JP2006216654A - 有機半導体膜の形成方法および有機薄膜トランジスタの製造方法 - Google Patents

有機半導体膜の形成方法および有機薄膜トランジスタの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 塗布法によってキャリア移動度が高い半導体層を形成できる有機半導体膜の形成方法を提供することであり、また、有機半導体膜の繰り返し使用(測定)時の特性変動が抑制され、又ゲート電圧の閾値が低下した、有機薄膜トランジスタを売ることの出来る有機半導体膜の形成方法を提供することであり、更にはこれらの方法により形成された有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタを提供することにある。
【解決手段】 有機半導体材料溶液を基板上に供給、塗布して、乾燥させることにより、有機半導体材料薄膜を基板上に形成する有機半導体膜の形成方法において、
有機半導体材料溶液の塗布時に、不溶物を含む有機半導体材料溶液を用い、かつ、塗布後、形成される有機半導体膜に熱処理を施すことを特徴とする有機半導体膜の形成方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、キャリア移動度が高い有機半導体薄膜の形成方法に関し、また該有機半導体薄膜を有する有機薄膜トランジスタの製造方法に関する。
近年、有機半導体を半導体チャネルとして使用する有機薄膜トランジスタが種々検討されている。有機半導体は無機半導体に比べて加工が容易であり、プラスチック支持体との親和性が高いので薄層デバイスとしての魅力がある。
有機半導体薄膜の形成方法としては、蒸着による方法が代表的であるが、材料の特性により種々の方法が用いられる。その中でも塗布或いは溶液、液体を基板に適用する常圧プロセス(ウエットプロセス)により蒸着等よりも容易に、キャリア移動度の大きい有機半導体薄膜を得ようとする試みが多くなされている。
例えば、特許文献1においては、溶液積層により有機半導体薄膜を得る試みの中で、配向膜による有機半導体ポリマー配列の強化が試みられている。また、非特許文献1においては、移動度の大きいチオフェンポリマー溶液を用い塗布、溶媒を乾燥させることで、キャリア移動度の大きい有機半導体薄膜又有機半導体層を形成している。
しかしながら、有機半導体層の形成は、その結晶或いは構造体の、例えばπ−スタック等の配列等によりキャリア移動度が決まるため、単に有機半導体溶液を塗布し、溶媒を乾燥させる方法では得られる半導体層の移動度が未だ低い問題がある。更に繰り返し測定時の特性変動や、ゲート電圧の閾値が高いといった問題も同時に指摘されている。
国際公開第01/47043号パンフレット JACS 2004,126,3378
従って、本発明の目的は、塗布法によってキャリア移動度が高い半導体層を形成できる有機半導体膜の形成方法を提供することであり、また、有機半導体膜の繰り返し使用(測定)時の特性変動が抑制され、又ゲート電圧の閾値が低下した、有機薄膜トランジスタを売ることの出来る有機半導体膜の形成方法を提供することであり、更にはこれらの方法により形成された有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタを提供することにある。
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
(請求項1)
有機半導体材料溶液を基板上に供給、塗布して、乾燥させることにより、有機半導体材料薄膜を基板上に形成する有機半導体膜の形成方法において、
有機半導体材料溶液の塗布時に、不溶物を含む有機半導体材料溶液を用い、かつ、塗布後、形成される有機半導体膜に熱処理を施すことを特徴とする有機半導体膜の形成方法。
(請求項2)
前記不溶物が前記有機半導体材料溶液を構成する有機溶媒に実質的に不溶な有機半導体材料であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体膜の形成方法。
(請求項3)
前記熱処理が有機半導体材料の融点以下の温度で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機半導体膜の形成方法。
(請求項4)
前記有機半導体材料の融点が50℃以上、200℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体膜の形成方法。
(請求項5)
前記有機半導体材料の重量平均分子量が5000以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体膜の形成方法。
(請求項6)
前記有機半導体材料がアルキルチオフェンを含有することを特徴とする請求項4又は5に記載の有機半導体膜の形成方法。
(請求項7)
有機半導体材料溶液を供給、塗布して、半導体膜を形成する前記基板の表面の水に対する接触角が80℃以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機半導体膜の形成方法。
(請求項8)
請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機半導体膜の形成方法により有機半導体層を形成することを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
本発明により、塗布法によって、キャリア移動度が高い有機半導体膜を形成でき、また、この有機半導体膜を用いることで、繰り返し使用(測定)によっても特性が変動することがなく、ゲート電圧の閾値が低下した、キャリア移動度の高い有機薄膜トランジスタが得られる。
以下本発明を実施するための最良の形態について詳しく説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
本発明の有機半導体膜の形成方法により良好に駆動する有機薄膜トランジスタを提供することができる。
有機薄膜トランジスタは、支持体上に有機半導体チャネル(活性層)で連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上に先ずゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。本発明に係わる有機半導体膜の形成方法により得られる有機方法有機薄膜トランジスタはこれらトップゲート型またボトムゲート型のいずれでもよく、またその形態を問わない。
また、本発明のプロセスで用いられる前記薄膜トランジスタにおける有機半導体チャネル(活性層)を構成する有機半導体膜は、半導体として機能するものであれば、どのような有機化合物を選択してもよいが、低分子化合物の場合には分子量が5000以下のものであることが好ましい。
低分子量化合物としては、代表的には、ペンタセン等の化合物があり、特に例えば、WO03/16599号、WO03/28125号、USP6,690,029号、特開2004−107216号等に記載の置換基をもったペンタセン類、US2003−136964号等に記載のペンタセンプレカーサ類がある。
また、前記分子量以下である低分子の有機半導体材料としては、分子構造中にヘテロ環を2つ以上含む化合物が好ましく、特に前記ヘテロ環がチオフェン環である化合物が好ましい化合物として挙げられる。該チオフェン環はアルキル基などの置換基を有していても、また無置換のものでもよいが、分子内に置換基、特にアルキル基を有するチオフェン環が含まれることが好ましく、置換基を有するチオフェン環と無置換のチオフェン環の両者が含まれることがより好ましい。更に、前記チオフェン環が2つ以上に連結していることが好ましく、連結するチオフェン環の数は2〜10が好ましい。
本発明に係わる有機半導体材料として、また、平均分子量5000以下の分子量を有するオリゴマーは好ましい化合物である。本発明において好ましく用いることのできるオリゴマーとしてはチオフェンオリゴマーが挙げられる。
本発明において好ましく用いられるチオフェンオリゴマーとしては、置換基を有するチオフェン環繰り返し単位と、無置換のチオフェン環繰り返し単位が、各々少なくとも2つ以上連続している部分構造を有するチオフェンオリゴマーを含み、且つ、該チオフェンオリゴマーに含まれるチオフェン環の環数が8〜40であるものである。前記チオフェン環の環数としては、8〜20の範囲が好ましい。更に好ましくは、チオフェンオリゴマーが下記一般式(1)で表される部分構造を有することである。
Figure 2006216654
式中、Rは置換基を表す。
《一般式(1)で表されるチオフェンオリゴマー》
前記一般式(1)で表されるチオフェンオリゴマーについて説明する。
一般式(1)において、Rで表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシル基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。
これらの置換基は上記の置換基によって更に置換されていても、複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
中でも好ましい置換基は、アルキル基であり、更に好ましくは、炭素原子数が2〜20のアルキル基であり、特に好ましくは、炭素原子数6〜12のアルキル基である。
《チオフェンオリゴマーの末端基》
本発明に用いられるチオフェンオリゴマーの末端基について説明する。
本発明に用いられるチオフェンオリゴマーの末端基は、チエニル基をもたないことが好ましく、また、前記末端基として好ましい基としては、アリール基(例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等が挙げられる。
《チオフェンオリゴマーの繰り返し単位の立体構造的特性》
本発明に用いられるチオフェンオリゴマーは、構造中に、Head−to−Head構造を持たないことが好ましく、それに加えて、更に好ましくは、前記構造中に、Head−to−Tail構造、または、Tail−to−Tail構造を有することが好ましい。
本発明に係るHead−to−Head構造、Head−to−Tail構造、Tail−to−Tail構造については、例えば、『π電子系有機固体』(1998年、学会出版センター発行、日本化学界編)27〜32頁、Adv.Mater.1998,10,No.2,93〜116頁等により参照出来るが、ここで、具体的に各々の構造的特徴を下記に示す。
Figure 2006216654
Figure 2006216654
Figure 2006216654
ここにおいてRは前記一般式(1)におけるRと同義である。
以下、本発明に用いられるこれらチオフェンオリゴマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2006216654
Figure 2006216654
Figure 2006216654
Figure 2006216654
これらのチオフェンオリゴマーの製造法は、本発明者等による特願2004−172317号(2004年6月10日出願)に記載されている。
塗布法による有機半導体膜の形成は、前記有機半導体材料を溶媒に溶解し、これを例えば、酸化膜付きシリコンウエハー等の基板上に供給、塗布、乾燥して有機半導体層を得るものであるが、本発明においては、有機半導体材料の溶解液(溶液)の塗布時に、有機半導体材料溶液中に不溶物を含む状態で塗布するものである。従って、この不溶物を含む状態(好ましくは、微粒子でかつ分散された状態であることが好ましい)で、基板上に塗布された有機半導体材料は、溶剤の揮発と共に乾燥される。乾燥後に基板上に形成された有機半導体膜が、次いで熱処理を受けると、前記不溶物が、有機半導体膜中において有機半導体材料分子の配列或いは結晶化等の構造化をその不溶物の表面を起点として引き起こすことで、有機半導体材料分子のπ−スタック等、構造化を大きく促進することを見いだした。
これらの有機半導体材料膜の構造化は、不溶物を起点とした一定の領域(ドメイン)で起こり、こういった均一な構造(配向)を有するキャリア移動度が高い有機半導体材料構造が不溶物を起点として多数隣接して形成され、有機半導体膜は殆ど全面がこの様な均一な構造を有する複数のドメインで覆われる。
これらのドメインの広がりは、溶液中に混入させる不溶物およびその濃度、又、熱処理等の条件を適宜、最適化することで、これを塗布有機半導体材料膜を形成し、熱処理したときに、有機半導体層として基板上で用いるに必要な所定の大きさをもたせることができ、これにより半導体層中にキャリア移動度の高い均一な有機半導体材料ドメインが多数、隣接して全面に形成された有機半導体膜を得ることが出来る。溶液中に混入させる不溶物の濃度としては10-4〜10個/μm3、好ましくは10-3〜10-1個/μm3である。また、これにより形成されるドメインの大きさは、有機薄膜トランジスタのチャネル長、ソース、ドレイン電極幅等により変わるが少なくとも1μm2以上の面積を有することが好ましく、勿論全面に均一なドメインが形成されることが好ましい。
不溶物としては、有機半導体材料分子の配向を誘発するような、何らかの配向面を表面に有する不溶物或いは固形物であればよく、固体材料の破断面等、構造化が露わな表面を有する不溶物が好ましい。
従って、この様な固体材料であれば、無機材料、有機材料いずれでもよく、通常、有機半導体材料の溶解に用いられる溶媒中において不活性な材料であればよい。
また、微粒子が好ましく、無機粒子、例えば、カーボン粒子、金属微粒子、金属酸化物粒子等好ましい。また、有機材料としては繊維、又合成ポリマーや天然樹脂等の微粒子等が好ましい。
前記のようにトランジスタを構成するのに必要な大きさの前記構造化領域(ドメイン)を得るために、微粒子としては、粒径が1nm〜100μmの範囲の微粒子が好ましく、また有効に作用するためにはこれらの粒子が、前記の通り10-4〜10個/μm3、好ましくは10-3〜10-1個/μm3の範囲で有機半導体材料溶液中に含有される。また、プロセス中で必ずしも個数でカウントすることが現実的でない、例えば、有機材料の場合もあり、その場合、有機半導体材料溶液中に、1×10-7〜1×10-3質量%の範囲で、好ましくは、1×10-6〜1×10-3質量%の範囲で分散された状態で含有される。これにより、前記構造化領域として、前記の1μm2以上の面積を有するドメインが隣接して有機半導体膜全面を覆うように形成される。
なお、粒子径(粒径)は、光散乱法による平均粒子径であり、堀場製作所製動的光散乱方式の粒度分布計LB−500を用い測定できる。
無機材料としては、カーボン、金属、金属塩、金属酸化物、窒化物等の粒子が代表的であるが、化学的に不活性なものであれば他の材料でも構わない。
前記カーボン粒子としては、活性炭等があるが、表面の構造化(配向)の度合いが大きいカーボンナノチューブ、又フラーレン類等が好ましい。
金属微粒子としては、金、白金等の化学的に不活性な金属微粒子が好ましい。
また、金属酸化物としては、やはり、有機半導体材料に対し化学的に不活性なシリカ、酸化チタン等の誘電体(絶縁体)微粒子が挙げられる。
また、ある配列構造を有する表面を有する不溶物として不活性であれば、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属等、又重金属塩等でもよく、有機半導体材料とのキレート形成等、相互作用がない、前記同様に化学的に不活性なものであればよい。
又、有機材料としては、合成、天然の樹脂やポリマーが挙げられ、やはり有機半導体材料を溶解する溶媒に不溶の樹脂やポリマーが挙げられる。
合成、天然の樹脂やポリマーを微粒子状に形成するには、合成ポリマーの場合、乳化重合、又懸濁重合等により得ることができ、また天然、合成の種々のポリマー材料は、解砕または粉砕して微粒子状としてもよい。
例えば、ポリエチレン、ポリスチレン等の粒子についても重合度等の調整により有機半導体材料を溶解する溶媒中で不溶のものであれば使用可能である。
又、ポリマーであるが天然繊維、合成繊維等のフラグメント(フラグメントでなくともよいが)等不溶物としてその形状は問わない。好ましい粒径もその円換算粒径である。
更に、有機材料の結晶も表面の配向があるため、溶剤に不溶であり、化学的に不活性であれば、有機半導体材料溶液中に混合して用いることができる。有機半導体材料の配向或いは構造化に有利なものとしては、結晶構造が類似の有機材料が好ましい。
従って、前記有機半導体材料溶液を構成する有機溶媒に実質的に不溶な有機半導体材料は表面の構造が類似であるため、不溶物として好ましいものである。
これらのうちでは、更に同じ(結晶)構造を有する有機半導体材料が好ましく、特に同様の構造を有する同一の半導体材料同士が好ましい。
従って、溶液中の飽和溶解度を超えて溶解しない有機半導体材料が、結晶として溶液中に分散した状態で不溶物を構成している場合は、不溶物である未溶解の結晶が種結晶となり同一の結晶構造を有するドメインを有機半導体材料膜中に均一に形成するため特に好ましいものである。
実質的に不溶であるとは、前記10-4個/μm3以上、好ましくは10-3個/μm3以上で結晶が析出していることである。
要するに、不溶物、かつ固形物が一定量混入している場合に有機半導体材料の結晶化、配向等、構造化が起こりやすく好ましい。
これらの有機半導体膜は、有機薄膜トランジスタを構成する場合、ゲート絶縁膜(例えばシリコンの熱酸化膜)等の疎水性の高い膜を有する基板上に形成されるため、前記有機半導体材料を溶解する溶媒としては、基板への親和性が高いものが好ましい。基板への親和性が高い溶媒としては、脂肪族炭化水素が好適である。トルエン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素、また、シクロヘキサン、シクロペンタンなどの環状脂肪族炭化水素、更に例えばクロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテルやジイソプロピルエーテル等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフランやジオキサンなどの環状エーテル、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類等用いられる有機半導体材料の種類等により、又、これらの溶媒を混合して用いてもよい。有機半導体材料膜を形成する基板材料により最適なものを選んで用いることができる。
その他、有機半導体材料の溶解の促進のため有機半導体材料に対する溶解性の高い他の溶剤を用いてもよい、基板上に適用したときに、溶液のはじきを起こさない範囲で用いることができる。
溶媒中における有機半導体材料の含有量は、用いる溶媒の種類、また、後述する有機半導体材料等の具体的選択によって変わってくるが、塗布によりこれ等液状材料を基板上に適用して、薄膜を形成させるためには、該材料中において有機半導体材料は0.01〜10.0質量%、好ましくは0.1〜5.0質量%の範囲で溶解していることが好ましい。濃度が高すぎると、基板上の均一な延展ができない、また低すぎると、基板上での液切れによる塗膜のピンホール等が生じやすい。
また、この有機半導体材料溶液中には、前記のように不溶物が含有されており、例えば前記の微粒子状不溶物が前記の範囲で分散、含有されていることが好ましい。
本発明による前記不溶物を含有する有機半導体材料溶液は、キャストコート、スピンコート、印刷、インクジェット法、アブレーション法等によって基板上に設置することができる。
本発明において、有機半導体材料膜を形成する基板としては、後述するがトップゲート型、また、ボトムゲート型等、その作製手順により異なってくるが、特にボトムゲート型有機薄膜トランジスタの製造においては、ゲート電極上に形成されたゲート絶縁膜(ポリシリコン基板上に形成される熱酸化膜)等において、水に対する接触角が70度以上、好ましくは80度以上になるもが好ましい。これら水に対する接触角が高いゲート絶縁膜をゲート電極上に得るために、ゲート絶縁膜に予め表面処理を施してもよい。この様な処理として、シランカップリング剤による処理が挙げられる。シランカップリング剤としては、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン等が好ましい例としてあげられるが、本発明はこれらに限らない。
また、表面処理として、自己配列型の薄膜を形成するものも好ましく、一般的によく知られたラビング等の配向処理してもかまわない。
尚、本発明において前記接触角は、有機半導体材料含有液状材料を適用する基板表面の純水に対する接触角を云い、接触角計(CA−DT・A型:協和界面科学社製)を用いて20℃、50%RHの環境下で測定するものである。
接触角により、基板表面における疎水性の度合を水の接触角による測定によって知ることが出来る。
このようにして形成される有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、得られた有機薄膜トランジスタ(TFT)の特性は、半導体層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、半導体材料により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
また、縮合多環芳香族化合物を有機半導体材料とする場合等、有機半導体層中には、有機半導体材料のみではなく、たとえば、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基などの官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレンおよびテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体などのように電子を受容するアクセプターとなる材料や、たとえばアミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基などの官能基を有する材料、フェニレンジアミンなどの置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾールおよびその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体などのように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させ、いわゆるドーピング処理を行ってもよい。
ドーピングが施された有機半導体膜の有機半導体材料分子の配向等の構造化においても、本発明に係わる有機半導体膜の形成方法は同様に有用である。
本発明においては、有機半導体膜を例えば塗布により形成した後、溶媒を蒸発させ、乾燥されることで固形の膜が形成されるが、次いで、熱処理を行うことにより、前記の不溶物を起点とした結晶化、配向等構造化したドメインの形成が促進され、この様なキャリア移動度の高い所定の大きさを有するドメインの形成が有機半導体材料膜表面全体に拡大する。
次いで、本発明の熱処理について詳述する。
本発明で用いられる熱処理としては、用いる有機半導体材料によって異なるものの、有機半導体材料の融点以下の温度で5秒から1週間、好ましくは10秒から1日、さらに好ましくは10秒から1時間の一定の時間、形成された有機半導体膜を熱に晒すことが好ましい。融点は、融点測定器或いは示差走査熱分析等により測定されるものである。
融点以上の温度での熱処理は、有機半導体材料を融解させるので、形成された配向或いは結晶化した膜が溶融状態となり、破壊されるからである。また余りに高い温度に晒されると、有機半導体材料自体の分解や変質も起こるため好ましくない。
これらの熱処理は、窒素或いはヘリウム、アルゴン等の不活性ガス中で行うのが好ましい。又、これら不活性気体の圧力としては0.7×102〜1.3×102kPaの範囲、即ち大気圧近傍が好ましい。
又、本発明の熱処理は、有機半導体材料の発熱点以上の温度で行うのが好ましい。
低分子化合物或いは前記チオフェンオリゴマー等においては、有機半導体材料は、示差走査熱分析(DSC)測定による発熱点(発熱ピーク)を有するものがある。因みに融点は吸熱点(吸熱ピーク)として観測される。チオフェンオリゴマー、例えば化合物例〈1〉の示差走査熱分析(DSC)測定結果を図1に示した。これは、示差走査熱分析装置(DSC)はエスエスアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220を使用し、昇温速度10度/分で測定したものである。
図1において、発熱ピークは、半導体材料の放熱に対応するものであり、例えば分子そのもの或いは分子間の相互作用の結果、より安定な形態に移行することで過剰なエネルギーを放出するものと考えられ、一般には、結晶化或いは結晶構造の変化や、何らかの構造化(πスタックの増大等)がこれらのエネルギーの放出を起こすと考えられる。
従って、この発熱点以上の温度で熱処理を行うことが、前記結晶化或いは結晶構造の変化や、何らかの構造化(πスタックの増大等)を起こさせる上で好ましい。
又、融点は、吸熱ピークで観測され、構造化された配列が崩壊、例えば結晶の融解に対応する温度であり、融解熱が必要である。
DSC測定において、発熱点Aは、加熱時のベースラインの直線部から、発熱ピークの直線部と、ベースラインとの交点に対応する温度をその発熱開始温度と定義する(図1)。従って、立ち上がりが曲線の場合には、その変曲点における接線とベースラインとの交点となる。
因みに、吸熱点Bについても、加熱時のベースラインからの立ち上がりの直線部分とベースラインとの交点に対応する温度(吸熱開始温度)と定義する(図1)。
例えば前記チオフェンオリゴマーの場合(図1)、発熱点31.9℃、吸熱点79.6℃である。
有機半導体材料から形成された膜は、前記不溶物を含有しており、一旦ランダムな分子配列をもつ構造(アモルファス)を有する領域が多い膜として形成したとしても、その後の熱処理特に、融点以下の温度で、好ましくは前記発熱点以上の温度において熱処理を所定時間行うことにより、前記不溶物を起点とした、分子配向や例えばπスタックの形成等による構造化、また該構造化が起こる領域が増大する。
この様に、例えば塗布により形成された前記不溶物を一定の密度で含有させた有機半導体材料膜に、所定の熱処理を行うことで、単に塗布による形成では達成できない、有機半導体材料膜の全体での分子配向、結晶化等の構造化領域の形成が達成される。これによる結晶化領域の大きさ(サイズ)の向上、または、結晶化領域の数の増加により高いキャリア移動度をもつ半導体膜の形成が可能であり、これにより有機薄膜トランジスタにおけるFET特性が向上するものと考えられる。
基板上への有機半導体薄膜の形成は、勿論、塗布に限られず、インクジェット、印刷法等種々の方法で行うことができる。
また、前記有機半導体材料の融点は、固体の配向した膜を形成でき、かつ前記熱処理によって、分解等の起こらない材料であることが好ましいことから50℃以上、200℃以下の範囲が好ましい。
本発明において、不溶物を半導体材料膜中に含有させ、それに続く熱処理によって、配列の強化された、構造化された有機半導体材料薄膜を得るためには、これらの半導体材料として、前記の範囲の融点をもち、かつ、前記発熱点を有し、構造化が融点以下の温度において、起こりやすい、前記重量平均分子量で5000以下であるアルキルチオフェンオリゴマーを用いることが、好ましい。
本発明の好ましい態様の一つである前記ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを例にとれば、有機薄膜トランジスタは、支持体上にゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層、ソース電極、ドレイン電極がそれぞれ最適に配置されることで構成されるものである。
従って、例えば、支持体上に、ゲート電極を形成した後、ゲート絶縁膜を形成し、ゲート絶縁膜上に前記の方法にて、活性層(有機半導体層(薄膜))を形成した後、それぞれ、ソース、ドレイン電極を形成することにより本発明に係わる有機薄膜トランジスタは形成される。
また、例えば、ゲート絶縁膜形成後、ゲート絶縁膜上にソース、ドレイン電極パターンを形成し、該ソース、ドレイン電極間に、有機半導体チャネルを、パターニングにより形成してもよい。
この様に支持体上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、活性層(有機半導体層)、ソース電極、ドレイン電極を、それぞれ必要な場合には適宜パターニングし、最適に配置することで、本発明に係わる有機薄膜トランジスタは得られる。
以下、本発明の製造方法および該製造方法により得られる有機薄膜トランジスタの活性層(有機半導体層(薄膜))以外の、有機薄膜トランジスタを構成するその他の構成要素について説明する。
本発明において、前記ソース電極、ドレイン電極およびゲート電極を形成する材料は導電性材料であれば特に限定されず、種々の金属材料を用いることができるが、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられるが、特に、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITOおよび炭素等が好ましい。
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅などの金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法等がある。
電極の形成方法としては、また導電性微粒子分散液、また、導電性ポリマーの溶液あるいは分散液を、直接インクジェット法によりパターニングする方法、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成する方法がある。更に導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペーストなどを凸版、凹版、平版、スクリーン印刷などの印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
あるいはドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体なども好適に用いられる。中でも半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましい。
導電性微粒子の金属材料(金属微粒子)としては、白金、金、銀、コバルト、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、亜鉛等を用いることができるが、特に仕事関数が4.5eV以上の白金、金、銀、銅、コバルト、クロム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、モリブデン、タングステンが好ましい。
このような金属微粒子分散物の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法などの物理的生成法や、コロイド法、共沈法などの、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられるが、好ましくは、特開平11−76800号、同11−80647号、同11−319538号、特開2000−239853等に示されたコロイド法、特開2001−254185、同2001−53028、同2001−35255、同2000−124157、同2000−123634などに記載されたガス中蒸発法により製造された金属微粒子分散物である。
分散される金属微粒子の平均粒径としては、20nm以下であることが好ましい。
また、金属微粒子分散物に導電性ポリマーを含有させることが好ましく、これをパターニングして押圧、加熱等によりソース電極、ドレイン電極を形成すれば、導電性ポリマーにより有機半導体層とのオーミック接触を可能とできる。即ち金属微粒子の表面に、導電性ポリマーを介在させて、半導体への接触抵抗を低減させ、かつ、金属微粒子を加熱融着させることで、さらに本発明の効果を高めることができる。
導電性ポリマーとしては、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマーを用いることが好ましく、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体などが好適に用いられる。
金属微粒子の含有量は導電性ポリマーに対する質量比で0.00001〜0.1が好ましい。この量を超えると金属微粒子の融着が阻害されることがある。
これらの金属微粒子分散物で電極を形成する場合、ソース電極、ドレイン電極を形成した後、加熱により前記の金属微粒子を熱融着させることが好ましい。また電極形成時に、概ね、1〜50000Pa、さらに1000〜10000Pa程度の押圧をかけ、融着を促進してもよい。
上記金属微粒子分散物を用いて電極様にパターニングする方法として、直接インクジェット法によりパターニングする場合、インクジェットヘッドの吐出方式としては、ピエゾ方式、バブルジェット(登録商標)方式等のオンデマンド型や静電吸引方式などの連続噴射型のインクジェット法等公知の方法を使用することができる。
加熱また加圧する方法としては、加熱ラミネータなどに用いられる方法をはじめ、公知の方法を用いることができる。
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に、比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。
無機酸化物としては酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウムなどが挙げられる。れらの内好ましいのは、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化珪素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法(大気圧プラズマCVD法)、ディップコート法、キャスト法、リールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェットなどのパターニングによる方法などのウエットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
ウエットプロセスは、無機酸化物の微粒子を、任意の有機溶剤或いは水に必要に応じて界面活性剤等の分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えばアルコキシド体の溶液を塗布乾燥する所謂ゾルゲル法が用いられる。
これらのうち好ましいのは大気圧プラズマ法とゾルゲル法である。
大気圧プラズマ法による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理で、その方法については特開平11−61406号、同11−133205号、特開2000−121804、同2000−147209、同2000−185362等に記載されている。これによって高機能性の薄膜を、生産性高く形成することが出来る。
又、これらの絶縁膜には予め表面処理を施してもよい。これらの処理としては前記の様にシランカップリング剤による処理、ラビング等の配向処理が挙げられる。
又、有機化合物皮膜の形成法としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、或いはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることもできる。
有機化合物皮膜の形成法としては前記ウエットプロセスが好ましい。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することが出来る。又これら絶縁膜の膜厚としては、一般に50nm〜3μm、好ましくは、100nm〜1μmである。
また支持体はガラスやフレキシブルな樹脂製シートで構成され、例えばプラスチックフィルムをシートとして用いることができる。前記プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。この様に、プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基板を用いる場合に比べて軽量化を図ることが出来、可搬性を高めることができると共に、衝撃に対する耐性を向上できる。
図2に本発明に係る有機薄膜トランジスタ(TFT)の構成例を示す。
同図(a)は、ガラス支持体6上に、マスクを用い勿論金等を蒸着によりパターン形成し、または金属微粒子を含む層のパターンを形成した後、次に金属微粒子を含む層を加熱加圧して融着させてもよいが、ソース電極2、ドレイン電極3を形成し、その上に有機半導体材料層1を形成し、その上にゲート絶縁層5を形成し、更にその上にゲート電極4を形成して有機TFTを形成したものである。
図2(b)、(c)に、トップゲート型の有機薄膜トランジスタの他の構成例を示す。
また、図2(d)〜(f)はボトムゲート型の有機TFTの構成例を示す。同図(d)は支持体6上にゲート電極4を形成した後、ゲート絶縁層5を形成し、その上にソース電極2、ドレイン電極3を形成して、該ソース、ドレイン電極間のゲート絶縁層上に有機半導体材料層1を形成してボトムゲート型の有機TFTを形成したものである。同様に他の構成例を(e)、(f)に示す。なかでも同図(f)は支持体6上にゲート電極4を形成した後、ゲート絶縁層5を形成し、その上に有機半導体材料層1を形成した後、更にソース電極2、ドレイン電極3を形成して有機TFTを形成したものである。
図3は、前記有機薄膜トランジスタを用いて、液晶、電気泳動素子等の出力素子様に構成されたTFTシートの概略等価回路図の1例である。
TFTシート10はマトリクス配置された多数の有機TFT11を有する。7は各有機TFT11のゲートバスラインであり、8は各有機TFT11のソースバスラインである。各有機TFT11のソース電極には、例えば液晶、電気泳動素子等の出力素子12が接続され、表示装置における画素を構成する。画素電極は光センサの入力電極として用いてもよい。図示の例では、出力素子として液晶が、抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。13は蓄積コンデンサ、14は垂直駆動回路、15は水平駆動回路である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
比較例1
比抵抗0.02Ω・cmのn型Siウエハーに厚さ200nmの熱酸化膜を形成した後、オクタデシルトリクロロシランのトルエン溶液(1質量%)に10分間浸漬した後、トルエンですすぎ、乾燥させることで熱酸化膜の表面処理を行い、ゲート絶縁膜とした。
次に、有機半導体材料として例示化合物〈9〉を用いて半導体層を形成した。この半導体材料は131℃に融点を示す。
例示化合物〈9〉の0.1質量%クロロホルム溶液を調製し、この溶液を窒素ガスでバブリングすることで、溶液中の溶存酸素を除去し、窒素ガス雰囲気中で前記酸化珪素皮膜の表面にアプリケータを用いて塗布し、室温で減圧乾燥させた。このとき半導体層の膜厚は20nmであった。
更に、この膜の表面にマスクを用いて金を蒸着し、ソース電極およびドレイン電極を形成した。以上によりチャネル長L=30μm、チャネル幅W=1mmの有機トランジスタを作製した。このトランジスタは、pチャネルチャネルエンハンス型FETとして良好に動作し、飽和領域の移動度は、0.03cm2/V・sであった。
比較例2
比較例1のトランジスタを、窒素ガス雰囲気下で、10℃/minの速度で昇温し、95℃で5時間加熱した後、10℃/minの速度で30℃まで冷却させた。その後FET特性を測定した。
実施例1
比較例1において、半導体材料溶液を以下のように調製し、同様の方法にてトランジスタを作製した。
例示化合物〈9〉の0.1質量%のシクロヘキサン溶液を調製し、60℃で加熱溶解させた。その後ゆっくり冷却させた。すると室温で飽和量以上の溶質が析出した(平均粒径130nm)。この液を超音波を用いて均一に分散させ、比較例1の要領でトランジスタを作製し、FET特性を測定した。
実施例2
実施例1の要領で作製したトランジスタを、比較例2の要領で熱処理し、FET特性を測定した。
実施例3
実施例2において、半導体材料溶液として、以下のように調製した分散液を用いた。半導体材料例示化合物〈9〉の0.1質量%のクロロホルム溶液を調製し、この液を窒素ガスでバブリングすることで、溶液中の溶存酸素を除去した。この溶液のカーボンナノチューブ(平均粒径1.5nm)を1×10-4個/μm3の濃度で超音波を用いて分散させた。実施例2の要領でトランジスタを作製し、熱処理して、有機薄膜トランジスタを作製し、FET特性を測定した。
実施例4
実施例2において、半導体材料溶液として以下のように調製した分散液を用いた。即ち、半導体材料例示化合物〈9〉の0.1質量%のクロロホルム溶液を調製し、この液を窒素ガスでバブリングすることで、溶液中の溶存酸素を除去した。この溶液にセクシチオフェン(平均粒径10nm)を、前記半導体材料例示化合物〈9〉の1×10-5質量%加え、超音波を用いて分散させた。実施例2の要領でトランジスタを作製し、熱処理して、有機薄膜トランジスタを作製し、FET特性を測定した。
実施例5
実施例2において、半導体材料溶液として以下のように調製した分散液を用いた。半導体材料例示化合物〈9〉の0.1質量%のクロロホルム溶液を調製し、この液を窒素ガスでバブリングすることで、溶液中の溶存酸素を除去した。この溶液にSiO2の微粒子(平均粒径310nm)を、1×10-4個/μm3の濃度で加え、超音波を用いて分散させた。実施例2の要領でトランジスタを作製し、熱処理して、有機薄膜トランジスタを作製し、FET特性を測定した。
各比較例、実施例で得られた有機薄膜トランジスタについて、以下の様に、キャリア移動度、ゲート電圧の閾値、閾値シフトについて測定した。
《キャリア移動度》
各有機薄膜トランジスタのI−V特性の飽和領域から、キャリア移動度(cm2/V・s)を求めた。
《閾値》
各有機薄膜トランジスタについてFET特性として、次にゲート電圧を0〜30V迄変化させたときのドレイン電流変化から、ゲート電圧の閾値をみた(V)。
《閾値シフト》
同一素子の電極に対して、連続して4回FET特性を測定したときの第1回目から4回目測定の閾値のシフト(V)を指す。
Figure 2006216654
以上のように、本発明方法によって作成した半導体膜はキャリア移動度が高く、有機薄膜トランジスタとして、ゲート電圧の閾値が低く、又繰り返しFET特性を測定したときに特性変動がみられない。これにより安定に有機半導体チャネルが形成されていることが判る。
示差走査熱分析(DSC)の一例を示す図である。 本発明に係る有機薄膜トランジスタの構成例を示す概略図である。 有機TFTシートの概略等価回路図の1例を示す概略図である。
符号の説明
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 絶縁層
6 支持体
7 ゲートバスライン
8 ソースバスライン
10 有機TFTシート
11 有機TFT
12 出力素子
13 蓄積コンデンサ
14 垂直駆動回路
15 水平駆動回路

Claims (8)

  1. 有機半導体材料溶液を基板上に供給、塗布して、乾燥させることにより、有機半導体材料薄膜を基板上に形成する有機半導体膜の形成方法において、
    有機半導体材料溶液の塗布時に、不溶物を含む有機半導体材料溶液を用い、かつ、塗布後、形成される有機半導体膜に熱処理を施すことを特徴とする有機半導体膜の形成方法。
  2. 前記不溶物が前記有機半導体材料溶液を構成する有機溶媒に実質的に不溶な有機半導体材料であることを特徴とする請求項1に記載の有機半導体膜の形成方法。
  3. 前記熱処理が有機半導体材料の融点以下の温度で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機半導体膜の形成方法。
  4. 前記有機半導体材料の融点が50℃以上、200℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機半導体膜の形成方法。
  5. 前記有機半導体材料の重量平均分子量が5000以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機半導体膜の形成方法。
  6. 前記有機半導体材料がアルキルチオフェンを含有することを特徴とする請求項4又は5に記載の有機半導体膜の形成方法。
  7. 有機半導体材料溶液を供給、塗布して、半導体膜を形成する前記基板の表面の水に対する接触角が80℃以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機半導体膜の形成方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機半導体膜の形成方法により有機半導体層を形成することを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
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