JP2006226463A - 動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 オイルポンプから吐出されたオイルを有効に活用することの可能な動力伝達装置を提供する。
【解決手段】 第1の回転部材8と第2の回転部材9との相対回転により駆動されるオイルポンプ7を備え、オイルポンプ7は、第1の回転部材8に設けられた動作部材11,13と、第2の回転部材2に形成され、かつ、動作部材13が接触するカム36と、動作部材11,13に加わる力を制御する油室14とを有し、油室14に吸入・吐出されるオイル量を制御する制御弁が設けられている動力伝達装置において、油室14から吐出されたオイルを、油室14および吸入制御弁および吐出制御弁を含む油圧回路以外の油圧系統に供給する接続油路が設けられており、第1の回転部材8の回転数、または油室14におけるオイルの吸入・吐出量によらず、動作部材13をカム36に接触させる付勢機構15を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】 第1の回転部材8と第2の回転部材9との相対回転により駆動されるオイルポンプ7を備え、オイルポンプ7は、第1の回転部材8に設けられた動作部材11,13と、第2の回転部材2に形成され、かつ、動作部材13が接触するカム36と、動作部材11,13に加わる力を制御する油室14とを有し、油室14に吸入・吐出されるオイル量を制御する制御弁が設けられている動力伝達装置において、油室14から吐出されたオイルを、油室14および吸入制御弁および吐出制御弁を含む油圧回路以外の油圧系統に供給する接続油路が設けられており、第1の回転部材8の回転数、または油室14におけるオイルの吸入・吐出量によらず、動作部材13をカム36に接触させる付勢機構15を有する。
【選択図】 図1
Description
この発明は、第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転に連動して駆動されるオイルポンプを有する動力伝達装置に関するものである。
従来、車両には動力源が搭載されており、その動力源の出力側には動力伝達装置が配置されている。この動力伝達装置としては、油圧制御式の動力伝達装置および電磁制御式の動力伝達装置が知られており、油圧制御式の動力伝達装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された動力伝達装置の構成を説明すると、動力源により駆動される入力軸と、入力軸から動力が伝達される出力軸とが設けられている。また、入力軸と一体回転する取り付けプレートが設けられており、取り付けプレートにはカム部材が設けられている。このカム部材は、円筒状のカムリングと、カムリングに取り付けられた取り付けプレートと、オイルタンクを形成するタンク壁とを有している。そして、カムリングの内周面にはカム面が形成されている。
一方、出力軸にはシリンダ部材がスプライン結合されており、シリンダ部材には複数のピストン室が放射状に設けられている。このピストン室にはピストンが往復動自在に配置されており、ピストンの頭部にはボールが回転自在に取り付けられている。このボールがカム面に転動自在に摺接する。カム面は半径方向の凹凸を繰り返しながら周方向に延びている。そして、カムリングの内側に、カムリング、シリンダ部材、取り付けプレート、カバー部材により包囲された空間、すなわちシリンダ室が形成されている。また、シリンダ室は連通孔を介してオイルタンクに連通している。オイルタンクにはオイルが充填されるが、シリンダ室、オイルタンクは完全な密閉構造をなしているので、充填されたオイルは他の油圧回路とは切り離され、これ自体で独立の油圧システムを構成している。
さらに、ピストン室は吸入口および吐出口を介してシリンダ室に通じており、吸入口には吸入用一方向弁が設けられている。また、吐出口には油圧設定装置が設けられている。この油圧設定装置は、主リリーフ弁と、主リリーフ弁を押すスプリングと、シリンダ室に連通された案内孔と、案内孔の油圧が作用する弁体と、弁体を押すスプリングとを有している。そして、主リリーフ弁の凸部が、吐出口に配置されている。
そして、入力軸と出力軸とが相対回転すると、ボールがカム面に沿って摺動し、カム面の形状に沿ってピストンがピストン室内を往復動する。ピストンがピストン室から抜け出す吸入行程時には、吸入用一方向弁が開いてシリンダ室内のオイルが吸入口を経てピストン室内に吸入される。続いて吐出行程になると、吸入用一方向弁は閉じ、一方、ピストン室内の圧力が一定圧に達するまでは、油圧設定装置により吐出口が閉塞されているので、ピストン室内のオイルは該設定圧まで加圧される。ピストン室内の油圧は案内孔を経由して弁体に伝達され、ピストン室内の油圧が設定圧以上まで上昇すると、弁体がスプリングに抗して動作し、ピストン室内の油圧により、主リリーフ弁がスプリングの押圧力に抗して動作し、吐出口が開く。
そして、ピストン室のオイルがシリンダ室に吐出されて、ピストン室の油圧が低下すると、案内孔を経由して弁体に伝達される油圧が低下して、スプリングの押圧力により弁体が元の位置に戻る。このため、主リリーフ弁に加えられるスプリングの押圧力が高まり、主リリーフ弁が前記とは逆の方向に動作して、吐出口が閉じられる。このようにして、吐出行程状態にあるピストン室の内圧は、弁体を押圧するスプリングにより定まる所定の圧力値に設定される。なお、この他にラジアルピストンポンプを有するデファレンシャル装置およびクラッチ装置の一例が、特許文献2に記載されている。
特開平8−284977号公報
特開平10−220557号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載されている動力伝達装置においては、ピストン室から吐出されたオイルは、シリンダ室およびオイルタンクを含む完全な密閉構造の油圧回路に供給される構成となっており、ピストン室から吐出されたオイルを有効に利用するという観点で、未だ改善の余地があった。
この発明は上記事情を背景としてなされたものであって、第1の回転部材と第2の回転部材との間で動力を伝達する機能を有するオイルポンプから吐出されたオイルを、有効に利用することの可能な動力伝達装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため請求項1の発明は、動力伝達経路に配置された第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転により駆動されるオイルポンプが設けられており、このオイルポンプは、前記第1の回転部材に半径方向に往復移動可能に取り付けられた動作部材と、前記第2の回転部材に円周方向に形成され、かつ、前記動作部材が接触して、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とを動力伝達可能に連結するカムと、前記動作部材に加わる力を制御する油室とを有しているとともに、この油室に吸入されるオイルの吸入状態を制御する吸入制御弁と、前記油室から吐出されるオイルの吐出状態を制御する吐出制御弁とが設けられている動力伝達装置において、前記油室から吐出されたオイルを、前記油室および前記吸入制御弁および前記吐出制御弁を含む油圧回路以外の油圧系統に供給する接続油路が設けられているとともに、前記第1の回転部材の回転数、または前記油室におけるオイルの吸入状態、または前記油室におけるオイルの吐出状態に関わりなく、前記動作部材を前記カムに接触させた状態を維持できるような力を前記動作部材に与える付勢機構が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との間で動力伝達をおこなう条件が成立し、かつ、前記油室から吐出されるオイル量を減少させる条件が成立した場合に、前記吐出制御弁の開度を減少させる吐出量制御手段が、更に設けられていることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記油圧系統には、前記動力伝達経路に設けられたオイル必要部が含まれていることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、第1の回転部材と第2の回転部材が相対回転すると、動作部材がカムに沿って第1の回転部材の半径方向に動作する。ここで、動作部材の動作により油室の容積が拡大すると油室にオイルが吸入され、かつ、油室の容積が縮小すると、油室からオイルが吐出される。また、動作部材とカムとの接触部分で生じる力に応じて、第1の回転部材と第2の回転部材との間で動力伝達がおこなわれる。さらに、油室から吐出されたオイルが、接続油路を経由して油圧系統に供給されるため、そのオイルを油圧系統で有効に利用することが可能である。また、吸入制御弁および吐出制御弁により、第1の回転部材と第2の回転部材との間における動力伝達状態を制御することができる。
さらに、第1の回転部材の回転数、または油室におけるオイルの吸入状態、または油室におけるオイルの吐出状態などの条件に関わりなく、動作部材をカムに接触させた状態を維持できる。したがって、動作部材を動作させて油室の容積を拡大させ、油室にオイルを吸入する場合に、付勢機構から動作部材に与えられる力により、油室の容積が拡大しやすくなり、各種の条件に関わりなく、オイルを油室に確実に吸入できる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第1の回転部材と第2の回転部材との間で動力伝達をおこなう条件が成立し、かつ、油室から吐出されるオイル量を減少させる条件が成立した場合は、吐出制御弁の開度が狭められて、油室の容積が縮小することが抑制される。したがって、動作部材とカムとの接触部分で生じる力が増加して、第1の回転部材と第2の回転部材との間におけるオイルポンプの動力伝達効率が向上する。また、第1の回転部材と第2の回転部材との回転数の差の増加が抑制されて、付勢機構の動作量および動作回数が減少し、付勢機構の耐久性が向上する。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、オイルポンプの油室から吐出されたオイルを、動力伝達経路に設けられたオイル必要部で有効に利用することが可能である。
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。図2には、この発明の動力伝達装置を有する車両Veのパワートレーンおよび制御系統の一例が、模式的に示されている。まず、車両Veのパワートレーンについて説明すれば、駆動力源としてのエンジン1が設けられており、エンジントルクが、インプットシャフト2およびベルト式無段変速機3およびデファレンシャル4を経由して車輪(前輪)5に伝達される構成となっている。前記インプットシャフト2およびベルト式無段変速機3およびデファレンシャル4は、ケーシング60内に配置されている。
また、エンジン1のクランクシャフト6とインプットシャフト2とが回転軸線A1を中心として同軸上に配置されているとともに、クランクシャフト6からインプットシャフト2に至る動力伝達経路に、ラジアルピストンポンプ7が設けられている。このラジアルピストンポンプ7の構成例を図1および図3に基づいて説明する。図3は、回転軸線A1を含む平面における断面図であり、図1は、回転軸線A1に直交する平面における断面図である。このラジアルピストンポンプ7は、クランクシャフト6に設けられたインナーレース8と、インプットシャフト2に設けられたアウターレース9とを有している。
まず、インナーレース8はクランクシャフト6におけるインプットシャフト2側の端部に形成されており、インナーレース8は、回転軸線A1を中心とする円板形状を有している。また、インナーレース8には、円周方向に複数のシリンダ10が形成されている。各シリンダ10は、インナーレース8の外周面に開口された略円筒形状の凹部であり、図3に示すように、各シリンダ10の軸線B1と、回転軸線A1とが略直交する構成となっている。さらに、図1に示すように、軸線B1の延長上に回転軸線A1が位置する。この実施例では、インナーレース8の円周方向に8個のシリンダ10が設けられているとともに、円周方向で隣りに配置されているシリンダ10の軸線B1同士のなす角度が略45度に設定されている。
そして、8個のシリンダ10内にはピストン11が各々配置されており、8個のピストン11は軸線B1方向に往復移動自在に構成されている。つまり、各ピストン11は、インナーレース8の半径方向に移動可能である。また各ピストン11における外側の端面に凹部12が形成されている。この凹部12により転動体13が保持されている。この転動体13はボールまたはローラを用いることが可能である。一方、シリンダ10の奥端面10Aとピストン11との間には油室14が形成されている。この油室14には、金属製の圧縮コイルばね15が設けられており、ピストン11をシリンダ10の外に押し出す向きの力が、圧縮コイルばね15からピストン11に加えられる。この実施例においては、各種の条件に関わりなく、転動体13を常時カム面(後述)に接触させた状態を維持できるように、圧縮コイルばね15の機械的特性が設定されている。なお、各種の条件および圧縮コイルばね15の機械的特性については後述する。
一方、クランクシャフト6には回転軸線方向に吸入油路16および吐出油路17が設けられているとともに、クランクシャフト6の外周面には、2条の環状溝16A,17Aが形成されている。この環状溝16A,17Aは回転軸線方向の異なる位置に配置されている。そして、吸入油路16と環状溝16Aとが接続され、吐出油路17と環状溝17Aとが接続されている。ところで、ケーシング60内には、前記回転軸線A1の半径方向に延ばされた隔壁61が設けられており、この隔壁61には軸孔20が形成されている。この隔壁61は、回転軸線方向においてエンジン1とラジアルピストンポンプ7との間に配置されており、隔壁61には、吸入油路18および吐出油路19が設けられている。また隔壁61は、回転軸線A1に交差する方向に延ばされており、隔壁61の軸孔20内にクランクシャフト6が回転可能に配置されている。吸入油路18および吐出油路19は軸孔20に開口されており、吸入油路18と環状溝16Aとが接続され、吐出油路19と環状溝17Aとが接続されている。
このように、クランクシャフト6が回転している場合、または停止している場合のいずれにおいても、吸入油路16と吸入油路18とが連通され、吐出油路17と吐出油路19とが連通される構成となっている。さらに、吸入油路18および吐出油路19および環状溝16A,17Aのオイルが軸孔20から漏れることを防止する密封装置20Aが設けられている。さらに、オイルパン21が設けられており、オイルパン21から吸入油路18に至る経路に吸入制御弁70が設けられている。
この吸入制御弁70の構成例を、図4に基づいて説明する。吸入制御弁70は、略直線状に往復移動可能なスプール71と、スプール71に図4で上向きの力を与える弾性部材72と、通電により磁気吸引力を生じるソレノイド73と、磁気吸引力により動作するプランジャ74とを有している。弾性部材72として、例えば金属製の圧縮コイルばねを用いることが可能である。このソレノイド73に電力を供給すると磁気吸引力が生じて、プランジャ74を弾性部材72の力とは逆向きに付勢する。さらに、スプール71にはランド75,76が形成されているとともに、吸入制御弁70は吸入ポート77および吐出ポート78を有している。吸入ポート77は油路79を経由してオイルパン21に接続され、吐出ポート78は吸入油路18に接続されている。そして、弾性部材72からスプール71に加えられる力と、プランジャ74からスプール71に加えられる力との対応関係により、スプール71の動作が制御される。このスプール71の動作により、吸入ポート77と吐出ポート78との連通面積(開度)が調整されて、オイルパン21からラジアルピストンポンプ7の油室14に吸入されるオイルの流量が制御される。
さらに、吸入油路16と油室14とを連通する油路22が設けられ、吐出油路17と油室14とを連通する油路23が設けられており、油路22には逆止弁24が設けられており、油路23には逆止弁25が設けられている。逆止弁24は、吸入油路16のオイルが油室14に吸入されることを許容し、油室14のオイルが吸入油路16に逆流することを防止する構成を有している。これに対して、逆止弁25は、油室14のオイルが吐出油路17に吐出されることを許容し、吐出油路17のオイルが油室14に逆流することを防止する構成を有している。
前記吐出油路19と油圧制御装置26とを接続する油路には、吐出制御弁27が設けられている。吐出制御弁27は図5に示すように、略直線状に往復移動可能なスプール28と弾性部材29とソレノイド30とプランジャ30Aとを有している。弾性部材29として、例えば金属製の圧縮コイルばねを用いることが可能である。この弾性部材29からは、スプール28を図5で上向きに付勢する力が加えられる。また、ソレノイド30に電力を供給すると磁気吸引力が生じて、プランジャ30Aを弾性部材29の力とは逆向きに付勢する。さらに、スプール28にはランド31が形成されているとともに、吐出制御弁27は吸入ポート32および吐出ポート33を有している。吸入ポート32は吐出油路19に接続され、吐出ポート33は、油路34を経由して油圧制御装置26に接続されている。さらに、バルブボデーとランド31の外周面との間にポートC1が形成される。そして、弾性部材29からスプール28に加えられる力と、プランジャ30Aからスプール28に加えられる力との対応関係により、スプール28の動作が制御される。このスプール28の動作により、ポートC1の断面積(開度)が制御されて、油室14から油路34に吐出されるオイルの流量が制御される。
前記アウターレース9は、インプットシャフト2に形成された外向きフランジ35と、外向きフランジ35に連続する円筒部35Aとを有している。円筒部35Aはインナーレース8の外側を取り囲むように配置されているとともに、円筒部35Aの内周にはカム面36が形成されている。このカム面36は回転軸線A1を中心とする環状に構成されているとともに、略波形に構成されている。つまり、半径方向の内側に向けて突出するように湾曲した凸部36Aと、半径方向の外側に向けて突出するように湾曲した凹部36Bとが、円周方向で交互に、かつ、連続して配置されている。そして、このカム面36と、インナーレース8に取り付けられた転動体13とが接触されているとともに、転動体13はカム面36に沿って転動可能である。この実施例においては、凸部36Aが円周方向で6箇所形成され、凹部36Bが円周方向で6箇所形成されている。そして、円周方向で隣りに配置された凹部36Bの中心E1と、凸部36Aの中心D1とのなす角度が略30度に設定されている。つまり、凹部36Bの中心E1同士のなす角度、および凸部36Aの中心D1同士のなす角度が、共に略60度に設定されている。
前記の図2に示すエンジン1は、燃料の燃焼による熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置であり、エンジン1としては、例えば外燃機関および内燃機関が挙げられる。この実施例では、エンジン1として内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いる場合について説明する。このエンジン1の出力を制御する装置として、吸入空気量制御装置(電子スロットルバルブ)、燃料噴射量制御装置などが設けられている。
前記インプットシャフト2からベルト式無段変速機3に至る経路には、前後進切換装置37が設けられている。前後進切換装置37は、エンジン1の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、インプットシャフト2の回転方向に対するプライマリシャフト38の回転方向を切り換える機能を備えている。図2に示す例では、前後進切換装置37としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、インプットシャフト2と一体回転するサンギヤ39と、サンギヤ39と同心状に配置されたリングギヤ40と、サンギヤ39に噛合したピニオンギヤ41と、ピニオンギヤ41およびリングギヤ40に噛合した他のピニオンギヤ42とが設けられ、ピニオンギヤ41,42がキャリヤ43によって、自転かつ公転自在に保持されている。このキャリヤ43とプライマリシャフト38とが一体回転するように連結されている。
さらに、インプットシャフト2と、キャリヤ43とを選択的に連結・解放する前進用クラッチ44が設けられている。またリングギヤ40を選択的に固定することにより、インプットシャフト2の回転方向に対するプライマリシャフト38の回転方向を反転する後進用ブレーキ45が設けられている。そして、前進用クラッチ44の係合圧を制御する油圧室44Aが設けられ、後進用ブレーキ45の係合圧を制御する油圧室45Aが設けられている。これらの油圧室44A,45Aの油圧は、油圧制御装置26により制御される構成となっている。
前記ベルト式無段変速機3は、互いに平行に配置されたプライマリプーリ46とセカンダリプーリ47とを有するとともに、プライマリプーリ46およびセカンダリプーリ47にはベルト48が巻き掛けられている。また、プライマリプーリ46からベルト48に加えられる挟圧力を制御する油圧サーボ機構49と、セカンダリプーリ47からベルト48に加えられる挟圧力を制御する油圧サーボ機構50とが設けられている。この油圧サーボ機構49の油圧室49A、および油圧サーボ機構50の油圧室50Aに供給される圧油の流量および油圧が、油圧制御装置26により制御される構成となっている。
前記プライマリプーリ46はプライマリシャフト38と一体回転するように構成され、セカンダリプーリ47はセカンダリシャフト51と一体回転するように構成されている。プライマリシャフト38とセカンダリシャフト51とは相互に並行に配置され、セカンダリシャフト51のトルクが、伝動機構52およびデファレンシャル4を経由して車輪5に伝達される構成となっている。伝動機構52は、例えば、歯車伝動機構により構成されている。このように、エンジン1から車輪5に至る動力伝達経路G1に、クランクシャフト6、ラジアルピストンポンプ7、インプットシャフト2、前後進切換装置37、ベルト式無段変速機3、伝動機構52、デファレンシャル4が配置されている。
つぎに、図2に示された車両Veの制御系統を説明すれば、車両Veの全体を制御するコントローラとしての電子制御装置53が設けられている。この電子制御装置53には、イグニッションスイッチ、加速要求を(例えば、アクセルペダルの操作状態)検知するセンサ、制動要求(例えば、ブレーキペダルの操作状態)を検知するセンサ、エンジン回転数を検知するセンサ、スロットル開度を検知するセンサ、インプットシャフト2の回転数を検知するセンサ、プライマリシャフト38の回転数を検知するセンサ、セカンダリシャフト51の回転数を検知するセンサ、シフトポジションを検知するセンサ、道路勾配センサ、車速を検知するセンサなどの信号が入力される。
これに対して、電子制御装置53からは、油圧制御装置26を制御する信号、吐出制御弁27および吸入制御弁70を制御する信号、エンジン1を制御する信号などが出力される。また、油圧制御装置26から潤滑系統80にオイルが供給されるように構成されている。ここで、潤滑系統80としては、例えば、前後進切換装置37を構成するギヤの噛み合い部分、伝動機構52を構成するギヤの噛み合い部分、ベルト式無段変速機3におけるプーリとベルト48との接触部分などが挙げられる。
まず、エンジン1が運転されると、クランクシャフト6から、ラジアルピストンポンプ7を経由してインプットシャフト2に伝達されるトルクを制御可能である。なお、ラジアルピストンポンプ7を介在させたトルクの伝達原理は後述する。ここで、クランクシャフト6のトルクがインプットシャフト2に伝達され、かつ、シフトポジションとしてドライブポジションが選択された場合は、前後進切換装置37において、前進用クラッチ44が係合され、かつ後進用ブレーキ45が解放される。その結果、インプットシャフト2およびキャリヤ43が一体回転可能に連結されて、インプットシャフト2のトルクがプライマリシャフト38に伝達される。この場合、インプットシャフト2の回転方向とプライマリシャフト38の回転方向とが同じになる。
これに対して、シフトポジションとしてリバースポジションが選択された場合は、後進用ブレーキ45が係合されて、前進用クラッチ44が解放される。その結果、リングギヤ40が反力要素となり、インプットシャフト2のトルクがプライマリシャフト38に伝達される。この場合、プライマリシャフト38の回転方向は、インプットシャフト2の回転方向とは逆になる。
このように、ドライブポジションまたはリバースポジションが選択された場合は、前後進切換装置37が、動力伝達をおこなうことが可能な状態となる。これに対して、ニュートラルポジションまたはパーキングポジションが選択された場合は、前進用クラッチ44および後進用ブレーキ45が、共に解放されて、前後進切換装置37が、動力伝達をおこなうことが不可能な状態となる。
一方、ベルト式無段変速機3においては、油圧サーボ機構49,50における圧油の供給状態が油圧制御装置26により制御される。具体的には、油圧サーボ機構49に供給される圧油の流量が制御されて、プライマリプーリ46におけるベルト48の巻き掛け半径、およびセカンダリプーリ47におけるベルト48の巻き掛け半径が制御され、ベルト式無段変速機3の変速比、つまり、プライマリシャフト38の回転速度と、セカンダリシャフト51の回転速度との比を無段階(連続的)に制御することができる。また、この変速制御に加えて、セカンダリプーリ47からベルト48に加える挟圧力が調整されて、ベルト式無段変速機3のトルク容量が制御される。
例えば、車速および加速要求(例えばアクセル開度)などに基づいて、車両における必要駆動力が判断され、その判断結果に基づいて目標エンジン回転数および目標エンジントルクが求められる。具体的には、必要駆動力に応じて、目標エンジン出力が求められ、その目標エンジン出力を最適燃費で達成する目標エンジン回転数が求められ、その目標エンジン回転数に応じて目標エンジントルクが求められる。そして、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、ベルト式無段変速機3の変速比が制御される。また、ベルト式無段変速機3の変速比の制御と並行して、電子スロットルバルブの制御などにより、実エンジントルクが目標エンジントルクに近づけられる。上記のようにして、インプットシャフト2のトルクが、前後進切換装置37およびベルト式無段変速機3を経由して伝動機構52に伝達されるとともに、伝動機構52のトルクがデファレンシャル4を経由して車輪5に伝達される。
つぎに、インプットシャフト2とクランクシャフト6との間におけるトルクの伝達原理およびトルク制御方法、言い換えれば、ラジアルピストンポンプ7におけるトルクの伝達原理、およびラジアルピストンポンプ7における伝達トルクの制御方法を説明し、かつ、ラジアルピストンポンプ7のオイル吸入量およびオイル吐出量の制御について説明する。エンジン1が運転されると、インナーレース8を、図1で時計方向に回転させる向きのトルクが発生する。この実施例においては、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間で伝達されるトルクの容量、ラジアルピストンポンプ7におけるオイル吸入量およびオイル吐出量が、以下のようにして制御される。まず、インナーレース8に取り付けられているピストン11および転動体13には、油室14の油圧および圧縮コイルばね15の付勢力に応じた力が加えられ、転動体13がカム面36に接触されている。油室14が低圧である場合は、インナーレース8が回転すると、転動体13がアウターレース9のカム面36に沿って転動し、転動体13およびピストン11が、シリンダ10内を軸線B1方向に往復移動する。ピストン11の往復動により圧縮コイルばね15が伸縮する。
ピストン11がシリンダ10内を往復移動することにより、油室14の容積が変化する。すなわち、ピストン11が、軸線B1に沿って外側に動作すると油室14の容積が拡大され、ピストン11が、軸線B1に沿って内側に動作すると油室14の容積が縮小される。油室14の容積が拡大される場合は、油室14が負圧となる。すると、逆止弁24が開いて、オイルパン21のオイルが、吸入油路18および吸入油路16を経由して油室14に吸引される。この場合、逆止弁25が閉じられるため、吐出油路17のオイルが油室14に逆流することはない。
ついで、インナーレース8とアウターレース9との相対回転に連動して、ピストン11が内側に動作すると、油室14の容積が縮小されて、その内部の油圧が上昇する。そして、油室14の油圧が吸入油路16の油圧よりも高圧となった場合は、逆止弁24が閉じられる。その結果、吸入油路16のオイルが油室14に吸入されなくなるとともに、油室14のオイルが吸入油路16に逆流することが防止される。一方、油室14の容積の縮小により、その内部の油圧が吐出油路17の油圧よりも高圧になると、逆止弁25が開く。その結果、油室14のオイルは、吐出油路17および吐出油路19を経由して、吐出制御弁27に供給される。以後、ピストン11が往復運動を繰り返すことにより、ラジアルピストンポンプ7へのオイルの吸入と、ラジアルピストンポンプ7からのオイルの吐出とが、交互に繰り返される。
この実施例においては、ラジアルピストンポンプ7に吸入されるオイル量およびラジアルピストンポンプ7から吐出されるオイル量を、つぎのようにして制御することが可能である。まず、ラジアルピストンポンプ7の油室14に吸入されるオイル量を制御する場合を説明する。前記吸入制御弁70において、図4の右半分に示すように、スプール71が上向きに動作した場合は、吸入制御弁70の開度が増加し、吸入制御弁70および吸入油路18を経由して油室14に吸入されるオイルの流量が増加する。これに対して、図4でスプール71が下向きに動作した場合は、吸入制御弁70の開度が減少し、油室14に吸入されるオイルの流量が減少する。なお、図4で左半分に示すように、吸入ポート77と吐出ポート78とが遮断された場合は、油室14にはオイルが吸入されなくなる。このように、吸入ポート77と吐出ポート78との連通開度を制御することにより、油室14に吸入されるオイル量を調整可能である。
一方、吐出制御弁27においては、吸入ポート32と吐出ポート33との間に形成されたポートC1の断面積(開度)が制御され、ポートC1の断面積に応じて、ラジアルピストンポンプ7におけるオイル吐出量、具体的には、ラジアルピストンポンプ7から油圧制御装置26に供給されるオイル量が制御される。
そして、この実施例においては、ソレノイド30に供給される電力の電流値により、スプール28の動作が制御され、ポートC1の断面積が調整される。このポートC1の断面積に応じて、吐出油路19から油路34に吐出されるオイルの流通抵抗が変化する。具体的には、ポートC1の断面積が拡大されるほど、オイルの流通抵抗が低下し、油室14のオイル量が減少しやすくなる。これに対して、ポートC1の断面積が縮小されるほど、オイルの流通抵抗が増加して、油室14のオイル量が減少しにくくなる。このようにして、油室14のオイル量および油圧を調整可能であり、油室14の油圧は、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間で伝達されるトルクに影響を及ぼす。
ここで、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間で伝達されるトルクについて、図6を参照しながら説明する。油室14の油圧および圧縮コイルばね15の弾性力に応じて、転動体13の中心H1に向けて力F1が加わる。転動体13とカム面36とが接触点J1で接触している場合、接触点J1に対応する接線K1と直角な力F2が接触点J1で生じる。この図6では、便宜上、カム面36および接線K1を共通の直線で示している。そして、クランクシャフト6のトルクに応じて、この接触点J1から円周方向の力F3がアウターレース9に伝達される。また、接触点J1からカム面36の形状に沿って、クランクシャフト6のトルクに応じた分力F4が生じる。
上記のように、油室14のオイル量が減少して、油室14の油圧が低下した場合は、転動体13の中心点H1に向けて加えられる力F1が小さくなり、かつ、力F2が小さくなる。このため、分力F4が大きくなり、力F3が相対的に小さくなる。すなわち、エンジントルクが低下した場合は、ラジアルピストンポンプ7の伝達トルクが低下するため、油室14の油圧を低下させる制御が実行される。
これに対して、油室14のオイル量が増加して、油室14の油圧が上昇した場合は、転動体13の中心点H1に向けて加えられる力F1が大きくなり、かつ、力F2が大きくなる。このため、分力F4が小さくなり、力F3が相対的に大きくなる。すなわち、油室14の油圧が上昇した場合は、ラジアルピストンポンプ7のトルク容量が増加して、クランクシャフト6からインプットシャフト2に伝達されるトルクが上昇する。
以上のように、図1ないし図5に示された構成によれば、吐出制御弁27または吸入制御弁70の少なくとも一方の開度を制御することにより、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間で伝達されるトルクの容量を制御することが可能である。なお、ラジアルピストンポンプ7のトルク容量を制御可能であるということは、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間の相対回転数差を制御可能、または、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間における動力伝達効率を制御可能であるともいえる。このように、ラジアルピストンポンプ7は、油圧制御装置26にオイルを供給する機能と、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間における動力伝達状態を制御する機能(クラッチとしての機能)とを兼備している。
つぎに、図1ないし図5に示された構成で実行可能な制御例を、図7に基づいて説明する。まず、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間で動力伝達をおこなう条件が成立しているか否かが判断される(ステップS1)。例えば、シフトポジションとして、ドライブポジションまたはリバースポジションが選択されている場合は、前記条件が成立しているものとして処理され、ステップS1で肯定的に判断されてステップS2に進む。このステップS2では制動要求があるか否かが判断される。例えば、ブレーキスイッチがオンされており、運転者が車両Veを停止させようとする意図がある場合は、ステップS2で肯定的に判断され、ついで、実車速が所定車速以下であるか否かが判断される(ステップS3)。ここで、所定車速とは、車両Veが略停止する車速である。このステップS3で肯定的に判断された場合は、吸入制御弁70の吐出ポート78の開度を減少させる、具体的には吐出ポート78を閉じる制御を実行するとともに、吐出制御弁27のポートC1を開放する制御を実行し(ステップS4)、この制御ルーチンを終了する。
このステップS4の処理が実行された場合は、油路79からはラジアルピストンポンプ7の油室14にはオイルが供給されなくなるとともに、以下のような作用が生じる。ラジアルピストンポンプ7においては、圧縮コイルばね15の力でピストン11がカム面36に向けて常時押圧されており、油室14が負圧となって逆止弁25が閉じられるため、吐出油路17のオイルが油室14に逆流することはない。このため、クランクシャフト6とインプットシャフト2とが相対回転して、転動体13がカム面36の凹部36Bに相当する位相に至った場合でも、ピストン11がカム面36に向けて動作せず、油室14の容積は拡大しない。その結果、クランクシャフト6とインプットシャフト2との相対回転にともない、転動体13がカム面36から離れる可能性がある。
これに対して、この実施例では、ステップS4の処理が実行されて、吸入制御弁70の吐出ポート78が閉じられて、油室14にオイルが吸入されなくなり、油室14が負圧となった場合でも、転動体13がカム面36に接触した状態が常時維持されるように、圧縮コイルばね15の機械的特性が設定されている。
この実施例において、圧縮コイルばね15からピストン11に加えられる力は、各種の条件、例えば、カム面36の形状、より具体的には、凹部36Bの内接円(図示せず)と凸部36Aの外接円(図示せず)との差、凹36Bおよび凸部36Aの曲率、円周方向における凹部36Bおよび凸部36Aの位置および数などを考慮して設定することが可能である。また、圧縮コイルばね15からピストン11に加えられる力は、クランクシャフト6とインプットシャフト2との回転数差の許容値、油室14が負圧となった場合におけるピストン11の動作抵抗などを考慮して設定することも可能である。ここで、圧縮コイルばね15からピストン11に加えられる力は、圧縮コイルばね15の機械的特性、具体的には、ばね定数、自由高さなどを調整することにより設定可能である。ここで、自由高さとは、無荷重の状態における圧縮コイルばね15の高さを意味する。
また、油室14が負圧となった場合に、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間で動力伝達がおこなわれないか、またはエンジントルクに関わりなく、クランクシャフト6からインプットシャフト2に伝達されるトルクがクリープトルク以下となるように、圧縮コイルばね15の力が設定される。したがって、クランクシャフト6が回転していても、クランクシャフト6のトルクはインプットシャフト2には伝達されず、ニュートラル状態を維持することができるか、または、クランクシャフト6からインプットシャフト2にトルクが伝達されたとしても、低トルクであるため、車両Veが走行することを回避できる。
一方、図7のステップS3で否定判断された場合は、ステップS3の判断が繰り返される。また、ステップS2の判断時点でブレーキスイッチがオフされている場合は、そのステップS2で否定的に判断されて、再度ステップS2の判断を繰り返す。さらに、ステップS1の判断時点で、ニュートラルポジションまたはパーキングポジションが選択されていた場合は、ステップS1で否定的に判断されて、ステップS1の判断が繰り返される。
また、車両Veが停車し、かつ、ステップS4の処理を実行した後に、車両Veが発進する場合は、吸入制御弁70が開放される。このため、オイルパン21のオイルを、油路79および吸入油路18を経由して油室14に吸入することが可能になる。したがって、ピストン11がカム面36に向けて動作した場合に、油室14の容積の拡大が促進される。このように、車両Veの停止から車両Veの発進に切り換わる場合に、車両Veの停止時に、予め転動体13がカム面36に接触しているため、「転動体13がカム面36から離れ、その後に転動体13がカム面36に衝突して衝撃が発生し、かつ、ショックや騒音が生じる。」という不具合を未然に防止することができる。また、「転動体13がカム面36から離れて、転動体13がカム面36に接触するまでの間、動力伝達がおこなわれなくなる。」という不具合を未然に回避することができる。つまり、停止している車両Veを発進する場合に、油室14の油圧を迅速に上昇することができ、発進応答性が良好になる。
さらに、ピストン11が動作してクランクシャフト6とインプットシャフト2との間でトルク伝達がおこなわれ、車両Veが走行する場合に、圧縮コイルばね15の力により転動体13がカム面36に常時接触させられるため、ピストン1が外側に向けて動作しやすくなり、油室14の容積の拡大が促進される。したがって、クランクシャフト6の回転数、油室14におけるオイルの吸入状態、油室14におけるオイルの吐出状態に関わりなく、油室14にオイルを確実に吸入することができる。
つぎに、図1ないし図5の構成で実行可能な他の制御例を、図8に基づいて説明する。まず、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間で動力伝達をおこなう条件が成立しているか否かが判断される(ステップS11)。このステップS11の判断条件は、ステップS1の判断条件と同じである。このステップS11で肯定的に判断された場合は、実車速が所定車速以上であるか否かが判断される(ステップS12)。このステップS12の判断に用いられる所定車速としては、例えば、クランクシャフト6とインプットシャフト2との一体回転が許容される車速が挙げられる。
このステップS12で肯定的に判断されるということは車両Veが走行中であることを意味する。そこで、ステップS12で肯定的に判断された場合は、オイル必要部に供給するべきオイルの流量が所定量以下であるか否かが判断される(ステップS13)。ここで、オイル必要部としては、潤滑系統80、油圧室44A,45A,49A,50Aなどが挙げられる。このステップS13で肯定的に判断された場合は、吐出制御弁27のポートC1の断面積を減少させる制御、具体的にはポートC1を閉じる制御を実行し、かつ、吸入制御弁70を開放する制御を実行し(ステップS14)、リターンされる。なお、ステップS13またはステップS12またはステップS11で否定的に判断された場合は、吐出制御弁27のポートC1の断面積を増加する制御、つまり、ポートC1を開放する制御を実行し、かつ、吸入制御弁70を開放する制御を実行し(ステップS15)、リターンされる。
このように、ステップS14の処理により、吐出制御弁27のポートC1が閉じられた場合は、油室14から吐出されるオイル量が減少し、ピストン11を内側に動作させるために必要な荷重が高くなる。つまり、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間で、ラジアルピストンポンプ7を経由して伝達されるトルクの容量が増加する。したがって、クランクシャフト6とインプットシャフト2との回転数の差が少なくなるか、もしくはクランクシャフト6とインプットシャフト2とが一体回転する。その結果、圧縮コイルばね15の伸縮回数および伸縮量が減少し、圧縮コイルばね15の耐久性が向上する。
また、ステップS12で肯定的に判断され、かつ、一時的に加速または一時的に減速する場合において、ステップS14の処理が実行されて、クランクシャフト6とインプットシャフト2とが一体回転すると、クランクシャフト6とインプットシャフト2との間における動力伝達効率が向上する。したがって、加速時には、クランクシャフト6から高トルクをインプットシャフト2に伝達することができ、加速性が向上する。これに対して、減速時であれば、惰力走行する車両Veの運動エネルギがエンジン1に伝達され易くなり、エンジンブレーキ力が強められる。また、ステップS15の制御により、潤滑系統80、油圧室44A,45A,49A,50Aなどに供給されるオイル量を増加することができ、ラジアルピストンポンプ7から吐出されたオイルを有効に利用することができる。
この実施例において、転動体13がカム面36に接触した状態を常時維持するにあたり、クランクシャフト6とインプットシャフト2との回転数差が零の場合、あるいは所定の回転数差がある場合のいずれであってもよい。なお、この実施例において、転動体13をカム面36に接触した状態に維持することに関わりのないとするパラメータは、クランクシャフト6の回転数、油室14におけるオイルの吸入状態、油室14におけるオイルの吐出状態のうちの少なくとも1つであればよい。
さらに、この実施例において、ピストン11に力を加える機構としては、金属製の圧縮コイルばね15に代えて、その他のばねを用いることも可能である。ピストン11に力を加える機構として、ばね以外の弾性部材を用いることも可能である。このような弾性部材の場合は、その剛性や材料を選択することにより、ピストン11に加えられる力を設定可能である。さらに、この実施例は、インプットシャフトにインナーレースおよびピストンおよびボールが設けられ、クランクシャフトにアウターレースおよびカム面が設けられている構成の動力伝達装置にも適用可能である。さらに、この実施例においては、吸入制御弁70と吐出制御弁27とが別々に設けられているが、油室14におけるオイルの吸入量を制御する機能、およびオイルの吐出量を制御する機能を兼備した単一の制御弁を設けることも可能である。さらに、エンジンとラジアルピストンポンプとの間の動力伝達経路に、ダンパなどの緩衝装置が設けられている構成の動力伝達装置に対しても、この実施例を適用可能である。
また、ベルト式無段変速機3以外の無段変速機、例えば、トロイダル式無段変速機を有する動力伝達装置に、この実施例を適用することも可能である。また、駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に配置される変速機を、無段変速機に代えて有段変速機を用いることも可能である。有段変速機は、変速比を段階的に変更することの可能な変速機である。この場合は、前後進切換装置を用いなくてよい。さらに、駆動力源として、モータ・ジェネレータを用いた車両の動力伝達装置に、この実施例を適用することも可能である。また、クランクシャフト6とインプットシャフト2とが、車両の幅方向に設けられた動力伝達装置の他、クランクシャフトとインプットシャフトとが、車両の前後方向に設けられた動力伝達装置に、この実施例を適用することも可能である。また、この実施例の動力伝達装置は、前輪駆動車、後輪駆動車、四輪駆動車のいずれにも適用可能である。
ここで、この発明の実施例で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、クランクシャフト6およびインナーレース8が、この発明の第1の回転部材に相当し、インプットシャフト2およびアウターレース9が、この発明の第2の回転部材に相当し、ラジアルピストンポンプ7が、この発明のオイルポンプに相当し、ピストン11および転動体13が、この発明の動作部材に相当し、カム面36が、この発明のカムに相当し、吸入制御弁70が、この発明の吸入制御弁に相当し、吐出制御弁27が、この発明の吐出制御弁に相当し、油圧制御装置26、潤滑系統80、油圧室44A,45A,49A,50Aなどが、この発明のオイル必要部および油圧系統に相当し、油路34が、この発明の接続油路に相当し、圧縮コイルばね15またはその他のばね、および弾性部材が、この発明の付勢機構に相当する。なお、インプットシャフトにインナーレースおよびピストンおよびボールが設けられ、クランクシャフトにアウターレースおよびカム面が設けられている構成の場合は、インプットシャフトおよびインナーレースが、この発明の第1の回転部材に相当し、クランクシャフトおよびアウターレースが、この発明の第2の回転部材に相当する。また、油室14におけるオイルの吸入量、吸入制御弁70の開度などが、この発明の「オイルの吸入状態」に相当し、油室14から吐出されるオイル量、吐出制御弁27の開度などが、この発明の「オイルの吐出状態」に相当し、力F1が、この発明の「動作部材に加わる力」に相当する。
また、図6のフローチャートにおいて、ステップS1からステップS3に進んでステップS3で肯定的に判断されるルーチンが、この発明における「第1の回転部材と第2の回転部材との間における動力伝達を遮断する条件が成立した場合」に相当する。また、図7のフローチャートにおいて、ステップS11からステップS13に進んでステップS13で肯定的に判断されるルーチンが、この発明における「第1の回転部材と第2の回転部材との間で動力伝達をおこなう条件が成立し、かつ、油室から吐出されるオイル量を減少させる条件が成立した場合」に相当し、ステップS14が、この発明の吐出量制御手段に相当する。
また、この発明において、第1の回転部材の回転数、または油室におけるオイルの吸入状態、または油室におけるオイルの吐出状態に関わりなくとは、これらのパラメータがいかなる状態になっても、あるいはいかなる変化を示したとしても、あるいはいかなる値となったとしてもという意味である。なお、これらのパラメータの状態に関わりなくとは、パラメータの状態が、実用上、支障のない範囲内にあることが前提となる。
2…インプットシャフト、 6…クランクシャフト、 7…ラジアルピストンポンプ、 8…インナーレース、 9…アウターレース、 11…ピストン、 13…転動体、 14…油室、 15…圧縮コイルばね、 27…吐出制御弁、 34…油路、 36…カム面、 44A,45A,49A,50A…油圧室、 70…吸入制御弁、 80…潤滑系統。
Claims (3)
- 動力伝達経路に配置された第1の回転部材と第2の回転部材との相対回転により駆動されるオイルポンプが設けられており、このオイルポンプは、前記第1の回転部材に半径方向に往復移動可能に取り付けられた動作部材と、前記第2の回転部材に円周方向に形成され、かつ、前記動作部材が接触して、前記第1の回転部材と前記第2の回転部材とを動力伝達可能に連結するカムと、前記動作部材に加わる力を制御する油室とを有しているとともに、この油室に吸入されるオイルの吸入状態を制御する吸入制御弁と、前記油室から吐出されるオイルの吐出状態を制御する吐出制御弁とが設けられている動力伝達装置において、
前記油室から吐出されたオイルを、前記油室および前記吸入制御弁および前記吐出制御弁を含む油圧回路以外の油圧系統に供給する接続油路が設けられているとともに、前記第1の回転部材の回転数、または前記油室におけるオイルの吸入状態、または前記油室におけるオイルの吐出状態に関わりなく、前記動作部材を前記カムに接触させた状態を維持できるような力を前記動作部材に与える付勢機構が設けられていることを特徴とする動力伝達装置。 - 前記第1の回転部材と前記第2の回転部材との間で動力伝達をおこなう条件が成立し、かつ、前記油室から吐出されるオイル量を減少させる条件が成立した場合に、前記吐出制御弁の開度を減少させる吐出量制御手段が、更に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
- 前記油圧系統には、前記動力伝達経路に設けられたオイル必要部が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の動力伝達装置。
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Cited By (2)
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JP2010249281A (ja) * | 2009-04-17 | 2010-11-04 | Toyota Motor Corp | 動力伝達装置 |
CN105041908A (zh) * | 2015-08-23 | 2015-11-11 | 袁廷华 | 一种活齿型双离合器 |
-
2005
- 2005-02-18 JP JP2005042729A patent/JP2006226463A/ja active Pending
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CN105041908A (zh) * | 2015-08-23 | 2015-11-11 | 袁廷华 | 一种活齿型双离合器 |
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