(建材用フィルム)
図1は、本発明の建材用フィルム1の基本構造を模式的に示す図である。本発明の建材用フィルム1は、図1に示すように、基材シート2と、インキ層3と、接着剤層4と、透明樹脂層5とを少なくとも有し、これら各層が順次積層されてなる基本構造を備える。本発明の建材用フィルム1は、このような基本構造において、接着剤層4が、ジカルボン酸成分、グリコール成分の合計量をそれぞれ100モル%とするとき、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸が30モル%以上、グリコール成分としてトリエチレングリコールが20モル%以上共重合されたポリエステル樹脂で形成されたものであることを特徴とする。このような本発明の建材用フィルム1によれば、建材用フィルム製造時における作業環境の安全性や生活空間での環境安全性がより向上され、かつ、作業環境性および住居環境などの環境安全性、層間密着性、ならびに耐候性が従来と比較して改善される。
(基材シート)
本発明の建材用フィルム1における基材シート2は、その形成材料については特に制限されるものではなく、建材用フィルムの基材シートとして従来より使用されてきた、たとえばポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチルなどのアクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、三酢酸セルロース、セロハン、ポリカーボネートなどの樹脂からなるシートまたはフィルム、ポリエステルやビニロンなどの有機樹脂などを用いた織布または不織布、その他、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙、リンター紙、板紙、石膏ボード板、上質紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙などの紙、あるいは、そうした紙にポリ塩化ビニルをゾル塗工またはドライラミネートしたいわゆるビニル壁紙原反などを用いることもできる。また、硝子繊維、石綿、チタン酸カルシウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、炭素繊維などの無機質繊維からなるシートまたはフィルムを用いることも可能である。また、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、銅などの金属箔などにて基材シートを形成することもできる。本発明における基材シート2は、上述した材料で形成された単層からなるものであってもよいし、複数層積層させたものであってもよい。
本発明における基材シート2は、建材用フィルム製造時における作業環境の安全性や生活空間での環境安全性などの観点、また燃焼時に塩化水素ガス、ダイオキシンが発生しない、二次加工での加工性に優れるといった理由から、ポリオレフィン系樹脂で形成されたものであるのが好ましい。
本発明における基材シートに好適に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アイオノマーなどが使用されるが、特に、インキ層との高い密着性を得ることができることから、熱可塑性エラストマーがより好ましい。ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、たとえば、(イ)主材料がハードセグメントとしての高密度ポリエチレンまたはポリプロピレンのいずれかからなり、これにソフトセグメントとしてのエラストマーおよび無機充填剤を添加してなるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。また、(ロ)特開平9−111055号公報、特開平5−77371号公報、特開平7−316358号公報に記載されるエチレン−プロピレン−ブテン共重合体にて基材シートを形成することもできる。また、(ハ)特公平6−23278号公報記載のハードセグメントであるアイソタクチックポリプロピレンとソフトセグメントとしてのアタクチックポリプロピレンとのポリオレフィン系熱可塑性エラストマーにて基材シート2を形成することもできる。
上記(イ)のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントとしての高密度ポリエチレンには、好ましくは、比重が0.94〜0.96のポリエチレンであって、低圧法で得られる結晶化度が高く、分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。また、ハードセグメントとしてのポリプロピレンには、好ましくは、アイソタクチックポリプロピレンが用いられる。
上記(イ)のソフトセグメントとしてのエラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマーなどが用いられる。ジエン系ゴムとしては、たとえばイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどが挙げられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの結晶化を抑えて、その柔軟性を向上させる効果を有する。またオレフィン系エラストマーとしては、2種類または3種類以上のオレフィンと共重合し得るポリエンを少なくとも1種類加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしてはエチレン、プロピレン、α−オレフィンなどが使用され、ポリエンとしては、1,4−ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネンなどが使用される。好ましいオレフィンエラストマーとしては、たとえばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴムなどのオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。これらのエラストマーは、必要に応じて有機過酸化物、硫黄などの架橋剤を用いて、過重架橋させてもよい。
これらのエラストマーの添加量は、特に制限されるものではないが、10〜60重量%であるのが好ましい。エラストマーの添加量が10重量%未満であると、一定荷重伸度の変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性、易接着性の低下が生じやすい傾向にある。また、エラストマーの添加量が60重量%を越えると、透明性、耐候性および耐クリープ性の低下が生じる傾向にある。
上記(イ)のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに配合される無機充填剤としては、たとえば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクなどが挙げられる。かかる無機充填剤は、平均粒径が0.1〜10ミクロンの粉末であるのが好ましい。
無機充填剤の添加量としては、特に制限されるものではないが、1〜60重量%であるのが好ましく、5〜30重量%であるのがより好ましい。無機充填剤の配合量が1重量%未満であると、耐クリープ変形および易接着性の低下が生じてしまう傾向にあるためであり、また、無機充填剤の配合量が60重量%を越えると、破断時伸度および耐衝撃性の低下が生じてしまう傾向にあるためである。
上記(ロ)のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。ここで、ブテンとは、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム共重合体であって、非晶質の部分の一部を含む。
上記エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂の好ましい具体例としては、たとえば、(a)特開平9−111055号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの三元共重合体によるランダム共重合体が挙げられる。かかる(a)のランダム共重合体において、単量体成分の重量比率はプロピレンが90重量%以上であり、メルトフローレートは、230℃、2.16kgの条件下で1〜50g/10分であることが好ましい。上記ランダム共重合体は、このような三元ランダム共重合体100重量部に対して、塩酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50重量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3重量部を溶融混練してなる。
また、上記エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂の好ましい具体例として、(b)特開平5−77371号公報に記載されるエチレン、プロピレンおよびブテンの三元共重合体も挙げられる。かかる(b)の三元共重合体は、プロピレン重合比率が50重量%以上の非晶質重合体20〜100重量%に、結晶質ポリプロプレンを80〜0重量%添加してなることを特徴とする。
さらに、(c)特開平7−316358号公報に記載されるエチレン−プロピレン−1−ブテンの三元共重合体も、好ましい具体例として挙げられる。かかる(c)のエチレン−プロピレン−1−ブテンの三元共重合体は、プロピレンおよび/または1−ブテン含有率が50重量%以上の低結晶質重合体20〜100重量%に、アイソタクチックポリプロピレンなどの結晶性ポリオレフィン80〜0重量%を混合した組成物に対して、N−アシルアミノ酸アミン塩、N−アシルアミノ酸エステルなどの油ゲル化剤を0.5重量%添加したことを特徴とするものである。
上記(a)〜(c)のエチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂は、単独で用いてもよく、また該エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂に必要に応じてさらに他のポリオレフィン系樹脂を混合して用いてもよい。
上記(ハ)のオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、特公平6−2378号公報に記載の(A)ソフトセグメントとして数平均分子量Mnが25000以上、かつ重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90重量%と、(B)ハードセグメントとしてのメルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10重量%との混合物からなる軟質ポリプロピレンが挙げられる。
上記(ハ)のオレフィン系熱可塑性エラストマーの中でも、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンの混合物からなり、且つアタクチックポリプロピレンの重合比率が5〜50重量%のものが好ましく、アタクチックポリプロピレンの重合比率が20〜40重量%のものが特に好ましい。アタクチックポリプロピレンの重量比率が5重量%未満であると、エンボス加工を施したり、三次元形状や凹凸形状の物品に成形加工する際にネッキングによる不均一なシートの変形や、その結果としての皺、絵柄の歪みなどが生じる。一方、アタクチックプロピレンの重量比率が50重量%を越えると、シート自体が変形しやすくなり、シートを印刷機に通したときにシートが変形し、インキ層の絵柄の歪み、多色刷の場合に検討が合わなくなるなどの不良が発生しやすくなり、成形時においてはシートが破れやすくなる。
基材シートを形成する上述のオレフィン系樹脂中には、必要に応じて、着色剤、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤などが添加される。
着色剤としては、チタン白、亜鉛華、べんがら、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラックなどの無機顔料、イソインドリン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルーなどの有機顔料あるいは染料、アルミニウム、真鍮などの箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛などの箔粉からなる真珠光沢顔料かどが用いられる。また、必要に応じて、無機充填剤を添加してもよく、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、シリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)などの粉末などが挙げられ、その添加量は、通常、5〜60重量%である。着色剤は、基材シートに建材用フィルムとして必要な色彩をもたせるために添加され、透明着色と不透明(隠蔽)着色のいずれでも構わないが、一般的には、被着体を隠蔽するために不透明着色が好ましい。
熱安定剤としては、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フィスファイト系、アミン系など公知のものが使用でき、熱加工時の熱変色などの劣化の防止の向上を図る場合に用いられる。難燃剤は、難燃性を付与する場合に添加され、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの粉末が用いられる。紫外線吸収剤は、樹脂により良好な耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、ベンゾトリアール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステルなどの有機物、または、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタンなどの無機物が用いられる。その他に、ベンゾトリアゾール骨格にアクロイル基またはメタクロイル基を導入した反応型紫外線吸収剤も用いられる。なお、これらの紫外線吸収剤の添加量は、通常、0.1〜10重量%程度である。ラジカル捕捉剤は、紫外線による劣化をさらに防止し、耐候性を向上させるためのものであり、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、その他、たとえば特公平4−82625号公報に開示されている化合物などのヒンダード系ラジカル捕捉剤、ピペリジル系ラジカル捕捉剤が使用される。
基材シート2は、上述した材料を任意に選択してブレンドしたものを、カレンダー加工時の常用の方法により成形して得ることができる。基材シート2の主面形状は、特に制限されるものではなく、方形状(正方形状、長方形状)、円形状(真円形状、楕円形状)、三角形状、多角形状などが挙げられるが、通常、方形状に形成される。基材シート2の厚み(基材シートが複数層積層されたものである場合には、総厚み)は、特に制限されるものではないが、50〜200μmであるのが好ましい。基材シート2の厚みが50μm未満であると、印刷時の加工適性、被着体に対する隠蔽性が悪くなる傾向にあるためであり、また、基材シート2の厚みが200μmを越えると、印刷時の加工適性が悪くなる、二次加工において曲面状の被着体への貼り合わせ時に被着体に対する追従がしにくくなる傾向にあるためである。
基材シート2は、建材用フィルム1として形成される際に透明樹脂層5側となる表面に、易接着処理を施されたものであることが好ましい。易接着処理は、易接着層の塗布、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理などにより施すことができる。
(インキ層)
本発明の建材用フィルム1におけるインキ層3は、基材シート2上に積層される層であり、ベタインキ層および/または絵柄インキ層から構成される。
ベタインキ層は、基材シート2の地肌の隠蔽などの目的で設けられ、通常は模様のない金ベタ状の着色層として形成される。絵柄インキ層は、一般に、図形、文字、記号、色彩、それらの組み合わせなどにより、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形などからなる模様ないし色彩を有し、ベタインキ層上に、平面状、凹凸状の層として形成される。なお、絵柄インキ層のみでベタインキ層の作用を兼ねるように形成することもできる。またベタインキ層および/または絵柄インキ層は、基材シート2の表面全面に設けたベタインキ層と、そのベタインキ層の表面に部分的に設けた絵柄インキ層とから構成することもできる。
本発明においては、インキ層(すなわち、ベタインキ層、絵柄インキ層の一方または両方)を形成する材料としては、従来より建材用フィルムのインキ層の形成に用いられてきた適宜の材料を特に制限なく使用することができる。このようなインキ層の形成材料としては、たとえば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂、これらの樹脂を混合したものなどを用いた水系または溶剤系塗工剤が挙げられる。中でも、得られた建材用フィルムにおいて有機性揮発物質の使用を減少させ、作業環境中または生活空間中への有機性揮発物質の発生を抑制することができ、作業環境の安全性や生活空間の安全性をより向上させることができることから、水系塗工剤にてインキ層を形成するのが好ましい。また、水系塗工剤の中でも、基材シートと透明樹脂層との層間密着性を向上させることができることから、水性ウレタン樹脂を単独で用いた水系塗工剤または水性ウレタン樹脂とそれ以外の樹脂とを混合した樹脂を用いた水系塗工剤にてインキ層を形成するのが特に好ましい。水性ウレタン樹脂は、柔軟性と追従性を併せもち、かつ、層中の内部凝集力が高いため、これを用いて形成されたインキ層において基材シートおよび透明樹脂層との層間密着性が向上されるものと考えられる。
水性ウレタン樹脂としては、一液性のものでも二液性のものであってもよく、特に限定されない。一液性の水性ウレタン樹脂を含有する水系塗工剤は、分子末端にイソシアネート基を有したプレポリマーを必須成分とし、水または水とアルコールなどとからなる混合溶媒に溶解または均一に分散させて調製した一液型湿気硬化ウレタン樹脂などを好ましく挙げることができる。また、二液性の水性ウレタン樹脂を含有する水系塗工剤は、水性ウレタン樹脂の主剤となるポリオールと、1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基をもつ水性化合物からなる架橋剤とを、水または水とアルコールなどからなる混合溶媒に溶解または均一に分散させて調製した二液性の水性ウレタン樹脂などを挙げることができる。これらのうち、架橋剤を含有する二液性の水性ウレタン樹脂は、層間密着性をより一層向上させることができるので、より好ましく使用される。
これらの各水性ウレタン樹脂において、ポリイソシアネート化合物とイソシアネート基と反応し得る活性水素と分子中に2個以上含有する含有化合物、また、必要に応じて、親水性原子団または中和により親水性となり得る原子団を有する化合物から製造される。ポリイソシアネート化合物としては、たとえば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロへキシレンジイソシアネート、1,4−シクロへキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5(2,6)−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。イソシアネート基と反応し得る活性水素を分子中に2個以上含有する化合物としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ブテンジオール、メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロへキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの低分子量ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多官能ポリオール、ポリエチレン−ポリプロピレングリコールポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオールポリアクリルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、動植物系ポリオールなどが挙げられる。親水性原子団または中和により親水性となり得る原子団としては、たとえば、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホネート基、第三級アミノ基、第四級アミノ基あるいはエチレンオキサイドの繰り返し単位などが挙げられ、各水性ウレタン樹脂の製造時に共重合することができる。また、中和剤としては、中和あるいはイオン化できるものであれば特に制限はないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの不揮発性塩基;アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第一級モノアミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第二級モノアミン;ジエチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第三級モノアミンなどの揮発性塩基;塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸などの有機酸;塩化メチル、臭化メチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、塩化ベンジル、p−ニトロベンジルクロライド、臭化ベンジル、エチレンクロルヒドリン、エチレンブロムヒドリン、エピクロルヒドリン、ブロムブタンなどの四級化剤が挙げられる。
また、架橋剤であるイソシアネート基含有化合物としては、水または水とアルコールなどとからなる混合溶媒に溶解または均一に分散する水分散性のものであれば、特に制限されないが、実用上効果的な水性化合物としては、多価イソシアネートを親水性処理したものが好ましく用いられる。親水性処理される多価イソシアネートとしては、たとえば、ジイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物との反応による末端イソシアネート基含有化合物、あるいはジイソシアネート化合物の反応による末端イソシアネート基含有化合物などにさらに親水性基を導入した化合物を挙げることができる。ジイソシアネート化合物と活性水素基含有化合物との反応による末端イソシアネート基含有化合物、あるいはジイソシアネート化合物の反応による末端イソシアネート基含有化合物の例としては、ウレタン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレア構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレトジオン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、イソシアヌレート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、カルボジイミド構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ウレトンイミン構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、ビウレット構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物、アロファネート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物およびこれらの混合物などを挙げることができ、特に、イソシアヌレート構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物またはビウレット構造をもつ末端イソシアネート基含有化合物が好ましい。
上記イソシアヌレート化合物の例としては、フェニレンジイソシアヌレート、トリレンジイソシアヌレート、キシレンジイソシアヌレート、テトラメチルキシレンジイソシアヌレート、ナフチレンジイソシアヌレート、ジフェニルメタンジイソシアヌレートなどおよびこれらの異性体からなる芳香族ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートシクロヘキサンなどの脂環式ジイソシアネートおよびこれらの混合物などが挙げることができ、特に脂肪族、脂環式およびこれらの混合物が好ましい。
二液性の水性ウレタン樹脂を用いた場合における樹脂成分と架橋剤成分との比は、特に制限されるものではないが、架橋密度が大きくなると密着力は上がる傾向にあるため、樹脂成分:架橋剤成分=100:2〜100:200であるのが好ましく、樹脂成分:架橋剤成分=100:10〜100:50であるのがより好ましい。架橋剤成分が樹脂成分100に対して2未満であると、架橋反応が十分に進行せず十分な架橋密度が得られない傾向にあるためであり、また、架橋剤成分が樹脂成分100に対して200を越えると、架橋剤と水の副反応が進行し、それにより生成した低分子副生成物が密着性能を低下させるなどの傾向にあるためである。
上記水系塗工剤を構成する水性ウレタン樹脂は、ウレタン樹脂成分を、溶解、エマルジョン化、マイクロカプセル化またはその他の方法で水性化することにより得ることができる。なお、本発明において「水性の樹脂」というときは、本来的に水溶性の樹脂、水溶性処理された樹脂、本来的に水分散性の樹脂、水分散性処理された樹脂などをいう。
また、水系塗工剤として、水性ウレタン樹脂と他の水性樹脂とを混合したものを用いることもできる。他の水性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。より具体的には、たとえば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリ−N−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類などの水溶性天然高分子;なども使用することができる。また、たとえば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂変性ないし混合樹脂、その他の樹脂などを使用することもできる。上記のような樹脂は、1種または2種以上使用される。また、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリルニトリルなどのニトリル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系モノマー;それらのアミド系モノマーのN−アルコキシ置換体やN−メチロール置換体;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系モノマー;ジアリルフタレート、アリルグリシジルエーテル、トリアリルイソシアヌレートなどのアリル系モノマー;酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンなどの重合性二重結合を有するモノマー;などの1種または2種以上と、カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他などの不飽和カルボン酸の1種ないしそれ以上との共重合体からなるアルカリ溶液可溶性(メタ)アクリル系共重合体を使用することもできる。
水性ウレタン樹脂とそれ以外の種類の樹脂とを混合した水系塗工剤においては、その水系塗工剤を塗布・乾燥して得られた層中のバインダー成分中のウレタン樹脂が25重量%以上含有されるように、水性ウレタン樹脂とそれ以外の種類の樹脂とを混合しておくことが好ましく、50重量%以上であることがより好ましい。層中のバインダー成分中のウレタン樹脂の含有量が25重量%未満では、ウレタン樹脂による層間密着性の向上作用が不十分となり、基材シートと透明樹脂層との密着性を改善することができない場合がある。一方、層中のウレタン樹脂の含有量の上限は特に限定されないが、全てウレタン樹脂からなる場合を含めて、その上限は100重量%である。
水系塗工剤の溶媒である水は、従来より水系塗工剤に使用されているグレードの工業用水が使用される。また、水とアルコールなどとからなる混合溶媒を、水系塗工剤の溶媒として使用することもできる。そうした混合溶媒を構成するアルコールなどとしては、エタノール、イソプロピルアルコール、N−プロピルアルコールなどの低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類を挙げることができる。なお、これら低級アルコール、グリコール類およびそのエステル類などの溶媒は、水系塗工剤の流動性改良、被塗工体である基材シートへの濡れの向上、乾燥性などの調整などの目的で使用されるものであり、その目的に応じてその種類、使用量などが決定される。本発明で使用される水系塗工剤は、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの危険性の高い芳香族炭化水素系の有機性揮発物質が用いられておらず、また、その他の有機溶剤の使用も抑えているので、有機性揮発物質の発生を減少させることができる。
水とアルコールなどとからなる混合溶媒においては、それらの配合割合を、水:アルコールなど(たとえば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコールなどが挙げられる。)=20:80〜100:0の範囲で調整できる。
インキ層に使用される水系塗工剤には、着色顔料や染料などの着色剤が配合される。また、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐候剤、その他などの添加剤を任意に添加し、水または水とアルコールなどとからなる水系の混合溶媒を使用し、ミキサーなどで十分に混合して、水系塗工剤が調製される。
油性ウレタン樹脂と油性アクリル樹脂との混合樹脂でインキ層を形成する場合においては、その溶剤系塗工剤を塗布・乾燥して得られた層中のウレタン樹脂がバインダー成分中の10重量%以上100重量%未満含有されるように、アクリル樹脂とウレタン樹脂とを混合しておくことが好ましく、20〜80重量%であることがより好ましい。層中のウレタン樹脂の含有量が10重量%未満では、基材シートと透明樹脂層との間の密着性を改善することができない場合がある。なお、溶剤としては、通常は、酢酸メチル、酢酸ブチルなどのエステル系の有機溶剤や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系の有機溶剤などが用いられる。
インキ層に使用される溶剤系塗工剤には、着色顔料や染料などの着色剤が配合される。また、ワックス類、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、酸化防止剤、耐候剤、その他などの添加剤を任意に添加し、溶剤を使用し、ミキサーなどで十分に混合して、溶剤系塗工剤が調製される。
着色顔料としては、通常使用される有機または無機系の顔料を使用することができる。こうした着色顔料のうち、黄色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾなどのアゾ系顔料、イソインドリノンなどの有機顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン黄などの無機顔料を使用することができる。また、赤色顔料としては、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾなどのアゾ系顔料、キナクリドンなどの有機顔料、べんがら、朱、カドミウムレッド、クロムバーミリオンなどの無機顔料を使用することができる。また、青色顔料としては、フタロシアニンブルー、イミダスレンブルーなどの有機顔料、紺青、群青、コバルトブルーなどの無機顔料を使用することができる。また、白色顔料としては、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモンなどの無機顔料を使用することができる。また、シリカなどのフィラー、有機ビーズなどの体積顔料、中和剤、界面活性剤などを任意に含有させることができる。
ベタインキ層や絵柄インキ層は、上述した水系塗工剤を塗工または印刷などによって設けた後、乾燥させて形成される。塗工方法としては、公知の各種方法、たとえばロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムーズコート、コンマコート、スプレーコート、かけ流しコート、刷毛塗りなどの方法を用いることができ、乾燥後の膜厚が0.1〜10μm程度になるように塗工される。また、印刷方法としては、グラビア、活版、フレキソなどの凸版印刷、平版オフセット、ダイリソ印刷などの平版印刷、シルクスクリーンなどの孔版印刷、静電印刷、インキジェットプリンタなどの公知の各種方法を用いることができる。
また、本発明におけるインキ層は、上述したように水系塗工剤(特に水性ポリウレタン樹脂を用いた水系塗工剤)を用いて形成されるのが好ましいが、従来より使用されている溶剤系の塗工剤を用いて形成されても勿論よい。かかる溶剤系塗工剤としては、上述で挙げたものの中より、油性アクリル樹脂と油性ウレタン樹脂との混合物を特に好ましく用いることができる。ただし、かかる混合物を用いる場合、アクリル樹脂とウレタン樹脂は相互に混ざりにくい性質を有するので、相互に混合可能なアクリル樹脂、ウレタン樹脂を選択、配合、重合などにより製造する必要がある。具体的には、アクリル樹脂として、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、ジメチルアミノエチルメタクリレートの混合物が挙げられる。また、上記アクリル樹脂とよく混ざるウレタン樹脂として、多価アルコールとしてのブタンジオール、イソシアネートとしてのイソホロンジイソシアネート(IPDI)、アジピン酸を原料として製造したものが挙げられる。ただし、本発明において用いることができるアクリル樹脂とウレタン樹脂は、上記のものに限定されず、相互に混合可能なものであれば、適宜に選択、配合、合成または重合などして用いることができる。
(接着剤層)
本発明の建材用フィルム1においては、接着剤層4が、ジカルボン酸成分、グリコール成分の合計量をそれぞれ100モル%とするとき、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸が30モル%以上、グリコール成分としてトリエチレングリコールが20モル%以上共重合されたポリエステル樹脂で形成されたものであることをその大きな特徴とする。なお、イソフタル酸の共重合量が30モル%未満であると、得られた建材用フィルムにおいて接着剤層の機械的強度が低くなる不具合があり、また、トリエチレングリコールが20モル%未満であると、得られた建材用フィルムにおいて接着強度が低下する不具合があり、いずれにしても本発明の目的を達成することができない。
上記ポリエステル樹脂において、ジカルボン酸成分として用いられるイソフタル酸を用いることによって、これを用いて形成された接着剤層4が、耐候性を減じることなく機械的強度を向上させる効果を発揮する。そのため、ポリエステル樹脂は、イソフタル酸の含有量を可及的に増加させたものであることが望ましい。したがって本発明における接着剤層を形成するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸を50モル%以上含有するのが好ましく、60モル%以上含有するのがより好ましく、70モル%以上含有させるのがさらに好ましく、80モル%以上含有させるのが特に好ましく、90モル%以上含有させるのが最も好ましい。
また、本発明における接着剤層を形成するポリエステル樹脂においてグリコール成分として用いられるトリエチレングリコールは、これをジカルボン酸成分と共重合させて得られたポリエステル樹脂においてガラス転移温度を低くすることができ、かかる樹脂を用いて形成された接着剤層において接着特性を高めることができる。さらにトリエチレングリコールは、これを用いて得られたポリエステル樹脂の比重が下がりにくいという効果も有し、バリア性の高い接着剤層を形成することができるため、長期にわたる光照射後の接着性低下を最小限に抑えることができる。光照射による接着剤層劣化の原因として、大気中の酸素による自動酸化が主なものとして挙げられる。自動酸化を抑制するには、緻密な硬化塗膜を生成し、酸素の透過(溶解/拡散)を防ぐ必要がある。すなわち接着剤層中に酸素が介在すると、前述した活性ラジカルの架橋反応が促進されるものと考えられる。接着剤層の酸素透過速度を低くするにはポリエステル樹脂の比重を上げて、緻密な硬化塗膜を得ることが効果的である。一般に、ポリエステル樹脂を接着剤用途に用いるときは、ガラス転移温度(Tg)を下げて基材に対する塗れ性や密着性を高めることが必要である。しかしながらこの際通常使用されている直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分あるいは直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のグリコール成分を共重合するという手法は、塗膜の比重を下げてしまい、酸素透過速度を高めるものに他ならない。本発明は、この高比重、低Tgを達成すべく検討した結果、トリエチレングリコールを上記割合以上共重合することで、この相反する特性を保持するポリエステル樹脂が存在するという知見に基づきなされたものである。
上述した効果を確実に発揮し得る観点からは、ポリエステル樹脂において、トリエチレングリコールは、グリコール成分の合計量を100モル%とするときに20モル%以上であるのが好ましく、40モル%以上であるのがより好ましく、60モル%以上であるのがさら好ましく、75モル%以上であるのが特に好ましい。
また、本発明の建材用フィルムにおける接着剤層を形成するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分の合計量を100モル%とした場合に、テレフタル酸の共重合量が70モル%未満であるのが好ましい。テレフタル酸の共重合量が70モル%以上であると、得られた接着剤層において、機械的特性は向上されるものの、光照射されると黄変する原因となるおそれがある。かかる観点からは、本発明に用いるポリエステル樹脂のジカルボン酸成分中のテレフタル酸の共重合量は可及的に少なくするのが望ましく、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、よりさらに好ましくは20モル%以下、特に好ましくは10モル%以下、最も好ましくは0モル%である。
また、上記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分およびグリコール成分の合計量をそれぞれ100モル%とするとき、直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分が40モル%以下であり、かつ、直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のグリコール成分が40モル%以下であるのが好ましい。直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分、直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のグリコール成分のうち少なくともいずれかでも40モル%を越えると、直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合させてポリエステル樹脂を形成すると、得られたポリエステル樹脂のガラス転移温度を下げることができ、またかかるポリエステル樹脂を用いて形成した接着剤層において接着直後の接着強度を上げることができる反面、長期にわたる光照射で三次元架橋(ゲル化)が進むため、接着剤層が脆くなってしまい、結果として接着強度低下の原因となるおそれがある。本発明における接着剤層に用いる接着剤層は、上記直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分およびグリコール成分の共重合量は、ともに、30モル%以下であるのがより好ましく、20モル%以下であるのがさらに好ましく、10モル%以下であるのが特に好ましく、0モル%であるのが最も好ましい。
なお、本明細書中でいう「直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸」とは、二つのカルボキシル基の間に含まれる連続した炭素数が3以上であるものを示し、たとえば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸が挙げられる。これらのうち、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸は、特に長期にわたる光照射で三次元架橋(ゲル化)が進みやすく、塗膜接着強度が低下する傾向にある。
また、本明細書中でいう「直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のグリコール」とは、二つのヒドロキシル基の間に含まれる連続した炭素数が3以上であるものを示し、たとえば、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、1,9−ノナンジオール、2−メチルオクタンジオール、1,10−ドデカンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ダイマージオールなどが挙げられる。これらのうち、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコールは特に長期にわたる光照射で三次元架橋(ゲル化)が進みやすく、接着剤層の接着強度が低下する傾向にある。
ポリエステル樹脂の共重合成分として、直鎖状に連続して結合した炭素数が3以上のジカルボン酸成分およびグリコール成分の共重合量が多いと接着剤層の三次元架橋の進む原因は明らかでないが、おそらく光照射によりメチレン基の水素引き抜き反応が起こり、活性ラジカルが発生しやすく、かつ、樹脂の比重が低くなるため、酸素透過性が大きくなり、自動酸化が進みやすくなるため、架橋が進行するものと予想される。そのように考えると、炭素数が3以上のジカルボン酸が少ないことが、長期にわたる光照射後の三次元架橋(ゲル化)が少なく、得られた接着剤層の接着強度が優れることは上述のとおりであるが、より好ましくは炭素数4以上のジカルボン酸が、さらに好ましくは炭素数6以上のジカルボン酸が少ない方が良好な結果となるのは言うまでもなく、実験結果もそれを支持している。また、全く同様に、炭素数3以上のグリコールが少ないことが、長期にわたる光照射後の三次元架橋(ゲル化)が少なく、得られた接着剤層の接着強度が優れることは上述のとおりであるが、より好ましくは炭素数4以上のグリコールが、さらに好ましくは炭素数6以上のグリコールが少ない方が良好な結果となるのは言うまでもない。
上記ポリエステル樹脂はまた、分子末端の一部が、塩基で中和されていないコハク酸であることが好ましい。分子末端の一部が塩基で中和されていないコハク酸であると、後述するように本発明のポリエステル樹脂の水分散体に水分散型イソシアネート系硬化剤を配合した際、ポリエステル樹脂の末端の水酸基と、イソシアネート系硬化剤が反応して架橋反応が進むが、末端の塩基で中和されていないコハク酸は、水とイソシアネートとの反応触媒として働き、系中に結果としてウレア結合体を生成し、主に塗布直後の接着強度を向上する効果がある。さらに充分にエージングされ、架橋反応が進むと、ウレタン結合とウレア結合による強力な架橋体が形成される。
なお、ポリエステル樹脂の分子末端に導入される酸として、フタル酸(無水物、以下同様)、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族酸が一般に知られるが、芳香族酸では触媒効果が大きく、系中に大量のウレアが発生してしまい、却って耐候性を減じてしまう可能性がある。またマレイン酸などの不飽和酸を導入すると、不飽和基が光酸化を受けやすく樹脂の劣化が著しくなってしまうことがある。また、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族酸も、構造上光による酸化を受けやすく劣化が激しい傾向にある。したがって、芳香族酸より酸性が弱く、光照射により発生するラジカルにより水素引抜を受け難いコハク酸を導入すると、耐候性により優れた接着剤層を得ることができる。
ポリエステル樹脂における分子末端のコハク酸は、0.1〜5.0モル%であるのが好ましく、0.2〜4.0モル%であるのがより好ましく、0.3〜3.0モル%であるのがさらに好ましく、0.4〜2.5モル%であるのが特に好ましく、0.5〜2.0モル%であるのが最も好ましい。分子末端のコハク酸が0.1モル%未満であると、ウレア結合の生成が少なく、塗布直後の接着強度が低くなってしまう傾向にあり、また分子末端のコハク酸が5.0モル%を越えると、ポリエステル樹脂中に共重合されない、コハク酸モノマーが系中に残存し、接着強度を減じてしまい、かつポリエステルの水酸基末端を減じてしまうことから、イソシアネートによる架橋反応が不十分であり、接着剤層の機械的強度も低くなってしまう傾向にある。
本発明における接着剤層の形成に用いられるポリエステル樹脂は、上述したようにジカルボン酸成分、グリコール成分の合計量をそれぞれ100モル%とするとき、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸が30モル%以上、グリコール成分としてトリエチレングリコールが20モル%以上共重合されているものであれば、その原料については特に制限されるものではなく、様々なものを使用することができる。
ジカルボン酸としては、オルソフタル酸、1,5−ナフタル酸、2,6−ナフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。また多価カルボン酸成分としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられる。
またグリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジオールや、トリメチロールプロパン等の多価アルコールが使用できる。
本発明の建材用フィルムの接着剤層におけるポリエステル樹脂の組成及び組成比を決定する方法としては例えばポリエステル樹脂を重クロロホルム等の溶媒に溶解して測定する1H−NMRや13C−NMR、ポリエステル樹脂のメタノリシス後に測定するガスクロマトグラフィーによる定量などが挙げられる。これらのうち、1H−NMRが簡便であり好ましい。
上記ポリエステル樹脂は、従来公知の種々の方法にて製造することができる。たとえば、上記のジカルボン酸およびジオール成分を150〜250℃でエステル交換後、減圧しながら230〜300℃で重縮合することにより、目的のポリエステル樹脂を得ることができる。
また分子末端にコハク酸を効率よく、かつ定量的に導入する方法としては、上記重縮合後、窒素雰囲気下で無水コハク酸を付加させる方法が有効である。
本発明のポリエステル樹脂は、その数平均分子量については特に制限されるものではないが、その下限が5000以上であるのが好ましく、7000以上であるのがより好ましい。数平均分子量の下限値が5000未満であると、接着剤として用いたときに接着剤層の凝集力が不足気味となってしまい、接着強度が低下してしまう傾向にある。また、本発明のポリエステル樹脂の数平均分子量の上限は、40000以下であるのが好ましく、30000以下であるのがより好ましく、25000以下であるのがさらに好ましい。数平均分子量の上限値が40000を越えると、水分散体を製造することが難しくなってしまう傾向にある。なお上記数平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィを用いて、ポリスチレンを標準物質をして測定することができる。
また本発明における接着剤層の形成に用いられるポリエステル樹脂は、その比重についても特に制限されるものではないが、酸素透過速度を低くする観点から、1.26以上であるのが好ましく、1.27以上であるのがより好ましい。また、上記ポリエステル樹脂における比重の上限は高ければ高い程よいが、あまり高すぎると水分散体を安定的に製造することが難しくなるため、好ましくは1.34未満であり、より好ましくは1.32未満である。
また、上記ポリエステル樹脂のガラス転移温度の上限は、基材密着性を出すためには40℃以下であるのが好ましく、30℃以下であるのがより好ましく、20℃以下であるのがさらに好ましく、10℃以下であるのが特に好ましい。一方、ポリエステル樹脂における比重の下限は低ければ低い程がよいが、あまり低すぎるとポリエステル樹脂および水分散体を安定的に製造することが難しくなるため、好ましくは−70℃以上、より好ましくは−50℃以上である。
また、本発明に用いるポリエステル樹脂は、ウレタン、エポキシ、アクリルなどで変性されたものであってもよい。
本発明の建材用フィルムにおける接着剤層は、上述したようなポリエステル樹脂を水中に分散させて水分散体とし、これに架橋剤を添加したものをインキ層および/または透明樹脂層に塗布、乾燥することで、形成される。かかる観点からは、上記ポリエステル樹脂は、親水性を有する極性基が導入されたものであることが好ましい。このような親水性を有する極性基としては、たとえば、スルホン酸金属塩、カルボキシル基、カルボン酸塩、エーテル基、リン酸基、リン酸塩、水酸基などが挙げられるが、中でもポリエステル樹脂への導入が容易でかつ水分散化を容易にさせる能力の高いスルホン酸金属塩、カルボン酸塩、エーテル基が好ましい。上記親水性を有する極性基は、単独または併用して、本発明におけるポリエステル樹脂に導入することができる。
スルホン酸金属塩基を分子内に導入する場合、たとえば、5−Naスルホイソフタル酸、5−アンモニウムスルホイソフタル酸、4−Naスルホイソフタル酸、4−メチルアンモニウムスルホイソフタル酸、2−Naスルホテレフタル酸、5−Kスルホイソフタル酸、4−Kスルホイソフタル酸、2−Kスルホテレフタル酸、Naスルホコハク酸等のスルホン酸アルカリ金属塩系またはスルホン酸アミン塩系化合物、スルホン酸Na塩含有ビスフェノールA−アルキレンオキサイド付加物、スルホン酸K塩基含有ハイドロキノンアルキレンオキサイド付加物などを共重合することによって、ポリエステル樹脂の分子内に導入することができる。
カルボキシル基を分子内に導入する場合、導入方法としては、酸無水物を付加する方法のほか、カルボキシル基を有するビニルモノマーをポリエステルにグラフトする方法が挙げられる。この際、ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分として、ダイマー酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸など不飽和結合を含むものを使用すると、グラフト効率が上がるため、特に好ましい。上記カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられ、この他にも、水/アミンに接して容易にカルボン酸となるマレイン酸無水物などをも包含する。かかるカルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、上記した中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。さらに、重合効率を上げるために、他の親水性を有しないビニルモノマー、たとえばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニルなどを共重合成分として用いてもよい。上記カルボキシル基を分子内に導入されたポリエステル樹脂は、未反応のカルボキシル基を、アミノ化合物、アンモニア、アルカリ金属などで中和される。
エーテル基を分子内に導入する場合、たとえば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド付加物、ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加物などのエーテル結合含有グリコールを用いることによって、ポリエステル樹脂の分子内に導入することができる。
本発明においては、上述してきたような特徴を有する本発明のポリエステル樹脂を含む接着剤も提供する。本発明のポリエステル樹脂を接着剤として用いることで、ポリオレフィン系樹脂などの非極性基材を含めた各種基材に対する接着力に優れ、特に、屋外曝露での接着力低下、および着色の少ない接着剤を提供することができる。
上記ポリエステル樹脂を水分散体とする方法は、従来公知の適宜の方法が挙げられる。たとえば、上述したポリエステル樹脂を、ブチルセルソルブ、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコール−n−プロピルエーテルなどの沸点が水よりも高い有機溶剤に溶解した後に、温水を加え水分散させることで水分散体を得ることができる。また、ブチルセルソルブ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールなどの極性溶剤と水との混合溶剤に、直接溶解/分散させて、水分散体を製造することもできる。また、水よりも沸点の低い溶媒を使用して溶解/分解させた系では、有機溶剤を溜去すれば、完全水系の水分散体を得ることができる。
本発明における接着剤層に含有される架橋剤としては、メラミン系、ベンゾグアナミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系、フェノール系などの各種の硬化剤を使用することができるが、特に、イソシアネート系架橋剤を使用すると、低温での硬化が可能であり、オレフィン樹脂系熱可塑性エラストマーで形成された基材シート、オレフィン系樹脂で形成された透明樹脂層の間に介在された場合であっても、接着強度を損なうことなく、高い接着力を有する接着剤層を形成することができる。
イソシアネート系架橋剤としては、芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネートが挙げられ、低分子化合物、高分子化合物のいずれを用いてもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタキシリレンジイソシアネンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートあるいはこれらのイソシアネート化合物の三量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの低分子活性水素化合物または各種ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとを反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物が挙げられる。
イソシアネート系架橋剤としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノールなどの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは、上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを従来公知の適宜の方法より付加反応させて得られる。
本発明における接着剤層において、高度の耐候性を実現するためには、使用するイソシアネート系架橋剤が脂肪族系であることが好ましい。またポリエステル樹脂水分散体と配合することから、配合後塗工液の使用可能時間を考慮すると、ブロックタイプまたは水分散型(イソシアネート化合物を水性化処理したもの)のイソシアネート系架橋剤が好ましい。ブロックタイプのものは、ブロック化剤を除去するために、100℃以上の高温条件下に基材を保つことになり、OPP(二軸延伸ポリプロピレンフィルム)などのオレフィン系樹脂で形成された基材には不適切であり、基材による使用制限を受けることから、水分散型または低温解離のブロックタイプのイソシアネートが好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体化合物のポリエチレングリコール変性品は、ポリエステル水分散体との相溶性が良好で、使用可能時間も長く、接着剤層も高い接着強度を示し、かつ高い耐候性、耐久性を示すため、特に好適である。
本発明の接着剤における水分散体とイソシアネート系架橋剤の配合量は、[NCO]/[OH](モル比)が、0.3〜40であるのが好ましく、0.5〜30であるのがより好ましく、0.7〜20であるのがさらに好ましく、0.9〜15であるのが特に好ましい。上記[NCO]/[OH]が0.3未満であると、架橋効果が不十分であり、充分な接着強度が得られない虞がある。また、上記[NCO]/[OH]が40を越えると、水と反応して生成した低分子体が接着剤層中に残り、耐候性、耐水性等の低下が起こるおそれがある。
非ブロック型のイソシアネート系架橋剤を使用した場合、ポリエステル由来のOH基との反応性が高く、水分散体に室温でエージングを施すことで、接着剤層を得ることができる。さらに熱をかけると、硬化反応が進行し、高い接着力を得ることが出来る。ブロック型のイソシアネート系架橋剤を使用する場合、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上の加熱を施すのが好適である。
本発明における接着剤層を形成するポリエステル樹脂の水分散体には、各種増粘剤を使用することにより、作業性に適した粘性、粘度に調整することができる。増粘剤添加による系の安定性から、メチルセルロース、ポリアルキレングリコール誘導体などのノニオン性のもの、ポリアクリル酸塩、アルギン酸塩などのアニオン性のものが好ましい。
また、上記水分散体には、各種表面張力調整剤を使用することにより、塗布性をさらに向上させることができる。表面張力調整剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、メチルセロソルブアセテートのようなセロソルブ系溶剤、ヘキサン、オクタンなどの炭化水素系溶剤などが挙げられ、特に制限されるものではないが、VOCや安全性などの観点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類が好ましい。表面張力調整剤は、接着強度を損なわないために、樹脂に対して、好ましくは1wt%以下、より好ましくは0.5wt%以下の添加を制限すべきである。
また、本発明における接着剤層には、各種染料、顔料を配合することで着色することができる。染料としては、たとえば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料などが例示され、また、顔料としては、たとえば、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデードオレンジ、ベンガラ、クロムグリーン、コバルトブルー、フタロシアニンブルーなどが例示される。中でも、光による退色(消色)の観点から、顔料を用いて水分散体を着色するのが好ましい。
本発明における接着剤層には、各種紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤が配合されることにより、さらに耐候性を向上させることができる。紫外線吸収効果、光安定効果をもつ化合物をポリエステル骨格に導入することで、耐候性は大幅に向上するが、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤のエマルジョン、及び水溶液を、ポリエステル樹脂水分散体に添加することによっても耐候性は向上する。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等各種有機系のもの、酸化亜鉛等無機系のもののいずれも使用可能である。また、酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、フェノチアジン、ニッケル化合物等一般的にポリマー用のもの各種が使用可能である。光安定剤もポリマー用のもの各種が使用可能であるが、ヒンダードアミン系のものが有効である。
本発明の建材用フィルムにおける接着剤層は、その厚みは特に制限されるものではないが、1〜50μmであるのが好ましく、2〜20μmであるのがより好ましい。接着剤層の厚みが1μm未満であると、各種試験後の密着強度が悪くなる傾向にあるためである。
(透明樹脂層)
透明樹脂層5は、トップ樹脂層とも呼ばれ、インキ層3を擦り傷などから保護したり、建材用フィルム1の強度を向上させたり、耐候性を付与することなどを目的として、接着剤層4を介してインキ層3上に積層される。
透明樹脂層5を形成する樹脂としては、接着剤層4を介してインキ層3上に密着性よく形成され得る透明な樹脂であれば特に限定されるものではないが、たとえば、透明ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂を好ましく挙げることができる。透明樹脂層用の樹脂として使用できるオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、上述の基材シートの形成材料と同じものを使用することができ、こうした透明樹脂層を形成する樹脂には、必要に応じて、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、マット剤などの公知の添加剤を添加して形成することができ、着色された透明樹脂層としたり、紫外線吸収特性を有する透明樹脂層とすることができる。
透明樹脂層の形成方法としては、接着剤層上に、別個に形成された透明樹脂シートを積層したり、溶融押出し塗工法によって成膜したり、その他の公知の適宜の方法で積層することができる。
また、透明樹脂層は、2層以上の複層構造であってもよい。2層以上積層させてなる透明樹脂層は、基材シート側の透明樹脂層とその反対側(表面側)の透明樹脂層とに異なる作用効果をもたせることができる点で有利である。具体的には、基材シート側の透明樹脂層を熱可塑性アクリル樹脂などで形成することにより、接着剤層との間の密着性などを向上させることができるように積層可能であり、また、表面側の透明樹脂層をフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂を主成分とした樹脂で形成することにより、優れた耐汚染性などの表面機能を付与することができる。また、表面側の透明樹脂層を、耐候性を添加したポリプロピレン系樹脂で形成することにより、優れた耐候性を付与することができる。さらにかかる場合、基材シート側の透明保護層をエラストマーを含有したポリプロピレン系樹脂で形成することにより、耐候性と密着性の向上を図ることができるように積層可能である。
2層以上の透明樹脂層は、複数の樹脂組成物を溶融共押出しして形成したり、ドライラミネーションや熱ラミネーションなどの各種のラミネート法で形成することができる。このとき、プライマー層またはアンカー層として作用する接着剤層を介して2以上の層からなる透明樹脂層を形成することもできる。なお、この場合における接着剤層は、2以上の透明樹脂層と共に溶融共押出しして形成したり、上述した水性ウレタン樹脂を含有する水系塗工剤で塗布形成することもでき、その場合には、有機性揮発物質の発生をより一層抑制することができる。
透明樹脂層の厚さは、特に制限されるものではないが、20〜300μmであるのが好ましく、50〜200μmであるのがより好ましい。透明樹脂層の厚みが20μm未満であると、化粧シートとしての耐擦性、耐候性やその機械的強度が悪くなる傾向にあるためであり、また、透明樹脂層の厚みが300μmを越えると、化粧シートとしての厚みが増加するため、印刷時の加工適性、二次加工において曲面状の被着体への貼り合わせ時に被着体に対する追従がしにくくなるなどの傾向にあるためである。かかる厚みの透明樹脂層を形成するためには、15〜400g/m2程度の塗布量で塗工すればよい。
なお、透明樹脂層5の表面には、必要に応じて、凹凸模様(エンボス模様とも呼ばれる)が形成されていてもよい。凹凸模様は、特に限定されず、建材用フィルムの用途に応じた模様であればよい。たとえば、木目導管溝、木目年輪凹凸、浮造年輪凹凸、木肌凹凸、砂目、梨地、ヘアライン、万線状溝、花崗岩などの劈開面などの石材表面凹凸、布目の表面テクスチュア、皮絞、文字、幾何学模様などの模様を挙げることができる。2層以上の透明樹脂層を形成した場合には、凹凸模様を最表面の透明樹脂層に形成したり、最表面以外の透明樹脂層に形成したりすることができ、それぞれ任意に行うことができる。
凹凸模様を形成する手段としては、たとえば、加熱加圧によるエンボス加工法やTダイ溶融押し出し法が挙げられる。加熱加圧によるエンボス加工法は、透明樹脂層の表面を加熱軟化させ、その表面をエンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様を賦形し、冷却して固定化する方法であり、公知の枚葉式または輪転式のエンボス機を用いることができる。エンボス加工法で形成する場合には、ラミネート加工により積層する前の透明樹脂層とする樹脂シートに予めエンボス加工したり、透明樹脂層とする樹脂シートを積層すると同時に(いわゆるダブリングエンボス法)行ったりすることができる。また、Tダイ溶融押出し法で透明樹脂層を積層する場合には、賦形ローラを兼用させた冷却ローラを使用して、透明樹脂層の成膜・積層と同時に凹凸模様を形成することもできる。また、ヘアライン加工、サンドブラスト法などによってもエンボス模様を形成することができる。
また、透明樹脂層5の表面の上記凹凸模様が形成される場合、凹凸模様の凹陥部に着色層(図示せず)がさらに形成されていてもよい。着色層は、たとえば、ドクターブレードコート法またはナイフコート法で凹陥部を含む表面全面に着色層用の塗工剤を塗布した後、凹陥部以外の表面から着色層用の塗工剤を除去することにより、凹陥部のみに着色層を形成する、ワイピング法によって形成される。
着色層用の塗工剤としては、有機顔料、無機顔料、光輝性顔料などの着色顔料と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化型樹脂などのバインダー樹脂とからなるインキやエマルジョン型の水系タイプインキなどを使用できる。また、上述したインキ層の形成に好適に用いられる水系塗工剤も着色層の形成に好ましく用いることができ、かかる場合には、環境安全性の点でより好ましい。
図2は、本発明の建材用フィルム11の好ましい一例を示す図である。図1に示したように、本発明の建材用フィルム11は、基材シート12と、インキ層13と、接着剤層14と、透明樹脂層15とを少なくとも有し、これら各層が順次積層されてなる基本構造を有するものであればよいが、図2に示すように、透明樹脂層15の最表面にさらに表面保護層16が形成されてなるのが好ましい。表面保護層16は、トップコート層またはオーバープリント層(OP層)とも呼ばれ、凹凸模様やその凹陥部に形成された着色層を有する透明樹脂層の表面を覆って、耐擦傷性や耐汚染性などの物性を向上させ、建材用フィルムを保護することを目的として設けられるものである。
表面保護層16の形成には、熱硬化性樹脂および/または活性エネルギー線硬化性樹脂を好ましく用いることができる。また、溶剤系塗工剤にて表面保護層16を形成してもよいが、有機性揮発物質の発生を抑制する環境安全性を考慮すると、上述した水系塗工剤、および無溶剤型塗工剤で形成するのが望ましい。無溶剤型の塗工剤としては、活性エネルギー線硬化性樹脂(無溶剤活性エネルギー線硬化性樹脂)を用いた塗工剤が望ましい。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂とは、活性エネルギー線を照射することにより、架橋重合反応を起こし三次元の高分子構造に変化する樹脂である。ここで、活性エネルギー線としては、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線などを含む。)、X線、電子線、イオン線などがある。中でも、無溶剤活性エネルギー線硬化性樹脂は、電子線照射または紫外線照射により硬化するものであることが好ましい。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が利用できる。紫外線の波長としては、通常、1900〜3800Å(10-1nmに同じ)の波長域が主として用いられ、また、電子線源としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型灯の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものを使用できる。
無溶剤活性エネルギー線硬化性樹脂としては、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基などのラジカル重合性不飽和基、またはエポキシ基などのカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマーまたはポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する。)からなる。これら単量体、プレポリマー、およびポリマーは、単体で用いるか、あるいは複数種混合して用いる。上記無溶剤活性エネルギー線硬化性樹脂は、電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。光重合開始剤の添加量は一般に、無溶剤活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。
(プライマ層)
本発明の建材用フィルムにおいては、透明樹脂層15と表面保護層16との間にプライマ層(表面プライマ層)が設けられてなるのが好ましい。プライマ層は、透明樹脂層15と表面保護層16との密着性を向上させる役割を有するものである。特に、表面保護層16が無溶剤活性エネルギー線硬化性樹脂で形成される場合に好ましく適用され、表面保護層16が活性エネルギ線で硬化する際の収縮を吸収する効果(追従性)がある。その結果、表面保護層16の硬化時に発生する歪みに基づく層間剥離の問題を解決することができ、透明樹脂層15と表面保護層16との密着性を向上させることができる。
プライマ層は、有機性揮発物質の発生を抑制し、製造現場における作業環境、生活空間における安全性を向上させるという理由から、水系塗工剤を用いて形成されるのが好ましい。プライマ層を形成する水系塗工剤としては、上述したインキ層の形成に好適に用いられる水系塗工剤と同様に、水性のウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アミン系樹脂、フェノール系樹脂などを用い、さらに着色剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、安定剤、充填剤、潤滑剤、滑剤、耐候性、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、その他などの添加剤を任意に添加し、水溶媒または水とアルコールなどとからなる混合溶媒を使用し、ミキサーなどで十分に混合して調製した水系塗工剤を使用することができる。
また、反応型の水性樹脂組成物で表面保護層を形成し、耐擦傷性や、透明樹脂層との密着性を向上させることができる。特に、エマルジョン型の樹脂を用いた場合には、樹脂組成物で硬化剤などの反応開始剤が保護され、塗膜化の後に反応を開始させることが可能となる。そのため、塗工しやすい樹脂組成物で塗工し、その後反応させて表面保護層を形成することもできる。このような反応型の樹脂組成物としては、たとえば、感熱反応型の樹脂組成物として、活性水素基を有する樹脂からなる主剤とイソシアネート基と溶媒の水やアルコール系化合物との反応を抑制するように、親水性処理されたイソシアネート系硬化剤、もしくはブロック剤で処理したイソシアネート系硬化剤をエマルジョン化した樹脂組成物、またはアミノ基やカルボン酸基を有する樹脂からなる主剤とエポキシ基をもつ水溶性硬化剤または水分散性硬化剤とを含む樹脂組成物などを挙げることができる。
なお、表面保護層は、耐擦傷性などの表面物性の向上のほか、シリカなどの公知の艶消し剤を添加して艶調整したり、意匠性を付与させたりすることもできる。また、表面保護剤には、より良好な耐候性を付与するために、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤を添加して形成することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステルなどの有機物、または、0.2μm径以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタンなどの無機物、を用いることができる。光安定剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケートなどのヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤などのラジカル捕捉剤などを用いることができる。これらの紫外線吸収剤、光安定剤とも、通常、0.5〜10重量%程度となるように添加するが、一般的には紫外線吸収剤と光安定剤とを併用するのが好ましい。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの粉末が用いられる。難燃剤の添加量は、高密度ポリエチレンと熱可塑性エラストマーとの合計量を100重量部に対し、10〜150重量部程度が好ましい。
表面保護層は、そのような各種の塗工剤を、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他塗工法などの公知の塗工法で塗工して形成される。また、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷などの公知の印刷法で形成されてもよい。形成された表面保護層の厚みは、0.1〜40μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。表面保護層の厚みが3μm未満であると、耐傷性、耐汚染性、耐候性が悪くなる傾向にあるためであり、また表面保護層の厚みが10μmを越えると、固くて割れやすくなる、建材用フィルムのカールが起こるという傾向にあるためである。
また、本発明の建材用フィルム11は、図2に示すように、基材シートの裏面に裏面プライマ層17をさらに有することが好ましい。裏面プライマ層17が形成されることによって、本発明の建材用フィルム11を各種の被着体に接着させやすくすることができる。
裏面プライマ層17の形成には、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどが使用されるが、環境安全性の観点からは、上述したインキ層を形成するのに好ましく使用される水系塗工剤を用いることが好ましい。
本発明の建材用フィルム1,11は、他の被着体(裏打ち材)に積層して用いられる。被着体としては、たとえば平板状、曲面状などの板材、シート(あるいはフィルム)などの各種形状の物品が対象となる。こうした被着体は、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)などの木材板、木質繊維板などの木質板、鉄、アルミニウムなどの金属、アクリル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ABS樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、ゴムなどの樹脂、ガラス、陶磁器などのセラミックス、石膏などの非セメント窒素系材料、上質紙、和紙などの紙、炭素、石綿、チタン酸カリウム、ガラス、合成樹脂などの繊維からなる不織布または織布などを挙げることができる。
建材用フィルム1,11と被着体との関係において、建材用シートの基材シートまたは裏面プライマ層の種類により、被着体にそのまま熱融着などで接着できる場合には、建材用フィルムと被着体とを接着剤を用いずに積層させることができるが、建材用フィルムの基材シートまたは裏面プライマ層の種類により、被着体にそのまま熱融着で接着できない場合には、適当な接着剤を用いて積層させる。なお、接着剤としては、酢酸ビニル系、尿素系などの接着剤を挙げることができる。
また、一般的な積層方法としては、たとえば、(a)接着剤を介して被着体に加圧ローラで加圧して積層する方法、(b)特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報などに記載のように、建材用フィルムを射出成形品の雌雄両金型間に挿入して、両金型を閉じ、雄型のゲートから溶融樹脂を射出充填した後、冷却して樹脂成形品の成形と同時にその表面に建材用フィルムを接着積層する射出成形同時ラミネート法、(c)特公昭56−45768号公報、特公昭60−58014号公報などに記載のように、接着剤を介して成形品の表面に建材用フィルムを対向させ、成形品側からの真空吸引による圧力差により化粧シート1を成形品表面に積層する真空プレス積層方法、(d)特公昭61−5895号公報、特公平3−2666号公報などに記載のように、円柱、多角柱などの柱状被着体の長軸方向に、接着剤を介して建材用フィルムを供給しつつ、複数の向きの異なるローラにより、柱状被着体を構成する複数の側面に順次建材用フィルムを加圧接着して積層していくラッピング加工方法などが挙げられる。
本発明の建材用フィルムを積層した各種の被着体は、所定の成形加工などを施して、各種装飾用素材などとして用いることができる。たとえば、壁、天井、床などの建築材の内装、窓枠、扉、手摺などの建具の表面化粧、家具またはOA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車などの車輌内装、航空機内装、窓ガラスの化粧用などの用途が挙げられる。
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。尚、実施例に記載された測定値は次の方法によって測定したものである。
(製造例1)
(1)ポリエステル樹脂の製造例
攪拌機、温度計、溜出用冷却器を装備した反応缶内に、イソフタル酸159重量部、5−Naスルホイソフタル酸12重量部、トリエチレングリコール135重量部、エチレングリコール37重量部、触媒としてテトラブチルチタネート0.1重量部、重合安定剤として酢酸ナトリウム0.2重量部、酸化防止剤としてイルガノックス1330(チバガイギー社製)2重量部を加え、170〜230℃で2時間エステル化反応を行った。エステル化反応終了後、反応系を230℃から270℃まで昇温する一方、系内をゆっくり減圧にしていき、60分間かけて270℃で5Torrとした。そしてさらに1Torr以下で30分間重縮合反応を行った。重縮合反応後、窒素雰囲気下真空を破壊し、200℃で無水コハク酸1重量部を加え、30分間攪拌して付加反応を完了させ、ポリエステル樹脂(a)を得た。
(2)水分散体製造例
攪拌機、温度計、還流用冷却器を装備した反応缶内にポリエステル樹脂(a−1)35重量部、イソプロピルアルコール18重量部、水47重量部を加え、約75℃で3時間攪拌することにより、水分散体(a−1)を得た。
水分散体(a−1)100重量部に対して、さらに、高分子紫外線吸収剤(ULS−1700、一方社油脂工業株式会社製)0.3重量部、エマルション型ヒンダードアミン系光安定剤(アデカスタブLX−335、旭電化工業株式会社製)0.04重量部添加し攪拌後、200メッシュナイロンフィルタで濾過することにより、水分散体(a−2)を得た。
製造例1と同様な方法で表1、2に記載した原料を利用してポリエステル水分散体を得た(製造例2〜6、比較例製造例1〜5)。
(実施例1)
基材シート12としてポリプロピレン系エラストマー着色シート(PB013、三菱化学MKV株式会社製)(厚み:60μm)を用い、その上にコロナ放電処理を施した後、その片面に下記配合の裏面プライマ層用水系塗工液Aを線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いてグラビア印刷法にて塗布、乾燥し、約2g/m2の裏面プライマ層17を形成した。
さらにその反対の面に、下記配合のベタインキ層用の水系塗工剤B、絵柄インキ層用の水系塗工剤Cを順次グラビア印刷法にて塗布・乾燥し、約3.5g/m2のベタインキ層3および絵柄インキ層13を順次形成した。
さらにその上に、線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いて下記配合の接着剤層用の水系塗工剤Dをグラビア印刷法にて塗布・乾燥し、約3g/m2の接着剤層14を形成した。
さらにその接着剤層14上に、透明樹脂として、ランダム重合ポリプロピレンに、フェノール系酸化防止剤0.2重量%、ヒンダードアミン系光安定剤0.3重量%、ブロッキング防止剤0.2重量%をそれぞれ添加した樹脂(70μm)を、接着剤層側がマレイン酸変性ポリプロピレンになるようにTダイにより180℃の熱で、オゾン照射下で共押出しして厚さ約80μmの透明樹脂層を積層した。
次に、その積層シートの表面に約160℃で熱エンボス加工により凹凸模様を形成し、さらにその上に、線数54線/インチ、版深40μmのグラビア版を用いて、表面保護層用の水系塗工剤Eをグラビア印刷法にて塗布・乾燥し、約5g/m2の表面保護層16を形成した。その後、25℃の温度で7日間養生処理して実施例1の建材フィルムを得た。
裏面プライマ層用水系塗工液A
・水性ウレタン樹脂(F8583D、第一工業製薬株式会社製):100重量部
・水分散性イソシアネート架橋剤(アクアネート100、日本ポリウレタン株式会社製):15重量部
・シリカ粉末(サイシリア380、富士シリシア化学株式会社製):2重量部
・水:10重量部
・イソプロピルアルコール:10重量部
ベタインキ層用の水系塗工剤B
・水性ウレタン系白色インキ(オーデWKE、ザ・インテック株式会社製):100重量部
・水分散性イソシアヌレート結合含有イソシアヌレート架橋剤(AQ100、日本ポリウレタン株式会社製):10重量部
・水:20重量部
・イソプロピルアルコール:20重量部
絵柄インキ層用の水系塗工剤C
・水性ウレタン系紅色インキ(オーデWKE紅、ザ・インテック株式会社製):100重量部
・水:20重量部
・イソプロピルアルコール:20重量部
接着剤層用の水系塗工剤D
・製造例1の水性ポリエステル樹脂:100重量部
・水分散性イソシアヌレート結合含有イソシアヌレート架橋剤(X9003、日華化学株式会社製):10重量部
表面保護層用の水系塗工剤E
・水性ウレタン樹脂含有インキ(135、株式会社昭和インク工業所製):100重量部
・水分散性イソシアヌレート結合含有イソシアヌレート架橋剤(X9003、日華化学株式会社製):10重量部
・水:20重量部
・イソプロピルアルコール:20重量部
(実施例2)
実施例1の透明樹脂層の形成方法を、接着剤層14上に、透明ポリプロピレンフィルム(PE002C、三菱化学MKV株式会社製)(厚さ:80μm)をドライラミネート方式で積層して透明樹脂層15を形成した以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(実施例3)
実施例1の基材シートをポリエチレン系エラストマー着色シート(EB013、三菱化学MKV株式会社製)(厚さ:60μm)にした以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(実施例4)
実施例1の表面保護用の水系塗工剤Eに換えて、以下の方法により表面プライマ層と保護層とを形成した。凹凸模様が形成された透明樹脂層15の表面にコロナ放電処理を施した後、線数70線/インチ、版深30μmのグラビア版を用いて下記配合の表面プライマ層用の水系塗工剤Eをグラビア印刷法にて塗布・乾燥し、乾燥後約0.5g/m2の表面プライマ層を形成した。その上に、下記配合の保護層用の無溶剤塗工液Gを60℃に加温してバーコード法で塗工した後、電子線照射装置(エレクトロカーテンEC250、岩崎電気製)にて、窒素パージ下、150kVの加速電圧、5Mradの照射線量で電子線を照射し、約3g/m2の保護層を形成した。それ以外は、実施例1と同様に建材用フィルムを得た。
表面プライマ層用の水系塗工剤F
・水性ウレタン樹脂(F−8583D、第一工業製薬株式会社製):100重量部
・シリカ粉末(サイシリア380、富士シリシア化学株式会社製):1重量部
・水:100重量部
・イソプロピルアルコール:10重量部
無溶剤塗工液G
・多官能ウレタンアクリレート(U−15HA、新中村化学工業株式会社製):25重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(A−TMMA、新中村化学工業株式会社製):20重量部
・ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート(SR399、サートマー製):5重量部
・トリメチロールプロパンアクリレート(TMPTA、日本化薬株式会社製):50重量部
・シリカ粉末(サイシリア380、富士シリシア化学株式会社製):2重量部
・シリコーンオイル(KF353、信越化学工業株式会社製):1重量部
(実施例5)
表面プライマ層用の水系塗工剤Fに換えて下記配合の溶剤系塗工剤Hを用いた以外は、実施例4と同様にして建材用フィルムを得た。
表面プライマ層用の溶剤系塗工剤H
・ウレタン−アクリル樹脂(EBP3、ザ・インテック株式会社製):100重量部
・シリカ粉末(サイシリア380、富士シリシア化学株式会社製):1重量部
・メチルイソブチルケトン:20重量部
・酢酸エチル:20重量部
(実施例6)
実施例1の裏面プライマ層用水系塗工液Aに換えて下記配合の裏面プライマ層用溶剤系塗工液Iを用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
裏面プライマ層用溶剤系塗工液I
・ポリエステル樹脂インキ(AFSメジューム、昭和インク工業所製):100重量部
・硬化剤(No.81硬化剤、昭和インク工業所製):6重量部
・メチルイソブチルケトン:20重量部
・酢酸エチル:20重量部
(実施例7)
実施例1の表面保護層の水系塗工剤Eに換えて下記配合の表面保護層用の溶剤系塗工剤Jを用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
表面保護層用の溶剤系塗工剤J
・アクリル系樹脂(OP−A4、昭和インク工業所製)
・イソシアネート硬化剤(OP−No.81硬化剤、昭和インク工業所製)
・メチルイソブチルケトン:20重量部
・酢酸エチル:20重量部
(実施例8)
実施例7の裏面プライマ層用水系塗工液Aに換えて上記裏面プライマ層用溶剤系塗工剤Iを用いた以外は、実施例7と同様にして建材用フィルムを得た。
(実施例9)
実施例8のベタインキ層用の水系塗工剤B、絵柄インキ層用の水系塗工剤Cに換えてベタインキ層用の溶剤系塗工剤K、絵柄インキ層用の溶剤系塗工剤Lをそれぞれ用いた以外は実施例8と同様にして建材用フィルムを得た。
ベタインキ層用の溶剤系塗工剤K
・アクリルウレタンインキ(UE、昭和インク工業所製):100重量部
・架橋剤(FW、昭和インク工業所製):5重量部
・メチルイソブチルケトン:20重量部
・酢酸エチル:20重量部
絵柄インキ層用の溶剤系塗工剤L
・アクリルウレタン系樹脂(TMK、昭和インク工業所製)
・メチルイソブチルケトン:20重量部
・酢酸エチル:20重量部
(実施例10)
実施例9の表面保護層用の溶剤系塗工剤Jに換えて表面保護層用の水系塗工剤Eを用いた以外は、実施例9と同様にして建材用フィルムを得た。
(実施例11)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて製造例2のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(実施例12)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて製造例3のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(実施例13)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて製造例4のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(実施例14)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて製造例5のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(実施例15)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて製造例6のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(比較例1)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて比較製造例1のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(比較例2)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて比較製造例2のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(比較例3)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて比較製造例3のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(比較例4)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて比較製造例4のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
(比較例5)
実施例1の製造例1のポリエステル樹脂に換えて比較製造例5のポリエステル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして建材用フィルムを得た。
上述した実施例1〜15、比較例1〜5の構成をまとめると、表1のとおりである。
(層間密着性の評価方法と結果)
実施例1〜15、比較例1〜5で得られた各建材用フィルムの層間密着性を評価した。
(評価方法)
(1)剥離試験
引張試験機(INSTRON5500、INSTRON社製)を用い、25℃、引張速度100mm/分の条件下で引張試験を行った。剥離強度は、建材用フィルムの基材シートと、透明樹脂層との間の開き角180°の条件で引張試験したときの強度で評価した。
(2)常態層間密着性試験
上記(1)の剥離試験において、剥離強度が19.6N以上のものを合格として○で表し、19.6未満のものを不合格として×で表した。
(3)耐侯性促進試験
アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製)を用い、照度60mW/cm2、光源からの距離240mm、照射スペクトル帯域295〜450mmからなる紫外線を、建材用フィルムの表面保護層側に20時間照射(ブラックパネル温度63℃、湿度50%)し、暗所下4時間(ブラックパネル温度30℃、湿度98%)のサイクル条件で4サイクル(96h)で試験した(以下、耐候性促進試験という)。試験後、建材用フィルムサンプルを取り出し室温25℃/湿度50%にて試験後2日間放置した後、引張試験機(INSTRON5500、INSTRON社製)を用い、25℃、引張速度100mm/分の条件下で引張試験を行い、剥離強度を評価した。剥離強度が5N以上のものを合格とし○で表し、5N未満のものを不合格として×で表した。
(4)耐水層間密着性試験
建材用フィルムを水道水中に4週間浸漬させた。試験後、建材フィルムサンプルを取り出し室温25℃/湿度50%にて試験後2日間放置した後、引張試験機(INSTRON5500、INSTRON社製)を用い、25℃、引張速度100mm/分の条件下で引張試験を行い、剥離強度で評価した。剥離強度が15.0N以上のものを合格とし○で表し、15.0N未満のものを不合格として×で表した。
(5)耐煮沸層間密着性試験
建材用フィルムを煮沸した水道水中に5分間浸漬させた。試験後、建材用フィルムサンプルを取り出し室温25℃/湿度50%にて試験後2日間放置した後、引張試験機(INSTRON5500、INSTRON社製)を用い、25℃、引張速度100mm/分の条件下で引張試験を行い、剥離強度で評価した。剥離強度が15.0N以上のものを合格とし○で表し、15.0N未満のものを不合格として×で表した。
(6)耐熱層間密着性試験
建材用フィルムを温度80℃の恒温槽に入れ、1ヶ月放置した。試験後、建材用フィルムのサンプルを取り出し室温25℃/湿度50%にて試験後2日間放置した後、引張試験機(INSTRON5500、INSTRON社製)を用い、25℃、引張速度100mm/分の条件下で引張試験を行い、剥離強度で評価した。剥離強度が15.0N以上のものを合格とし○で表し、15.0N未満のものを不合格として×で表した。
表2は、製造例1〜6の塗工剤の組成を示し、表3は、比較製造例1〜5の塗工剤の組成を示す。また、表4は、実施例1〜15、比較例1〜5の建材用フィルムの層間密着性評価の評価結果を示す。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1,11 建材用フィルム、2,12 基材シート、3,13 インキ層、4,14 接着剤層、5,15 透明樹脂層、16 表面保護層、17 裏面プライマ層。