JP2008309321A - ピストン型の液体機器 - Google Patents

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Shinya Kuwabara
信也 桑原
Naoshi Fujiyoshi
直志 藤吉
Hiroyuki Shioiri
広行 塩入
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Abstract

【課題】カムとピストンとの接触位置が変化することを抑制できる、ピストン型の液体機器を提供する。
【解決手段】第1の部材18に設けられたカム22と、第2の部材25に取り付けられたピストン35,36と、第2の部材25に設けられた液体室39とを有し、ピストン35,36がカム22に押し付けられた場合に、第2の部材25を回転軸線X1に沿った方向に押圧する第1の荷重F2が発生するように、カム22の形状が構成されている、オイルポンプ6において、液体が出入りする第1調整室130と、第1調整室130の圧力で第1の荷重F2とは逆向きの第2の荷重F3を第2の部材25に与える受圧面126とを有し、第1の荷重F2と第2の荷重F3とが一致するように、受圧面126の面積を構成し、液圧室39の液体を第1調整室130に供給する通路48,137,144を設けた。
【選択図】 図1

Description

この発明は、ピストンがカムに接触した状態で、回転軸線を中心とする半径方向に動作するように構成された、ピストン型の液体機器に関するものである。
従来、第1の部材と第2の部材との相対回転によってピストンが動作し、かつ、液体室内に液体が出入りするように構成された、ピストン型の液体機器、例えば、ラジアルピストンポンプが知られている。このラジアルピストンポンプを用いたトルク伝達装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたトルク伝達装置の構成を説明すると、エンジンの駆動力がトランスミッションで変速されて、フロントデフに伝達されるとともに、フロントデフのトルクが、方向変換歯車組、出力軸、トルク伝達装置、プロペラシャフトを介してリヤデフに伝達されるように構成されている。このトルク伝達装置においては、中空の外側回転部材が、ニードルベアリングを介して相対回転可能および軸方向相対移動可能に支承されている。また、内側回転部材の端部に設けられた内周溝にはフォークが摺動自在に係合し、フォークの操作により内側回転部材は外側回転部材に対して軸方向に相対移動する。さらに、前記外側回転部材の内周には、径方向の凹凸を有し、かつ、周方向に高低差を有するカム面が設けられている。このカム面は軸方向で右側に行くほど凹部の径は小さくなり、また凸部の径は大きくなることによって、その径同士の差が小さくなっている。また、前記内側回転部材にはシリンダ部材がスプライン嵌合しており、このシリンダ部材には、複数のシリンダ室が設けられている。さらに、各シリンダ室には、ピストン部材がそれぞれ摺動自在に設けられており、各ピストン部材は、それぞれ前記カム面に摺接している。また、各シリンダ室はオリフィスを介して流路で連通されており、各シリンダ室および流路には流体が充填されている。
そして、前記エンジンの駆動力により前記内側回転部材が回転し、前記外側回転部材との間に回転差が生じると、前記ピストン部材は前記カム面を摺動しながら往復動をおこなう。そのときピストン部材が中心方向へ移動し、容積が減少するシリンダ室では、前記オリフィスの流動抵抗のために内圧が上昇し、その内圧によって前記ピストン部材がカム面を押圧し、押圧反力によってトルクが外側回転部材に伝達される。また、前記フォークにより内側回転部材を移動動作してカム面の高低差を大きくすると、前記内側回転部材および外側回転部材の差動回転にともなうピストン部材の往復動スピードは速くなり、前記シリンダ室の内圧が大きくなってピストン部材の押圧力が大きくなり、伝達トルクが大きくなる。これに対して、前記フォークにより内側回転部材を移動動作してカム面の高低差を小さくすると、前記内側回転部材および外側回転部材の差動回転にともなうピストン部材の往復動スピードは遅くなり、前記シリンダ室の内圧が低下して前記ピストン部材の押圧力が低下し、伝達トルクが小さくなる。
特開平2−120520号公報
ところで、上記の特許文献1に記載されているトルク伝達装置においては、シリンダ室の内圧でピストン部材がカム面に押し付けられており、その接触部分に生じる反力で、前記ピストン部材を前記内側回転部材の軸線に沿った方向に押圧する向きの荷重(スラスト荷重)が生じる。そして、前記シリンダ室の圧力が変化すると、前記シリンダ部材に加わるスラスト荷重も変化するため、前記カム面と前記ピストンとの接触位置が変化する恐れがあった。
この発明は上記事情を背景としてなされたものであって、前記カムと前記ピストンとの接触位置を制御する調整室が設けられており、その調整室の液体圧を特別に制御することなく、前記カムと前記ピストンとの接触位置が変化することを抑制できる、ピストン型の液体機器を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため請求項1の発明は、回転軸線を中心として相対回転可能に設けられた第1の部材および第2の部材と、前記第1の部材に設けられ、かつ、前記回転軸線を中心とする半径方向に変位された形状を有するカムと、前記第2の部材に取り付けられ、かつ、前記半径方向に沿って往復動可能なピストンと、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記ピストンを前記半径方向で前記カムに押し付ける向きの圧力を生じる液体が出入りする液体室とを有するとともに、前記ピストンが前記カムに押し付けられた場合に生じる反力により、前記第2の部材を前記回転軸線に沿った方向に押圧する第1の荷重が発生するように、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記回転軸線に対して前記カムの形状を示す線分が傾斜されているとともに、前記第1の部材と第2の部材とを前記回転軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記半径方向におけるピストンの動作範囲を変更することの可能な、ピストン型の液体機器において、前記液体が出入りする第1調整室と、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記第1調整室の液体の圧力が作用して、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第1の荷重とは逆向きの第2の荷重を前記第2の部材に加える第1受圧面とを有し、前記液体室の液体の圧力により前記ピストンが前記カムに押し付けられて前記第1の荷重が発生する場合に、その第1の荷重と前記第2の荷重とが一致するように、前記第1受圧面の面積が構成され、前記液圧室から吐出された液体の圧力を前記第1調整室に伝達する通路が設けられていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記液体室に接続された第2調整室と、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記第2調整室の液体の圧力が作用して、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第2の荷重と同じ向きの第3の荷重を前記第2の部材に加える第2受圧面と、前記液体室に接続された第3調整室と、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記第3調整室の液体の圧力が作用して、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第1の荷重と同じ向きの第4の荷重を前記第2の部材に加える第3受圧面とが設けられており、前記第2受圧面の面積が前記第3受圧面の面積よりも広く構成されていることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、回転軸線を中心として相対回転可能に設けられた第1の部材および第2の部材と、前記第1の部材に設けられ、かつ、前記回転軸線を中心とする半径方向に変位された形状を有するカムと、前記第2の部材に取り付けられ、かつ、前記半径方向に沿って往復動可能なピストンと、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記ピストンを前記半径方向で前記カムに押し付ける向きの圧力を生じる液体が出入りする液体室とを有するとともに、前記ピストンが前記カムに押し付けられた場合に生じる反力により、前記第2の部材を前記回転軸線に沿った方向に押圧する第1の荷重が発生するように、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記回転軸線に対して前記カムの形状を示す線分が傾斜されているとともに、前記第1の部材と第2の部材とを前記回転軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記半径方向におけるピストンの動作範囲を変更することの可能な、ラジアルピストン型の液体機器において、前記液圧室から吐出された液体が通路を経由して供給される第1調整室と、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記第1調整室の液体の圧力が作用して、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第1の荷重とは逆向きの第2の荷重を前記第2の部材に加える第1受圧面と、前記通路に設けられ、かつ、前記液体室から前記第1調整室に供給される液体の液圧を減圧する減圧弁とを有しており、前記ピストンが前記カムに押し付けられて前記第1の荷重が発生するとともに、前記減圧弁により減圧された液体の圧力が作用して前記第2の荷重が発生する場合に、前記第1の荷重と前記第2の荷重とが一致するように、前記第1受圧面の面積が構成されていることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、前記半径方向で前記ピストンの動作範囲を変更する場合に、前記液体室から吐出される液体を、前記減圧弁で減圧せずに前記第1調整室に供給する構成を有していることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの構成に加えて、前記第1の部材と第2の部材とが相対回転すると、前記ピストンが前記カムの形状に沿って前記半径方向に往復動することにより、前記液体室の圧力が低下すると液体を吸入し、かつ、前記液体室の圧力が上昇するとその液体室から液体を吐出するポンプとして機能する構成を有していることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記第1の部材または第2の部材のいずれか一方に伝達する動力を出力する動力源が設けられており、前記動力源の動力が前記第1の部材または前記第2の部材に伝達された場合に、前記カムと前記ピストンとの係合力により、前記第1の部材と第2の部材との間で動力伝達がおこなわれるように構成されており、前記第1の部材と第2の部材とを前記回転軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記半径方向における前記ピストンの動作範囲を制御して、前記第1の部材と第2の部材との間における動力伝達状態を制御する制御装置が設けられていることを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項1ないし6の構成に加えて、動力源から車輪に至る動力伝達経路に無段変速機が設けられており、前記動力源から前記無段変速機に至る動力伝達経路、またはこの無段変速機から前記車輪に至る動力伝達経路のいずれか一方に、前記第1の部材および第2の部材が配置されているとともに、前記動力源の動力が前記第1の部材または前記第2の部材に伝達された場合に、前記カムと前記ピストンとの係合力により、前記第1の部材と前記第2の部材との間で動力伝達がおこなわれる構成であることを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、液体室の圧力で、ピストンがカムに向けて押し付けられるとともに、前記ピストンがカムの形状に沿って半径方向に往復動する。また、前記ピストンが前記カムに押し付けられた場合に生じる反力により、前記第2の部材を回転軸線に沿った方向に押圧する第1の荷重が発生する。さらに、第1調整室の液体の圧力が第2の部材の第1受圧面に作用して、前記第1の荷重とは逆向きの第2の荷重が発生する。この第1の荷重と前記第2の荷重とが一致するため、前記第1の部材と第2の部材とが回転軸線に沿った方向に相対移動することを抑制できる。したがって、前記カムと前記ピストンとの接触位置が変化することを抑制できる。また、前記液圧室の液体の圧力が前記第1調整室に伝達されるため、この第1調整室の液体の圧力を特別に制御せずに済む。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記液体室の液体が第2調整室に供給されると、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第2の荷重と同じ向きの第3の荷重が前記第2の部材に加えられる。また、前記液体室の液体が第3調整室に供給されると、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第1の荷重と同じ向きの第4の荷重が前記第2の部材に加えられる。また、前記第2受圧面の面積が前記第3受圧面の面積よりも広く構成されているため、第2調整室および第3調整室における液体の供給・排出を制御することにより、前記第2の部材に加えられる相互に逆向きの荷重が変化し、前記第2の部材の移動させる場合の速度を変更することができる。
請求項3の発明によれば、液体室の圧力で、ピストンがカムに向けて押し付けられるとともに、前記ピストンがカムの形状に沿って半径方向に往復動する。また、前記ピストンが前記カムに押し付けられた場合に生じる反力により、前記第2の部材を回転軸線に沿った方向に押圧する第1の荷重が発生する。さらに、液体室から吐出される液体の液圧が減圧されて、第1調整室の第1受圧面に作用して、前記第1の荷重とは逆向きの第2の荷重が発生するとともに、この第1の荷重と前記第2の荷重とが一致するため、前記第1の部材と第2の部材とが回転軸線に沿った方向に相対移動することを抑制できる。したがって、前記カムと前記ピストンとの接触位置が変化することを抑制できる。また、前記液圧室の液体の圧力が前記第1調整室に伝達されるため、この第1調整室の液体の圧力を特別に制御せずに済む。
請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる他に、前記液体室から吐出される液体を、前記減圧弁で減圧せずに前記第1調整室に供給すると、第2の荷重の方が第1の荷重よりも高くなり、前記第2の部材が回転軸線に沿った方向に動作し、前記半径方向における前記ピストンの動作範囲が変化する。
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、前記第1の部材と第2の部材とが相対回転することにともない、前記ピストンが前記カムの形状に沿って前記半径方向に往復動する。このようなピストンの往復動により、前記液体室の圧力が低下すると液体を吸入し、かつ、前記液体室の圧力が上昇するとその液体室から液体を吐出するポンプとして機能する。
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、動力源の動力が前記第1の部材または第2の部材のいずれか一方に伝達されるとともに、前記カムと前記ピストンとの係合力により、前記第1の部材と第2の部材との間で動力伝達がおこなわれる。また、前記回転軸線に沿った方向で、前記第1の部材と第2の部材とを相対移動させることにより、前記カムとピストンとの係合力が変化して、前記第1の部材と第2の部材との間における動力伝達状態を制御することができる。
請求項7の発明によれば、請求項1ないし6のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、前記動力源の動力が、第1の部材および前記第2の部材を経由して無段変速機に伝達されるか、または前記動力源の動力が、無段変速機を経由して第1の部材および前記第2の部材に伝達される。また、無段変速機では、入力回転数と出力回転数との間における変速比を無段階に変更可能である。
この発明において、ピストン型の液体機器は、具体的には、圧縮流体を油路、通路、油圧室などを流通させる流体装置である。この流体装置には、ポンプ、モータ、動力伝達装置が含まれる。前記ポンプは、第1の部材と第2の部材とを相対回転させることにより、ピストンをカムの形状に沿って往復動させて、液体室に液体を吸入し、その液体室から液体を吐出する装置、つまり、流体機械の一種である。前記モータでは、液体室に液体を圧入し、かつ、液体室から液体を排出(吸引)する制御がおこなわれる。そして、液体室の圧力でピストンをカムに押し付け、接触点で生じる分力によりトルクが生じる。さらに、前記動力伝達装置は、動力源の動力を、第1の部材または第2の部材のいずれか一方に伝達して、第1の部材と第2の部材とを相対回転させることにより、ピストンをカムの形状に沿って往復動させるとともに、前記ピストンとカムとの係合力により、第1の部材と第2の部材との間で動力伝達をおこなう装置、具体的にはクラッチである。
この発明において、第1の部材および第2の部材は回転軸線を中心として相対回転可能に配置されている。また、この発明においては、第1の部材または第2の部材のうち、少なくとも一方が回転可能に構成される。言い換えれば、いずれか一方の部材は回転不可能に固定された固定構造物でもよい。具体的には、液体機器が動力伝達装置である場合は、第1の部材および第2の部材が、共に回転可能に設けられる。これに対して、液体機器がポンプまたはモータである場合は、何れか一方の部材が固定されていてもよい。この発明において、第1の部材または第2の部材のうち、回転可能に設けられる部材は、動力源の動力が伝達されるように構成されており、前記動力源の動力が一方の部材に伝達されて、第1の部材と第2の部材とが相対回転する。この発明において、第1の部材または第2の部材のうち、回転可能に設けられる部材、つまり、回転要素には、回転軸、歯車、スプロケット、スリーブ、プーリ、キャリヤ、環状部材などの要素が含まれる。これに対して、第1の部材または第2の部材のうち、いずれか一方の部材を回転不可能に固定する場合、この固定要素としては、ポンプが収容されるケーシングまたはハウジング自体、ケーシングまたはハウジングに取り付けられるブラケットもしくはフレーム、ケーシングまたはハウジングに設けられる隔壁などが挙げられる。さらに、前記ケーシングまたはハウジングは、動力源に固定される構造、または車体に固定される構造のいずれでもよい。さらに、液体機器を車両に搭載する場合、車体自体に何れか一方の部材を固定してもよい。
前記動力源としては、熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である内燃機関を用いることが可能である。さらに、内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジン、メタノールエンジンなどを用いることができる。また動力源としては電動機を用いることも可能である。電動機は電気エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である。また、電動機は直流電動機または交流電動機のいずれでもよい。また、電動機としては、発電機能を兼備した発電・電動機を用いることも可能である。さらには、内燃機関および電動機の両方を動力源として用いることも可能である。さらにまた、動力源として、フライホイールシステムを用いることも可能である。この発明において、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記回転軸線に対して前記カムの形状を示す線分が傾斜されているとは、カムの形状が直線で示される場合は、その直線が前記回転軸線と交差するように構成されているという意味である。これに対して、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、カムの形状が湾曲している場合は、その湾曲面に接する接線もしくは法線が、前記回転軸線と交差するように構成されているという意味である。
前記第1の部材に形成されたカムは、前記回転軸線と垂直な平面内では半径方向に変位されている。また、前記回転軸線と垂直な平面内における前記カムの形状としては、前記回転軸線を中心として環状に形成される湾曲面で構成することができる。前記回転軸線と垂直な平面内における形状としては、波形形状、楕円形状、前記回転軸線から中心を偏心させた真円形状などを用いることができる。この発明において、前記半径方向に動作するピストンは、第1の部材に取り付けられた可動片と、この可動片に取り付けられた転動体とを有し、この転動体がカムに接触するように構成されている。この転動体としては、ローラまたはボールを用いることが可能である。この発明における液体機器をポンプとして用いる場合、液体としては、水、オイル、不凍液、薬液、温水などが挙げられる。この発明における液体機器を、モータまたはクラッチとして用いる場合、液体としてはオイルが挙げられる。また、この発明において、液体機器をクラッチまたはポンプとして用いる場合、動力源の動力が第1の部材を経由して第2の部材に伝達される構成、または動力源の動力が第2の部材を経由して第1の部材に伝達される構成のいずれでもよい。
また、この発明において、液体機器をモータとして用いる場合、液体室に液体を供給・排出し、液体室の圧力で前記ピストンをカムに押し付けて、前記第1の部材または第2の部材を回転させるトルクを発生させる。この発明を動力伝達装置として用いる場合、前記第1の部材と第2の部材とを前記回転軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記半径方向における前記ピストンの動作量を調整して、前記第1の部材と第2の部材との間における動力伝達状態を制御することができる。ここで、動力伝達状態には、第1の部材と第2の部材との間で伝達されるトルクの容量、第1の部材と第2の部材との回転数差などが挙げられる。さらに、この発明におけるピストン型の液体機器を、車両の駆動力源から車輪に至る動力伝達経路に配置することが可能である。この場合、第1の部材および第2の部材がともに回転可能に配置される。そして、前記ピストンと前記カムとの係合力により、前記第1の部材と第2の部材との間で動力伝達がおこなわれる。この発明において、第1調整室は、液体が供給されて、受圧面に作用する油圧を生じさせる空間であり、液体密にシールされているとともに、前記液体圧自体では容積が変化することはない。
また、この発明における「通路」は、液体室の液体を第1調整室に供給することの可能な構成であり、具体的には、バルブ内部の通路、バルブに形成されたポート、油圧回路や回転部材もしくは軸などに形成された、開口部、溝、貫通孔、油路など、液体が流通可能な構成であればよい。また、この発明において、制御装置は、第1の部材と第2の部材とを回転軸線に沿った方向に相対移動させる装置であり、第1の部材または第2の部材のうち、少なくとも一方に対して、回転軸線に沿った方向の荷重を与えるアクチュエータである。このアクチュエータとしては、液圧式アクチュエータ、または電磁式アクチュエータ、または機械式アクチュエータを用いることが可能である。また、このアクチュエータとして液圧式アクチュエータを用いる場合、第2の部材に第2の荷重を与える第1調整室と、液圧式アクチュエータとが、その構成の一部が共用されていてもよい。さらに、この発明の液体機器は、車両の駆動力源から車輪に至る動力伝達経路、具体的にはフロアーの下方空間に配置することが可能である。また、車両のエンジンルーム内に、液体機器を配置することも可能である。例えば、エンジンルーム内に液体機器を配置し、冷却水を吸入・吐出するポンプとして用いることが可能である。さらに、液体機器は、車両以外に、工場内、地上などにも設置可能である。
つぎに、この発明におけるピストン型の液体機器を車両に用いた場合の具体的な構成例を、図2に基づいて説明する。この図2には、車両1のパワートレーンおよび制御系統の一例が、模式的に示されている。図2に示された車両においては、この発明のピストン型の液体機器が、オイルポンプおよびクラッチとして用いられている。この図2に示すパワートレーンは、いわゆるフロントエンジン・フロントドライブ形式のパワートレーン(二輪駆動車)である。前記車両1にはエンジン2が搭載されている。このエンジン2は、車輪に伝達する動力を発生する駆動力源であり、エンジントルクがダンパ機構3を経由してインプットシャフト4に伝達されるように構成されている。前記エンジン2は、車輪11に伝達するトルクを発生する動力装置であり、例えば、内燃機関を用いることができる。また、ダンパ機構3はエンジントルクの変動を吸収もしくは緩和する装置である。前記ダンパ機構3およびインプットシャフト4は、ケーシング(トランスアクスルケース)5内に配置されている。このケーシング5は、前記エンジンの外壁に固定機構、例えば、ボルトおよびナットにより締め付け固定されている。このケーシング5は、動力伝達経路を構成する回転要素、具体的には回転軸、ギヤ、プーリなど、あるいはこれらの回転要素を支持する軸受を収容する収容機構である。前記インプットシャフト4は、前記エンジン2から車輪11に至る動力伝達経路の一部を構成する回転要素である。このインプットシャフト4の回転軸線X1は、前記車両1の左右方向に配置されている。そして、前記インプットシャフト4のトルクが、オイルポンプ6および前後進切換装置7を経由してベルト式無段変速機8に伝達されるとともに、そのベルト式無段変速機8から出力されたトルクが、伝動装置9および終減速機10を経由して車輪11に伝達されるように構成されている。以下、オイルポンプ6の具体例を順次説明する。
(具体例1)
前述したオイルポンプ6の具体例1を、図1および図3に基づいて説明する。この図1はオイルポンプ6の回転軸線X1に沿った方向における断面図であり、図3は回転軸線X1と垂直な平面における断面図である。この回転軸線X1は、前記インプットシャフト4の回転軸線および前記エンジン2のクランクシャフトの回転軸線と共通である。前記オイルポンプ6は、前記インプットシャフト4と、前記ベルト式無段変速機8との間における伝達トルクを制御するクラッチとしての機能を兼備している。また、前記ケーシング5であって、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記エンジン2から最も離れた位置にはリヤカバー12が設けられており、このリヤカバー12には、円柱形状の固定軸13が固定されている。この固定軸13は、前記インプットシャフト4と同軸上に配置されている。この固定軸13は回転不可能に構成されており、この固定軸13には回転軸線X1に沿った方向に吸入油路45および吐出油路48が形成されている。また、この固定軸13の外周には円周方向の全域に亘って溝44,46が形成されている。この溝44,46は、前記回転軸線X1に沿った方向で異なる位置に配置されている。そして、溝44が吸入油路45と接続され、溝46が吐出油路48と接続されている。さらに、前記固定軸13の外周には、環状の溝110,111が形成されている。この溝110,111は、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記溝44,46とは異なる位置に配置されている。また、固定軸13には、溝110,111に別々に接続された油路(図示せず)が形成されている。
一方、前記インプットシャフト4の外側には、環状のコネクティングドラム15が同軸上に配置されている。このコネクティングドラム15は、回転要素同士を接続する接続部材である。また、前記ケーシング5の内部には隔壁16が設けられており、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記リヤカバー12と前記隔壁16とにより取り囲まれた空間に、前記オイルポンプ6が配置されている。そして、前記隔壁16と前記コネクティングドラム15との間には軸受17が介在されており、この軸受17によって前記コネクティングドラム15が回転自在に保持されている。このコネクティングドラム15におけるリヤカバー12側の端部には、前記オイルポンプ6の一部を構成するアウターレース18が接続されている。このアウターレース18は、前記オイルポンプ6の外側部分を構成する回転要素であり、このアウターレース18が、前記コネクティングドラム15と一体回転するように連結されている。また、前記アウターレース18は、円錐部19および円筒部20と、この円錐部19と円筒部20とを連続する外向きのフランジ18Aとを有している。この円錐部19は、前記回転軸線X1に沿った方向で、外径が異なるようなテーパ形状を有しており、前記回転軸線X1を中心として構成されている。具体的には、前記円錐部19における隔壁16に近い端部が最小径に構成され、前記リヤカバー12に近い端部が最大径に構成されている。そして、前記円筒部20は、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記リヤカバー12と前記円錐部19との間に配置され、その円筒部20の端部に前記フランジ部18Aが連続して形成され、そのフランジ部18Aの外周端に前記円錐部19の端部が連続されている。
上記のように構成されたアウターレース18は、前記固定軸13の周囲を取り囲むように配置されている。また、前記円筒部20とリヤカバー12との間には軸受21が介在されて、前記円筒部20が回転自在に保持されている。このように、前記アウターレース18は、軸受17,21により回転可能に支持されているとともに、前記ケーシング5に対しては回転軸線X1に沿った方向には動かないように固定されている。そして、前記円錐部19の内周には、全周に亘ってカム面22が形成されている。このカム面22は、図3に示すように、前記回転軸線X1と垂直な平面内で、前記回転軸線X1を取り囲むように環状に構成されている。また、カム面22は、前記回転軸線X1を中心とする半径方向に変位された凹部23および凸部24を有している。具体的には、前記凹部23および凸部24が複数設けられており、前記アウターレース18の円周方向で、前記凹部23と凸部24とが交互に配置され、かつ、連続されて波形形状のカム面22を形成している。前記凹部23は半径方向で外側に向けて窪んでおり、凸部24は半径方向で内向きに突出している。すなわち、凹部23が複数形成され、かつ、凸部24が複数形成されて、凹部23と凸部24とが円周方向で滑らかに連続するように接続されている。
また、前記カム面22であって凹部23の最も外側に相当する部分と回転軸線X1との距離が、回転軸線X1に沿った方向で異なる値に設定されている。つまり、凹部23の最も外側に相当する部分の谷底23Aが、前記コネクティングドラム15に近づくほど前記距離が短くなるようなテーパを有している。このテーパは、前記回転軸線X1と平行な線分と、前記回転軸線X1に沿った方向の平面内で前記カム面22の形状を示す線分とのなす角度、具体的には鋭角側の「角度γ」で表すことができる。言い換えれば、凹部23の谷底23Aに接する外接円(図示せず)と、凸部24の頂点24Aに接する内接円(図示せず)との半径差が、回転軸線X1に沿った方向で連続的に異なる値となっている。また、凸部24の頂点24Aと回転軸線X1との距離は、回転軸線X1に沿った方向で一定となるように構成されている。このため、回転軸線X1を中心とする円周方向で、前記「角度γ」は、最低角度である零度から、最大角度までの範囲で連続的に変化している。なお、図3の例では、凹部23が6箇所設けられ、かつ、凸部24が6箇所設けられているが、凹部23および凸部24の数は任意に設定可能である。
上記のように構成されたアウターレース18の内部空間にインナーレース25が設けられている。このインナーレース25は、前記オイルポンプ6の内側部分を構成している。このインナーレース25は前記インプットシャフト4と一体回転するように連結されている。このインナーレース25は、前記アウターレース18およびコネクティングドラム15の内部に亘って配置されており、前記インプットシャフト4に対して、前記回転軸線X1に沿った方向に相対移動可能に取り付けられている。このインナーレース25とインプットシャフト4とは、例えばスプライン嵌合により連結されている。そして、前記コネクティングドラム15の内周とインナーレース25との間には軸受28が介在されている。さらに、前記アウターレース20の内周と前記インナーレース25の外周との間には、軸受112が介在されている。これらの軸受28,112により、前記インナーレース25が前記アウターレース18内で回転可能に、かつ、前記アウターレース18に対して回転軸線X1に沿った方向に相対移動可能に支持されている。前記軸受28,112としては、ニードルベアリングを用いることが可能である。さらに、前記インナーレース25の外周には、円周方向に沿って複数のシリンダ34が形成されている。
各シリンダ34は、前記インナーレース25の外周面に開口された略円柱形状の凹部であり、複数のシリンダ34が放射状に配置されている。また、各シリンダ34内にはピストン35が各々配置されており、ピストン35がシリンダ34内で、インナーレース25の半径方向に往復移動自在となる構成を有している。すなわち、オイルポンプ6は、いわゆるラジアルピストンポンプである。また、各ピストン35により転動体36が転動可能に保持されており、転動体36がカム面22に接触する。この転動体36はボール(球体)またはローラを用いることが可能である。転動体としてローラを用いる場合、その転動体の軸線X1方向の回転軸線を中心として回転可能に保持する。なお、ローラの形状は、円柱ではなく、回転軸線X1に沿った方向に沿って半径が連続的に変化するボビン形状のローラを用いる。なお、図1および図3では、転動体36としてボールを用いた場合が示されている。さらに、前記ピストン35は円柱形状を有しており、ピストン35および前記シリンダ34の中心線(図示せず)は共通している。この中心線は、前記回転軸線X1と垂直な平面に沿って設けられており、かつ、その中心線を延長すると前記回転軸線X1と交差する。なお、図3においては、シリンダ34およびピストン35が円周方向に8個設けられているが、その数は任意に設定可能である。
一方、前記シリンダ34の底面37と前記ピストン35の底面38との間には油室39が形成されている。前記底面38は、前記回転軸線X1を中心とする半径方向の中心線(図示せず)に対して、垂直な平面で構成されている。また、油室39内には圧縮コイルばね40が設けられており、この圧縮コイルばね40は、前記回転軸線X1を中心とする半径方向に伸縮可能となる状態で、油室39内に配置されている。そして、前記圧縮コイルばね40のばね荷重により、前記転動体36がカム面23に押し付けられている。また、前記インナーレース25には前記回転軸線X1に沿った方向に凹部25Aが形成されており、この凹部25A内に前記固定軸13の長さ方向の一部が配置されている。前記インナーレース25には、前記油室39と凹部25Aの内周面とを接続する吸入油路113および吐出油路114が形成されている。この吸入油路113と吐出油路114とは、前記回転軸線X1に沿った方向で異なる位置に配置されている。また、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記吸入油路113と溝44とが同じ位置に配置され、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記吐出油路114と溝46とが同じ位置に配置されている。
さらに、前記吸入油路113と溝44とが接続され、前記固定軸13の外周に取り付けられたシールリング115,116により、前記吸入油路113と溝44との接続部分が液密にシールされている。また、前記吐出油路114と溝46とが接続され、前記固定軸13の外周に取り付けられたシールリング116,117により、前記吐出油路114と溝46との接続部分が液密にシールされている。このようにして、前記インナーレース25と前記固定軸13との円周方向における位相に関わりなく、吸入油路113と吸入油路45とが常に接続され、かつ、吐出油路114と吐出油路48とが常に接続されている。また、前記吸入油路113には逆止弁43が設けられている。この逆止弁43は、前記吸入油路45のオイルを油室39に吸入する場合に開放される一方、前記油室39のオイルが吸入油路45に戻ろうとすると閉じられる構成を有している。また、前記吐出油路114には逆止弁47が設けられている。この逆止弁47は、前記油室39のオイルを吐出油路48に吐出する場合に開放される一方、前記吐出油路48のオイルが前記油室39に戻ろうとすると閉じられる構成を有している。
つぎに、前記回転軸線X1に沿った方向において、前記アウターレース18とインナーレース25との相対位置を制御する機構を説明する。前記アウターレース18の円筒部20の内周には、内周面118および内周面119が形成されており、内周面118と内周面119とが環状の端面120により接続されている。前記内周面118の外径は内周面119の外径よりも大きく構成されている。また、前記円筒部20には軸孔121が形成されており、その軸孔121内に前記固定軸13の一部が配置されている。この軸孔121の内径は、前記内周面119の内径よりも小さく構成されている。さらに、前記前記軸孔121の内周面と前記内周面119とが環状の端面122により接続されている。上記端面120,122は、前記回転軸線X1と垂直な平面に沿って形成された段部により構成されている。前記内周面118および前記内周面119および前記軸孔121は、共に前記回転軸線X1を中心として同軸上に配置されている。
一方、前記インナーレース25には外周面123および外周面124が形成されている。この外周面123の外径は、外周面124の外径よりも大きく、かつ、前記内周面118の内径よりも小さく構成されている。また、前記インナーレース25には、前記外周面123と前記外周面124とを接続する受圧面125が形成されている。この受圧面125は、前記回転軸線X1と垂直な平坦面であり、かつ、前記回転軸線X1を中心として環状に構成されている。さらに、外周面123と内周面124とが、前記回転軸線X1に沿った方向で異なる位置に配置されている。さらに、前記回転軸線X1に沿った方向におけるインナーレース25の端部には、前記外周面124と前記凹部25Aの内周面とを接続する受圧面126が形成されている。この受圧面126は、前記回転軸線X1と垂直な平坦面であり、かつ、前記回転軸線X1を中心として環状に構成されている。
一方、外周面124の外径は、内周面119の内径よりも小さく、かつ、前記軸孔121の内径よりも大きく構成されている。そして、前記外周面123が前記内周面118の内側に配置され、前記外周面124が前記内周面119の内側に配置されている。このようにして、前記内周面118と外周面124と端面120と受圧面125とにより取り囲まれた油圧室127が形成されている。この油圧室127は前記回転軸線X1を中心とする環状の空間である。そして、前記内周面118と外周面123との間にシールリング128が設けられ、前記内周面119と外周面124との間にシールリング129が設けられている。このシールリング128,129により、前記油圧室127が液密にシールされている。また、前記内周面119と固定軸13の外周面と端面122と受圧面126とにより取り囲まれた油圧室130が形成されている。この油圧室130は前記回転軸線X1を中心とする環状の空間である。そして、前記軸孔121の内周面と固定軸13の外周面との間にシールリング131が設けられ、前記固定軸13の外周面と凹部25Aの内周面との間にシールリング117が設けられている。このシールリング131,117、およびシールリング129により、前記油圧室131が液密にシールされている。
また、前記円筒部20には油路132が形成されており、この油路132が前記油圧室127に接続されている。また、油路132は前記軸孔121の内周面に開口されており、油路132は前記溝110に接続されている。そして、前記固定軸13の外周面にはシールリング133,134が取り付けられており、前記油路132と前記溝110との接続部分が、シールリング133,134により液密にシールされている。さらに、前記円筒部20には油路135が形成されており、この油路135が前記油圧室130に接続されている。さらに、油路135は前記軸孔121の内周面に開口されており、油路135は前記溝111に接続されている。そして、前記固定軸13の外周面に取り付けられたシールリング131,134により、前記油路135と前記溝111との接続部分が液密にシールされている。
この具体例では、前記油圧室127の油圧が前記受圧面125に作用して、前記インナーレース25を、図1で前記回転軸線X1に沿った方向で右側に向けて押圧する荷重が生じるように構成されている。また、前記油圧室130の油圧が前記受圧面126に作用して、前記インナーレース25を、図1で前記回転軸線X1に沿った方向で右側に向けて押圧する荷重F3が生じるように構成されている。そして、前記受圧面126の面積A2は、次のような技術的意義に基づいて決定されている。まず、前記油室39の油圧および前記圧縮コイルばね40のばね荷重が前記ピストン35の底面38に加えられるため、前記底面38の面積(受圧面積))をA1とした場合、前記転動体36を前記カム面22に押し付ける半径方向の荷重F1は、
F1=PL×A1+Fs
で求められる。
ここで、「PL」は、前記油室39の油圧であり、「Fs」は圧縮コイルばね40からピストン35に加えられるばね荷重である。このように、前記転動体36が前記カム面22に押し付けられた場合、1個の転動体36とカム面22との接触点では、前記荷重F1に起因して、前記回転軸線X1に沿った方向の荷重(反力)F2が生じる。この荷重F2は、
F2=F1×tanγ ・・・(1)
で表される。前記インナーレース25とアウターレース17とが相対回転している場合、それぞれのピストン35において、前記荷重F2は一定ではなく変動しているが、吐出行程にあるピストン35における前記荷重F2は、吸入行程にあるピストン35における前記荷重F2よりも大きく、また、油室39の油圧によって生じる荷重は、圧縮コイルばね40により生じる荷重よりも大きい。さらに、ピストン35の全数であるN個のうち、半数個のピストン35が吐出行程にあると仮定すると、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿って図1で左側に向けて押圧する全荷重Σ1は、
Σ1≒PL×A1×(tan(γ0/2))×(N/2) ・・・(2)
と近似することが可能である。ここで、「PL」は前記オイルポンプ6からの吐出圧であり、「γ0」は角度γの最大値、すなわち、前記谷底23Aにおける角度γである。なお、上記の「吐出行程」および「吸入行程」については後述する。
そして、この具体例では、前記インナーレース25を前記回転軸線X1に沿って、図1で左方向に押圧する全荷重Σ1と、前記油圧室130の油圧PLが受圧面126に加わることにより、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で右方向に押圧する荷重F3とを、略一致させることにより、「前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った所定位置で停止させる。」という技術的意義の下に、前記受圧面126の面積A2が決定されている。つまり、前記荷重F3は、
F3=PL×A2
で求められる。ここで、A2は、前記受圧面126の面積である。そして、「前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った所定位置で停止させる。」という技術的意義を満足させるためには、次式、
PL×A2=PL×A1×(tan(γ0/2))×(N/2) ・・・(3)
を満足すればよい。そして、この式3を解いて、
A2=A1×(tan(γ0/2))×(N/2) ・・・(4)
となるように、前記受圧面126の面積A2が決定されている。
つぎに、前記ケーシング5の内部に設けられた前後進切換装置7の構成について説明する。前後進切換装置7は、前記回転軸線X1に沿った方向において、前記エンジン2と前記オイルポンプ6との間に配置されている。前後進切換装置7は、前記コネクティングドラム15の回転方向に対して、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト49の回転方向を正逆に切り換えるための装置であり、この実施例では、前後進切換装置7が遊星歯車機構、具体的には、シングルピニオン型の遊星歯車機構を有している。この遊星歯車機構は、サンギヤ50と、サンギヤ50と同軸上に配置されたリングギヤ51と、前記サンギヤ50およびリングギヤ51に噛合されたピニオンギヤ52を自転、かつ公転可能に保持するキャリヤ53とを有している。そして、前記サンギヤ50が、前記プライマリシャフト49に動力伝達可能に連結されており、前記リングギヤ51が前記コネクティングドラム15と動力伝達可能に連結されている。さらに、前後進切換装置7を構成する回転要素同士の連結・解放を制御する前進用クラッチC1が設けられているとともに、回転要素の回転・停止を制御する後進用ブレーキBRが設けられている。前進用クラッチC1により、サンギヤ50とリングギヤ51との連結・解放が制御され、後進用ブレーキBRにより、キャリヤ53の回転・停止が制御されるように構成されている。
ここで、前進用クラッチC1としては、摩擦クラッチまたは電磁クラッチまたは噛み合いクラッチのいずれを用いてもよいし、後進用ブレーキBRとしては、摩擦ブレーキまたは電磁ブレーキまたは噛み合いブレーキのいずれを用いてもよい。この実施例では、摩擦クラッチまたは噛み合いクラッチを用い、摩擦ブレーキまたは噛み合いブレーキを用いる場合は、油圧制御式のアクチュエータを用いることが可能である。これに対して、電磁クラッチおよび電磁ブレーキを用いる場合は、電磁制御式のアクチュエータを用いることとなる。この実施例では、摩擦クラッチおよび摩擦ブレーキが用いられ、かつ、油圧制御式アクチュエータが用いられている場合について説明する。すなわち、油圧アクチュエータは油圧室(図示せず)およびピストン(図示せず)などを有しており、油圧室の油圧に基づいて、前進用クラッチC1のトルク容量、後進用ブレーキBRのトルク容量が制御されるように構成されている。
つぎに、前述のベルト式無段変速機8について説明すると、前記回転軸線X1に沿った方向において、前後進切換装置7とダンパ機構3との間にベルト式無段変速機8が設けられている。このベルト式無段変速機8は、前述したプライマリシャフト49およびセカンダリシャフト54を有している。このプライマリシャフト49は、前記インプットシャフト4と同軸上に配置され、かつ、前記インプットシャフト4の外側を取り囲むように配置されている。そして、前記インプットシャフト4とプライマリシャフト49とが相対回転可能に構成されている。また、前記ケーシング5内には、前記インプットシャフト4の回転軸線X1に沿った方向で、ベルト式無段変速機8の両側に隔壁55,56が設けられており、プライマリシャフト49と隔壁55,56との間に軸受57が介在されている。このようにして、前記プライマリシャフト49およびセカンダリシャフト54は相互に平行に配置されており、プライマリシャフト49と一体回転するプライマリプーリ58が設けられ、セカンダリシャフト54と一体回転するセカンダリプーリ59が設けられている。
また、プライマリプーリ58およびセカンダリプーリ59には無端状のベルト60が巻き掛けられている。さらに、プライマリプーリ58からベルト60に加えられる挟圧力を制御する油圧サーボ機構61と、セカンダリプーリ59からベルト60に加えられる挟圧力を制御する油圧サーボ機構62とが設けられている。この油圧サーボ機構61,62の油圧室(図示せず)に供給される圧油の流量および油圧が、後述する油圧制御装置により制御される構成となっている。さらに、前記ケーシング5の内部には、セカンダリシャフト54のトルクが伝達される伝動装置9および終減速機101が設けられており、この終減速機101の出力側にはドライブシャフト63を介在させて車輪(前輪)11が連結されている。なお、伝動装置9としては、歯車伝動装置、巻き掛け伝動装置などを用いることが可能である。
つぎに、車両1の制御系統を説明すれば、車両1の全体を制御するコントローラとしての電子制御装置64が設けられている。この電子制御装置64には、加速要求(例えば、アクセルペダルの操作状態)を検知するセンサ、制動要求(例えば、ブレーキペダルの操作状態)を検知するセンサ、エンジン回転数を検知するセンサ、スロットル開度を検知するセンサ、インプットシャフト49の回転数を検知するセンサ、プライマリシャフト49の回転数を検知するセンサ、セカンダリシャフト54の回転数を検知するセンサ、シフトポジションを検知するセンサ、アウターレース18の回転数を検知するセンサなどの信号が入力される。これに対して、電子制御装置64からは、エンジン2を制御する信号、油圧制御装置65を制御する信号などが出力される。
この油圧制御装置65は、前記オイルポンプ6におけるオイルの吸入量および吐出量、前記オイルポンプ6における伝達トルク、前進用クラッチC1および後進用ブレーキBRの油圧室の油圧、油圧サーボ機構61,62の油圧室の油圧、油圧室127,130の油圧などを制御するとともに、潤滑系統(図示せず)に供給される潤滑油量を制御するものであり、各油圧室の油圧を制御する切替弁およびソレノイドバルブ(図示せず)などを有する公知のものである。前記潤滑系統には、前後進切換装置7を構成する各ギヤ同士の噛み合い部分、ベルト式無段変速機8のプーリとベルト60との接触部分、各種の軸受17,21,28,57,112の摺動部分が含まれる。
また、前記ケーシング5の内部、またはケーシング5の下部あるいは外部にはオイルパン67が設けられている。このオイルパン67には吸入油路136が接続されており、この吸入油路136が前記吸入油路45に接続されている。これに対して、前記吐出油路48には吐出油路137が接続されており、その吐出油路137は2方向に分岐されている。この吐出油路137に吐出された圧油の一部は、前記ベルト式無段変速機8の油圧サーボ機構61,62の油圧室、前記潤滑系統、前進用クラッチC1および後進用ブレーキBRの油圧室などのオイル必要部に供給される。また、前記吐出油路137および吸入油路136が接続された切替弁138が設けられている。この切替弁138は、一定方向に動作するスプール(図示せず)およびこのスプールの動作を制御するソレノイド(図示せず)などを有する公知のもの(ソレノイドバルブ)である。具体的には、切替弁138は、ポート139,140,141,142を有しており、ポート139が前記吸入油路136に接続され、ポート140が前記吐出油路137に接続されている。一方、前記固定軸13の溝110が、油路(図示せず)を介して油路143に接続され、この油路143がポート142に接続されている。また、前記固定軸13の溝111が、油路(図示せず)を介して油路144に接続され、この油路144がポート141に接続されている。このように構成された切替弁138は、前記ポート139に対して、前記ポート141,142を選択的に接続・遮断する制御をおこなうとともに、前記ポート140に対して、前記ポート141,142を選択的に接続・遮断する制御をおこなう。
上記のように構成された車両1において、前記エンジン2が運転されて、そのエンジントルクがダンパ機構3を経由して前記インプットシャフト4に伝達される。このインプットシャフト4のトルクが、前記オイルポンプ6のインナーレース25に伝達される。このようにして、前記インナーレース25にトルクが伝達された場合のオイルポンプ6の作用を説明する。前記圧縮コイルばね40のばね荷重により、前記ピストン35が半径方向で外側に向けて押圧され、前記転動体36がカム面22に接触する。また、前記転動体36と前記カム面22との接触点では反力が生じ、その反力に基づいて、前記ピストン36を前記シリンダ34内に押し戻す向きの荷重(内側向きの荷重)が生じる。そして、前記インナーレース25にトルクが伝達されて、前記インナーレース25とアウターレース18とが相対回転すると、前記回転軸線X1と垂直な平面内において、前記カム面22の形状に沿って転動体36が転動し、前記ピストン35がシリンダ34内で前記半径方向に往復動する。具体的には、前記転動体36が前記凸部24を登坂する場合に、前記ピストン35が半径方向で内側に向けて動作し、前記転動体36が前記凸部24を降坂する場合に、前記ピストン35が半径方向で外側に向けて動作する。
前記ピストン35が前記シリンダ34内で半径方向で外側に向けて動作する行程(上昇行程)の作用を、具体的に説明する。前記ピストン35が前記半径方向で外側に向けて動作すると、前記油室39の容積が拡大し、その油室39が負圧となる。すると、前記逆止弁113が開放されるとともに、前記オイルパン67に貯溜されているオイルが、前記吸入油路136,45,113を経由して、前記油室39に吸入される。このように、前記油室39にオイルが吸入される行程が、吸入行程である。なお、前記のように油室39が負圧になると、前記逆止弁47が閉じられるため、前記吐出油路48のオイルが前記油室39に戻ることはない。つぎに、前記ピストン35が前記シリンダ34内で半径方向で内側に向けて動作する行程(下降行程)の作用を説明する。前記ピストン35が前記半径方向で内側に向けて動作すると、前記油室39の容積が縮小され、その油室39の油圧が上昇する。すると、前記逆止弁47が開放されるとともに、前記油室39のオイルが、前記吐出油路114,48を経由して、前記吐出油路137に吐出される。このように、前記油室39のオイルが吐出される行程が吐出行程である。なお、前記のように油室39の油圧が上昇する場合は、前記逆止弁43が閉じられる。そして、前記インナーレース25とアウターレース18との相対回転により、各油室39におけるオイルの吸入・吐出が交互に繰り返され、吐出油路137に吐出されたオイルが、前記オイル必要部に供給される。
上記のようにして、前記転動体36が前記凸部24を乗り越える場合の係合力に基づいて、前記インナーレース25とアウターレース18との間で動力伝達がおこなわれる。つまり、前記オイルポンプ6は動力伝達装置としての機能を兼備している。また、図1のオイルポンプ6においては、前記インナーレース25と前記アウターレース18とを、前記回転軸線X1に沿った方向に相対移動させることが可能である。具体的には、前記アウターレース18は、前記ケーシング5に対して回転軸線X1に沿った方向には動かないように固定されており、前記インナーレース25がアウターレース18に対して回転軸線X1に沿った方向に動作可能である。この具体例では、前記油圧室127,130の油圧を制御することにより、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25の位置が変更または固定される。そして、前記油圧室127,130の油圧は、前記切替弁138の機能により制御される。
まず、前記回転軸線X1に沿った方向における前記インナーレース25の位置を、略固定する場合について説明する。この場合は、前記ポート139とポート142とを接続し、かつ、前記ポート140とポート141とを接続するように、前記切替弁138を制御する。すると、吐出行程にあるピストン35に相当する油室39が、前記吐出油路114,48,137、および油路144,135を介して、前記油圧室130に接続される。つまり、前記油圧室130の油圧は、前記油室39におけるオイルの吐出油圧と等しくなる。また、前記油圧室127は、前記油路143を経由して前記吸入油路136に接続されるため、油圧室127のオイルは前記吸入油路136に排出される。
つぎに、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25の位置が略固定される原理を具体的に説明する。前述のように、前記ピストン35が下降行程にある場合、その油室39ではオイルの吐出行程にある。この下降行程にあるピストン35では、前記油室39の油圧により前記転動体36が前記カム面22に前述の荷重F1で押し付けられて、前述の荷重F2が発生する。そして、前記のように、複数個のピストン35のうち、吐出行程にあるピストン35および転動体36により、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25には全荷重Σ1が加えられる。これに対して、吐出行程にあるピストン35の油室39の吐出油圧が前記油圧室130に伝達されて、その油圧室130の油圧が前記受圧面126に作用し、前記インナーレース25を図1で右方向の押圧する荷重F3が生じる。
この荷重F3は前述のように、
PL×A2
で表される。これに対して、前記油圧室127のオイルは前記吸入油路136に排出されるため、その油圧室127の油圧により、前記インナーレース25を図で右方向に押圧する荷重F4は最低圧となる。
そして、図1において、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25に加えられる右向きの全荷重Σ2は、前記荷重F3と荷重F4とを加えた全荷重Σ2で求められる。ここでは、荷重F4が最低圧となるため、全荷重Σ2は荷重F3と等しくなり、その全荷重Σ2と全荷重Σ1とが略均等になる。より具体的には、前記インナーレース25とアウターレース18との相対回転により、「角度γ」は変動するが、前記角度γの平均値を用いて荷重F2を求めているため、厳密には、全荷重Σ2を含む一定の振幅で、荷重Σ1が高低に変化することとなる。したがって、前記インナーレース25とアウターレース18との間でトルクが伝達されている間、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向に移動することを抑制できる。したがって、前記カム面22と転動体36との接触位置が、前記回転軸線X1に沿った方向に移動することを抑制できる。また、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向で移動することを抑制する油圧室130の油圧は、前記油室39の油圧が供給されたものであり、受圧面126の面積と、油圧室130の油圧により、前記荷重F3を自動的に制御可能である。このため、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向に移動することを防止するために、油圧室130の油圧を特別に制御せずに済む。
つぎに、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で右側に向けて動作させる場合は、前記切替弁138が制御されて、前記ポート140が、前記ポート141,142の両方に接続され、かつ、前記ポート139が遮断される。すると、前記油室39が、前記吐出油路48,137および前記油路144を介して、前記油圧室130に接続されるとともに、前記油室39が、前記137および油路143を介して油圧室127にも接続される。このようにして、前記油室39におけるオイルの吐出圧が、前記油圧室127,130の両方に伝達される。すると、前記油圧室130の油圧に応じた回転軸線X1に沿った方向で右側向きの荷重F3に加えて、前記油圧室127の油圧が前記受圧面125に作用し、その油圧室127の油圧により、前記インナーレース25を前記回転軸線X1に沿った方向で右側に向けて押圧する荷重F4が生じる。すると、前記インナーレース25を図1で左側に向けて押圧する全荷重Σ1よりも、右側に向けて押圧する全荷重Σ2の方が大きくなり、前記インナーレース25が図1で右側に向けて動作する。
これに対して、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で左側に向けて動作させる場合は、前記切替弁138が制御されて、前記ポート139が、前記ポート141,142の両方に接続され、かつ、前記ポート140が遮断される。すると、前記油室39のオイルは、前記油圧室127,130のいずれにも供給されなくなり、かつ、前記油圧室127,130が共に前記吸入油路136に接続される。このようにして、前記油圧室127,130のオイルが吸入油路136に排出され、油圧室127,130の油圧が低下する。すると、前記インナーレース25を図1で左側に向けて押圧する全荷重Σ1の方が、前記インナーレース25を図1で右側に向けて押圧する全荷重Σ2よりも大きくなり、そのインナーレース25が図1で左側に向けて動作する。このようにして、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向に動作させることができる。
そして、前記カム面22にはテーパが付与されているため、前記回転軸線X1に沿った方向でインナーレース25が左側に移動するほど、前記半径方向で、前記ピストン35の動作量が長くなり、前記油室39から吐出されるオイル量が増加する。これに対して、前記回転軸線X1に沿った方向でインナーレース25が右側に移動するほど、前記半径方向で、前記ピストン35の動作量が短くなり、前記油室39から吐出されるオイル量が減少する。なお、前記回転軸線X1に沿った方向の所定位置でインナーレース25を停止させると、前記半径方向で、前記ピストン35の動作量が一定となり、前記油室39から吐出されるオイル量が一定になる。このように、前記ピストン35の動作量を変更すると、前記半径方向で、そのピストン35の上死点の位置は変化するが、下死点の位置は同じである。以上のように、前記オイルポンプ6はその吐出容量を変更可能なオイルポンプ、つまり、可変容量型のオイルポンプである。
また、前記回転軸線X1に沿った方向でインナーレース25が左側に移動するほど、前記転動体36が乗り越える凸部24が高くなるため、前記転動体36とカム面22との係合力が高くなる。したがって、前記インナーレース25とアウターレース18との間で伝達されるトルクの容量が高まり、前記インナーレース25とアウターレース18との間における回転数差が小さくなる。これに対して、前記回転軸線X1に沿った方向でインナーレース25が右側に移動するほど、前記転動体36が乗り越える凸部24が低くなるため、前記転動体36とカム面22との係合力が低くなる。したがって、前記インナーレース25とアウターレース18との間で伝達されるトルクの容量が低下し、前記インナーレース25とアウターレース18との間における回転数差が大きくなる。なお、前記回転軸線X1に沿った方向でインナーレース25の移動を停止させると、前記転動体36が乗り越える凸部24が一定になるため、前記転動体36とカム面22との係合力が一定に維持される。したがって、前記インナーレース25とアウターレース18との間で伝達されるトルクの容量が一定になり、前記インナーレース25とアウターレース18との間における回転数差が一定になる。
つぎに、前後進切換装置7の制御について説明する。まず、シフトポジションとしてドライブポジション(前進ポジション)が選択された場合は、前進用クラッチC1が係合され、かつ、後進用ブレーキBRが解放される。すると、前後進切換装置7を構成する遊星歯車機構の3つの回転要素が一体回転する。これに対して、シフトポジションとしてリバースポジション(後進ポジション)が選択された場合は、後進用ブレーキBRが係合され、かつ、前進用クラッチC1が解放される。すると、リングギヤ51が入力要素となり、かつ、停止しているキャリヤ53が反力要素となって、サンギヤ50がリングギヤ51とは逆方向に回転する。このようにして、前記コネクティングドラム15のトルクが、ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト49に伝達される。なお、ニュートラルポジションまたはパーキングポジションが選択された場合は、後進用ブレーキBRが解放され、かつ、前進用クラッチC1が解放される。
以上のようにして、前記ベルト式無段変速機8のプライマリシャフト49にトルクが伝達されると、このプライマリシャフト49のトルクがベルト60を経由してセカンダリシャフト54に伝達される。このベルト式無段変速機8においては、油圧サーボ機構61,62における圧油の供給状態が油圧制御装置65により制御される。例えば、油圧サーボ機構61に供給される圧油の流量が制御されて、プライマリプーリ58におけるベルト80の巻き掛け半径、およびセカンダリプーリ59におけるベルト60の巻き掛け半径が制御され、ベルト式無段変速機8の変速比、つまり、プライマリシャフト49の回転速度と、セカンダリシャフト54の回転速度との比を無段階(連続的)に制御することができる。また、この変速制御に加えて、セカンダリプーリ59からベルト60に加える挟圧力が調整されて、ベルト式無段変速機8のトルク容量が制御される。
このような変速制御と並行して、車速および加速要求(例えばアクセル開度)などに基づいて、車両1における必要駆動力が判断され、その判断結果に基づいて目標エンジン出力が求められる。その目標エンジン出力を最適燃費で達成する目標エンジン回転数が求められ、その目標エンジン回転数に応じて目標エンジントルクが求められる。そして、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、ベルト式無段変速機8の変速比が制御される。また、ベルト式無段変速機8の変速比の制御と並行して、電子スロットルバルブの制御などにより、実エンジントルクが目標エンジントルクに近づけられる。なお、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づける場合、ベルト式無段変速機8の変速比の制御に加えて、インナーレース25とアウターレース18との相対回転数差の制御も実行される。以上のようにして、エンジントルクがインプットシャフト4および前後進切換装置7を経由して、ベルト式無段変速機8のセカンダリシャフト54に伝達される。このセカンダリシャフト54のトルクは、伝動装置9および終減速機10を経由して車輪11に伝達される。
上記の具体例1は、請求項1の発明に対応しており、具体例1に基づいて説明された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、オイルポンプ6が、この発明における「ピストン型の液体機器」に相当し、回転軸線X1が、この発明の回転軸線に相当し、アウターレース18が、この発明の第1の部材に相当し、インナーレース25が、この発明の第2の部材に相当し、カム面22が、この発明におけるカムに相当し、ピストン35および転動体36が、この発明におけるピストンに相当し、油室39が、この発明における液体室に相当し、前記オイルが、この発明における液体に相当し、全荷重Σ1が、この発明における第1の荷重に相当し、荷重F3が、この発明における第2の荷重に相当し、受圧面126が、この発明における第1受圧面に相当し、前記油圧室130が、この発明における第1調整室に相当し、前記吐出油路48,114,137、油路135,144、溝111、切替弁138のポート140,141が、この発明における通路に相当し、前記切替弁138、油圧室127,130、受圧面125,126、吐出油路137,48,114、油路135,144などの構成が、この発明における制御装置に相当する。つまり、具体例1で説明した制御装置は、液圧式のアクチュエータであり、その構成の一部が、前記第1調整室と共用化されている。また、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン2が、この発明の動力源に相当し、ベルト式無段変速機8が、この発明の無段変速機に相当する。
(具体例2)
つぎに、オイルポンプ6の他の具体例2を、図4に基づいて説明する。図4において、図1および図2および図3と同様の構成部分については、図1および図2および図3と同じ符号を付してある。この具体例3では、前記インナーレース25を、図4で右方向に押圧する荷重を発生させるための油圧室127,130の他に、更に別の油圧室が設けられている。前記円筒部20には内周面145が形成されている。この内周面145は回転軸線X1に沿った方向で、前記内周面118よりも前記円錐部19に近い位置に配置されている。また、内周面145の内径は、前記内周面118の内径よりも大きく構成されている。さらに、内周面118と内周面145とが端面146により接続されている。この端面146は、前記回転軸線X1を中心として環状に形成されている。一方、インナーレース25には外周面147が形成されている。前記回転軸線X1に沿った方向で、前記外周面147は外周面123よりも前記シリンダ34に近い位置に配置されている。そして、外周面147は外周面123よりも大径に構成され、外周面123と外周面147とが受圧面148により連続されている。この受圧面148は、前記回転軸線X1と垂直な平坦面であり、かつ、回転軸線X1を中心として環状に構成されている。また、前記外周面147の外径は、前記内周面145の内径よりも小さく構成されており、回転軸線X1に沿った方向で、前記外周面147の配置領域の一部と、前記内周面145の配置領域の一部とが重なっている。
このようにして、前記インナーレース25とアウターレース18との間に、前記内周面145と外周面123と端面146と受圧面148とにより取り囲まれた環状の油圧室149が形成されている。また、油圧室149が、シールリング128,150により液密にシールされている。この油圧室149の油圧が前記受圧面148に作用して、前記インナーレース25を前記回転軸線X1に沿って図4で右側に向けて押圧する荷重F5が発生する。さらに、内周面145と外周面147との間には軸受112が設けられており、この軸受112により前記インナーレース25が回転可能に支持されている。さらに、前記アウターレース18には前記油圧室149に接続された油路151が形成されている。また、前記軸孔121の内周面には、前記油路151の一端が開口されている。一方、前記固定軸13の外周面には溝152が形成されており、前記油路151と前記溝152とが接続されている。さらに、前記固定軸13の外周にはシールリング153が取り付けられており、前記シールリング133とシールリング153とにより、前記油路151と前記溝152との接続部分が液密にシールされている。さらに、この溝152は、前記固定軸13に形成された油路(図示せず)を介して、前記油路143に接続されている。また、前記油路132が前記油路144に接続されている。さらに、前記油路135が前記吐出油路137に常時接続されている。
この具体例2では、前記切替弁138の制御により、前記ポート140とポート141とを接続し、かつ、ポート139とポート142とを接続すると、前記油室39から吐出される圧油が、前記油圧室127,130に供給され、かつ、前記油圧室149のオイルが前記吸入油路136に排出される。その結果、前記受圧面125の油圧が作用し、かつ、受圧面126に油圧が作用することにより、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で右側に押圧する荷重F3,F4が生じる。なお、前記受圧面148に作用する油圧は最低圧であり、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で右側に押圧する荷重は生じない。そして、この具体例2においても、前記インナーレース2が回転軸線X1に沿った方向に移動することを抑制するできるように、具体例1と同様の原理により、
PL×(A2+A3)=PL×A1×(tan(γ0/2))×(N/2)
が成立するように、前記受圧面125,126の面積が構成されている。具体的には、
A2+A3=A1×(tan(γ0/2))×(N/2)
となるように、前記受圧面125の面積A2および受圧面126の面積A3が決定されている。
つぎに、この具体例2における作用を説明する。まず、前記回転軸線X1に沿った方向における前記インナーレース25の位置を、略固定する場合について説明する。この場合は、前記ポート139とポート142とを接続し、かつ、前記ポート140とポート141とを接続するように、前記切替弁138を制御する。すると、吐出行程にあるピストン35に相当する油室39のオイルが、前記吐出油路114,48,137、および油路135を介して、前記油圧室130に供給される。また、前記吐出油路137のオイルは、前記油路144を経由して油圧室125にも供給される。つまり、前記油圧室125,130の油圧は、共に前記油室39の吐出油圧と等しくなる。なお、前記油圧室149は、前記油路143を経由して前記吸入油路136に接続されるため、油圧室149のオイルは前記吸入油路136に排出される。
前記のように、複数個のピストン35のうち、吐出行程にあるピストン35および転動体36により、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25には全荷重Σ1が加えられる。これに対して、前記油圧室130の油圧が前記受圧面126に作用し、前記インナーレース25を図4で右方向に押圧する荷重F3が生じるとともに、前記油圧室127の油圧が前記受圧面125に作用し、前記インナーレース25を図4で右方向に押圧する荷重F4が生じる。ここで、前記荷重F3は前述のように、
PL×A2
で求められ、同様にして、荷重F4は、
PL×A3
で求められる。一方、前記油圧室149のオイルは前記吸入油路136に排出されるため、その油圧室149の油圧により、前記インナーレース25を図4で右方向に押圧する荷重F5は最低となる。
このため、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25に加えられる右向きの全荷重Σ2は、前記荷重F3と荷重F4との合計になり、その全荷重Σ2と全荷重Σ1とが釣り合う。したがって、この具体例2においても、具体例1と同様の効果を得られる。また、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向で移動することを抑制する油圧室127,130の油圧は、前記油室39の油圧と同じであり、受圧面125,126の面積と、油圧室127,130の油圧により、全荷重Σ2を自動的に制御可能である。このため、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向に移動することを防止するために、前記油圧室127,130の油圧を制御する機構を特別に設けずに済む。
つぎに、図4において、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で右側に向けて動作させる場合は、前記切替弁138が制御されて、前記ポート140が、前記ポート141,142の両方に接続され、かつ、前記ポート139が遮断される。すると、前記油室39から吐出されたオイルが、前記油圧室127,130に供給されるとともに、前記吐出油路137のオイルの一部が、前記油路143を経由して前記油圧室149にも供給される。すると、前記油圧室149の油圧が前記受圧面148に作用し、前記インナーレース25を前記回転軸線X1に沿った方向で右側に向けて押圧する荷重F5が生じる。つまり、全荷重Σ2は、荷重F3および荷重F4および荷重F5の和に相当する値となり、前記インナーレース25を図1で左側に向けて押圧する全荷重Σ1よりも、右側に向けて押圧する全荷重Σ2の方が大きくなり、前記インナーレース25が図1で右側に向けて動作する。
これに対して、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で左側に向けて動作させる場合は、前記切替弁138が制御されて、前記ポート139が、前記ポート141,142の両方に接続され、かつ、前記ポート140が遮断される。すると、前記油室39のオイルは前記油圧室130に供給され、前記油圧室127,149のオイルが、共に吸入油路136に排出される。すると、前記荷重F4,F5は共に最低圧となり、全荷重Σ2は前記荷重F3に相当する値となる。このため、前記インナーレース25を図4で左側に向けて押圧する全荷重Σ1の方が、前記インナーレース25を図4で右側に向けて押圧する全荷重Σ2よりも大きくなり、そのインナーレース25が図4で左側に向けて動作する。このようにして、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向に動作させることができる。なお、この具体例2においては、前記インナーレース25が図1で左側に向けて動作する場合でも、前記荷重F3が最低圧ではないため、前記インナーレース25が急激に図1で左側に向けて動作することを抑制できる。このように、具体例2のオイルポンプ8においても、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25の位置を制御することが可能であり、具体例1のオイルポンプ8と同様の効果を得られる。また、具体例2において、具体例1と同様の構成部分については、具体例1と同様の作用効果を得られる。この具体例2は請求項1の発明に相当するものであり、具体例2においては、前記油圧室149、油路151、溝152も、この発明の制御装置に相当する。また、油圧室127,130が、この発明における第1調整室に相当する。具体例2におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、具体例1の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
(具体例3)
つぎに、前記オイルポンプ8の具体例3を、図5に基づいて説明する。この図5において、図1ないし図3と同じ構成部分については、図1ないし図3と同じ符号を付してある。この具体例3と具体例1とを比べると、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25を図5で右方向に押圧する荷重を発生させるために、前記油圧室127,130が設けられている点は同じである。これに対して、具体例3では、前記インナーレース25を図5で左方向に押圧する荷重を発生する油圧室が設けられている点が、具体例1の構成とは異なる。すなわち、前記インナーレース25の外周面とコネクティングドラム15の内周面との間に、油圧室154が形成されている。また、前記インナーレース25には、油圧室154の油圧が作用して、このインナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で左側に向けて押圧する荷重F6を生じる受圧面155が形成されている。この受圧面155は、前記回転軸線X1と垂直な平面であり、かつ、受圧面155は前記回転軸線X1を中心として環状に構成されている。そして、前記インナーレース25の外周面とコネクティングドラム15の内周面との間には、シールリング156,157が取り付けられており、前記油圧室154を液密にシールしている。
さらに、前記隔壁16には前記油路143に接続された油路160が設けられており、前記コネクティングドラム15の外周面には環状の溝158が設けられている。このコネクティングドラム15には、溝158と前記油圧室154とを接続する油路159が設けられている。そして、前記油路160と前記溝158とが接続されており、前記隔壁16の内周面と前記コネクティングドラム15の外周面との間に、シールリング161,162が設けられている。このシールリング161,162により、前記油路160と前記溝158との接続部分が液密にシールされている。このようにして、前記インナーレース25とコネクティングドラム15との円周方向における相対位置関係、およびコネクティングドラム15と隔壁16との円周方向における相対位置関係に関わりなく、前記油圧室154と油路143とが常時接続されている。また、前記切替弁138のポート141は、油路144を介して油圧室127に接続されているとともに、前記油圧室130に接続された油路135は、前記切替弁138の制御に関わりなく、前記吐出油路137に常時接続されている。さらに、この具体例3では、前記切替弁138を制御するモードとして、前記ポート140を遮断し、かつ、前記ポート139を前記ポート141,142に接続するモード1と、前記ポート140を前記ポート141に接続し、かつ、前記ポート139を前記ポート142に接続するモード2と、前記ポート140を前記ポート142に接続し、かつ、前記ポート139を前記ポート141に接続するモード3とを選択的に切り替え可能である。さらに、この具体例3においても、前記油圧室154のオイルが排出され、かつ、前記ピストン35が吐出行程にある場合に、前記の式4を満足するように、前記受圧面126の面積A2が決定されている。
この具体例3におけるオイルポンプ8の作用を説明する。まず、具体例1と同様に、前記回転軸線X1に沿った方向に前記インナーレース25が移動することを抑制する場合は、前記切替弁138を制御するモードとして、モード1が選択される。すると、前記油室39から吐出されたオイルが、前記油圧室130に供給されて、前記インナーレース25を図5で右方向に押圧する荷重F3が発生する。一方、前記油圧室127のオイルおよび油圧室154のオイルは、共に前記吸入油路136に排出される。このため、前記荷重F3が前記インナーレース25を右方向に押圧する全荷重Σ2となる。また、前記インナーレース25を図5で左方向に押圧する向きの全荷重Σ1は、前記式2で示された値となる。そして、この具体例3では、前記の式4を満足するように、前記受圧面126の面積A2が決定されているため、全荷重Σ1と全荷重Σ2とが釣り合い、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿って移動することを抑制できる。
これに対して、前記回転軸線X1に沿って図5で右方向に前記インナーレース25を移動させる場合は、前記切替弁138を制御するモードとして、モード2が選択される。すると、前記油室39から吐出されたオイルが、前記油圧室130および前記油圧室127に供給され、前記インナーレース25を図5で右方向に押圧する荷重F3,F4が発生する。一方、前記油圧室154のオイルは前記吸入油路136に排出される。このため、前記荷重F3,F4の合計が、前記全荷重Σ2となる。また、前記全荷重Σ1は、前記式2で示された値となる。そのため、全荷重Σ1よりも全荷重Σ2の方が大きくなり、前記インナーレース25が、前記回転軸線X1に沿って図5で右方向に移動する。
さらに、前記回転軸線X1に沿って図5で左方向に前記インナーレース25を移動させる場合は、前記切替弁138を制御するモードとして、モード3が選択される。すると、前記油室39から吐出されたオイルが、前記油圧室154に供給される。このため、前記インナーレース25を図5で左方向に押圧する全荷重Σ1は、前記式2で示された荷重と、前記油圧室154の油圧により生じる荷重F6との合計となる。一方、前記油圧室127のオイルは、前記吸入油路136に排出され、前記全荷重Σ2は、前記荷重F3となる。このため、全荷重Σ2よりも全荷重Σ1の方が大きくなり、前記インナーレース25が、前記回転軸線X1に沿って図5で左方向に移動する。この具体例3において、具体例1と同様の構成部分については、具体例1と同様の作用効果を得られる。さらに、この具体例3においては、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記シリンダ34およびピストン35の一方に、前記油圧室127,130が配置され、他方に油圧室154が配置されている。したがって、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記油圧室127,130,154の配置バランスがよく、オイルポンプ8の小型化が可能になる。この具体例3は、請求項1の発明に相当するものであり、油圧室130が、この発明の第1調整室に相当する。また、油圧室154、油路159,160、および溝158も、この発明の制御装置に相当する。この具体例3のその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、具体例1の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
(具体例4)
つぎに、オイルポンプ8の具体例4を、図6に基づいて説明する。この具体例4において、前記オイルポンプ8の構成は、具体例3の場合と同様である。すなわち、具体例4においても、前記油圧室127,130,154が設けられている。この具体例4と具体例3とを比べると、前記切替弁138の構成、およびこの切替弁138に接続された油路と、前記油圧室127,130,154との接続・遮断の切り替え状態が異なる。まず、切替弁138は、ポート139,140,141,142に加えて、ポート163を有している。このポート163は、油路164,135を介して前記油圧室130に接続されている。この切替弁138においては、前記ポート139を、前記ポート141,142,163に対して接続・遮断する制御、前記ポート140を、前記ポート141,142,163に対して接続・遮断する制御をおこなうことが可能である。
この切替弁138によるポート同士の接続・遮断を切り替えるモードとして、図7に示すようにモード1ないしモード5を選択的に切り替え可能である。図7に示すモード1が選択された場合は、前記ポート139とポート142とが接続され、前記ポート140が、前記ポート141,163に接続される。このため、モード1が選択された場合は、前記油室39から吐出されたオイルが、前記吐出油路137を経由して、前記油圧室130および前記油圧室127に供給されるとともに、前記油圧室154のオイルが、前記油路160,143を経由して吸入油路136に排出される。つぎに、図7に示すモード2が選択された場合は、前記ポート140が、前記ポート141,142,163に接続され、前記ポート139が遮断される。このため、モード2が選択された場合は、前記油室39から吐出されたオイルが、前記吐出油路137を経由して、前記油圧室130および前記油圧室127および前記油圧室154に供給される。
一方、図7に示すモード3が選択された場合は、前記ポート140が、前記ポート163に接続され、前記ポート139が、前記ポート141,142に接続される。このため、モード3が選択された場合は、前記油室39から吐出されたオイルが、前記吐出油路137を経由して、前記油圧室130に供給され、前記油圧室127のオイル、および前記油圧室154のオイルが、共に前記吸入油路136に排出される。さらに、図7に示すモード4が選択された場合は、前記ポート140が遮断され、前記ポート139が、前記ポート141,142,163に接続される。このため、モード4が選択された場合は、前記油圧室127,130,154のオイルが、全て前記吸入油路136に排出される。さらに、図7に示すモード5が選択された場合は、前記ポート139が、前記ポート141,163に接続され、前記ポート140が、前記ポート142に接続される。このため、モード5が選択された場合は、前記油圧室127,130のオイルが、共に前記吸入油路136に排出され、前記油室39から吐出されたオイルが、前記油圧室154に供給される。そして、この具体例4においては、前記油圧室154のオイルが前記吸入油路136に排出されている場合、つまり、
Σ1=PL×A1×(tan(γ0/2))×(N/2)
が成立し、かつ、前記油圧室130に吐出油圧が供給され、かつ、前記油圧室127のオイルが排出されることにより、前記荷重F3が前記全荷重Σ2に相当する場合において、前記全荷重Σ1と全荷重Σ2とが釣り合い、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向で停止するように、前記受圧面126の面積が決定されている。また、前記受圧面125の面積は前記受圧面155の受圧面積よりも広く構成されている。これは、受圧面125に作用する油圧で発生する荷重の方が、受圧面155に作用する油圧で発生する荷重よりも大きくなるようにするためである。
この具体例4において、具体例3と同様の構成部分については、具体例1、3と同様の作用効果を得られる。また、この具体例4では、図6において前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で停止させる制御、右または左に動作させる制御をおこなうことができる。まず、図7に示すモード1が選択された場合は、前記油室39から吐出されたオイルが前記油圧室127,130に供給されるとともに、前記油圧室154からオイルが排出される。すると、
Σ1=PL×A1×(tan(γ0/2))×(N/2)
で求められる全荷重Σ1よりも、前記荷重F3と前記荷重F4との合計で求められる全荷重Σ2の方が大きくなり、前記インナーレース25が図6で右方向に動作する。
つぎに、図7に示すモード2が選択された場合は、前記油室39から吐出されたオイルが前記油圧室127,130,154に供給される。この場合、
全荷重Σ1は、
Σ1=PL×A1×(tan(γ0/2))×(N/2)+F6
で求められる。一方、全荷重Σ2は前記荷重F3と前記荷重F4との合計で求められる。ここで、前記受圧面125の面積は前記受圧面155の面積よりも広く構成されているため、モード2が選択された場合も、全荷重Σ1よりも全荷重Σ2の方が大きくなり、前記インナーレース25が図6で右方向に動作する。なお、モード1とモード2とを比較すると、前記荷重F6が前記インナーレース25を左に向けて押圧するように加えられる分、モード2の方がモード1よりもインナーレース25の動作速度が遅い。一方、図7に示すモード3が選択された場合は、前記油室39から吐出されたオイルが前記油圧室130に供給され、かつ、前記油圧室127,154のオイルは吸入油路136に排出される。この場合は、前記全荷重Σ1と全荷重Σ2とが釣り合い、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向で停止する。
つぎに、図7に示すモード4が選択された場合は、前記油圧室127,130,154のオイルが共に前記吸入油路136に排出される。すると、前記インナーレース25を図6で右方向に押圧する荷重は発生せず、全荷重Σ1の方が全荷重Σ2よりも大きくなり、前記インナーレース25が図6で左に向けて動作する。さらに、図7に示すモード5が選択された場合は、前記油圧室127,130のオイルが共に前記吸入油路136に排出されるとともに、前記油室39から吐出されたオイルが、前記油圧室154に供給される。したがって、全荷重Σ1は、
Σ1=PL×A1×(tan(γ0/2))×(N/2)+F6
となり、全荷重Σ1は全荷重Σ2よりも大きくなるため、前記インナーレース25が図6で左に向けて動作する。なお、モード4とモード5とを比較すると、前記荷重F5が前記インナーレース25を左に向けて押圧するように加えられる分、モード5の方がモード4よりもインナーレース25の動作速度が速い。なお、図7において、「吐出圧」は、前記油室39から吐出されたオイルの油圧が、各油圧室127,130,154に伝達されることを意味している。また、図7において、「ドレン」は、各油圧室127,130,154のオイルが吸入油路136に排出されることを意味している。さらに、図7において、「右」はインナーレース25が図6で右方向に動作することを意味し、「左」はインナーレース25が図6で左方向に動作することを意味し、「維持」はインナーレース25が停止することを意味する。さらに、図7において、「速い」および「遅い」は、モード1におけるインナーレース25の移動速度と、モード2におけるインナーレース25の移動速度とを比べた場合の相対的な速度差、モード4におけるインナーレース25の移動速度と、モード5におけるインナーレース25の移動速度とを比べた場合の相対的な速度差である。
この具体例4においては、具体例1と同様に前記オイルポンプ8の容量を変更可能であることに加えて、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25が右または左のいずれに動作する場合も、その動作速度を「速い」、「遅い」の2段階に変更することができる。この具体例4は、請求項2の発明に相当するものであり、この具体例4で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、前記油圧室127が、この発明における「第2調整室」に相当し、前記荷重F4が、この発明における「第3の荷重」に相当し、受圧面125が、この発明における「第2受圧面」に相当し、油圧室154が、この発明における「第3調整室」に相当し、荷重F6が、この発明における「第4の荷重」に相当し、受圧面155が、この発明における「第3受圧面」に相当する。この具体例4におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、具体例1の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
(具体例5)
さらに、オイルポンプ8の具体例5を図8に基づいて説明する。この具体例5において、具体例1と同じ構成部分については、具体例1と同じ符号を付してある。この具体例5においては、具体例1と同様に前記油圧室130が設けられているとともに、前記油圧室130の油圧が作用する受圧面126が、前記インナーレース25に形成されている。この具体例5では、具体例1に示された油圧室127および受圧面125は設けられていない。この具体例5において、前記油室39の吐出オイルを前記油圧室130に供給する経路の構成を説明する。前記吐出油路137および吸入油路136が接続される切替弁138が設けられている。この切替弁138は、ポート141,165,166,167を有しており、前記ポート141が前記油路144を経由して、前記油圧室130に接続されている。また、切替弁138の切替制御により、前記ポート141を、前記ポート165,166,167のいずれかに選択的に接続可能である。そして、前記吸入油路136は、前記ポート167およびオイルパン67に接続されている。さらに、前記吐出油路137は前記ポート166に接続されている。さらに、前記吐出油路137から分岐した油路168が設けられており、その油路168は、減圧弁169の入力ポート170に接続されている。また、前記減圧弁169の出力ポート171には、油路172を介して前記ポート165が接続されている。この減圧弁169は、前記吐出油路137のオイルの油圧を、一定比率で減圧して前記ポート165に供給する機能を有している。そして、この具体例5においては、前記油室39から吐出されたオイルを、前記減圧弁169で減圧して前記油室130に供給した場合に生じる荷重F2が全荷重Σ2となり、前記全荷重Σ1と全荷重Σ2とが釣り合うように、前記受圧面126の面積が構成されている。
この具体例5においても、具体例1と同様の構成部分については、具体例1と同様の効果を有する。また、この具体例5において、前記インナーレース25とアウターレース18との間で動力伝達をおこなう場合に、前記回転軸線X1に沿った方向で前記インナーレース25の位置を制御することが可能である。まず、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25を図8で右方向に動作させる場合について説明する。この場合は、前記切替弁138を制御して、前記ポート165,167が遮断され、かつ、前記ポート141と前記ポート166とが接続される。すると、前記油室39から吐出油路137に吐出されたオイルが、前記切替弁138のポート166,141を経由して油路144に供給されるとともに、その油路144のオイルが前記油圧室130に供給される。このように、前記ポート165が遮断された場合、前記油室39から吐出されたオイルが、前記減圧弁169で減圧されることなく、前記油圧室130に供給される。つまり、前記油室39の吐出圧と前記油圧室130の油圧とが等しくなる。したがって、前記油圧室130の油圧が前記受圧面126に作用して生じる荷重F2、つまり、全荷重Σ2は前記全荷重Σ1よりも大となり、前記インナーレース25が図8で右方向に動作する。
つぎに、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25を停止させる場合について説明する。この場合は、前記切替弁138を制御して、前記ポート166,167が遮断され、かつ、前記ポート141と前記ポート165とが接続される。すると、前記油室39から吐出油路137に吐出されたオイルが、前記減圧弁169の入力ポート170に供給される。この減圧弁170でオイルの油圧が減圧されて、そのオイルが前記油圧室130に供給される。つまり、前記油室39の吐出圧よりも、前記油圧室130の油圧の方が低くなる。したがって、前記受圧面126に油圧が作用して生じる荷重F2、つまり、全荷重Σ2は前記全荷重Σ1と釣り合い、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向の所定位置で停止する。
つぎに、前記回転軸線X1に沿った方向で、前記インナーレース25を左方向に動作させる場合について説明する。この場合は、前記切替弁138を制御して、前記ポート165,166が遮断され、かつ、前記ポート141と前記ポート167とが接続される。すると、前記油圧室130のオイルが前記吸入油路136に排出されて、前記油圧室130の油圧は、前記油室39のオイルを前記減圧弁169で減圧した油圧よりも低くなる。したがって、前記荷重F2は最低値となり、全荷重Σ2は前記全荷重Σ1よりも低くなり、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向で左側に動作する。なお、この具体例5において、具体例1と同様の構成部分については、具体例1と同様の作用効果を得られる。また、この具体例5においては、前記回転軸線X1に沿った方向で前記インナーレース25の位置を制御する構成として、前記インナーレース25に荷重を加える油圧室を1箇所設ければ済む。さらには、油圧室を液密にシールするシールリングの使用数を減少させることができ、回転要素とシールシングとの摺動抵抗による動力損失を低減できる。さらには、オイルポンプ8の小型化およびコスト低減を図ることができる。
さらに、この具体例5において、前記減圧弁169で減圧を2段階におこなうことができるように、前記減圧弁169を設計変更することも可能である。具体的には、前記入力ポート170に供給されるオイルの油圧が同じである場合において、第1の減圧段階が選択された時に前記出力ポート171から出力される油圧よりも、第2の減圧段階が選択された時に前記出力ポート171から出力される油圧の方が低圧となるように、前記減圧弁169を構成する。さらに、前記ポート167を設けないものとする。さらに、前記減圧弁169で第1の減圧段階が選択されるとともに、前記油室39のオイルが前記減圧弁169で減圧されて前記油圧室130に供給され、かつ、前記荷重F2が生じた場合に、前記全荷重Σ2と前記全荷重Σ1とが釣り合うように、前記受圧面126の面積を構成しておく。このように、前記減圧弁169および切替弁138を設計変更しておけば、前記インナーレース25を右方向に動作させる場合は、前述と同様の制御がおこなわれる。
これに対して、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿った方向で停止させる場合は、前記減圧弁169で第1の減圧段階が選択される。すると、前記油室39のオイルが前記減圧弁169で減圧されて前記油圧室130に供給され、かつ、前記荷重F2が生じた場合に、前記全荷重Σ2と前記全荷重Σ1とが釣り合う。したがって、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿った方向で停止する。さらに、前記インナーレース25を回転軸線X1に沿って左方向に動作させる場合は、前記減圧弁169で第2の減圧段階が選択される。すると、前記油室39のオイルが前記減圧弁169で一層減圧されて前記油圧室130に供給され、かつ、前記荷重F2が生じた場合に、前記全荷重Σ2の方が前記全荷重Σ1よりも小さくなる。したがって、前記インナーレース25が回転軸線X1に沿って左方向に動作する。この具体例5は、請求項1、3、4に相当する具体例であり、具体例5の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、油路168,172およびポート165が、この発明における通路に相当し、減圧弁169が、この発明の減圧弁に相当する。この具体例5におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、具体例1の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
なお、各具体例において、ストローク量とは、トルクを伝達する回転部材、例えば、インナーレース25などの半径方向におけるピストン35の動作量(動作範囲)もしくは行程を意味するものであり、ピストン35が上死点から下死点まで移動する間の距離、回転軸線X1とピストン35の高さ方向の中心との距離、底面37とピストン35の高さ方向の中心との距離などに基づいて、ストローク量を定義付けることも可能である。さらに、カム面に、回転軸線X1に沿った方向で隔壁16に近づくほど内径が大きくなるようなテーパを施すことも可能である。さらに、コネクティングドラムに連結されたアウターレースに液体室、油室、ピストン、転動体などを設け、インナーレースにカム面を設ける構成を採用することも可能である。さらにまた、特に図示しないが、第1の部材に形成されたカム面が回転軸線X1に沿った方向に変位されており、そのカム面に接触して回転軸線X1に沿った方向に動作するピストンおよび転動体が、第2の部材に取り付けられている構成のオイルポンプ、クラッチ、モータにもこの発明を適用可能である。
また、各具体例で用いている圧縮コイルばね、皿ばねは、いずれも金属材料により構成されている。また、第1のばねおよび第2のばねは、圧縮コイルばねに代えて、竹の子ばねを用いることも可能である。さらにまた、上記具体例では、第1の部材と第2の部材とが1回分相対回転する間に、ピストンが予め定められた方向に複数回往復動する構成(多行程)の、ピストン型の液体機器が挙げられているが、第1の部材と第2の部材とが1回分相対回転する間に、ピストンが予め定められた方向に1回往復動する構成(単行程)の、ピストン型の液体機器にも、この発明を用いることができる。各実施例において、油圧室のオイルの油圧を受けて、インナーレース25に回転軸線X1に沿った方向の荷重を生じさせる受圧面は、前記回転軸線X1と垂直な平面に限らず、回転軸線X1に対して90度以外の角度で交差する平面でもよい。さらには、受圧面は平面に限らず回転軸線X1に沿った方向に凹凸が設けられていてもよいし、受圧面は平面に限らず回転軸線X1に沿った方向に湾曲する曲面であってもよい。各実施例において、油圧室のオイルの油圧を受けて、インナーレース25に回転軸線X1に沿った方向の荷重を生じさせる受圧面は、前記回転軸線X1と垂直な平面に限らず、回転軸線X1に対して90度以外の角度で交差する平面でもよい。さらに、各実施例で説明した受圧面は、いずれも回転軸線X1を中心として環状に形成されているが、回転軸線X1を中心とする円周方向の一部、または円周方向に所定間隔おきに設けられていてもよい。この場合、油圧室も、回転軸線X1を中心とする円周方向の一部、または円周方向に所定間隔おきに設けられていてもよい。さらには、ピストンの底面は、平面に限らず半径方向の中心線に沿った方向に凹凸が設けられていてもよいし、ピストンの底面は平面に限らず中心線に沿った方向に湾曲する曲面であってもよい。各実施例では、インナーレース25を右方向、左方向に動作させる構成を説明しているが、インナーレースに伝達される各荷重の向きは、カム面の傾斜方向、油圧室の位置などにより、各具体例とは逆向きとなる。
この発明のピストン型の液体機器を、車両用のオイルポンプとして用いる場合の具体例1を示す断面図である。 この発明のピストン型の液体機器を、車両用のオイルポンプとして用いる場合における、車両の全体構成を示す概念図である。 図1に示されたオイルポンプの半径方向における断面図である。 この発明のピストン型の液体機器を、車両用のオイルポンプとして用いる場合の具体例2を示す断面図である。 この発明のピストン型の液体機器を、車両用のオイルポンプとして用いる場合の具体例3を示す断面図である。 この発明のピストン型の液体機器を、車両用のオイルポンプとして用いる場合の具体例4を示す断面図である。 図6に示されたオイルポンプを制御するモードと、オイルポンプの動作との関係を示す図表である。 この発明のピストン型の液体機器を、車両用のオイルポンプとして用いる場合の具体例5を示す断面図である。
符号の説明
2…エンジン、 6…オイルポンプ、 8…ベルト式無段変速機、 18…アウターレース、 22…カム面、 25…インナーレース、 35…ピストン、 36…転動体、 39…油室、 48,114,137…吐出油路、 58…プライマリプーリ、 59…セカンダリプーリ、 60…ベルト、 111,152,158…溝、 125,126…受圧面、 127,130,154…油圧室、 135,144,149,151,159,160,168,172…油路、 138…切替弁、 140,141,165…ポート、 169…減圧弁、 F2,F3,F4,F5,F6…荷重、 X1…回転軸線、 Σ1,Σ2…全荷重。

Claims (7)

  1. 回転軸線を中心として相対回転可能に設けられた第1の部材および第2の部材と、前記第1の部材に設けられ、かつ、前記回転軸線を中心とする半径方向に変位された形状を有するカムと、前記第2の部材に取り付けられ、かつ、前記半径方向に沿って往復動可能なピストンと、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記ピストンを前記半径方向で前記カムに押し付ける向きの圧力を生じる液体が出入りする液体室とを有するとともに、
    前記ピストンが前記カムに押し付けられた場合に生じる反力により、前記第2の部材を前記回転軸線に沿った方向に押圧する第1の荷重が発生するように、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記回転軸線に対して前記カムの形状を示す線分が傾斜されているとともに、前記第1の部材と第2の部材とを前記回転軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記半径方向におけるピストンの動作範囲を変更することの可能な、ピストン型の液体機器において、
    前記液体が出入りする第1調整室と、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記第1調整室の液体の圧力が作用して、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第1の荷重とは逆向きの第2の荷重を前記第2の部材に加える第1受圧面とを有し、
    前記液体室の液体の圧力により前記ピストンが前記カムに押し付けられて前記第1の荷重が発生する場合に、その第1の荷重と前記第2の荷重とが一致するように、前記第1受圧面の面積が構成され、前記液圧室から吐出された液体の圧力を前記第1調整室に伝達する通路が設けられていることを特徴とするピストン型の液体機器。
  2. 前記液体室に接続された第2調整室と、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記第2調整室の液体の圧力が作用して、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第2の荷重と同じ向きの第3の荷重を前記第2の部材に加える第2受圧面と、
    前記液体室に接続された第3調整室と、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記第3調整室の液体の圧力が作用して、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第1の荷重と同じ向きの第4の荷重を前記第2の部材に加える第3受圧面とが設けられており、
    前記第2受圧面の面積が前記第3受圧面の面積よりも広く構成されていることを特徴とする請求項1に記載のピストン型の液体機器。
  3. 回転軸線を中心として相対回転可能に設けられた第1の部材および第2の部材と、前記第1の部材に設けられ、かつ、前記回転軸線を中心とする半径方向に変位された形状を有するカムと、前記第2の部材に取り付けられ、かつ、前記半径方向に沿って往復動可能なピストンと、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記ピストンを前記半径方向で前記カムに押し付ける向きの圧力を生じる液体が出入りする液体室とを有するとともに、
    前記ピストンが前記カムに押し付けられた場合に生じる反力により、前記第2の部材を前記回転軸線に沿った方向に押圧する第1の荷重が発生するように、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記回転軸線に対して前記カムの形状を示す線分が傾斜されているとともに、前記第1の部材と第2の部材とを前記回転軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記半径方向におけるピストンの動作範囲を変更することの可能な、ピストン型の液体機器において、
    前記液圧室から吐出された液体が通路を経由して供給される第1調整室と、前記第2の部材に設けられ、かつ、前記第1調整室の液体の圧力が作用して、前記回転軸線に沿った方向の平面内で、前記第1の荷重とは逆向きの第2の荷重を前記第2の部材に加える第1受圧面と、前記通路に設けられ、かつ、前記液体室から前記第1調整室に供給される液体の液圧を減圧する減圧弁とを有しており、
    前記ピストンが前記カムに押し付けられて前記第1の荷重が発生するとともに、前記減圧弁により減圧された液体の圧力が作用して前記第2の荷重が発生する場合に、前記第1の荷重と前記第2の荷重とが一致するように、前記第1受圧面の面積が構成されていることを特徴とするピストン型の液体機器。
  4. 前記半径方向で前記ピストンの動作範囲を変更する場合に、前記液体室から吐出される液体を、前記減圧弁で減圧せずに前記第1調整室に供給する構成を有していることを特徴とする請求項3に記載のピストン型の液体機器。
  5. 前記第1の部材と第2の部材とが相対回転すると、前記ピストンが前記カムの形状に沿って前記半径方向に往復動することにより、前記液体室の圧力が低下すると液体を吸入し、かつ、前記液体室の圧力が上昇するとその液体室から液体を吐出するポンプとして機能する構成を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のピストン型の液体機器。
  6. 前記第1の部材または第2の部材のいずれか一方に伝達する動力を出力する動力源が設けられており、
    前記動力源の動力が前記第1の部材または前記第2の部材に伝達された場合に、前記カムと前記ピストンとの係合力により、前記第1の部材と第2の部材との間で動力伝達がおこなわれるように構成されており、
    前記第1の部材と第2の部材とを前記回転軸線に沿った方向に相対移動させることにより、前記半径方向における前記ピストンの動作範囲を制御して、前記第1の部材と第2の部材との間における動力伝達状態を制御する制御装置が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のピストン型の液体機器。
  7. 動力源から車輪に至る動力伝達経路に無段変速機が設けられており、前記動力源から前記無段変速機に至る動力伝達経路、またはこの無段変速機から前記車輪に至る動力伝達経路のいずれか一方に、前記第1の部材および第2の部材が配置されているとともに、前記動力源の動力が前記第1の部材または前記第2の部材に伝達された場合に、前記カムと前記ピストンとの係合力により、前記第1の部材と前記第2の部材との間で動力伝達がおこなわれる構成であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のピストン型の液体機器。
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