JP2006220240A - 極低温超高速転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 極低温において超高速で回転する回転軸に係止される内輪12と、内輪を同心に囲みかつ固定部に係止される外輪14と、その間隙に転動可能に挿入された複数の転動体16と、内輪と外輪の間に位置し転動体を互いに間隔を隔てて保持する保持器20とを備える。保持器20は、各転動体を隙間を隔てて収容しかつ半径方向に貫通した複数のポケット穴21を有する保持器本体22と、保持器本体のポケット穴内面と内輪または外輪に接触する案内面に設けられ極低温において十分な移着性と低摩擦係数を有する固体潤滑膜24(ポケット穴コーティング24Aと案内面コーティング24B)とからなる。
【選択図】 図1
Description
また、かかる極低温液化ガス用の高速回転機器では、軸受の運転条件であるDN値(軸受内径×回転数)が非常に高く(例えば約200万以上)、これに使用する転がり軸受の保持器は、小型軽量でかつ高い強度が必要とされる。
また、同様の目的で、保持器を必要としない極低温用の軸受も提案されている(例えば特許文献2)。
また、上述した特許文献2の転がり軸受は、製造コストを大幅に低減できる可能性があるが、内輪と外輪の間の軌道空間に位置するボールのうち半数が軸受用に寄与しないため、使用できるラジアル荷重が低下するおそれがあった。
前記保持器は、前記内輪と外輪に同心のリング状部材であり、かつ各転動体を隙間を隔てて収容しかつ半径方向に貫通した複数のポケット穴を有する保持器本体と、
該保持器本体のポケット穴内面と内輪または外輪に接触する案内面に設けられ、極低温において十分な移着性と低摩擦係数を有する固体潤滑膜とからなる、ことを特徴とする極低温超高速転がり軸受が提供される。
前記固体潤滑膜は、保持器本体の表面に成膜後、前記高温においてベーキング処理したフッ素樹脂である。
図1(A)に示すように、本発明の極低温超高速転がり軸受10は、内輪12、外輪14、転動体16及び保持器20からなる。
また、内輪12は、極低温かつ超高速において回転軸との間に締め代を有し、超高速による遠心力が作用しても回転軸1との間に速度差(スリップ)が生じないようになっている。
転動体16は、この例のおいて複数(9〜10)の球形ボールであり、内輪12と外輪14の間隙に転動可能に挿入されている。転動体16は、セラミック製(たとえばSi3N4)であるのがよい。なお、マルテンサイト系ステンレス鋼のSUS440Cを使用してもよい。
図1(B)、(C)に示すように、保持器20は、保持器本体22と固体潤滑膜24からなる。
保持器本体22は、各転動体16を隙間を隔てて収容しかつ半径方向に貫通した複数のポケット穴21を有する。この例で保持器本体22は、中空円筒形の中実材であり、約300〜500℃の高温に耐え、かつこの高温処理後に、極低温において超高速回転に耐える比強度を有する軽金属材からなる。かかる軽金属材として耐食性アルミ合金、例えばA5056アルミ合金を用いることができる。
潤滑性のみであればテフロン(登録商標)樹脂に強度増加剤を混合した材料で保持器を製作することができる。しかし高速軸受用としては材料強度(比強度=引張強度/比重)が不足し、成立しない。
従って保持器本体22は、極低温で比強度が高く、軸受内で高速回転中の挙動が他部分(内輪12と外輪14)に与えるダメージが少ない軽量のアルミニウム合金を使用する。またアルミニウム合金を使用することにより、樹脂に比べて製作精度を高め、高速での回転精度を高めることができる。
この固体潤滑膜24(コーティング膜)は、保持器本体20の表面に成膜後、約300〜500℃の高温においてベーキング処理したフッ素樹脂であり、極低温において十分な移着性と低摩擦係数を有する。また、耐磨耗性を高めるために適量の耐磨耗添加剤を含有する。
コーティング材料を評価するため、PTFEに耐磨耗剤を少量を加えたもの(TP1)、同中間量を加えたもの(TP2)、同多量を加えたもの(TP3)、更に低温摺動剤を加えたもの(TP4)を比較試験した。耐磨耗剤の少量、中間量、多量は、同種のものの比率を順に増したものである。また低温摺動剤は、耐磨耗剤とは異なる添加剤であり、適量添加した。
また、図3は、常温と極低温における磨耗量の比較図である。この図から、TP1は常温において磨耗量が過大であるが、極低温ではいずれも小さく、実績のある従来品と同等またはより優れていることが確認された。
従って、この結果から、TP2が摩擦係数、移着性、磨耗量のすべてにおいて、実績のある従来品と同等の性能を有することが確認された。
コーティング材料を更に評価するため、PTFEをベースに耐磨耗剤等を添加した4種類の試験材(TP5〜8)を準備し、前記TP3,4と共に同様の試験を極低温(−196℃)で実施した。試験結果を図5、6に示す。
また、図6は、極低温における磨耗量の比較図である。この図から、TP3、6、8は比較して大きく、TP5,7が、いずれも小さく、実績のある従来品より優れていることが確認された。
従って、この結果から、TP5,7が摩擦係数、磨耗量のすべてにおいて、実績のある従来品と同等の性能を有することが確認された。
本発明の軸受を実際に極低温で超高速回転させその性能を試験した。
図7は、本発明の極低温超高速転がり軸受の性能試験装置の構成図である。この試験装置は、供試軸受34を2セットを組み込み、その超高速回転軸35の端部にラジアルタービン36を備えたものである。ラジアルタービン36は、ガス化した液体水素(約−253℃)で駆動し、軸受は液体水素で冷却した。
液体水素(約−253℃)を用いて超高速回転軸35を約10万rpmで約180秒間回転させた後、軸受34を分解し、各部を検査した。この結果、ポケット穴の内面及び外周案内面の磨耗量も小さく、本発明の軸受が、従来の極低温超高速転がり軸受と同様に、油やグリースの流動性潤滑剤を用いずに極低温環境下において必要とする低い摩擦係数と耐磨耗性を保持できることが確認された。
また、遠心力及び転動体の公転速度差(BSV)により発生するポケット位置での周方向応力に対し、十分な強度を持つ。
更に、軽金属を使用することで保持器の形状精度を上げることができ、超高速回転中の保持器の挙動を安定させ、過度の内部摩擦による発熱を防止できる。
また、保持器本体の表面に固体潤滑膜を成膜するので、ポケット部のコーティング剤は、潤滑性+転移移着性の良好なもの、案内面のコーティングは潤滑性+耐磨耗性に重点をおいて選択し、潤滑剤として作動機能の異なるポケット部と案内面で最適なコーティングを使い分けることができる。
10 極低温超高速転がり軸受、
12 内輪、14 外輪、16 転動体、
20 保持器、21 ポケット穴、22 保持器本体、
24 固体潤滑膜(コーティング膜)、
24A ポケット穴の固体潤滑膜(ポケット穴コーティング)、
24B 案内面の固体潤滑膜(案内面コーティング)、
34 軸受、35 超高速回転軸、36 ラジアルタービン
Claims (4)
- 極低温において超高速で回転する回転軸に係止される内輪と、該内輪を間隙を隔てて同心に囲みかつ固定部に係止される外輪と、前記間隙に転動可能に挿入された複数の転動体と、内輪と外輪の間に位置し前記転動体を互いに間隔を隔てて保持する保持器とを備え、
前記保持器は、前記内輪と外輪に同心のリング状部材であり、かつ各転動体を隙間を隔てて収容しかつ半径方向に貫通した複数のポケット穴を有する保持器本体と、
該保持器本体のポケット穴内面と内輪または外輪に接触する案内面に設けられ、極低温において十分な移着性と低摩擦係数を有する固体潤滑膜とからなる、ことを特徴とする極低温超高速転がり軸受。 - 前記保持器本体は、約300〜500℃の高温に耐え、かつ該高温処理後に、極低温において超高速回転に耐える比強度を有する軽金属材からなり、
前記固体潤滑膜は、保持器本体の表面に成膜後、前記高温においてベーキング処理したフッ素樹脂である、ことを特徴とする請求項1に記載の極低温超高速転がり軸受。 - 前記固体潤滑膜は、耐磨耗性を高めるために適量の耐磨耗添加剤を含有する、ことを特徴とする請求項2に記載の極低温超高速転がり軸受。
- 前記ポケット穴内面の固体潤滑膜は、潤滑性と移着性に優れた高移着性フッ素樹脂コーティング膜であり、内輪または外輪に接触する案内面の固体潤滑膜は、潤滑性と耐磨耗性に優れた耐磨耗性フッ素樹脂コーティング膜である、ことを特徴とする請求項2に記載の極低温超高速転がり軸受。
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