JP2006199972A - チョップドストランド及びそれを用いた不飽和ポリエステル樹脂bmc成形体 - Google Patents

チョップドストランド及びそれを用いた不飽和ポリエステル樹脂bmc成形体 Download PDF

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久芳 大長
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Abstract

【課題】不飽和ポリエステル樹脂をマトリックスとしてBMC成形した際、高温時においても成形体表面に気泡を生じず、しかも機械的強度にも優れるチョップドストランド及びそれを用いたランプ反射鏡用の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体を提供する。
【解決手段】集束剤を含有するチョップドストランドで、集束剤が、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、及びシランカップリング剤を含み、前記ウレタン樹脂と前記酢酸ビニル樹脂の質量比が30:70〜70:30である。不飽和ポリエスル樹脂を主体とするマトリックス樹脂100質量部に対し、このチョップドストランド30〜150質量部を含有させ、ランプ反射鏡用の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、不飽和ポリエステル樹脂BMCからなるランプ反射鏡用の成形体に用いられるチョップドストランド、及びそれを用いたランプ反射鏡用の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体に関する。
ガラス繊維は、FRPを製造するための補強用繊維として広く用いられている。工業的にはガラス繊維は、ブッシングから引き出したガラス繊維を多数集束したガラス繊維束の形態で用いられることが多いが、その製造工程(採糸工程)、取扱中の毛羽立ち、糸切れを防止して作業性を向上させ、樹脂との馴染を良好ならしめるために、シランカップリング剤及び被膜形成剤を含む集束剤が附与される。このようにして製造されたガラス繊維束(ストランド)は、乾燥されて樹脂補強用繊維として用いられる。そして、ストランドの切断物(チョップドストランド、CSと省略)と樹脂を均一に混練して、ガラス繊維を樹脂中に分散させたバルグモールディングコンパウンド(BMC)は、FRPを製造するための成形材料として使用されている。このBMC成形体は、その強度、耐熱性、寸法安定性等の利点より各種用途に広く使用されている。
このなかでも特に、自動車等に装備するヘッドランプの反射鏡に用いる成形品としては、使用時にランプから発生する高熱に耐える必要があることから熱硬化性樹脂が用いられ、マトリックス樹脂として不飽和ポリエステルを主体として使用した不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体が従来から使用されている。
このような不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体として、例えば、特開平5−293823号公報においては、BMC成形法によって作製される成形体の優れた特性を保持したまま、高い強度を有するBMC成形体として、表面に集束剤が塗布されたガラスフィラメント群を集束してガラスストランドとした後、切断することによって得られるガラスチョップドストランドが強化材として用いられてなるBMC成形体において、ガラスフィラメントの全本数に対し、未解繊ガラスチョップドストランドを構成するガラスフィラメントの本数が0.1%以上であることを特徴とし、好ましくは集束剤のスチレン溶解度が40%以下であり、かつ不飽和ポリエステル樹脂の含浸時間が10分以内であるBMC成形体が開示されている。
特開平5−293823号公報
しかし、上記のようなランプの反射鏡面等としてBMC成形体を使用する場合には、成形後のBMC成形体表面にプライマーを塗布後、反射膜として金属蒸着が施される。このため、成形体表面にプライマーを塗布した後に、レベリング及び加熱硬化させることが必要となり、成形体は100℃以上の高温に曝されることになるため、このような高温下においても優れた平滑性が保たれることが要求される。
ところがプライマー塗布後にBMC成形体を加熱すると、成形体中に内在する気泡が、加熱による温度上昇により膨張して成形体表面に移行するため表面外観に欠陥が生じることがあった。すなわち、成形体表面に気泡が生じた場合、この気泡によってプライマー塗膜が押上げられ、これが気泡状の欠陥となって外観不良となり、蒸着工程の歩留まりを低下させるという問題を有していた。
この気泡は、マトリックス樹脂とCSとの間に含有する空気に由来するものであり、CSへのマトリックス樹脂の含浸性の程度や、CSを集束するための集束剤の性質によって以下のような機構で発生するものと考えられる。
まず、CSの集束剤成分が剛直な場合、マトリックス樹脂がCS内部まで浸透せず、CS内部のフィラメントとマトリックス樹脂の濡れ特性が十分確保されない。そのため、フィラメントとマトリックス樹脂の界面に空気層が存在し、加熱処理したときに気泡として現れる。
このような剛直な集束剤としては、例えば、ウレタン樹脂が挙げられる。マトリックス樹脂が不飽和ポリエステル樹脂の場合、代表的な架橋剤としてはスチレンモノマーが通常用いられるが、このスチレンモノマーに対してウレタン樹脂は比較的溶解しにくい。したがって、集束剤として剛直になり易く、気泡を内在し易くなる。
したがって、前記の特開平5−293823号公報のBMC成形体においては、未解繊ガラスチョップドストランドを構成するガラスフィラメントの本数を0.1%以上とし、集束剤のスチレン溶解度が40%以下とすることによって強度は向上できるのものの、集束剤の溶解が不十分のためにCS内部のフィラメントとマトリックス樹脂の濡れ特性が十分確保されず、気泡の内在が避けられないという問題がある。
一方、CSとマトリックス樹脂の濡れ性(含浸性)を向上させるため、CSの集束剤成分を軟質化すると、マトリックス樹脂との混練時にCSがほぐれ、モノフィラメント化する。このモノフィラメント化によって、混練物の体積が膨張し、フィラメントの間に空気を巻き込む。この材料中に巻き込まれた空気が、成形時にも完全に脱泡できず、成形品中に残存し、気泡状の欠陥を発生させる。
また、強度的な問題において、CSの濡れ特性が良好になると曲げ強度は向上するものの、衝撃強さの低下が観察されるという問題も生じる。
このような軟質の集束剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂が挙げられる。酢酸ビニル樹脂は、スチレンモノマーに対して溶解性が高いために、CSとマトリックス樹脂の濡れ性が向上するが、上記の現象によってやはり気泡は発生し易くなり、また、衝撃強度が低下してしまう。
以上の点から、マトリックス樹脂として不飽和ポリエステル樹脂を主体としたBMC成形材料において、機械的強さを維持しながら気泡を内在させないようにするためには、CSの集束剤として、CS中の各フィラメントとマトリックス樹脂の濡れ性を適度に有し、かつ、BMC混練時にモノフィラメント化による体積膨張がない良好な集束性が要求される。しかしながら、従来用いられている集束剤においては両者を同時に満足させることは不可能であった。
したがって、本発明の目的は、不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体が、高温時においても成形体表面に気泡を生じず、しかも衝撃強度に優れた特性を得るために、不飽和ポリエステルを主体としたマトリックス樹脂に対し、適当な濡れ性と良好な集束性を有する、不飽和ポリエステル樹脂BMCからなるランプ反射鏡用の成形体に用いられるCS、及びそれを用いたランプ反射鏡用の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明のチョップドストランドは、不飽和ポリエステル樹脂BMCからなるランプ反射鏡用の成形体に用いられる、ガラス繊維束に集束剤を含浸させたチョップドストランドであって、前記集束剤が、(1)ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの少なくとも1種を含むイソシアネート成分と、ポリブチレンアジペート若しくはポリヘキサメチレンアジペートからなるポリエステルポリオール、又はポリオキシプロピレンポリオール若しくはポリオキシブチレンポリオールからなるポリエーテルポリオールの少なくとも一種を含むポリオール成分とを主体としたウレタン樹脂、(2)酢酸ビニル樹脂、及び(3)シランカップリング剤を含み、前記ウレタン樹脂と前記酢酸ビニル樹脂の質量比が、30:70〜70:30であることを特徴とする。
これによれば、集束剤としてウレタン樹脂と酢酸ビニル樹脂を所定の割合で有しているので、CS中の各フィラメントとマトリックス樹脂との濡れ性が適度に得られ、かつ、BMC混練時にモノフィラメント化による体積膨張も同時に防止できる。このため、不飽和ポリエステル樹脂をマトリックスとして得られるBMC成形体の高温時における成形体表面への気泡発生を防止できる。また、CS中の各フィラメントとマトリックス樹脂との濡れ性が適度になるので、衝撃強度に優れたBMC成形品を得ることができる。更には、ウレタン樹脂として、上記のイソシアネート成分及びポリオール成分を有するウレタン樹脂を用いているので、ウレタン樹脂の剛直性が緩和されており、スチレンモノマーによって適度に膨潤するので、各フィラメントとマトリックス樹脂との濡れ性が適度に得られ、かつ、CSの過剰な解繊を防ぐので、混練時の気泡の内在を防止できる。
また、本発明のチョップドストランドの好ましい態様としては、前記シランカップリング剤が、アミノ系及び/又はアクリル系である。これにより、CSとマトリックス樹脂との密着性が向上するので気泡の含有を有効に防止できる。
一方、本発明のランプ反射鏡用の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体は、不飽和ポリエスル樹脂を主体とするマトリックス樹脂100質量部に対して、請求項1又は2に記載のチョップドストランド30〜150質量部を含有する不飽和ポリエステル樹脂BMCを、射出成形することによって得られたものであることを特徴とする。
この成形体は、成形後に高温に曝されても成形体表面に気泡を生じることがないので、ランプ反射鏡のような蒸着のための平滑面が要求される成形体として特に好適である。
本発明のCSを用いることにより、不飽和ポリエステル樹脂をマトリックスとするBMC成形体とした際に、高温時においても成形体表面に気泡を生じず、しかも機械的強度にも優れる成形体を得ることができる。したがって、成形後に高温に曝されるランプ反射鏡用の成形体として好適に用いることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の集束剤を含有するCSについて説明する。
本発明のCSは、集束剤として、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、及びシランカップリング剤を含有し、前記ウレタン樹脂と前記酢酸ビニル樹脂の質量比が、30:70〜70:30であるガラスチョップドストランドである。
ガラス繊維としては、従来公知のものが使用でき、ガラス組成としては、Aガラス、Eガラス、ECRガラス、Sガラス、ARガラス等を例示することができるが、コストが安く、汎用されているEガラス組成のガラス繊維を用いることが特に好ましい。
ウレタン樹脂としては、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの少なくとも1種を含むイソシアネート成分と、ポリブチレンアジペート若しくはポリヘキサメチレンアジペートからなるポリエステルポリオール、又はポリオキシプロピレンポリオール若しくはポリオキシブチレンポリオールからなるポリエーテルポリオールの少なくとも一種を含むポリオール成分とを主体としたものが用いられる。
また、酢酸ビニル樹脂としては、従来公知のものが用いられ、特に限定されないが、架橋タイプのものはスチレン溶解性が低いために好ましく用いられる。中でもシラノール基を含有した架橋タイプの酢酸ビニル樹脂は、スチレンモノマーへの溶解性が低く、膨潤性を有するために特に好ましく採用される。
本発明の集束剤は、このウレタン樹脂と酢酸ビニル樹脂を質量比で、30:70〜70:30の範囲で含有することを必須とし、更に40:60〜60:40であることが好ましい。これにより、CS中の各フィラメントとマトリックス樹脂の濡れ性を適度に有し、かつ、BMC混練時にモノフィラメント化による体積膨張も同時に防止できる。
ウレタン樹脂の量が30%未満又は酢酸ビニル樹脂の量が70%より多い場合には、CSの集束剤成分が軟質化し、マトリックス樹脂との混練時にCSがほぐれ、モノフィラメント化して混練物の体積が膨張し、フィラメントの間に空気を巻き込んでしまうので好ましくなく、また、ウレタン樹脂の量が70%より多いか又は酢酸ビニル樹脂の量が30%未満の場合には、集束剤成分が剛直となり、マトリックス樹脂がCS内部まで浸透せず、CS内部のフィラメントとマトリックス樹脂の濡れ特性が十分確保されず、フィラメントとマトリックス樹脂の界面に空気層が存在しやすくなるので好ましくない。また、ウレタン樹脂と酢酸ビニルを合わせた集束剤の付与量は、ガラス繊維100質量部に対して0.2〜2.0質量部が好ましい。
このように、本発明によれば、不飽和ポリエステル樹脂の架橋剤であるスチレンモノマーに対して溶解性のある酢酸ビニル樹脂と、スチレンモノマーに対する溶解性がなく膨潤するウレタン樹脂を所定量混合することにより、CS中の各フィラメントとマトリックス樹脂の濡れ性が適度に得られ、かつ、BMC混練時にモノフィラメント化による体積膨張も同時に防止できるので、不飽和ポリエステル樹脂をマトリックスとして得られるBMC成形体の高温時における成形体表面への気泡発生を防止することができる。
更に、本発明の集束剤は、シランカップリング剤を含有する。シランカップリング剤としては特に限定されず、メトキシ基及びエトキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種のアルコキシ基と、アミノ基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、イソシアネート基よりなる群から選択される少なくとも一種の反応性官能基を有するシランカップリング剤が例示できるが、なかでも、アミノ基を有するアミノ系のカップリング剤又はアクリル基を有するアクリル系のカップリング剤が好ましく、両者を同時に用いることが更に好ましい。また、カップリング剤の添加量は集束剤100質量部に対して0.1〜1.0質量部が好ましい。
次に上記集束剤の有する溶解度及び膨潤度について説明する。本発明においては集束剤が以下の試験物性を有することにより、CS中の各フィラメントとマトリックス樹脂の濡れ性が適度に得られ、かつ、BMC混練時にモノフィラメント化による体積膨張も防止できる。
まず、本発明の集束剤は、溶解度試験において、前記集束剤のスチレンモノマーへの60分間浸漬後の、浸漬前の集束剤の質量に対する割合が3〜25%であることが好ましい。
ここで、本発明における溶解度試験とは、不飽和ポリエステル樹脂の架橋剤であるスチレンモノマーに対する溶解度を意味し、これは、CSのマトリックス樹脂への濡れ性に影響するものである。具体的には、ポリエチレン製容器にCS50gとスチレンモノマー100gを仕込み、60分間常温で放置して取出した後の付着量が、初期の付着量に比べて減じた割合によって得られる数値を意味する。
上記割合が3%未満では、樹脂への含浸が不十分となり、BMC成形品の曲げ強さが低く、また、未含浸部分へ空気が介在する可能性が高くなるため好ましくなく、25%を超えると、樹脂への含浸が過剰となり衝撃強さが低くなるので好ましくない。
また、本発明の集束剤は、膨張度試験において、前記集束剤の縦横比4:1角の被膜のスチレンモノマーへの60分間浸漬後の、被膜の長さ方向の浸漬前の長さに対する割合が1.5〜2.5倍であることが好ましい。
ここで、本発明における膨張度試験とは、不飽和ポリエステル樹脂の架橋剤であるスチレンモノマーに対する膨潤度を意味し、これは、CSをマトリックス樹脂と混練した際のばらけ難さに影響するものである。具体的には、集束剤を平らな板にキャストして厚さ0.1mm、幅10mm、長さ40mmの短冊状の皮膜を作製し、該皮膜を乾燥機に120℃で1時間静置して水分を完全に除去した後、スチレンモノマー50g中へ60分間常温で浸漬した後、長さ方向に膨潤した割合によって得られる数値を意味する。
上記割合が1.5未満では、成形品の曲げ強さが劣り、また未含浸部分へ空気が介在する可能性が高くなるため好ましくなく、2.5を超えると、成形品の衝撃強さが劣り好ましくない。
本発明の集束剤は、従来公知の方法により、ブッシングから引き出した好ましくは直径6〜23μmのガラス繊維を多数集束する際に付与される。こうして得られたガラスストランドを適度な長さに切断することにより、CSを得ることができる。CSの長さは特に限定されないが、好ましくは1.5〜25mmの範囲である。
次に、上記CSの集束性試験について説明する。本発明においては集束剤を含有するCSが以下の試験物性を有することが好ましく、これにより、成形後にも気泡を含有せず、しかも優れた機械物性を得ることができる。
まず、本発明の集束剤を含有するチョップドストランドの集束性試験において、前記チョップドストランドをアセトン浸漬して250秒間撹拌した後の、浸漬前に対する体積増加割合が30%以下であることが好ましい。
ここで、本発明におけるアセトン浸漬による集束性試験とは、CSのアセトン中における嵩高さを測定することにより、CSの集束性を測定し、これにより、CSのマトリックス樹脂への混練時の空気の含有し易さを定量化するものである。具体的には、アセトン200ccにCS20gを投入し、シェーカーで250秒間撹拌して前後のCSの体積を測定したときの、体積増加割合を意味する。
体積増加割合が30%を超えると、樹脂との混練中にCSがモノフィラメント化して気泡を巻き込むため好ましくない。
また、本発明の集束剤を含有するチョップドストランドの集束性試験において、前記チョップドストランドをスチールボールにてペイントシェーカーにより5分間撹拌した後の、目開き4mmのふるいに残った毛羽の質量が投入した前記チョップドストランド量に対して1%以下であることが好ましい。
本発明においては、ペイントシェーカーによる集束性試験によってもCSの集束性を測定し、これにより、CSのマトリックス樹脂への混練時の空気の含有し易さを定量化することができる。ここで、本発明におけるペイントシェーカーによる集束性試験とは、CS500gを容量980cmの円筒容器に入れ、更に45g/個のスチールボール5個を加えて5分間高速攪拌した後、目開き4mmのふるいに残った毛羽の質量割合を意味する。
上記毛羽の質量が1%を超えると、製品搬送中に毛羽が発生して配管内で毛羽詰まりが発生し、また、CSが解繊しやすくなるために、樹脂と混練しても解繊しやすくなるので好ましくない。
次に、上記のCSを用いてBMC成形された、不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体について説明する。
本発明の不飽和ポリエステルBMC成形体には、マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエステルの硬化時の架橋剤として1分子中に2重結合を有する重合性単量体、並びに、不飽和ポリエステル硬化時の収縮を抑制する目的の熱可塑性樹脂から構成される。不飽和ポリエステル樹脂としては、不飽和ポリエステル硬化時の成形品のTg(ガラス転移温度)が150℃以上でああり、好ましくは160℃以上である。
重合性単量体としては、スチレンモノマー、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、パラメチルスチレン、ジアリルフタレート、およびジアリルイソフタレート等があげることができ、これらの重合性単量体を1種あるいは2種以上を混合した形で使用することができる。
熱可塑性樹脂は、スチレン系共重合体、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル系共重合体、変性ABS樹脂、ポリカプロラクトン、変性ポリウレタン等を挙げることができる。特に、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル共重合体の如きアクリル系樹脂(共重合体を含む)、ポリ酢酸ビニル、スチレン−酢酸ビニル共重合体の如き酢酸ビニル系樹脂(共重合体含む)が、分散性、低収縮性、剛性の点で好ましい。
上記のマトリックス樹脂の構成比は、マトリックス樹脂100質量部中、不飽和ポリエステル30〜60質量部、重合単量体25〜60質量部、熱可塑性樹脂8〜35質量部が好ましく、より好ましくは、不飽和ポリエステル35〜50質量部、重合単量体37〜50質量部、熱可塑性樹脂10〜25質量部である。
本発明の不飽和ポリエステルBMC成形体のCSとマトリックス樹脂の割合は、マトリックス樹脂100質量部に対し、CSが30〜150質量部を含有することが好ましい。
CSの量が30質量部未満の場合には、繊維強化が不十分で機械強度が低下するので好ましくなく、150質量部を超えると、マトリックス樹脂に未含浸のCSが存在してBMC材料中に空気の巻き込みが多くなり、BMC成形品の表面性の低下、プライマー処理時の発泡及び、流動性が低下してBMC成形適性が低下するので好ましくない。
なお本発明の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体には、不飽和ポリエステル樹脂の硬化反応を開始せる硬化触媒を適宜に用いることができる。硬化触媒としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2エチルヘキサノエート、t−ブチル−パーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物が好ましく用いられる。硬化触媒の添加量は、マトリックス樹脂100質量部に対し0.5〜5.0質量部が好ましく、より好ましくは、1.0〜4.0質量部の量で用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂BMC成形体には、本分野で公知の種々の無機充填材を添加することができる。例えば、炭酸カルシウム、マイカ、タルク、グラファイト、カーボンブラック、アスベスト、水酸化アルミニウム等が挙げられる。特に平均粒径が0.2〜20μmの炭酸カルシウムをマトリックス樹脂100質量部に対し、230〜380質量部配合することが好ましい。これによって、ポリエステル樹脂BMC成形体得るために射出成形を実施するのに必要な適度な流動性を確保することができる。
また、本発明のポリエステル樹脂BMC成形体には、低収縮性の成形物を金型から容易に脱型するために、内部離型剤を使用することができる。例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩が好ましく用いられる。その添加量は、好ましくはマトリックス樹脂100質量部に対し、2〜10質量部、より好ましくは、3〜8質量部である。2質量部以上であれば、成形物にクラック等発生することなく成形時に安定した脱型を行うことができ、また、10質量部以下であれば、成形体表面にプライマー塗装を容易に実施でき、塗装のレベリング性、密着性も十分確保することができる。
更に、本発明のポリエステル樹脂BMC成形体には、更に、必要に応じて顔料及び酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の増粘剤を含有することができる。
本発明の不飽和ポリエステルBMC成形体の成形方法としては、射出成形、トランスファー成形、射出圧縮成形等を用いることができる。
上記の射出成形で得られた不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体は、JIS−K6911に規定する曲げ強度及びアイゾット衝撃強度試験において、曲げ強度が65MPa以上で、かつ、ノッチ付きのアイゾット衝撃強度が60J/m以上であることが好ましい。これにより、気泡発生防止のみならず、曲げ強度、衝撃強度の機械物性に優れる成形体を得ることができるので、自動車等のランプ反射鏡に代表されるような、振動の激しい部分においても本発明の成形体を好適に使用することができる。
そして、上記の成形体は膨れ試験において、成形体表面にプライマー塗装後、180℃の雰囲気下で60分間加熱したときに、成形体表面における膨れ数が0個であることが好ましい。
ここで、本発明において膨れ試験とは、成形体表面にプライマーであるアクリル系又はポリブタジエン系の塗料をスプレーコートによって10〜20μmで塗布した後に、180℃で60分間硬化させたときの、成形体表面900cmあたりの気泡状の外観不良の発生数を意味し、これを膨れ数とするものである。
この膨れ数が0個であることにより、前述のランプ反射鏡に用いても十分な気泡発生防止効果を有するBMC成形体を得ることができる。
このようにして得られた本発明の成形品は、各種用途に用いることができるが、上述のように成形後に高温に曝された場合においても気泡が発生せず、成形体にプライマーが塗布された場合にも表面の平滑性が維持できるので、特に自動車等のランプ反射鏡用の成形体として用いられる。
以下に、本発明を実施例によって更に詳細に説明する。
実施例1
酢酸ビニル樹脂3.4質量部、イソシアネート成分がジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ポリオール成分がポリヘキサメチレンアジペート(PHA)であるウレタン樹脂3.4質量部、アミノ系シランカップリング剤0.2質量部、アクリル系シランカップリング剤0.2質量部からなる集束剤を調製した。
次に、常法によりブッシングから引き出された直径13μmのガラス繊維に上記の集束剤を付与しながらガラス繊維1000本を集束してガラスストランドとし、このガラスストランドを切断して、長さ6mmの、実施例1のCSを得た。
更に、このCS90質量部を用い、不飽和ポリエステル38質量部、熱可塑性樹脂(ポリメタクリル酸メチル系樹脂)16質量部、スチレンモノマー46質量部、内部離型剤(ステアリン酸亜鉛)6質量部、増粘剤(酸化マグネシウム)0.4質量部、触媒(t−ブチルパーオキシベンゾエート)3部、無機充填材(平均粒子径5μmの炭酸カルシウム)260部の原材料と常法にしたがって混練し、射出成形法によって、実施例の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体を製造した。
実施例2
ウレタン樹脂成分のうち、イソシアネート成分をトリレンジイソシアネート、ポリオール成分をポリオキシプロピレングリコールとした以外は実施例1と同じ条件として、実施例2のCSを得た。また、このCSを実施例1と同様の条件でBMC成形し、実施例2のBMC成形体を得た。
実施例3
酢酸ビニル樹脂4.4質量部、ウレタン樹脂2.4質量部とした以外は実施例1と同じ条件として、実施例3のCSを得た。また、このCSを実施例1と同様の条件でBMC成形し、実施例3のBMC成形体を得た。
実施例4
酢酸ビニル樹脂2.4質量部、ウレタン樹脂4.4質量部とした以外は実施例1と同じ条件として、実施例4のCSを得た。また、このCSを実施例1と同様の条件でBMC成形し、実施例4のBMC成形体を得た。
比較例1
ウレタン樹脂のうち、イソシアネート成分をキシレンジイソシアネート、ポリオール成分をポリカーボネートポリオールとした以外は実施例1と同じ条件として、比較例1のCSを得た。また、このCSを実施例1と同様の条件でBMC成形し、比較例1のBMC成形体を得た。
比較例2
実施例1の集束剤において、酢酸ビニル樹脂を使用せずに、ウレタン樹脂を6.8質量部とした以外は、実施例1と同様の条件として、比較例2のCSを得た。また、このCSを実施例1と同様の条件でBMC成形し、比較例2のBMC成形体を得た。
比較例3
実施例1の集束剤において、ウレタン樹脂を使用せずに、酢酸ビニル樹脂を6.8質量部とした以外は、実施例1と同様の条件として、比較例3のCSを得た。また、このCSを実施例1と同様の条件でBMC成形し、比較例3のBMC成形体を得た。
比較例4
実施例1の集束剤において、酢酸ビニル樹脂1.4質量部、ウレタン樹脂5.4質量部(酢酸ビニル:ウレタン樹脂=2:8)とした以外は、実施例1と同様の条件として、比較例4のCSを得た。また、このCSを実施例1と同様の条件でBMC成形し、比較例4のBMC成形体を得た。
比較例5
実施例1の集束剤において、酢酸ビニル樹脂5.4質量部、ウレタン樹脂1.4質量部(酢酸ビニル:ウレタン樹脂=8:2)とした以外は、実施例1と同様の条件として、比較例5のCSを得た。また、このCSを実施例1と同様の条件でBMC成形し、比較例5のBMC成形体を得た。
比較例6
実施例1のCS28質量部を用い、不飽和ポリエステル38質量部、熱可塑性樹脂(ポリメタクリル酸メチル系樹脂)16質量部、スチレンモノマー46質量部、内部離型剤(ステアリン酸亜鉛)6質量部、増粘剤(酸化マグネシウム)0.4質量部、触媒(t−ブチルパーオキシベンゾエート)3部、無機充填材(平均粒子径5μmの炭酸カルシウム)260部の原材料と常法にしたがって混練し、射出成形法によって、比較例6の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体を得た。
比較例7
実施例1のCS155質量部を用い、不飽和ポリエステル38質量部、熱可塑性樹脂(ポリメタクリル酸メチル系樹脂)16質量部、スチレンモノマー46質量部、内部離型剤(ステアリン酸亜鉛)6質量部、増粘剤(酸化マグネシウム)0.4質量部、触媒(t−ブチルパーオキシベンゾエート)3部、無機充填材(平均粒子径5μmの炭酸カルシウム)260部の原材料と常法にしたがって混練し、射出成形法によって、比較例7の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体を得た。
試験例1
実施例1〜4及び比較例1〜5によって得られたCS及び集束剤について、アセトン集束性、ペイントシェーカー集束性、溶解度、膨張度の各項目について、前記の測定方法によって測定し、CSの集束性等を評価した。その結果をまとめて表1に示す。
Figure 2006199972
表1の結果より、実施例1〜4、比較例1については、いずれの評価項目についても本発明に規定する好ましい範囲内であった。これに対し、比較例2においては溶解度が1%と低かった。また、比較例3においては、すべての評価項目について本発明に規定する好ましい範囲外であり、比較例4、5においてはペイントシェーカー集束性及び溶解度が本発明に規定する好ましい範囲外であった。
試験例2
実施例1〜4及び比較例1〜7のBMC成形体を用いて試験片を作成し、JIS−K6911の試験法に従って、曲げ強度及びノッチ付の衝撃強度を測定した。また、900cm2の平板10枚を射出成形により成形し、プライマー塗料であるアクリル系塗料を15μm塗布した後に180℃で60分間硬化させ、アルミ蒸着を施した後の外観欠点数を膨れ数として測定し、膨れ試験による表面平滑性を評価した。その結果をまとめて表2に示す。
Figure 2006199972
表2の結果より、実施例1〜4では気泡が発生せず、表面平滑性に優れるのに対し、比較例2〜5及び比較例7では表面平滑性が劣ることがわかる。また、実施例1〜4に比べて比較例1、2、4では曲げ強さが劣り、比較例3、5、6においては衝撃強さが劣り、十分な機械的強度を有する成形体を得ることができないことがわかる。

Claims (3)

  1. 不飽和ポリエステル樹脂BMCからなるランプ反射鏡用の成形体に用いられる、ガラス繊維束に集束剤を含浸させたチョップドストランドであって、
    前記集束剤が、(1)ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの少なくとも1種を含むイソシアネート成分と、ポリブチレンアジペート若しくはポリヘキサメチレンアジペートからなるポリエステルポリオール、又はポリオキシプロピレンポリオール若しくはポリオキシブチレンポリオールからなるポリエーテルポリオールの少なくとも一種を含むポリオール成分とを主体としたウレタン樹脂、(2)酢酸ビニル樹脂、及び(3)シランカップリング剤を含み、
    前記ウレタン樹脂と前記酢酸ビニル樹脂の質量比が、30:70〜70:30であることを特徴とするチョップドストランド。
  2. 前記シランカップリング剤が、アミノ系及び/又はアクリル系である、請求項1に記載のチョップドストランド。
  3. 不飽和ポリエスル樹脂を主体とするマトリックス樹脂100質量部に対して、請求項1又は2に記載のチョップドストランド30〜150質量部を含有する不飽和ポリエステル樹脂BMCを、射出成形することによって得られたものであることを特徴とするランプ反射鏡用の不飽和ポリエステル樹脂BMC成形体。
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