピルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルプロピルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルプロピルジエトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルプロピルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン系、トリメチルメトキシシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルプロピルメトキシシラン、ジメチルブチルメトキシシラン、ジエチルプロピルメトキシシラン、ジエチルブチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ジエチルプロピルメトキシシラン、ジエチルブチルメトキシシラン、ジエチルヘプチルメトキシシラン、ジエチルヘキシルメトキシシラン、ジエチルオクチルメトキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、ジプロピルブチルメトキシシラン、ジプロピルヘキシルメトキシシラン、ジプロピルヘプチルメトキシシラン、ジプロピルオクチルメトキシシラン、ジブチルペンチルメトキシシラン、ジブチルヘキシルメトキシシラン、ジブチルヘプチルメトキシシラン、トリヘキシルメトキシシラン、ジヘキシルオクチルメトキシシラン、ジヘキシルデシルメトキシシラン、トリオクチルメトキシシラン、トリへプチルメトキシシラン、トリデシルメトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、γ−メタクリロキシジプロピルメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジブチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジプロピルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジエチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジプロピルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジプロピルメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジエチルメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジプロピルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジプロピルメトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルジエチルメトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルジプロピルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルエチルエトキシシラン、ジメチルプロピルエトキシシラン、ジメチルブチルエトキシシラン、ジエチルプロピルエトキシシラン、ジエチルブチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、ジエチルプロピルエトキシシラン、ジエチルブチルエトキシシラン、ジエチルヘプチルエトキシシラン、ジエチルヘキシルエトキシシラン、ジエチルオクチルエトキシシラン、トリプロピルエトキシシラン、ジプロピルブチルエトキシシラン、ジプロピルヘキシルエトキシシラン、ジプロピルヘプチルエトキシシラン、ジプロピルオクチルエトキシシラン、ジブチルペンチルエトキシシラン、ジブチルヘキシルエトキシシラン、ジブチルヘプチルエトキシシラン、トリヘキシルエトキシシラン、ジヘキシルオクチルエトキシシラン、ジヘキシルデシルエトキシシラン、トリオクチルエトキシシラン、トリへプチルエトキシシラン、トリデシルエトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、γ−メタクリロキシジプロピルメチルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジブチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジプロピルエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジエチルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジプロピルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジプロピルエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジエチルエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジプロピルエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アミノプロピルジエチルエトキシシラン、γ−アミノプロピルジプロピルエトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルジエチルエトキシシラン、N−フェニル―γ―アミノプロピルジプロピルエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン系などが挙げられる。
磁性粉末をチタネート系カップリング剤、もしくは有機シランモノマーにより表面処理することで、磁性粉末の耐候性がさらに向上するだけでなく、樹脂バインダーとの結合力が高まり、磁気特性も改善される。この場合、湿式処理法や乾式処理法によってあらかじめ単独で被覆処理を行っても、また熱硬化性樹脂バインダーと磁性粉末との混合時に併せて添加、処理を行っても良い。ただし、有機シランモノマーの場合には、事前に表面処理を行った後に100℃前後の温度で加熱処理を行うほうが、耐候性に優れより安定した被覆磁性粉末が得られるので好ましい。
チタネート系カップリング剤の添加量は、その成分の種類や濃度により異なるが、基本的には磁性粉末に対して0.01重量%以上5重量%以下でよく、好ましくは0.05重量%以上3重量%であるが、より顕著な効果を得るためには、0.1重量%以上2重量%以下がより好ましい。添加量が0.01重量%未満の場合は、十分な効果が得られず、また5重量%を超えると密度の低下に伴う磁気特性の低下、機械強度の低下等のため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることができない。
また、有機シランモノマーの場合には、添加量はその成分の種類や濃度により異なるが、基本的には磁性粉末に対して0.01重量%以上10重量%以下とし、好ましくは0.05重量%以上7重量%とする。より顕著な効果を得るためには、0.1重量%以上5重量%以下が好ましい。添加量が0.01重量%未満の場合は、十分な効果が得られず、また10重量%を超えると密度の低下に伴う磁気特性の低下、機械強度の低下等のため、実用に耐えうる樹脂結合型磁石を得ることができない。
(B)樹脂バインダー
本発明において樹脂バインダー(B)は、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、有機過酸化物(B−2)を含むものである。
(B−1)熱硬化性樹脂
本発明において熱硬化性樹脂は、ラジカル重合反応性を有する樹脂であれば特に制限されない。ビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びポリエステル(メタ)アクリレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましく、その中でも不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂であることが好ましい。熱硬化性樹脂は、150℃以下の温度において液状であるものが好適である。
不飽和ポリエステル樹脂は、成形時の金型内で硬化して磁性粉末のバインダーとして働くものであれば、特にその種類に限定されることはなく、市販されている不飽和ポリエステル樹脂を用いることができる。
この不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、不飽和多塩基酸及び/又は飽和多塩基酸とグリコール類を分子量5000程度以下に予備的に重合させてオリゴマーやプレポリマー化させた主剤に、架橋剤を兼ねるモノマー類、反応を開始させる硬化剤、長期の保存性を確保するための重合防止剤、及びその他の添加剤等を配合して構成される。
不飽和多塩基酸としては、例えば、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を、また、飽和酸としては、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等が挙げられる。
また、グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリットジアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
さらに、架橋剤を兼ねるモノマー類としては、例えば、(I)スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等のビニルモノマー類、(II)ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート等のアリルモノマー類、(III)フェノキシエチルアクリレート、1,6ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。
ビニルエステル樹脂は、成形時の金型内で硬化して磁性粉末のバインダーとして働くものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸とをエステル化触媒を用いて反応させて得ることができる。
上記ビニルエステル樹脂の原料となるエポキシ化合物としては、分子中に、少なくとも1個のエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノール類と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール、クレゾール、ビスフェノールとホルマリンとの縮合物であるノボラックとエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるノボラックタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;水添加ビスフェノールやグリコール類とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;ヒダントインやシアヌール酸とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる含アミングリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、これらエポキシ樹脂と多塩基酸類、および/またはビスフェノール類との付加反応により分子中にエポキシ基を有する化合物であってもよい。これらエポキシ化合物は、一種類のみでもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
さらに、上記ビニルエステル樹脂の原料として用いられる不飽和一塩基酸としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。また、マレイン酸、イタコン酸等のハーフエステル等を用いてもよい。さらに、これらの化合物と、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の多価カルボン酸や、酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、パルチミン酸等の飽和一価カルボン酸や、フタル酸等の飽和多価カルボン酸またはその無水物や、末端基がカルボキシル基である飽和あるいは不飽和アルキッド等の化合物とを併用してもよい。これら不飽和一塩基酸は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
上記エステル化触媒としては、具体的には、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン等の第三級アミン類;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;塩化リチウム、塩化クロム等の無機塩;2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;テトラメチルホスフォニウムクロライド、ジエチルフェニルプロピルホスフォニウムクロライド、トリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ベンジルトリエチルフェニルホスフォニウムクロライド、ジベンジルエチルメチルホスフォニウムクロライド、ベンジルメチルジフェニルホスフォニウムクロライド、テトラフェニルホスフォニウムブロマイド等のホスフォニウム塩;第二級アミン類;テトラブチル尿素;トリフェニルホスフィン;トリトリールホスフィン;トリフェニルスチビン等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらエステル化触媒は、一種類のみでもよいし、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。
また、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリイソシアネートとポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらに水酸基含有(メタ)アクリル化合物、および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させて得ることができる。また、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリヒドロキシ化合物あるいは多価アルコール類とを反応させた後、さらにポリイソシアネートを反応させてもよい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料であるポリイソシアネートとしては、具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、バーノックD 750、クリスポンNX(商品名:大日本インキ化学工業社製)、デスモジュールL(商品名:住友バイエル社製)、コロネートL(商品名:日本ポリウレタン社製)、タケネートD102(商品名:武田薬品社製)、イソネート143L(商品名:三菱化成社製)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらポリイソシアネートは、一種類のみでもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料である多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサングリコール、1,3−シクロヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル−4,4’−ジオール、2,6−デカリングリコール、2,7−デカリングリコール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら多価アルコール類は、一種類のみでもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
さらに、上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料であるポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、具体的には、例えば、グリセリンエチレンオキシド付加物、グリセリンプロピレンオキシド付加物、グリセリンテトラヒドロフラン付加物、グリセリンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンテトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらポリヒドロキシ化合物は、一種類のみでもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料である水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されるものではないが、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、一種類のみでもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
上記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の原料として必要に応じて用いられる水酸基含有アリルエーテル化合物としては、具体的には、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2−ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3−ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら水酸基含有アリルエーテル化合物は、一種類のみでもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
また、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、不飽和あるいは飽和ポリエステルの末端に(メタ)アクリル化合物を反応させて得ることができる。上記ポリエステルの原料としては、例えば上記不飽和ポリエステル樹脂の原料として例示した化合物と同様の化合物を用いることができる。
上記ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂の原料である(メタ)アクリル化合物としては、具体的には、不飽和グリシジル化合物、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸およびそのグリシジルエステル類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら(メタ)アクリル化合物は、一種類のみでもよいし、適宜、二種類以上を混合して用いてもよい。
(B−2)有機過酸化物
本発明において、有機過酸化物は、一般に、前記の反応を開始させる硬化剤として用いられ、ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂に配合される添加剤である。
有機過酸化物としては、例えば、(I)メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、(II)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、(III)t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、(IV)ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、α、α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類、(V)アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノニルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニック酸パーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、(VI)ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペロキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペロキシジカーボネート、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペロキシジカーボネート、ジ−ミリスチルペロキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルペロキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルペロキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペロキシジカーボネート、ジアリルペロキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、(VII)t−ブチルペロキシアセテート、t−ブチルペロキシイソブチレート、t−ブチルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオデカノエート、クミルペロキシネオデカノエート、t−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペロキシラウレート、t−ブチルペロキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペロキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペロキシ)ヘキサン、t−ブチルペロキシマレイックアシッド、t−ブチルペロキシイソプロピルカーボネート、クミルペロキシオクトエート、t−ヘキシルペロキシネオデカノエート、t−ヘキシルペロキシピバレート、t−ブチルペロキシネオヘキサノエート、t−ヘキシルペロキシネオヘキサノエート、クミルペロキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類や、(VIII)アセチルシクロヘキシルスルフォニルペロキサイド、t−ブチルペロキシアリルカーボネート等が挙げられる。
これらの有機過酸化物は、単独で用いうるが、種類によっては炭化水素溶液類やフタル酸エステル類に希釈した状態、もしくは固形粉末に吸収させた状態で用いることがある。
有機過酸化物は、150℃以下の温度において熱硬化性樹脂を硬化しうるもの、言い換えれば、半減期10時間を得るための分解温度が150℃以下の性質を有する過酸化物を使用するのが望ましく、さらには、同半減期を得るための分解温度が40〜135℃の範囲である過酸化物がより望ましい。該半減期を得るための分解温度が150℃を超えるものを選択すると、充分な硬化成形物を得るための硬化温度が高くなり、本発明の効果が小さくなる。一方、40℃よりも低くなると過酸化物自体の取扱い性が困難になるばかりでなく、本発明の樹脂結合型磁石用組成物の保管特性が悪くなり、生産性に欠ける結果を招く。
これらの有機過酸化物の添加量は、希釈率や活性酸素量によって異なるため、規定することはできないが、一般的にはラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.05〜10重量部が添加される。
これらの有機過酸化物は、単独又は2種以上の混合系で用いることができるが、最終樹脂結合型磁石用組成物の可使時間をより長く確保するために、パーオキシケタール系、又はジアルキル系過酸化物を単独で用いることが、極めて好ましい。
(C)光重合開始剤
本発明において光重合開始剤は、樹脂結合型磁石用組成物の必須成分であり、紫外線などの光照射により熱硬化性樹脂の硬化を促進する添加剤である。
光重合開始剤としては、上記機能を有するものであれば特に限定されず、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフェリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モノフェリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフオロ−3−(1H−ピロ−ル−1−イル)−フェニル)チタニウム、1,2−オクタジン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、ヨ−ドニウム(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)プロピレンカーボネート、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。
(D)N−オキシル類化合物
本発明の樹脂結合型磁石用組成物には、前述の必須成分(A)〜(C)に、さらに必要に応じて、N−オキシル類化合物(D)などの添加剤を配合することができる。
本発明においてN−オキシル類化合物は、樹脂結合型磁石用組成物の可使時間を十分に確保する場合に配合される添加剤である。
N−オキシル類化合物は、分子鎖末端に、次の一般式(1)、または一般式(2)で表される構造のうち少なくとも一種の構造を有する化合物であり、特開2003−92209号に記載されている。
Figure 2006233077
(式中、X、Xは、それぞれ独立して水素原子、−OR基、−OCOR基または−NR基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R、R、R、Rは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表す)
Figure 2006233077
(式中、X、X、Xは、それぞれ独立して水素原子、−OR13基、−OCOR14基または−NR1516基を表し、R、R10、R11、R12は、それぞれ独立して炭素数1以上のアルキル基を表し、R13、R14、R15、R16は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜16のアルキル基を表す)
N−オキシル類化合物の添加量は、その種類によって効果が大きく異なるため画一的に規定はできないが、一般的には熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部である。添加量が0.1重量部より少ない場合は、十分な可使時間を確保できない場合がある。一方、10重量部より多い場合は、樹脂結合型磁石成形物の密度の低下や表面の荒れを生じるため望ましくない。
なお、樹脂結合型磁石用組成物の可使時間は、ポットライフともいわれ、液状樹脂に硬化剤などを加えた時点から粘度が上昇し、成形不可能となるまでの時間、すなわちゲル化・硬化などが起こらず、成形可能な流動性を保っている時間、或いは成形後の機械強度が組成物調製の直後に成形したそれ(機械強さの初期値)の80%まで低下する時間のいずれか早い方の時間を意味する。本発明に係る組成物系では、一般的には機械強さが低下する時間の方が早い。組成物の可使時間を120時間以上、特に240時間以上とすることができるものを選択することが好ましい。
これらのN−オキシル類化合物は、単独もしくは2種以上の混合系で用いることもできるが、組成物の可使時間をより長く確保するためには、これらの安定剤の中でも、アルキルラジカルとの反応性を有し、かつアルキルラジカルとの反応後、さらに、パーオキシラジカルとの反応性を有すること、又はパーオキシラジカルとの反応性を有し、かつパーオキシラジカルとの反応後、さらに、アルキルラジカルとの反応性を有することが好ましい。
本発明においては、樹脂結合型磁石用組成物中の重合性成分が保管中に重合してしまうことを抑制して、長期の保存性を確保する場合に重合防止剤を配合できる。
重合防止剤としては、例えば、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、トルキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジアセトキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジカプロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジアシロキシ−p−ベンゾキノン等のキノン類、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、モノ−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン等のハイドロキノン類、ジ−t−ブチル・パラクレゾールハイドロキノンモノメチルエーテル、アルファナフトール等のフェノール類、ナフテン酸銅等の有機ならびに無機の銅塩類、アセトアミジンアセテート、アセトアミジンサルフェート等のアミジン類、フェニルヒドラジン塩酸塩、ヒドラジン塩酸塩等のヒドラジン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムオキザレート、ジ(トリメチルベンジルアンモニウム)オキザレート、トリメチルベンジルアンモニウムマレエート、トリメチルベンジルアンモニウムタータレート、トリメチルベンジルアンモニウムグリコレート等の第4級アンモニウム塩類、フェニル−β−ナフチルアミン、パラベンジルアミノフェノール、ジ−β−ナフチルパラフェニレンジアミン等のアミン類、ニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸等のニトロ化合物、キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、ピロガロール、タンニン酸、レゾルシン等の多価フェノール類、トリエチルアミン塩酸塩、ジメチルアニリン塩酸塩、ジブチルアミン塩酸塩等のアミン塩酸塩類等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。
本発明に用いるラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダーには、上記必須成分及び任意成分以外にも、その他種々の添加剤を加えることができる。
例えば、成形性の改善を目的とした、例えばパラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類、ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩(金属石鹸類)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド等脂肪酸アミド類、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル、エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれら変性物からなるポリエーテル類、ジメチルポリシロキサン、シリコングリース等のポリシロキサン類、弗素系オイル、弗素系グリース、含弗素樹脂粉末といった弗素化合物を1種もしくは2種以上添加することができる。
これらの有機添加物以外にも、必要に応じ、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化珪素、二硫化モリブデン等の無機化合物粉体、無機充填剤や顔料等を任意に添加しても良い。無機充填剤としては、例えば、ストロンチウムフェライト系、バリウムフェライト系等のフェライト類磁性粉末、鉄等の軟磁性粉末、タングステン等の密度調整用高比重金属粉、三酸化アンチモン等の難燃剤、酸化チタン等の顔料等が挙げられる。
ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂バインダーの各成分は、重合度や分子量によって制約されることはないが、磁性粉末を加える前の混合調製状態での成形温度における回転粘度測定法で、粘度が100mPa・s〜5000mPa・sの範囲にあることが好ましい。粘度は、JIS K7117(液状樹脂の回転粘度計による粘度試験方法)に準じて測定されるが、測定温度は、成形温度(成形時のシリンダー温度)にあわせた恒温漕内で測定される。そのときの測定値が300mPa・s〜3000mPa・sのものがより好ましい。
この粘度が、100mPa・s未満であると、射出成形時に磁性粉末とバインダーの分離現象が生じるため成形できない。また、5000mPa・s超であると著しい混練トルクの上昇、流動性の低下を招き成形困難になるため、本発明の効果を得ることができない。この粘度に調整するために、数種類の粘度や性状の異なるラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂同士を混合したり、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム等の二価金属の酸化物類や水酸化物類、ジイソシアナート類、アリジリン化合物類、アルミニウムイソプロポキシド等を加えても差し支えない。
よって、各成分の形状は、例えば常温で液状、パウダー、ビーズ、ペレット等特に限定されないが、磁性粉末との均一混合性や成形性から考えると、液状であることが望ましい。また、前記樹脂に異なる分子量、性状のものを1種または2種以上組み合わせて混合することも差し支えない。混合しうる樹脂としては、エポキシ樹脂を原料としたノボラック型やビスフェノール型のビニルエステル樹脂類、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ビス・マレイミドトリアジン樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を挙げることができる。
2.樹脂結合型磁石用組成物の調製
本発明の樹脂結合型磁石用組成物を調製するには、前述の必須成分である磁性粉末(A)に、熱硬化性樹脂バインダー(B)、及び光重合開始剤(C)を配合し、さらに必要に応じてN−オキシル類化合物(D)などの添加剤を配合し混合すればよい。
熱硬化性樹脂バインダーは、各構成成分を含めた状態で、該磁性粉末100重量部に対して、3〜50重量部の割合で添加されるが、好ましくは7〜15重量部であり、さらには10〜13重量部がより好ましい。該バインダーの添加量が該磁性粉末100重量部に対して3重量部未満の場合は、著しい成形物強度の低下や成形時の流動性の低下を招いて、本発明の効果を得ることができない。また、50重量部を超える場合、所望の磁気特性が得られない。
また、これらの光重合開始剤の添加量は、その種類や熱硬化性樹脂などの材料によって異なるため、規定することはできないが、一般的には、熱硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜15重量部が添加される。0.5〜10重量部が好ましく、特に1〜8重量部添加することが好ましい。光重合開始剤の添加量が0.1重量部より少ないと、射出成形法によって短時間で異方性磁石材料を得るという当初の目的を達成できなくなり、また、添加量が15重量部を超えると、樹脂結合型磁石中の磁石粉量の割合が低下して磁気特性が低下してしまうため好ましくない。
各成分の混合方法は、特に限定されず、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機、あるいは、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機等の混練機を用いることにより実施される。
得られた樹脂結合型磁石用組成物の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状、あるいはこれらの混合物の形とすることができるが、取扱い易さの点でペレット状(或いは塊状)が望ましい。
3.樹脂結合型磁石の製造
本発明の樹脂結合型磁石の製造方法は、上記方法で得られた樹脂結合型磁石用組成物を、熱硬化性樹脂バインダーの溶融温度で加熱溶融した後、光透過窓を設けた金型を用いて所望の形状に成形し、その後、光照射を含む特定の条件で硬化する。成形法としては、従来からプラスチックの成形加工等に利用されている射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、又はトランスファー成形法など各種の成形方法が挙げられる。これらの中では、特に射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、および射出プレス成形法のいずれかの成形方法が好ましい。
すなわち、本発明では、(1)樹脂結合型磁石用組成物を、光透過窓を有する金型のキャビティ内に供給する工程、(2)キャビティ内に供給された樹脂結合型磁石用組成物の成形物を150℃以下の温度で加熱し、成形物中の磁性粉末が配向するまで半硬化状態で保持する工程、及び、(3)引き続き、半硬化状態の成形物に光透過窓から光を照射して十分に硬化する工程を含んでいる。
射出成形磁石を製造するには、キャビティを有する金型として光透過窓を設けた金型及び光照射手段を用いる以外は特別な装置を必要とせず、成形機の水冷されたシリンダー内で流動性を有する樹脂結合型磁石用組成物(以下、コンパウンドともいう)をキャビティへと射出し充填する射出装置、及び一連の工程を制御する制御装置などから構成された一般的な射出成形装置を用いればよい。
(金型)
樹脂結合型磁石用組成物を射出成形法で成形するには、通常、パーティング面で分離された固定側金型と可動側金型とから構成される金型が使用される。この固定側金型は、固定側プレートと、固定側プレートを貫通して、樹脂結合型磁石用組成物を射出ユニットから可動側金型に供給移送するためのスプルー部とを具備し、一方、可動側金型は、可動側プレートと、可動側プレートと固定側金型パーティング面で形成されるランナー部と、スプルー部及びランナー部を通じて移送されてきた樹脂結合型磁石用組成物を充填するキャビティ部と、先端がキャビティ部の底部に位置した成形物取り出しピンとを具備している。
本発明において用いられる金型は、上記のような基本構造を有するものであり、その断面構造は図3のようなものである。金型は1以上のキャビティを有し、成形物形状になったその内部で磁場配向が必要な方向に磁界を印加でき、しかも金型の一部に光透過窓を有しているものであれば特に限定されない。図1に示す金型10は、固定側金型1と可動側金型2の双方に紫外線導入口となる光ファイバー3が三本装着され、その先端がキャビティ部で形成される成形物20の上下にある光透過窓5に配置されるとともに、他端に紫外線ランプ4が取り付けられている。
光ファイバーの直径は、熱硬化性樹脂バインダーの種類、成形物の大きさなどによって異なり、特に制限されないが、例えばコア径が0.5〜3mmのものを使用できる。コア径が0.8mmの場合、0.5mm程度の面積を有する光透過窓が形成される。紫外線導入口の断面積は0.5〜10mm程度あれば十分である。硬化のためのラジカル発生は、硬化反応とともに連鎖的に発生するため、一部分に光重合開始剤によるラジカルの発生が生じれば、全体に連鎖的にいきわたる。このため、光透過窓の面積、位置、光ファイバーの本数については、図1のとおりである必要は無く、成形物もしくは金型の形状・大きさ、熱硬化性樹脂バインダーの種類などによって適宜設計し配置してもかまわない。
なお、本発明において金型は、ゲートの断面積、ランナー7の長さなどによって特に限定されることはなく、所望の成形物が得られるよう適宜設計すればよく、小型から大型まで様々な大きさの射出成形磁石を製造することができる。
(成形、熱硬化)
樹脂結合型磁石用組成物は、樹脂バインダーが溶融する温度に加熱され磁性粉末と均一に混練され、流動状態で水冷されているシリンダーから金型のスプルー、ランナーを通ってキャビティ内に充填される。
図1に示される本発明の金型を使用して、図3の成形装置で成形作業を行う際は、金型10に内蔵されたヒーターで固定側プレート1、可動側プレート2を加熱する。各部の温度は、樹脂の種類、添加剤の種類や量などにもよるが、可動側加熱プレートを100〜180℃とする。これにより、ランナー部7、成形物20ができるキャビティ部が、いずれも100〜180℃となるようにすることが好ましい。こうして各部が所定の温度になってから、射出ユニット6を稼動させ、所定量の樹脂結合型磁石用組成物を流動状態で射出する。その後、コンパウンドは、ランナー部7を流動状態で通過して、キャビティ部に充填される。
次に、本発明の樹脂結合型磁石用組成物が充填されたキャビティ部内を150℃以下の温度に加熱して所定時間保持することで、ラジカル重合性の樹脂が組成物中の有機過酸化物により反応を開始して、成形物を半硬化させる。この時の保持時間は、樹脂バインダー中で磁性粉末が配向するのに十分な時間とする。このようにして成形物が半硬化するプロセスの必要性を、従来の光重合開始剤を含まない樹脂結合型磁石用組成物を成形した場合の成形と硬化プロセスと対比して、図2を用いて説明する。
従来の光重合開始剤を含まない樹脂結合型磁石用組成物を用いて成形を行った場合、樹脂結合型磁石用組成物は、金型内で熱のみによって硬化される。この際、プロセスとしては、まず温度上昇とともに金型内にある樹脂結合型磁石用組成物の熱硬化性樹脂バインダーの粘度が低下し、外部より印加される磁界により、樹脂結合型磁石用組成物内の磁性粉末の配向が行われ、さらに、その状態で硬化が始まり固化する事となる。高磁気特性を有する樹脂結合型磁石を得るためには、この磁性粉末の配向が十分に行われる必要がある。図2(a)のように、金型温度が熱硬化性樹脂バインダーのゲル化温度と同程度であると、低粘度になっている時間が長く、十分な配向が得られるものの、その後硬化に多くの時間が必要となってくる。
逆に、図2(b)のように、金型温度が熱硬化性樹脂バインダーのゲル化温度よりも十分に高い状況では、硬化時間は短くなるものの、低粘度となっている時間が短く、同じ磁界では磁性粉末の配向は不十分であり、大きな磁界を与えないと十分な配向が得られない。
(光照射による硬化)
そのため、本発明では、次いで、磁性粉末を熱硬化性樹脂バインダー中で配向させた半硬化状態の成形物に対し、金型の光透過窓から紫外線を照射し、成形物を十分に硬化させる。
熱硬化性樹脂バインダーの硬化については、連鎖的に発生するラジカル重合反応性によって起こるため、紫外線の照射は、成形物の全面に行われる必要はなく一部分で構わない。紫外線を照射するには、金型に光ファイバー等の紫外線導入口を設けることになるが、金型の強度を考慮すれば部分的に照射することが望ましい。
例えば、図1のように、コンパウンドが射出移送されて充填される金型キャビティ壁部の上下部分に設けられた光透過窓5に、光ファイバー3によって紫外線ランプ4からの紫外線を照射する。射出成形法においては、ラジカル発生に必要な照射量の紫外線、例えば200〜800mJ/cm程度の紫外線(波長200nm〜500nm)を磁性粉末の配向が完了した半硬化物に照射する。
半硬化状態の成形物に紫外線が照射されることによって、熱硬化性樹脂の硬化が促進され、短時間で硬化を実現できる。光照射の時間は、特に制限される訳ではないが、10〜30秒とすることが望ましい。照射時間が10秒より短いと成形物の硬化が不十分になりやすく、一方、30秒よりも長くなると生産性、経済性の面で好ましくない。
本発明の光重合開始剤を含む樹脂結合型磁石用組成物を使用すれば、図2(c)のように、金型温度を熱硬化性樹脂バインダーのゲル化温度と同程度として、低粘度になっている時間が十分にとれ、小さな磁界でも磁性粉末を高配向化することができ、その後の樹脂硬化を極めて短い時間で行うことができる。
成形時間(t)は、コンパウンドの溶融物が硬化するまでに要する時間(硬化時間)であり、本発明においては、配向時間(t1)に光照射による硬化時間(t1)を含めた時間である。キャビティ温度、樹脂、有機過酸化物、その他添加剤の種類や量によって異なり、従来の光重合開始剤を含まない樹脂結合型磁石用組成物を用いる場合では、30〜180秒であるが、本発明では、光照射による硬化時間も含めて20〜120秒とすることができる。成形時間は短いほど好ましいが、特に実生産上、20〜90秒が好適である。樹脂が十分に硬化して固まったところで、成形物が取り出しピンによって金型から取り出され、射出成形磁石が出来上がる。
4.樹脂結合型磁石
上記の方法により得られる樹脂結合型磁石は、樹脂バインダー中に磁性粉末が高配向化しているため、複雑形状であっても磁気特性や機械強度などに優れているという特徴がある。そのため、本発明の樹脂結合型磁石は、近年ニーズが高まっている小型モーター、音響機器、OA機器等に用いることができ、各種機器類を小型化することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
次の各材料・成分及び方法で樹脂結合型磁石用組成物及び樹脂結合型磁石を製造し、評価した。用いた材料・成分を下記に示す。
1.材料・成分
(1)磁性粉末
磁粉:Sm−Fe−N系磁性粉末(住友金属鉱山(株)製 SmFeN合金粉末)、異方性磁場:16.8MA/m(210kOe)、100μm以下の粒径含有率99重量%
(2)被覆剤
・燐酸系処理剤(商品名:燐酸(試薬)、関東化学(株)製)
・チタネート系カップリング剤(イソプロピルトリイソステアロイルチタネート表面処理剤、商品名:プレンアクトKRTTS、味の素株式会社製)
・有機シランモノマー(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、商品名:信越シリコーンKBM503)
(3)熱硬化性樹脂(ラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂)
不飽和ポリエステル樹脂(商品名:ポリセット2212、日立化成工業(株)製)、25℃における粘度:500mPa・s
(4)硬化剤(有機過酸化物)
パーオキシケタール系過酸化物(1,1−ジ−t−ブチルペロキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、商品名:トリゴノックス29A、化薬アグゾ(株)製)、10時間の半減期を得るための分解温度90℃
(5)光重合開始剤
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド (商品名:チバイルガキュア 819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
(6)N−オキシル類化合物
2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル(商品名:アデカスタブ LA−7RD、旭電化(株)製)
2.成形物の製造方法及び評価方法
(1)被覆剤による磁性粉末の表面処理
それぞれの磁性粉末100重量部に対して、10重量部のIPA等のアルコール系有機溶媒に所定量の表面処理用燐酸化合物を溶解した後、当該処理溶液と磁性粉末とをプラネタリーミキサー中で十分混合撹拌(40rpm、20℃)し、得られた磁性粉末を、100Pa以下に排気した状態で、120℃にして、真空オーブン中で24時間乾燥させ、処理済み粉を得た。
チタネート系カップリング剤による表面処理の場合、この燐酸処理済み粉に対して、磁性粉末100重量部に対して、10重量部のヘキサン等の有機溶媒に所定量の表面処理用チタネート系カップリング剤を溶解した後、当該処理溶液と磁性粉末とをプラネタリーミキサー中で十分混合撹拌(40rpm、20℃)し、100Pa以下に排気した状態で、120℃の真空オーブン中で24時間乾燥させ、処理済磁性粉末を得た。
また有機シランモノマーによる表面処理の場合は、燐酸処理済み粉を更にメカノフュージョン(ホソカワミクロン(株)製)にて有機シランモノマーで表面処理し、処理済磁性粉末を得た。
(2)組成物の混合及び作製
あらかじめ所定の比率になるよう計量混合しておいた熱硬化性樹脂、硬化剤、光重合開始剤、N−オキシル類化合物等をそれぞれの磁性粉末全量に加え(各重量部)、水冷ジャケット付プラネタリーミキサー中で十分混合撹拌(40rpm、30℃、10分)し、最終組成物を得た。
(3)射出成形方法と成形時間
これらのコンパウンドを、インラインスクリュー式またはプランジャー式磁場発生装置付射出成形機にて、横φ10mm×15mmの円柱試験用樹脂結合型磁石を同一条件(金型温度90〜180℃)にて成形し、得られた磁石成形物を後述の方法にて評価した。尚、0.24〜1.6MA/m(3〜20kOe)の磁場中金型内にて成形を行った。金型の前後に直径0.8mmの石英ファイバーを図1、図3に示すように設置し、実施例では、成形時4000mW/cm(Deep UVランプ)の紫外線を成形物に照射した。
成形時間は、樹脂結合型磁石用組成物を金型に注入してから、磁石成形物を取り出すために金型を開くまでの時間として評価を行った。
照射時間と成形時間の関係は、キャビティにコンパウンドが入ってから、成形物中の樹脂バインダーが硬化し終わるまでの成形時間(t)に対して、磁性粉末が配向するまでの成形物が半硬化状態である前半の時間(t1)を配向時間とし、紫外線を照射しはじめて樹脂バインダーが硬化し終わるまでの後半の時間(t2)を紫外線の照射時間と定義した。
(4)磁気特性の評価方法
上記射出成形条件にて得られた樹脂結合型磁石試料の磁気特性を、チオフィー型自記磁束計(東英工業社製)にて常温で測定した。磁気特性として、保磁力、残留磁化、角型性、最大磁気エネルギー積、配向度の結果を評価した。尚、配向度は、SMM法、即ち、{(成形後の樹脂結合型磁石の磁化)/(磁性粉末100%でのVSMにて測定した磁化×成形後の樹脂結合型磁石の磁性粉末体積率)×100}で表した。
[実施例1〜8]
光重合開始剤を含む各成分を所定の配合割合で用い、上述の手順・方法にて樹脂結合型磁石用組成物(コンパウンド)を調製し、光透過窓を有する金型を用いて樹脂結合型磁石用組成物を射出成形して磁石を製造した。
本発明のコンパウンドを、図3に示すようにインラインスクリュー式またはプランジャー式磁場発生装置付射出成形機に供給し、横φ10mm×15mmの円柱試験用樹脂結合型磁石を同一条件(金型温度90〜180℃)にて、0.24〜1.6MA/m(3〜20kOe)の磁場中金型内で成形を行った。表1、2に示す所定の時間保持後、4000mW/cm(Deep UVランプ、波長200nm〜500nm)の紫外線を所定の時間照射した。得られたこれらの磁石を前述の方法にてそれぞれ評価した。その評価結果を表1、2に示す。
Figure 2006233077
Figure 2006233077
[比較例1〜4]
光重合開始剤を含まない以外は、実施例と同様にして各成分を所定の配合割合で用い、上述の手順・方法にて樹脂結合型磁石用組成物を調製した。次に、光透過窓がない従来の金型を用いて樹脂結合型磁石用組成物を射出成形して、表3に示す時間加熱し、光照射を行うことなく磁石を製造した。得られた磁石を評価し、その結果を表3に示す。
Figure 2006233077
[参考例1]
実施例と同様にして、光重合開始剤を含む各成分を表2の配合割合で用い、上述の手順・方法にて樹脂結合型磁石用組成物を調製した。光透過窓がない従来の金型を用いて樹脂結合型磁石用組成物を射出成形して、表2に示す時間加熱し、光照射を行うことなく磁石を製造した。得られた磁石を評価し、その結果を表2に示す。
「評価」
比較例1では、成形時の金型温度が低く、且つ成形時間も30秒と短かったため、硬化が不十分となり、成形物を取り出すことは出来なかった。しかしながら、この金型温度でも比較例2のように、成形時間を長く取ることによって、硬化が完了し成形物を取り出すことができた。この際には、金型内でコンパウンドが低粘度となっている時間が長くなるため、磁性粉末の配向が十分に行われ、残留磁化も大きくなり良好な磁気特性を示した。しかしながら、成形時間が180秒と長くなり、工業的には量産化にあたりかなり不利な条件となっている。
比較例3、4では、金型温度を上げることによって硬化時間(成形時間)を60秒、30秒と短することはできるが、この際には、硬化時間の短縮とともに、同一の磁界では配向に必要な時間が確保できなくなるため残留磁化の低下が発生し、十分な磁気特性を得ることはできなかった。
これに対して、実施例1は、光重合開始剤を0.1重量部添加し、成形を行った例である。成形時間を30秒とし、射出して20秒経過した後10秒間の光照射を行ったところ、光照射までの時間も短く、かつ、光照射の時間も短いため十分な硬化とならず、硬化物を取り出すことができなかったが、硬化時間を120秒までのばすと、比較例1で硬化出来なかった金型温度、成形時間においても、硬化が完了し、磁気特性の優れた樹脂結合型磁石をとりだせた。このことから光照射の時間を長くするなど成形条件を最適化すれば、光重合開始剤の添加量が0.1重量部でも硬化が可能といえる。なお、成形時間を短縮するために60秒の成形時間のうち、後半20秒を光照射したが、この場合は、硬化物を得ることはできなかった。光照射までに、熱による事前の硬化がある程度必要であることが確認された。
光重合開始剤を0.5重量部に増量した例を実施例2に、1.0重量部に増量した例を実施例3〜8に示した。実施例2のように光重合開始剤を0.5重量部まで増加させると、実施例1で硬化しなかった条件でも硬化が確認され、磁気特性も良好なものとなった。しかしながら、さらに硬化時間を短縮すると未硬化となった。
実施例3は、光重合開始剤を1.0重量部まで増加した例である。この場合は光重合開始剤の影響が十分に発揮され成形物を得ることができ磁気特性も良好であった。更に時間短縮して照射時間を20秒のままとして、成形時間を30秒で成形を行うと、実施例4のように、硬化はできるものの、金型内で低粘度となっている時間が10秒程度と予想され、十分な配向を得ることができなかった。実施例5は、光照射の時間を短くして配向時間を長くしたものである。1.0重量部の光重合開始剤が配合されることで、10秒の光照射でも十分硬化が行われ成形物を得ることができた。また、低粘度になっている時間が実施例4よりも長いと考えられ、磁気特性も向上していることが確認された。
実施例6は、実施例5と同様の成形条件で、表面処理剤を有機シランモノマーに変更したものである。実施例5と同様に10秒の光照射でも十分硬化が行われ成形物を得ることができ、良好な磁気特性を得ることができた。
実施例7は、1.0重量部の光重合開始剤でさらに成形の時間短縮を図ったものである。硬化は可能であったが実施例4と同様、低粘度の時間が短いことから配向はやや不十分であった。この場合でも、実施例8のように印加磁界を大きく加えれば配向が改善されることが分かった。
参考例1は、光重合開始剤を含有するが、比較例4と同一の金型温度、成形時間で配向磁化を1194kA/mまであげた例である。磁界の強度によって配向が改善され、良好な磁気特性が得られたが、このような大きな磁界は、量産時に使用するには、工業上困難を伴う。
以上のように、比較例に比べ、実施例によれば、光照射を行っているので、同じ印加磁界の条件下でも、配向の整った、磁気特性の優れた樹脂結合型磁石を短時間で取り出せることがわかる。
本発明の樹脂結合型磁石用組成物を光透過型金型で射出成形する状態を示す金型周辺の斜視図である。 金型内の成形物の成形時間に対する成形物温度、又は硬化度との関係を示すグラフである。 本発明の樹脂結合型磁石用組成物を光透過型金型で射出成形する状態を示す装置金型周辺の断面図である。
符号の説明
1 固定側プレート
2 可動側プレート
3 光ファイバー
4 紫外線ランプ
5 光透過窓
10 金型
20 成形物

Claims (10)

  1. 構成元素中に希土類元素および遷移金属元素を含む磁性粉末(A)と、樹脂バインダー(B)とを主として含有する樹脂結合型磁石用組成物において、
    磁性粉末(A)は、無機燐酸または無機燐酸化合物で表面処理した後、さらにチタネート系カップリング剤または有機シランモノマーで表面処理し、一方、樹脂バインダー(B)は、有機過酸化物(B−2)を含むラジカル重合反応性を有する熱硬化性樹脂(B−1)を主成分とし、さらに光重合開始剤(C)を配合することを特徴とする樹脂結合型磁石用組成物。
  2. 磁性粉末(A)は、異方性磁場が4000kA/m(50kOe)以上であり、全磁性粉末中に粒径が100μm以下の粒子を50重量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  3. 熱硬化性樹脂(B−1)が、150℃以下の温度において液状であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  4. 有機過酸化物(B−2)は、150℃以下の温度において熱硬化性樹脂(B−1)を硬化可能であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  5. さらに、N−オキシル類化合物(D)を配合することを特徴とする請求項1に記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  6. 光重合開始剤(C)の配合量が、熱硬化性樹脂(B−1)100重量部に対して、0.1〜15重量部であることを特徴とする請求項1記載の樹脂結合型磁石用組成物。
  7. 請求項1〜6に記載の樹脂結合型磁石用組成物を、光透過窓を有する金型を用いて、射出成形法、押出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、またはトランスファー成形法のいずれかの方法で成形することを特徴とする樹脂結合型磁石の製造方法。
  8. 前記成形方法は、樹脂結合型磁石用組成物を、光透過窓を有する金型のキャビティ内に供給する工程、キャビティ内に供給された樹脂結合型磁石用組成物の成形物を150℃以下の温度で加熱し、成形物中の磁性粉末が配向するまで半硬化状態で保持する工程、及び、引き続き半硬化状態の成形物に光透過窓から光を照射して十分に硬化する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の樹脂結合型磁石の製造方法。
  9. 光の照射時間が、10〜30秒であることを特徴とする請求項8に記載の樹脂結合型磁石の製造方法。
  10. 請求項7〜9に記載の製造方法により得られた樹脂結合型磁石。
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