JP4456830B2 - 内燃機関の吸入空気量制御装置 - Google Patents

内燃機関の吸入空気量制御装置 Download PDF

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  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸気弁のバルブタイミングを自在に変更することにより、気筒内に吸入される吸入空気量を自在に可変制御する内燃機関の吸入空気量制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の内燃機関の吸入空気量制御装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この内燃機関には、電磁式動弁機構およびバルブリフトセンサが気筒毎に設けられており、この電磁式動弁機構により、各気筒の吸気弁の閉弁タイミングが開弁タイミングに対して自在に変更される。また、バルブリフトセンサは、各吸気弁のバルブリフト量を検出する。この吸入空気量制御装置では、以下のように、アイドル回転数を制御するために、電磁式動弁機構を介して吸気弁の閉弁タイミングが制御され、それにより、吸入空気量が制御される。
【0003】
具体的には、目標回転数に応じて、フィードフォワード制御用の目標吸入空気量が算出され、さらに、バルブリフトセンサにより検出された各吸気弁の閉弁時間に基づいて、全気筒の吸気弁の閉弁時間の平均値が算出され、この平均値と各気筒の閉弁時間との偏差の絶対値のうちの最大値が算出される。さらに、この偏差の絶対値の最大値に応じて、フィードバック制御用のゲインが算出され、このゲインに応じて、フィードバック制御用の目標吸入空気量が算出されるとともに、これらのフィードバック制御用およびフィードフォワード制御用の2つの目標吸入空気量などに応じて、吸気弁の閉弁タイミングが算出され、それに応じて吸気弁の閉弁タイミングが制御される。以上のように、吸気弁の閉弁タイミングが制御されることにより、アイドル回転数が目標回転数に収束するように制御される。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−140661号公報(第5〜6頁、図6〜18)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の吸入空気量制御装置によれば、バルブリフトセンサにより検出された吸気弁の閉弁時間に基づいて、フィードバック制御用のゲインが算出され、これに基づいて、フィードバック制御用の目標吸入空気量が算出され、さらに、このフィードバック制御用の目標吸入空気量に応じて、吸気弁の閉弁タイミングが制御されるものに過ぎないため、電磁式動弁機構の作動遅れなどの制御系のむだ時間を補償することができないことで、アイドル回転数の目標回転数への収束性が低く、制御性が低いという問題がある。これに加えて、電磁式動弁機構の動特性のばらつきおよび経年変化、または経年変化によるバルブリフトセンサの出力のドリフトなどの、制御系の動特性のばらつきおよび経年変化も補償できず、ロバスト性も低くなってしまう。このため、上記吸入空気量制御装置では、以上のような制御性およびロバスト性の低さに起因して、吸入空気量制御が不安定になり、回転変動が発生することで、アイドル回転数制御中、エンジンストールが発生するとともに、燃焼状態が悪化することで、排気ガス特性が悪化してしまうおそれがある。また、上記の吸入空気量制御の手法を、通常の運転負荷域の吸入空気量制御に適用した場合、トルク変動および回転変動が大きくなるとともに、燃焼状態の悪化度合いも大きくなり、その結果、運転性および排気ガス特性がさらに悪化してしまう。この問題は、特に高負荷域やリーン運転時(EGR導入時)に顕著となる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、吸入空気量制御において、高いロバスト性を確保でき、制御性を向上させることができ、それにより、運転性および排気ガス特性を向上させることができる内燃機関の吸入空気量制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、吸気弁6のバルブタイミングを自在に変更する吸気バルブタイミング可変装置(可変式吸気弁駆動装置40)を介して、気筒#1〜#4内に吸入される吸入空気量を自在に可変制御する内燃機関3の吸入空気量制御装置1であって、気筒内に吸入される空気量を気筒吸入空気量Gcylとして算出する気筒吸入空気量算出手段(ECU2、ステップ16,30)と、吸入空気量制御の目標となる目標吸入空気量Gcyl_cmdを設定する目標吸入空気量設定手段(ECU2、ステップ16,31〜33)と、吸気バルブタイミング可変装置によって設定された吸気弁のバルブタイミングを表す値(副吸気カム位相θmsi)を入力とし、気筒吸入空気量Gcylを出力とするとともに、定常偏差およびモデル化誤差を補償するための補償パラメータγ1と、入力および出力に乗算される乗算係数(モデルパラメータa1,a2,b1)とをモデルパラメータとする制御対象モデル[式(7)]に基づき、所定の同定アルゴリズム[式(8)〜(13)]により、気筒吸入空気量Gcylと制御対象モデルの出力(予測吸入空気量Pre_Gcyl)との誤差が最小になるように、モデルパラメータをオンボード同定する同定手段(ECU2、オンボード同定器223)と、オンボード同定されたモデルパラメータ(ベクトルθs)に応じて、気筒吸入空気量が目標吸入空気量に収束するように、吸気バルブタイミング可変装置を制御するための制御指令値(目標副吸気カム位相θmsi_cmd)を算出する制御指令値算出手段(ECU2、スライディングモードコントローラ224、ステップ80)と、算出された制御指令値に応じて、吸気バルブタイミング可変装置を制御する制御手段(ECU2、第2SPASコントローラ225、ステップ75)と、を備え、吸気バルブタイミング可変装置(可変式吸気弁駆動装置40)は、回動支点(ピン51c)に回動自在に支持され、回動により吸気弁6を開閉駆動する吸気ロッカアーム51と、吸気ロッカアーム51を回動支点(ピン51c)の回りに回動させる第1吸気カム(主吸気カム43)が設けられた、回転自在の第1吸気カムシャフト(主吸気カムシャフト41)と、第1吸気カムよりも低いカム山を有しかつ回転することによって吸気ロッカアーム51の回動支点(ピン51c)を移動させる第2吸気カム(副吸気カム44)と、第2吸気カムの第1吸気カムに対する相対的な位相を変更する吸気カム位相可変機構(副吸気カム位相可変機構70)とが設けられた、回転自在の第2吸気カムシャフト(副吸気カムシャフト42)と、を有することを特徴とする。
【0008】
この内燃機関の吸入空気量制御装置によれば、吸気バルブタイミング可変装置によって設定された吸気弁のバルブタイミングを表す値を入力とし、気筒吸入空気量を出力とするとともに、定常偏差およびモデル化誤差を補償するための補償パラメータと、入力および出力に乗算される乗算係数とをモデルパラメータとする制御対象モデルに基づき、所定の同定アルゴリズムにより、気筒吸入空気量と制御対象モデルの前記出力との誤差が最小になるように、モデルパラメータがオンボード同定され、制御指令値が、オンボード同定されたモデルパラメータに応じて、気筒吸入空気量が目標吸入空気量に収束するように算出される。このように、制御指令値が適応制御アルゴリズムにより算出されるとともに、補償パラメータを含むモデルパラメータが、気筒吸入空気量と制御対象モデルの出力との誤差が最小になるように、オンボード同定されるので、制御対象の動特性がばらついたり、経年変化したりしている場合でも、それらの影響を回避しながら、制御対象モデルの動特性を、その実際の動特性に適合させることができるとともに、定常偏差およびモデル化誤差を補償することができ、それにより、気筒吸入空気量を、迅速かつ安定した状態で目標吸入空気量に収束させることができる。このように、吸入空気量制御において、高いロバスト性を確保できるとともに、制御性を向上させることができ、それにより、トルク変動および回転変動の発生を回避でき、燃焼状態を向上させることができる。その結果、運転性および排気ガス特性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関3の吸入空気量制御装置1において、吸気バルブタイミング可変装置(可変式吸気弁駆動装置40)は、吸気弁6の最大バルブリフト量を維持したままで、吸気弁6の開弁タイミングと閉弁タイミングとの間隔を変更自在に構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の内燃機関3の吸入空気量制御装置1において、制御指令値算出手段は、所定の予測アルゴリズム[式(7)]に基づいて、気筒吸入空気量の予測値(予測吸入空気量Pre_Gcyl)を算出するとともに、気筒吸入空気量の予測値にさらに応じて、制御指令値を算出することを特徴とする。
【0012】
この吸入空気量制御装置のように、吸気バルブタイミング可変装置を介して吸入空気量を制御した場合、吸気バルブタイミング可変装置の実際の動作と、気筒内に吸入される吸入空気量との間には、吸気バルブタイミング可変装置の応答遅れなどに起因して、むだ時間が存在するのが一般的である。したがって、この吸入空気量制御装置によれば、気筒吸入空気量の予測値が、所定の予測アルゴリズムに基づいて算出されるとともに、この気筒吸入空気量の予測値にさらに応じて、制御指令値が算出されるので、上記のようなむだ時間を補償しながら、制御指令値を算出することができ、それにより、気筒吸入空気量の目標吸入空気量への収束性を向上させることができる。その結果、運転性および排気ガス特性をさらに向上させることができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関3の吸入空気量制御装置1において、制御指令値算出手段は、応答指定型制御アルゴリズム[式(15)〜(21)]にさらに応じて、制御指令値を算出することを特徴とする。
【0014】
この内燃機関の吸入空気量制御装置によれば、制御指令値が、応答指定型制御アルゴリズムにさらに応じて算出されるので、気筒吸入空気量を、振動的およびオーバーシュート的な挙動を回避しながら迅速かつ安定した状態で、目標吸入空気量に収束させることができ、それにより、運転性および排気ガス特性をより一層、向上させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関の吸入空気量制御装置について説明する。図1および図2は、本実施形態の吸入空気量制御装置1が適用された内燃機関(以下「エンジン」という)3の概略構成を示し、図3は、吸入空気量制御装置1の概略構成を示している。図3に示すように、吸入空気量制御装置1は、ECU2を備えており、このECU2は、エンジン3の運転状態に応じて、後述するように、吸気弁6および排気弁7のバルブタイミング制御などを含む各種の制御処理を実行する。
【0020】
このエンジン3は、図示しない車両に搭載された直列4気筒型ガソリンエンジンであり、第1〜第4の4つの気筒#1〜#4を備えている(図5参照)。また、エンジン3では、気筒毎に、主燃料噴射弁4および点火プラグ5が設けられており(いずれも1つのみ図示)、これらの主燃料噴射弁4および点火プラグ5はいずれも、シリンダヘッド3aに取り付けられている。各主燃料噴射弁4は、ECU2に接続されており、ECU2からの制御入力によって、その燃料噴射量および燃料噴射タイミングが制御され、それにより、燃料を対応する気筒の燃焼室内に直接噴射する。
【0021】
また、各点火プラグ5もECU2に接続されており、ECU2から点火時期に応じたタイミングで高電圧が加えられることで放電し、それにより、燃焼室内の混合気を燃焼させる。
【0022】
さらに、エンジン3は、気筒毎に設けられ、吸気ポートおよび排気ポートをそれぞれ開閉する吸気弁6および排気弁7と、吸気弁6を開閉駆動すると同時にそのバルブタイミングおよびバルブリフト量を変更する可変式吸気弁駆動装置40と、排気弁7を開閉駆動すると同時にそのバルブタイミングおよびバルブリフト量を変更する可変式排気弁駆動装置90などを備えている。これらの可変式吸気駆動装置40および可変式排気弁駆動装置90の詳細については、後述する。また、吸気弁6および排気弁7はそれぞれ、バルブスプリング6a,7aにより閉弁方向に付勢されている。
【0023】
一方、エンジン3のクランクシャフト3bには、マグネットロータ20aが取り付けられている。このマグネットロータ20aは、MREピックアップ20bとともに、クランク角センサ20を構成している。クランク角センサ20は、クランクシャフト3bの回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。
【0024】
CRK信号は、所定のクランク角(例えば30deg)毎に1パルスが出力される。ECU2は、このCRK信号に応じ、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、各気筒のピストン3cが吸気行程のTDC位置よりも若干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、所定クランク角(本実施形態の例では180deg)毎に1パルスが出力される。
【0025】
また、エンジン3の吸気管8には、上流側から順に、ターボチャージャ装置10、インタークーラ11、燃料気化冷却装置12およびスロットル弁機構16などが設けられている。
【0026】
ターボチャージャ装置10は、吸気管8の途中のコンプレッサハウジング内に収容されたコンプレッサブレード10aと、排気管9の途中のタービンハウジング内に収容されたタービンブレード10bと、2つのブレード10a,10bを一体に連結する軸10cと、ウエストゲート弁10dなどを備えている。
【0027】
このターボチャージャ装置10では、排気管9内の排気ガスによってタービンブレード10bが回転駆動されると、これと一体のコンプレッサブレード10aも同時に回転することにより、吸気管8内の吸入空気が加圧される。すなわち、過給動作が実行される。
【0028】
また、上記ウエストゲート弁10dは、排気管9のタービンブレード10bをバイパスするバイパス排気通路9aを開閉するものであり、ECU2に接続された電磁制御弁で構成されている(図3参照)。このウエストゲート弁10dは、ECU2からの制御入力Dut_wgに応じて開度が変化することにより、バイパス排気通路9aを流れる排気ガスの流量、言い換えればタービンブレード10bを駆動する排気ガスの流量を変化させる。これにより、ターボチャージャ装置10による過給圧Pcが制御される。
【0029】
一方、吸気管8のコンプレッサブレード10aよりも上流側に、エアフローセンサ21が設けられている。このエアフローセンサ21は、熱線式エアフローメータで構成されており、後述するスロットル弁17を通過する吸入空気量(以下「TH通過吸入空気量」という)Gthを表す検出信号をECU2に出力する。
【0030】
また、インタークーラ11は、水冷式のものであり、その内部を吸気が通過する際、ターボチャージャ装置10での過給動作(加圧動作)によって温度が上昇した吸気を冷却する。
【0031】
さらに、吸気管8のインタークーラ11と燃料気化冷却装置12との間に、過給圧センサ22が設けられている。この過給圧センサ22は、半導体圧力センサなどで構成され、ターボチャージャ装置10により加圧された吸気管8内の吸気圧、すなわち過給圧Pc(絶対圧)を表す検出信号をECU2に出力する。
【0032】
一方、燃料気化冷却装置12は、燃料を気化し、混合気を生成すると同時に、その際に吸気の温度を低下させるものであり、図4に示すように、吸気管8の途中に設けられたハウジング13と、このハウジング13内に互いに平行にかつ所定間隔を存する状態で収容された多数の親油膜板14(6枚のみ図示)と、副燃料噴射弁15などを備えている。
【0033】
この副燃料噴射弁15は、ECU2に接続されており、ECU2からの制御入力により、その燃料噴射量および燃料噴射タイミングが制御され、それにより、燃料を多数の親油膜板14に向かって噴射する。なお、後述するように、ECU2により、この副燃料噴射弁15および主燃料噴射弁4の双方から噴射すべき総燃料噴射量TOUTが、エンジン3の運転状態に応じて決定されるとともに、この総燃料噴射量TOUTに占める、主燃料噴射弁4からの燃料噴射量の割合(後述する主燃料噴射率Rt_Pre)、および副燃料噴射弁15からの燃料噴射量の割合が、エンジン3の運転状態に応じて決定される。また、親油膜板14の表面には、燃料に対して親和性を有する親油膜が形成されている。
【0034】
以上の構成により、この燃料気化冷却装置12では、副燃料噴射弁15から噴射された燃料は、各親油膜板14の表面でその親油性により薄膜化された後、吸気の熱によって気化する。それにより、混合気が生成されるとともに、その際の気化熱によって吸気が冷却される。この燃料気化冷却装置12による冷却効果により、充填効率を高めることができるとともに、エンジン3のノッキングの発生限界を拡大することができる。例えば、エンジン3の高負荷運転時、ノッキングが発生し始める限界の点火時期を、所定クランク角(例えば2deg)分、進角側に拡大することができ、それにより、燃焼効率を向上させることができる。
【0035】
また、前述したスロットル弁機構16は、スロットル弁17およびこれを開閉駆動するTHアクチュエータ18などを備えている。スロットル弁17は、吸気管8の途中に回動自在に設けられており、当該回動に伴う開度の変化によりTH通過吸入空気量Gthを変化させる。THアクチュエータ18は、ECU2に接続されたモータにギヤ機構(いずれも図示せず)を組み合わせたものであり、ECU2からの後述する制御入力DUTY_thによって制御されることにより、スロットル弁17の開度を変化させる。
【0036】
また、スロットル弁17には、これを開弁方向および閉弁方向にそれぞれ付勢する2つのばね(いずれも図示せず)が取り付けられており、これら2つのばねの付勢力により、スロットル弁17は、制御入力DUTY_thがTHアクチュエータ18に入力されていないときには、所定の初期開度TH_defに保持される。この初期開度TH_defは、全閉状態に近くかつエンジン3の始動に必要な吸入空気量を確保できる値(例えば7゜)に設定されている。
【0037】
さらに、吸気管8のスロットル弁17の近傍には、例えばポテンショメータなどで構成されたスロットル弁開度センサ23が設けられている。このスロットル弁開度センサ23は、スロットル弁17の実際の開度(以下「スロットル弁開度」という)THを表す検出信号をECU2に出力する。
【0038】
また、吸気管8のスロットル弁17よりも下流側の部分は、サージタンク8aになっており、このサージタンク8aに、吸気管内絶対圧センサ24が設けられている。この吸気管内絶対圧センサ24は、例えば半導体圧力センサなどで構成され、吸気管8内の絶対圧(以下「吸気管内絶対圧」という)PBAを表す検出信号をECU2に出力する。さらに、吸気管8のサージタンク8aよりも下流側は、インテークマニホールド8bになっており(図22参照)、このインテークマニホールド8bは、4つに分岐し、4つの気筒#1〜#4にそれぞれ連通している。
【0039】
一方、排気管9のタービンブレード10bよりも下流側には、上流側から順に、第1および第2触媒装置19a,19bが設けられており、これらの触媒装置19a,19bにより、排気ガス中のNOx、HCおよびCOなどが浄化される。
【0040】
これらの第1および第2触媒装置19a,19bの間に、酸素濃度センサ(以下「O2センサ」という)26が設けられている。このO2センサ26は、ジルコニアおよび白金電極などで構成され、第1触媒装置19aの下流側の排気ガス中の酸素濃度に基づく検出信号をECU2に出力する。
【0041】
また、排気管9のタービンブレード10bと第1触媒装置19の間に、LAFセンサ25が設けられている。このLAFセンサ25は、O2センサ26と同様のセンサとリニアライザなどの検出回路とを組み合わせることによって構成されており、リッチ領域からリーン領域までの広範囲な空燃比の領域において排気ガス中の酸素濃度をリニアに検出して、その酸素濃度に比例する検出信号をECU2に出力する。ECU2は、これらのLAFセンサ25およびO2センサ26の検出信号に基づき、空燃比制御を実行する。
【0042】
次に、前述した可変式吸気弁駆動装置40(吸気バルブタイミング可変装置)について説明する。図2、図5および図6に示すように、この可変式吸気弁駆動装置40は、吸気弁駆動用の主吸気カムシャフト41および副吸気カムシャフト42と、気筒毎に設けられ、主・副吸気カムシャフト41,42の回転に伴って吸気弁6を開閉駆動する吸気弁駆動機構50(1つのみ図示)と、主吸気カム位相可変機構60と、副吸気カム位相可変機構70と、3つの吸気カム間位相可変機構80などを備えている。
【0043】
主吸気カムシャフト41(第1吸気カムシャフト)は、シリンダヘッド3aに回転自在に取り付けられ、気筒の配列方向に沿って延びている。主吸気カムシャフト41は、気筒毎に設けられた主吸気カム43(第1吸気カム)と、一端部に設けられたスプロケット47と、第1気筒#1用の主吸気カム43とスプロケット47の間に設けられた主ギヤ45(第1ギヤ)と、を備えている。これらの主吸気カム43、主ギヤ45およびスプロケット47はいずれも、主吸気カムシャフト41に同軸かつ一体に回転するように取り付けられている。スプロケット47は、タイミングチェーン48を介して、クランクシャフト3bに連結されており、それにより、主吸気カムシャフト41は、クランクシャフト3bが2回転する毎に、図6の時計回り(矢印Y1で示す方向)に1回転する。
【0044】
また、主吸気カム位相可変機構60は、主吸気カムシャフト41のスプロケット47側端部に設けられている。この主吸気カム位相可変機構60は、主吸気カムシャフト41のスプロケット47に対する相対的な位相、すなわち主吸気カムシャフト41のクランクシャフト3bに対する相対的な位相(以下「主吸気カム位相」という)θmiを無段階に進角側または遅角側に変更するものであり、その詳細については後述する。
【0045】
さらに、主吸気カムシャフト41のスプロケット47と反対側の端部には、主吸気カム角センサ27が設けられている。この主吸気カム角センサ27は、クランク角センサ20と同様に、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、主吸気カムシャフト41の回転に伴い、パルス信号である主吸気カム信号を所定のカム角(例えば1deg)毎にECU2に出力する。ECU2は、この主吸気カム信号およびCRK信号に基づき、上記主吸気カム位相θmiを算出(検出)する。
【0046】
一方、副吸気カムシャフト42(第2吸気カムシャフト)も、主吸気カムシャフト41と同様にシリンダヘッド3aに回転自在に支持され、主吸気カムシャフト41に平行に延びている。副吸気カムシャフト42は、気筒毎に設けられた副吸気カム44(第2吸気カム)と、上記主ギヤ45と同歯数でかつ同径の副ギヤ46(第2ギヤ)とを有しており、副ギヤ46は、副吸気カムシャフト42と同軸に一体に回転するようになっている。
【0047】
主ギヤ45および副ギヤ46はいずれも、図示しない押圧スプリングにより常に互いに噛み合うように押圧されているとともに、図示しないバックラッシュ補償機構により、バックラッシュが発生しないように構成されている。両ギヤ45,46の噛み合いにより、副吸気カムシャフト42は、主吸気カムシャフト41の上記時計回りの回転に伴い、同じ回転数で図6の反時計回り(矢印Y2で示す方向)に回転する。
【0048】
また、副吸気カム位相可変機構70(吸気カム位相可変機構)は、副吸気カムシャフト42のタイミングチェーン48側端部に設けられており、副吸気カムシャフト42の主吸気カムシャフト41に対する相対的な位相、言い換えれば第1気筒#1用の副吸気カム44の主吸気カム43に対する相対的な位相(以下「副吸気カム位相」という)θmsiを無段階に変更する。この副吸気カム位相可変機構70の詳細については後述する。
【0049】
さらに、副吸気カムシャフト42の副吸気カム位相可変機構70と反対側の端部には、副吸気カム角センサ28が設けられている。この副吸気カム角センサ28も、主吸気カム角センサ27と同様に、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、副吸気カムシャフト42の回転に伴い、パルス信号である副吸気カム信号を所定のカム角(例えば1deg)毎にECU2に出力する。ECU2は、この副吸気カム信号、主吸気カム信号およびCRK信号に基づき、上記副吸気カム位相θmsi(第1および第2吸気カムシャフト間の相対的な位相)を算出する。
【0050】
また、4つの副吸気カム44において、第1気筒#1用の副吸気カム44は、副吸気カムシャフト42と同軸に一体に回転するように取り付けられ、それ以外の第2〜第4気筒#2〜#4用の副吸気カム44の各々は、前記吸気カム間位相可変機構80を介して副吸気カムシャフト42に連結されている。これらの吸気カム間位相可変機構80は、第2〜第4気筒#2〜#4用の副吸気カム44の、第1気筒#1用の副吸気カム44に対する相対的な位相(以下「吸気カム間位相」という)θssi#iを、互い独立して無段階に変更するものであり、その詳細については後述する。なお、吸気カム間位相θssi#iにおける記号#iは気筒番号を表すものであり、#i=#2〜#4に設定されている。この点は、以下の説明においても同様である。
【0051】
さらに、ECU2には、3つの#2〜#4副吸気カム角センサ29〜31が電気的に接続されている(図3参照)。これらの#2〜#4副吸気カム角センサ29〜31はそれぞれ、第2〜第4気筒#2〜#4用の副吸気カム44の回転に伴い、パルス信号である#2〜#4副吸気カム信号を所定のカム角(例えば1deg)毎にECU2に出力する。ECU2は、これらの#2〜#4副吸気カム信号、副吸気カム信号、主吸気カム信号およびCRK信号に基づき、上記吸気カム間位相θssi#iを算出する。
【0052】
一方、吸気弁駆動機構50は、主・副吸気カム43,44と、吸気弁6を開閉する吸気ロッカアーム51と、吸気ロッカアーム51を支持するリンク機構52などで構成されている。これらの主・副吸気カム43,44のカムプロフィールについては後述する。
【0053】
リンク機構52は、4節リンクタイプのものであり、吸気弁6とほぼ平行に延びる第1リンク53と、互いに平行に上下に設けられた2つの第2リンク54,54と、バイアススプリング55と、リターンスプリング56などを備えている。この第1リンク53には、その下端部に吸気ロッカアーム51の中央部がピン51cを介して回動自在に取り付けられており、上端部に回転自在のローラ53aが設けられている。
【0054】
吸気ロッカアーム51には、主吸気カム43側の端部に回転自在のローラ51aが設けられ、吸気弁6側の端部にアジャストボルト51bが取り付けられている。このアジャストボルト51bの下縁と吸気弁6の上縁との間のバルブクリアランスは、後述するような所定値に設定されている。また、バイアススプリング55は、その一端部が吸気ロッカアーム51に取り付けられ、他端部が第1リンク53に取り付けられている。このバイアススプリング55の付勢力により、吸気ロッカアーム51は、図6の時計回りに付勢されており、それにより、ローラ51aを介して主吸気カム43に常に当接している。
【0055】
以上の構成により、主吸気カム43が図6の時計回りに回転すると、吸気ロッカアーム51は、ローラ51aが主吸気カム43のカム面上を転動することにより、主吸気カム43のカムプロフィールに応じて、ピン51cを回動支点として時計回り・反時計回りに回動する。この吸気ロッカアーム51の回動により、アジャストボルト51bが上下方向に往復動し、吸気弁6を開閉させる。
【0056】
また、各第2リンク54は、その一端部がピン54aを介してシリンダヘッド3aに回動自在に連結され、他端部が第1リンク53の所定部位にピン54bを介して回動自在に連結されている。さらに、リターンスプリング56では、その一端部が上側の第2リンク54に取り付けられ、他端部がシリンダヘッド3aに取り付けられている。このリターンスプリング56の付勢力により、上側の第2リンク54は、図6の反時計回りに付勢されており、それにより、第1リンク53は、ローラ53aを介して副吸気カム44に常に当接している。
【0057】
以上の構成により、副吸気カム44が図6の反時計回りに回転すると、第1リンク53は、ローラ53aが副吸気カム44のカム面上を転動することにより、副吸気カム44のカムプロフィールに応じ、上下方向に移動する。それにより、吸気ロッカアーム51の回動支点であるピン51cが、最下位置(図6に示す位置)と最上位置(図15に示す位置)との間で上下方向に移動する。これに伴い、吸気ロッカアーム51が上述したように回動する際、アジャストボルト51bの往復動の位置が変化する。
【0058】
また、主吸気カム43のカム山の高さは、副吸気カム44よりも高くなっており、主吸気カム43と副吸気カム44とのカム山の高さの比は、アジャストボルト51bからローラ51aの中心までの距離と、アジャストボルト51bからピン51cの中心までの距離との比に等しい値に設定されている。すなわち、主・副吸気カム43,44により吸気ロッカアーム51が駆動された際、主吸気カム43のカム山によるアジャストボルト51bの上下方向の変動量と、副吸気カム44のカム山によるアジャストボルト51bの上下方向の変動量が互いに同じになるように設定されている。
【0059】
次に、前述した主吸気カム位相可変機構60について説明する。この主吸気カム位相可変機構60は、図7に示すように、ハウジング61、3枚羽根式のベーン62、油圧ポンプ63および電磁弁機構64などを備えている。
【0060】
このハウジング61は、前述したスプロケット47と一体に構成されており、互いに等間隔に形成された3つの隔壁61aを備えている。ベーン62は、主吸気カムシャフト41のスプロケット47側の端部に同軸に取り付けられ、主吸気カムシャフト41から外方に放射状に延びているとともに、ハウジング61内に回転可能に収容されている。また、ハウジング61では、隔壁61aとベーン62との間に、3つの進角室65および3つの遅角室66が形成されている。
【0061】
油圧ポンプ63は、クランクシャフト3bに連結された機械式のものであり、クランクシャフト3bが回転すると、それに伴って、エンジン3のオイルパン3dに蓄えられた潤滑用のオイルを、油路67cを介して吸い込むとともに、これを昇圧した状態で、油路67cを介して電磁弁機構64に供給する。
【0062】
電磁弁機構64は、スプール弁機構64aおよびソレノイド64bを組み合わせたものであり、進角油路67aおよび遅角油路67bを介して、進角室65および遅角室66にそれぞれ接続されているとともに、油圧ポンプ63から供給された油圧を、進角油圧Padおよび遅角油圧Prtとして、進角室65および遅角室66にそれぞれ出力する。電磁弁機構64のソレノイド64bは、ECU2に電気的に接続されており、ECU2からの制御入力DUTY_miが入力された際、スプール弁機構64aのスプール弁体を、制御入力DUTY_miに応じて所定の移動範囲内で移動させることにより、進角油圧Padおよび遅角油圧Prtをいずれも変化させる。
【0063】
以上の主吸気カム位相可変機構60では、油圧ポンプ63の動作中、電磁弁機構64が制御入力DUTY_miに応じて作動することにより、進角油圧Padが進角室65に、遅角油圧Prtが遅角室66にそれぞれ供給され、それにより、ベーン62とハウジング64との間の相対的な位相が進角側または遅角側に変更される。その結果、前述した主吸気カム位相θmiが所定範囲(例えばカム角45deg〜60deg分の範囲)で無段階に進角側または遅角側に変更される。なお、この主吸気カム位相可変機構60には、図示しないロック機構が設けられており、このロック機構により、油圧ポンプ63からの供給油圧が低いときには、主吸気カム位相可変機構60の動作がロックされる。すなわち、主吸気カム位相可変機構60による主吸気カム位相θmiの変更が禁止され、主吸気カム位相θmiがアイドル運転やエンジン始動に適した値にロックされる。
【0064】
次に、前述した副吸気カム位相可変機構70について説明する。図8に示すように、この副吸気カム位相可変機構70は、ハウジング71、1枚のベーン72、油圧ピストン機構73およびモータ74などを備えている。
【0065】
このハウジング71は、副吸気カムシャフト42の上記ギヤ46と一体に構成されており、その内部に断面扇形のベーン室75が形成されている。ベーン72は、副吸気カムシャフト42のタイミングチェーン48側の端部に同軸に取り付けられ、副吸気カムシャフト42から外方に延びているとともに、ベーン室75に回転可能に収容されている。このベーン72により、ベーン室75は第1および第2ベーン室75a,75bに仕切られている。
【0066】
また、ベーン72に、リターンスプリング72aの一端部が取り付けられており、このリターンスプリング72の他端部は、ハウジング71に取り付けられている。このリターンスプリング72aにより、ベーン72は、図8の反時計回りの方向、すなわち第1ベーン室75aの容積を小さくする方向に付勢されている。
【0067】
一方、油圧ピストン機構73は、シリンダ73aおよびピストン73bを備えている。このシリンダ73aの内部空間は、油路76を介して第1ベーン室75aに連通しており、これらのシリンダ73aの内部空間、油路76内および第1ベーン室75a内には、作動油が充填されている。また、第2ベーン室75bは、大気側に連通している。
【0068】
また、ピストン73bには、ラック77が取り付けられており、これと噛み合うピニオン78がモータ74の回転軸に同軸に取り付けられている。モータ74は、ECU2に電気的に接続されており、ECU2からの制御入力DUTY_msiが入力されると、ピニオン78を回転駆動し、それにより、ラック77を介してピストン73bをシリンダ73a内で摺動させる。それにより、第1ベーン室75a内の油圧Psdが変化し、このように変化する油圧Psdとリターンスプリング72aの付勢力とのバランスにより、ベーン72が時計回りまたは反時計回りに回転する。その結果、副吸気カム位相θmsiが、所定範囲(後述するカム角180deg分の範囲)で進角側または遅角側に無段階に変更される。
【0069】
以上のように、この副吸気カム位相可変機構70では、前述した主吸気カム位相可変機構60の油圧ポンプ63および電磁弁機構64に代えて、油圧ピストン機構73およびモータ74を用いることによって、副吸気カム位相θmsiを変化させている。これは、副吸気カム位相可変機構70が各気筒への吸入空気量の調整に用いられるため、主吸気カム位相可変機構60よりも高い応答性が要求されることによる。したがって、副吸気カム位相可変機構70において、高い応答性が必要でない場合(例えば、後述する吸気弁6のバルブタイミング制御において、遅閉じ制御および早閉じ制御の一方のみを実行すればよい場合)には、油圧ピストン機構73およびモータ74に代えて、主吸気カム位相可変機構60と同様に、油圧ポンプ63および電磁弁機構64を用いてもよい。
【0070】
なお、図9に示すように、副吸気カム位相可変機構70において、ベーン72を同図の時計回りの方向に付勢するリターンスプリング72bを設け、このリターンスプリング72bの付勢力をリターンスプリング72aと同じ値に設定するとともに、同図に示すベーン72の中立位置を、副吸気カム位相θmsiが最も高頻度に制御される値に相当する位置に設定してもよい。このようにすれば、副吸気カム位相可変機構70の動作中、ベーン72が中立位置に保持される時間がより長くなることで、モータ74の動作停止時間をより長く確保でき、それにより消費電力を低減できる。
【0071】
次に、前述した吸気カム間位相可変機構80について説明する。なお、3つの吸気カム間位相可変機構80は、互いに同様に構成されているので、以下、第2気筒#2用の副吸気カム44の吸気カム間位相θssi#2を変更する吸気カム間位相可変機構80を例にとって説明する。この吸気カム間位相可変機構80は、吸入空気量の気筒間の定常的なばらつきを調整するためのものであり、高い応答性が必要とされないものであるので、前述した主吸気カム位相可変機構60と一部を除いて同様に構成されている。すなわち、吸気カム間位相可変機構80は、図10に示すように、ハウジング81、ベーン82、油圧ポンプ83および電磁弁機構84などを備えている。
【0072】
このハウジング81は、第2気筒#2用の副吸気カム44と一体に構成されており、1つの隔壁81aを備えている。ベーン82は、副吸気カムシャフト42の途中に同軸に取り付けられ、ハウジング81内に回転可能に収容されている。また、ハウジング81では、隔壁81aとベーン82との間に、進角室85および遅角室86が形成されている。
【0073】
油圧ポンプ83は、前述した油圧ポンプ63と同様に、クランクシャフト3bに連結された機械式のものであり、クランクシャフト3bが回転すると、それに伴って、エンジン3のオイルパン3dに蓄えられた潤滑用のオイルを、油路87cを介して吸い込むとともに、これを昇圧した状態で、油路87cを介して電磁弁機構84に供給する。
【0074】
電磁弁機構84は、前述した電磁弁機構64と同様に、スプール弁機構84aおよびソレノイド84bを組み合わせたものであり、進角油路87aおよび遅角油路87bを介して、進角室85および遅角室86にそれぞれ接続されているとともに、油圧ポンプ83から供給された油圧を、進角油圧Padおよび遅角油圧Prtとして、進角室85および遅角室86にそれぞれ出力する。電磁弁機構84のソレノイド84bは、ECU2に電気的に接続されており、ECU2からの制御入力DUTY_ssi#2が入力された際、スプール弁機構84aのスプール弁体を、制御入力DUTY_ssi#2に応じて所定の移動範囲内で移動させることにより、進角油圧Padおよび遅角油圧Prtをいずれも変化させる。
【0075】
以上の吸気カム間位相可変機構80では、油圧ポンプ83の動作中、電磁弁機構84が制御入力DUTY_ssi#2に応じて作動することにより、進角油圧Padが進角室85に、遅角油圧Prtが遅角室86にそれぞれ供給され、それにより、ベーン82とハウジング84との間の相対的な位相が進角側または遅角側に変更される。その結果、前述した吸気カム間位相θssi#2が所定範囲(例えばカム角30deg分の範囲)で無段階に進角側または遅角側に変更される。なお、この吸気カム間位相可変機構80には、図示しないロック機構が設けられており、このロック機構により、油圧ポンプ83からの供給油圧が低いときには、吸気カム間位相可変機構80の動作がロックされる。すなわち、吸気カム間位相可変機構80による吸気カム間位相θssi#2の変更が禁止され、吸気カム間位相θssi#2がその時点の制御目標値(後述する値0)にロックされる。
【0076】
なお、圧縮着火式内燃機関のように、各気筒の内部EGR量や吸入空気量などを高い応答性でかつ高精度に制御する必要がある場合には、吸気カム間位相可変機構80を、副吸気カム位相可変機構70と同様に構成してもよい。
【0077】
次に、以上のように構成された可変式吸気弁駆動装置40の動作について説明する。なお、以下の説明では、主・副吸気カム43,44として、第1気筒#1用のものを例にとって説明する。図11は、主・副吸気カム43,44のカムプロフィールを説明するためのものであり、副吸気カム位相可変機構70により副吸気カム位相θmsi=0degに設定されているときの動作状態、すなわち副吸気カム44と主吸気カム43との間に位相差がないときの動作状態を示している。
【0078】
図中の1点鎖線で示す曲線は、主吸気カム43が回転したときの、これと吸気ロッカアーム51との当接点、すなわちローラ51aの変動量およびその変動タイミングを表しており、図中の破線で示す曲線は、副吸気カム44が回転したときの第1リンク53すなわちピン51cの変動量およびその変動タイミングを表している。この点は、以下の図12〜図16においても同様である。
【0079】
さらに、図11に2点鎖線で示す曲線は、比較のために、オットーサイクルで運転される一般的なエンジン、すなわち膨張比と圧縮比が同じになるように運転されるエンジンの吸気カム(以下「オットー吸気カム」という)によるアジャストボルト51bの変動量および変動タイミングを表すものである。この曲線にバルブクリアランスを加味したものが、オットー吸気カムによる吸気弁のバルブリフト曲線に相当するので、以下の説明では、この曲線を適宜、バルブリフト曲線という。
【0080】
同図に示すように、主吸気カム43は、オットー吸気カムと比べて、リフト開始タイミングすなわち開弁タイミングが同じで、リフト終了タイミングすなわち閉弁タイミングが圧縮行程のより遅いタイミングとなる、いわゆる遅閉じカムとして構成されているとともに、最大バルブリフト量となる状態が所定範囲(例えばカム角150deg分)で継続するカムプロフィールを有している。なお、以下の説明においては、吸気弁6がオットー吸気カムよりも遅いタイミングおよび早いタイミングで閉弁される状態をそれぞれ、吸気弁6の「遅閉じ」または「早閉じ」という。
【0081】
さらに、副吸気カム44は、主吸気カム43と比べて、開弁タイミングがより早くなるとともに、最大バルブリフト量となる状態が上記所定範囲(例えばカム角150deg分)で継続するカムプロフィールを有している。
【0082】
以上のカムプロフィールを有する主・副吸気カム43,44により、吸気弁6を実際に駆動した場合の動作について、図12〜図16を参照しながら説明する。図12は、副吸気カム位相θmsi=0degのときの動作例を示している。なお、同図(b)の実線で示す曲線は、アジャストボルト51bの実際の変動量およびその変動タイミングを示すものであり、前述したように、これにバルブクリアランスを加味したものが、吸気弁6の実際のバルブリフト量およびバルブタイミングを示すバルブリフト曲線に相当する。したがって、以下の説明では、この曲線を、適宜、吸気弁6のバルブリフト曲線といい、アジャストボルト51bの変動量およびその変動タイミングを、吸気弁6のバルブリフト量およびバルブタイミングという。この点は図13(b)〜図16においても同様である。
【0083】
図12(a)に示すように、副吸気カム位相θmsi=0degのときには、主吸気カム43がそのカム山が高い部位で吸気ロッカアーム51に当接している期間中、副吸気カム44がそのカム山が高い部位で第1リンク53に当接する状態となる。すなわち、主吸気カム43による開弁動作中、吸気ロッカアーム51の回動支点が最下位置に保持される。その結果、図12(b)に示すように、吸気弁6のバルブリフト量およびバルブタイミングは、オットー吸気カムと比べて、開弁タイミングが同じで閉弁タイミングがより遅くなり、遅閉じカムで吸気弁6を駆動している状態となる。
【0084】
図13〜図15はそれぞれ、副吸気カム位相可変機構70により副吸気カム位相θmsiが90deg、120degおよび180degに設定されている場合の動作例を示している。言い換えれば、副吸気カムシャフト42の位相を主吸気カムシャフト41に対してカム角90deg分、120deg分および180deg分、進角側にずらした場合の動作例を示している。また、図16は、副吸気カム位相θmsiを120degから180degに変化させた際の動作例を示している。
【0085】
図13(a)に示すように、θmsi=90degのときには、主吸気カム43がそのカム山が高い部位で吸気ロッカアーム51に当接している期間の後半側で、副吸気カム44は、カム山の高い部位ではなく低い部位で第1リンク53に当接する状態となる。その結果、同図(b)に示すように、吸気弁6の閉弁タイミングすなわち主吸気カム43による開弁動作の終了タイミングが、θmsi=0degのときよりも早くなり、前述したオットー吸気カムと同じバルブタイミングとなる。
【0086】
また、θmsiが90degより大きいとき、例えば図14(a)に示すθmsi=120degのときには、主吸気カム43がそのカム山が高い部位で吸気ロッカアーム51に当接している期間中、副吸気カム44がカム山の高い部位で第1リンク53に当接する時間が上記θmsi=90degのときよりも短くなる。その結果、同図(b)に示すように、吸気弁6の閉弁タイミングが、上述したθmsi=90degのときよりもさらに早くなり、オットー吸気カムと比べて、開弁タイミングが同じで閉弁タイミングがより早くなり、早閉じカムで吸気弁6を駆動している状態となる。
【0087】
さらに、図16に示すように、副吸気カム位相θmsiを上記120degから180degに変化させると、主吸気カム43がそのカム山が高い部位で吸気ロッカアーム51に当接している期間中、副吸気カム44がカム山の高い部位で第1リンク53に当接する時間が漸減し、その結果、吸気弁6の閉弁タイミングが次第に早くなるとともに、吸気弁6のバルブリフト量もその最大値から漸減する。このように、吸気弁6のバルブリフト量がその最大値よりも小さくなるように、副吸気カム位相可変機構70によって副吸気カム位相θmsiを設定した場合、燃焼室内に流れ込む吸入空気の流速を上昇させることができ、筒内流動をより大きくすることができる。それにより、燃焼効率を向上させることができる。
【0088】
そして、最終的に、θmsi=180degとなったときには、図15(a)に示すように、主吸気カム43がそのカム山が高い部位で吸気ロッカアーム51に当接している期間中、副吸気カム44は、カム山の低い部位で第1リンク53に当接する状態となり、その結果、同図(b)に示すように、アジャストボルト51bの変動量は、極めて小さい状態になるとともに、その最大値がバルブクリアランスよりも若干、小さい値になる。その結果、θmsi=180degのときには、アジャストボルト51bにより吸気弁6が駆動されない状態になることで、吸気弁6は閉弁状態に保持される。
【0089】
なお、以上の可変式吸気弁駆動装置40では、副吸気カム位相θmsi=90degのときに、吸気弁6のバルブリフト曲線がオットー吸気カムの場合と同じになるように構成されているが、吸気弁6のバルブリフト曲線がオットー吸気カムと同じになる副吸気カム位相θmsiの値は、主・副吸気カム43,44のカムプロフィールを変更することにより、適宜に変更可能である。
【0090】
次に、可変式排気弁駆動装置90について説明する。この可変式排気弁駆動装置90は、前述した可変式吸気弁駆動装置40と実質的に同様に構成されており、排気弁駆動用の主排気カムシャフト91および副排気カムシャフト92と、気筒毎に設けられ、主・副排気カムシャフト91,92の回転に伴って排気弁7を開閉駆動する排気弁駆動機構100(図2に1つのみ図示)と、主排気カム位相可変機構110と、副排気カム位相可変機構120と、3つの排気カム間位相可変機構130などを備えている。
【0091】
主排気カムシャフト91は、気筒毎に設けられた主排気カム93と、一体に取り付けられた主ギヤ95と、一端部に設けられたスプロケット97とを備えている。このスプロケット97は、主排気カムシャフト41のスプロケット47と同様に、前述したタイミングチェーン48を介して、クランクシャフト3bに連結されている。それにより、主排気カムシャフト91は、クランクシャフト3bが2回転する毎に1回転する。
【0092】
また、主排気カム位相可変機構110は、主排気カムシャフト91のスプロケット97に対する相対的な位相、すなわち主排気カムシャフト91のクランクシャフト3bに対する相対的な位相(以下「主排気カム位相」という)θmeを無段階に進角側または遅角側に変更するものである。この主排気カム位相可変機構110は、具体的には、前述した主吸気カム位相可変機構60と同様に構成されているので、その説明はここでは省略する。
【0093】
さらに、主排気カムシャフト91のスプロケット97と反対側の端部には、主排気カム角センサ32が設けられている。この主排気カム角センサ32は、主吸気カム角センサ27と同様に、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、主排気カムシャフト91の回転に伴い、パルス信号である主排気カム信号を所定のカム角(例えば1deg)毎にECU2に出力する。ECU2は、この主排気カム信号およびCRK信号に基づき、上記主排気カム位相θmeを算出する。
【0094】
一方、副排気カムシャフト92は、気筒毎に設けられた副排気カム94と、上記主ギヤ95と同歯数の副ギヤ96とを有している。これらの主・副ギヤ95,96はいずれも、前述した主・副ギヤ45,46と同様に、図示しない押圧スプリングにより常に噛み合うように押圧されているとともに、図示しないバックラッシュ補償機構により、バックラッシュが発生しないように構成されている。両ギヤ95,96の噛み合いにより、副排気カムシャフト92は、主排気カムシャフト91の回転に伴い、同じ回転数で反対回りに回転する。
【0095】
また、副排気カム位相可変機構120は、副排気カムシャフト92のギヤ96に対する相対的な位相、すなわち副排気カムシャフト92の主排気カムシャフト91に対する相対的な(以下「副排気カム位相」という)θmseを無段階に変更するものである。この副排気カム位相可変機構120は、具体的には、前述した副吸気カム位相可変機構70と同様に構成されているので、その説明はここでは省略する。
【0096】
一方、副排気カムシャフト92の副排気カム位相可変機構120と反対側の端部には、副排気カム角センサ33が設けられている。この副排気カム角センサ33は、主排気カム角センサ32と同様に、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、副排気カムシャフト92の回転に伴い、パルス信号である副排気カム信号を所定のカム角(例えば1deg)毎にECU2に出力する。ECU2は、この副排気カム信号、主排気カム信号およびCRK信号に基づき、上記副排気カム位相θmseを算出する。
【0097】
さらに、第1気筒#1用の副排気カム94は、副排気カムシャフト92に同軸かつ一体に回転するように取り付けられており、これ以外の第2〜第4気筒#2〜#4用の副排気カム94の各々は、前記排気カム間位相可変機構130を介して副排気カムシャフト92に連結されている。これらの排気カム間位相可変機構130は、第2〜第4気筒#2〜#4用の副排気カム94の、第1気筒#1用の副排気カム94に対する相対的な位相(以下「排気カム間位相」という)θsse#2〜#4を、互い独立して無段階に変更するものであり、具体的には、前述した吸気カム間位相可変機構80と同様に構成されているので、その説明はここでは省略する。
【0098】
また、図示しないが、ECU2には、前述した#2〜#4副吸気カム角センサ29〜31と同様の#2〜#4副排気カム角センサが電気的に接続されており、これらの#2〜#4副排気カム角センサはそれぞれ、第2〜第4気筒#2〜#4用の副排気カム94の回転に伴い、パルス信号である#2〜#4副排気カム信号を所定のカム角(例えば1deg)毎にECU2に出力する。ECU2は、これらの#2〜#4副排気カム信号、副排気カム信号、主排気カム信号およびCRK信号に基づき、上記排気カム間位相θsse#2〜#4を算出する。
【0099】
一方、排気弁駆動機構100は、吸気弁駆動機構50と同様に構成されており、主・副排気カム93,94と、排気弁7を開閉する排気ロッカアーム101と、排気ロッカアーム101を支持するリンク機構102などで構成されている。主・副排気カム93,94はそれぞれ、主・副吸気カム43,44と同様のカムプロフィールを有している。また、排気ロッカアーム101およびリンク機構102はそれぞれ、前述した吸気ロッカアーム51およびリンク機構52と同様に構成されているので、その詳細な説明は省略するが、排気ロッカアーム101の主排気カム93と反対側の端部には、前述したアジャストボルト51bと同様のアジャストボルト101bが取り付けられている。また、排気ロッカアーム101は、第1リンク103により回動自在に支持されている。
【0100】
次に、以上のように構成された可変式排気弁駆動装置90の動作について説明する。なお、以下の説明では、主・副排気カム93,94として、第1気筒#1用のものを例にとって説明する。図17は、主・副排気カム93,94のカムプロフィールを説明するためのものであり、副排気カム位相可変機構120により副排気カム位相θmse=0degに設定されている場合の動作例を示している。
【0101】
図中の1点鎖線で示す曲線は、主排気カム93が回転したときの、これと排気ロッカアーム101との当接点の変動量およびその変動タイミングを表しており、図中の破線で示す曲線は、副排気カム94が回転したときの第1リンク103の変動量およびその変動タイミングを表している。この点は、以下の図18〜図21においても同様である。
【0102】
さらに、同図に2点鎖線で示す曲線は、比較のために、オットーサイクルで運転される一般的なエンジンの排気カム(以下「オットー排気カム」という)によるアジャストボルト101bの変動量およびその変動タイミングを表している。この曲線にバルブクリアランスを加味したものが、オットー排気カムによる排気弁のバルブリフト曲線に相当するので、以下の説明では、この曲線を適宜、バルブリフト曲線という。
【0103】
同図に示すように、主排気カム93は、オットー排気カムと比べて、その閉弁タイミングが同じで、開弁タイミングが膨張行程のより早いタイミングで開弁される、いわゆる早開けカムとして構成されているとともに、最大バルブリフト量となる状態が所定範囲(例えばカム角90deg分)で継続するカムプロフィールを有している。なお、以下の説明においては、排気弁7がオットー排気カムよりも遅いタイミングおよび早いタイミングで開弁される状態をそれぞれ、排気弁7の「遅開け」および「早開け」という。
【0104】
さらに、副排気カム94は、主排気カム93と比べて、開弁時間がより長く、かつ最大バルブリフト量となる状態がより長い所定範囲(例えばカム角150deg分)で継続するカムプロフィールを有している。
【0105】
以上のカムプロフィールを有する主・副排気カム93,94により、排気弁7を実際に駆動した場合の動作について、図18〜図21を参照しながら説明する。図18は、副排気カム位相θmse=0degのときの動作例を示している。なお、同図の実線で示す曲線は、アジャストボルト101bの実際の変動量およびその変動タイミングを示すものであり、前述したように、排気弁7のバルブリフト曲線に実質的に相当するものである。したがって、以下の説明では、この曲線を、適宜、排気弁7のバルブリフト曲線といい、アジャストボルト101bの実際の変動量およびその変動タイミングを、排気弁7のバルブリフト量およびバルブタイミングという。この点は図19〜図21においても同様である。
【0106】
副排気カム位相θmse=0degのときには、主排気カム93がそのカム山の高い部位で排気ロッカアーム101に当接している期間中、副排気カム94がそのカム山の低い部位で第1リンク103に当接する状態となる。その結果、図18に示すように、アジャストボルト101bの変動量が極めて小さい状態になり、その最大値がバルブクリアランスよりも若干、小さい値になる。したがって、θmse=0degのときには、アジャストボルト101bにより排気弁7が駆動されない状態になることで、排気弁7は閉弁状態に保持される。
【0107】
図19〜図21はそれぞれ、副排気カム位相可変機構120により副排気カム位相θmseが45deg、90degおよび150degに設定されている場合の動作例を示している。言い換えば、副排気カムシャフト92の位相を主排気カムシャフト91に対してカム角45deg分、90deg分および150deg分、進角側にずらした場合の動作例を示している。
【0108】
前述した排気弁駆動機構100の構成により、副排気カム位相θmseが大きくなるほど、すなわち副排気カムシャフト92の位相を主排気カムシャフト91に対して進角させるほど、主排気カム93がそのカム山の高い部位で排気ロッカアーム101に当接している期間中、副排気カム94がそのカム山の高い部位で第1リンク103に当接する時間が長くなる。その結果、図19〜図21に示すように、θmseが大きくなるほど、排気弁7の開弁タイミングが早くなる。
【0109】
具体的には、図19に示すθmse=45degの場合には、オットー排気カムと比べて、その閉弁タイミングが同じで開弁タイミングがより遅くなり、遅開けカムで排気弁7を駆動する状態となる。また、図20に示すθmse=90deg(=θmseott)の場合には、排気弁7のバルブタイミングは、オットー排気カムによるバルブタイミングと同じになる。さらに、θmseが90degよりも大きい場合、例えば図21に示すθmse=150degの場合には、オットー排気カムと比べて、その閉弁タイミングが同じで開弁タイミングがより早くなり、早開けカムで排気弁7を駆動する状態となる。なお、図示しないけれども、θmse=0〜60degの範囲では、θmseの増大に伴い、排気弁7のバルブリフト量も増大するように構成されている。
【0110】
一方、図3に示すように、ECU2には、吸気管内温度センサ34、アクセル開度センサ35およびイグニッション・スイッチ(以下「IG・SW」という)36が接続されている。この吸気管内温度センサ34は、吸気管8内の空気温度TBを表す検出信号をECU2に出力し、アクセル開度センサ35は、車両の図示しないアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号をECU2に出力する。さらに、IG・SW36は、イグニッションキー(図示せず)操作によりON/OFFされるとともに、そのON/OFF状態を表す信号をECU2に出力する。
【0111】
次に、ECU2について説明する。このECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ20〜35およびIG・SW36の検出信号に応じて、エンジン3の運転状態を判別するとともに、ROMに予め記憶された制御プログラムやRAMに記憶されたデータなどに従って、後述する各種の制御処理を実行する。
【0112】
なお、本実施形態では、ECU2により、気筒吸入空気量算出手段、目標吸入空気量設定手段、同定手段、制御指令値算出手段、制御手段および予測値算出手段が構成されている。
【0113】
図22に示すように、吸入空気量制御装置1は、DUTY_th算出部200、Gcyl算出部210、副吸気カム位相コントローラ220および吸気カム間位相コントローラ230を備えており、これらはいずれも、具体的にはECU2により構成されている。このDUTY_th算出部200では、後述するように、スロットル弁開度THの目標値である目標開度TH_cmdが、目標吸入空気量Gcyl_cmdに応じて算出され、さらに、この目標開度TH_cmdに応じて、スロットル弁機構16への制御入力DUTY_thが算出される。
【0114】
Gcyl算出部210では、図24に示す式(1)により、気筒内に吸入されたと推定される気筒吸入空気量Gcylが算出される。この式(1)において、VBは吸気管内体積を、Rは所定の気体定数をそれぞれ表している。また、記号nは離散化した時間を表し、記号(n),(n−1)などが付いた各離散データ(時系列データ)は、所定周期(例えばTDC信号の入力同期や一定値など)でサンプリングされたデータであることを示している。なお、記号(n)付きのデータは今回値であることを、記号(n−1)付きのデータは前回値であることをそれぞれ示している。この点は、以下の本明細書中の他の離散データにおいても同様である。さらに、本明細書中の説明では、離散データであることを表す記号(n),(n−1)などを適宜、省略する。
【0115】
また、副吸気カム位相コントローラ220は、上記Gcyl算出部210で算出された気筒吸入空気量Gcylなどに応じて、副吸気カム位相可変機構70への制御入力DUTY_msiを算出するものであり、その詳細については後述する。
【0116】
さらに、吸気カム間位相コントローラ230は、気筒間の吸入空気量のばらつきを補正するために、後述するように、3つの吸気カム間位相可変機構80への制御入力DUTY_ssi#2〜#4をそれぞれ算出する。この吸気カム間位相コントローラ230の詳細については、後述する。
【0117】
次に、副吸気カム位相コントローラ220について説明すると、この副吸気カム位相コントローラ220は、図23に示すように、目標副吸気カム位相θmsi_cmd(制御指令値)を算出する第1SPASコントローラ221と、制御入力DUTY_msiを算出する第2SPASコントローラ225とを備えている。
【0118】
この第1SPASコントローラ221は、以下に述べる適応予測型応答指定制御(Self-tuning Prediction Pole Assignment Control)アルゴリズムにより、気筒吸入空気量Gcyl、目標吸入空気量Gcyl_cmdおよび要求駆動トルクTRQ_engに応じて、目標副吸気カム位相θmsi_cmdを算出するものであり、状態予測器222、オンボード同定器223およびスライディングモードコントローラ224で構成されている。
【0119】
まず、状態予測器222(予測値算出手段)について説明する。この状態予測器222は、以下に述べる予測アルゴリズムにより、気筒吸入空気量Gcylの予測値である予測吸入空気量Pre_Gcylを予測(算出)するものである。
【0120】
まず、副吸気カム位相θmsiおよび気筒吸入空気量Gcylをそれぞれ入力および出力とする制御対象を、離散時間系モデルであるARXモデル(auto-regressive model with exogeneous input:外部入力を持つ自己回帰モデル)としてモデル化すると、図24に示す式(2)が得られる。同式(2)において、dは制御対象の特性によって決まるむだ時間を表している。また、a1,a2,b1はモデルパラメータを表しており、オンボード同定器223により、後述するように逐次同定される。
【0121】
次に、同式(2)を離散時間[d−1]分、未来側にシフトさせると、図24の式(3)が得られる。さらに、マトリクスA、Bを、モデルパラメータa1,a2,b1を用いて図24に示す式(4),(5)のように定義するとともに、同式(3)における左辺の未来値[Gcyl(n+d−2),Gcyl(n+d−3)]を消去するために、上式(3)の漸化式を繰り返し用いることによって式(3)を変形すると、図24に示す式(6)が得られる。
【0122】
この式(6)を用いることで、予測吸入空気量Pre_Gcylを算出することは可能であるけれども、モデル次数の不足や制御対象の非線形特性などに起因して、予測吸入空気量Pre_Gcylに定常偏差およびモデル化誤差が生じる可能性がある。
【0123】
これを回避するために、本実施形態の状態予測器222では、式(6)に代えて、図24に示す式(7)により、予測吸入空気量Pre_Gcylを算出する。この式(7)は、式(6)の右辺に、定常偏差およびモデル化誤差を補償するための補償パラメータγ1を加入したものである。
【0124】
次に、オンボード同定器223(同定手段)について説明する。このオンボード同定器223は、以下に述べる逐次型同定アルゴリズムにより、前述した予測吸入空気量Pre_Gcylと気筒吸入空気量Gcylとの偏差である同定誤差ideが最小となるように(すなわち、予測吸入空気量Pre_Gcylが気筒吸入空気量Gcylに一致するように)、前述した式(7)におけるモデルパラメータの行列成分α1,α2,βjおよび補償パラメータγ1のベクトルθsを同定するものである。
【0125】
具体的には、図25に示す式(8)〜(13)により、ベクトルθs(n)を算出する。このベクトルθs(n)は、その転置行列が同図の式(12)のように定義される。また、式(8)において、KPs(n)はゲイン係数のベクトルを表しており、このゲイン係数KPs(n)は、式(9)により算出される。この式(9)のPs(n)は、式(10)で定義されるd+2次の正方行列であり、ζs(n)は、その転置行列が式(13)のように定義されるベクトルである。さらに、式(8)の同定誤差ide(n)は、式(11)により算出される。
【0126】
以上のような同定アルゴリズムでは、式(10)の重みパラメータλ1、λ2の設定により、以下の4つの同定アルゴリズムのうちの1つが選択される。
すなわち、
λ1=1,λ2=0 ;固定ゲインアルゴリズム
λ1=1,λ2=1 ;最小2乗法アルゴリズム
λ1=1,λ2=λ ;漸減ゲインアルゴリズム
λ1=λ,λ2=1 ;重み付き最小2乗法アルゴリズム
ただし、λは、0<λ<1に設定される所定値。
なお、本実施形態では、同定精度およびベクトルθsの最適値への収束速度をいずれも最適に確保するために、重み付き最小2乗法アルゴリズムが採用されている。
【0127】
次に、スライディングモードコントローラ(以下「SLDコントローラ」という)224について説明する。このSLDコントローラ224(制御指令値算出手段)は、スライディングモード制御アルゴリズムに基づいて、気筒吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに収束し、かつ副吸気カム位相θmsiが基本値θmsi_baseに拘束されるように、目標副吸気カム位相θmsi_cmdを算出するものであり、以下、このスライディングモード制御アルゴリズムについて説明する。
【0128】
まず、このスライディングモード制御アルゴリズムでは、制御対象モデルとして、図26に示す式(14)を用いる。この式(14)は、前述した図24の式(6)を離散時間「1」分、未来側にシフトさせたものである。
【0129】
この式(14)に示す制御対象モデルを用いた場合、切換関数σsは以下のように設定される。すなわち、図26の式(15)に示すように、追従誤差Esを気筒吸入空気量Gcylと目標吸入空気量Gcyl_cmdの偏差として定義すると、切換関数σsは、図26の式(16)に示すように、追従誤差Esの時系列データ(離散データ)の線形関数として設定される。なお、式(16)に示すSsは、切換関数設定パラメータを表している。
【0130】
スライディングモード制御アルゴリズムでは、本実施形態のように切換関数σsが2つの状態変数[Es(n),Es(n−1)]で構成されている場合、図28に示すように、2つの状態変数で構成される位相空間は、これらをそれぞれ縦軸および横軸とする2次元の位相平面となり、この位相平面上において、σs=0を満たす2つの状態変数の値の組み合わせは、数式[Es(n)=−Ss・Es(n−1)]で表される切換直線と呼ばれる直線上に載ることになる。
【0131】
この数式[Es(n)=−Ss・Es(n−1)]は、入力のない一次遅れ系を表しているので、切換関数設定パラメータSsを、例えば−1<Ss<1に設定するとともに、この一次遅れ系を安定化させると、2つの状態変数[Es(n),Es(n−1)]の組み合わせは、時間の経過とともに、値0となる平衡点に収束することになる。すなわち、このように追従誤差Esを値0に収束させることで、気筒吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに収束させることができる。なお、2つの状態変数[Es(n),Es(n−1)]が切換直線に漸近するまでの間を到達モードといい、これらが平衡点にスライディングする挙動をスライディングモードという。
【0132】
この場合、切換関数設定パラメータSsを正の値に設定すると、数式[Es(n)=−Ss・Es(n−1)]で表される一次遅れ系は振動安定系となるため、状態変数[Es(n),Es(n−1)]の収束挙動として好ましくない。したがって、本実施形態では、切換関数設定パラメータSsを図26の式(17)に示すように設定する。このように切換関数設定パラメータSsを設定した場合、図29に示すように、切換関数設定パラメータSsの絶対値が小さいほど、追従誤差Esの値0への収束速度、すなわち気筒吸入空気量Gcylの目標吸入空気量Gcyl_cmdへの収束速度が速くなる。以上のように、スライディングモード制御では、切換関数設定パラメータSsにより、気筒吸入空気量Gcylの目標吸入空気量Gcyl_cmdへの収束挙動および収束速度を、任意に指定することができる。
【0133】
また、これらの状態変数[Es(n),Es(n−1)]の組み合わせを切換直線上に載せるための制御入力Uspas(n)[=θmsi_cmd(n)]は、図26の式(18)に示すように、等価制御入力Ueq(n)、到達則入力Urch(n)およびバルブ制御入力Uvt(n)の総和として定義される。
【0134】
この等価制御入力Ueq(n)は、[Es(n),Es(n−1)]の組み合わせを切換直線上に拘束しておくためのものであり、具体的には、図26に示す式(19)のように定義される。この式(19)は、以下のように導出される。すなわち、図27に示す式(22)を、前述した式(16)に基づいて変形すると、図27に示す式(23)が得られ、次に、この式(23)を漸化式を繰り返し用いることにより変形すると、図27に示す式(24)が得られる。さらに、この式(24)において、副吸気カム位相θmsiの項をまとめて変形すると、図27に示す式(25)が得られる。次いで、この式(25)において、左辺の副吸気カム位相θmsi(n)を等価制御入力Ueq(n)に置き換えると同時に、前述したPre_Gcyl(n)≒Gcyl(n+d−1)の関係に基づき、右辺の気筒吸入空気量の未来値Gcyl(n+d−1)などを、予測値Pre_Gcylに置き換えることにより、上記式(19)が導出される。
【0135】
また、到達則入力Urch(n)は、外乱やモデル化誤差などにより、[Es(n),Es(n−1)]の組み合わせが切換直線上から外れた際に、これらを切換直線上に収束させるためのものであり、具体的には、図26に示す式(20)のように定義される。
【0136】
さらに、バルブ制御入力Uvt(n)は、副吸気カム位相θmsiをその基本値θmsi_baseに拘束するためのフィードフォワード入力であり、具体的には、図26の式(21)に示すように、基本値θmsi_baseに等しい値として定義される。なお、この基本値θmsi_baseは、後述するように、要求駆動トルクTRQ_engに応じて算出される。
【0137】
以上のように、この第1SPASコントローラ221では、状態予測器222において、補償パラメータγ1を加えた状態予測アルゴリズムにより、予測吸入空気量Pre_Gcylが算出されるとともに、この補償パラメータγ1がオンボード同定器223により逐次同定されるので、前述した定常偏差およびモデル化誤差を補償しながら、予測吸入空気量Pre_Gcylを精度よく算出することができる。
【0138】
また、SLDコントローラ224においては、到達則入力Urchおよび等価制御入力Ueqにより、追従誤差Esを値0に収束させることができる。すなわち、気筒吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに収束させることができると同時に、その収束挙動および収束速度を、切換関数設定パラメータSsの設定により任意に指定することができる。したがって、気筒吸入空気量Gcylの目標吸入空気量Gcyl_cmdへの収束速度を、制御対象(副吸気カム位相可変機構70などを含む吸気系)の特性に応じた適切な値に設定することができ、それにより、気筒吸入空気量Gcylを、振動的およびオーバーシュート的な挙動を回避しながら迅速かつ安定した状態で、目標吸入空気量Gcyl_cmdに収束させることができ、制御性を向上させることができる。
【0139】
これに加えて、バルブ制御入力Uvtにより、副吸気カム位相θmsiをその基本値θmsi_baseに拘束することができると同時に、等価制御入力Ueqに補償パラメータγ1が含まれていることにより、このバルブ制御入力Uvtの影響を補償しながら、気筒吸入空気量Gcylを目標吸入空気量Gcyl_cmdに適切に収束させることができる。
【0140】
次に、前述した第2SPASコントローラ225(制御手段)について説明する。この第2SPASコントローラ225は、一部を除いて前述した第1SPASコントローラ221と同様の制御アルゴリズムにより、副吸気カム位相θmsiおよび目標副吸気カム位相θmsi_cmdに応じて、制御入力DUTY_msiを算出するものであり、図30に示すように、状態予測器226、オンボード同定器227およびスライディングモードコントローラ228で構成されている。
【0141】
この状態予測器226は、前述した状態予測器222と同様の予測アルゴリズムにより、副吸気カム位相θmsiの予測値である予測副吸気カム位相Pre_θmsiを予測(算出)するものである。
【0142】
具体的には、制御対象モデルとして、図31に示す式(26)を用いる。同式(26)において、dxは制御対象の特性によって決まるむだ時間を表しており、a1’,a2’,b1’はモデルパラメータを表している。また、記号mは離散化した時間を表し、記号(m)などの付いた各離散データは、前述した記号(n)付きの離散データよりも短い所定周期でサンプリングされたデータであることを示している。この点は、以下の本明細書中の他の離散データにおいても同様であり、また、本明細書中の説明では、離散データであることを表す記号(m)などを適宜、省略する。なお、上記のように、式(26)における各離散データのサンプリング周期が、前述した式(2)における各離散データよりも短い周期に設定されている理由は、第2SPASコントローラ225による、副吸気カム位相θmsiの目標副吸気カム位相θmsi_cmdへの収束速度が、第1SPASコントローラ221による、気筒吸入空気量Gcylの目標吸入空気量Gcyl_cmdへの収束速度よりも遅いと、制御性の低下を招くので、これを回避し、良好な制御性を確保するためである。
【0143】
マトリクスA’,B’を、モデルパラメータa1’,a2’,b1’を用いて図31に示す式(27),(28)のように定義するとともに、式(26)を前述した状態予測器222の場合と同様に変形することにより、図31に示す式(29)が導出される。この式(29)において、γ’は、前述した補償パラメータγと同様の、定常偏差およびモデル化誤差を補償するための補償パラメータである。
【0144】
また、オンボード同定器227も、前述したオンボード同定器223と同様の逐次型同定アルゴリズムにより、予測副吸気カム位相Pre_θmsiと副吸気カム位相θmsiとの偏差である同定誤差ide’が最小となるように(すなわち、予測副吸気カム位相Pre_θmsiが副吸気カム位相θmsiに一致するように)、上記式(29)におけるモデルパラメータの行列成分α1’,α2’,βj’および補償パラメータγ1’のベクトルθs’を同定するものである。
【0145】
具体的には、図32に示す式(30)〜(35)により、ベクトルθs’(m)を算出する。これらの式(30)〜(35)は、前述した式(8)〜(13)と同様に構成されているので、その説明は省略する。
【0146】
次に、スライディングモードコントローラ(以下「SLDコントローラ」という)228について説明する。このSLDコントローラ228は、スライディングモード制御アルゴリズムに基づいて、副吸気カム位相θmsiが目標副吸気カム位相θmsi_cmdに収束するように、制御入力DUTY_msiを算出するものである。
【0147】
具体的には、図33の式(36)〜(41)に示すアルゴリズムにより、制御入力DUTY_msiが算出される。すなわち、同図の式(36)に示すように、追従誤差Es’を、副吸気カム位相θmsiと目標副吸気カム位相θmsi_cmdとの偏差として定義すると、切換関数σs’および切換関数設定パラメータSs’はそれぞれ、同図の式(37)(38)に示すように定義される。また、制御入力DUTY_msiは、同図の式(39)に示すように、等価制御入力Ueq’および到達則入力Urch’の総和として定義され、等価制御入力Ueq’および到達則入力Urch’はそれぞれ、同図の式(40),(41)に示すように定義される。式(39)に示すように、このSLDコントローラ228では、副吸気カム位相θmsiを目標副吸気カム位相θmsi_cmdに収束するように制御すればよいので、前述したバルブ制御入力Uvtが、制御入力DUTY_msiの入力成分から省略されている。
【0148】
以上のように、この第2SPASコントローラ225でも、状態予測器226において、補償パラメータγ1’を加えた状態予測アルゴリズムにより予測副吸気カム位相Pre_θmsiが算出されるとともに、この補償パラメータγ1’がオンボード同定器227により逐次同定されるので、定常偏差およびモデル化誤差を補償しながら、予測副吸気カム位相Pre_θmsiを精度よく算出することができる。
【0149】
また、SLDコントローラ227においては、到達則入力Urch’および等価制御入力Ueq’により、副吸気カム位相θmsiを目標副吸気カム位相θmsi_cmdに収束させることができると同時に、その収束挙動および収束速度を、切換関数設定パラメータSs’の設定により任意に指定することができる。したがって、副吸気カム位相θmsiの目標副吸気カム位相θmsi_cmdへの収束速度を、制御対象(副吸気カム位相可変機構70などを含む系)の特性に応じた適切な値に設定することができ、それにより、制御性を向上させることができる。
【0150】
なお、以上の2つの切換関数設定パラメータSs,Ss’において、これらを−1<Ss<Ss’<0の関係が成立する値に設定すると、第2SPASコントローラ225による制御の速応性を、第1SPASコントローラ221による制御よりも高めることができ、副吸気カム位相コントローラ220の制御性、すなわち気筒吸入空気量Gcylの目標吸入空気量Gcyl_cmdへの収束性を向上させることができる。
【0151】
次に、吸気カム間位相コントローラ230について説明する。図34に示すように、エアフローセンサ21によりTH通過吸入空気量Gthを検出した場合、各気筒の吸気挙動に起因して吸気の脈動も検出される。この吸気の脈動は、気筒間に吸入空気量のばらつきが生じた場合には、同図に示すように、不規則なものとなる。なお、同図は、第4気筒#4におけるTH通過吸入空気量Gthが他の気筒よりも少ない例を示している。
【0152】
この吸気カム間位相コントローラ230は、上記のような気筒間の吸入空気量のばらつきを推定し、それを補正するための、3つの吸気カム間位相可変機構80への制御入力DUTY_ssi#2〜#4をそれぞれ算出するものであり、適応オブザーバ240、3つの差分器250および吸気ばらつきコントローラ260などで構成されている(図22参照)。この吸気カム間位相コントローラ230では、以下に述べるアルゴリズムにより、適応オブザーバ240において、4つの吸気量ばらつき係数Φ#1〜#4が気筒毎に算出され、3つの差分器250において、3つの偏差EΦ#2〜#4がそれぞれ算出され、さらに、吸気ばらつきコントローラ260において、3つの制御入力DUTY_ssi#2〜#4がそれぞれ算出される。
【0153】
次に、上記適応オブザーバ240のアルゴリズムについて説明する。まず、図35に示すように、エンジン3の吸気系を、4つの模擬値Gcyl_OS#1〜Gcyl_OS#4および4つの吸気量ばらつき係数Φ#1〜Φ#4で表される系として見なす。これらの模擬値Gcyl_OS#i(i=1〜4)は、吸入空気の吸気開始タイミングおよび吸気挙動を気筒毎に模擬化した値であり、吸気量ばらつき係数Φ#i(i=1〜4)は、気筒間の吸入空気量のばらつきおよび吸気挙動の変動分を表す値である。この系を離散時間系モデルとしてモデル化すると、図36に示す式(42)が得られる。
【0154】
同式(42)において、記号kは離散化した時間を表しており、記号(k)付きの各離散データは、TDC信号が発生する毎にサンプリングされたデータであることを示している(なお、離散データを、CRK信号が発生する毎にサンプリングしたデータとしてもよい)。また、d’は、吸気管8内を流れる空気がエアフローセンサ21から各気筒に到達するまでのむだ時間を表しており、本実施形態では、所定の一定値に予め設定される。なお、むだ時間d’をエンジン3の運転状態(エンジン回転数NEなど)に応じて設定してもよい。
【0155】
本実施形態の適応オブザーバ240では、上記式(42)の左辺をTH通過吸入空気量の推定値Gth_est(k)に置き換えた式、すなわち図36の式(43)がモデルとして用いられ、模擬値Gcyl_OS#iが、後述するように信号発生器241により生成されるとともに、式(43)のモデルパラメータとしての吸気量ばらつき係数Φ#iのベクトルφ(k)が、推定値Gth_est(k)をTH通過吸入空気量Gth(k−d’)に一致させるように、図36の式(44)〜(50)に示す逐次型最小2乗法アルゴリズムにより、同定される。
【0156】
このベクトルφ(k)は、その転置行列が同図の式(49)のように定義される。また、式(44)において、KR(k)はゲイン係数のベクトルを表しており、このゲイン係数KR(k)は、式(45)により算出される。この式(45)のR(k)は、式(48)で定義される4次の正方行列であり、ζ’(k)は、その転置行列が式(50)のように定義されるベクトルである。さらに、式(44)のide’(k)は、同定誤差を表しており、この同定誤差ide’(k)は、式(46),(47)により算出される。
【0157】
以上のように、この適応オブザーバ240では、上記式(44)〜(50)に示す逐次型最小2乗法アルゴリズムにより、吸気量ばらつき係数Φ#iのベクトルφ(k)が同定される。それにより、エンジン3の運転状態が急変することなどに伴う吸気挙動のノイズ的な変動成分を、吸気量ばらつき係数Φ#iから除去(フィルタリング)することができ、吸気量ばらつき係数Φ#iを、気筒間の吸入空気量のばらつきを実質的に示す値として算出することができる。
【0158】
以上の適応オブザーバ240の構成は、図37のブロック図に示すものとなる。すなわち、同図に示すように、この適応オブザーバ240では、信号発生器241により、模擬値Gcyl_OS#iのベクトルζ’(k)が生成される。より具体的には、この信号発生器241では、図38に示すように、模擬値Gcyl_OS#iは、互いの和が常に値1になるように、三角波や台形波などを交互に組み合わせたような信号値として生成される。さらに、乗算器242において、この模擬値のベクトルζ’(k)に、遅延素子243で遅延された吸気量ばらつき係数のベクトルφ(k−1)を乗算した値として、TH通過吸入空気量の推定値Gth_est(k)が生成される。そして、差分器244により、遅延素子245で遅延されたTH通過吸入空気量Gth(k−d’)と、推定値Gth_est(k)との偏差として、同定誤差ide’(k)が生成される。
【0159】
また、論理演算器246により、模擬値のベクトルζ’(k)に基づいて、ゲイン係数のベクトルKR(k)が生成され、乗算器247において、同定誤差ide’(k)とゲイン係数のベクトルKR(k)の積[ide’(k)・KR(k)]が生成される。次に、加算器248により、積[ide’(k)・KR(k)]と、遅延素子243で遅延された吸気量ばらつき係数のベクトルφ(k−1)との和として、吸気量ばらつき係数のベクトルφ(k)が生成される。
【0160】
以上のように、適応オブザーバ240において、4つの吸気量ばらつき係数Φ#1〜#4が算出され、前述した3つの差分器250では、これらの吸気量ばらつき係数Φ#1〜#4に基づき、図39の式(51)により3つの偏差EΦ#2〜#4がそれぞれ算出される。
【0161】
次に、前述した吸気ばらつきコントローラ260について説明する。図40に示すように、吸気ばらつきコントローラ260は、目標吸気カム間位相コントローラ261および第3SPASコントローラ262を備えている。この目標吸気カム間位相コントローラ261は、気筒間のTH通過吸入空気量Gthのばらつきを補正するために目標吸気カム間位相θssi#i_cmdを算出するものである。
【0162】
具体的には、目標吸気カム間位相θssi#i_cmdは、3つの偏差EΦ#2〜#4に基づいて、図39の式(52),(53)に示す応答指定型制御アルゴリズム(スライディングモード制御アルゴリズムまたはバックステッピング制御アルゴリズム)により算出される。なお、式(52)のσ’(k)は切換関数を示している。目標吸気カム間位相コントローラ261では、この応答指定型制御アルゴリズムにより、EΦ#i(#i=2〜4)が値0になるように、目標吸気カム間位相θssi#i_cmd(#i=2〜4)が算出される。言い換えれば、第1気筒#1の吸気量ばらつき係数Φ#1に、他の3つの気筒の吸気量ばらつき係数Φ#2〜#4が一致するように、目標吸気カム間位相θssi#i_cmdが算出される。
【0163】
また、第3SPASコントローラ262では、吸気カム間位相θssi#iが上記のように算出された目標吸気カム間位相θssi#i_cmdに収束するように、吸気カム間位相可変機構80への制御入力DUTY_ssi#iが算出される。この制御入力DUTY_ssi#iは、具体的には、前述した第2SPASコントローラ225における制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより算出されるので、その説明は省略する。
【0164】
以上のように、吸気カム間位相コントローラ230では、目標吸気カム間位相θssi#i_cmdが、第1気筒#1の吸気量ばらつき係数Φ#1に他の3つの気筒の吸気量ばらつき係数Φ#2〜#4が一致するように、算出され、さらに、吸気カム間位相θssi#iが目標吸気カム間位相θssi#i_cmdに収束するように、制御入力DUTY_ssi#iが算出される。すなわち、第2〜第4気筒#2〜#4の吸入空気量が第1気筒#1の吸入空気量と一致するように制御され、その結果、気筒間の吸入空気量のばらつきを補正することができる。
【0165】
なお、図34に示すように、吸気管内絶対圧センサ24で吸気管内絶対圧PBAを検出した場合でも、吸気の脈動を検出することができるので、以上の式(42)〜(53)において、「Gth」で表されるパラメータを「PBA」で表されるパラメータに置き換えたアルゴリズムと、吸気管内絶対圧センサ24で検出された吸気管内絶対圧PBAとを用いることにより、気筒間の吸入空気量のばらつきを補正するための吸気カム間位相コントローラ230を構成することができる。
【0166】
図41に示すように、吸入空気量制御装置1は、副排気カム位相コントローラ280をさらに備えている。この副排気カム位相コントローラ280は、後述する触媒暖機制御において、副排気カム位相可変機構120への制御入力DUTY_mseを算出するものであり、目標副排気カム位相コントローラ281および第4SPASコントローラ282を備えている。
【0167】
この目標副排気カム位相コントローラ281では、エンジン回転数NEおよび目標回転数NE_cmdに基づいて、目標副排気カム位相θmse_cmdが算出される。具体的には、目標副排気カム位相θmse_cmdは、図42の式(54)〜(56)に示す制御アルゴリズムにより算出される。同図の式(54)において、θmse_astは、後述するように、テーブル検索により設定される目標副排気カム位相の触媒暖機用値であり、dθmseは、式(55),(56)の応答指定型制御アルゴリズム(スライディングモード制御アルゴリズムまたはバックステッピング制御アルゴリズム)により算出される補正量を示している。この式(55)において、Kastr,Kastaはそれぞれ、フィードバックゲインを示しており、σastは、式(56)のように定義される切換関数を示している。また、式(56)において、Sastは、−1<Sast<0の範囲の値に設定される切換関数設定パラメータであり、また、NE_cmdは所定の一定値(例えば1800rpm)に設定される目標回転数である。
【0168】
また、第4SPASコントローラ282では、副排気カム位相θmseが上記のように算出された目標副排気カム位相θmse_cmdに収束するように、副排気カム位相可変機構120への制御入力DUTY_θmseが算出される。この制御入力DUTY_θmseは、具体的には、前述した第2SPASコントローラ225における制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより算出されるので、その説明は省略する。
【0169】
以上のように、この副排気カム位相コントローラ280では、エンジン回転数NEおよび目標回転数NE_cmdに基づいて、目標副排気カム位相θmse_cmdが算出され、この目標副排気カム位相θmse_cmdに副排気カム位相θmseが収束するように、排気カム位相可変機構120への制御入力DUTY_θmseが算出される。その結果、エンジン回転数NEを目標回転数NE_cmdに精度よく制御することができる。
【0170】
以下、図43を参照しながら、ECU2により実行されるエンジン制御処理について説明する。同図は、エンジン制御処理の主要な制御内容を示しており、このプログラムでは、まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)において、燃料制御処理を実行する。この燃料制御処理は、エンジン3の運転状態に応じて、要求駆動トルクTRQ_eng、主燃料噴射率Rt_Pre、気筒吸入空気量Gcyl、目標吸入空気量Gcyl_cmdおよび燃料噴射量TOUT_main,TOUT_subなどを算出するものであり、その具体的な内容は後述する。
【0171】
次いで、ステップ2で、過給圧制御処理を実行する。この過給圧制御処理は、エンジン3の運転状態に応じて、ウエストゲート弁10dへの制御入力Dut_wgを算出するものであり、その具体的な内容は後述する。
【0172】
次に、ステップ3で、吸気弁制御処理を実行する。この吸気弁制御処理は、エンジン3の運転状態に応じて、前述した各種の制御入力DUTY_mi、DUTY_msiおよびDUTY_ssi#2〜#4を算出するものであり、その具体的な内容は後述する。
【0173】
次いで、ステップ4で、排気弁制御処理を実行する。この排気弁制御処理は、エンジン3の運転状態に応じて、前述した各種の制御入力DUTY_me、DUTY_mseおよびDUTY_sse#2〜#4をそれぞれ算出するものであり、その具体的な内容は後述する。
【0174】
次に、ステップ5で、スロットル弁制御処理を実行する。このスロットル弁制御処理は、エンジン3の運転状態に応じて、前述した制御入力DUTY_thを算出するものであり、その具体的な内容は後述する。
【0175】
次いで、ステップ6で、点火時期制御処理を実行した後、本プログラムを終了する。この点火時期制御処理は、その詳細な説明は省略するが、エンジン3の運転状態に応じて、点火プラグ5による混合気の点火時期θigを算出するものである。より具体的には、点火時期θigは、エンジン3の始動制御中は通常のアイドル運転用値θigidle(図66参照)よりも進角側の値に設定され、始動後の触媒暖機制御中はアイドル運転用値θigidleよりも遅角側の値に設定される。すなわち、点火時期のリタード制御が実行される。さらに、通常運転中は、エンジン3の運転状態に応じて設定される。
【0176】
次に、図44を参照しながら、上記ステップ1の燃料制御処理について説明する。同図に示すように、このプログラムでは、まず、ステップ10において、吸排気弁故障フラグF_VLVNGまたはスロットル弁故障フラグF_THNGが「1」であるか否かを判別する。この吸排気弁故障フラグF_VLVNGは、可変式吸気弁駆動装置40または可変式排気弁駆動装置90が故障しているときには「1」に、双方が正常であるときには「0」にそれぞれ設定されるものである。また、スロットル弁故障フラグF_THNGは、スロットル弁機構16が故障しているときには「1」に、正常であるときには「0」にそれぞれ設定されるものである。
【0177】
ステップ10の判別結果がNOで、可変式吸気弁駆動装置40、可変式排気弁駆動装置90およびスロットル弁機構16がいずれも正常であるときには、ステップ11に進み、要求駆動トルクTRQ_engを、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図45に示すマップを検索することにより算出する。
【0178】
図中のアクセル開度APの所定値AP1〜3は、AP1>AP2>AP3の関係が成立するように設定されているとともに、所定値AP1は、アクセル開度APの最大値すなわち最大踏み込み量に設定されている。同図に示すように、このマップでは、要求駆動トルクTRQ_engは、NE≦NER2(所定値)の範囲では、エンジン回転数NEが高いほど、またアクセル開度APが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、エンジン3の負荷が大きいほど、要求されるエンジントルクが大きくなることによる。なお、AP=AP1の場合、NER1(所定値)<NE≦NER2の範囲では、要求駆動トルクTRQ_engは、その最大値に設定される。さらに、NER2<NEの範囲では、要求駆動トルクTRQ_engは、アクセル開度APが大きいほど、より大きな値に設定されていると同時に、エンジン回転数NEが高いほど、より小さな値に設定されている。これは、エンジン回転数NEに対するエンジントルクの出力特性に起因する。
【0179】
ステップ11に続くステップ12では、ステップ11で算出した要求駆動トルクTRQ_engが、所定の成層燃焼運転しきい値TRQ_discよりも小さいか否かを判別する。なお、成層燃焼運転とは、主燃料噴射弁4による気筒内への燃料噴射を圧縮行程中に行うことにより混合気を成層燃焼させる運転を表している。
【0180】
このステップ12の判別結果がYESで、エンジン3を成層燃焼運転すべきときには、ステップ13に進み、成層燃焼運転用の目標空燃比KCMD_discを、要求駆動トルクTRQ_engに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出する。なお、このテーブルでは、成層燃焼運転用の目標空燃比KCMD_discは、所定の極リーン域の値(例えばA/F=30〜40)に設定されている。
【0181】
次に、ステップ14に進み、目標空燃比KCMDを成層燃焼運転用の目標空燃比KCMD_discに設定した後、ステップ15で、主燃料噴射率Rt_Preを所定の最大値Rtmax(100%)に設定する。これにより、後述するように、副燃料噴射弁15による燃料噴射が停止される。ステップ16に進み、気筒吸入空気量Gcylおよび目標吸入空気量Gcyl_cmdを算出する。
【0182】
これらの気筒吸入空気量Gcylおよび目標吸入空気量Gcyl_cmdは、具体的には、図46に示すプログラムにより算出される。すなわち、まず、同図のステップ30で、前述した式(1)により、気筒吸入空気量Gcylを算出する。
【0183】
次いで、ステップ31で、目標吸入空気量の基本値Gcyl_cmd_baseを、エンジン回転数NEおよび要求駆動トルクTRQ_engに応じて、図47に示すマップを検索することにより算出する。なお、このマップにおける要求駆動トルクの所定値TRQ_eng1〜3は、TRQ_eng1>TRQ_eng2>TRQ_eng3の関係が成立するように設定されている。同図に示すように、目標吸入空気量の基本値Gcyl_cmd_baseは、エンジン回転数NEが高いほど、または要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、エンジン3の負荷が大きいほど、より大きなエンジン出力が要求されることで、より多くの吸入空気量が要求されることによる。
【0184】
次に、ステップ32で、空燃比補正係数Kgcyl_afを、目標空燃比KCMDに応じて、図48に示すテーブルを検索することにより算出する。このテーブルでは、空燃比補正係数Kgcyl_afは、目標空燃比KCMDがリッチ側であるほど、より小さい値に設定されている。これは、混合気の空燃比がよりリッチ側に制御されるほど、必要な吸入空気量がより小さくなることによる。なお、同図の値KCMDSTは、理論空燃比に相当する値である。
【0185】
次いで、ステップ33に進み、目標吸入空気量の基本値および空燃比補正係数の積(Kgcyl_af・Gcyl_cmd_base)を、目標吸入空気量Gcyl_cmdとして設定した後、本プログラムを終了する。
【0186】
図44に戻り、以上のようにステップ16を実行した後、ステップ17に進み、燃料噴射制御処理を実行する。この燃料噴射制御処理では、具体的には、以下のように、主・副燃料噴射弁4,15への制御入力が算出される。
【0187】
まず、主燃料噴射弁4の燃料噴射量である主燃料噴射量TOUT_main、および副燃料噴射弁15の燃料噴射量である副燃料噴射量TOUT_subを算出する。すなわち、エンジン3の運転状態および前述した目標空燃比KCMDに基づいて、最終的な気筒毎の総燃料噴射量TOUTを気筒毎に算出し、次いで、下式(57),(58)により、主・副燃料噴射量TOUT_main,TOUT_subをそれぞれ算出する。
TOUT_main=[TOUT・Rt_Pre]/100 ……(57)
TOUT_sub =[TOUT・(100−Rt_Pre)]/100 ……(58)
この式(58)を参照すると、Rt_Pre=Rtmax(100%)のときには、TOUT_sub=0となり、副燃料噴射弁15による燃料噴射が停止されることが判る。
【0188】
次いで、算出された主・副燃料噴射量TOUT_main,TOUT_subに応じて、図示しないテーブルを検索することにより、主・副燃料噴射弁4,15への制御入力を算出する。以上のようにステップ17を実行した後、本プログラムを終了する。
【0189】
一方、ステップ12の判別結果がNOのときには、エンジン3を成層燃焼運転ではなく、均一燃焼運転のうちの予混合リーン運転すべきであるとして、ステップ18に進み、予混合リーン運転用の目標空燃比KCMD_leanを、要求駆動トルクTRQ_engに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出する。なお、このテーブルでは、予混合リーン運転用の目標空燃比KCMD_leanは、所定のリーン域の値(例えばA/F=18〜21)に設定されている。
【0190】
次いで、ステップ19に進み、目標空燃比KCMDを予混合リーン運転用の目標空燃比KCMD_leanに設定した後、ステップ20において、主燃料噴射率Rt_Preを、要求駆動トルクTRQ_engに応じて、図49に示すテーブルを検索することにより算出する。なお、同図を含む以下のテーブルおよびマップにおいて、要求駆動トルクTRQ_engの各種の所定値TRQ_idle、TRQ_disc、TRQottおよびTRQ1〜TRQ4はそれぞれ、TRQ_idle<TRQ_disc<TRQ1<TRQott<TRQ2<TRQ3<TRQ4の関係が成立する値に設定されている。また、TRQ_idleは、所定のアイドル運転用値を表している。
【0191】
同図に示すように、このテーブルでは、主燃料噴射率Rt_Preは、TRQ1<TRQ_eng<TRQ4の範囲では、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より小さい値に設定されている。これは、以下の理由による。すなわち、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、過給圧Pcが高くなるように制御されることで、吸入空気の温度が上昇するため、ノッキングが発生しやすくなる。したがって、このようなノッキングを回避するために、副燃料噴射弁15の燃料噴射量TOUT_subを増大させることで、前述した燃料気化冷却装置12による吸入空気の冷却効果を高める必要があるので、主燃料噴射率Rt_Preが上記のように設定されている。
【0192】
また、このテーブルでは、主燃料噴射率Rt_Preは、要求駆動トルクTRQ_engが所定値TRQ4以上の範囲では、所定の最小値Rtmin(10%)に設定され、所定値TRQ1以下の範囲では、前述した最大値Rtmaxに設定されている。
【0193】
このステップ20の実行後は、前述したステップ16,17を実行した後、本プログラムを終了する。
【0194】
一方、ステップ10の判別結果がYESで、可変式吸気弁駆動装置40、可変式排気弁駆動装置90およびスロットル弁機構16のいずれかが故障しているときには、ステップ21に進み、要求駆動トルクTRQ_engを所定の故障時用値TRQ_fsに設定する。この後、ステップ22に進み、主燃料噴射率Rt_Preを前述した最大値Rtmaxに設定する。次いで、前述したように、ステップ16,17を実行した後、本プログラムを終了する。
【0195】
次に、図50を参照しながら、前述した過給圧制御処理について説明する。同図に示すように、このプログラムでは、まず、ステップ40において、前述した吸排気弁故障フラグF_VLVNGまたはスロットル弁故障フラグF_THNGが「1」であるか否かを判別する。
【0196】
この判別結果がNOで、可変式吸気弁駆動装置40、可変式排気弁駆動装置90およびスロットル弁機構16がいずれも正常であるときには、ステップ41に進み、エンジン始動フラグF_ENGSTARTが「1」であるか否かを判別する。このエンジン始動フラグF_ENGSTARTは、図示しない判定処理において、エンジン回転数NEおよびIG・SW36の出力状態に応じて、エンジン始動制御中すなわちクランキング中であるか否かを判定することにより設定されるものであり、具体的には、エンジン始動制御中であるときには「1」に、それ以外のときには「0」にそれぞれ設定される。
【0197】
このステップ41の判別結果がYESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ43に進み、ウエストゲート弁10dへの制御入力Dut_wgを、所定の全開値Dut_wgmaxに設定した後、本プログラムを終了する。これにより、ウエストゲート弁10dが全開状態に制御され、ターボチャージャ装置10による過給動作が実質的に停止される。
【0198】
一方、ステップ41の判別結果がNOで、エンジン始動制御中でないときには、ステップ42に進み、エンジンの始動終了直後からの経過時間である触媒暖機制御の実行時間Tcatが所定値Tcatlmt(例えば、30sec)より小さいか否かを判別する。この触媒暖機制御は、エンジン始動後に触媒装置19a,19b内の触媒を急速に活性化させるためのものである。
【0199】
このステップ42の判別結果がYESで、Tcat<Tcatlmtのときには、ステップ44に進み、アクセル開度APが所定値APREFより小さいか否かを判別する。この所定値APREFは、アクセルペダルが踏まれていないことを判定するためのものであり、アクセルペダルが踏まれていないことを判定可能な値(例えば1゜)に設定されている。
【0200】
このステップ44の判別結果がYESで、アクセルペダルが踏まれていないときには、触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ45に進み、上記ステップ43と同様に、ウエストゲート弁10dへの制御入力Dut_wgを、前述した全開値Dut_wgmaxに設定した後、本プログラムを終了する。
【0201】
一方、ステップ42またはステップ44の判別結果がNOのとき、すなわち、エンジン始動制御中でなくかつTcat≧Tcatlmtであるとき、またはアクセルペダルが踏まれているときには、ステップ46に進み、制御入力Dut_wgの基本値Dut_wg_bsを、要求駆動トルクTRQ_engに応じて、図51に示すテーブルを検索することにより算出する。
【0202】
同図に示すように、このテーブルでは、基本値Dut_wg_bsは、TRQ1<TRQ_eng<TRQ2の範囲では、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より小さい値に設定されている。これは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、過給による充填効率の上昇を目的として過給圧Pcをより高める必要があるからである。また、基本値Dut_wg_bsは、TRQ2≦TRQ_eng≦TRQ3の範囲では、所定の全閉値Dut_wgminに設定されており、これは、エンジン3の負荷が高負荷域にあるのに応じて、過給効果を最大限に得るためである。さらに、基本値Dut_wg_bsは、TRQ3<TRQ_engの範囲では、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より小さい値に設定されており、これは、ノッキングの発生を回避するためである。
【0203】
次いで、ステップ47で、目標過給圧Pc_cmdを、要求駆動トルクTRQ_engに応じて、図52に示すテーブルを検索することにより算出する。同図に示すように、このテーブルでは、目標過給圧Pc_cmdは、TRQ_idle<TRQ_eng<TRQ2の範囲では、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より大きい値に設定されている。これは、上述したように、過給による充填効率をより高めるためである。また、目標過給圧Pc_cmdは、TRQ2≦TRQ_eng≦TRQ3の範囲では、所定値に設定されており、これは、上述したように過給効果を最大限に得るためである。さらに、目標過給圧Pc_cmdは、TRQ3<TRQ_eng<TRQ4の範囲では、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より小さい値に設定されており、これは、ノッキングの発生を回避するためである。なお、同図におけるPatmは大気圧を示しており、この点は以下においても同様である。
【0204】
次に、ステップ48に進み、下式(59)に示すI−P制御アルゴリズムにより、制御入力Dut_wgを算出した後、本プログラムを終了する。これにより、過給圧Pcが目標過給圧Pc_cmdに収束するように、フィードバック制御される。
Dut_wg=Dut_wg_bs+Kpwg・Pc+Kiwg・Σ(Pc-Pc_cmd) ……(59)
ここで、KpwgはP項ゲインを、KiwgはI項ゲインをそれぞれ表している。
【0205】
一方、ステップ40の判別結果がYESで、可変式吸気弁駆動装置40、可変式排気弁駆動装置90およびスロットル弁機構16のいずれかが故障しているときには、ステップ49に進み、前述したステップ43,45と同様に、ウエストゲート弁10dへの制御入力Dut_wgを、全開値Dut_wgmaxに設定した後、本プログラムを終了する。
【0206】
次に、図53,54を参照しながら、前述したステップ3の吸気弁制御処理について説明する。同図に示すように、このプログラムでは、まず、ステップ60で、前述した吸排気弁故障フラグF_VLVNGが「1」であるか否かを判別し、この判別結果がNOで、可変式吸気弁駆動装置40および可変式排気弁駆動装置90がいずれも正常であるときには、ステップ61に進み、前述したエンジン始動フラグF_ENGSTARTが「1」であるか否かを判別する。
【0207】
この判別結果がYESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ62に進み、主吸気カム位相θmiの目標値である目標主吸気カム位相θmi_cmdを所定のアイドル用値θmi_idleに設定する。
【0208】
次いで、ステップ63に進み、目標副吸気カム位相θmsi_cmdを所定の始動用値θmsi_stに設定する。この始動用値θmsi_stは、吸気弁6の遅閉じ用の所定値として設定されている。この後、ステップ64に進み、目標吸気カム間位相θssi#i_cmd(#i=#2〜#4)をいずれも値0に設定する。
【0209】
次に、図54のステップ65に進み、主吸気カム位相可変機構60への制御入力DUTY_miを、目標主吸気カム位相θmi_cmdに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出する。この後、ステップ66で、副吸気カム位相可変機構70への制御入力DUTY_msiを、目標副吸気カム位相θmsi_cmdに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出する。なお、このステップ66において、後述するステップ75と同様の手法により、制御入力DUTY_msiを算出してもよい。
【0210】
次いで、ステップ67で、吸気カム間位相可変機構80への制御入力DUTY_ssi#iを、目標吸気カム間位相θssi#i_cmdに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出した後、本プログラムを終了する。
【0211】
図53に戻り、ステップ61の判別結果がNOで、エンジン始動制御中でないときには、ステップ68に進み、前述した触媒暖機制御の実行時間Tcatが所定値Tcatlmtより小さいか否かを判別する。この判別結果がYESであるときには、ステップ69に進み、アクセル開度APが所定値APREFより小さいか否かを判別する。
【0212】
このステップ69の判別結果がYESで、アクセルペダルが踏まれていないときには、触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ70に進み、目標主吸気カム位相θmi_cmdを前述した所定のアイドル用値θmi_idleに設定する。
【0213】
次いで、ステップ71に進み、目標副吸気カム位相の触媒暖機用値θmsi_cwを、前述した触媒暖機制御の実行時間Tcatに応じて、図55に示すテーブルを検索することにより算出する。同図における値θmsiottは、吸気弁6のバルブタイミングがオットー吸気カムと同じになる副吸気カム位相θmsiのオットー位相値(=カム角90deg)を示しており、この点は以下の説明においても同様である。
【0214】
次に、ステップ72で、目標副吸気カム位相θmsi_cmdを上記触媒暖機用値θmsi_cwに設定した後、ステップ73で、上記ステップ64と同様に、目標吸気カム間位相θssi#i_cmd(#i=#2〜#4)をいずれも値0に設定する。
【0215】
次いで、図54のステップ74に進み、主吸気カム位相可変機構60への制御入力DUTY_miを、目標主吸気カム位相θmi_cmdおよび主吸気カム位相θmiに応じて、算出する。この制御入力DUTY_miは、前述した第2SPASコントローラ225による制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより算出される。
【0216】
次いで、ステップ75で、第2SPASコントローラ225の制御アルゴリズムにより、副吸気カム位相可変機構70への制御入力DUTY_msiを算出する。すなわち、前述した式(29)の予測アルゴリズム、式(30)〜(35)の同定アルゴリズム、および式(36)〜(41)のスライディングモード制御アルゴリズムをそれぞれ適用することにより、制御入力DUTY_msiを算出する。
【0217】
次に、ステップ76で、第3SPASコントローラ262の制御アルゴリズムにより、ステップ73で算出した目標吸気カム間位相θssi#i_cmdおよび吸気カム間位相θssi#iに応じて、吸気カム間位相可変機構80への制御入力DUTY_ssi#i(#i=#2〜#4)を算出した後、本プログラムを終了する。なお、この制御入力DUTY_ssi#iは、前述したように、第2SPASコントローラ225の制御アルゴリズム、すなわち上記制御入力DUTY_msiの算出に用いる制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより算出される。
【0218】
図53に戻り、ステップ68またはステップ69の判別結果がNOのとき、すなわち、エンジン始動制御中でなくかつTcat≧Tcatlmtであるとき、またはアクセルペダルが踏まれているときには、ステップ77に進み、目標主吸気カム位相の通常運転値θmi_drvを、要求駆動トルクTRQ_engおよびエンジン回転数NEに応じて、図56に示すマップを検索することにより算出する。
【0219】
同図において、エンジン回転数NEの所定値NE1〜NE3はそれぞれ、NE1>NE2>NE3の関係が成立するように設定されており、この点は、以下においても同様である。このマップでは、通常運転値θmi_drvは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、またはエンジン回転数NEが高いほど、より進角側の値に設定されている。これは、エンジン負荷が高いほど、主吸気カム位相θmiを進角させ、吸気弁6の開閉タイミングを進角させることにより、エンジン出力を適切に確保するためである。
【0220】
次に、ステップ78で、目標主吸気カム位相θmi_cmdを上記通常運転値θmi_drvに設定した後、ステップ79に進み、前述した副吸気カム位相の基本値θmsi_baseを、要求駆動トルクTRQ_engに応じて、図57に示すテーブルを検索することにより算出する。
【0221】
同図に示すように、このテーブルにおいて、基本値θmsi_baseは、TRQ_eng<TRQ_discの範囲、すなわちエンジン3の成層燃焼運転域では、遅閉じ側の一定値に設定されている。これは、成層燃焼運転を実行するような低負荷域での燃焼状態を安定させるためである。また、基本値θmsi_baseは、TRQ_disc≦TRQ_eng≦TRQottの範囲では、基本値θmsi_baseは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、遅閉じ度合いが小さくなるように設定されている。これは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、吸気弁6の遅閉じ度合いに起因するインテークマニホールド内への燃料の吹き戻し量がより大きくなるので、それを回避するためである。また、TRQ_eng=TRQottのときには、基本値θmsi_baseがオットー位相値θmsiottに設定されている。
【0222】
さらに、基本値θmsi_baseは、TRQott<TRQ_eng<TRQ2の範囲では、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、早閉じ度合いが大きくなるように設定されており、これは、高膨張比サイクル運転によって燃焼効率を高めるためである。
【0223】
また、TRQ2≦TRQ_eng<TRQ4の範囲では、基本値θmsi_baseは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、吸気弁6の早閉じ度合いが小さくなるように設定されている。これは、以下の理由による。すなわち、TRQ2≦TRQ_eng<TRQ4のような高負荷域では、後述するように、ノッキングの発生を回避するために過給動作が制限されるので、そのような過給動作の制限により充填効率が低下した状態で、吸気弁6の早閉じ度合いを大きい状態に制御すると、発生トルクの低下を招いてしまう。したがって、このような発生トルクの低下を補償するために、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、吸気弁6の早閉じ度合いが小さくなるように設定されている。
【0224】
ステップ79に続くステップ80では、前述した第1SPASコントローラ221の制御アルゴリズムにより目標副吸気カム位相θmsi_cmdを算出する。すなわち、前述した式(7)の予測アルゴリズム、式(8)〜(13)の同定アルゴリズム、および式(15)〜(21)のスライディングモード制御アルゴリズムを適用することにより、目標副吸気カム位相θmsi_cmdを算出する。
【0225】
次いで、ステップ81で、前述した吸気カム間位相コントローラ230の制御アルゴリズムにより、目標吸気カム間位相θssi#i_cmd(#i=#2〜#4)を算出する。すなわち、式(44)〜(50)の同定アルゴリズムにより、吸気量ばらつき係数Φ#1〜Φ#4が同定され、式(51)により、これらの吸気量ばらつき係数Φ#1〜Φ#4の偏差EΦ#2〜#4が算出され、式(52),(53)の応答指定型制御アルゴリズムにより、これらの偏差EΦ#2〜#4が値0に収束するように、目標吸気カム間位相θssi#i_cmdが算出される。次に、前述したように図54のステップ74〜76を実行した後、本プログラムを終了する。
【0226】
図53に戻り、ステップ60の判別結果がYESで、可変式吸気弁駆動装置40または可変式排気弁駆動装置90が故障しているときには、ステップ82に進み、目標主吸気カム位相θmi_cmdを所定のアイドル用値θmi_idleに設定した後、ステップ83に進み、目標副吸気カム位相θmsi_cmdを所定の故障用値θmsi_fsに設定する。
【0227】
次いで、ステップ84に進み、前述したステップ64,73と同様に、目標吸気カム間位相θssi#i_cmd(#i=#2〜#4)をいずれも値0に設定する。この後、前述したように、図54のステップ65〜67を実行した後、本プログラムを終了する。
【0228】
次に、図58,59を参照しながら、前述したステップ4の排気弁制御処理について説明する。同図に示すように、このプログラムでは、まず、ステップ90で、前述した吸排気弁故障フラグF_VLVNGが「1」であるか否かを判別し、この判別結果がNOで、可変式吸気弁駆動装置40および可変式排気弁駆動装置90がいずれも正常であるときには、ステップ91に進み、前述したエンジン始動フラグF_ENGSTARTが「1」であるか否かを判別する。
【0229】
この判別結果がYESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ92に進み、主排気カム位相θmeの目標値である目標主排気カム位相θme_cmdを所定のアイドル用値θme_idleに設定する。
【0230】
次いで、ステップ93に進み、目標副排気カム位相θmse_cmdを所定の始動用値θmse_stに設定する。この始動用値θmse_stは、排気弁7の遅開け用の所定値として設定されている。この後、ステップ94に進み、目標排気カム間位相θsse#i_cmd(#i=#2〜#4)をいずれも値0に設定する。
【0231】
次に、図59のステップ95に進み、主排気カム位相可変機構110への制御入力DUTY_meを、目標主排気カム位相θme_cmdに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出する。この後、ステップ96で、副排気カム位相可変機構120への制御入力DUTY_mseを、目標副排気カム位相θmse_cmdに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出する。なお、このステップ96において、後述するステップ106と同様の手法により、制御入力DUTY_mseを算出してもよい。
【0232】
次いで、ステップ97で、排気カム間位相可変機構130への制御入力DUTY_sse#iを、目標排気カム間位相θsse#i_cmdに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出した後、本プログラムを終了する。
【0233】
図58に戻り、ステップ91の判別結果がNOで、エンジン始動制御中でないときには、ステップ98に進み、前述した触媒暖機制御の実行時間Tcatが所定値Tcatlmtより小さいか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、ステップ99に進み、アクセル開度APが所定値APREFより小さいか否かを判別する。
【0234】
この判別結果がYESで、アクセルペダルが踏まれていないときには、触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ100に進み、目標主排気カム位相θme_cmdを前述した所定のアイドル用値θme_idleに設定する。
【0235】
次いで、ステップ101に進み、前述した触媒暖機制御の実行時間Tcatに応じて、図60に示すテーブルを検索することにより、目標副排気カム位相の触媒暖機用値θmse_astを算出する。同図において、θmseottは、排気弁7のバルブタイミングが、オットー排気カムによるものと同じになる副排気カム位相θmseのオットー位相値(=90deg)を示している。同図に示すように、触媒暖機用値θmse_astは、触媒暖機制御の実行時間Tcatが所定値Tcatrefに達するまでの間は遅開け側の値に設定され、それ以降は早開け側の値に設定される。このように早開け側の値に設定される理由は、膨張行程の途中で排気弁7を開弁することにより、高温の排気ガスを触媒装置19a,19bに供給し、それにより、触媒装置19a,19b内の触媒の早期活性化を図るためである。
【0236】
ステップ101に続くステップ102では、目標副排気カム位相の補正量dθmseを、前述した式(55),(56)の応答指定型制御アルゴリズムにより算出する。
【0237】
次に、ステップ103に進み、上記ステップ101,102で算出したθmse_ast,dθmseを用い、前述した式(54)により目標副排気カム位相θmse_cmdを算出する。
【0238】
次いで、ステップ104で、ステップ94と同様に、目標排気カム間位相θsse#i_cmd(#i=#2〜#4)をいずれも値0に設定した後、図59のステップ105に進み、主排気カム位相可変機構110への制御入力DUTY_meを、目標主排気カム位相θme_cmdおよび主排気カム位相θmeに応じて、算出する。この制御入力DUTY_meは、前述した第2SPASコントローラ225の制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより算出される。
【0239】
次に、ステップ106で、第4SPASコントローラ282の制御アルゴリズムにより、副排気カム位相可変機構120への制御入力DUTY_mseを算出する。すなわち、前述したように、第2SPASコントローラ225の制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより、制御入力DUTY_mseを算出する。
【0240】
次いで、ステップ107に進み、目標排気カム間位相θsse#i_cmdおよび排気カム間位相θsse#iに応じて、排気カム間位相可変機構130への制御入力DUTY_sse#i(#i=#2〜#4)を算出した後、本プログラムを終了する。なお、この制御入力DUTY_sse#iは、上記制御入力DUTY_mseの算出に用いる制御アルゴリズムと同じアルゴリズムにより算出される。
【0241】
図58に戻り、ステップ98またはステップ99の判別結果がNOのとき、すなわち、エンジン始動制御中でなくかつTcat≧Tcatlmtであるとき、またはアクセルペダルが踏まれているときには、ステップ108に進み、目標主排気カム位相の通常運転値θme_drvを、要求駆動トルクTRQ_engおよびエンジン回転数NEに応じて、図61に示すマップを検索することにより算出する。
【0242】
同図に示すように、このマップでは、通常運転値θme_drvは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、またはエンジン回転数NEが高いほど、より進角側の値に設定されている。これは、エンジン負荷が高いほど、主排気カム位相θmeを進角させ、排気弁7の開閉タイミングを進角させることにより、排気の掃気効率を高め、エンジン出力を適切に確保するためである。
【0243】
次に、ステップ109で、目標主排気カム位相θme_cmdを上記通常運転値θme_drvに設定した後、ステップ110に進み、目標副排気カム位相θmse_cmdを、所定値θmse_baseに設定する。この所定値θmse_baseは、排気弁7のバルブタイミングがオットー排気カムと同じになるような値(90deg)に設定されている。
【0244】
ステップ110に続くステップ111では、要求駆動トルクTRQ_engおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないマップを検索することにより、目標排気カム間位相θsse#i_cmd(#i=#2〜#4)を算出する。このマップでは、目標排気カム間位相θsse#i_cmdは、排気系の脈動効果による掃気効率の気筒間のばらつきを補償するような値に設定されている。次に、図59のステップ105〜107を前述したように実行した後、本プログラムを終了する。
【0245】
図58に戻り、ステップ90の判別結果がYESで、可変式吸気弁駆動装置40または可変式排気弁駆動装置90が故障しているときには、ステップ112に進み、目標主排気カム位相θme_cmdを前述した所定のアイドル用値θme_idleに設定した後、ステップ113に進み、目標副排気カム位相θmse_cmdを所定の故障用値θmse_fsに設定する。この所定の故障用値θmse_fsは、排気弁7のバルブタイミングがオットー排気カムと同じになるような値(90deg)に設定されている。
【0246】
次いで、ステップ114に進み、前述したステップ94,104と同様に、目標排気カム間位相θsse#i_cmd(#i=#2〜#4)をいずれも値0に設定する。この後、前述したように、図59のステップ95〜97を実行した後、本プログラムを終了する。
【0247】
次に、図62を参照しながら、前述したステップ5のスロットル弁制御処理について説明する。同図に示すように、このプログラムでは、まず、ステップ120で、前述した吸排気弁故障フラグF_VLVNGが「1」であるか否かを判別し、この判別結果がNOで、可変式吸気弁駆動装置40および可変式排気弁駆動装置90がいずれも正常であるときには、ステップ121に進み、前述したエンジン始動フラグF_ENGSTARTが「1」であるか否かを判別する。
【0248】
この判別結果がYESで、エンジン始動制御中であるときには、ステップ122に進み、目標開度TH_cmdを所定の始動用値THcmd_stに設定する。この所定の始動用値THcmd_stは、後述するアイドル用値THcmd_idleよりも若干、大きい値に設定されている。次いで、ステップ123に進み、スロットル弁機構16への制御入力DUTY_thを算出した後、本プログラムを終了する。この制御入力DUTY_thは、具体的には、目標開度TH_cmdに応じて、図示しないテーブルを検索することにより算出される。
【0249】
一方、ステップ121の判別結果がNOで、エンジン始動制御中でないときには、ステップ124に進み、前述した触媒暖機制御の実行時間Tcatが所定値Tcatlmtより小さいか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、ステップ125に進み、アクセル開度APが所定値APREFより小さいか否かを判別する。
【0250】
このステップ125の判別結果がYESで、アクセルペダルが踏まれていないときには、触媒暖機制御を実行すべきであるとして、ステップ126に進み、目標開度の触媒暖機用値THcmd_astを、前述した触媒暖機制御の実行時間Tcatに応じて、図63に示すテーブルを検索することにより算出する。
【0251】
図中の値THcmd_idleは、アイドル運転のときに用いられるアイドル用値を示している。同図に示すように、このテーブルでは、触媒暖機用値THcmd_astは、実行時間Tcatが所定値Tcat1に達するまでの間は、実行時間Tcatが短いほど、より大きい値に設定され、実行時間Tcatが所定値Tcat1に達した後は、アイドル用値THcmd_idleに設定されている。
【0252】
次いで、ステップ127に進み、目標開度TH_cmdを上記触媒暖機用値THcmd_astに設定し、次に、前述したようにステップ123を実行した後、本プログラムを終了する。
【0253】
一方、ステップ124またはステップ125の判別結果がNOのとき、すなわちエンジン始動制御中でなくかつTcat≧Tcatlmtであるとき、またはアクセルペダルが踏まれているときには、ステップ128に進み、目標開度の通常運転値THcmd_drvを、要求駆動トルクTRQ_engおよびエンジン回転数NEに応じて、図64に示すマップを検索することにより算出する。
【0254】
同図に示すように、このマップでは、通常運転値THcmd_drvは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、またはエンジン回転数NEが高いほど、より大きい値に設定されている。これは、エンジン3の負荷が高いほど、より大きなエンジン出力を確保するために、より多量の吸入空気が必要とされることによる。
【0255】
次に、ステップ129で、目標開度TH_cmdを上記通常運転値THcmd_drvに設定し、次いで、前述したように、ステップ123を実行した後、本プログラムを終了する。
【0256】
一方、ステップ120の判別結果がYESで、可変式吸気弁駆動装置40または可変式排気弁駆動装置90が故障しているときには、ステップ130に進み、目標開度の故障用値THcmd_fsを、アクセル開度APおよびエンジン回転数NEに応じて、図65に示すマップを検索することにより算出する。同図に示すように、このマップでは、故障用値THcmd_fsは、アクセル開度APが大きいほど、またはエンジン回転数NEが高いほど、より大きい値に設定されている。これは、上記通常運転値THcmd_drvの算出で説明した内容と同じ理由による。
【0257】
次いで、ステップ131に進み、目標開度TH_cmdを上記故障用値THcmd_fsに設定し、次に、前述したように、ステップ123を実行した後、本プログラムを終了する。
【0258】
なお、以上の制御処理により、各種の制御入力DUTY_mi,DUTY_msi,DUTY_ssi#i,DUTY_me,DUTY_mse,DUTY_sse#i,DUTY_thは、算出結果に応じたデューティ比のパルス信号、電流信号および電圧信号のいずれか1つに設定される。
【0259】
以上のようなエンジン制御を実行した際の動作について、図66を参照しながら、エンジン始動および触媒暖機制御中の動作を中心に説明する。
【0260】
同図に示すように、エンジン始動制御中(t0〜t1)は、目標副吸気カム位相θmsi_cmdが、所定の始動用値θmsi_stに設定される(ステップ63)ことで、副吸気カム位相θmsiが遅閉じ側の値に制御されると同時に、目標開度TH_cmdが所定の始動用値THcmd_stに設定される(ステップ122)ことで、スロットル弁開度THが半開状態に制御される。それにより、気筒吸入空気量Gcylは、エンジン始動可能な程度の小さい値に制御される。このように、始動の際、スロットル弁17の絞りのみでは制御不能な気筒吸入空気量Gcylを、過不足なくエンジン始動可能な値まで抑制することができるので、それに応じて燃料噴射量を低減できる。その結果、排気ガスボリュームを低減することができ、始動制御中の未燃成分の総排出量を低減することができる。
【0261】
また、目標副排気カム位相θmse_cmdが所定の始動用値θmse_stに設定される(ステップ93)ことで、副排気カム位相θmseが遅開け側に制御され、それにより、燃焼ガスが気筒内により長く保持されることで、排気ガス中の未燃HCを低減することができる。さらに、目標空燃比KCMDが理論空燃比に相当する値KCMDSTよりも若干、リッチ側の値に制御され、かつ点火時期θigが通常のアイドル運転用値θigidleよりも進角側の値に制御されることにより、混合気の着火性を向上させることができる。
【0262】
以上のエンジン始動制御により、エンジン3が完全始動(完爆)すると(時刻t1)、触媒暖機制御が実行される。具体的には、目標副吸気カム位相θmsi_cmdが触媒暖機用値θmsi_cwに設定される(ステップ72)ことにより、副吸気カム位相θmsiは、遅閉じ側の値からオットー位相値θmsiottに近づくように制御される。それにより、吸気弁6の遅閉じ度合いが減少することにより、気筒吸入空気量Gcylが増大するように制御され、それにより、排気ガスボリュームが増大する。また、目標副排気カム位相θmse_cmdが、触媒暖機用値θmse_astと補正量dθmseの和に設定される(ステップ103)ことにより、副排気カム位相θmseは、遅開け側から早開け側に変化するように制御されることにより、圧縮行程中の高温の排気ガスが排出される。これに加えて、点火時期θigが所定値dθig分、リタードされることにより、排気ガス温度が高められる。以上により、触媒装置19a,19b内の触媒を早期に活性化することができる。
【0263】
また、目標空燃比KCMDがリーン側の値に制御されることにより、未燃HCを低減することができる。さらに、エンジン回転数NEは、目標回転数NE_cmdになるように制御される。
【0264】
さらに、触媒暖機制御の終了以降(時刻t2以降)は、要求駆動トルクTRQ_engなどの運転状態に応じ、前述したプログラムに基づいて通常運転制御が実行される。
【0265】
次に、通常運転制御中の動作について、図67を参照しながら、下記の(L1)〜(L6)の要求駆動トルクTRQ_engの範囲毎に説明する。
【0266】
(L1)TRQ_idle≦TRQ_eng<TRQ_discの範囲
この範囲では、前述した基本値θmsi_baseの設定により、副吸気カム位相θmsiが遅閉じ側のほぼ一定の値に制御される。また、スロットル弁17により吸入空気量が絞られないことで、吸気管内絶対圧PBAは、大気圧Patmよりも若干低いほぼ一定値に制御される。さらに、気筒吸入空気量Gcylがほぼ一定値に制御される。また、主燃料噴射率Rt_Preが最大値Rtmaxに設定され、目標空燃比KCMDが前述した極リーン域の値に設定されるとともに、成層燃焼運転が実行される。
【0267】
(L2)TRQ_disc≦TRQ_eng≦TRQ1の範囲
この範囲では、前述した基本値θmsi_baseの設定により、副吸気カム位相θmsiは、上記(L1)の範囲のときの値よりもかなり遅閉じ側の値に制御されるとともに、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、遅閉じ度合いがより小さくなるように制御される。また、気筒吸入空気量Gcylは、上記(L1)の範囲のときの値よりも小さい値に制御されるとともに、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より大きい値になるように制御される。さらに、目標空燃比KCMDは、上記(L1)の範囲の値よりもリッチ側の前述したリーン域の値を保持するように制御され、吸気管内絶対圧PBAおよび主燃料噴射率Rt_Preはいずれも、上記(L1)の範囲での値を保持するように制御される。
【0268】
(L3)TRQ1<TRQ_eng≦TRQottの範囲
この範囲では、前述した基本値θmsi_baseの設定により、副吸気カム位相θmsiは、上記(L2)の範囲と同様の傾向に制御される。特に、TRQ_eng=TRQottのときには、副吸気カム位相θmsiは、オットー位相値θmsiottになるように制御される。すなわち、エンジン3はオットーサイクルで運転される。また、目標空燃比KCMDおよび気筒吸入空気量Gcylも、上記(L2)の範囲と同様の傾向に制御される。さらに、この範囲では、ターボチャージャ装置10による過給動作が実行され、それにより、吸気管内絶対圧PBAは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より高い値になるように制御される。また、主燃料噴射率Rt_Preは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より小さい値になるように制御される。すなわち、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、副燃料噴射弁15の燃料噴射量TOUT_subがより大きい値になるように制御される。これは、燃料気化冷却装置12による吸入空気の冷却効果を得るためである。
【0269】
(L4)TRQott<TRQ_eng<TRQ2の範囲
この範囲では、副吸気カム位相θmsiは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より早閉じ度合いが大きくなるように制御される。これは、前述したように、高膨張比サイクル運転によって燃焼効率を高めるためである。また、気筒吸入空気量Gcyl、目標空燃比KCMD、主燃料噴射率Rt_Preおよび吸気管内絶対圧PBAは、上記(L3)の範囲と同様の傾向を示すように制御される。特に、吸気管内絶対圧PBAは、上記と同様に、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より高い値になるように制御されている。これは、副吸気カム位相θmsiが早閉じ側に制御されると、発生トルクの低下を招いてしまうので、その補償を目的として過給により充填効率を高め、発生トルクを増大させるためである。
【0270】
(L5)TRQ2≦TRQ_eng<TRQ4の範囲
この範囲では、副吸気カム位相θmsiは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より早閉じ度合いが小さくなるように制御され、その結果、有効圧縮体積が増大する。これは、前述したように、過給動作の制限により充填効率が低下した状態で、吸気弁6の早閉じ度合いを大きい状態に制御すると、発生トルクの低下を招いてしまうので、上記のように副吸気カム位相θmsiを制御することにより、発生トルクの低下を補償するためである。
【0271】
また、吸気管内絶対圧PBAは、TRQ2≦TRQ_eng≦TRQ3の範囲では、一定値を維持するように制御され、TRQ3<TRQ_eng<TRQ4の範囲では、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より低い値になるように制御される。さらに、主燃料噴射率Rt_Preは、上記(L3)の範囲と同様に、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、より小さい値になるように制御される。以上のように、この(L5)の範囲では、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、ターボチャージャ装置10による過給動作が制限されると同時に、燃料気化冷却装置12による冷却効果が上昇するように制御されることにより、点火時期のリタード制御を行うことなく、ノッキングの発生を回避することができる。なお、従来のターボチャージャ装置付きのエンジンの場合、この(L5)の範囲では、点火時期のリタード制御を実行しないと、ノッキングが発生してしまう。
【0272】
(L6)TRQ4≦TRQ_engの範囲
この範囲では、極高負荷域であることにより、上述したターボチャージャ装置10による過給動作の制限、および燃料気化冷却装置12による冷却効果では、ノッキングの発生を回避できないので、点火時期のリタード制御が実行される。すなわち、目標空燃比KCMDは、要求駆動トルクTRQ_engが大きいほど、リッチ側になるように制御される。これと同時に、副吸気カム位相θmsiは、オットー位相値θmsiottになるように制御され、気筒吸入空気量Gcylはほぼ一定になるように制御され、主燃料噴射率Rt_Preは最小値Rtminに制御され、吸気管内絶対圧PBAは、ほぼ一定値を維持するように制御される。
【0273】
以上のように、本実施形態の吸入空気量制御装置1によれば、オンボード同定器223において、式(2)の制御対象モデルに基づき、式(8)〜(13)の同定アルゴリズムにより、モデルパラメータのベクトルθsが同定され、SLDコントローラ224において、このモデルパラメータのベクトルθsに応じて、気筒吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに収束するように、目標副吸気カム位相θmsi_cmdが算出される。このように、目標副吸気カム位相θmsi_cmdが、適応制御アルゴリズムにより算出されるので、エアフローセンサ21の経年変化、または可変式吸気弁駆動装置40の動特性のばらつきおよび経年変化などに起因して、制御対象の動特性がばらついたり、経年変化したりしている場合でも、それらの影響を回避しながら、制御対象モデルの動特性を、その実際の動特性に適合させることができる。それにより、気筒吸入空気量Gcylを、迅速かつ安定した状態で目標吸入空気量Gcyl_cmdに収束させることができる。このように、吸入空気量制御において、高いロバスト性を確保できるとともに、制御性を向上させることができ、それにより、トルク変動および回転変動の発生を回避でき、燃焼状態を向上させることができる。その結果、運転性および排気ガス特性を向上させることができる。
【0274】
また、状態予測器222において、式(2)の制御対象モデルに基づき、式(7)の予測アルゴリズムにより、予測吸入空気量Pre_Gcylが算出されるので、この予測吸入空気量Pre_Gcylを、制御対象のむだ時間dが補償された値として算出することができるとともに、そのような予測吸入空気量Pre_Gcylを用いて、オンボード同定器223での同定演算、およびSLDコントローラ224での目標副吸気カム位相θmsi_cmdの算出が実行されるので、制御対象のむだ時間dを補償しながら、目標副吸気カム位相θmsi_cmdを算出することができる。それにより、気筒吸入空気量Gcylの目標副吸気カム位相θmsi_cmdへの収束性を向上させることができ、その結果、運転性および排気ガス特性をさらに向上させることができる。
【0275】
さらに、SLDコントローラ224において、式(15)〜(21)のスライディングモード制御アルゴリズムにより、気筒吸入空気量Gcylが目標吸入空気量Gcyl_cmdに収束するように、目標副吸気カム位相θmsi_cmdが算出されるので、気筒吸入空気量Gcylの目標吸入空気量Gcyl_cmdへの収束挙動および収束速度を、切換関数設定パラメータSsの設定により任意に指定することができる。したがって、気筒吸入空気量Gcylの目標吸入空気量Gcyl_cmdへの収束速度を、制御対象の特性に応じた適切な値に設定することができ、それにより、気筒吸入空気量Gcylを、振動的およびオーバーシュート的な挙動を回避しながら迅速かつ安定した状態で、目標吸入空気量Gcyl_cmdに収束させることができる。その結果、運転性および排気ガス特性をより一層、向上させることができる。
【0276】
これに加えて、可変式吸気弁駆動装置40が油圧駆動式のもので構成されているので、例えば、吸気弁6の弁体をソレノイドの電磁力で駆動するタイプの可変式吸気弁駆動装置を用いた場合と比べて、より高負荷域でも吸気弁6を確実に開閉することができ、消費電力を低減できるとともに、吸気弁6の動作音を低減することができる。
【0277】
また、主・副吸気カム43,44、主・副吸気カムシャフト41,42、リンク機構50および吸気ロッカアーム51を備えた吸気弁駆動機構50と、副吸気カム位相可変機構70との組み合わせにより、副吸気カム位相θmsiを自在に変更できる構成、すなわち吸気弁6の閉弁タイミングおよびバルブリフト量を自在に変更できる構成を実現することができる。
【0278】
なお、副吸気カム位相可変機構70において、高い応答性が要求されない場合(例えば、前述した吸気弁制御処理において、吸気弁6を遅閉じ側または早閉じ側の一方にのみ制御すればよい場合)には、油圧ピストン機構73およびモータ74に代えて、主吸気カム位相可変機構60と同様に、油圧ポンプ63および電磁弁機構64を用いてもよい。その場合には、吸入空気量制御装置1を、図68に示すように構成すればよい。
【0279】
同図に示すように、この吸入空気量制御装置1では、実施形態におけるDUTY_th算出部200および副吸気カム位相コントローラ220に代えて、DUTY_msi算出部300およびスロットル弁開度コントローラ301が設けられている。このDUTY_msi算出部300では、要求駆動トルクTRQ_engに応じて、テーブルを検索することにより、目標副吸気カム位相θmsi_cmdを算出した後、この算出した目標副吸気カム位相θmsi_cmdに応じて、テーブルを検索することにより、制御入力DUTY_msiが算出される。また、スロットル弁開度コントローラ301では、気筒吸入空気量Gcylおよび目標吸入空気量Gcyl_cmdに応じて、前述した第1SPASコントローラ221と同じ制御アルゴリズムにより、目標開度TH_cmdを算出した後、この算出した目標開度TH_cmdに応じて、第2SPASコントローラ225と同じ制御アルゴリズムにより、制御入力DUTY_thが算出される。以上のように構成した場合、副吸気カム位相可変機構70の応答性が低いときでも、その影響を回避しながら、副吸気カム位相θmsiを適切に制御することができる。
【0280】
また、実施形態は、副吸気カム位相コントローラ220として、第1SPASコントローラ221および第2SPASコントローラ225の双方を備えた例ではあるが、これに代えて、第1SPASコントローラ221のみを備えたものを用いてもよい。その場合には、制御入力DUTY_msiを、例えばテーブルを参照することにより、第1SPASコントローラ221で算出した目標副吸気カム位相θmsi_cmdに応じて、算出すればよい。
【0281】
さらに、実施形態は、第1および第2SPASコントローラ221,225において、応答指定型制御アルゴリズムとしてスライディングモード制御アルゴリズムを用いた例であるが、2つのコントローラ221,225で用いる応答指定型制御アルゴリズムはこれに限らず、バックステッピング制御アルゴリズムなどの応答指定型制御アルゴリズムであればよい。
【0282】
また、実施形態は、吸気バルブタイミング可変装置として可変式吸気弁駆動装置40を用いた例であるが、吸気バルブタイミング可変装置はこれに限らず、吸気弁6のバルブタイミングを変更することにより、気筒内に吸入される吸入空気量を変更可能なものであればよい。例えば、吸気バルブタイミング可変装置として、吸気弁6の弁体をソレノイドの電磁力で駆動する電磁式動弁機構を用いてもよい。
【0283】
さらに、本発明の吸入空気量制御装置は、実施形態の車両用の内燃機関に限らず、船舶用などの各種の内燃機関に適用可能である。
【0284】
【発明の効果】
以上のように、本発明の内燃機関の吸入空気量制御装置によれば、吸入空気量制御において、高いロバスト性を確保でき、制御性を向上させることができ、それにより、運転性および排気ガス特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る吸入空気量制御装置が適用された内燃機関の概略構成を示す図である。
【図2】内燃機関の可変式吸気弁駆動装置および可変式排気弁駆動装置の概略構成を示す図である。
【図3】吸入空気量制御装置の概略構成を示す図である。
【図4】燃料気化冷却装置の概略構成を示す図である。
【図5】可変式吸気弁駆動装置および可変式排気弁駆動装置の概略構成を平面的に示す模式図である。
【図6】可変式吸気弁駆動装置の吸気弁駆動機構の概略構成を示す図である。
【図7】主吸気カム位相可変機構の概略構成を示す図である。
【図8】副吸気カム位相可変機構の概略構成を示す図である。
【図9】副吸気カム位相可変機構の変形例の概略構成を示す図である。
【図10】吸気カム間位相可変機構の概略構成を示す図である。
【図11】主吸気カムおよび副吸気カムのカムプロフィールを説明するための図である。
【図12】副吸気カム位相θmsi=0degの場合の(a)吸気弁駆動機構の動作状態を示す図と(b)吸気弁の動作を説明するためのバルブリフト曲線などを示す図である。
【図13】副吸気カム位相θmsi=90degの場合の(a)吸気弁駆動機構の動作状態を示す図と(b)吸気弁の動作を説明するためのバルブリフト曲線などを示す図である。
【図14】副吸気カム位相θmsi=120degの場合の(a)吸気弁駆動機構の動作状態を示す図と(b)吸気弁の動作を説明するためのバルブリフト曲線などを示す図である。
【図15】副吸気カム位相θmsi=180degの場合の(a)吸気弁駆動機構の動作状態を示す図と(b)吸気弁の動作を説明するためのバルブリフト曲線などを示す図である。
【図16】副吸気カム位相θmsiを120degから180degに変化させた場合における吸気弁の動作を説明するためのバルブリフト量およびバルブタイミングの変化を示す図である。
【図17】主排気カムおよび副排気カムのカムプロフィールを説明するための図である。
【図18】副排気カム位相θmse=0degの場合における排気弁の動作を説明するためのバルブリフト曲線などを示す図である。
【図19】副排気カム位相θmse=45degの場合における排気弁の動作を説明するためのバルブリフト曲線などを示す図である。
【図20】副排気カム位相θmse=90degの場合における排気弁の動作を説明するためのバルブリフト曲線などを示す図である。
【図21】副排気カム位相θmse=150degの場合における排気弁の動作を説明するためのバルブリフト曲線などを示す図である。
【図22】吸入空気量制御装置における、スロットル弁機構、副吸気カム位相可変機構および吸気カム間位相可変機構を制御するための構成を示すブロック図である。
【図23】副吸気カム位相コントローラの概略構成を示すブロック図である。
【図24】気筒吸入空気量Gcylの算出式と、第1SPASコントローラにおける状態予測器の予測アルゴリズムの数式を示す図である。
【図25】第1SPASコントローラにおけるオンボード同定器の同定アルゴリズムの数式を示す図である。
【図26】第1SPASコントローラにおけるスライディングモードコントローラのスライディングモード制御アルゴリズムの数式を示す図である。
【図27】図26の式(19)の導出方法を説明するための数式を示す図である。
【図28】スライディングモード制御アルゴリズムを説明するための位相平面および切換直線を示す図である。
【図29】スライディングモードコントローラにおいて、切換関数設定パラメータSsを変化させた場合における追従誤差Esの収束挙動の一例を示す図である。
【図30】第2SPASコントローラの概略構成を示すブロック図である。
【図31】第2SPASコントローラにおける状態予測器の予測アルゴリズムの数式を示す図である。
【図32】第2SPASコントローラにおけるオンボード同定器の同定アルゴリズムの数式を示す図である。
【図33】第2SPASコントローラにおけるスライディングモードコントローラのスライディングモード制御アルゴリズムの数式を示す図である。
【図34】エアフローセンサにより検出される吸気の脈動を示す図である。
【図35】吸気カム間位相コントローラの適応オブザーバにおける吸気量ばらつき係数Φ#1〜#4の算出アルゴリズムを説明するための模式図である。
【図36】吸気カム間位相コントローラの適応オブザーバにおける吸気量ばらつき係数Φ#1〜#4の算出アルゴリズムの数式を示す図である。
【図37】適応オブザーバの構成を示すブロック図である。
【図38】適応オブザーバの信号発生器から出力される模擬値Gcyl_OS#1〜#4を示す図である。
【図39】吸気カム間位相コントローラにおける、差分器による偏差EΦ#2〜#4の算出式、および吸気ばらつきコントローラによる目標吸気カム間位相θssi#i_cmdの算出アルゴリズムの数式を示す図である。
【図40】吸気ばらつきコントローラの構成を示すブロック図である。
【図41】副排気カム位相コントローラの構成を示すブロック図である。
【図42】副排気カム位相コントローラの制御アルゴリズムの数式を示す図である。
【図43】エンジン制御処理の主要な制御内容を示すフローチャートである。
【図44】燃料制御処理を示すフローチャートである。
【図45】要求駆動トルクTRQ_engの算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図46】気筒吸入空気量Gcylおよび目標吸入空気量Gcyl_cmdの算出処理を示すフローチャートである。
【図47】目標吸入空気量の基本値Gcyl_cmd_baseの算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図48】空燃比補正係数Kgcyl_afの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図49】主燃料噴射率Rt_Preの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図50】過給圧制御処理を示すフローチャートである。
【図51】ウエストゲート弁への制御入力の基本値Dut_wg_baseの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図52】目標過給圧Pc_cmdの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図53】吸気弁制御処理を示すフローチャートである。
【図54】図53の続きを示すフローチャートである。
【図55】目標副吸気カム位相の触媒暖機用値θmsi_cwの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図56】目標主吸気カム位相の通常運転値θmi_drvの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図57】目標副吸気カム位相の基本値θmsi_baseの算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図58】排気弁制御処理を示すフローチャートである。
【図59】図58の続きを示すフローチャートである。
【図60】目標副排気カム位相の触媒暖機用値θmse_astの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図61】目標主排気カム位相の通常運転値θme_drvの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図62】スロットル弁制御処理を示すフローチャートである。
【図63】目標開度の触媒暖機用値THcmd_astの算出に用いるテーブルの一例を示す図である。
【図64】目標開度の通常運転値THcmd_drvの算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図65】目標開度の故障用値THcmd_fsの算出に用いるマップの一例を示す図である。
【図66】吸入空気量制御装置によるエンジン始動および触媒暖機制御の動作例を示すタイミングチャートである。
【図67】吸入空気量制御装置によるエンジン制御の動作例を示す図である。
【図68】吸入空気量制御装置の変形例の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 吸入空気量制御装置
2 ECU(気筒吸入空気量算出手段、目標吸入空気量設定手段、同定手段、制御 指令値算出手段、制御手段、予測値算出手段)
3 内燃機関
#1〜#4 第1〜第4気筒
6 吸気弁
40 可変式吸気弁駆動装置(吸気バルブタイミング可変装置)
41 主吸気カムシャフト(第1吸気カムシャフト)
42 副吸気カムシャフト(第2吸気カムシャフト)
43 主吸気カム(第1吸気カム)
44 副吸気カム(第2吸気カム)
45 主ギヤ(第1ギヤ)
46 副ギヤ(第2ギヤ)
51 吸気ロッカアーム
51a ローラ
51c ピン(回動支点)
52 リンク機構
53 第1リンク
53a ローラ
54 第2リンク
70 副吸気カム位相可変機構(吸気カム位相可変機構)
222 状態予測器(予測値算出手段)
223 オンボード同定器(同定手段)
224 スライディングモードコントローラ(制御指令値算出手段)
225 第2SPASコントローラ(制御手段)
Gcyl 気筒吸入空気
Pre_Gcyl 予測吸入空気量(気筒吸入空気量の予測値)
Gcyl_cmd 目標吸入空気量
θmsi_cmd 目標副吸気カム位相(制御指令値)
θmsi 副吸気カム位相(吸気弁のバルブタイミングを表す値、第1および第 2吸気カムシャフト間の相対的な位相)
a1,a2,b1 モデルパラメータ
γ1 補償パラメータ(モデルパラメータ)
θs モデルパラメータのベクトル

Claims (4)

  1. 吸気弁のバルブタイミングを自在に変更する吸気バルブタイミング可変装置を介して、気筒内に吸入される吸入空気量を自在に可変制御する内燃機関の吸入空気量制御装置であって、
    前記気筒内に吸入される空気量を気筒吸入空気量として算出する気筒吸入空気量算出手段と、
    前記吸入空気量制御の目標となる目標吸入空気量を設定する目標吸入空気量設定手段と、
    前記吸気バルブタイミング可変装置によって設定された吸気弁のバルブタイミングを表す値を入力とし、前記気筒吸入空気量を出力とするとともに、定常偏差およびモデル化誤差を補償するための補償パラメータと、当該入力および当該出力に乗算される乗算係数とをモデルパラメータとする制御対象モデルに基づき、所定の同定アルゴリズムにより、前記気筒吸入空気量と当該制御対象モデルの前記出力との誤差が最小になるように、前記モデルパラメータをオンボード同定する同定手段と、
    当該オンボード同定されたモデルパラメータに応じて、前記気筒吸入空気量が前記目標吸入空気量に収束するように、前記吸気バルブタイミング可変装置を制御するための制御指令値を算出する制御指令値算出手段と、
    当該算出された制御指令値に応じて、前記吸気バルブタイミング可変装置を制御する制御手段と、
    を備え、
    前記吸気バルブタイミング可変装置は、
    回動支点に回動自在に支持され、当該回動により前記吸気弁を開閉駆動する吸気ロッカアームと、
    当該吸気ロッカアームを前記回動支点の回りに回動させる第1吸気カムが設けられた、回転自在の第1吸気カムシャフトと、
    前記第1吸気カムよりも低いカム山を有しかつ回転することによって前記吸気ロッカアームの前記回動支点を移動させる第2吸気カムと、当該第2吸気カムの前記第1吸気カムに対する相対的な位相を変更する吸気カム位相可変機構とが設けられた、回転自在の第2吸気カムシャフトと、
    を有することを特徴とする内燃機関の吸入空気量制御装置。
  2. 前記吸気バルブタイミング可変装置は、吸気弁の最大バルブリフト量を維持したままで、吸気弁の開弁タイミングと閉弁タイミングとの間隔を変更自在に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸入空気量制御装置。
  3. 前記制御指令値算出手段は、所定の予測アルゴリズムに基づいて、前記気筒吸入空気量の予測値を算出するとともに、当該気筒吸入空気量の予測値にさらに応じて、前記制御指令値を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の吸入空気量制御装置。
  4. 前記制御指令値算出手段は、所定の応答指定型制御アルゴリズムにさらに応じて、前記制御指令値を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関の吸入空気量制御装置。
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