JP5181953B2 - 玉軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、固体潤滑剤からなる潤滑部品を備えた玉軸受に関する。
FPD(フラットパネルディスプレイ)は世代を重ねる毎に大型化しており、最近では一辺が2m以上のものも登場している。FPDを製造する設備の一部として、スパッタリング装置、プラズマCVD装置、イオン注入装置等の真空処理装置がある。そして、これらの真空処理装置は、基板等の被処理品を真空状態で搬送する搬送装置や搬送ロボットを備えている。
これらの搬送装置や搬送ロボットの回転支持部分に転がり軸受が使用されるが、これらの転がり軸受としては、従来、ステンレス鋼(主にSUS440C)製で、焼き入れ・焼き戻し処理が施されていて、フッ素系グリースで潤滑されたものが使用されている。
ところで、FPDは、製造工程で表面に微細な粒子(異物)が付着することで機能が損なわれる。よって、製品としての歩留まりを向上させるために、清浄度のより高い環境で製造することが求められている。この要求に応えるために、フッ素系グリースよりも放出ガス量が少ない固体潤滑剤を使用することが提案されている。
転がり軸受の保持器やセパレータに固体潤滑剤を適用した例としては、下記の特許文献1〜4が挙げられる。下記の特許文献1〜4には、固体潤滑剤からなる潤滑部品を備えた玉軸受が記載されている。
特許文献1には、玉を一つ一つ入れるリング状部品(玉のセパレータとして機能するスペーサ)の少なくとも一つを、自己潤滑性焼結合金で形成することが記載されている。
特許文献2には、軸方向に二分割された一対の半体からなる保持器に、少なくとも2個の玉を収容し、各ポケットに収容された複数の玉の間に、グラファイト製のスペーサを介装することが記載されている。
特許文献3には、円周方向で分割された分割形の保持器(セパレータ)を、自己潤滑性材料で形成することが記載されている。
特許文献4には、保持器を、自己潤滑能力を有する耐熱性有機材料(例えばポリベンゾイミダゾール樹脂にグラファイト等を添加した複合材料)で形成することが記載されている。
これらの特許文献に記載された保持器は、ボール間隔が狭いアンギュラ玉軸受に適用することが難しかったり、機械的強度が不充分であったり、寸法が大きなものには適さなかったりといった問題がある。
図5に示すように、軸受の幅Bと内輪1の内径dと外輪2の外径Dとの関係が、下記の(1)式および(2)式を満たす玉軸受は、負荷容量が大きいためにボール3の直径を大きく設定している。これに伴って、隣り合うボール3の間隔が極端に短くなるため、特許文献1〜4の保持器では、軸受のスムーズな回転が阻止されたり、十分な機械的強度が得られなかったりする。
0.60<B/((D−d)/2)<1.1‥‥(1)
0.39<((D−d)/2)/d<1.0‥‥(2)
特公平1−28248号公報 実公平7−21927号公報 特開平7−151152号公報 特開平7−197936号公報
本発明の課題は、固体潤滑剤からなる潤滑部品が取り付けられた保持器を備えた玉軸受として、機械的強度が十分であるとともに、寸法が大きい玉軸受や、ボール間隔が狭いアンギュラ玉軸受に適用しても、良好な潤滑性能が得られるものを提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、ボールを入れるポケットが形成されている保持器を備えた玉軸受であって、固体潤滑剤からなる潤滑部品が、この軸受の回転時に外輪と接触するように前記保持器に配置され、前記潤滑部品は、前記保持器に設けられ外輪側に開口した部位に配置され、前記外輪側に開口した部位は、有底の凹部であり、前記潤滑部品は、円筒状のホルダに先端をホルダから突出させた状態で保持され、このホルダが前記凹部において凹部の軸方向に移動できるように配置されていることを特徴とする玉軸受を提供する。
本発明の玉軸受によれば、固体潤滑剤からなる潤滑部品を保持器(セパレータを含む)とは別に設けたため、保持器の機械的強度を確保しながら、良好な潤滑性能が得られるようにすることができる。また、寸法が大きい玉軸受や、ボール間隔が狭いアンギュラ玉軸受にも適用できる。
本発明の玉軸受としては、アンギュラ玉軸受であって、前記保持器は、リングの周面を貫通する円穴が形成されているリング状保持器であり、この保持器の柱部分に、軸方向を軌道輪からボールへ伝えられる力の合力の作用線に沿わせ、外輪側を開口した円筒状の凹部を設け、この凹部に前記潤滑部品が凹部の軸方向に移動できるように配置されているものが挙げられる。
前記潤滑部品は、円筒状のホルダに先端をホルダから突出させた状態で保持され、このホルダが前記凹部に凹部の軸方向に移動できるように配置されていてもよい。
本発明の玉軸受によれば、固体潤滑剤からなる潤滑部品が取り付けられた保持器を備えた玉軸受として、機械的強度が十分であるとともに、寸法が大きい玉軸受や、ボール間隔が狭いアンギュラ玉軸受に適用しても、良好な潤滑性能が得られるようになる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
この実施形態の玉軸受はアンギュラ玉軸受であり、図1および2に示すように、内輪1、外輪2、ボール3、保持器4、円柱状で先端が丸く形成された潤滑部品5、および円筒状のホルダ6で構成されている。
図1は、このアンギュラ玉軸受を内外輪の径方向に沿って切断した断面図である。図2は、図1の玉軸受から潤滑部品5およびホルダ6を外した状態のA−A断面図に、潤滑部品5およびホルダ6を斜視図で追加した図である。
保持器4は、リングの周面を貫通する円穴がポケット41として形成されているリング状保持器である。ポケット41をなす円穴の保持器内周側の断面形状がテーパー状になっている。すなわち、ポケット41の外輪側から内輪側に向けて所定深さで、ボール3より僅かに大きい径の円穴が形成されているが、その先にテーパー部41aが形成され、その先の内輪側部分41bの径はボール3の径より僅かに小さく形成されている。このテーパー部41aはポケット41の円穴の全周でなく、リング状の保持器4の径方向で対向する2カ所に形成されている。
この保持器4の柱部分42には、二つ置きに、円筒状の凹部42aが形成されている。凹部42aをなす円筒の軸方向は、内輪1および外輪2からボール3へ伝えられる力の合力の作用線Lに沿っている。凹部42aは外輪側を開口している。円柱状の潤滑部品5は、円筒状のホルダ6に、先端をホルダ6から突出させた状態で保持されている。ホルダ6は、凹部42aにゆるく挿入される寸法に形成されている。例えば、凹部42aの直径をホルダ6の直径の1.01〜1.5倍とする。これにより、ホルダ6は、凹部42a内に、作用線L(潤滑部品5をなす円柱の軸方向)に沿って移動できるように配置されている。
また、潤滑部品5の先端の丸みの曲率半径は、潤滑部品5をなす円柱の半径と同じかそれ以上〜その20倍以下とする。
図1は、この玉軸受が回転して、潤滑部品5が外輪2の軌道面2aに接触した状態を示しているが、静止状態では図3に示すように、ホルダ6が凹部42aの底面に当接している。回転時に保持器4と外輪2が接触することを防止するため、凹部42aの開口端と外輪2の軌道面2aとの間隔は0.5mm以上にする。また、静止状態で、潤滑部品5の先端が、凹部42aの開口から僅かに突出し、外輪2の軌道面2aに接触しない寸法に、ホルダ6と潤滑部品5を形成する。
この玉軸受は、回転時に、潤滑部品5が保持されたホルダ6が遠心力で凹部42a内を作用線L方向に移動し、保持器4の凹部42aに配置された潤滑部品5の先端が外輪2の軌道面2aに接触する。外輪2は保持器4に対して相対回転しているため、潤滑部品5と軌道面2aとの間に摺動が生じる。
したがって、この玉軸受は、回転時に、潤滑部品5をなす固体潤滑剤が、外輪2の軌道面2aに効率的に移行するため、他の潤滑剤を充填しなくても良好な潤滑性能が得られる。また、ポケット41にボール3より小径の内輪側部分41bが形成されているため、保持器4が必要以上に外輪2側に移動することが抑制できるため、保持器4の摩耗が抑制されるという効果も得られる。
この玉軸受を真空環境で使用する場合には、保持器4およびホルダ6をSUS304やSUS316等のステンレス鋼、PEEK樹脂やポリイミド樹脂(例えば、デュポン社製の「ベスペル(登録商標)」)で形成する。潤滑部品5は、PTFE樹脂、グラファイト、MoS2 、WS2 、MoS2 合金、WS2 合金のいずれかで形成する。
また、ボール3、内輪1の軌道面、外輪2の軌道面、保持器4のポケット41の内周面の少なくともいずれかに、スプレー塗装またはスパッタリングによるMoS2 またはWS2 からなる被膜や、PTFE樹脂からなる被膜が形成されていることが好ましい。これにより、軸受を初めて使用する際にこれらの被膜が潤滑剤として作用するため、回転初期の潤滑性が確保される。
なお、円柱状の潤滑部品5は、円筒状のホルダ6に保持しないで、図4に示すように、直接、凹部42a内に配置してもよい。その場合、潤滑部品5の大きさは、凹部42aをなす円筒に適度な隙間で配置される大きさとする。
また、円筒状のホルダ6に保持する場合、潤滑部品5の形状は円柱状に限らず、球状や楕円球としてその先端をホルダ6から突出させてもよい。また、潤滑部品5は全体が固体潤滑剤からなるものであってもよいし、金属製の芯部の表面に固体潤滑剤がコーティングなどにより固定されたものであってもよい。また、潤滑部品5が取り付けられている個数が多いほど潤滑性能は向上するが、柱部のボールピッチ円に沿った寸法を大きく取る必要があるため、保持器4のポケット数が少なくなる。
図1および2に示すアンギュラ玉軸受(No. 1−1)を用いて、真空環境での耐久試験を行った。潤滑部品5としてはWS2 焼結合金製のものを用いた。
試験軸受は呼び番号7219のアンギュラ玉軸受であって、その寸法は、外輪外径Dが170mm、内輪内径dが95mm、軸受幅Bが32mmである。よって、B/((D−d)/2)=0.85であり、((D−d)/2)/d=0.394であるため、(1)式および(2)式を満たす。
比較のために、保持器として、特許文献1に記載された、玉を一つ一つ入れるリング状部品(玉のセパレータとして機能するスペーサ)をWS2 焼結合金で形成したものを用意した。このリング部品を全ての玉に対して取り付けて、保持器以外の点は全て同じ構成の軸受(No. 1−2)を組み立てた。
No. 1−1と1−2の軸受を、荷重条件が、組み合わせ:DF、予圧:7940N、Pmax :1250N/mm2 で、温度条件が80℃で、圧力条件が20〜30Paで、一方向に180°回転した後に反対方向に180°回転することを1分間に50回繰り返す試験を行った。試験前と試験中にトルク値を測定し続け、トルク値が初期トルク値の20%に相当する値だけ大きくなった時点で、試験を終了し、試験終了までの回転サイクル数を寿命として測定した。
その結果、No. 1−1の寿命は300万サイクル以上であり、No. 1−2の寿命は10万サイクルであった。
本発明の一実施形態に相当する玉軸受を示す断面図である。 図1のA−A断面図である。 図1の玉軸受の静止状態を示す断面図である。 本発明の別の実施形態に相当する玉軸受を示す断面図である。 玉軸受の断面図であって、(1)式および(2)式の各寸法B,D,dを示した図である。
符号の説明
1 内輪
2 外輪
2a 外輪軌道面
3 ボール
4 保持器
41 保持器のポケット
41a ポケットのテーパー部
41b ポケットの小径部
42 保持器の柱部分
42a 保持器の凹部
5 円柱状の潤滑部品
6 ホルダ
L 合力の作用線

Claims (8)

  1. ボールを入れるポケットが形成されている保持器を備えた玉軸受であって、
    固体潤滑剤からなる潤滑部品が、この軸受の回転時に外輪と接触するように前記保持器に配置され、
    前記潤滑部品は、前記保持器に設けられ外輪側に開口した部位に配置され、
    前記外輪側に開口した部位は、有底の凹部であり、
    前記潤滑部品は、円筒状のホルダに先端をホルダから突出させた状態で保持され、このホルダが前記凹部において凹部の軸方向に移動できるように配置されていることを特徴とする玉軸受。
  2. 前記玉軸受はアンギュラ玉軸受であって、
    前記保持器は、リングの周面を貫通する円穴が形成されているリング状保持器であり、この保持器の柱部分に、軸方向を軌道輪からボールへ伝えられる力の合力の作用線に沿わせ、外輪側を開口した円筒状の凹部を設け、この凹部に前記潤滑部品が凹部の軸方向に移動できるように配置されている請求項に記載の玉軸受。
  3. ボールを入れるポケットが形成されている保持器を備えたアンギュラ玉軸受であって、
    固体潤滑剤からなる潤滑部品が、この軸受の回転時に外輪と接触するように前記保持器に配置され、
    前記潤滑部品は、前記保持器に設けられ外輪側に開口した部位に配置され、
    前記外輪側に開口した部位は、有底の凹部であり、
    前記保持器は、リングの周面を貫通する円穴が形成されているリング状保持器であり、この保持器の柱部分に、軸方向を軌道輪からボールへ伝えられる力の合力の作用線に沿わせ、外輪側を開口した円筒状の凹部を設け、この凹部に前記潤滑部品が凹部の軸方向に移動できるように配置されていることを特徴とする玉軸受。
  4. 前記外輪側に開口した部位は、前記保持器の前記ポケット間の柱部分に設けられていることを特徴とする請求項に記載の玉軸受。
  5. 前記外輪側に開口した部位は円筒状であり、前記潤滑部品は円柱状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の玉軸受。
  6. 前記外輪側に開口した部位は、軸方向を軌道輪からボールへ伝えられる力の合力の作用線に沿わせていることを特徴とする請求項1、4、5のいずれか1項に記載の玉軸受。
  7. 前記潤滑部品は、外輪軌道面に接触することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の玉軸受。
  8. 前記潤滑部品は先端が丸く形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の玉軸受。
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