JP2009121554A - 転がり部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】転がり接触する接触部の潤滑性能を向上させる。
【解決手段】転がり部材が転動体と軌道輪、あるいは転動体と一組の軌道盤からなる転がり軸受であり、この転動体と軌道輪、あるいは転動体と一組の軌道盤の接触領域に、凹部3を設け、凹部に転がり部材の母材よりも低ヤング率の材料2を埋設することにより、この低ヤング率の部分を油膜圧力によって変形し易くし、この変形によって生じる凹みにより動圧作用が発生するようにした。
【選択図】図2
【解決手段】転がり部材が転動体と軌道輪、あるいは転動体と一組の軌道盤からなる転がり軸受であり、この転動体と軌道輪、あるいは転動体と一組の軌道盤の接触領域に、凹部3を設け、凹部に転がり部材の母材よりも低ヤング率の材料2を埋設することにより、この低ヤング率の部分を油膜圧力によって変形し易くし、この変形によって生じる凹みにより動圧作用が発生するようにした。
【選択図】図2
Description
この発明は、転がりを主体とする相対運動によって摩擦低減を実現する転がり軸受などの機械要素に関し、特に、頻繁に起動停止する稼動条件や揺動運動、あるいは低速かつ高荷重といった稼動条件に好適な転がり部材に関するものである。
転がり軸受などの転がり部材における転がり/すべり接触部では、物体の相対運動によって物体間に介在する流体に動圧効果を発生させて流体潤滑状態とすることにより、物体の直接的な接触を防止して摩擦、摩耗を低減することができる。
ところが、潤滑油が少量の場合や速度が低い場合には、動圧効果が小さく潤滑油膜が形成されないため、固体接触を生じる危険がある。特に近年は低トルク化のため、低粘度の潤滑油が用いられており、また、外部から供給される潤滑油量も減少している。このため、固体接触状態となる可能性はより一層高くなっている。
従来、接触部近傍の潤滑油量が不足していても、接触部の表面が潤滑油を保持していれば潤滑可能であるから、表面に微細な凹部を多数設けて、この凹部内に潤滑油を保持しようとする技術が特許文献1に開示されている。この技術によって、低速時の境界潤滑性能を向上させることが可能である。
また、境界潤滑性能の向上を目的とした別の技術が特許文献2に開示されている。この技術は、短パルスレーザによって表面に微細な凹凸形状を作成し、凸部が軽微な摩耗を生じた際の新生面に潤滑油を吸着させ、接触面に潤滑油を供給するというものである。
一方、すべり軸受においては、摺動面に油膜厚さ程度の深さの溝を多数形成することによって潤滑性能を向上させる技術が一般的に用いられている。これは、摺動面の深さが溝の存在によって変化するために流体力学的な動圧作用が発生することを利用している。この効果を転がり軸受に適用した例が特許文献3に開示されている。この特許文献3に開示の技術は、軽荷重となるために、すべりが生じる転動体を動圧作用による圧力で軌道輪に押し付け、すべりを防ごうとするものである。
また、高面圧を支持するスラスト平面すべり軸受に深い凹部を設けた例が非特許文献1に開示されている。これは熱膨張に伴う凹部からの潤滑油の吐出によって、境界潤滑性能を向上させようとするものである。ただし、この技術は流体力学的な動圧効果の発生を目的としたものではない。
従来の技術では、接触面に多数の溝を設けることによって、動圧作用や潤滑油の保持効果を発生させ、潤滑性能を向上させようとしている。
しかしながら、溝の長さが長くなると、潤滑油が溝に沿って接触領域外に流れてしまうため、動圧作用や潤滑油の保持効果を十分に得ることができず、期待するような潤滑性能の向上が見られない場合がある。
しかしながら、溝の長さが長くなると、潤滑油が溝に沿って接触領域外に流れてしまうため、動圧作用や潤滑油の保持効果を十分に得ることができず、期待するような潤滑性能の向上が見られない場合がある。
そこで、この発明は、転がり接触する接触部の潤滑性能の向上を図ることを目的とする。
この発明は、転がり部材が転動体と軌道輪、あるいは転動体と一組の軌道盤からなる転がり軸受であり、この転動体と軌道輪、あるいは転動体と一組の軌道盤の接触領域に、凹部を設け、この凹部に転がり部材の母材よりも低ヤング率の材料を埋設したものである。
図1は、転がり部材1の接触領域に、転がり部材1の母材よりも低ヤング率の材料2を埋設した凹部3と、動圧作用を発生させる油膜厚さ程度の深さの凹部4とを混在するように設けた例を示す概念図であり、図3は、その接触領域の概念図を示している。図2の一点鎖線は、転がり部材1の接触領域に生じる油膜圧力の大きさを示している。
転がり部材1の母材が鋼製の場合、上記凹部3と凹部4はレーザー加工やエッチング加工によって設けることができる。浅い凹部4の深さは、動圧作用を発生させるために0.1〜1μm程度とする。一方、低ヤング率の材料2を埋設する凹部3の深さは、1μm以上、100μm以下とする。
図1では、転がり部材1の接触領域のうち、高面圧となる中央領域に、動圧作用を発生させる浅い凹部4を設け、低面圧となる両サイドの領域に、凹部4よりも深い凹部3を設け、この深い凹部3に転がり部材1の母材よりも低ヤング率の材料2を埋設している。埋設方法としては、例えば、母材である鋼よりも、ヤング率が低い銅の粉末を詰めて焼結させる方法を採用することができる。
接触部材は、十分な弾性流体潤滑(EHL)状態になく、一部が固体接触しているような条件であっても、接触領域の圧力を支えているのは大部分が油膜によってであり、油膜の圧力によって表面には弾性変形が生じる。このとき、母材である鋼よりも凹部3に埋設した銅の方のヤング率が低いため、変形量も大きくなり、図2に示すような変形を生じる。この変形によって生じた材料2の凹みにより動圧作用が発生し、油膜厚さを増加させる。さらに、焼結した銅は、ポーラス状になっているため、この焼結した銅に潤滑油を含浸させることができる。この銅部の変形により、含浸した潤滑油が接触面に供給される。
上記埋設する材料は、樹脂であっても同様の効果が得られる。
ところで、低ヤング率材料を埋設した部分の油膜圧力による変形が必要以上に大きくなる場合には、低ヤング率材料を埋設した凹部3を、接触領域内で油膜圧力が低い領域に設ければよい。そして、油膜圧力の高い領域には、浅い凹部4を設けるようにすると、動圧効果を十分に確保しつつ、低ヤング率の材料に含浸した潤滑油を接触面に供給することができる。
凹部3と凹部4の開口面が接触領域よりも大きいことは、動圧作用を発生させる上で望ましくない。したがって、凹部3と凹部4の開口面は、転がり方向には、接触領域の1/2以下、これに直行する方向には接触領域よりも小さくなるように配置することが望ましい。
また、凹部3と凹部4の開口部の形状は、図3では、楕円としているが、円や矩形でもよい。
この発明を適用することができる転がり部材としては、玉と軌道輪を有するラジアル玉軸受、玉と軌道盤を有するスラスト玉軸受、ころと軌道輪を有するラジアルころ軸受、ころと軌道盤を有するスラストころ軸受などがある。
以上のように、この発明に係る転がり部材は、低ヤング率の材料が変形してできる凹部によって動圧作用を生じ、油膜の十分な発生が困難な潤滑条件であっても潤滑油膜を発生し易くなる。さらに、低ヤング率の材料に潤滑油を含浸させておけば、変形により潤滑油が供給され、固体接触を防ぎ、表面の損傷を防止することができる。
図4は、この発明を、内輪5と外輪6の間に、玉7を入れた深溝玉軸受に適用した例を示している。
この図4の例では、玉7が、内輪5と外輪6に接触する領域、即ち、図4に符号8で示した接触楕円の長軸の両サイドに低ヤング率材料を埋設した凹部3を、中央部に浅い凹部4を、それぞれ内輪5と外輪6の両方に設けているが、より潤滑状態の厳しい内輪5にのみ設けるようにしてもよい。
この図4の例では、玉7が、内輪5と外輪6に接触する領域、即ち、図4に符号8で示した接触楕円の長軸の両サイドに低ヤング率材料を埋設した凹部3を、中央部に浅い凹部4を、それぞれ内輪5と外輪6の両方に設けているが、より潤滑状態の厳しい内輪5にのみ設けるようにしてもよい。
次に、図5は、この発明を、玉7と内輪5・外輪6の接触角が0でないアンギュラ玉軸受に適用した例を示している。
アンギュラ玉軸受では、接触角が決まっているため、接触楕円8の位置が軌道内部でおおよそ定まっているので、この発明をより一層適用しやすい。そして、使用時に想定される最大の荷重から接触楕円8の大きさが求められるので、その接触楕円8の長軸の長さに相当する幅で、低ヤング率材料を埋設した凹部3と、浅い凹部4を配列している。凹部3と凹部4は、内輪5と外輪6の両方に設けているが、より潤滑状態の厳しい内輪5にのみ設けるようにしてもよい。
アンギュラ玉軸受では、接触角が決まっているため、接触楕円8の位置が軌道内部でおおよそ定まっているので、この発明をより一層適用しやすい。そして、使用時に想定される最大の荷重から接触楕円8の大きさが求められるので、その接触楕円8の長軸の長さに相当する幅で、低ヤング率材料を埋設した凹部3と、浅い凹部4を配列している。凹部3と凹部4は、内輪5と外輪6の両方に設けているが、より潤滑状態の厳しい内輪5にのみ設けるようにしてもよい。
図6及び図7は、この発明を、一組の軌道盤9の間に、保持器10付きの玉7を配したスラスト玉軸受に適用した例を示している。
この図6及び図7の例では、玉7が、軌道盤9と接触する領域、即ち、図6に符号8で示した接触楕円の長軸の長さに相当する幅で、低ヤング率材料を埋設した凹部3と、浅い凹部4を軌道盤9に配列している。一列に並ぶ凹部3と浅い凹部4は、転がり方向に沿って玉7の自転軸方向に一致するように設けられている。
この図6及び図7の例では、玉7が、軌道盤9と接触する領域、即ち、図6に符号8で示した接触楕円の長軸の長さに相当する幅で、低ヤング率材料を埋設した凹部3と、浅い凹部4を軌道盤9に配列している。一列に並ぶ凹部3と浅い凹部4は、転がり方向に沿って玉7の自転軸方向に一致するように設けられている。
次に、図8及び図9は、この発明を、一組の軌道盤9の間に保持器10付きの円筒ころ11を配した構造のスラストころ軸受に適用した例を示している。
スラストころ軸受の場合、有効長さ両端ですべりが大きくなって油膜が減少するため、この発明は特に有効である。転がり方向に沿って並ぶ凹部3と浅い凹部4はころ11の外周面に設けることも可能であるが、製造効率の観点から、軌道盤9の軌道に設けることが望ましい。転がり方向と直行する方向に並ぶ凹部3と浅い凹部4は、ころ11の軸方向に一致するように設けられている。
スラストころ軸受の場合、有効長さ両端ですべりが大きくなって油膜が減少するため、この発明は特に有効である。転がり方向に沿って並ぶ凹部3と浅い凹部4はころ11の外周面に設けることも可能であるが、製造効率の観点から、軌道盤9の軌道に設けることが望ましい。転がり方向と直行する方向に並ぶ凹部3と浅い凹部4は、ころ11の軸方向に一致するように設けられている。
次に、図10及び図11は、この発明を、ラジアルころ軸受に適用した例である。図10は、ころ12を、内輪13の鍔で案内するタイプ、図11は、ころ12を、外輪14の鍔で案内するタイプである。
そして、図10は、ころ12の表面に転がり方向に沿って凹部3と浅い凹部4が一列に並ぶように設けた例であり、図11は、鍔のない内輪13に、一列に並ぶ凹部3と浅い凹部4を転がり方向に沿って設けた例を示している。
そして、図10は、ころ12の表面に転がり方向に沿って凹部3と浅い凹部4が一列に並ぶように設けた例であり、図11は、鍔のない内輪13に、一列に並ぶ凹部3と浅い凹部4を転がり方向に沿って設けた例を示している。
図10及び図11は、この発明を、ラジアルころ軸受に適用した例であるが、円すいころ軸受や自動調心ころ軸受にも同様にして適用することができる。
以上の実施形態は、転がり接触面に、低ヤング率材料を埋設した凹部3と浅い凹部4を転がり方向に並べて潤滑作用を向上させた例であるが、図12の実施形態は、凹部3と浅い凹部4の間に、浅い凹部4の深さよりも深い潤滑油貯留ポケット15を点在させた例である。図12では、潤滑油貯留ポケット15を黒丸で表現している。
この図12の例では、一列に並ぶ凹部3と浅い凹部4の間に、潤滑油貯留ポケット15を配置したが、凹部3、浅い凹部4と潤滑油貯留ポケット15の互いの位置関係は任意である。
例えば、深い潤滑油貯留ポケット15は、転がり方向に、所定間隔で平行に並ぶように点在させてもよいし、転がり方向に、所定間隔で千鳥状に点在させてもよい。また、深い潤滑油貯留ポケット15は、その開口面では荷重の支持に寄与しないので、油膜圧力の小さい接触領域の端部に配置することが望ましい。
例えば、深い潤滑油貯留ポケット15は、転がり方向に、所定間隔で平行に並ぶように点在させてもよいし、転がり方向に、所定間隔で千鳥状に点在させてもよい。また、深い潤滑油貯留ポケット15は、その開口面では荷重の支持に寄与しないので、油膜圧力の小さい接触領域の端部に配置することが望ましい。
また、図12の例では、潤滑油貯留ポケット15の開口面の形状はすべて円形としたが、楕円や多角形などであってもよい。
次に、深い潤滑油貯留ポケット15は、潤滑油を貯留することを目的としているので、その体積は大きいほどよい。しかしながら、その開口部では潤滑油に荷重支持に寄与するような動圧は発生しないので、開口部面積は小さい方が望ましい。したがって、潤滑油貯留ポケット15は、小径であって、深穴とする。現在の量産可能な加工技術水準を勘案すれば、直径20〜30μm、深さ100μm程度といった大きさとなる。
1 転がり部材
2 ヤング率の低い材料
3 凹部
4 凹部
5 内輪
6 外輪
7 玉
8 接触楕円
9 軌道盤
10 保持器
11 ころ
12 ころ
13 内輪
14 外輪
15 潤滑油貯留ポケット
2 ヤング率の低い材料
3 凹部
4 凹部
5 内輪
6 外輪
7 玉
8 接触楕円
9 軌道盤
10 保持器
11 ころ
12 ころ
13 内輪
14 外輪
15 潤滑油貯留ポケット
Claims (10)
- 転がり部材が転動体と軌道輪、あるいは転動体と一組の軌道盤からなる転がり軸受であり、この転動体と軌道輪、あるいは転動体と一組の軌道盤の接触領域に、凹部を設け、この凹部に転がり部材の母材よりも低ヤング率の材料を埋設したことを特徴とする転がり部材。
- 上記接触領域に、転がり部材の母材よりも低ヤング率の材料を埋設した凹部と、動圧作用を発生させる油膜厚さ程度の深さの凹部とを混在するように設けた請求項1記載の転がり部材。
- 上記動圧作用を発生させる油膜厚さ程度の深さの凹部が接触領域の高面圧部分に、転がり部材の母材よりも低ヤング率の材料を埋設した凹部が接触領域の低面圧部分に配置されている請求項2記載の転がり部材。
- 上記凹部に埋設する低ヤング率の材料が、焼結金属であって、潤滑油を含浸していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の転がり部材。
- 上記凹部に埋設する低ヤング率の材料が、樹脂であって、潤滑油を含浸していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の転がり部材。
- 転がり部材の母材よりも低ヤング率の材料を埋設した凹部と、動圧作用を発生させる油膜厚さ程度の深さの凹部の開口面が、転がり方向には接触領域の1/2以下、転がり方向と直行する方向には接触領域よりも小さく設置されている請求項2〜5のいずれかの項に記載の転がり部材。
- 上記転動体と軌道輪の少なくとも一方の接触領域、あるいは転動体と一組の軌道盤の少なくとも一方の接触領域で、転がり方向に対して直行する方向の幅端部に、転がり部材の母材よりも低ヤング率の材料を埋設した凹部を転がり方向に並べて設けた請求項1記載の転がり部材。
- 転動体と軌道輪のうち内側の軌道輪のみに、上記低ヤング率の材料を埋設した凹部を設けた請求項7記載の転がり部材。
- 転動体と一組の軌道盤のうち、軌道盤のみに、上記低ヤング率の材料を埋設した凹部を設けた請求項7記載の転がり部材。
- 上記転動体がころであり、ころの表面のみに、上記低ヤング率の材料を埋設した凹部を設けた請求項7記載の転がり部材。
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