以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る制御装置について説明する。この制御装置1は、図2に示すように、ECU2を備えており、このECU2は、後述するように、内燃機関(以下「エンジン」という)3の運転状態に応じて、可変機構制御処理などの制御処理を実行する。
図1および図3に示すように、エンジン3は、4組のシリンダ3aおよびピストン3b(1組のみ図示)を有する直列4気筒ガソリンエンジンであり、図示しない車両に搭載されている。エンジン3は、シリンダ3aごとに設けられ、吸気ポートおよび排気ポートをそれぞれ開閉する吸気弁4および排気弁7と、吸気弁4駆動用の吸気カムシャフト5および吸気カム6と、吸気弁4を開閉駆動する可変式吸気動弁機構40と、排気弁7駆動用の排気カムシャフト8および排気カム9と、排気弁7を開閉駆動する排気動弁機構70などを備えている。
吸気弁4は、そのステム4aがガイド4bに摺動自在に嵌合しており、このガイド4bは、シリンダヘッド3cに固定されている。さらに、吸気弁4は、図4に示すように、上下のスプリングシート4c,4dと、これらの間に設けられたバルブスプリング4eとを備えており、このバルブスプリング4eにより、閉弁方向に付勢されている。
また、吸気カムシャフト5および排気カムシャフト8はそれぞれ、図示しないホルダを介して、シリンダヘッド3cに回動自在に取り付けられている。この吸気カムシャフト5は、その一端部に吸気スプロケット(図示せず)が同軸に固定されており、この吸気スプロケットおよびタイミングベルト(図示せず)を介して、クランクシャフト3dに連結されている。これにより、吸気カムシャフト5は、クランクシャフト3dが2回転するごとに1回転する。また、吸気カム6は、吸気カムシャフト5上にこれと一体に回転するようにシリンダ3aごとに設けられている。
さらに、可変式吸気動弁機構40は、吸気カムシャフト5の回転に伴って、各シリンダ3aの吸気弁4を開閉駆動するとともに、吸気弁4のリフトを無段階に変更することにより、吸入空気量を変更するものであり、その詳細については、後述する。なお、本実施形態では、「吸気弁4のリフト(以下「バルブリフト」という)」は、吸気弁4の最大揚程を表すものとする。
一方、排気弁7は、そのステム7aがガイド7bに摺動自在に嵌合しており、このガイド7bは、シリンダヘッド3cに固定されている。さらに、排気弁7は、上下のスプリングシート7c,7dと、これらの間に設けられたバルブスプリング7eとを備えており、このバルブスプリング7eにより、閉弁方向に付勢されている。
また、排気カムシャフト8は、これと一体の排気スプロケット(図示せず)を備え、この排気スプロケットおよび図示しないタイミングベルトを介してクランクシャフト3dに連結されており、それにより、クランクシャフト3dが2回転するごとに1回転する。さらに、排気カム9は、排気カムシャフト8上にこれと一体に回転するようにシリンダ3aごとに設けられている。
さらに、排気動弁機構70は、ロッカアーム71を備えており、このロッカアーム71が排気カム9の回転に伴って回動することにより、バルブスプリング7eの付勢力に抗しながら、排気弁7を開閉駆動する。
また、エンジン3には、クランク角センサ20および水温センサ21がそれぞれ設けられている。このクランク角センサ20は、クランクシャフト3dの回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。このCRK信号は、所定のクランク角(例えば10゜)ごとに1パルスが出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、各シリンダ3aのピストン3bが吸気行程のTDC位置よりも若干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、所定クランク角ごとに1パルスが出力される。
一方、水温センサ21は、エンジン3のシリンダブロック3eに取り付けられたサーミスタなどで構成されており、シリンダブロック3e内を循環する冷却水の温度であるエンジン水温TWを表す検出信号をECU2に出力する。
また、エンジン3の吸気管10には、上流側から順に、エアフローセンサ22、スロットル弁機構11、スロットル弁開度センサ23、吸気管内圧センサ24および燃料噴射弁12などが設けられている。このエアフローセンサ22は、熱線式エアフローメータで構成されており、吸気管10内を流れる空気の流量(以下「空気流量」という)Qinを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この空気流量Qinに基づき、後述するように、シリンダ3a内に実際に吸入されると推定される吸入空気量Gcylを算出する。
スロットル弁機構11は、スロットル弁11aおよびこれを開閉駆動するTHアクチュエータ11bなどを備えている。スロットル弁11aは、吸気管10の途中に回動自在に設けられており、当該回動に伴う開度の変化により吸入空気量を変化させる。THアクチュエータ11bは、ECU2に接続されたモータにギヤ機構(いずれも図示せず)を組み合わせたものであり、ECU2からの開度制御入力Uthによって駆動されることにより、スロットル弁11aの開度を変化させる。
また、スロットル弁11aには、これを開弁方向および閉弁方向にそれぞれ付勢する2つのばね(いずれも図示せず)が取り付けられている。これら2つのばねの付勢力により、スロットル弁11aは、後述するように、開度制御入力Uthが値0に設定されているときや、開度制御入力UthがTHアクチュエータ11bに入力されていないときには、所定の初期開度に保持される。この初期開度は、全閉状態に近い値であって、停車中はアイドル運転やエンジン始動を適切に行うことができると同時に、走行中は低速走行状態を維持できるような吸入空気量を確保できる値(例えば6゜)に設定されている。
さらに、吸気管10のスロットル弁11aの近傍には、例えばポテンショメータなどで構成されたスロットル弁開度センサ23が設けられている。このスロットル弁開度センサ23は、スロットル弁11aの開度(以下「スロットル弁開度」という)THを表す検出信号を、ECU2に出力する。
一方、吸気管10のスロットル弁11aよりも下流側の部分は、サージタンク10aになっており、このサージタンク10aに、吸気管内圧センサ24および吸気温センサ25が設けられている。
吸気管内圧センサ24は、例えば半導体圧力センサなどで構成され、吸気管10内の圧力(以下「吸気管内圧」という)PBを表す検出信号をECU2に出力する。なお、吸気管内圧PB(吸気通路内の圧力)は絶対圧として検出される。また、吸気温センサ25は、吸気管10内を流れる空気の温度(以下「吸気温」という)TAを表す検出信号をECU2に出力する。
さらに、燃料噴射弁12は、ECU2からの、燃料噴射量に応じた駆動信号によって駆動され、燃料を吸気管10内に噴射する。
一方、エンジン3のシリンダヘッド3cには、点火プラグ13(図2参照)が取り付けられている。この点火プラグ13は、図示しない点火コイルを介してECU2に接続されており、ECU2からの駆動信号(電圧信号)が、点火時期に応じたタイミングで加えられることで放電し、燃焼室内の混合気を燃焼させる。
また、エンジン3には、蒸発燃料処理装置18が設けられている。この蒸発燃料処理装置18は、燃料タンク18cで発生した蒸発燃料が大気側に放出されるのを防止するためのものであり、蒸発燃料中の燃料成分を一時的に吸着するキャニスタ18aと、このキャニスタ18aと吸気管10との間を接続する負圧導入管18bなどを備えている。この蒸発燃料処理装置18では、蒸発燃料中の燃料成分は、キャニスタ18aに一時的に吸着された後、吸気管10内の負圧により、キャニスタ18aから脱離し、導入管18bを介して吸気管10内に導入され、空気とともに燃焼室内に吸入される。
さらに、エンジン3には、マスターバック19が設けられており、このマスターバック19は、負圧導入管19bを介して吸気管10に接続されている。マスターバック19内の負圧室(図示せず)には、吸気管10内の負圧が導入管19bを介して導入され、蓄えられている。ブレーキペダル19aが踏み込まれた際、マスターバック19は、負圧室内に蓄えた負圧をパワーソースとして、制動力をアシストするためのアシスト力を発生する。このアシスト力は、負圧室内に蓄えられた負圧が大きいほど、すなわち負圧室内の圧力が低いほど、より大きい値となるように構成されている。
次に、前述した可変式吸気動弁機構40について説明する。この可変式吸気動弁機構40は、図4に示すように、吸気カムシャフト5、吸気カム6および可変バルブリフト機構50などで構成されている。
この可変バルブリフト機構50は、吸気カムシャフト5の回転に伴って吸気弁4を開閉駆動するとともに、バルブリフトLiftinを所定の最大値Liftin_Hと所定の最小値Liftin_Lとの間で無段階に変更するものであり、気筒3aごとに設けられた四節リンク式のロッカアーム機構51と、これらのロッカアーム機構51を同時に駆動するリフトアクチュエータ60(図5参照)などを備えている。
各ロッカアーム機構51は、ロッカアーム52および上下のリンク53,54などで構成されている。この上リンク53の一端部は、上ピン55を介して、ロッカアーム52の上端部に回動自在に取り付けられており、他端部は、ロッカアームシャフト56に回動自在に取り付けられている。このロッカアームシャフト56は、図示しないホルダを介して、シリンダヘッド3cに取り付けられている。
また、ロッカアーム52の上ピン55上には、ローラ57が回動自在に設けられている。このローラ57は、吸気カム6のカム面に当接しており、吸気カム6が回転する際、そのカム面に案内されながら吸気カム6上を転動する。これにより、ロッカアーム52は上下方向に駆動されるとともに、上リンク53が、ロッカアームシャフト56を中心として回動する。
さらに、ロッカアーム52の吸気弁4側の端部には、アジャストボルト52aが取り付けられている。このアジャストボルト52aは、吸気カム6の回転に伴ってロッカアーム52が上下方向に移動すると、バルブスプリング4eの付勢力に抗しながら、ステム4aを上下方向に駆動し、吸気弁4を開閉する。
また、下リンク54の一端部は、下ピン58を介して、ロッカアーム52の下端部に回動自在に取り付けられており、下リンク54の他端部には、連結軸59が回動自在に取り付けられている。下リンク54は、この連結軸59を介して、リフトアクチュエータ60の後述する短アーム65に連結されている。
一方、リフトアクチュエータ60は、ECU2により駆動されるものであり、図5に示すように、電気モータ61、ナット62、リンク63、長アーム64および短アーム65などを備えている。この電気モータ61は、ECU2に接続され、エンジン3のヘッドカバー3fの外側に配置されている。電気モータ61の回転軸は、雄ねじが形成されたねじ軸61aになっており、このねじ軸61aに、ナット62が螺合している。このナット62は、リンク63を介して、長アーム64に連結されている。このリンク63の一端部は、ピン63aを介して、ナット62に回動自在に取り付けられ、他端部は、ピン63bを介して、長アーム64の一端部に回動自在に取り付けられている。
また、長アーム64の他端部は、回動軸66を介して短アーム65の一端部に取り付けられている。この回動軸66は、断面円形に形成され、エンジン3のヘッドカバー3fを貫通しているとともに、これに回動自在に支持されている。この回動軸66の回動に伴い、長アーム64および短アーム65はこれと一体に回動する。
さらに、短アーム65の他端部には、前述した連結軸59が取り付けられており、これにより、短アーム65は、連結軸59を介して、下リンク54に連結されている。また、短アーム65の付近には、最小リフトストッパ67aおよび最大リフトストッパ67bが互いに間隔を存して設けられており、これらの2つのストッパ67a,67bにより、短アーム65は、その回動範囲が後述するように規制される。
次に、以上のように構成された可変バルブリフト機構50の動作について説明する。この可変バルブリフト機構50では、ECU2からの後述するリフト制御入力Uliftinがリフトアクチュエータ60に入力されると、ねじ軸61aが回転し、それに伴うナット62の移動により、長アーム64および短アーム65が回動軸66を中心として回動するとともに、この短アーム65の回動に伴って、ロッカアーム機構51の下リンク54が、下ピン58を中心として回動する。すなわち、リフトアクチュエータ60により、下リンク54が駆動される。
図5(a)に示すように、短アーム65が図中の反時計回りに回動すると、短アーム65は、最大リフトストッパ67bに当接し、これに係止される。それにより、下リンク54も、図4に実線で示す最大リフト位置に係止される。一方、図5(b)に示すように、短アーム65が図中の時計回りに回動すると、短アーム65は、最小リフトストッパ67aに当接し、これに係止される。それにより、下リンク54も、図4に2点鎖線で示す最小リフト位置に係止される。
以上のように、短アーム65の回動範囲は、2つのストッパ67a,67bにより、図5(a)に示す最大リフト位置と図5(b)に示す最小リフト位置との間に規制され、それにより、下リンク54の回動範囲も、図4に実線で示す最大リフト位置と、図4に2点鎖線で示す最小リフト位置との間に規制される。
下リンク54が最大リフト位置にある場合、ロッカアームシャフト56、上下のピン55,58および連結軸59によって構成される四節リンクでは、上ピン55および下ピン58の中心間の距離が、ロッカアームシャフト56および連結軸59の中心間の距離よりも長くなるように構成されており、それにより、図6(a)に示すように、吸気カム6が回転すると、これとローラ57との当接点の移動量よりも、アジャストボルト52aの移動量の方が大きくなる。
一方、下リンク54が最小リフト位置にある場合、上記四節リンクでは、上ピン55および下ピン58の中心間の距離が、ロッカアームシャフト56および連結軸59の中心間の距離よりも短くなるように構成されており、それにより、図6(b)に示すように、吸気カム6が回転すると、これとローラ57との当接点の移動量よりも、アジャストボルト52aの移動量の方が小さくなる。
以上の理由により、吸気弁4は、下リンク54が最大リフト位置にあるときには、最小リフト位置にあるときよりも大きなバルブリフトLiftinで開弁する。具体的には、吸気カム6の回転中、吸気弁4は、下リンク54が最大リフト位置にあるときには、図7の実線で示すバルブリフト曲線に従って開弁し、バルブリフトLiftinは、その最大値Liftin_Hを示す。一方、下リンク54が最小リフト位置にあるときには、図7の2点鎖線で示すバルブリフト曲線に従って開弁し、バルブリフトLiftinは、その最小値Liftin_Lを示す。
以上のように、この可変バルブリフト機構50では、アクチュエータ60を介して、下リンク54を最大リフト位置と最小リフト位置との間で回動させることにより、バルブリフトLiftinを、最大値Liftin_Hと最小値Liftin_Lとの間で無段階に変更することができる。
なお、この可変バルブリフト機構50には、図示しないロック機構が設けられており、このロック機構により、後述するように、リフト制御入力Uliftinが値0に設定されているときや、断線などによりECU2からのリフト制御入力Uliftinがリフトアクチュエータ60に入力されないときには、可変バルブリフト機構50の動作がロックされる。すなわち、可変バルブリフト機構50によるバルブリフトLiftinの変更が禁止され、バルブリフトLiftinが最小値Liftin_Lに保持される。なお、この最小値Liftin_Lは、吸入空気量として所定の故障時用値が確保されるような値に設定されており、この所定の故障時用値は、停車中はアイドル運転やエンジン始動を適切に行うことができると同時に、走行中は低速走行状態を維持できるような吸入空気量の値に設定されている。
また、エンジン3には、回動角センサ26が設けられており(図2参照)、この回動角センサ26は、短アーム65の回動角を表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この短アーム65の回動角に基づき、バルブリフトLiftinを算出する。
さらに、図2に示すように、ECU2には、大気圧センサ27、アクセル開度センサ28、車速センサ29、イグニッション・スイッチ(以下「IG・SW」という)30およびブレーキ・スイッチ31がそれぞれ接続されている。
大気圧センサ27は、半導体圧力センサで構成されており、大気圧PAを表す検出信号をECU2に出力する。アクセル開度センサ28は、車両の図示しないアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号をECU2に出力する。
また、車速センサ29は、車両の図示しない車軸に取り付けられており、車両の走行速度である車速VPを表す検出信号をECU2に出力する。さらに、IG・SW30は、イグニッションキー(図示せず)操作によりON/OFFされるとともに、そのON/OFF状態を表す信号をECU2に出力する。また、ブレーキ・スイッチ31は、ブレーキペダル19a付近に設けられ、ブレーキペダル19aが所定量以上、踏み込まれたときにON信号をECU2に出力し、それ以外はOFF信号を出力する。
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ20〜29の検出信号および各種のスイッチ30,31のON/OFF信号などに応じて、エンジン3の運転状態を判別するとともに、可変機構制御処理を実行する。この可変機構制御処理では、後述するように、スロットル弁機構11および可変バルブリフト機構50を介して、スロットル弁開度THおよびバルブリフトLiftinがそれぞれ制御され、それにより、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylがそれぞれ制御される。
なお、本実施形態では、ECU2が、目標値設定手段、非干渉化入力算出手段および同定手段に相当する。
次に、本実施形態の制御装置1について説明する。図8に示すように、この制御装置1は、プラント90を制御するものであり、目標値算出部100、応答指定型コントローラ101および非干渉化コントローラ102を備えている。なお、これらの算出部100およびコントローラ101,102はいずれも、ECU2により構成されている。
このプラント90は、図9に示すように、目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdを制御入力とし、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylを制御量とする干渉系として定義され、具体的には、弁開度コントローラ91、バルブリフトコントローラ92およびエンジン3などで構成されている。なお、両コントローラ91,92はいずれも、ECU2により構成されている。
これらの目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdは、バルブリフトLiftinおよびスロットル弁開度THの目標値であり、後述するように算出される。
また、弁開度コントローラ91では、開度制御入力Uthが、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズム[後述する式(29)〜(32)]により算出され、この開度制御入力Uthがスロットル弁機構11に入力されることによって、スロットル弁開度THが目標スロットル弁開度TH_cmdに追従するように制御される。
さらに、バルブリフトコントローラ92では、リフト制御入力Uliftinが、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズム[後述する式(33)〜(36)]により算出され、このリフト制御入力Uliftinが可変バルブリフト機構50に入力されることによって、バルブリフトLiftinが目標バルブリフトLiftin_cmdに追従するように制御される。
以上のようなプラント90では、スロットル弁開度THが目標スロットル弁開度TH_cmdに追従するように制御されると、それに伴って、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylの双方が変化する。さらに、バルブリフトLiftinが目標バルブリフトLiftin_cmdに追従するように制御されると、それに伴って、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylの双方が変化する。すなわち、このプラント90は、制御入力としての目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdと、制御量としての吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylとの間に相互干渉が存在する干渉系となっている。
したがって、本実施形態の制御装置1では、このような干渉系のプラント90において、上記相互干渉を回避しながら、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylの双方を互いに独立して制御できるような制御入力すなわち非干渉化入力として、目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdが算出される。
具体的には、まず、目標値算出部100(目標値設定手段)において、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylの目標値として、後述するように、テーブル検索およびマップ検索のいずれかにより、目標吸入空気量Gcyl_cmdおよび目標吸気管内圧PB_cmdがそれぞれ算出される。
次いで、応答指定型コントローラ101(非干渉化入力算出手段)では、下式(1)に示すように定義される追従入力ベクトルWが算出される。
この式(1)において、TH’_cmdは、吸気管内圧PBを目標吸気管内圧PB_cmdに追従させるための追従入力であり、Liftin’_cmdは、吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに追従させるための追従入力である。また、記号(k)付きの各離散データは、所定の制御周期ΔT(本実施形態では10msec)に同期してサンプリングまたは算出されたデータであることを示しており、記号kは各離散データのサンプリングまたは算出サイクルの順番を表している。例えば、記号kは今回の制御タイミングでサンプリングまたは算出された値であることを、記号k−1は前回の制御タイミングでサンプリングまたは算出された値であることをそれぞれ示している。この点は、以下の離散データにおいても同様である。なお、以下の説明では、各離散データにおける記号(k)を適宜省略する。
この追従入力ベクトルWは、具体的には、式(2)〜(8)に示す応答指定型制御アルゴリズムにより算出される。
上記式(2)に示すように、追従入力ベクトルWは、等価制御入力ベクトルWeq、到達則入力ベクトルWrchおよび適応則入力ベクトルWadpの和として算出され、この等価制御入力ベクトルWeqは、上記式(3)により算出される。同式(3)において、Sp,Sgはそれぞれ、切換関数設定パラメータであり、−1<Sp<0,−1<Sg<0が成立するように設定される。
また、式(2)の到達則入力ベクトルWrchは、上記式(4)により算出され、同式(4)において、Krch_p,Krch_gは、所定の到達則ゲインである。また、式(4)のσp,σgは、切換関数であり、それらを要素とする切換関数ベクトルσは、上記式(6)により算出される。同式(6)において、Sは、上記式(7)のように定義される行列であり、E’は、上記式(8)のように定義される偏差ベクトルである。
さらに、式(2)の適応則入力ベクトルWadpは、上記式(5)により算出され、同式(5)において、Kadp_p,Kadp_gは、所定の適応則ゲインである。
さらに、非干渉化コントローラ102(非干渉化入力算出手段)では、応答指定型コントローラ101で算出された追従入力ベクトルW、すなわち2つの追従入力TH’_cmd,Liftin’_cmdを用い、下式(9)に示す非干渉制御アルゴリズムにより、非干渉化入力ベクトルUが算出される。この非干渉化入力ベクトルUは、下式(10)のように定義される。
上記式(9)において、Fthは、非干渉化パラメータであり、後述するように、吸気管内圧PBおよび大気圧PAに応じて算出される非線形な関数値である。また、Flfも、非干渉化パラメータであり、後述するように、吸気管内圧PBおよびエンジン回転数NEに応じて算出される非線形な関数値である。さらに、Rtは、後述するように定義される係数である。なお、本実施形態では、大気圧PAおよびエンジン回転数NEがプラントの内部変数に相当する。
以上のように、この制御装置1では、前述した式(2)〜(9)に示す制御アルゴリズム、すなわち応答指定型制御アルゴリズムと非干渉制御アルゴリズムとを組み合わせた制御アルゴリズムにより、非干渉化入力ベクトルU(すなわち非干渉化入力目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmd)が算出される。これらの式(2)〜(9)に示す制御アルゴリズムは、以下に述べるように導出される。
まず、エンジン3における吸入空気量Gcylの算出式は、以下の式(11)〜(13)のように定義される。
式(11)のGthは、スロットル弁11aを通過すると推定されるTH通過吸入空気量であり、式(12)により算出される。また、式(11)のRt’は、式(13)により算出される係数である。同式(13)において、Vbは吸気管内体積を、Rは所定の気体定数をそれぞれ表している。
上記式(11)を離散時間「1」分、未来側にシフトさせ、変形すると、下式(14)が得られる。なお、式(14)のRtは、下式(15)のように定義される係数である。
一方、GthとTH_cmdとの間、およびGcylとLiftin_cmdとの間にはそれぞれ、下式(16),(17)のような関係が成立する。
以上の式(16),(17)の右辺を、式(14)のGth,Gcylに代入すると、下式(18)が得られる。
以上の式(17),(18)を1つの式にまとめて表現すると、下式(19)が得られる。
この式(19)は、PB,Gcylを制御量とし、TH_cmd,Liftin_cmdを制御入力とするプラント90のモデルと見なせるとともに、非干渉化パラメータFth,Flfは、このモデルのモデルパラメータと見なすことができる。この式(19)は、下式(20)〜(24)のように表現することができる。なお、以下の説明では、式(21)で表されるXを制御量ベクトルという。
上記式(20)のように表現される干渉系のプラント90を、相互干渉のない線形な系に変換するために、制御入力ベクトルUとして、下式(25)により算出される非干渉化入力ベクトルUを用いる。なお、この式(25)は、非干渉制御則(クロスコントローラ)より導出される。
この式(25)のX,A,B,Wに、上記式(21),(23),(24)の右辺および前述した式(1)の右辺をそれぞれ代入すると、下式(26)が得られる。
さらに、この式(26)のGcylに、前述した式(17)の右辺を代入すると、下式(27)すなわち前述した式(9)が得られる。
さらに、上記式(27)の右辺を、前述した式(20)に代入し、整理すると、下式(28)が得られる。
この式(28)は、追従入力ベクトルWが制御量ベクトルXとなる、相互干渉のない線形な仮想プラントのモデルを表しており、この仮想プラントは、前述したプラント90と非干渉化コントローラ102とを組み合わせたものに相当する。このような相互干渉のない線形な仮想プラントに対しては、線形コントローラの設計が可能であるので、式(28)で表される仮想プラントに対して、吸気管内圧PBを目標吸気管内圧PB_cmdに追従させるとともに、吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに追従させるように、応答指定型制御則を適用すると、前述した式(2)〜(8)が得られる。
以上のように、非干渉化コントローラ102とプラント90とを組み合わせた系は、相互干渉のない線形な仮想プラントとなるので、そのような仮想プラントに対して、式(2)〜(8)の応答指定型制御アルゴリズムにより算出された追従入力ベクトルWを入力することにより、制御量としての吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylの双方を、相互干渉を生じることなく、互いに独立して制御することができる。すなわち、追従入力ベクトルWが非干渉化コントローラ102に入力されると、前述した式(9)の非干渉制御アルゴリズムにより算出された非干渉化入力ベクトルUが、プラント90に入力され、それにより、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylの双方を、相互干渉を生じることなく、互いに独立して制御できる。より具体的には、目標スロットル弁開度TH_cmdにより、吸入空気量Gcylに影響を及ぼすことなく、吸気管内圧PBを目標吸気管内圧PB_cmdに追従するように制御できるとともに、目標バルブリフトLiftin_cmdにより、吸気管内圧PBに影響を及ぼすことなく、吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに追従するように制御することができる。
以下、図10を参照しながら、ECU2により実行される可変機構制御処理について説明する。本処理は、スロットル弁機構11および可変バルブリフト機構50をそれぞれ制御するための2つの制御入力Uth,Uliftinを算出するものであり、前述した所定の制御周期ΔT(10msec)で実行される。
この処理では、まず、ステップ1で、エンジン始動フラグF_ENGSTARTが「1」であるか否かを判別する。このエンジン始動フラグF_ENGSTARTは、図示しない判定処理において、エンジン回転数NEおよびIG・SW30のON/OFF信号に応じて、エンジン始動制御中すなわちクランキング中であるか否かを判定することにより設定されるものであり、具体的には、エンジン始動制御中であるときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
この判別結果がYESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ2に進み、目標吸入空気量の始動時用値Gcyl_cmd_crkを、エンジン水温TWに応じて、図11に示すテーブルを検索することにより算出する。
このテーブルでは、始動時用値Gcyl_cmd_crkは、エンジン水温TWが所定値TWREF1よりも高い範囲では、エンジン水温TWが低いほど、より大きな値に設定されているとともに、TW≦TWREF1の範囲では、所定値Gcylrefに設定されている。これは、エンジン水温TWが低い場合、可変バルブリフト機構50のフリクションが増大するので、それを補償するためである。
次いで、ステップ3で、目標吸入空気量Gcyl_cmdを上記始動時用値Gcyl_cmd_crkに設定する。
次に、ステップ4に進み、目標吸気管内圧PB_cmdを算出する。この目標吸気管内圧PB_cmdは、具体的には、図12に示すように算出される。
すなわち、まず、ステップ20で、ブレーキ作動フラグF_BRONが「1」であるか否かを判別する。このブレーキ作動フラグF_BRONは、ブレーキ・スイッチ31からON信号が出力されているときには「1」に、OFF信号が出力されているときには「0」にそれぞれ設定される。
ステップ20の判別結果がNOで、ブレーキペダル19aが踏み込まれていないときには、ステップ21に進み、始動後タイマの計時値Tastおよび吸気温TAに応じて、図13に示すマップを検索することにより、目標吸気管内圧のブレーキオフ用値PB_cmd_pgを算出する。この始動後タイマは、エンジン始動制御終了後の経過時間を計時するものであり、アップカウント式のタイマで構成されている。
同図13において、PB1〜PB4は、PB1<PB2<PB3<PB4の関係が成立する吸気管内圧PBの所定値であり、PB4=1atmに設定されている。この点は、後述する図14においても同様である。また、Tast1,Tast2は、Tast1<Tast2の関係が成立する所定値であり、TA1〜TA3は、TA1<TA2<TA3の関係が成立する吸気温TAの所定値である。同図に示すように、このマップでは、ブレーキオフ用値PB_cmd_pgは、吸気温TAが低いほど、より高い値に設定され、Tast1≦Tast≦Tast2の範囲では、始動後タイマの計時値Tastが小さいほど、より低い値に設定されているとともに、Tast<Tast1の範囲では、Tast2<Tastの範囲での設定値よりも低い一定値(PB1またはPB2)に設定されている。
これは、エンジン3の始動直後は、吸気管内圧PBをより負圧側に制御することで、エンジン停止中にキャニスタ18aに吸着された蒸発燃料を、吸気管10内に適切に導入するためである。また、低温時は、燃料タンク18c内で発生する蒸発燃料の量が少ないので、スロットル弁開度THを大きな値に制御し、吸気管内圧PBをより高い値に制御することで、燃費を向上させるためである。さらに、高温時は、キャニスタ18aに吸着された蒸発燃料量が多いことに加えて、走行中に発生する蒸発燃料量も多くなるので、吸気管内圧PBを低温〜中温時よりも負圧側に制御することで、そのような多量の蒸発燃料を、吸気管10内に適切に導入するためである。
次いで、ステップ22で、目標吸気管内圧PB_cmdを上記ブレーキオフ用値PB_cmd_pgに設定した後、本処理を終了する。
一方、ステップ20の判別結果がYESで、ブレーキペダル19aが踏み込まれているときには、ステップ23に進み、車速VPに応じて、図14に示すテーブルを検索することにより、目標吸気管内圧のブレーキオン用値PB_cmd_brを算出する。同図14において、VP1,VP2は、VP1<VP2の関係が成立する車速VPの所定値である。
このテーブルでは、ブレーキオン用値PB_cmd_brは、VP1≦VP≦VP2の範囲では、車速VPが高いほど、より低い値に設定されているとともに、VP<VP1の範囲では、VP2<VPの範囲における設定値PB1よりも高い値PB2に設定されている。これは、高車速時は、低車速時よりも大きな制動力すなわちより大きなアシスト力が要求されるため、マスターバック19の負圧室内の負圧消費度合いが大きくなり、負圧室内の圧力が上昇しやすくなるので、吸気管内圧PBをより負圧側の値に制御し、負圧室内に十分な負圧を蓄えることで、必要なアシスト力を確保するためである。これとは逆に、低車速時は、要求される制動力が小さいので、吸気管内圧PBをより高い値に制御することで、ポンピングロスを低減し、燃費を向上させるためである。
また、図14と前述した図13とを比較すると明らかなように、ブレーキオン用値PB_cmd_brは、ブレーキオフ用値PB_cmd_pgのTast2<Tastの範囲での設定値よりも低い値PB2に設定されている。これは、Tast2<Tastの場合、すなわちエンジン3の始動直後における蒸発燃料の吸気管10内への導入処理が終了し、通常の運転状態になった場合、ブレーキペダル19aが踏まれていないときには、吸気管内圧PBをより高い値に制御することで、ポンピングロスを低減し、燃費の向上を図る一方、ブレーキペダル19aが踏まれたときには、必要なアシスト力を適切に確保するためである。
次いで、ステップ24で、目標吸気管内圧PB_cmdを上記ブレーキオン用値PB_cmd_brに設定した後、本処理を終了する。
図10に戻り、ステップ4で以上のように目標吸気管内圧PB_cmdを算出した後、ステップ5に進み、目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdを算出する。これらの値TH_cmd,Liftin_cmdは、具体的には、図15に示すように算出される。
まず、ステップ30で、吸気管内圧PBと大気圧PAとの比PB/PAに応じて、図16に示すテーブルを検索することにより、非干渉化パラメータFthを算出する。
このテーブルでは、非干渉化パラメータFthは、比PB/PAが値1に近いほど、より大きい値に設定されている。これは、比PB/PAが値1に近いほど、すなわち吸気管内圧PBが大気圧PAに近い値であるほど、目標スロットル弁開度TH_cmdに対して、TH通過吸入空気量Gthがより大きな値を示すことによる。
次いで、ステップ31に進み、吸気管内圧PBおよびエンジン回転数NEに応じて、図17に示すマップを検索することにより、非干渉化パラメータFlfを算出する。同図において、PB5〜PB7は、PB5<PB6<PB7が成立する吸気管内圧PBの所定値である。
このマップでは、非干渉化パラメータFlfは、吸気管内圧PBが高いほど、より大きい値に設定されている。これは、吸気管内圧PBが高いほど、目標バルブリフトLiftin_cmdに対して、吸入空気量Gcylがより大きな値を示すことによる。また、非干渉化パラメータFlfは、PB=PB5,PB6のときには、エンジン回転数NEが高いほど、より大きな値に設定されている。これは、吸気管内圧PBがそのような範囲にあるときには、エンジン回転数NEが高いほど、吸入空気量Gcylがより大きな値を示すことによる。
また、以上のように、非干渉化パラメータFlfをエンジン回転数NEに応じて算出する理由は、以下による。すなわち、本実施形態のエンジン3のような干渉系の場合、制御量PB,Gcylと制御入力TH_cmd,Liftin_cmdとの間の相互干渉の関係が、エンジン回転数NEに応じて変化するとともに、エンジン回転数NEは、運転中の変動幅が大きいものであるので、そのように変動するエンジン回転数NEに応じて非干渉化パラメータFlfを算出することにより、非干渉化入力TH_cmd,Liftin_cmdを、エンジン回転数NEの変動に伴う相互干渉の関係の変動を適切に補償できる値として算出するためである。
次いで、ステップ32に進み、目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdを、前述した式(2)〜(9)の制御アルゴリズムにより算出した後、本処理を終了する。
図10に戻り、以上のように、ステップ5で目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdを算出した後、ステップ6に進み、開度制御入力Uthおよびリフト制御入力Uliftinを算出する。これらの制御入力Uth,Uliftinは、具体的には、図18に示すように算出される。
まず、ステップ40で、スロットル弁機構故障フラグF_THNGおよびリフト機構故障フラグF_LIFTNGがいずれも「0」であるか否かを判別する。このスロットル弁機構故障フラグF_THNGは、図示しない故障判定処理において、スロットル弁機構11が故障していると判定されたときには「1」に、正常であると判定されたときには「0」にそれぞれ設定される。また、リフト機構故障フラグF_LIFTNGも、図示しない故障判定処理において、可変バルブリフト機構50が故障していると判定されたときには「1」に、正常であると判定されたときには「0」にそれぞれ設定される。
ステップ40の判別結果がYESで、スロットル弁機構11および可変バルブリフト機構50がいずれも正常であるときには、ステップ41に進み、開度制御入力Uthを算出する。この開度制御入力Uthは、下式(29)〜(32)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、スロットル弁開度THを目標スロットル弁開度TH_cmdに追従させる値として算出される。
上記式(29)において、Krch_thは所定の到達則ゲインを、Kadp_thは所定の適応則ゲインをそれぞれ表しており、さらに、σ_thは、式(30)のように定義される切換関数である。同式(30)において、E_thは、式(31)により算出される偏差であり、pole_thは、切換関数設定パラメータであり、−1<pole_th<0の範囲内の値に設定される。また、式(31)において、TH_cmd_fは、目標スロットル弁開度のフィルタ値であり、式(32)に示す目標値フィルタアルゴリズム(一次遅れフィルタアルゴリズム)により算出される。同式(32)において、pole_f_thは、目標値応答指定パラメータであり、−1<pole_f_th<0の範囲内の値に設定される。
次いで、ステップ42に進み、リフト制御入力Uliftinを算出する。このリフト制御入力Uliftinは、下式(33)〜(36)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、バルブリフトLiftinを目標バルブリフトLiftin_cmdに追従させる値として算出される。
上記式(33)において、Krch_lfは所定の到達則ゲインを、Kadp_lfは所定の適応則ゲインをそれぞれ表しており、さらに、σ_lfは、式(34)のように定義される切換関数である。同式(34)において、E_lfは、式(35)により算出される偏差であり、pole_lfは、切換関数設定パラメータであり、−1<pole_lf<0の範囲内の値に設定される。また、式(35)において、Liftin_cmd_fは、目標バルブリフトのフィルタ値であり、式(36)に示す目標値フィルタアルゴリズム(一次遅れフィルタアルゴリズム)により算出される。同式(36)において、pole_f_lfは、目標値応答指定パラメータであり、−1<pole_f_lf<0の範囲内の値に設定される。
以上のように、ステップ42で、リフト制御入力Uliftinを算出した後、本処理を終了する。
一方、ステップ40の判別結果がNOで、スロットル弁機構11および可変バルブリフト機構50の少なくとも一方が故障しているときには、ステップ43に進み、スロットル弁機構故障フラグF_THNGが「1」であるか否かを判別する。
この判別結果がNOで、可変バルブリフト機構50のみが故障し、スロットル弁機構11が正常であるときには、ステップ44に進み、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図19に示すマップを検索することにより、目標スロットル弁開度の故障時用値TH_cmd_fsを算出する。同図において、AP1〜AP3は、AP1<AP2<AP3の関係が成立するアクセル開度APの所定値であり、この点は、後述する図21においても同様である。
このマップでは、故障時用値TH_cmd_fsは、アクセル開度APが大きいほど、またはエンジン回転数NEが高いほど、より大きな値に設定されている。これは、アクセル開度APが大きいほど、またはエンジン回転数NEが高いほど、エンジン3に対する要求出力が大きいことで、より大きな吸入空気量が要求されることによる。
次いで、ステップ45に進み、開度制御入力Uthを算出する。この開度制御入力Uthは、下式(37)〜(40)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、スロットル弁開度THを目標スロットル弁開度TH_cmdに追従させる値として算出される。
上記式(39)において、TH_cmd_fs_fは、故障時用値のフィルタ値であり、式(40)により算出される。
次に、ステップ46に進み、リフト制御入力Uliftinを値0に設定した後、本処理を終了する。これにより、前述したように、バルブリフトLiftinが最小値Liftin_Lに保持される。
一方、ステップ43の判別結果がYESで、少なくともスロットル弁機構11が故障しているときには、ステップ47,48で、開度制御入力Uthおよびリフト制御入力Uliftinをそれぞれ値0に設定した後、本処理を終了する。これにより、前述したように、バルブリフトLiftinが最小値Liftin_Lに、スロットル弁開度THが所定の初期開度にそれぞれ保持され、それにより、停車中はアイドル運転やエンジン始動を適切に行うことができると同時に、走行中は低速走行状態を維持できるような吸入空気量Gcylが確保される。
図10に戻り、ステップ6で、以上のように開度制御入力Uthおよびリフト制御入力Uliftinを算出した後、本処理を終了する。
一方、ステップ1の判別結果がNOで、エンジン始動制御中でないときには、ステップ7に進み、アクセル開度APが所定値APREFより小さいか否かを判別する。この判別結果がYESで、アクセルペダルが踏まれていないときには、ステップ8に進み、始動後タイマの計時値Tastが所定値Tastlmtより小さいか否かを判別する。
この判別結果がYESで、Tast<Tastlmtのときには、触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ9に進み、目標吸入空気量の触媒暖機用値Gcyl_cmd_astを、始動後タイマの計時値Tastおよびエンジン水温TWに応じて、図20に示すマップを検索することにより算出する。同図において、TW1〜TW3は、TW1<TW2<TW3の関係が成立するエンジン水温TWの所定値を示している。
このマップでは、触媒暖機用値Gcyl_cmd_astは、エンジン水温TWが低いほど、より大きな値に設定されている。これは、エンジン水温TWが低いほど、触媒の活性化に要する時間が長くなるので、排気ガスボリュームを大きくすることで、触媒の活性化に要する時間を短縮するためである。これに加えて、このマップでは、触媒暖機用値Gcyl_cmd_astは、始動後タイマの計時値Tastが小さい間は、計時値Tastが大きいほど、より大きな値に設定され、計時値Tastがある程度大きくなった後は、計時値Tastが大きいほど、より小さな値に設定されている。これは、触媒暖機制御の実行時間が経過するのに伴い、エンジン3の暖機が進むことで、フリクションが低下した場合において、吸入空気量を低減しないと、エンジン回転数NEを目標値に維持するために点火時期が過剰にリタード制御された状態となり、燃焼状態が不安定になってしまうので、それを回避するためである。
次に、ステップ10に進み、目標吸入空気量Gcyl_cmdを上記触媒暖機用値Gcyl_cmd_astに設定する。この後、前述したように、ステップ4〜6を実行した後、本処理を終了する。
一方、ステップ7または8の判別結果がNOのとき、すなわちアクセルペダルが踏まれているとき、またはTast≧Tastlmtであるときには、ステップ11に進み、目標吸入空気量の通常時用値Gcyl_cmd_drvを、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図21に示すマップを検索することにより算出する。
このマップでは、通常時用値Gcyl_cmd_drvは、エンジン回転数NEが高いほど、またはアクセル開度APが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、エンジン回転数NEが高いほど、またはアクセル開度APが大きいほど、エンジン3に対する要求出力が大きいことで、より大きな吸入空気量が要求されることによる。
次いで、ステップ12に進み、目標吸入空気量Gcyl_cmdを上記通常時用値Gcyl_cmd_drvに設定する。この後、前述したように、ステップ4〜6を実行した後、本処理を終了する。
以上のように、この可変機構制御処理では、応答指定型制御アルゴリズムと非干渉制御アルゴリズムとを組み合わせた制御アルゴリズム[式(2)〜(9)]により、2つの目標値TH_cmd,Liftin_cmdが算出されるとともに、実際の値TH,Liftinがこれらの目標値TH_cmd,Liftin_cmdに追従するように、2つの制御入力Uth,Uliftinがそれぞれ算出される。それにより、制御入力TH_cmd,Liftin_cmdとの間の相互干渉を回避しながら、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdにそれぞれ追従するように制御される。
次に、本実施形態の制御装置1による可変機構制御のシミュレーション結果(以下「制御結果」という)について説明する。図22,23は、第1実施形態の制御装置1による制御結果を示しており、特に、図22は、前述した式(19)においてモデル化誤差がない場合、すなわち非干渉化パラメータFth,Flfの算出誤差がない場合の制御結果を示し、図23は、モデル化誤差がある場合の制御結果を示している。
また、図24は、比較のために、可変機構制御処理において、非干渉制御アルゴリズムを用いることなく、応答指定型制御アルゴリズムのみにより、吸気管内圧PBを目標吸気管内圧PB_cmdに追従させるように制御するとともに、吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに追従させるように制御した場合の制御シミュレーション結果、すなわち干渉系の制御結果を示している。
まず、図24を参照すると明らかなように、この干渉系の制御結果では、目標吸気管内圧PB_cmdを一定に保持した状態で、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより大きい値にステップ状に変更すると(時刻t21)、スロットル弁開度THおよびバルブリフトLiftinがいずれも増大側に制御され、その影響により、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対してより低い側に大きく乖離し、両者の間に、大きな偏差が発生してしまう。
また、目標吸入空気量Gcyl_cmdを一定に保持した状態で、目標吸気管内圧PB_cmdをより低い値にステップ状に変更すると(時刻t22)、スロットル弁開度THが一時的に急減するように制御されるとともに、バルブリフトLiftinが増大側に制御され、その影響により、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに対してより小さい値側に大きく乖離し、両者の間に、大きな偏差が発生してしまう。
さらに、目標吸気管内圧PB_cmdをより高い値に、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより小さい値にそれぞれステップ状に変更すると(時刻t23)、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対してオーバーシュートを生じ、両者の間に大きな偏差が発生するとともに、吸入空気量Gcylと目標吸入空気量Gcyl_cmdとの間にも、偏差が発生してしまう。
これに対して、図22に示すように、モデル化誤差がない場合には、目標吸気管内圧PB_cmdを一定に保持した状態で、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより大きい値にステップ状に変更した際(時刻t1)、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対して乖離することなく、適切に追従していることが判る。
また、目標吸入空気量Gcyl_cmdを一定に保持した状態で、目標吸気管内圧PB_cmdをより低い値にステップ状に変更した際(時刻t2)にも、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに対して乖離することなく、適切に追従していることが判る。
さらに、目標吸気管内圧PB_cmdをより高い値に、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより小さい値にそれぞれステップ状に変更した際(時刻t3)も、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対して、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに対してそれぞれ適切に追従していることが判る。
また、図23に示すように、モデル化誤差がある場合には、目標吸気管内圧PB_cmdを一定に保持した状態で、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより大きい値にステップ状に変更した際(時刻t11)、前述した図22のモデル化誤差がない場合と異なり、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対して若干の偏差を生じるものの、その偏差の度合いは、前述した図24の干渉系の制御結果よりも小さく、追従性すなわち制御精度が向上していることが判る。
さらに、目標吸入空気量Gcyl_cmdを一定に保持した状態で、目標吸気管内圧PB_cmdをより低い値にステップ状に変更した際(時刻t12)、吸入空気量Gcylが、目標吸入空気量Gcyl_cmdに対して図22のモデル化誤差がない場合と同等の偏差を生じ、その偏差の度合いは、図24の干渉系の制御結果よりも小さく、追従性すなわち制御精度が向上していることが判る。
これに加えて、目標吸気管内圧PB_cmdをより高い値に、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより小さい値にそれぞれステップ状に変更した際(時刻t13)、図22のモデル化誤差がない場合と異なり、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対して、若干のオーバーシュートを生じ、両者の間に若干の偏差を生じるとともに、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに対して若干のアンダーシュートを生じ、両者の間に若干の偏差を生じている。しかし、それらの偏差の度合いは、図24の干渉系の制御結果よりも小さく、追従性すなわち制御精度が向上していることが判る。
以上のように、第1実施形態の制御装置1によれば、離散時間系モデルとしてモデル化したプラントモデル[式(19)]に基づく、応答指定型制御アルゴリズムと非干渉制御アルゴリズムとを組み合わせた制御アルゴリズム[式(2)〜(9)]により、非干渉化入力ベクトルUすなわち2つの非干渉化入力TH_cmd,Liftin_cmdが算出されるので、相互干渉を解消しながら、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylを目標吸気管内圧PB_cmdおよび目標吸入空気量Gcyl_cmdにそれぞれ精度良く追従させることができる。さらに、非干渉化入力ベクトルUの算出において、離散時間系モデルを用いるので、連続時間系モデルを用いる従来の場合と比べて、モデル化誤差を低減することができ、それにより、コントローラゲインKrch_p,Krch_g,Kadp_p,Kadp_gをより高い値に設定しながら、制御の安定余裕を確保することができる。これに加えて、離散時間系モデルを用いるので、連続時間系モデルを用いる従来の場合と異なり、切換関数を構成する変数として、制御量の微分値を用いる必要がなことによって、制御周期が短い場合でも、応答指定型制御アルゴリズムの特長であるロバスト性を確保できる。以上により、制御性および制御精度を向上させることができる。
なお、第1実施形態では、非干渉化入力ベクトルUを式(9)により算出したが、これに代えて、非干渉化入力ベクトルUを式(26)により算出するように構成してもよい。
また、第1実施形態は、式(2)〜(9)に示すように、2つの非干渉化入力のうちの1つTH_cmdを、2つの非干渉化パラメータFth,Flfおよび制御量PBに応じて算出し、残りの非干渉化入力Liftin_cmdを、非干渉化パラメータFlfおよび制御量Gcylに応じて算出した例であるが、非干渉化入力の算出手法はこれに限らず、複数の非干渉化パラメータおよび複数の非干渉化入力の少なくとも一方に応じて、非干渉化入力を算出するものであればよい。
さらに、第1実施形態は、応答指定型制御アルゴリズムと非干渉制御アルゴリズムとを組み合わせた制御アルゴリズムにより、2つの非干渉化入力を算出した例であるが、複数の非干渉化入力の算出に用いる制御アルゴリズムはこれに限らず、応答指定型制御アルゴリズムと非干渉制御アルゴリズムとの組み合わせを含む制御アルゴリズムであればよい。
次に、図25を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る制御装置1Aについて説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と同じ構成に関しては、同じ符号を付すとともに、その説明は省略する。同図に示すように、この制御装置1Aは、第1実施形態と同様のプラント90を制御するものであり、目標値算出部100、2自由度応答指定型コントローラ201および非干渉化コントローラ202を備えている。なお、本実施形態では、2つのコントローラ201,202が非干渉化入力算出手段に相当する。
この2自由度応答指定型コントローラ201では、下式(41)〜(49)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、追従入力ベクトルWが算出される。
上記式(42)において、PB_cmd_f,Gcyl_cmd_fはそれぞれ、目標吸気管内圧および目標吸入空気量のフィルタ値であり、式(48)および式(49)により算出される。これらの式(48),(49)のRp,Rgは、目標値応答指定パラメータであり、−1<Rp<0,−1<Rg<0が成立する値に設定される。また、式(45)のEは、式(47)のように定義される偏差ベクトルである。
以上の式(41)〜(49)は、前述した式(28)で表される仮想プラントに対して、吸気管内圧PBを目標吸気管内圧PB_cmdに追従させるとともに、吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに追従させるように、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムを適用することにより、導出される。
また、非干渉化コントローラ202では、前述した非干渉化コントローラ102と同様に、下式(50)により、非干渉化入力ベクトルUが算出される。
以上の制御装置1Aにより実行される可変機構制御処理では、前述した図15のステップ32において、上述した式(41)〜(50)により、目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdが算出され、それ以外の処理は、第1実施形態の可変機構制御処理と同様に実行される。
次に、第2実施形態の制御装置1Aによる可変機構制御のシミュレーション結果(以下「制御結果」という)について説明する。図26は、モデル化誤差がある場合、すなわち非干渉化パラメータFth,Flfの算出誤差がある場合の制御結果を示している。
図26を参照すると明らかなように、この制御結果では、目標吸気管内圧PB_cmdを一定に保持した状態で、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより大きい値にステップ状に変更した際(時刻t31)、吸気管内圧PBと目標吸気管内圧PB_cmdとの間に発生する偏差の度合いが、前述した第1実施形態の図23のモデル化誤差がある場合の制御結果よりも小さくなっているとともに、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに対してオーバーシュートを生じておらず、制御精度が向上していることが判る。
また、目標吸入空気量Gcyl_cmdを一定に保持した状態で、目標吸気管内圧PB_cmdをより低い値にステップ状に変更した際(時刻t32)には、第1実施形態の図23の制御結果と異なり、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対してアンダーシュートを生じていないとともに、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに対して偏差を生じておらず、制御精度が向上していることが判る。これに加えて、目標吸気管内圧PB_cmdを変更した際のスロットル弁開度THの変化度合いが、第1実施形態の制御結果(図23)よりもかなり小さくなっており、スロットル弁機構11の実際の応答性が低いことを考慮すると、制御性がより向上していることが判る。
さらに、目標吸気管内圧PB_cmdをより高い値に、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより小さい値にそれぞれステップ状に変更した際(時刻t33)には、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対して若干のオーバーシュートを生じているものの、その度合いが第1実施形態の図23の制御結果よりもかなり小さいとともに、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに対してアンダーシュートを生じておらず、制御精度が向上していることが判る。これに加えて、目標吸気管内圧PB_cmdを変更した際のスロットル弁開度THの変化度合いが、第1実施形態の図23の制御結果と比べて極めて小さくなっており、スロットル弁機構11の実際の応答性が低いことを考慮すると、制御性がより向上していることが判る。
以上のように構成された第2実施形態の制御装置1Aによれば、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムと非干渉制御アルゴリズムとを組み合わせた制御アルゴリズム[式(41)〜(50)]により、非干渉化入力ベクトルU(すなわち2つの非干渉化入力TH_cmd,Liftin_cmd)が算出されるので、前述した第1実施形態の制御装置1と同様に、相互干渉を解消しながら、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylを目標吸気管内圧PB_cmdおよび目標吸入空気量Gcyl_cmdにそれぞれ精度良く追従させることができる。
さらに、追従入力ベクトルW(すなわち2つの追従入力TH’_cmd,Liftin’_cmd)が、式(41)〜(49)の目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより算出されるので、応答指定型制御アルゴリズム[式(41)〜(47)]により、外乱抑制能力を高め、モデル化誤差に起因する制御性の低下を抑制できると同時に、目標値フィルタアルゴリズム[式(48),(49)]により、2つの目標値PB_cmd,Gcyl_cmdに対する実測値PB,Gcylの応答性が緩やかになる値として、2つの追従入力TH’_cmd,Gcyl’_cmdを算出することができる。これにより、非干渉化入力ベクトルU、すなわち目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdを、高い外乱抑制能力を確保しながら、それらの変化量および変化速度が小さい値として算出できる。
その結果、モデル化誤差すなわち非干渉化パラメータFth,Flfの算出誤差に起因して、吸気管内圧PBと目標吸気管内圧PB_cmdとの間、および吸入空気量Gcylと目標吸入空気量Gcyl_cmdとの偏差が発生した場合でも、それらの変化量および変化速度を小さい値に保持できるとともに、高い外乱抑制能力により、偏差の増大を適切に抑制することができる。以上により、制御性および制御精度をさらに向上させることができる。
なお、第2実施形態は、2自由度制御アルゴリズムとして、目標値フィルタアルゴリズムと応答指定型制御アルゴリズムとを組み合わせたものを用いた例であるが、2自由度制御アルゴリズムはこれに限らず、目標値フィルタアルゴリズムとフィードバック制御アルゴリズムとを組み合わせたものであればよい。例えば、目標値フィルタアルゴリズムと、PID制御アルゴリズムとを組み合わせたものを用いてもよい。
次に、本発明の第3実施形態に係る制御装置1Bについて説明する。なお、以下の説明では、第1実施形態と同じ構成に関しては、同じ符号を付すとともに、その説明は省略する。
図27に示すように、この制御装置1Bは、第1実施形態と同様のプラント90を制御するものであり、目標値算出部100、2自由度応答指定型コントローラ301、非干渉化コントローラ302およびオンボード同定器303を備えている。なお、本実施形態では、2つのコントローラ301,302が非干渉化入力算出手段に相当し、オンボード同定器303が同定手段に相当する。
このオンボード同定器303では、下式(51)〜(61)に示すδ修正法を用いた逐次型同定アルゴリズムにより、非干渉化パラメータFth,Flfの同定値Fth_hat,Flf_hatが算出される。
上記式(51)において、θは、その転置行列が式(57)のように定義される、非干渉化パラメータの同定値のベクトルであり、θbaseは、その転置行列が式(59)のように定義される基準値のベクトルである。同式(59)のFth_base,Flf_baseはそれぞれ、非干渉化パラメータFth,Flfの基準値であり、後述するようにテーブル検索およびマップ検索により算出される。
また、上記式(51)のdθは、式(60)のように定義される修正項ベクトルであり、同式(60)のdFth_hat,dFlf_hatは、基準値Fth_base,Flf_baseの修正項(補正値)である。この修正項ベクトルdθは、式(52)により算出され、この式(52)において、δは式(61)のように定義される忘却ベクトルである。同式(61)のδ1,δ2は、忘却係数であり、0<δ1≦1,0<δ2≦1が成立するように設定される。
さらに、式(52)のe_idは、式(53)により算出される偏差である。同式(53)のωは、後述する仮想出力であり、式(54)により算出される。また、式(53)のω_hatは、仮想出力の推定値であり、式(55)により算出される。同式(55)のξは、その転置行列が式(58)のように定義されるベクトルである。
また、式(52)のPは、式(56)に示すように定義される2次の正方行列である。同式(56)のIは、2次の単位行列を、λ1、λ2は重みパラメータをそれぞれ表している。
以上のような同定アルゴリズムでは、式(56)の重みパラメータλ1、λ2の設定により、以下の4つの同定アルゴリズムのうちの1つが選択される。
すなわち、
λ1=1,λ2=0 ;固定ゲインアルゴリズム
λ1=1,λ2=1 ;最小2乗法アルゴリズム
λ1=1,λ2=λ ;漸減ゲインアルゴリズム
λ1=λ,λ2=1 ;重み付き最小2乗法アルゴリズム
ただし、λは、0<λ<1に設定される所定値。
なお、本実施形態のオンボード同定器303では、同定精度およびベクトルθの最適値への追従速度をいずれも最適に確保するために、重み付き最小2乗法アルゴリズムが採用されている。
以上の同定アルゴリズムは、以下に述べるように導出される。まず、前述した式(18)を離散時間「1」分、過去側にシフトするとともに、非干渉化パラメータFth,Flfをその同定値Fth_hat,Flf_hatに置き換えると、下式(62)が得られる。
この式(62)の右辺のPB(k−1)を左辺に移項すると、下式(63)が得られる。
この式(63)において、左辺をωと定義し、右辺をω_hatと定義すると、前述した式(54),(55)が得られる。ここで、ωを仮想的なプラントの仮想出力と考え、ω_hatを、そのような仮想出力の推定値と考えると、式(63)は、そのような仮想的なプラントのモデルと考えることができる。したがって、仮想出力ωと仮想出力の推定値ω_hatとの偏差e_idが最小になるように、仮想的なプラントモデルのモデルパラメータの同定を行うべく、δ修正法を用いた逐次型同定アルゴリズムを適用すると、前述した式(51)〜(61)が導出される。
また、2自由度応答指定型コントローラ301では、前述した2自由度応答指定型コントローラ201と同じ制御アルゴリズム、すなわち前述した式(41)〜(49)に示す目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、追従入力ベクトルWが算出される。
さらに、非干渉化コントローラ302では、下式(64)により、非干渉化入力ベクトルUが算出される。この式(64)は、前述した式(50)において、非干渉化パラメータFth,Flfを同定値Fth_hat,Flf_hatに置き換えたものに相当する。
以上の制御装置1Bにより実行される可変機構制御処理では、第1実施形態の可変機構制御処理と比べて、前述した図10のステップ5の処理のみが異なっており、それ以外の処理は、第1実施形態の可変機構制御処理と同様に実行されるので、以下、異なる点についてのみ説明する。
すなわち、本実施形態の可変機構制御処理では、図10のステップ5において、図28に示すように、目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdが算出される。
まず、ステップ60で、吸気管内圧PBと大気圧PAとの比PB/PAに応じて、図29に示すテーブルを検索することにより、非干渉化パラメータの基準値Fth_baseを算出する。このテーブルでは、基準値Fth_baseは、比PB/PAが値1に近いほど、より大きい値に設定されている。これは、図16の説明で述べたのと同じ理由による。
次いで、ステップ61に進み、吸気管内圧PBおよびエンジン回転数NEに応じて、図30に示すマップを検索することにより、非干渉化パラメータの基準値Flf_baseを算出する。このマップでは、基準値Flf_baseは、吸気管内圧PBが高いほど、より大きい値に設定されているとともに、PB=PB5,PB6のときには、エンジン回転数NEが高いほど、より大きな値に設定されている。これは、図17の説明で述べたのと同じ理由による。
次いで、ステップ62に進み、目標スロットル弁開度TH_cmdおよび目標バルブリフトLiftin_cmdを、前述した式(41)〜(49),(51)〜(61),(64)の制御アルゴリズムにより算出した後、本処理を終了する。
次に、第3実施形態の制御装置1Bによる可変機構制御のシミュレーション結果(以下「制御結果」という)について説明する。図31は、モデル化誤差がある場合、すなわち非干渉化パラメータの同定値Fth_hat,Flf_hatが、非干渉化パラメータFth,Flfの実際値に対して制御開始時にずれていた場合の制御結果を示している。
図31を参照すると明らかなように、この制御結果では、オンボード同定器303により、非干渉化パラメータの同定値Fth_hat,Flf_hatはそれぞれ、非干渉化パラメータFth,Flfの実際値に極めて近い値に算出されているものの、実際値に収束することなく、若干の誤差を生じている。この誤差は、図31が可変機構制御のシミュレーション結果であるため、2つの目標値PB_cmd,Gcyl_cmdの変化挙動が、上記誤差が発生しない条件である自己励起条件を満たすようなものとなっていないことに起因するものである。これに対して、実際の制御では、2つの目標値PB_cmd,Gcyl_cmdが、様々な周波数成分を含んだ変化挙動を示すため、上記自己励起条件が満たされることで、可変機構制御の進行に伴い、同定値Fth_hat,Flf_hatはそれぞれ、非干渉化パラメータFth,Flfの実際値に収束する値として算出される。
また、この制御結果では、目標吸気管内圧PB_cmdを一定に保持した状態で、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより大きい値にステップ状に変更した際(時刻t41)、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに対してオーバーシュートを生じていないとともに、吸気管内圧PBと目標吸気管内圧PB_cmdとの間に、偏差が発生しておらず、前述した第2実施形態の制御結果(図26)と比較すると、制御精度が向上していることが判る。
さらに、目標吸入空気量Gcyl_cmdを一定に保持した状態で、目標吸気管内圧PB_cmdをより低い値にステップ状に変更した際(時刻t42)には、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対してアンダーシュートを生じておらず、第2実施形態の制御結果と同等の制御精度が確保されていることが判る。一方、吸入空気量Gcylと目標吸入空気量Gcyl_cmdとの間には、極めて小さい偏差が生じているものの、この偏差は、前述した同定値Fth_hat,Flf_hatの算出誤差に起因するものであり、そのような算出誤差は、前述したように、実際の制御では生じないので、GcylとGcyl_cmdとの間に偏差が生じることはなく、第2実施形態の制御結果と同等の制御精度を確保できる。これに加えて、目標吸気管内圧PB_cmdを変更した際のスロットル弁開度THの変化度合いも、第2実施形態の制御結果と同等になっており、同等の制御性が確保されていることが判る。
さらに、目標吸気管内圧PB_cmdをより高い値に、目標吸入空気量Gcyl_cmdをより小さい値にそれぞれステップ状に変更した際(時刻t43)には、吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに対してアンダーシュートを生じていないととも、吸気管内圧PBが目標吸気管内圧PB_cmdに対してオーバーシュートを生じておらず、若干のオーバーシュートを生じる第2実施形態の制御結果と比べて、制御精度が向上していることが判る。これに加えて、目標吸気管内圧PB_cmdを変更した際のスロットル弁開度THの変化度合いも、第2実施形態の制御結果と同等になっており、同等の制御性が確保されていることが判る。
以上のように構成された第3実施形態の制御装置1Bによれば、逐次型同定アルゴリズムと、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムと、非干渉制御アルゴリズムとを組み合わせた制御アルゴリズム[式(41)〜(49),(51)〜(61),(64)]により、非干渉化入力ベクトルU(すなわち2つの非干渉化入力TH_cmd,Liftin_cmd)が算出されるので、前述した第1および第2実施形態の制御装置1,1Aと同様に、相互干渉を解消しながら、吸気管内圧PBおよび吸入空気量Gcylを目標吸気管内圧PB_cmdおよび目標吸入空気量Gcyl_cmdにそれぞれ精度良く追従させることができる。
また、追従入力ベクトルW(すなわち2つの追従入力TH’_cmd,Gcyl’_cmd)が、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより算出されるので、前述した第2実施形態の制御装置1Aと同様に、応答指定型制御アルゴリズム[式(41)〜(47)]により、外乱抑制能力を高め、モデル化誤差に起因する制御性の低下を抑制できると同時に、目標値フィルタアルゴリズム[式(48),(49)]により、2つの目標値PB_cmd,Gcyl_cmdに対する実測値PB,Gcylの応答性が緩やかになる値として、2つの追従入力TH’_cmd,Gcyl’_cmdを算出することができる。
さらに、オンボード同定器303により、非干渉化パラメータの同定値Fth_hat,Flf_hatが、δ修正法を適用した逐次型同定アルゴリズム[式(51)〜(61)]により算出される。すなわち、プラントモデルの直接的なモデル化誤差となり得る非干渉化パラメータFth,Flfが逐次同定されるので、モデル化誤差を迅速かつ適切に補償しながら、2つの非干渉化入力TH_cmd,Liftin_cmdを算出することができる。これにより、本実施形態のように、TH_cmd,Liftin_cmdとPB,Gcylとの間の相互干渉の度合いがかなり大きいプラント90において、経年変化および個体間のばらつきに起因して、モデル化誤差が生じた場合でも、そのモデル化誤差を迅速かつ適切に補償することができ、それにより、良好な制御性および制御精度を確保することができる。
これに加えて、δ修正法を適用した逐次型同定アルゴリズムを用いているので、同定の開始直後、非干渉化パラメータの同定値Fth_hat,Flf_hatが、その基準値Fth_base,Flf_baseに近い値として算出されることにより、誤同定を回避することができる。さらに、忘却係数ベクトルδが修正項ベクトルdθに乗算されていることにより、所定の忘却効果が修正項ベクトルdθに付加され、その結果、同定値Fth_hat,Flf_hatが、基準値Fth_base,Flf_baseに近傍に拘束されるような状態で同定されるので、その絶対値が増大し、誤ったパラメータ同定値となる現象、すなわち非干渉化パラメータFth,Flfのドリフト現象を回避でき、それにより、制御系の安定性を確保することができるとともに、同定精度を向上させることができる。以上により、制御性および制御精度を、第2実施形態の制御装置1Aよりもさらに向上させることができる。
なお、第3実施形態は、逐次型同定アルゴリズムとして、δ修正法を適用した同定アルゴリズム(重み付き逐次型最小2乗法アルゴリズム)を用いた例であるが、逐次型同定アルゴリズムはこれに限らず、非干渉化パラメータの同定値Fth_hat,Flf_hatを逐次同定できるものであればよい。例えば、前述した固定ゲインアルゴリズムおよび通常の最小2乗法アルゴリズムなどを用いてもよい。
また、第3実施形態は、式(51)〜(61)により、非干渉化パラメータFth,Flfの同定値Fth_hat,Flf_hatを、制御入力としての非干渉化入力TH_cmd,Liftin_cmdと、制御量としての吸気管内圧PBと、プラントの内部変数としてのエンジン回転数NEおよび大気圧PAとに応じて算出した例であるが、非干渉化パラメータの同定値の算出手法はこれに限らず、複数の非干渉化入力、複数の制御量およびプラントの内部変数の少なくとも1つに応じて、逐次同定する手法であればよい。
次に、図32,33を参照しながら、本発明の第4実施形態に係る制御装置1Cについて説明する。なお、以下の説明においては、前述した第1実施形態と同じ構成については同じ番号を付すとともに、その説明は省略する。この制御装置1Cは、エンジン3AのEGR制御および過給圧制御を行うものであり、このエンジン3Aは、スロットル弁機構を有しないディーゼルエンジンで構成され、ターボチャージャ装置15およびEGR制御弁16を備えている。
ターボチャージャ装置15は、吸気管10の途中のコンプレッサハウジング内に収容されたコンプレッサブレード15aと、排気管14の途中のタービンハウジング内に収容されたタービンブレード15bと、2つのブレード15a,15bを一体に連結する軸15cと、ウエストゲート弁15dなどを備えている。
このターボチャージャ装置15では、排気管14内の排気ガスによってタービンブレード15bが回転駆動されると、これと一体のコンプレッサブレード15aも同時に回転することにより、吸気管10内の吸入空気が加圧される。すなわち、過給動作が実行される。
一方、上記ウエストゲート弁15dは、排気管14のタービンブレード15bをバイパスするバイパス排気通路14aを開閉するものであり、ECU2に接続された電磁制御弁で構成されている。このウエストゲート弁15dは、後述する過給圧制御入力UpbがECU2から入力されると、その開度が変化し、それにより、バイパス排気通路14aを流れる排気ガスの流量、言い換えればタービンブレード15bを駆動する排気ガスの流量を変化させ、過給圧を変化させる。これにより、過給圧が制御される。
また、図32に示すように、本実施形態の吸気管内圧センサ24は、吸気管10のコンプレッサブレード15aよりも下流側に設けられているので、過給圧制御が実行されている場合、吸気管内圧センサ24により検出された吸気管内圧PBは、過給圧に等しいものとなる。したがって、以下の説明では、吸気管内圧PBを「過給圧PB」という。
一方、EGR制御弁16は、吸気管10および排気管14の間に延びるEGR通路17を開閉することにより、排気ガスを排気管14から吸気管10側に還流するEGR動作を実行するものである。EGR制御弁16は、ECU2に接続されたリニア電磁弁で構成されており、後述するEGR制御入力UegrがECU2から入力されると、そのリフトがリニアに変化する。これにより、還流ガス量すなわちEGR量Gegrが制御される。
また、このEGR制御弁16には、EGRリフトセンサ32が取り付けられている。このEGRリフトセンサ32は、EGR制御弁16のリフト(以下「EGRリフト」という)Legrを表す検出信号をECU2に出力する。
一方、排気管14のタービンブレード15bよりも上流側には、排気管内圧センサ33が設けられており、この排気管内圧センサ33は、排気管14内の圧力(以下「排気管内圧」という)排気管内圧Pexを表す検出信号をECU2に出力する。なお、本実施形態では、排気管内圧Pexがプラントの内部変数に相当する。
また、エンジン3Aには、バルブタイミング切換機構80が設けられており、図示しないが、エンジン3Aの吸気カムの各々は、低速カムと、低速カムよりも高いカムノーズを有する高速カムとで構成されている。バルブタイミング切換機構80は、吸気弁を開閉駆動する吸気カムを低速カムと高速カムの間で切り換えることにより、吸気弁のバルブタイミングを、低速バルブタイミングLO.VTと高速バルブタイミングHI.VTとの間で切り換える。バルブタイミング切換機構80は、ECU2に電気的に接続されており(図33参照)、ECU2により上記切換動作が制御される。なお、本実施形態では、2つのバルブタイミングLO.VT,HI.VTがプラントの内部変数に相当する。
さらに、ECU2では、エアフローセンサ22の検出信号に基づいて、エアフローセンサ22付近を通過した吸気量(以下「検出吸気量」という)Ginが、前述した式(12)の左辺のGthをGinに置き換えた式により算出される。
また、ECU2では、後述するように、過給圧PBおよびEGRリフトLegrがそれぞれ制御され、それにより、吸入空気量Gcyl(新気量)およびEGR量Gegrがそれぞれ制御される。
次に、本実施形態の制御装置1Cについて説明する。図34に示すように、この制御装置1Cは、プラント404を制御するものであり、目標値算出部400、2自由度応答指定型コントローラ401、非干渉化コントローラ402およびオンボード同定器403を備えている。なお、本実施形態では、目標値算出部400が目標値設定手段に相当し、2つのコントローラ401,402が非干渉化入力算出手段に相当し、オンボード同定器403が同定手段に相当する。
このプラント404は、図35に示すように、目標過給圧PB_cmdおよび目標EGRリフトLegr_cmdを制御入力とし、吸入空気量GcylおよびEGR量Gegrを制御量とする干渉系として定義され、具体的には、過給圧コントローラ405、EGRコントローラ406およびエンジン3Aなどで構成されている。
これらの目標過給圧PB_cmdおよび目標EGRリフトLegr_cmdはそれぞれ、過給圧PBおよびEGRリフトLegrの目標値であり、後述するように算出される。
また、過給圧コントローラ405では、その具体的な算出式は省略するが、過給圧制御入力Upbが、前述した式(29)〜(32)と同様の目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、過給圧PBを目標過給圧PB_cmdに追従させるための値として算出され、この過給圧制御入力Upbがウエストゲート弁15dに入力されることによって、吸入空気量Gcylが制御される。
さらに、EGRコントローラ406では、その具体的な算出式は省略するが、EGR制御入力Uegrが、前述した式(33)〜(36)と同様の目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより、EGRリフトLegrを目標EGRリフトLegr_cmdに追従させるための値として算出され、このEGR制御入力UegrがEGR制御弁16に入力されることによって、EGR量Gegrが制御される。
以上のようなプラント404では、過給圧PBが目標過給圧PB_cmdに追従するように制御されると、それに伴って、吸入空気量GcylおよびEGR量Gegrの双方が変化する。さらに、EGRリフトLegrが目標EGRリフトLegr_cmdに追従するように制御されると、それに伴って、吸入空気量GcylおよびEGR量Gegrの双方が変化する。すなわち、このプラント404は、制御入力としての目標過給圧PB_cmdおよび目標EGRリフトLegr_cmdと、制御量としての吸入空気量GcylおよびEGR量Gegrとの間に相互干渉が存在する干渉系となっている。
したがって、第4実施形態の制御装置1Cでは、このような干渉系のプラント404において、上記相互干渉を回避しながら、吸入空気量GcylおよびEGR量Gegrの双方を互いに独立して制御できるような制御入力すなわち非干渉化入力として、目標過給圧PB_cmdおよび目標EGRリフトLegr_cmdが以下のように算出される。なお、以下の説明では、数式中の各種のベクトル(W,U,X,A,B,C,S,σ,θ)および行列などは、それらを構成する要素が前述した第1〜第3実施形態の数式のものと異なるものの、入力、係数または関数としての機能および性質が同様のものであるので、便宜上、同じ表記および名称を用いる。
具体的には、まず、目標値算出部400において、目標吸入空気量Gcyl_cmdおよび目標EGR量Gegr_cmdがそれぞれ算出される。この場合、目標吸入空気量Gcyl_cmdは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図36に示すマップを検索することにより、算出される。同図に示すように、このマップでは、目標吸入空気量Gcyl_cmdは、アクセル開度APが大きいほど、より大きい値に設定されている。これは、吸入空気量Gcylを、運転者の駆動力の増大要求に応じて、より大きな値に制御するためである。
また、目標EGR量Gegr_cmdは、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図37に示すマップを検索することにより、算出される。同図に示すように、このマップでは、目標EGR量Gegr_cmdは、アクセル開度APが大きいほど、より大きい値に設定されている。これは、上述したように、アクセル開度APが大きいほど、吸入空気量Gcylがより増大側に制御されるので、それに応じてEGR量Gegrも増大させるためである。また、目標EGR量Gegr_cmdは、エンジン回転数NEが中回転域にあるときに、最も大きな値になるように設定されている。これは、中回転域では、エンジン3Aが良好な燃焼状態となるので、EGR量Gegrを増大することで、排ガス特性を向上させるためである。
次いで、2自由度応答指定型コントローラ401において、下式(65)に示すように定義される追従入力ベクトルWが、下式(66)〜(74)に示す目標値フィルタ型の適応2自由度応答指定型アルゴリズムにより算出される。
上記式(65)において、PB’_cmdは、吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに追従させるための追従入力であり、Legr’_cmdは、EGR量Gegrを目標EGR量Gegr_cmdに追従させるための追従入力である。上記式(66)に示すように、追従入力ベクトルWは、等価制御入力ベクトルWeq、到達則入力ベクトルWrchおよび適応則入力ベクトルWadpの和として算出される。
この等価制御入力ベクトルWeqは、上記式(67)により算出される。同式(67)において、Sg,Seはそれぞれ、切換関数設定パラメータであり、−1<Sg<0,−1<Se<0が成立するように設定される。また、同式(67)のHeg_hatは、後述する非干渉化パラメータHegの同定値であり、オンボード同定器403により、後述するように算出される。さらに、式(67)のGcyl_cmd_f,Gegr_cmd_fはそれぞれ、目標吸入空気量および目標EGR量のフィルタ値であり、式(73)および式(74)により算出される。これらの式(73),(74)のRg,Reは、目標値応答指定パラメータであり、−1<Rg<0,−1<Re<0が成立する値に設定される。
また、式(66)の到達則入力ベクトルWrchは、上記式(68)により算出される。同式(68)において、Krch_g,Krch_eは、所定の到達則ゲインである。また、式(68)のσg,σeは、切換関数であり、それらを要素とする切換関数ベクトルσは、式(70)により算出される。同式(70)において、Sは、上記式(71)のように定義される行列であり、Eは、上記式(72)のように定義される偏差ベクトルである。
さらに、式(66)の適応則入力ベクトルWadpは、上記式(69)により算出され、同式(69)において、Kadp_g,Kadp_eは、所定の適応則ゲインである。
さらに、非干渉化コントローラ402では、下式(75)に示す適応非干渉制御アルゴリズムにより、非干渉化入力ベクトルUが算出される。この非干渉化入力ベクトルUは、下式(76)のように定義される。
上記式(75)において、Rcp_hat,Scp_hatは、後述する非干渉化パラメータRcp,Scpの同定値であり、オンボード同定器403により、後述するように算出される。
一方、オンボード同定器403では、下式(77)〜(86)に示すδ修正法を用いた逐次型同定アルゴリズムにより、非干渉化パラメータの同定値Rcp_hat,Scp_hat,Heg_hatが算出される。
上記式(77)において、θは、その転置行列が式(82)のように定義される、非干渉化パラメータの同定値ベクトルであり、θbaseは、その転置行列が式(84)のように定義される基準値のベクトルである。同式(84)のRcp_base,Scp_base,Heg_baseはそれぞれ、非干渉化パラメータの基準値であり、後述するように算出される。
また、上記式(77)のdθは、式(85)のように定義される修正項ベクトルであり、同式(85)のdRcp_hat,dScp_hat,dHeg_hatはそれぞれ、基準値Rcp_base,Scp_base,Heg_baseの修正項(補正値)である。この修正項ベクトルdθは、式(78)により算出され、この式(78)において、δは式(86)のように定義される忘却ベクトルである。同式(86)のδ1〜δ3はいずれも、忘却係数であり、値0より大きくかつ値1以下の範囲内の値に設定される。
さらに、式(78)のe_idは、式(79)により算出される偏差である。同式(79)のGcyl_hatは、吸入空気量の推定値であり、式(80)により算出される。同式(80)のξは、その転置行列が式(83)のように定義されるベクトルである。
また、式(78)のPは、式(81)に示すように定義される3次の正方行列である。同式(81)のIは、3次の単位行列を、λ1、λ2は重みパラメータをそれぞれ表している。前述したように、以上のような同定アルゴリズムでは、式(81)の重みパラメータλ1、λ2の設定により、同定アルゴリズムの特性を設定変更可能であり、本実施形態のオンボード同定器403では、同定精度およびベクトルθの最適値への追従速度をいずれも最適に確保するために、重み付き最小2乗法アルゴリズムが採用されている。
以下に、前述した非干渉化パラメータの基準値Rcp_base,Scp_base,Heg_baseの算出手法について説明する。まず、非干渉化パラメータの基準値Rcp_baseは、エンジン回転数NEに応じて、図38に示すテーブルを検索することにより、算出される。同図に示すように、基準値Rcp_baseの算出に用いるテーブルは、HI.VT用およびLO.VT用の2種類のものが準備されており、バルブタイミング切換機構80によるバルブタイミングの切換状態に応じたものが選択される。また、このテーブルでは、基準値Rcp_baseは、エンジン回転数NEの変化に伴うエンジン3Aの充填効率の変化に対応するような値に設定されており、例えば、充填効率が高い領域では、より大きな値に設定されている。
また、Scp_baseは、下式(87)により算出される。なお、下式(87)のKtbは、後述するモデルのモデルパラメータであり、0<Ktb<1が成立する値に設定される。
さらに、非干渉化パラメータの基準値Heg_baseは、排気管内圧Pexと過給圧PBとの差圧Pex−PBに応じて、図39に示すテーブルを検索することにより算出される。このテーブルでは、基準値Heg_baseは、差圧Pex−PBが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、差圧Pex−PBが大きいほど、EGR量Gegrが増大することによる。
以上のように、この制御装置1Cでは、前述した式(77)〜(86)に示す逐次型同定アルゴリズムにより、非干渉化パラメータの同定値ベクトルθが算出され、これを用いて、前述した式(66)〜(75)に示す制御アルゴリズム、すなわち目標値フィルタ型の適応2自由度応答指定型制御アルゴリズムと適応非干渉制御アルゴリズムとを組み合わせた制御アルゴリズムにより、非干渉化入力ベクトルUが算出される。以上の式(66)〜(75),(77)〜(86)は、以下に述べるように導出される。
まず、エンジン3Aが定常運転状態にある場合、吸入空気が吸気管10を介してシリンダ3aに到達するまでのむだ時間を考慮すると、吸入空気量Gcyl(EGR量Gegrを含まない新気量)と検出吸気量Ginとの間では、下式(88)が成立し、さらに、ターボチャージャ装置15を通過した吸入空気量Gcpと、EGR量Gegrとの間では、下式(89)が成立する。
ここで、ターボチャージャ装置15を通過した吸入空気量Gcpは、シリンダ3aに吸入されたガス量であるので、過給圧PB、エンジン回転数NEおよびバルブタイミングで決定される充填効率をKiとすると、下式(90)のように定義できる。
一方、過給圧PBは、ターボチャージャ装置15を介して制御されており、その制御アルゴリズムとして、応答指定型制御アルゴリズムまたは目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムなどを用いた場合、過給圧PBは目標過給圧PB_cmdに対して下式(91)のようにモデル化することができる。
この式(91)の右辺を、式(90)のPBに代入すると、下式(92)〜(94)が得られる。
さらに、上記式(89)を変形すると、下式(95)が得られ、この式(95)のGcpに、上記式(92)の右辺を代入すると、下式(96)が得られる。
さらに、この式(96)と前述した式(88)とにより、下式(97)が得られる。
一方、EGR量Gegrは、排気管内圧Pexと目標EGRリフトLegr_cmdを用い、下式(98)のように表現することができ、さらに、この式(98)を離散時間「1」分、未来側にシフトすると、下式(99)が得られる。
以上の式(97),(99)をまとめて表現すると、下式(100)のようになる。
この式(100)は、Gcyl,Gegrを制御量とし、PB_cmd,Legr_cmdを制御入力とする干渉系のプラント404のモデルと見なせるとともに、下式(101)〜(107)のように表現することができる。
上記式(101)のように表現される干渉系のプラント404を、相互干渉のない線形な系に変換するために、制御入力ベクトルUとして、下式(108)により算出される非干渉化入力ベクトルUを用いる。なお、この式(108)は、非干渉制御則(クロスコントローラ)より導出される。
この式(108)のB,A,X,C,D,Wに、上記式(106),(105),(102),(107),(104)の右辺および前述した式(65)の右辺をそれぞれ代入すると、下式(109)が得られる。
さらに、この式(109)のGegrに、前述した式(99)の右辺を代入すると、下式(110)が得られる。
この式(110)において、左辺をUに置き換えるとともに、運転状態の変化や経年変化に伴う非干渉化パラメータRcp,Scp,Hegの変化を補償するために、非干渉化パラメータRcp,Scp,Hegを、同定値Rcp_hat,Scp_hat,Heg_hatにそれぞれ置き換えると、前述した式(75)の制御アルゴリズム、すなわち非干渉化コントローラ402の制御アルゴリズムが得られる。
さらに、上記式(110)の右辺を、前述した式(101)のUに代入し、整理すると、下式(111)が得られる。
この式(111)は、追従入力ベクトルWが制御量ベクトルXとなる、相互干渉のない線形な仮想プラントのモデルを表しており、この仮想プラントは、前述したプラント4040と非干渉化コントローラ402とを組み合わせたものに相当する。前述したように、このような相互干渉のない線形な仮想プラントに対しては、線形コントローラの設計が可能であるので、式(111)で表される仮想プラントに対して、吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに追従させるとともに、EGR量Gegrを目標EGR量Gegr_cmd追従させるように、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御則を適用すると、下式(112)〜(120)が得られる。
以上の式(112)〜(120)において、前述した理由により、非干渉化パラメータRcp,Scp,Hegを、同定値Rcp_hat,Scp_hat,Heg_hatにそれぞれ置き換えると、前述した式(66)〜(74)の制御アルゴリズム、すなわち2自由度応答指定型コントローラ401の制御アルゴリズムが得られる。
一方、前述した式(77)〜(86)の同定アルゴリズムは、以下に述べるように導出される。まず、前述した式(97)のGegrに式(98)の右辺を代入すると、下式(121)が得られる。
この式(121)を離散時間「1」分、過去側にシフトするとともに、吸入空気量Gcylをその推定値Gcyl_hatに置き換え、非干渉化パラメータRcp,Scp,Hegをそれぞれ同定値Rcp_hat,Scp_hat,Heg_hatに置き換えると、下式(122)が得られる。
この式(122)は、仮想的なプラントのモデルと考えることができ、前述したように、Gcyl(k+1)=Gin(k)であるので、検出吸気量Ginと吸入空気量の推定値Gcyl_hatとの偏差e_idが最小になるように、仮想的なプラントモデルのモデルパラメータの同定を行うべく、δ修正法を用いた逐次型同定アルゴリズムを適用すると、前述した式(77)〜(86)が導出される。
以上のように構成された第4実施形態の制御装置1Cによれば、離散時間系モデルとしてモデル化したプラントモデル[式(100)]に基づく、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムと非干渉制御アルゴリズムとを組み合わせた所定の制御アルゴリズム[式(66)〜(75)]により、非干渉化入力ベクトルUすなわち2つの非干渉化入力PB_cmd,Legr_cmdが算出されるので、相互干渉を解消しながら、吸入空気量GcylおよびEGR量Gegrを、目標吸入空気量Gcyl_cmdおよび目標EGR量Gegr_cmdにそれぞれ精度良く追従させることができる。
さらに、非干渉化入力ベクトルUの算出において、離散時間系モデルを用いるので、連続時間系モデルを用いる従来の場合と比べて、モデル化誤差を低減することができ、それにより、コントローラゲインKrch_g,Krch_e,Kadp_g,Kadp_eをより高い値に設定しながら、制御の安定余裕を確保することができる。これに加えて、離散時間系モデルを用いるので、連続時間系モデルを用いる従来の場合と異なり、切換関数を構成する変数として、制御量の微分値を用いる必要がないことによって、制御周期が短い場合でも、応答指定型制御アルゴリズムの特長であるロバスト性を確保できる。
また、追従入力ベクトルW(すなわち2つの追従入力Gcyl’_cmd,Gegr’_cmd)が、目標値フィルタ型の2自由度応答指定型制御アルゴリズムにより算出されるので、応答指定型制御アルゴリズム[式(66)〜(72)]により、外乱抑制能力を高め、モデル化誤差に起因する制御性の低下を抑制できると同時に、目標値フィルタアルゴリズム[式(73),(74)]により、2つの目標値Gcyl_cmd,Gegr_cmdに対する実測値Gcyl,Gegrの応答性が緩やかになる値として、2つの追従入力Gcyl’_cmd,Gegr’_cmdを算出することができる。
さらに、オンボード同定器403により、非干渉化パラメータの同定値Rcp_hat,Scp_hat,Heg_hatが、δ修正法を適用した逐次型同定アルゴリズム[式(77)〜(86)]により算出される。すなわち、プラントモデルの直接的なモデル化誤差となり得る非干渉化パラメータRcp,Scp,Hegが逐次同定されるので、モデル化誤差を迅速かつ適切に補償しながら、2つの非干渉化入力Gcyl_cmd,Gegr_cmdを算出することができる。これにより、本実施形態のように、制御入力PB_cmd,Legr_cmdと制御量Gcyl,Gegrとの間の相互干渉の度合いがかなり大きいプラント404において、経年変化および個体間のばらつきに起因して、モデル化誤差が生じた場合でも、そのモデル化誤差を迅速かつ適切に補償することができ、それにより、良好な制御性および制御精度を確保することができる。
これに加えて、δ修正法を適用した逐次型同定アルゴリズムを用いているので、同定の開始直後、非干渉化パラメータの同定値Rcp_hat,Scp_hat,Heg_hatが、その基準値Rcp_base,Scp_base,Heg_baseに近い値として算出されることにより、誤同定を回避することができる。さらに、忘却係数ベクトルδが修正項ベクトルdθに乗算されていることにより、所定の忘却効果が修正項ベクトルdθに付加され、その結果、同定値Rcp_hat,Scp_hat,Heg_hatが、基準値Rcp_base,Scp_base,Heg_baseに近傍に拘束されるような状態で同定されるので、同定精度を向上させることができる。以上により、制御性および制御精度を向上させることができる。
なお、第4実施形態では、非干渉化入力ベクトルUを式(75)により算出したが、EGR量Gegrを直接的に検出する検出手段がエンジン3Aに設けられている場合には、前述した式(109)において、非干渉化パラメータRcp,Scp,Hegを同定値Rcp_hat,Scp_hat,Heg_hatに置き換えた式により、非干渉化入力ベクトルUを算出してもよい。
さらに、以上の各実施形態は、本発明の制御装置を、2つの制御入力と2つの制御量との間に相互干渉が存在する干渉系のプラントに適用した例であるが、本発明の制御装置はこれに限らず、3つ以上の制御入力と3つ以上の制御量との間に相互干渉が存在する干渉系のプラントに対しても、適用可能である。
また、以上の各実施形態は、本発明の制御装置を、干渉系のプラントとしての、内燃機関の吸気系の駆動機構の制御に適用した例であるが、本発明の制御装置はこれに限らず、他の産業機器などの干渉系のプラントの制御に適用可能であることは言うまでもない。