JP2006199860A - キサンテン系化合物および着色液 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、着色剤等として有用な新規なキサンテン系化合物およびそれを含む着色液に関する。
キサンテン系化合物は、その合成の容易さや、優れた発色性のため色素として重要な化合物であり、古くから極めて広範囲の分野で使用されてきた。その中でも特にマゼンタ系の色素としては、着色力、色純度においてこれらの化合物に勝るものは未だになく、現在に於いても鮮やかな色を要求する用途では必須の化合物となっている。
しかしながらキサンテン系化合物は、他の構造の色素にくらべると相対的に耐光性などの堅牢性が劣ることも分かっている。堅牢性が劣るためインクの着色剤として使用した場合、変色や消色の原因となり、この欠点を補うために堅牢性を向上させるような材料を併用するなどの試みが多数提案されている(特許文献1〜4)。
特開平3−267140号公報
特開平7−97540号公報
特開平7−102200号公報
特開平11−209668号公報
堅牢性の向上の為には上述したようにインクなどの組成物中に欠点をカバーするような添加剤を加えることで一応の解決は見られるものの、満足できる効果を得るためには色素に対して相当量の添加剤を必要とするという問題がある。これは例えばインクの様に含有される着色剤や添加剤は常に激しく運動している液状物とは異なり、紙の様なメディア上での堅牢性を考える場合、色素と添加剤がメディア上で固定されるために色素への外的なアタックを添加剤が効率的に防御できず、またたとえ色素が外的なアタックを受けたとしても添加剤がそのエネルギーを速やかにクエンチする事ができないという問題に基づくものと考えられる。
上記課題に対して本発明者は鋭意研究の結果、添加剤を色素のごく近傍に配置、つまり共有結合などの化学結合で繋いでしまえば効果的にそして効率的に外的要因から色素を保護できると考え、新たなキサンテン系化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明によれば、下記一般式(I)で示される構造を有するキサンテン系化合物が提供される。
上記式(I)中、R1は炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基を表し、R2はHまたは炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルキル基または炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルコキシル基を表し、MはH、アルカリ金属またはNH4を表す。
また本発明によれば、上記キサンテン系化合物を含むこ着色液が提供される。
本発明によれば、高発色でありながらも堅牢性を飛躍的に高めることが可能となった。
着色液の色材成分として使用することで当該着色液による着色物の耐変色性を飛躍的に高めることが可能となった。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において下記一般式(I)で示されるキサンテン系化合物の具体例としては例えば以下の化合物(I−1)〜(I−7)が挙げられるがもちろんこれらに限定されるものではない:
(式中、R1は炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基を表し、R2はHまたは炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルキル基または炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルコキシル基を表し、MはH、アルカリ金属またはNH4を表す)。
本発明に係るキサンテン系化合物は、従来の方法を組み合わせることで合成することができる。すなわち下記反応式に示すように、一般式(II)で表されるキサンテン系化合物に一般式(III)で表されるベンゾフェノン系化合物をカップリングすることで合成することができる。
上記式中、R1は炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基を表し、R2はHまたは炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルキル基または炭素数1〜4の直鎖または分岐状のアルコキシル基を表し、M、M1は各々独立してH、アルカリ金属またはNH4を表す。
前記一般式(I)、(III)においてR1で示される置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。また、上記一般式(II)、(III)において、R2で示される置換基の具体例としては、H(水素原子)、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。さらに一般式(I)、(II)、(III)においてM、M1で示されるアルカリ金属の具体例としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
本発明に係るキサンテン系化合物を合成する際、原料となる一般式(II)で表されるキサンテン系化合物を一旦、酸クロリド体などの活性体にすることでスムーズに反応が進行する。ここで使用する化合物としては塩化チオニル、オキシ塩化リン、クロロスルホン酸等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。酸クロリド体を経由して合成する際の酸クロリド化時の反応溶媒としては、一般式(II)で表されるキサンテン系化合物にとって良溶媒であれば何れでも良く、また、塩化チオニルやクロロスルホン酸等を溶剤を兼ねて使用することも可能である。これらは各々単独で使用しても、2種以上適宜組み合わせて用いても何れにても良い。更にカップリングの際に用いられる反応溶媒としては、得られた酸クロリド体と一般式(III)で表されるベンゾフェノン系化合物の双方にとって良溶媒であれば何れでも良い。
また別法として、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの縮合剤を用いて直接カップリングさせるなどの方法を用いても良い。その場合は、一般式(II)で表されるキサンテン系化合物と一般式(III)で表されるベンゾフェノン系化合物と縮合剤が均一に溶解する様な溶剤を適宜選択して使用すればよい。
本発明に係るキサンテン系化合物を合成する際の一般式(II)で表されるキサンテン系化合物と一般式(III)で表されるベンゾフェノン系化合物の使用量としては、特に限定されないが一般式(II)で表されるキサンテン系化合物に対して一般式(III)で表されるベンゾフェノン系化合物を通常1〜5当量、好ましくは1〜2当量用いればよい。さらに反応温度としては、特に限定されないが、酸クロリド体を経由する合成法の場合の酸クロリド化の反応温度として、過度の高温で行うと一般式(II)で表されるキサンテン系化合物の分解が促進される恐れがあり、また低温では酸クロリド化反応に時間がかかるため通常20〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲から適宜選択される。続くカップリング反応は比較的マイルドな条件でも進行するために、0〜70℃の範囲から適宜選択できる。直接縮合させる合成法の場合の反応温度としては、40〜100℃の範囲から適宜選択できる。カップリングに要する反応時間は、使用する原料の反応性により異なるが、1〜24時間の範囲から適宜選択される。
尚、本発明に係るキサンテン系化合物の原料である、上記一般式(II)で表されるキサンテン系化合物と一般式(III)で表されるベンゾフェノン系化合物は、市販品を用いても、或いは製造したものを用いても何れにても良い。
また本発明のもう一つの要旨は、成分として少なくとも一般式(I)で示されるキサンテン系化合物を含む着色液である。当該着色液は、更には、例えば、水溶性有機溶剤、各種添加剤および水を主成分として含む。
本発明に係る着色液において、成分として少なくとも含まれる前述した一般式(I)で示される新規なキサンテン系化合物の含有量は、通常0.1〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%である。前述した一般式(I)で示される新規なキサンテン系化合物の含有量が0.1重量%未満では堅牢性の向上に与える寄与率が殆ど無く、20重量%を越えて配合すると、インクの粘度が急上昇するため例えばインクジェット用インクとして利用することを想定すると、インクジェットノズルからのインク吐出が困難になる可能性がある。
本発明に係る着色液に用いられる水溶性有機溶剤としては、水に対して0.1重量%以上溶解すれば良く、具体例として、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられるがもちろんこれらに限定されるものではない。これらの水溶性有機溶剤は、1種類あるいは必要に応じて2種類以上を混合して用いることもできる。
また、上述した水溶性有機溶剤の着色液中での含有量としては、着色液の1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲から適宜選択できる。
また本発明に係る着色液に用いられる各種添加剤としては、界面活性剤、分散剤、増量剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、抗菌剤、防腐剤、保湿剤等が挙げられる。またインクジェット用の着色液として利用する場合を想定して、インクジェットノズル乾燥防止の目的で、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、着色液を最適なpH値に調節するためにフタル酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウムなどの緩衝剤等、必要な物質を適宜使用しても良い。
(実施例1) 本発明のキサンテン系化合物の合成(1)
マントルヒーター、冷却塔、攪拌機、温度計を備えた2000mlの反応容器に、クロロスルホン酸500g(4.3mol)を仕込み、ここに室温下で市販のキサンテン系色素(AcId Red 289:ダイワ化成株式会社製)115g(0.17mol)を5回に分けて1時間をかけて少量ずつ添加し、しばらく攪拌し充分溶解させた。この溶液を内温が70〜75℃になるまで加熱し、その温度のまま3時間攪拌し、反応を行った。加熱を止め、自然冷却により50℃程度まで内温が下がったところで、塩化チオニル130g(1.1mol)を約1時間かけて滴下し、再び70〜75℃になるまで加熱し、3時間反応を続け、その後加熱を止め終夜放冷しそのまま撹拌を行った。
マントルヒーター、冷却塔、攪拌機、温度計を備えた2000mlの反応容器に、クロロスルホン酸500g(4.3mol)を仕込み、ここに室温下で市販のキサンテン系色素(AcId Red 289:ダイワ化成株式会社製)115g(0.17mol)を5回に分けて1時間をかけて少量ずつ添加し、しばらく攪拌し充分溶解させた。この溶液を内温が70〜75℃になるまで加熱し、その温度のまま3時間攪拌し、反応を行った。加熱を止め、自然冷却により50℃程度まで内温が下がったところで、塩化チオニル130g(1.1mol)を約1時間かけて滴下し、再び70〜75℃になるまで加熱し、3時間反応を続け、その後加熱を止め終夜放冷しそのまま撹拌を行った。
飽和食塩水300g、砕氷3.5kgからなる塩析槽に塩析槽内の温度が−5℃以下を維持するように注意して反応溶液を1時間かけて滴下しキサンテン系色素の酸クロリド体を析出させた。
この塩析槽の内容物を2号濾紙を敷いたヌッチェを用い脱液し、氷冷水で洗浄してキサンテン系色素の酸クロリド体のウエットケーキ約420g(固形分:26%)を得た。続いてアミド化をおこなう反応槽(3000ml)に、5−アミノ−サリチル酸82g(0.54mol)、トリエチルアミン54g(0.54mol)をアセトン1000mlに溶解した溶液中に、氷浴を用いて内温が5℃以下になるよう維持し、上記で得たキサンテン系色素の酸クロリド体のウエットケーキ全量を徐々に加え、全体の1/4加えたところでpHをチェックし、強酸性ならトリエチルアミンを追加してpHを4〜4.5に調節する。以下、同じように1/4加える毎にpHチェックとpH調整をおこなう。全量を加えたところで約1時間、5℃以下を維持して攪拌する。その後、氷浴を外して室温に戻し、4時間攪拌する。この時pHが低下するので30分毎にpHチェックをおこないトリエチルアミンを追加してpHを5〜6に調節する。さらにpHが低下しなくなったところで攪拌を12時間続け反応を完結させる。反応液をロータリーエバポレーターにかけて、アセトンを溜去した後、濃塩酸500ml、次いで純水1200gを加え、本発明のキサンテン系化合物を酸析させて、ヌッチェを用いて濾取した。続いて膜処理による脱塩精製をおこない、本発明のキサンテン系化合物精製品56g(収率41%)を得た。このキサンテン系化合物精製品を、TOF−MS(アプライドバイオシステムズ社:MARINER)を用い、物質の同定をおこなった。
m/z=788.179(calc.788.173)
λmax 526.5nm(ε=5.2×104)
(原料のAcId Red 289 λmax 526.5nm(ε=8.0×104))
m/z=788.179(calc.788.173)
λmax 526.5nm(ε=5.2×104)
(原料のAcId Red 289 λmax 526.5nm(ε=8.0×104))
(実施例2) 本発明のキサンテン系化合物の合成(2)
5−アミノ−サリチル酸82gの代わりに、4−アミノ−サリチル酸を使用した以外は実施例1と全く同じ操作で合成を行い、本発明のキサンテン系化合物精製品48g(収率35%)を得た。実施例1と同様にTOF−MS(アプライドバイオシステムズ社:MARINER)を用い、物質の同定をおこなった。
m/z=788.178(calc.788.173)
λmax 526.5nm(ε=5.2×104)
5−アミノ−サリチル酸82gの代わりに、4−アミノ−サリチル酸を使用した以外は実施例1と全く同じ操作で合成を行い、本発明のキサンテン系化合物精製品48g(収率35%)を得た。実施例1と同様にTOF−MS(アプライドバイオシステムズ社:MARINER)を用い、物質の同定をおこなった。
m/z=788.178(calc.788.173)
λmax 526.5nm(ε=5.2×104)
(実施例3) 着色液の作製(1)
実施例1で得られたキサンテン系化合物を色材成分とし、表1に示す組成で仕込み、撹拌溶解後、pH=7.5に調節、ポアサイズ0.2μmのメンブランで濾過して着色液を作製し、耐変色性の評価を行った。評価方法は、被記録材としてコピー用紙Canon PAPER DRY(商品名、キヤノン販売(株)製)を用い、インクジェットプリンター(BJF−8500)に本発明の着色液を搭載して、10mm×30mmのベタ模様を印字し、印字サンプルを作成した。印字サンプル作成時には印字デューティーを振りながら複数の印字サンプルを準備し、その中で光学濃度がほぼ1.0になるパターンを用いて評価に供した。
実施例1で得られたキサンテン系化合物を色材成分とし、表1に示す組成で仕込み、撹拌溶解後、pH=7.5に調節、ポアサイズ0.2μmのメンブランで濾過して着色液を作製し、耐変色性の評価を行った。評価方法は、被記録材としてコピー用紙Canon PAPER DRY(商品名、キヤノン販売(株)製)を用い、インクジェットプリンター(BJF−8500)に本発明の着色液を搭載して、10mm×30mmのベタ模様を印字し、印字サンプルを作成した。印字サンプル作成時には印字デューティーを振りながら複数の印字サンプルを準備し、その中で光学濃度がほぼ1.0になるパターンを用いて評価に供した。
尚、印字画像の安定のために、乾燥と定着に十分な時間を費やし、印字後72時間経た印字サンプルで評価を進めた。
この印字サンプルの耐変色性を評価するため、変色の促進法として二つの加速試験を行った。結果を表2に示す。
1)オゾン試験
オゾン濃度が常に0.1±0.05体積%の範囲に保たれる遮光された槽内に印字サンプルを120分間放置し、試験前後の印字サンプルの色差ΔE*abを測定
2)蛍光灯試験
照度20000〜22000ルクスの蛍光灯の光に均一に照射される耐光試験槽内に15日間暴露させ、試験前後の印字サンプルの色差ΔE*abを測定
オゾン濃度が常に0.1±0.05体積%の範囲に保たれる遮光された槽内に印字サンプルを120分間放置し、試験前後の印字サンプルの色差ΔE*abを測定
2)蛍光灯試験
照度20000〜22000ルクスの蛍光灯の光に均一に照射される耐光試験槽内に15日間暴露させ、試験前後の印字サンプルの色差ΔE*abを測定
(実施例4) 着色液の作製(2)
実施例2で得られたキサンテン系化合物を色材成分とし、表1に示す組成で着色液を作製、インクジェットプリンターに本着色液を搭載した以外は実施例3と全く同じ方法で印字サンプルを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
実施例2で得られたキサンテン系化合物を色材成分とし、表1に示す組成で着色液を作製、インクジェットプリンターに本着色液を搭載した以外は実施例3と全く同じ方法で印字サンプルを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例1) 着色液の作製(3)
表1に示す組成で着色液を作製し、インクジェットプリンターに本着色液を搭載した以外は実施例3と全く同じ方法で印字サンプルを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
表1に示す組成で着色液を作製し、インクジェットプリンターに本着色液を搭載した以外は実施例3と全く同じ方法で印字サンプルを作成し、評価を行った。結果を表2に示す。
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2005
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