以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る制御装置について説明する。図1は、本実施形態の制御装置1およびこれを適用した燃料供給装置10の概略構成を示している。同図に示すように、この制御装置1は、ECU2を備えており、このECU2は、後述するように、燃料圧制御などの制御処理を実行する。
この燃料供給装置10(燃料供給系)は、直列4気筒タイプの内燃機関(以下「エンジン」という)3に適用されたものであり、エンジン運転中、4つの燃料噴射弁9に高圧の燃料(ガソリン)を供給する。燃料供給装置10は、燃料タンク11と、これに燃料供給路12および燃料戻し路14を介して接続されたデリバリパイプ13と、燃料供給路12および燃料戻し路14を開閉する電磁制御弁15などを備えている。
この燃料供給路12には、低圧ポンプ16および高圧ポンプ17が設けられている。低圧ポンプ16は、ECU2により運転が制御される電動ポンプタイプのものであり、エンジン運転中、常に運転され、燃料タンク11内の燃料を所定圧(例えば0.5MPa)まで増圧し、高圧ポンプ17側に吐出する。
また、高圧ポンプ17は、図示しないクランクシャフトに連結されており、クランクシャフトの回転に伴って、低圧ポンプ16からの燃料をさらに増圧し、デリバリパイプ13側に吐出する。
一方、デリバリパイプ13は、その内部空間が高圧ポンプ17からの燃料を高圧状態で蓄える燃料室13aになっている。このデリバリパイプ13には、前述した4つの燃料噴射弁9および燃料圧センサ20が取り付けられており、これらの燃料噴射弁9の開弁により、燃料室13a内の燃料が、エンジン3の燃焼室(図示せず)内に噴射される。
また、燃料圧センサ20は、ECU2に接続されており、燃料室13a内の燃料圧Pfを検出し、それを表す検出信号をECU2に出力する。なお、本実施形態では、燃料圧センサ20が制御量検出手段に相当し、燃料圧Pfが制御量に相当する。
さらに、電磁制御弁15は、電磁アクチュエータ15aとスプール弁機構15bを組み合わせたタイプのものであり、この電磁アクチュエータ15aは、ECU2に接続されている。電磁アクチュエータ15aは、ECU2からの後述する燃料圧制御入力Upfにより制御されることによって、スプール弁機構15bの弁体15cを、図2(a)に示す増圧位置と、図2(b)に示す保持位置と、図2(c)に示す減圧位置との間で駆動する。
この場合、電磁制御弁15が増圧位置に制御されているときには、弁体15cにより、燃料供給路12が開放されるとともに、燃料戻し路14が閉鎖される。一方、電磁制御弁15が減圧位置に制御されているときには、弁体15cにより、燃料供給路12が閉鎖されるとともに、燃料戻し路14が開放される。また、電磁制御弁15が保持位置に制御されているときには、弁体15cにより、燃料供給路12および燃料戻し路14がいずれも閉鎖される。
以上の構成により、この燃料供給装置10では、ECU2により、電磁制御弁15の弁体15cの位置が制御され、それにより、後述するように、燃料圧Pfが制御される。
また、ECU2には、クランク角センサ21、アクセル開度センサ22およびイグニッション・スイッチ(以下「IG・SW」という)23が接続されている。このクランク角センサ21(制御量検出手段)は、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、エンジン3のクランクシャフトの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号をECU2に出力する。このCRK信号は、所定クランク角(例えば10゜)毎に1パルスが出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。
また、アクセル開度センサ22は、エンジン3が搭載された車両のアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号をECU2に出力する。さらに、IG・SW23は、イグニッションキー(図示せず)操作によりON/OFFされるとともに、そのON/OFF状態を表す信号をECU2に出力する。
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ20〜22の検出信号およびIG・SW23の出力信号に応じ、高圧ポンプ17および電磁制御弁15を介して、燃料圧Pfを制御する。また、ECU2は、燃料噴射弁9を介して、燃料噴射制御を実行するとともに、点火プラグ(図示せず)を介して、点火時期制御を実行する。
なお、本実施形態では、ECU2が、制御量検出手段、目標制御量設定手段、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段、第2外乱推定値算出手段、制御入力算出手段、モデルパラメータ設定手段および同定手段に相当する。
次に、図3を参照しながら、第1実施形態の制御装置1について説明する。同図に示すように、制御装置1は、燃料圧制御入力Upfを制御対象4に入力することにより、制御量としての燃料圧Pfを制御するものであり、この制御対象4は、燃料供給装置10を含む系に相当する。
同図に示すように、制御装置1は、2自由度応答指定型コントローラ30、ハイブリッド外乱オブザーバ40および目標燃料圧算出部50を備えており、これらは、具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、2自由度応答指定型コントローラ30が制御入力算出手段に相当し、ハイブリッド外乱オブザーバ40が、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段および第2外乱推定値算出手段に相当し、目標燃料圧算出部50が目標制御量設定手段に相当する。
まず、目標燃料圧算出部50では、後述するマップ検索などにより目標燃料圧Pf_cmd(目標制御量)が算出される。次いで、2自由度応答指定型コントローラ30では、目標燃料圧Pf_cmdおよび燃料圧Pfに基づき、下式(1)〜(6)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、燃料圧制御入力Upfが算出される。
これらの式(1)〜(6)において、記号(k)付きの各離散データは、所定の制御周期(本実施形態では5msec)に同期してサンプリングまたは算出されたデータであることを示しており、記号kは各離散データのサンプリングサイクルまたは算出サイクルの順番を表している。例えば、記号kは今回の制御タイミングでサンプリングまたは算出された値であることを、記号k−1は前回の制御タイミングでサンプリングまたは算出された値であることをそれぞれ示している。この点は、以下の離散データにおいても同様である。なお、以下の説明では、各離散データにおける記号(k)などを適宜、省略する。
この制御アルゴリズムでは、まず、式(1)に示す一次遅れタイプのローパスフィルタアルゴリズムにより、目標燃料圧のフィルタ値Pf_cmd_fが算出される。同式(1)において、Rは、目標値フィルタ設定パラメータであり、−1<R<0の関係が成立する値に設定される。
次いで、式(2)〜(6)に示す応答指定型制御アルゴリズム(スライディングモード制御アルゴリズムまたはバックステッピング制御アルゴリズム)により、燃料圧制御入力Upfが算出される。すなわち、式(2)に示すように、燃料圧制御入力Upfは、等価制御入力Ueqおよび到達則入力Urchの和として算出される。この等価制御入力Ueqは、式(3)により算出される。同式(3)において、a1,a2,b1,b2は、後述する制御対象モデルのモデルパラメータを示しており、これらは所定の一定値に設定されている。また、式(3)のc1,c2は、第1および第2外乱推定値であり、後述するようにハイブリッド外乱オブザーバ40により算出される。さらに、式(3)のSは、切換関数設定パラメータであり、−1<R<S<0の関係が成立する値に設定されている。
また、到達則入力Urchは、式(4)により算出される。この式(4)において、Krchは、所定の到達則ゲインを表しており、σは、式(5)のように定義される切換関数である。同式(5)のEpfは、追従誤差であり、式(6)に示すように定義される。
なお、以上の式(1)〜(6)は以下のように導出される。すなわち、制御対象4を、燃料圧制御入力Upfを制御入力とし、燃料圧Pfを制御量とし、第1および第2外乱推定値c1,c2が外乱として加えられる系として定義するとともに、離散時間系モデルとしてモデル化すると、下式(7)が得られる。
この式(7)の第1および第2外乱推定値c1,c2を離散化した制御対象モデルに基づき、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに収束するように、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御理論を適用すると、前述した式(1)〜(6)が導出される。
次に、前述したハイブリッド外乱オブザーバ40について説明する。このハイブリッド外乱オブザーバ40では、燃料圧Pfおよび燃料圧制御入力Upfに基づき、以下に述べるように、第1外乱推定値c1および第2外乱推定値c2が算出される。
最初に、第1外乱推定値c1の算出アルゴリズムについて説明する。この算出アルゴリズムでは、まず、下式(8)の推定アルゴリズムにより、燃料圧Pfの推定値Pf_hat(推定制御量)が算出される。この推定アルゴリズムの導出手法については後述する。
次いで、第1推定誤差e_dov(第1偏差)が下式(9)により算出される。
次に、第1推定誤差e_dovに基づき、下式(10)〜(14)により、第1外乱推定値c1が算出される。
上記式(10)に示すように、第1外乱推定値c1は、1次遅れタイプのローパスフィルタアルゴリズムにより算出される。同式(10)において、Qは、−1<Q≦0が成立するような値に設定されるフィルタ係数である。また、式(10)のc1*は、第1外乱推定値c1の被リミット値であり、式(11)〜(14)に示すレートリミットアルゴリズムにより算出される。同式(11)において、c1**は、被リミット値c1*の変化分に相当する値であり、式(12)〜(14)に示すように、第1推定誤差の今回値と前回値との偏差[e_dov(k)−e_dov(k−1)]に、−EPSを下限値とし、EPSを上限値とするリミット処理を施すことにより算出される。なお、値EPSは、正の所定値に設定される。
一方、前述した式(8)の推定アルゴリズムは、以下のように導出される。すなわち、制御対象を、燃料圧制御入力Upfを制御入力とし、燃料圧Pfを制御量とし、第2外乱推定値c2が外乱として加えられる系として定義すると、下式(15)が得られる。
この式(15)の各変数を離散時間1つ分シフトさせ、第2外乱推定値c2を離散化するとともに、左辺の燃料圧Pfをその推定値Pf_hatに置き換えると、前述した式(8)が得られる。
次に、第2外乱推定値c2の算出アルゴリズムについて説明する。この算出アルゴリズムでは、下式(16),(17)に示す固定ゲイン式の同定アルゴリズム(外乱推定アルゴリズム)により、第2外乱推定値c2が算出される。
上記式(16)において、λは、忘却係数であり、0<λ<1が成立するような値に設定されている。同式(16)に示すように、このような値1よりも小さい忘却係数λが、第2外乱推定値の前回値c2(k−1)に乗算されることにより、第2外乱推定値c2は、その演算の進行に伴って、値0に収束するように算出される。すなわち、第2外乱推定値c2に忘却効果が付与される。なお、忘却係数λによる忘却効果が不要な場合には、λ=1に設定しても良い。また、同式(16)のPdovは、所定の同定ゲイン(一定値)であり、e_dov_Hは、式(17)により算出される第2推定誤差(第2偏差)である。
以上のように、このハイブリッド外乱オブザーバ40では、第1外乱推定値c1は、レートリミットアルゴリズムとローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出されるので、所定の遅延特性(応答遅れ)を備えた値として算出される。そのため、制御対象4が定常状態にあって、外乱または目標燃料圧Pf_cmdの変化が小さく、モデル化誤差が比較的小さい場合には、そのようなモデル化誤差を第1外乱推定値c1のみにより補償することができるものの、過大な外乱や目標燃料圧Pf_cmdの急変に起因して、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態では、第1外乱推定値c1のみにより、それを迅速に補償するのは困難となる。
これに対して、第2外乱推定値c2は、第1推定誤差e_dovと第1外乱推定値c1との偏差である第2推定誤差e_dov_Hに基づき、固定ゲイン式の同定アルゴリズムにより算出されるので、上述したようにモデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態でも、第1外乱推定値c1のみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2により迅速に補償することができる。
また、第2外乱推定値c2の算出に用いる同定アルゴリズムにおいて、忘却係数λを用いなかった場合、すなわちλ=1とした場合、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態から、これが比較的、小さい値となる定常状態まで、第2外乱推定値c2の演算を継続すると、同定アルゴリズムに含まれる積分構造に起因して、第2外乱推定値c2が振動的な繰り返し挙動を示すとともに、第1外乱推定値c1と互いに干渉し合う状態が発生し、それにより、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに対して振動的な揺り返し挙動を示す可能性がある。これに対して、本実施形態では、第2外乱推定値c2の算出アルゴリズムにおいて、忘却係数λが第2外乱推定値の前回値c2(k−1)に乗算されるので、この忘却係数λによる忘却効果により、演算の経過に伴って、第2外乱推定値c2が値0に収束することになる。それにより、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態では、第2外乱推定値c2により、第1外乱推定値c1のみでは補償しきれない分のモデル化誤差を補償できるとともに、演算の進行に伴い、モデル化誤差が比較的、小さい定常状態になった場合には、第1外乱推定値c1のみにより、それを適切に補償することができる。すなわち、2つの外乱推定値c1,c2が互いに干渉し合うのを回避しながら、外乱または目標燃料圧Pf_cmdの変化に起因するモデル化誤差を適切に補償でき、制御系の安定性をより向上させることができる。
以上のハイブリッド外乱オブザーバ40の構成を、ブロック図で表すと図4に示すものとなる。すなわち、同図に示すように、このハイブリッド外乱オブザーバ40では、推定器41において、前述した式(8)の推定アルゴリズムにより、燃料圧Pfの推定値Pf_hatが算出され、差分器42により、第1推定誤差e_dovが算出される。
次いで、レートリミッタ43において、第1推定誤差e_dovに基づき、前述した式(11)〜(14)のアルゴリズムにより、被リミット値c1*が算出される。そして、ローパスフィルタ44において、前述した式(10)のアルゴリズムにより、第1外乱推定値c1が算出される。このローパスフィルタ44は、増幅器44a,44b、加算器44cおよび遅延素子44dによって構成される。なお、これらのレートリミッタ43およびローパスフィルタ44に代えて、式(10)〜(14)のアルゴリズムにより、第1推定誤差e_dovに基づき、第1外乱推定値c1を算出する非線形ローパスフィルタを用いてもよい。
一方、差分器45において、第2推定誤差e_dov_Hが算出され、ゲイン係数値算出部46によりゲイン係数値Pdov/(1+Pdov)が算出され、これらが乗算器47により互いに乗算される。一方、増幅器48bにおいて、遅延素子48aにより遅延された第2外乱推定値c2に、忘却係数λが乗算され、加算器48cにおいて、積e_dov_H・Pdov/(1+Pdov)と積λ・c2とを加算することにより、第2外乱推定値c2が算出される。
次に、図5を参照しながら、ECU2により実行される燃料圧制御処理について説明する。本処理は、前述した燃料圧制御入力Upfを算出するものであり、所定周期(本実施形態では5msec)で実行される。
まず、ステップ1で、RAMに記憶されている燃料圧Pfの値を読み込む。すなわち、燃料圧Pfの値をサンプリングする。なお、この燃料圧Pfの値は、図示しない燃料噴射制御処理において、燃料圧センサ20の検出信号値に基づき、移動平均演算により算出される。
次いで、ステップ2に進み、エンジン始動フラグF_ENGSTARTが「1」であるか否かを判別する。このエンジン始動フラグF_ENGSTARTは、図示しない判定処理において、エンジン回転数NEおよびIG・SW23の出力信号に応じて、エンジン始動制御中すなわちクランキング中であるか否かを判定することにより設定されるものであり、具体的には、エンジン始動制御中であるときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
ステップ2の判別結果がYESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ3に進み、目標燃料圧Pf_cmdを所定の始動時用値Pf_stに設定する。この所定の始動時用値Pf_stは、エンジン始動時間の短縮化と、エンジン始動に適した燃料噴霧とをバランス良く確保できる値(例えば2MPa)に設定されている。
次に、ステップ4に進み、燃料圧と目標燃料圧との偏差の絶対値|Pf−Pf_cmd|が所定の判定値εより小さいか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、燃料噴射を適切に実行可能な燃料圧Pfが確保されていることを表すために、ステップ5で、燃料圧確保フラグF_Pf_OKを「1」に設定する。
一方、ステップ4の判別結果がNOのときには、ステップ6で、燃料圧確保フラグF_Pf_OKを「0」に設定する。なお、F_Pf_OK=0のときには、燃料噴射制御処理および点火時期制御処理において、燃料噴射弁9による燃料噴射および点火プラグによる点火がそれぞれ停止される。
ステップ5または6に続くステップ7では、前述した式(1)〜(6),(8)〜(14),(16),(17)の制御アルゴリズムにより、燃料圧制御入力Upfを算出する。その後、本処理を終了する。
一方、前述したステップ2の判別結果がNOで、エンジン始動制御中でないときには、ステップ8に進み、アクセル開度APが所定値APREFより小さいか否かを判別する。この所定値APREFは、アクセルペダルが踏まれていないことを判別するためのものであり、アクセルペダルが踏まれていないことを判別可能な値(例えば1゜)に設定されている。
ステップ8の判別結果がYESで、アクセルペダルが踏まれていないときには、ステップ9に進み、触媒暖機タイマの計時値Tcatが所定値Tcatlmt(例えば30sec)より小さいか否かを判別する。この触媒暖機タイマは、触媒暖機制御処理の実行時間を計時するものであり、アップカウント式のタイマで構成されている。また、触媒暖機制御は、エンジン3の排気管に設けられた触媒装置内の触媒(いずれも図示せず)をエンジン始動後に急速に活性化させるための処理である。
ステップ9の判別結果がYESのときには、触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ10に進み、目標燃料圧Pf_cmdを所定の触媒暖機制御用値Pf_astに設定する。この所定の触媒暖機制御用値Pf_astは、触媒暖機制御において点火時期リタード制御の実行中、安定した燃焼状態を確保できるような燃料圧Pfの値(例えば20MPa)に設定されている。
次いで、前述したステップ7で、燃料圧制御入力Upfを算出した後、本処理を終了する。
一方、ステップ8またはステップ9の判別結果がNOのとき、すなわちエンジン始動制御中でない場合において、アクセルペダルが踏まれているとき、またはTcat≧Tcatlmtであるときには、ステップ11に進み、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図6に示すマップを検索することにより、通常運転用値Pf_mapを算出する。同図において、AP1〜AP3は、AP1<AP2<AP3の関係が成立するアクセル開度APの所定値を示している。
このマップでは、通常運転用値Pf_mapは、エンジン回転数NEが高いほど、またはアクセル開度APが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、エンジン回転数NEが高いほど、またはアクセル開度APが大きいほど、エンジン3に対する要求出力が大きいことで、より高い燃料圧Pfが要求されることによる。
ステップ11に続くステップ12では、目標燃料圧Pf_cmdを上記通常運転用値Pf_mapに設定する。次いで、前述したステップ7で、燃料圧制御入力Upfを算出し
た後、本処理を終了する。
次に、以上のように構成された本実施形態の制御装置1による燃料圧の制御シミュレーション結果(以下「制御結果」という)について説明する。まず、図7は、本実施形態の制御結果を示している。また、図8は、本実施形態のハイブリッド外乱オブザーバ40に代えて、一般的な外乱オブザーバを用いた場合の比較例の制御結果を示している。すなわち、この比較例の制御結果は、外乱オブザーバにおいて、前述した式(8)中のc2をc1に置き換えた式と、前述した式(9)〜(14)により、第1外乱推定値c1のみを算出し、2自由度応答指定型コントローラにおいて、前述した式(3)中のc2を省略した式と、前述した式(1),(2),(4)〜(6)により、燃料圧制御入力Upfを算出した場合のものに相当する。
まず、図8を参照すると明らかなように、比較例の制御結果では、目標燃料圧Pf_cmdが比較的、大きく変化した際(時刻t11,t12)、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに対してオーバーシュートし、両者の乖離度合すなわち偏差が一時的に急増するとともに、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに収束するまでの間、振動的な揺り返し挙動を示しており、制御系の安定性が低い状態にあることが判る。
これに対して、本実施形態の制御結果では、目標燃料圧Pf_cmdが比較的、大きく変化した際(時刻t1,t2)でも、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに対してオーバーシュートすることなく、両者の乖離度合が小さい状態に抑制されているとともに、燃料圧Pfが、振動的な揺り返し挙動をほとんど示すことなく、目標燃料圧Pf_cmdに収束しており、制御系の安定性が高い状態にあることが判る。
以上のように、本実施形態の制御装置1によれば、ハイブリッド外乱オブザーバ40により、第1外乱推定値c1および第2外乱推定値c2が算出され、これらを用いて燃料圧制御入力Upfが算出される。この場合、第1外乱推定値c1は、レートリミットアルゴリズムとローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出されることによって、所定の遅延特性を備えた値として算出されるので、外乱または目標燃料圧Pf_cmdの変化に起因するモデル化誤差が比較的小さい定常状態では、そのモデル化誤差を第1外乱推定値c1により補償することができる。それにより、燃料圧Pfを、振動的な揺り返し挙動の発生を抑制しながら、目標燃料圧Pf_cmdに収束させることができる。
また、第2外乱推定値c2は、第1推定誤差e_dovと第1外乱推定値c1との偏差である第2推定誤差e_dov_Hに基づき、固定ゲイン式の同定アルゴリズムにより算出されるので、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態では、第1外乱推定値c1のみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2により迅速に補償することができる。それにより、燃料圧Pfを、オーバーシュートや振動的な揺り返し挙動の発生を抑制しながら、目標燃料圧Pf_cmdに迅速に収束させることができる。その結果、定常状態に加えて過渡状態においても、燃料圧制御系の安定性を向上させることができる。
さらに、第2外乱推定値c2の算出アルゴリズムにおいて、忘却係数λが第2外乱推定値の前回値c2(k−1)に乗算されるので、この忘却係数λによる忘却効果により、第2外乱推定値c2は、その演算の進行に伴って、値0に収束するように算出される。これにより、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態では、第2外乱推定値c2により、第1外乱推定値c1のみでは補償しきれない分のモデル化誤差を補償し、時間の経過に伴い、モデル化誤差が比較的、小さい定常状態になった場合には、第1外乱推定値c1のみにより、それを適切に補償することができる。すなわち、2つの外乱推定値c1,c2が互いに干渉し合うのを回避でき、燃料圧制御系の安定性をより向上させることができる。
次に、図9を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る制御装置1Aについて説明する。この制御装置1Aは、前述した第1実施形態の制御装置1と同様に、燃料圧Pfを制御するものであり、以下に述べるように、その制御アルゴリズムのみが第1実施形態の制御装置1と異なっている。
同図に示すように、制御装置1Aは、2自由度応答指定型コントローラ30A、ハイブリッド外乱オブザーバ40A、目標燃料圧算出部50Aおよびモデルパラメータスケジューラ60Aを備えており、これらは、具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、2自由度応答指定型コントローラ30Aが制御入力算出手段に相当し、ハイブリッド外乱オブザーバ40Aが、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段および第2外乱推定値算出手段に相当し、目標燃料圧算出部50Aが目標制御量設定手段に相当し、モデルパラメータスケジューラ60Aがモデルパラメータ設定手段に相当する。
まず、目標燃料圧算出部50Aでは、前述した目標燃料圧算出部50と同様の手法により、目標燃料圧Pf_cmdが算出される。次いで、モデルパラメータスケジューラ60Aでは、以下の式(18)〜(21)により、モデルパラメータa1,a2,b1,b2がそれぞれ算出される。
上記式(18)〜(21)におけるa1_base,a2_base,b1_base,b2_baseはそれぞれ、モデルパラメータa1,a2,b1,b2の検索値であり、これらの検索値は、具体的には、燃料圧Pfに応じて、図10に示すテーブルを検索することにより、算出される。同図に示すように、検索値a1_base,a2_baseは、燃料圧Pfが高いほど、その絶対値が小さくなるように設定されている。これは、燃料圧Pfが高いほど、高圧ポンプ17の効率低下に起因して燃料圧Pfが安定化するので、それに応じてモデルパラメータa1,a2の絶対値をより小さい値に設定するためである。また、検索値b1_base,b2_baseも、燃料圧Pfが高いほど、その絶対値が小さくなるように設定されている。これは、燃料圧Pfが高いほど、燃料圧制御入力Upfに対する燃料圧Pfの変化ゲインがより小さくなるので、それに応じて、モデルパラメータb1,b2の絶対値をより小さい値に設定するためである。
さらに、式(20),(21)におけるKneは、補正係数であり、この補正係数Kneは、具体的には、エンジン回転数NEに応じて、図11に示すテーブルを検索することにより、算出される。同図に示すように、補正係数Kneは、エンジン回転数NEが高いほど、より大きな値になるように設定されている。これは、エンジン回転数NEが高いほど、高圧ポンプ17の単位時間当たりの燃料吐出量がより増大することにより、燃料圧制御入力Upfに対する燃料圧Pfの変化ゲインがより大きくなるので、それに応じて、モデルパラメータb1,b2の絶対値をより大きい値に設定するためである。なお、本実施形態では、燃料圧Pfおよびエンジン回転数NEが制御対象の状態を表すパラメータに相当する。
また、2自由度応答指定型コントローラ30Aでは、下式(22)〜(27)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、燃料圧制御入力Upfが算出される。
以上の式(22)〜(27)の制御アルゴリズムでは、等価制御入力Ueqの算出式(24)において、右辺の第2外乱推定値c2に1/b1が乗算されていない点が、前述した2自由度応答指定型コントローラ30の式(1)〜(6)の制御アルゴリズムと異なっている。これは、以下の理由による。すなわち、前述した等価制御入力Ueqの算出式(3)を採用した場合、第2外乱推定値c2に1/b1が乗算されるため、第2外乱推定値c2によるモデル化誤差の補償効果に対して、モデルパラメータb1の値が直接的に影響を及ぼすことになる。その結果、例えば、燃料圧Pfまたはエンジン回転数NEの急変に伴ってモデルパラメータb1が急変すると、等価制御入力Ueqの算出式(3)内の値c2/b1も急変し、その影響により、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに対して乖離し、両者の間の偏差が増大する可能性がある。
これを回避するには、等価制御入力Ueqの算出式において、右辺の第2外乱推定値c2に1/b1が乗算されないように設定すればよい。したがって、本実施形態では、下式(28)に示す仮想制御対象モデルを用い、これに基づき、燃料圧Pfが目標燃料圧Pf_cmdに収束するように、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御理論を適用することにより、前述した式(22)〜(27)の制御アルゴリズムが導出される。
一方、ハイブリッド外乱オブザーバ40Aでは、以下に述べるように、燃料圧Pfおよび燃料圧制御入力Upfに基づき、第1外乱推定値c1および第2外乱推定値c2がそれぞれ算出される。まず、第1外乱推定値c1は、以下の式(29)〜(35)に示すように、推定アルゴリズム、レートリミットアルゴリズムおよびローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出される
以上の式(29)〜(35)の制御アルゴリズムでは、燃料圧Pfの推定値Pf_hatの算出式(29)において、右辺の第2外乱推定値c2にモデルパラメータb1が乗算されている点が、前述したハイブリッド外乱オブザーバ40の式(8)〜(14)と異なっている。これは、式(29)の推定アルゴリズムが、前述した式(28)の右辺から第1外乱推定値c1を省略した制御対象モデルに基づいて導出されることによる。
また、第2外乱推定値c2は、下式(36),(37)に示す可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズム(外乱推定アルゴリズム)により算出される。
以上のような第2実施形態の制御装置1Aによれば、ハイブリッド外乱オブザーバ40Aにより、2つの外乱推定値c1,c2が算出され、それを用いて燃料圧制御入力Upfが算出されるので、前述した制御装置1と同様の作用効果を得ることができる。
すなわち、定常状態で、モデル化誤差が比較的小さい場合には、そのモデル化誤差を第1外乱推定値c1により補償することができるとともに、過大な外乱や目標燃料圧Pf_cmdの急変に起因して、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態でも、第1外乱推定値c1のみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2により迅速に補償することができる。また、第2外乱推定値c2の算出アルゴリズムにおいて、忘却係数λが第2外乱推定値の前回値c2(k−1)に乗算されるので、2つの外乱推定値c1,c2が互いに干渉し合うのを回避できる。
これに加えて、本実施形態の制御装置1Aでは、モデルパラメータスケジューラ60Aにより、燃料圧Pfに応じて、モデルパラメータa1,a2が算出され、燃料圧Pfおよびエンジン回転数NEに応じて、モデルパラメータb1,b2が算出されるので、燃料圧Pfおよびエンジン回転数NEの変動に伴う制御対象4の動特性の変化、すなわち燃料圧Pfと燃料圧制御入力Upfとの間の動特性の変化を迅速に反映させながら、2つの外乱推定値c1,c2を算出でき、これらによりモデル化誤差を迅速に補償することができる。特に、等価制御入力Ueqの算出式(24)において、右辺の第2外乱推定値c2に1/b1が乗算されないように設定されているので、第2外乱推定値c2によるモデル化誤差の補償効果を適切に確保することができる。以上により、モデルパラメータa1,a2,b1,b2として所定の一定値を用いる第1実施形態の制御装置1と比べて、燃料圧制御系の安定性および制御精度をさらに向上させることができる。
次に、図12を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る制御装置1Bについて説明する。この制御装置1Bは、前述した制御装置1,1Aと同様に、燃料圧Pfを制御するものであり、以下に述べるように、その制御アルゴリズムのみが制御装置1,1Aと異なっている。
同図に示すように、制御装置1Bは、2自由度応答指定型コントローラ30B、ハイブリッド外乱オブザーバ40B、目標燃料圧算出部50Bおよびモデルパラメータスケジューラ60Bを備えており、これらは、具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、2自由度応答指定型コントローラ30Bが制御入力算出手段に相当し、ハイブリッド外乱オブザーバ40Bが、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段、第2外乱推定値算出手段および同定手段に相当し、目標燃料圧算出部50Bが目標制御量設定手段に相当する。
まず、目標燃料圧算出部50Bでは、前述した目標燃料圧算出部50と同様の手法により、目標燃料圧Pf_cmdが算出される。また、モデルパラメータスケジューラ60Bでは、以下の式(38)〜(41)により、まず、モデルパラメータa1,a2,b1,b2の基準値a1_sc,a2_sc,b1_sc,b2_scがそれぞれ算出される。
上記式(38)〜(41)において、検索値a1_base,a2_base,b1_base,b2_baseおよび補正係数Kneはそれぞれ、前述した図10,11のテーブル検索により算出される。
また、ハイブリッド外乱オブザーバ40Bでは、以下に述べるように、第1外乱推定値c1、第2外乱推定値c2およびモデルパラメータa1,a2,b1,b2がそれぞれ算出される。なお、以下に述べるアルゴリズムは、前述したハイブリッド外乱オブザーバ40Aと同じ制御対象モデルに基づいて導出される。
まず、第1外乱推定値c1の算出手法について説明する。2つのベクトルθ,ζをそれぞれ、転置行列が下式(42),(43)のようになるものとして設定すると、第1外乱推定値c1は、これらのベクトルθ,ζを用い、下式(44)〜(50)に示すように、推定アルゴリズム、レートリミットアルゴリズムおよびローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出される。
一方、モデルパラメータa1,a2,b1,b2および第2外乱推定値c2は、以下の式(51)〜(56)に示すδ修正法を適用した可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズム(外乱推定アルゴリズム)により算出される。
上記式(51)において、θscは、その転置行列が式(54)のように定義されるモデルパラメータおよび第2外乱推定値の基準値ベクトルであり、dθは、その転置行列が式(55)のように定義される修正項ベクトルである。同式(55)のda1,da2,db1,db2,dc2はそれぞれ、モデルパラメータa1,a2,b1,b2および第2外乱推定値c2の修正項である。この修正項ベクトルdθは、式(52)により算出され、同式(52)において、Pは一定値の同定ゲインであり、δは、式(56)のように定義される忘却係数ベクトルである。同式(56)のδi(i=1〜5)は、忘却係数であり、0<δi<1が成立するような値に設定される。なお、忘却係数ベクトルδによる忘却効果が不要な場合には、δi=1と設定してもよい。
以上のように、ハイブリッド外乱オブザーバ40Bでは、修正項ベクトルdθがオンボード同定されるとともに、そのように同定された修正項によって修正された値として、モデルパラメータa1,a2,b1,b2および第2外乱推定値c2が算出される。すなわち、ハイブリッド外乱オブザーバ40Bは、モデルパラメータa1,a2,b1,b2をオンボード同定するオンボード同定器としての機能も兼ね備えている。
また、2自由度応答指定型コントローラ30Bでは、前述した2自由度応答指定型コントローラ30Aと同じ制御アルゴリズム(すなわち前述した式(22)〜(27))により燃料圧制御入力Upfが算出される。
以上のような第3実施形態の制御装置1Bによれば、ハイブリッド外乱オブザーバ40Bにより、2つの外乱推定値c1,c2が算出され、それを用いて燃料圧制御入力Upfが算出されるので、前述した制御装置1,1Aと同様に、モデル化誤差が小さい場合に限らず、これが一時的に過大な値となった場合でも、第1外乱推定値c1のみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2により迅速に補償することができる。
さらに、第2外乱推定値c2の算出アルゴリズムにおいて、基準値ベクトルθscにおける第2外乱推定値c2の基準値が値0に設定されているとともに、式(52)において、忘却係数δ5が第2外乱推定値の修正項の前回値dc2(k−1)に乗算されるので、その忘却効果により、演算の進行に伴って、第2外乱推定値の修正項dc2が値0に収束し、最終的に、第2外乱推定値c2が基準値0に収束する。その結果、前述した制御装置1Aと同様に、2つの外乱推定値c1,c2が互いに干渉し合うのを回避できる。なお、修正項dc2の基準値が値0以外の値に設定されている場合でも、修正項dc2は、その基準値に最終的に収束するので、上記と同様の効果を得ることができる。
さらに、この制御装置1Bでは、前述したように、ハイブリッド外乱オブザーバ40Bがオンボード同定器としての機能を兼ね備えており、モデルパラメータa1,a2,b1,b2が、δ修正法を適用した可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズムによりオンボード同定されるので、電磁制御弁15における経年変化および個体間のばらつきに起因して、制御対象4の動特性が変化した場合でも、そのような動特性の変化を迅速に反映させながら、モデルパラメータa1,a2,b1,b2を算出することができる。それにより、モデルパラメータスケジューラ60Aにより設定されたモデルパラメータa1,a2,b1,b2を用いる第2実施形態の制御装置1Aと比べて、燃料圧制御系の安定性および制御精度をさらに向上させることができる。
なお、第3実施形態は、ハイブリッド外乱オブザーバ40Bにおける第2外乱推定値c2の同定アルゴリズムとして、可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズムを用いた例であるが、第2外乱推定値c2の同定アルゴリズムはこれに限らず、最小2乗法アルゴリズムなどのオンボード同定可能なアルゴリズムであればよい。また、モデルパラメータスケジューラ60Bに代えて、最小2乗法アルゴリズムなどの同定アルゴリズムによりモデルパラメータa1,a2,b1,b2を同定するオンボード同定器を用いてもよい。
次に、図13を参照しながら、本発明の第4実施形態に係る制御装置1Cについて説明する。この制御装置1Cは、以下に述べるように、図示しない吸気カムシャフトのクランクシャフトに対する位相(以下「カム位相」という)Cainを制御するものである。なお、以下の説明では、前述した制御装置1と同様の構成に関しては、同じ符号を付すとともに、その説明を省略する。
同図に示すように、この制御装置1Cは、ECU2を備えており、このECU2には、クランク角センサ21、カム角センサ24、バルブリフトセンサ25、可変カム位相機構70および可変バルブリフト機構80が接続されている。このカム角センサ24は、例えばマグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、吸気カムシャフトの回転に伴い、パルス信号であるCAM信号を所定のカム角(例えば1゜)毎にECU2に出力する。ECU2は、このCAM信号および前述したCRK信号に基づき、カム位相Cainを算出する。なお、本実施形態では、カム角センサ24が制御量検出手段に相当し、カム位相Cainが制御量に相当する。
また、バルブリフトセンサ25は、図示しない吸気弁の最大揚程であるバルブリフトLiftinを表す検出信号をECU2に出力する。
さらに、可変カム位相機構70は、ECU2からの位相制御入力Ucainにより、カム位相Cainを所定範囲内で無段階に進角側または遅角側に変更するものであり、例えば本出願人が特願2003−359810号で提案済みのものと同様に構成されているので、具体的な説明はここでは省略する。
一方、可変バルブリフト機構80は、ECU2からの制御入力により、バルブリフトLiftinを所定範囲内で無段階に変更するものであり、例えば本出願人が特願2003−359810号で提案済みのものと同様に構成されているので、具体的な説明はここでは省略する。
次に、図14を参照しながら、本実施形態の制御装置1Cについて説明する。この制御装置1Cは、位相制御入力Ucainを制御対象5に入力することにより、制御量としてのカム位相Cainを制御するものであり、この制御対象5は、可変カム位相機構70を含む系に相当する。
同図に示すように、制御装置1Cは、2自由度応答指定型コントローラ30C、ハイブリッド外乱オブザーバ40Cおよび目標カム位相算出部50Cを備えており、これらは、具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、2自由度応答指定型コントローラ30Cが制御入力算出手段に相当し、ハイブリッド外乱オブザーバ40Cが、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段および第2外乱推定値算出手段に相当し、目標カム位相算出部50Cが目標制御量設定手段に相当する。
まず、目標カム位相算出部50Cでは、目標カム位相Cain_cmd(目標制御量)が、エンジン3の運転状態に応じて、図示しないマップまたはテーブルを検索することにより算出される。次いで、2自由度応答指定型コントローラ30Cでは、目標カム位相Cain_cmdおよびカム位相Cainに基づき、下式(57)〜(62)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、位相制御入力Ucainが算出される。
上記式(57)において、Cain_cmd_fは、目標カム位相のフィルタ値であり、R_caは、−1<R_ca<0の関係が成立するように設定される目標値フィルタ設定パラメータである。また、式(59)のa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caは、後述する制御対象モデルのモデルパラメータを示しており、これらは所定の一定値に設定されている。また、式(59)のc1_ca,c2_caは、第1および第2外乱推定値であり、後述するようにハイブリッド外乱オブザーバ40Cにより算出される。さらに、式(59)において、S_caは、切換関数設定パラメータであり、−1<R_ca<S_ca<0の関係が成立する値に設定されている。また、式(60)において、Krch_caは、所定の到達則ゲインを表しており、σ_caは、式(61)のように定義される切換関数である。同式(61)のEcainは、式(62)により算出される追従誤差である。
なお、以上の式(57)〜(62)は以下のように導出される。すなわち、制御対象5を、位相制御入力Ucainを制御入力とし、カム位相Cainを制御量とし、第1および第2外乱推定値c1_ca,c2_caが入力される系として定義するとともに、離散時間系モデルとしてモデル化すると、下式(63)が得られる。
この式(63)の第1および第2外乱推定値c1_ca,c2_caを離散化した制御対象モデルに基づき、カム位相Cainが目標カム位相Cain_cmdに収束するように、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御理論を適用すると、前述した式(57)〜(62)が導出される。
次に、前述したハイブリッド外乱オブザーバ40Cについて説明する。このハイブリッド外乱オブザーバ40Cでは、カム位相Cainおよび位相制御入力Ucainに基づき、以下に述べるように、第1外乱推定値c1_caおよび第2外乱推定値c2_caが算出される。
具体的には、第1外乱推定値c1_caは、以下の式(64)〜(70)により算出される。
上記式(64)のCain_hatは、カム位相Cainの推定値(推定制御量)であり、式(65)のe_dovcaは、第1推定誤差(第1偏差)である。また、式(66)において、Q_caは、−1<Q_ca≦0が成立するような値に設定されるフィルタ係数である。また、c1_ca*は、第1外乱推定値c1_caの被リミット値であり、式(67)〜(70)に示すレートリミットアルゴリズムにより算出される。同式(67)において、c1_ca**は、被リミット値c1_ca*の変化分に相当する値であり、式(68)〜(70)に示すように、第1推定誤差の今回値と前回値との偏差[e_dovca(k)−e_dovca(k−1)]に、−EPS_caを下限値とし、EPS_caを上限値とするリミット処理を施すことにより算出される。なお、値EPS_caは、正の所定値に設定される。
また、第2外乱推定値c2_caは、下式(71),(72)に示す固定ゲイン式の同定アルゴリズム(外乱推定アルゴリズム)により算出される。
上記式(71)において、λ_caは、忘却係数であり、0<λ_ca<1が成立するような値に設定されている。なお、忘却係数λ_caによる忘却効果が不要な場合には、λ_ca=1に設定しても良い。また、同式(71)のPdovcaは、所定の同定ゲイン(一定値)であり、e_dovca_Hは、式(72)により算出される第2推定誤差(第2偏差)である。
以上のように、本実施形態の制御装置1Cによれば、ハイブリッド外乱オブザーバ40Cにより、第1外乱推定値c1_caおよび第2外乱推定値c2_caが算出され、これらを用いて位相制御入力Ucainが算出される。この場合、第1外乱推定値c1_caは、レートリミットアルゴリズムとローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出されるため、所定の遅延特性を備えた値として算出されるので、モデル化誤差が比較的小さい定常状態では、そのモデル化誤差を第1外乱推定値c1_caにより補償することができる。
また、第2外乱推定値c2_caは、第1推定誤差e_dovcaと第1外乱推定値c1_caとの偏差である第2推定誤差e_dovca_Hに基づき、固定ゲイン式の同定アルゴリズムにより算出されるので、過大な外乱や目標カム位相Cain_cmdの急変に起因して、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態でも、第1外乱推定値c1_caのみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2_caにより迅速に補償することができる。
さらに、第2外乱推定値c2_caの算出アルゴリズムにおいて、忘却係数λ_caが第2外乱推定値の前回値c2_ca(k−1)に乗算されるので、この忘却係数λ_caによる忘却効果により、第2外乱推定値c2_caは、その演算の進行に伴って、値0に収束するように算出される。これにより、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態では、第2外乱推定値c2_caにより、第1外乱推定値c1_caのみでは補償しきれない分のモデル化誤差を補償し、時間の経過に伴い、モデル化誤差が比較的、小さい定常状態になった場合には、第1外乱推定値c1_caのみにより、それを適切に補償することができる。すなわち、2つの外乱推定値c1_ca,c2_caが互いに干渉し合うのを回避でき、カム位相制御系の安定性をより向上させることができる。
次に、図15を参照しながら、本発明の第5実施形態に係る制御装置1Dについて説明する。この制御装置1Dは、前述した第4実施形態の制御装置1Cと同様に、位相制御入力Ucainによりカム位相Cainを制御するものであり、以下に述べるように、その制御アルゴリズムのみが第4実施形態の制御装置1Cと異なっている。
同図に示すように、制御装置1Dは、2自由度応答指定型コントローラ30D、ハイブリッド外乱オブザーバ40D、目標カム位相算出部50Dおよびモデルパラメータスケジューラ60Dを備えており、これらは、具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、2自由度応答指定型コントローラ30Dが制御入力算出手段に相当し、ハイブリッド外乱オブザーバ40Dが、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段および第2外乱推定値算出手段に相当し、目標カム位相算出部50Dが目標制御量設定手段に相当し、モデルパラメータスケジューラ60Dがモデルパラメータ設定手段に相当する。
まず、目標カム位相算出部50Dでは、目標カム位相Cain_cmdが、前述した目標カム位相算出部50Cと同様の手法により算出される。また、モデルパラメータスケジューラ60Dでは、以下の式(73)〜(76)により、モデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caがそれぞれ算出される。
上記式(73)〜(76)におけるa1_ca_base,a2_ca_base,b1_ca_base,b2_ca_baseはそれぞれ、モデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caの検索値であり、これらの検索値は、具体的には、バルブリフトLiftinに応じて、図16に示すテーブルを検索することにより、算出される。同図に示すように、検索値a1_ca_base,a2_ca_baseは、バルブリフトLiftinが大きいほど、その絶対値が大きくなるように設定されている。これは、バルブリフトLiftinが大きいほど、吸気カムの反力が増大し、カム位相Cainの安定性が低下するので、それに応じてモデルパラメータa1_ca,a2_caの絶対値をより大きい値に設定するためである。また、検索値b1_ca_base,b2_ca_baseも、バルブリフトLiftinが大きいほど、その絶対値がより大きくなるように設定されている。これは、バルブリフトLiftinが大きいほど、位相制御入力Ucainに対するカム位相Cainの変化ゲインがより大きくなるので、それに応じて、モデルパラメータb1_ca,b2_caの絶対値をより大きい値に設定するためである。
さらに、式(75),(76)におけるKne_caは、補正係数であり、この補正係数Kne_caは、具体的には、エンジン回転数NEに応じて、図17に示すテーブルを検索することにより、算出される。同図に示すように、補正係数Kne_caは、エンジン回転数NEが高いほど、より大きな値になるように設定されている。これは、エンジン回転数NEが高いほど、単位時間当たりに発生するカム反力がより増大することにより、位相制御入力Ucainに対するカム位相Cainの変化ゲインがより大きくなるので、それに応じて、モデルパラメータb1_ca,b2_caの絶対値をより大きい値に設定するためである。なお、本実施形態では、バルブリフトLiftinおよびエンジン回転数NEが制御対象の状態を表すパラメータに相当する。
また、2自由度応答指定型コントローラ30Dでは、下式(77)〜(82)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、位相制御入力Ucainが算出される。
一方、ハイブリッド外乱オブザーバ40Dでは、以下に述べるように、カム位相Cainおよび位相制御入力Ucainに基づき、第1外乱推定値c1_caおよび第2外乱推定値c2_caがそれぞれ算出される。まず、第1外乱推定値c1_caは、以下の式(83)〜(89)に示すように、推定アルゴリズム、レートリミットアルゴリズムおよびローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出される
また、第2外乱推定値c2_caは、下式(90),(91)に示す可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズム(外乱推定アルゴリズム)により算出される。
以上のような第5実施形態の制御装置1Dによれば、ハイブリッド外乱オブザーバ40Dにより、2つの外乱推定値c1_ca,c2_caが算出され、それを用いて位相制御入力Ucainが算出されるので、前述した第4実施形態の制御装置1Cと同様の作用効果を得ることができる。
すなわち、モデル化誤差が比較的小さい定常状態では、そのモデル化誤差を第1外乱推定値c1_caにより補償することができるとともに、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態でも、第1外乱推定値c1_caのみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2_caにより迅速に補償することができる。また、第2外乱推定値c2_caの算出アルゴリズムにおいて、忘却係数λ_caが第2外乱推定値の前回値c2_ca(k−1)に乗算されるので、2つの外乱推定値c1_ca,c2_caが互いに干渉し合うのを回避できる。
これに加えて、本実施形態の制御装置1Dでは、モデルパラメータスケジューラ60Dにより、バルブリフトLiftinに応じて、モデルパラメータa1_ca,a2_caが算出され、バルブリフトLiftinおよびエンジン回転数NEに応じて、モデルパラメータb1_ca,b2_caが算出されるので、バルブリフトLiftinおよびエンジン回転数NEの変動に伴う制御対象5の動特性の変化、すなわちカム位相Cainと位相制御入力Ucainとの間の動特性の変化を迅速に反映させながら、2つの外乱推定値c1_ca,c2_caを算出でき、これらによりモデル化誤差を迅速に補償することができる。それにより、モデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caとして所定の一定値を用いる第4実施形態の制御装置1Cと比べて、カム位相制御系の安定性および制御精度をさらに向上させることができる。
次に、図18を参照しながら、本発明の第6実施形態に係る制御装置1Eについて説明する。この制御装置1Eは、前述した制御装置1C,1Dと同様に、可変カム位相機構70のカム位相Cainを制御するものであり、以下に述べるように、その制御アルゴリズムのみが制御装置1C,1Dと異なっている。
同図に示すように、制御装置1Eは、2自由度応答指定型コントローラ30E、ハイブリッド外乱オブザーバ40E、目標カム位相算出部50Eおよびモデルパラメータスケジューラ60Eを備えており、これらは、具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、2自由度応答指定型コントローラ30Eが制御入力算出手段に相当し、ハイブリッド外乱オブザーバ40Eが、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段、第2外乱推定値算出手段および同定手段に相当し、目標カム位相算出部50Eが目標制御量設定手段に相当する。
まず、目標カム位相算出部50Eでは、目標カム位相Cain_cmdが、前述した目標カム位相算出部50Cと同様の手法により算出される。また、モデルパラメータスケジューラ60Eでは、以下の式(92)〜(95)により、まず、モデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caの基準値a1_ca_sc,a2_ca_sc,b1_ca_sc,b2_ca_scがそれぞれ算出される。
上記式(92)〜(95)において、検索値a1_ca_base,a2_ca_base,b1_ca_base,b2_ca_baseおよび補正係数Kne_caはそれぞれ、前述した図16,17のテーブル検索により算出される。
また、ハイブリッド外乱オブザーバ40Eでは、以下に述べるように、第1外乱推定値c1_ca、第2外乱推定値c2_caおよびモデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caがそれぞれ算出される。まず、第1外乱推定値c1_caは、下式(96)〜(104)に示すように、推定アルゴリズム、レートリミットアルゴリズムおよびローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出される。
一方、モデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caおよび第2外乱推定値c2_caは、以下の式(105)〜(110)に示すδ修正法を適用した可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズム(外乱推定アルゴリズム)により算出される。すなわち、ハイブリッド外乱オブザーバ40Eは、オンボード同定器としての機能も兼ね備えている。
上記式(105)において、θcascは、その転置行列が式(108)のように定義されるモデルパラメータおよび第2外乱推定値の基準値ベクトルであり、dθcaは、式(109)のように定義される修正項ベクトルである。同式(109)のda1_ca,da2_ca,db1_ca,db2_ca,dc2_caは、モデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caおよび第2外乱推定値c2_caの修正項である。この修正項ベクトルdθcaは、式(106)により算出され、同式(106)において、Pcaは一定値の同定ゲインであり、δcaは、式(110)のように定義される忘却係数ベクトルである。同式(110)のδcai(i=1〜5)は、忘却係数であり、0<δcai<1が成立するように設定される。なお、忘却係数ベクトルδcaによる忘却効果が不要な場合には、δcai=1と設定してもよい。
また、2自由度応答指定型コントローラ30Eでは、前述した2自由度応答指定型コントローラ30Dと同じ制御アルゴリズム(すなわち前述した式(77)〜(82))により位相制御入力Ucainが算出される。
以上のような第6実施形態の制御装置1Eによれば、ハイブリッド外乱オブザーバ40Eにより、2つの外乱推定値c1_ca,c2_caが算出され、それを用いて位相制御入力Ucainが算出されるので、前述した制御装置1C,1Dと同様に、モデル化誤差が小さい定常状態に限らず、これが一時的に過大な値となった過渡状態でも、第1外乱推定値c1_caのみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2_caにより迅速に補償することができる。
さらに、第2外乱推定値c2_caの算出アルゴリズムにおいて、基準値ベクトルθcascにおける第2外乱推定値c2_caの基準値が値0に設定されているとともに、式(106)において、忘却係数δca5が第2外乱推定値の修正項の前回値dc2_ca(k−1)に乗算されるので、その忘却効果により、演算の進行に伴って、第2外乱推定値の修正項dc2_caが値0に収束し、最終的に、第2外乱推定値c2_caが基準値0に収束する。その結果、前述した制御装置1Dと同様に、2つの外乱推定値c1_ca,c2_caが互いに干渉し合うのを回避できる。
さらに、前述したように、ハイブリッド外乱オブザーバ40Eがオンボード同定器としての機能を兼ね備えており、モデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caが、δ修正法を適用した可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズムによりオンボード同定されるので、可変カム位相機構70における経年変化および個体間のばらつきなどに起因して、制御対象5の動特性が変化した場合でも、そのような動特性の変化を迅速に反映させながら、モデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caを算出することができる。それにより、パラメータスケジューラ60Dにより設定されたモデルパラメータa1_ca,a2_ca,b1_ca,b2_caを用いる第5実施形態の制御装置1Dと比べて、カム位相制御系の安定性および制御精度をさらに向上させることができる。
次に、図19を参照しながら、本発明の第7実施形態に係る制御装置1Fについて説明する。この制御装置1Fは、以下に述べるように、アイドル運転中のエンジン回転数NEを制御するものである。なお、以下の説明では、前述した制御装置1と同様の構成に関しては、同じ符号を付すとともに、その説明を省略する。
同図に示すように、制御装置1Fは、ECU2を備えており、このECU2には、電子制御式のスロットル弁機構90が接続されている。この電子制御式のスロットル弁機構90は、ECU2からの回転数制御入力Uneにより、図示しないスロットル弁の開度を所定範囲内で無段階に変更するものであり、電気モータと、これにギヤ機構を介して接続されたスロットル弁で構成されている。これらの構成は公知であるので、その具体的な説明はここでは省略する。
次に、図20を参照しながら、制御装置1Fについて説明する。この制御装置1Fは、回転数制御入力Uneを制御対象6に入力することにより、制御量としてのアイドル運転中のエンジン回転数NEを制御するものであり、この制御対象6は、スロットル弁機構90を含む系に相当する。
同図に示すように、制御装置1Fは、2自由度応答指定型コントローラ30F、ハイブリッド外乱オブザーバ40Fおよび目標エンジン回転数算出部50Fを備えており、これらは、具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、2自由度応答指定型コントローラ30Fが制御入力算出手段に相当し、ハイブリッド外乱オブザーバ40Fが、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段および第2外乱推定値算出手段に相当し、目標エンジン回転数算出部50Fが目標制御量設定手段に相当する。
まず、目標エンジン回転数算出部50Fでは、目標エンジン回転数NE_cmd(目標制御量)が、エンジン水温などに応じて、図示しないマップまたはテーブルを検索することにより算出される。次いで、2自由度応答指定型コントローラ30Fでは、目標エンジン回転数NE_cmdおよびエンジン回転数NEに基づき、下式(111)〜(116)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、回転数制御入力Uneが算出される。なお、目標エンジン回転数NE_cmd(目標制御量)は、エンジン水温などに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出される。
上記式(111)において、NE_cmd_fは、目標エンジン回転数のフィルタ値であり、R_neは、−1<R_ne<0の関係が成立するように設定される目標値フィルタ設定パラメータである。また、式(113)のa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neは、後述する制御対象モデルのモデルパラメータを示しており、これらは所定の一定値に設定されている。また、式(113)のc1_ne,c2_neは、第1および第2外乱推定値であり、後述するようにハイブリッド外乱オブザーバ40Fにより算出される。さらに、式(113)において、S_neは、切換関数設定パラメータであり、−1<R_ne<S_ne<0の関係が成立する値に設定されている。また、式(114)において、Krch_neは、所定の到達則ゲインを表しており、σ_neは、式(115)のように定義される切換関数である。同式(115)のEneは、式(116)により算出される追従誤差である。
なお、以上の式(111)〜(116)は以下のように導出される。すなわち、制御対象6を、回転数制御入力Uneを制御入力とし、エンジン回転数NEを制御量とし、第1および第2外乱推定値c1_ne,c2_neが入力される系として定義するとともに、離散時間系モデルとしてモデル化すると、下式(117)が得られる。
この式(117)の第1および第2外乱推定値c1_ne,c2_neを離散化した制御対象モデルに基づき、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NE_cmdに収束するように、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御理論を適用すると、前述した式(111)〜(116)が導出される。
次に、前述したハイブリッド外乱オブザーバ40Fについて説明する。このハイブリッド外乱オブザーバ40Fでは、エンジン回転数NEおよび回転数制御入力Uneに基づき、以下に述べるように、第1外乱推定値c1_neおよび第2外乱推定値c2_neが算出される。
具体的には、第1外乱推定値c1_neは、以下の式(118)〜(124)により算出される。
上記式(118)のNE_hatは、エンジン回転数NEの推定値(推定制御量)であり、式(119)のe_dovneは、第1推定誤差(第1偏差)である。また、式(120)において、Q_neは、−1<Q_ne≦0が成立するような値に設定されるフィルタ係数である。また、c1_ne*は、第1外乱推定値c1_neの被リミット値であり、式(121)〜(124)に示すレートリミットアルゴリズムにより算出される。同式(121)において、c1_ne**は、被リミット値c1_ne*の変化分に相当する値であり、式(122)〜(124)に示すように、第1推定誤差の今回値と前回値との偏差[e_dovne(k)−e_dovne(k−1)]に、−EPS_neを下限値とし、EPS_neを上限値とするリミット処理を施すことにより算出される。なお、値EPS_neは、正の所定値に設定される。
また、第2外乱推定値c2_neは、下式(125),(126)に示す固定ゲイン式の同定アルゴリズム(外乱推定アルゴリズム)により算出される。
上記式(125)において、λ_neは、忘却係数であり、0<λ_ne<1が成立するような値に設定されている。なお、忘却係数λ_neによる忘却効果が不要な場合には、λ_ne=1に設定しても良い。また、同式(125)のPdovneは、所定の同定ゲイン(一定値)であり、e_dovne_Hは、式(126)により算出される第2推定誤差(第2偏差)である。
以上のように、本実施形態の制御装置1Fによれば、ハイブリッド外乱オブザーバ40Fにより、第1外乱推定値c1_neおよび第2外乱推定値c2_neが算出され、これらを用いて回転数制御入力Uneが算出される。この場合、第1外乱推定値c1_neは、レートリミットアルゴリズムとローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出されるため、所定の遅延特性を備えた値として算出されるので、モデル化誤差が比較的小さい定常状態では、そのモデル化誤差を第1外乱推定値c1_neにより補償することができる。
また、第2外乱推定値c2_neは、第1推定誤差e_dovneと第1外乱推定値c1_neとの偏差である第2推定誤差e_dovne_Hに基づき、固定ゲイン式の同定アルゴリズムにより算出されるので、過大な外乱などに起因して、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態でも、第1外乱推定値c1_neのみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2_neにより迅速に補償することができる。
さらに、第2外乱推定値c2_neの算出アルゴリズムにおいて、忘却係数λ_neが第2外乱推定値の前回値c2_ne(k−1)に乗算されるので、この忘却係数λ_neによる忘却効果により、第2外乱推定値c2_neは、その演算の進行に伴って、値0に収束するように算出される。これにより、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態では、第2外乱推定値c2_neにより、第1外乱推定値c1_neのみでは補償しきれない分のモデル化誤差を補償し、時間の経過に伴い、モデル化誤差が比較的、小さい定常状態になった場合には、第1外乱推定値c1_neのみにより、それを適切に補償することができる。すなわち、2つの外乱推定値c1_ne,c2_neが互いに干渉し合うのを回避でき、エンジン回転数制御系の安定性をより向上させることができる。
次に、図21を参照しながら、本発明の第8実施形態に係る制御装置1Gについて説明する。この制御装置1Gは、前述した第7実施形態の制御装置1Fと同様に、回転数制御入力Uneにより、アイドル運転中のエンジン回転数NEを制御するものであり、以下に述べるように、その制御アルゴリズムのみが第7実施形態の制御装置1Fと異なっている。
同図に示すように、制御装置1Gは、2自由度応答指定型コントローラ30G、ハイブリッド外乱オブザーバ40G、目標エンジン回転数算出部50Gおよびモデルパラメータスケジューラ60Gを備えており、これらは、具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、2自由度応答指定型コントローラ30Gが制御入力算出手段に相当し、ハイブリッド外乱オブザーバ40Gが、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段および第2外乱推定値算出手段に相当し、目標エンジン回転数算出部50Gが目標制御量設定手段に相当し、モデルパラメータスケジューラ60Gがモデルパラメータ設定手段に相当する。
まず、目標エンジン回転数算出部50Gでは、目標エンジン回転数NE_cmdが、前述した目標エンジン回転数算出部50Fと同様の手法により算出される。また、モデルパラメータスケジューラ60Gでは、以下の式(127)〜(130)により、モデルパラメータa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neがそれぞれ算出される。
上記式(127)〜(130)におけるa1_ne_base,a2_ne_base,b1_ne_base,b2_ne_baseはそれぞれ、モデルパラメータa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neの検索値であり、これらの検索値は、具体的には、エンジン回転数NEに応じて、図22に示すテーブルを検索することにより、算出される。同図に示すように、検索値a1_ne_base,a2_ne_baseは、エンジン回転数NEが大きいほど、その絶対値が小さくなるように設定されている。これは、エンジン回転数NEが大きいほど、エンジン3における慣性力が増大し、エンジン回転数NEの安定性が向上するので、それに応じてモデルパラメータa1_ne,a2_neの絶対値をより小さい値に設定するためである。また、検索値b1_ne_base,b2_ne_baseも、エンジン回転数NEが高いほど、その絶対値がより小さくなるように設定されている。これは、エンジン回転数NEが高いほど、回転数制御入力Uneに対するエンジン回転数NEの変化ゲインがより小さくなるので、それに応じて、モデルパラメータb1_ne,b2_neの絶対値をより小さい値に設定するためである。
さらに、式(129),(130)におけるKlsは、補正係数であり、この補正係数Klsは、具体的には、補機損失Plossに応じて、図23に示すテーブルを検索することにより、算出される。この補機損失Plossは、エアコンデイショナーなどの補機作動に伴うエンジン3のエネルギ損失を表すものである。同図に示すように、補正係数Klsは、補機損失Plossが大きいほど、より小さな値になるように設定されている。これは、補機損失Plossが大きいほど、エンジン3のフリクションが増大することにより、回転数制御入力Uneに対するエンジン回転数NEの変化ゲインがより小さくなるので、それに応じて、モデルパラメータb1_ne,b2_neの絶対値をより小さい値に設定するためである。なお、本実施形態では、エンジン回転数NEおよび補機損失Plossが制御対象の状態を表すパラメータに相当する。
また、2自由度応答指定型コントローラ30Gでは、下式(131)〜(136)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、回転数制御入力Uneが算出される。
一方、ハイブリッド外乱オブザーバ40Gでは、以下に述べるように、エンジン回転数NEおよび回転数制御入力Uneに基づき、第1外乱推定値c1_neおよび第2外乱推定値c2_neがそれぞれ算出される。まず、第1外乱推定値c1_neは、以下の式(137)〜(143)に示すように、推定アルゴリズム、レートリミットアルゴリズムおよびローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出される
また、第2外乱推定値c2_neは、下式(144),(145)に示す可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズム(外乱推定アルゴリズム)により算出される。
以上のような第8実施形態の制御装置1Gによれば、ハイブリッド外乱オブザーバ40Gにより、2つの外乱推定値c1_ne,c2_neが算出され、それを用いて回転数制御入力Uneが算出されるので、前述した第7実施形態の制御装置1Fと同様の作用効果を得ることができる。
すなわち、モデル化誤差が比較的小さい定常状態では、そのモデル化誤差を第1外乱推定値c1_neにより補償することができるとともに、モデル化誤差が一時的に過大な値となった過渡状態でも、第1外乱推定値c1_neのみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2_neにより迅速に補償することができる。また、第2外乱推定値c2_neの算出アルゴリズムにおいて、忘却係数λ_neが第2外乱推定値の前回値c2_ne(k−1)に乗算されるので、2つの外乱推定値c1_ne,c2_neが互いに干渉し合うのを回避できる。
これに加えて、本実施形態の制御装置1Gでは、モデルパラメータスケジューラ60Gにより、エンジン回転数NEに応じて、モデルパラメータa1_ne,a2_neが算出され、エンジン回転数NEおよび補機損失Plossに応じて、モデルパラメータb1_ne,b2_neが算出されるので、エンジン回転数NEおよび補機損失Plossの変動に伴う制御対象6の動特性の変化、すなわちエンジン回転数NEと回転数制御入力Uneとの間の動特性の変化を迅速に反映させながら、2つの外乱推定値c1_ne,c2_neを算出でき、これらによりモデル化誤差を迅速に補償することができる。それにより、モデルパラメータa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neとして所定の一定値を用いる第7実施形態の制御装置1Fと比べて、エンジン回転数制御系の安定性および制御精度をさらに向上させることができる。
次に、図24を参照しながら、本発明の第9実施形態に係る制御装置1Hについて説明する。この制御装置1Hは、前述した制御装置1F,1Gと同様に、スロットル弁機構90を介して、アイドル運転中のエンジン回転数NEを制御するものであり、以下に述べるように、その制御アルゴリズムのみが制御装置1F,1Gと異なっている。
同図に示すように、制御装置1Hは、2自由度応答指定型コントローラ30H、ハイブリッド外乱オブザーバ40H、目標エンジン回転数算出部50Hおよびモデルパラメータスケジューラ60Hを備えており、これらは具体的にはECU2により構成されている。なお、本実施形態では、2自由度応答指定型コントローラ30Hが制御入力算出手段に相当し、ハイブリッド外乱オブザーバ40Hが、推定制御量算出手段、第1外乱推定値算出手段、第2外乱推定値算出手段および同定手段に相当し、目標エンジン回転数算出部50Hが目標制御量設定手段に相当する。
まず、目標エンジン回転数算出部50Hでは、目標エンジン回転数NE_cmdが、前述した目標エンジン回転数算出部50Fと同様の手法により算出される。また、モデルパラメータスケジューラ60Hでは、以下の式(146)〜(149)により、まず、モデルパラメータa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neの基準値a1_ne_sc,a2_ne_sc,b1_ne_sc,b2_ne_scがそれぞれ算出される。
上記式(146)〜(149)において、検索値a1_ne_base,a2_ne_base,b1_ne_base,b2_ne_baseおよび補正係数Klsはそれぞれ、前述した図22,23のテーブル検索により算出される。
また、ハイブリッド外乱オブザーバ40Hでは、以下に述べるように、第1外乱推定値c1_ne、第2外乱推定値c2_neおよびモデルパラメータa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neがそれぞれ算出される。まず、第1外乱推定値c1_neは、下式(150)〜(158)に示すように、推定アルゴリズム、レートリミットアルゴリズムおよびローパスフィルタアルゴリズムを組み合わせたアルゴリズムにより算出される。
一方、第2外乱推定値c2_neは、以下の式(159)〜(164)に示すδ修正法を適用した可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズム(外乱推定アルゴリズム)により算出される。すなわち、ハイブリッド外乱オブザーバ40Hは、オンボード同定器としての機能も兼ね備えている。
上記式(159)において、θnescは、その転置行列が式(162)のように定義されるモデルパラメータの基準値ベクトルであり、dθneは、式(163)のように定義される修正項ベクトルである。同式(163)のda1_ne,da2_ne,db1_ne,db2_ne,dc2_neは、モデルパラメータa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neおよび第2外乱推定値c2_neの修正項である。この修正項ベクトルdθneは、式(160)により算出され、同式(160)において、Pneは一定値の同定ゲインであり、δneは、式(164)のように定義される忘却係数ベクトルである。同式(164)のδnei(i=1〜5)は、忘却係数であり、0<δnei<1が成立するように設定される。なお、忘却係数ベクトルδneによる忘却効果が不要な場合には、δnei=1と設定してもよい。
また、2自由度応答指定型コントローラ30Hでは、前述した2自由度応答指定型コントローラ30Gと同じ制御アルゴリズム(すなわち前述した式(131)〜(136))により回転数制御入力Uneが算出される。
以上のような第9実施形態の制御装置1Hによれば、ハイブリッド外乱オブザーバ40Hにより、2つの外乱推定値c1_ne,c2_neが算出され、それを用いて回転数制御入力Uneが算出されるので、前述した制御装置1F,1Gと同様に、モデル化誤差が小さい定常状態に限らず、これが一時的に過大な値となった過渡状態でも、第1外乱推定値c1_neのみでは補償しきれない分のモデル化誤差を、第2外乱推定値c2_neにより迅速に補償することができる。
さらに、第2外乱推定値c2_neの算出アルゴリズムにおいて、基準値ベクトルθnescにおける第2外乱推定値c2_neの基準値が値0に設定されているとともに、式(160)において、忘却係数δne5が第2外乱推定値の修正項の前回値dc2_ne(k−1)に乗算されるので、その忘却効果により、演算の進行に伴って、第2外乱推定値の修正項dc2_neが値0に収束し、最終的に、第2外乱推定値c2_neが基準値0に収束する。その結果、前述した制御装置1Gと同様に、2つの外乱推定値c1_ne,c2_neが互いに干渉し合うのを回避できる。
さらに、この制御装置1Hでは、前述したように、ハイブリッド外乱オブザーバ40Hがオンボード同定器としての機能を兼ね備えており、モデルパラメータa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neが、δ修正法を適用した可変ゲイン式の逐次型同定アルゴリズムによりオンボード同定されるので、スロットル弁機構90の経年変化および個体間のばらつきなどに起因して、制御対象6の動特性が変化した場合でも、そのような動特性の変化を迅速に反映させながら、モデルパラメータa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neを算出することができる。それにより、パラメータスケジューラ60Gにより設定されたモデルパラメータa1_ne,a2_ne,b1_ne,b2_neを用いる第8実施形態の制御装置1Gと比べて、エンジン回転数制御系の安定性および制御精度をさらに向上させることができる。
なお、各実施形態は、本発明の制御装置を、燃料圧Pf、カム位相Cainおよびエンジン回転数NEをそれぞれ制御量とする制御対象に適用した例であるが、本発明の制御装置はこれに限らず、制御対象として、過大な外乱や目標制御量の急変に起因して、モデル化誤差が一時的に急増するような特性を備えた様々な産業機器に適用可能であることは言うまでもない。
また、各実施形態は、外乱推定アルゴリズムにおいて、第2外乱推定値c2,c2_ca,c2_neに忘却効果を付与するために、忘却係数λ,λ_ca,λ_ne,δ5,δca5,δne5を用いた例であるが、これに限らず、第2外乱推定値c2,c2_ca,c2_neに忘却効果を付与可能な忘却アルゴリズムであればよい。