テレビジョン放送の番組(以下、「番組」という)を受信可能な携帯電話(以下、このような携帯電話も単に「携帯電話」という)を使用すれば、ユーザは、いつでもどこでも番組を視聴できる。近年、テレビジョン放送として、デジタルテレビジョン放送が実用化されている。デジタルテレビジョン放送における1セグメント放送は、一般的に、移動体での受信を対象にしているので、携帯電話に適している。また、携帯電話に元来備えられているLCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイ、スピーカなどは、番組を視聴するためにも使用できるので、以上のような携帯電話では、通信と放送のための部品を共通化でき、携帯型テレビジョン受像装置を低コストによって供給できる。また通信機能を有しているため、放送と通信の融合によるメリットも期待されている。
本発明者はこうした状況下、以下の課題を認識するに至った。携帯電話では、一般的にバッテリーによって駆動しているので、消費電力の低い方が望ましい。携帯電話において、番組を出力しているときに着信があれば、消費電力を低減するためには、番組の出力を停止させる。一方、デジタルテレビジョン放送において、番組を受信してから出力するまで数秒を要してしまう。そのため、通話が終了したときに、番組の出力を再開しようとしても、番組の出力まで数秒を要してしまう。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、消費電力を低減しつつ、番組の出力を再開するまでの時間を短縮する通信方法および装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信装置は、放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力する番組処理部と、番組処理部が番組を受信している場合であっても、所定の通信装置と通信する通信処理部と、番組処理部から映像と音声が出力されつつ、通信処理部において所定の通信装置との通信が開始された場合、通信が開始されてからの期間を計測する計測部と、計測部において計測した期間をもとに、番組処理部のうちの映像と音声を出力する一端から、番組処理部のうちの番組を受信する他端の方向に、番組処理部の動作を段階的に停止させる制御部と、を備える。
「番組」とは、放送されているプログラムを示すが、ここでは、その内容も含むものとする。すなわち、番組は、放送されている音声、放送されている映像、それらの組合せを示してもよいものとする。
この態様によると、通信が開始されたからの期間に応じて、出力端から入力端の方向に段階的に番組処理部を停止させるので、通話の期間が短ければ、番組処理部のうちの停止されている部分が少なく、迅速に番組を再び出力でき、通話の期間が長ければ、番組処理部のうちの停止されている部分が多く、消費電力を低減できる。
計測部は、番組処理部から映像と音声が出力されている期間も測定しており、制御部は、番組処理部の動作を段階的に停止させる際に、計測部において計測された映像と音声が出力されている期間をもとに、段階的に停止させる期間を調節してもよい。この場合、映像と音声が出力されている期間に応じて、段階的に停止させる期間を調節するので、映像と音声が出力されている期間を考慮しながら制御できる。
制御部が番組処理部の動作を段階的に停止させる際の期間を入力する入力部をさらに備えてもよい。制御部は、番組処理部の動作を段階的に停止させる際に、入力部に入力された期間をもとに、段階的に停止させる期間を調節してもよい。この場合、入力された期間をもとに、段階的に停止させる期間を調節するので、ユーザの意思に応じて期間を設定できる。
番組処理部は、放送されている番組を受信し、受信した番組から、符号化された映像と、符号化された音声を導出する導出部と、符号化された映像と符号化された音声をそれぞれ復号することによって、映像と音声をそれぞれ出力する復号部とを備えてもよい。制御部は、計測部において計測した期間をもとに、復号部の動作を停止させてから、導出部の動作を停止させてもよい。この場合、復号部の動作を停止させてから、導出部の動作を停止させるので、復号部の動作だけを停止している状態から番組の出力を再開すれば、番組が出力されるまでの遅延を短くできる。
制御部が番組処理部の動作を停止させる際に、その旨をユーザに通知する通知部をさらに備えてもよい。この場合、ユーザは、番組処理部の動作の停止を認識できる。
本発明の別の態様もまた、通信装置である。この装置は、放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力する番組処理部と、番組処理部が番組を受信している場合であっても、所定の通信装置と通信する通信処理部と、番組処理部から映像と音声が出力されつつ、通信処理部において通信が開始された場合、番組処理部の動作を部分的に停止させる制御部とを備える。番組処理部において受信している番組に含まれる映像と音声のうちの一方は、複数のフレームのうちのひとつを符号化する際に、他のフレームを使用する第1符号化に対応し、映像と音声のうちの他方は、複数のフレームのうちのひとつを符号化する際に、他のフレームを使用しない第2符号化に対応し、制御部は、番組処理部の動作を部分的に停止させる場合において、第2符号化されたフレームに対する動作を停止させる。
この態様によると、第2符号化されたフレームは、他のフレームを使用せずに符号化されているので、停止された処理を再開するときの遅延を短くできつつ、第2符号化されたフレームに対する動作を先に停止させるので、処理を再開するときに番組の出力までの遅延を短くできる。
制御部は、第2符号化されたフレームに対する動作を停止させた後に、第1符号化されたフレームに対する動作を停止させてもよい。この場合、第1符号化されたフレームに対する動作も停止させるので、消費電力を低減できる。
番組処理部において受信している番組に含まれる映像と音声のうち、第1符号化されたフレームは、他のフレームを使用せずに符号化しているフレームも含んでおり、制御部は、第2符号化されたフレームに対する動作を停止させた後に、第1符号化されたフレームのうち、他のフレームを使用せずに符号化しているフレーム以外のフレームに対する動作を停止させてもよい。この場合、第1符号化されたフレームに対する動作を停止させる場合であっても、一部のフレームに対する動作を継続させるので、処理を再開するときに番組の出力までの遅延を短くできる。
本発明のさらに別の態様は、通信方法である。この方法は、放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力する番組の処理を実行しているときに、所定の通信装置との通信を開始する場合、通信が開始されてからの期間を計測し、計測した期間をもとに、番組の処理のうちの映像と音声を出力する一端から、番組に対する処理のうちの番組を受信する他端の方向に、番組の処理の動作を段階的に停止する。
本発明のさらに別の態様もまた、通信方法である。この方法は、放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力するような番組の処理を実行しているときに、所定の通信装置との通信を開始する場合、番組の処理の動作を部分的に停止する通信方法であって、受信している番組に含まれる映像と音声のうちの一方は、複数のフレームのうちのひとつを符号化する際に、他のフレームを使用する第1符号化に対応し、映像と音声のうちの他方は、複数のフレームのうちのひとつを符号化する際に、他のフレームを使用しない第2符号化に対応しており、番組の処理の動作を部分的に停止させる場合において、第2符号化されたフレームに対する動作を停止する。
本発明のさらに別の態様もまた、通信方法である。この方法は、放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力するステップと、番組を受信している場合であっても、所定の通信装置と通信するステップと、映像と音声が出力されつつ、所定の通信装置との通信が開始された場合、通信が開始されてからの期間を計測するステップと、計測した期間をもとに、放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力するステップのうちの映像と音声を出力する一端から、番組を受信する他端の方向に、動作を段階的に停止させるステップと、を備える。
計測するステップは、映像と音声が出力されている期間も測定しており、動作を段階的に停止させるステップは、動作を段階的に停止させる際に、計測された映像と音声が出力されている期間をもとに、段階的に停止させる期間を調節してもよい。動作を段階的に停止させるステップが動作を段階的に停止させる際の期間を入力するステップをさらに備える。動作を段階的に停止させるステップは、動作を段階的に停止させる際に、入力するステップに入力された期間をもとに、段階的に停止させる期間を調節してもよい。
放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力するステップは、放送されている番組を受信し、受信した番組から、符号化された映像と、符号化された音声を導出するステップと、符号化された映像と符号化された音声をそれぞれ復号することによって、映像と音声をそれぞれ出力するステップとを備える。動作を段階的に停止させるステップは、計測した期間をもとに、符号化された映像と符号化された音声をそれぞれ復号することによって、映像と音声をそれぞれ出力するステップの動作を停止させてから、放送されている番組を受信し、受信した番組から、符号化された映像と、符号化された音声を導出するステップの動作を停止させてもよい。動作を段階的に停止させるステップが動作を停止させる際に、その旨をユーザに通知するステップをさらに備えてもよい。
本発明のさらに別の態様もまた、通信方法である。この方法は、放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力するステップと、番組を受信している場合であっても、所定の通信装置と通信するステップと、映像と音声が出力されつつ、通信が開始された場合、放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力するステップの動作を部分的に停止させるステップとを備える。放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力するステップにおいて受信している番組に含まれる映像と音声のうちの一方は、複数のフレームのうちのひとつを符号化する際に、他のフレームを使用する第1符号化に対応し、映像と音声のうちの他方は、複数のフレームのうちのひとつを符号化する際に、他のフレームを使用しない第2符号化に対応し、動作を部分的に停止させるステップは、動作を部分的に停止させる場合において、第2符号化されたフレームに対する動作を停止させてもよい。
動作を部分的に停止させるステップは、第2符号化されたフレームに対する動作を停止させた後に、第1符号化されたフレームに対する動作を停止させてもよい。放送されている番組を受信し、受信した番組に含まれる映像と音声をそれぞれ出力するステップにおいて受信している番組に含まれる映像と音声のうち、第1符号化されたフレームは、他のフレームを使用せずに符号化しているフレームも含んでおり、動作を部分的に停止させるステップは、第2符号化されたフレームに対する動作を停止させた後に、第1符号化されたフレームのうち、他のフレームを使用せずに符号化しているフレーム以外のフレームに対する動作を停止させてもよい。
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、消費電力を低減しつつ、番組の出力を再開するまでの時間を短縮できる。
本発明を具体的に説明する前に、概要を述べる。本発明の実施例は、番組を受信可能な携帯電話(以下、「通信装置」という)に関する。本実施例に係る通信装置は、通話における音声の出力、および番組に含まれた音声の出力のためにスピーカを内蔵し(以下、このようなスピーカを「内蔵スピーカ」という)、通話における音声の入力のためにマイクを内蔵する(以下、このようなマイクを「内蔵マイク」という)。また、通信装置は、所定の情報の表示、および番組に含まれた映像の表示のためにLCDを内蔵する。すなわち、通信装置に内蔵されたこれらの構成要素は、番組の視聴と通話のために使用されるので、番組の視聴と通話との同時の実行が困難になる。さらに、通信装置での消費電力を低減するためにも、通話を実行している間にわたって、通信装置は番組の出力を停止する。一方、通信装置において、番組の出力を停止すれば、番組の出力を再開する際に、番組が出力されるまで遅延を生じる場合がある。そのため、本実施例に係る通信装置は、消費電力を低減しつつ、番組の出力までの遅延を小さくするために、以下の処理を実行する。
番組における映像に対する符号化では、複数のフレームのうちの所定のフレームが、それ以外のフレームを使用しており、番組における音声に対する符号化では、複数のうちの所定のフレームが、それ以外のフレームを使用していない。例えば、前者として、MPEG(Motion Picture Experts Group)があり、後者として、AACのLC(Low Complexity)プロファイルがある。また、通信装置は、符号化されたこれらのフレームを受信し、受信したフレームに対して復号を実行する。本実施例に係る通信装置は、番組を出力しているときに、着信を受けつければ、少なくとも音声の出力を停止することによって、通話を開始する。通話の開始後、所定期間を経過すれば、通信装置は、音声に対する復号を停止する。さらに、時間の経過とともに、映像に対する復号、番組の受信と段階的に動作を停止する。そのため、通話期間が短ければ、音声に対する復号が停止されているだけなので、番組の出力を再開するまでの遅延が短くなる。一方、通話期間が長ければ、番組の受信までの動作を停止しているので、消費電力を低減できる。
図1は、本発明の実施例に係る通信装置100の構成を示す。通信装置100は、放送用アンテナ40、放送受信部42、デスクランブラ44、DEMUX(Demultiplexer)46、通信用アンテナ48、通信部50、中央制御部52、計測部80、動作制御部82、出力処理部84、LCD10、内蔵スピーカ12、音声出力端子接続部70を含む。また、出力処理部84は、映像用デコーダ58、描画部60、表示制御部62、音声用デコーダ64、音声出力制御部66を含む。
放送受信部42は、放送用アンテナ40を介して、放送されているデジタルテレビジョン放送の電波を受信する。なお、当該電波に番組が含まれている。さらに、放送受信部42は、チューナの機能を備えており、チューナの受信周波数を所定の値に固定することによって、放送受信部42は、受信した電波から、視聴すべき放送局に対応したチャンネルの番組を選択する。すなわち、放送受信部42は、チューナおよび復調器の機能によって、受信した電波を復調し、TS(Transport Stream)データに変換する。また、放送受信部42でのチャンネルの設定は、図示しないボタン等から受けつけたユーザの指示にもとづいてなされる。
デスクランブラ44は、放送受信部42から出力されたTSデータにかけられたスクランブルを解除する。DEMUX46では、スクランブルが解除されたTSデータ中のヘッダ情報にもとづいて、符号化データの内容を解析する。すなわち、スクランブルが解除されたTSデータは、先頭部分にヘッダ情報を配置し、それに続いて多重化された符号化データを配置する。多重化された符号化データは、映像データ、音声データ、付加データあるいはこれらの組み合わせに相当する。DEMUX46は、符号化データの解析結果をもとに、多重化された符号化データを映像データ、音声データ、付加データに分割する。ここで、音声データおよび映像データは、放送において規格化された形式によって、符号化すなわち圧縮されている。また、付加データには、字幕など、映像、音声以外の情報が含まれる。以上の説明のごとく、放送受信部42からDEMUX46は、放送されている番組を受信し、受信した番組から、符号化された映像と、符号化された音声を導出する。
通信部50は、通信用アンテナ48を介して、図示しない基地局装置と通信する。さらに、基地局装置を介して、通信部50は、図示しない通信装置との通話を実行する。通信部50は、通信部50と基地局装置に対して適用される通信システムに応じた機能を含む。ここで、通信システムは、携帯電話システム、第二世代コードレス電話システム、第三世代携帯電話システムを含む。これらに応じた機能は、公知の技術でよいので、説明を省略する。また、通信部50は、放送受信部42等が番組を受信している場合であっても、所定の通信装置と通信する。すなわち、ユーザが後述のLCD10等によって番組を視聴している場合であっても、所定の通信装置からの着信を受けつける。
中央制御部52は、所定のデータの入出力を制御する。すなわち、DEMUX46から入力されるデータ、通信部50との間において入出力されるデータ、出力処理部84へ出力されるデータ、図示しないマイク等から入力されるデータ、図示しないボタンから入力されるデータに対して、所定の機能を実現するように、データの入出力を切りかえる。また、一般的に、中央制御部52は、DEMUX46から受けつけた映像データを映像用デコーダ58に出力し、DEMUX46から受けつけた音声データを音声用デコーダ64に出力し、DEMUX46から受けつけた付加データを描画部60に出力する。以下、所定の機能を説明する際に、データの送信元になる構成要素とデータの受信先になる構成要素との間のデータの伝送を説明するが、中央制御部52による制御によって、当該伝送が実現されている。
音声用デコーダ64は、音声データをデコードすることによって、受信した番組に含まれる音声を出力する。ここで、音声データは、AACによって符号化されているので、映像用デコーダ58は、AACデコーダに相当する。音声用デコーダ64は、復号した音声データを音声出力制御部66に出力する。特に、音声データは、AACのうちのLCプロファイルに対応しているものとする。LCプロファイルにおいては、予測処理が省略されている。そのため、音声データは、複数のフレームのうちのひとつを符号化する際に、他のフレームを使用しないといえる。
音声出力制御部66は、内蔵スピーカ12や音声出力端子接続部70に音声を出力する。なお、音声には、番組に含まれた音声と通話における音声が含まれる。また、音声出力端子接続部70には、図示しない外部スピーカ、イヤホン、イヤホンマイク、ヘッドホンが接続される。音声出力制御部66は、音声出力端子接続部70とイヤホン等との接続を監視し、接続を検出した場合に、音声を音声出力端子接続部70に出力し、接続を検出しなかった場合に、音声を内蔵スピーカ12に出力してもよい。また、通話に関し、音声出力制御部66、音声用デコーダ64に対応するように、音声入力機能が備えられる。さらに、音声入力機能のために図示しないマイクが備えられる。ここでは、音声入力機能に関する説明は省略するが、通話と連動して動作するものとする。
映像用デコーダ58は、映像データを復号することによって、受信した番組に含まれる映像を出力する。ここで、映像データは、MPEGによって符号化されているので、映像用デコーダ58は、MPEGデコーダに相当する。また、映像データは、複数のフレームのうちのひとつを符号化する際に、他のフレームを使用するといえる。映像用デコーダ58は、復号した映像データを表示制御部62に出力する。
描画部60は、表示すべき所定の情報を生成する。所定の情報を生成するために、番組に含まれた付加データが使用される。また、描画部60は、中央制御部52ともに、通信部50での動作に対応させて、着信情報表示を実行する。着信情報表示においては、発信元の電話番号等が表示される。通信部50が着信を検知した場合、中央制御部52と描画部60は、着信情報表示を行う。中央制御部52は、通信部50から発信元の電話番号を取得し、これをもとに図示しないアドレス帳を参照する。中央制御部52は、電話番号と一致する氏名等のデータを検出した場合、それを取得する。描画部60は、「着信」のような音声着信があることを示す文字と、氏名とを組み合わせて着信情報を生成する。
中央制御部52は、アドレス帳から該当するデータを検出できない場合、氏名のかわりに電話番号から着信情報を生成する。描画部60は、着信情報の文字コードに対応するフォント情報を図示しないフォントエリアより取得する。描画部60は、生成した着信情報を表示制御部62に出力する。なお、中央制御部52が操作部16におけるボタンの押下を検知した場合、通信部50は、通話開始処理を開始する。一方、中央制御部52は、着信の終了までボタンの押下などの通話開始の指示を待つが、通話開始の指示がないまま、着信が終了した場合、描画部60は、着信があったこと示す情報を生成し、表示制御部62に出力する。表示制御部62は、番組に含まれた映像、描画部60において生成された情報をLCD10に出力する。ここで、LCD10のかわりに、有機ELディスプレイ等が使用されてもかまわない。
計測部80は、表示制御部62から映像が出力され、かつ音声出力制御部66から音声が出力されつつ、通信部50において所定の通信装置との通信が開始された場合、通信が開始されてからの期間(以下、「第1期間」という)を計測する。また、計測部80は、表示制御部62から映像が出力され、かつ音声出力制御部66から音声が出力されている期間(以下、「第2期間」という)も測定しており、通信部50において通信が開始される際に、測定した第2期間を保持する。すなわち、計測部80は、通話が開始される時点での番組の視聴期間として、第2期間を取得する。特に、第2期間は、同一チャンネルの視聴期間であるとする。これは、ユーザが同一の番組を視聴していた程度に相当する。
動作制御部82は、計測部80において計測した第1期間をもとに、番組に含まれた映像と音声を出力すべき出力処理部84から、番組を受信すべき放送受信部42の方向に、番組の出力動作を段階的に停止させる。すなわち、動作制御部82は、第1期間の進行とともに、出力処理部84の動作を停止させてから、放送受信部42の動作を停止させる。ここで、動作制御部82を停止させるためのしきい値と、放送受信部42を停止させるしきい値が、第1期間に対して定められているものとする。また、動作制御部82は、出力処理部84の動作を停止させる際に、部分的に停止させる。すなわち、動作制御部82は、最初に、音声用デコーダ64の動作、すなわちAACによって符号化された音声データに対する動作を停止させる。さらに、動作制御部82は、音声用デコーダ64の動作を停止させた後に、映像用デコーダ58の動作、すなわちMPEGによって符号化された映像データに対する動作を停止させる。
動作制御部82は、出力処理部84の動作と放送受信部42との動作を段階的に停止させる際に、第2期間をもとに、段階的に停止させる期間、すなわち前述のしきい値を調節する。図2は、動作制御部82に記憶されたデータの構造を示す。図2において、「音声用デコーダ」は、音声用デコーダ64を停止させるまでのしきい値を示し、「映像用デコーダ」は、映像用デコーダ58を停止させるまでのしきい値を示し、「放送受信部」は、放送受信部42を停止させるまでのしきい値を示す。前述のごとく、しきい値は、第1期間に対して規定される。一方、図2において、「同一チャンネル出力期間20分以上」は、第2期間が20分以上の場合に対応し、「同一チャンネル出力期間20分より短い」は、第2期間が20分より短い場合に対応する。
すなわち、第2期間が20分以上であれば、音声用デコーダ64を停止させるまでのしきい値として、「0秒」が選択され、映像用デコーダ58を停止させるまでのしきい値として、「180秒」が選択され、放送受信部42を停止させるまでのしきい値として、「240秒」が選択される。同一チャンネルの出力期間が20分以上である場合、通話が180秒以内で終了すれば、ユーザは、速やかに番組を再び視聴できる。また通話が180秒を経過しても240秒以内であれば、少ない遅延によって番組を再び視聴できる。
また、第2期間が20分より短ければ、音声用デコーダ64を停止させるまでのしきい値として、「0秒」が選択され、映像用デコーダ58を停止させるまでのしきい値として、「60秒」が選択され、放送受信部42を停止させるまでのしきい値として、「120秒」が選択される。このように、第2期間に応じて、異なったしきい値が選択される。また、第2期間が長くなるほど、停止までの期間が長くなるように制御される。これは、ユーザが番組を連続して視聴している場合、ユーザは継続して視聴したいと考えている場合が多いと考えられるためである。そのため、連続した視聴時間が長い場合、映像用デコーダ58、放送受信部42が停止するまでの時間を長く設定する。
同一チャンネルの番組出力が20分以上であるかは、前述のごとく、計測部80が番組の視聴開始からの期間を計測し、20分経過した時点において、動作制御部82に対して、「0x01」等の特定の値を設定することによって判別可能である。番組の視聴終了、またはチャンネルの切り替えがなされれば、動作制御部82は、値を「0x00」等にリセットする。またチャンネルの切り替えを行ってもすぐにもとのチャンネルに戻す場合があるので、チャンネルの切り替えを行った後、所定の期間、例えば1分間経過したときに値をリセットしてもよい。
図1に戻る。動作制御部82の動作をより詳細に説明する。動作制御部82は、音声用デコーダ64および描画部60の動作を停止させる。これらがソフトウエアプログラムによって実現されている場合、動作制御部82は、音声用デコーダ64および描画部60を実現するモジュールへのデータの出力を停止する。また、音声用デコーダ64および描画部60において、メモリなどの必要なリソースが確保されている場合、動作制御部82は、それを解放する。音声用デコーダ64および描画部60がソフトウエアプログラムとハードウエアとの組合せによって実現されている場合、動作制御部82は、音声用デコーダ64および描画部60を実現するモジュールへのデータの出力を停止し、さらに、これらのみに使用されるハードウエアを停止することによって、電源供給を停止する。ここで、音声用デコーダ64を停止する理由は、音声データがAACのLCプロファイルに対応しているからである。前述のごとく、AACは、1フレームを単位にしてデコードを行っており、デコードには近傍のフレームを使用しない。そのため、視聴を再開する場合、音声が出力されるまでの遅延を小さくできる。描画部60も同様の理由によって動作を停止される。
第1期間が、映像用デコーダ58を停止させるまでのしきい値に到達した場合の処理を説明する。動作制御部82は、計測部80からのタイマー割り込みによって、しきい値に到達したことを検出する。タイマー割り込みを設定する値、すなわちしきい値は、通話が開始される際に設定される。タイマー割り込みを検出した場合、動作制御部82は、映像用デコーダ58を停止する。映像用デコーダ58がソフトウエアプログラムによって実現されている場合、モジュールへのデータの出力を停止する。また、映像用デコーダ58において、メモリなどの必要なリソースが確保されている場合、動作制御部82は、それを解放する。映像用デコーダ58が、ソフトウエアプログラムとハードウエアとの組合せによって実現されている場合、動作制御部82は、モジュールへのデータの出力を停止し、さらに、映像用デコーダ58のみに使用されるハードウエアを停止することによって、電源供給を停止する。
前述のごとく、映像データは、MPEGに対応している。MPEGにおいては、所定のフレームを復号するために、近接のフレームを使用する。すなわち、Iフレームと呼ばれるフレームであれば、フレーム単独での復号が可能であるが、Pフレームと呼ばれるフレームでは、近接のフレームを使用する。Pフレームは、近接のフレームとの差分情報のみを有しているためである。デジタルテレビジョン放送では、一般的に、Iフレームが1秒間に1フレーム配置される。そのため、15フレーム/秒の映像データであれば、残りの14フレームがPフレームとなる。その結果、映像用デコーダ58を再起動し、動画の出力を再開するには最大1秒間も必要になる。
次に、第1期間がさらに経過し、第1期間が、放送受信部42を停止させるまでのしきい値に到達した場合の処理を説明する。タイマー割り込みを検出した場合、動作制御部82は、放送受信部42の動作を停止させる。具体的には、放送受信部42に含まれたチューナなどのハードウエアと、それを制御するソフトウエアプログラムを停止させる。ハードウエアへの電源供給も停止する。放送受信部42を停止すると、通話終了後、番組を再び出力するまでにある程度の期間を要することになる。そのため、動作制御部82は、ユーザに対して、これ以上通話を続けると番組出力の復帰までに時間を要する旨を通知してもよい。その際、図示しない通知部が使用される。通知部は、バイブレータ等によって構成される。すなわち、通知部は、制御部が放送受信部42の動作を停止させる際に、その旨をユーザに通知する。なお、通知部は、出力処理部84の動作を停止する際に、その旨をユーザに通知してもよい。
通話が終了し、番組の出力が再開される際の動作制御部82の動作を説明する。動作制御部82は、図示しない信号線を介して、通信部50から通話が終了した旨を受けつける。動作制御部82は、停止したソフトウエアプログラムおよびハードウエアを再度起動させ、放送受信部42、映像用デコーダ58、音声用デコーダ64によって、番組を出力させる。動作制御部82は、通話が終了した時点において、テレビ視聴を再開するかどうか、ユーザに入力を促し、その結果に応じて、音声用デコーダ64等の動作を再開させてもよい。この場合、ユーザによってテレビ視聴の終了が指示された場合、番組の出力に使用すべきモジュールを停止させ、またそれらのみが使用するハードウエアを停止させることによって、電源供給を停止させる。以上の動作は、放送受信部42、映像用デコーダ58、音声用デコーダ64等を対象にする。なお、テレビ視聴を再開するかどうか、ユーザに入力を促すことは、通話時間がある一定の値、例えば1分間を超えた場合に行ってもよい。
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリのロードされた予約管理機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
以上の構成による通信装置100の動作を説明する。図3は、通信装置100における着信手順を示すフローチャートである。放送受信部42は、番組を受信する。表示制御部62、音声出力制御部66は、映像用デコーダ58、音声用デコーダ64等を介して、番組を出力する(S10)。通信部50が着信を受けつける(S12)。中央制御部52、描画部60は、着信の発信元に相当する電話番号から着信情報を生成する(S14)。表示制御部62は、着信情報を表示する(S16)。通信部50における着信が終了すれば(S18のY)、処理を終了する。一方、通信部50における着信が終了せず(S18のN)、操作部16から通話開始の指示があれば(S20のY)、通信部50は通話処理を開始し、動作制御部82は、番組の出力の停止制御を開始する(S22)。これらについては、以下において詳述する。また、操作部16から通話開始の指示がなければ(S20のN)、ステップ18に戻る。
図4は、通信装置100における番組の出力の停止手順を示すフローチャートである。これは、図3のステップ22に相当する。通信部50が通話処理を開始する際に、動作制御部82は、計測部80から番組の出力期間を受けつける(S40)。当該出力期間が、前述の第2期間に相当する。動作制御部82は、出力期間と図2のデータベースから、しきい値の設定を取得する(S42)。音声用デコーダ64を停止すべき時間が到来すれば(S44のY)、動作制御部82は、音声用デコーダ64を停止させる(S46)。また、映像用デコーダ58を停止すべき時間が到来すれば(S48のY)、動作制御部82は、映像用デコーダ58を停止させる(S50)。さらに、放送受信部42を停止すべき時間が到来すれば(S52のY)、動作制御部82は、放送受信部42を停止させる(S54)。一方、音声用デコーダ64を停止すべき時間が到来せず(S44のN)、あるいは映像用デコーダ58を停止すべき時間が到来せず(S48のN)、あるいは放送受信部42を停止すべき時間が到来しなければ(S52のN)、動作制御部82は、停止手順を終了する。
図5は、通信装置100における番組の出力の再開手順を示すフローチャートである。図5に示したフローチャートは、図3のフローチャートの後段の処理に相当する。計測部80によって計測された通話期間が1分以上であり(S70のY)、ボタン等を介して視聴再開に関する指示を受けつければ(S72のY)、動作制御部82は、停止した部分の動作を再開させる(S74)。一方、ボタン等を介して視聴再開に関する指示を受けつけなければ(S72のN)、動作制御部82は、停止していない部分の動作を停止させる(S76)。また、通話期間が1分以上でなければ(S70のN)、停止した部分の動作を再開させる(S74)。
本発明の実施例によれば、第1期間に応じて、番組の出力端から番組の入力端の方向に段階的に番組に対する処理を停止させるので、第1期間が短ければ、停止されている部分が少なく、迅速に番組を再び出力でき、第1期間が長ければ、停止されている部分が多く、消費電力を低減できる。また、以上の動作によって、消費電力を低減しつつ、番組の出力を再開するまでの時間を短縮できる。また、ユーザが通話を短期間で終了させ、番組の視聴を希望する場合、番組の再開までの遅延時間を短くできる。また、第2期間に応じて、段階的に停止させる期間を調節するので、映像と音声が出力されている期間を考慮しながら制御できる。また、第2期間が長ければ、番組を視聴した期間が長いので、通話終了後に番組の視聴の再開を予想でき、動作を停止させるまでの期間を長くすることによって、番組の再開までの遅延時間を短くできる。
また、第2期間が短ければ、番組を視聴した期間が短いので、通話終了後に番組の視聴の再開を予想できず、動作を停止させるまでの期間を短くすることによって、消費電力を低減できる。また、出力処理部の動作を停止させてから、放送受信部の動作を停止させるので、出力処理部の動作だけを停止している状態から番組の出力を再開すれば、番組が出力されるまでの遅延を短くできる。また、出力処理部の動作だけを停止している状態では、その前段までデータが入力されているので、再開までの遅延時間を短くできる。また、ユーザは、番組を処理するための動作の停止を認識できる。また、音声に対応したフレームは、他のフレームを使用せずに符号化されているので、停止された処理を再開するときの遅延を短くできつつ、音声に対応したフレームに対する動作を先に停止させるので、処理を再開するときに番組の出力までの遅延を短くできる。
また、それに続いて、映像に対応したフレームに対する動作も停止させるので、消費電力を低減できる。また、消費電力を低減することによって、バッテリーを小型化できる。また、バッテリーを小型化することによって、通信装置を小型化できる。また、通話が短時間において終了したときに速やかに番組の視聴を復帰する機能と、通話が長時間継続するときの消費電力の低減を両立できる。また、番組の受信機能を停止する際に、ユーザは通知されるので、速やかに番組の視聴を再開したいと考える場合、通話を終了できる。
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施例において、放送受信部42は、デジタルテレビジョン放送の番組を受信している。しかしながらこれに限らず例えば、放送受信部42は、ラジオ放送の番組を受信してもよい。本変形例によれば、通信装置100は、ラジオ放送を受信する場合にも適用可能になる。つまり、放送されている番組を受信する場合であればよい。
本発明の実施例において、動作制御部82は、音声用デコーダ64、映像用デコーダ58、放送受信部42の順に動作を停止させている。しかしながらこれに限らず例えば、停止させる順番が異なっていてもよい。例えば、音声に対応したフレームが、近接のフレームを使用しながら符号化されており、映像に対応したフレームが、近接のフレームを使用せずに符号化されている場合に、動作制御部82は、映像用デコーダ58を停止させてから、音声用デコーダ64を停止させてもよい。本変形例によれば、音声に対する符号化と、映像に対する符号化として、さまざまな符号化を使用しても、番組の再開を迅速に実行できる。つまり、動作を再開してからの遅延が短くなればよい。
本発明の実施例において、動作制御部82は、動作を段階的に停止させるための期間を予め規定している。しかしながらこれに限らず例えば、通信装置100は、入力部を備えており、ユーザは、入力部に対して、動作制御部82が動作を段階的に停止させる際の期間を入力する。動作制御部82は、動作を段階的に停止させる際に、入力部から入力された期間をもとに、段階的に停止させる期間を調節する。本変形例によれば、入力された期間をもとに、段階的に停止させる期間を調節するので、ユーザの意思に応じて期間を設定できる。つまり、段階的に停止させるためのしきい値が規定されればよい。
本発明の実施例において、動作制御部82は、映像用デコーダ58の動作を停止させている。すなわち、映像フレームに対する処理を停止している。しかしながらこれに限らず例えば、映像フレームに対する処理を部分的に停止してもよい。すなわち、映像フレームは、他のフレームを使用せずに符号化しているフレームも含んでおり、動作制御部82は、音声フレームに対する動作を停止させた後に、映像フレームのうち、他のフレームを使用せずに符号化しているフレーム以外のフレームに対する動作を停止させてもよい。ここで、他のフレームを使用せずに符号化しているフレームは、Iフレームに相当する。本変形例によれば、映像フレームに対する動作を停止させる場合であっても、一部のフレームに対する動作を継続させるので、次のIフレームを受信するまで、直近のIフレームの復号結果を表示できる。また、直近のIフレームの復号結果を表示するので、ユーザに映像の概略を知らせることができる。つまり、部分的であっても動作を停止すればよい。
本発明の実施例において、動作制御部82は、出力処理部84を停止させるためのしきい値を第2期間によって決定する。しかしながらこれに限らず例えば、動作制御部82は、視聴中の番組のジャンルや、通話を行っている相手を条件として、しきい値を決定してもよい。番組のジャンルは、例えば、EGPを利用して取得することができる。ジャンルに応じてしきい値を規定することによって、ジャンルに応じてモジュールの停止時間の切り替えができる。また、通話中の電話番号からアドレス帳を検索することによって、通話を行っている相手の情報を取得できる。判別方法としては、アドレス帳にて電話番号を登録する際、氏名、電話番号以外にグループ名を予め登録する。グループ名に応じたしきい値を用意することによって、グループに応じてモジュールの停止時間の切り替えができる。
10 LCD、 12 内蔵スピーカ、 40 放送用アンテナ、 42 放送受信部、 44 デスクランブラ、 46 DEMUX、 48 通信用アンテナ、 50 通信部、 52 中央制御部、 58 映像用デコーダ、 60 描画部、 62 表示制御部、 64 音声用デコーダ、 66 音声出力制御部、 70 音声出力端子接続部、 80 計測部、 82 動作制御部、 84 出力処理部、 100 通信装置。