JP2006168251A - 耐熱非粘着プレコート金属板及びその製造方法 - Google Patents

耐熱非粘着プレコート金属板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 PFA層にミクロ剥離等の欠陥がない耐熱非粘着塗膜を設けた耐熱非粘着プレコート金属板を提供する。
【解決手段】 塗装原板1に直接又は耐熱塗膜を介して設けられる耐熱非粘着塗膜をPES,PPS,PAI等の耐熱樹脂とPFAとの混合樹脂塗料から成膜する。耐熱樹脂層2とPFA層3との界面4を波形化することにより、耐熱樹脂層2に対するPFA層3の密着性が向上し、PFAの優れた非粘着耐久性を活かした耐熱非粘着プレコート金属板となる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、各種厨房機器の素材として使用され長期にわたり優れた耐熱非粘着性を維持するプレコート金属板及びその製造方法に関する。
耐熱性,非粘着性,耐汚染性等に優れたフッ素樹脂は、各種厨房機器の基材となる金属板と複合して使用され、パン,ケーキの焼き型,フライパン等の食品調理器,電子レンジの内板,電子制御ジャーの内釜,ガステーブル用天板等の加熱調理器具に適用されている。
フッ素樹脂はラミネートや塗装で金属板に複合化されるが、ラミネート法では厚いフッ素樹脂フィルムを使用せざるを得ず、フィルムや製造コストが高くなる。しかも、厚膜フィルムを張り合わせた製品であるため、表面が疵付きやすいことが欠点である。必要特性をもつフッ素樹脂塗膜の形成が塗装法で可能になると、ラミネート法に比較して格段に安価な厨房機器用プレコート金属板を提供できる。
本発明者等は、乳化重合法で合成したパーフルオロアルキルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体(PFA)が最密充填形態を採って連続塗膜を形成しやすいことに着目し、ポリエーテルスルホン樹脂(PES),ポリフェニルスルフィド樹脂(PPS),ポリアミドイミド樹脂(PAI)等の耐熱樹脂にPFAを配合した混合樹脂塗料から成膜した塗膜が優れた耐熱非粘着性を呈することを見出し、耐熱非粘着性に優れたプレコート鋼板を紹介している(特許文献1)。
特許第3293084号公報
本発明者等は、先に紹介した耐熱非粘着プレコート鋼板の耐熱樹脂にPESを使用した系において、塗膜物性がプレコート鋼板の特性に及ぼす影響について更に調査・検討を進めた。PFA/PESの混合樹脂から成膜された塗膜は、耐熱非粘着性に有効なPFA層が塗膜表層に形成されるが、PFA層の部分的な脱落が散見され、PFA層が脱落した部分で塗膜のPFA/PES界面がフラットになっていた。
本発明は、PFA/PES界面がフラットになっている部分でPFA層の脱落が散見される知見をベースに、波形状の界面を作り込むことにより、下層耐熱樹脂層に対するPFA層の密着性を高め、非粘着耐久性を一層改善した耐熱非粘着プレコート金属板を提供することを目的とする。
本発明の耐熱非粘着プレコート金属板は、PES,PPS,PAIから選ばれた耐熱樹脂にPFAを配合した樹脂塗料から成膜された耐熱非粘着塗膜が金属板表面に形成されており、塗膜表層にPFAの連続塗膜があり、下層耐熱樹脂と上層PFAの界面が波形状になっていることを特徴とする。
PFAとしてはミセル内の重合反応(乳化重合)で合成された樹脂が使用され、平均粒径0.05〜1μmのPFA粒子が好ましい。下層耐熱樹脂と上層PFAの界面は、部分的に盛り上がった耐熱樹脂の隙間に上層PFAが入り込んだ形状になっており、原板表面上の直線長さに対する界面長さの比(波形比)が110〜300%の範囲にあることが好ましい。
下層耐熱樹脂と上層PFAの界面は、塗装原板に塗布した樹脂塗料を焼き付ける際の入熱量を調整することにより波形状に作りこまれる。具体的には、400℃を超える高温域での板温Tと400℃との温度差ΔT(T−400)の加熱時間t(秒)に関する積分値∫ΔTdtを入熱総量と定義し、入熱総量が20℃・秒以上となるように焼付け温度を管理することにより、部分的に隆起した下層耐熱樹脂の隙間にPFAが入り組んだ界面が形成される。
本発明に従った耐熱非粘着塗膜は、PES,PPS,PAI等の耐熱樹脂に配合する四フッ素樹脂として、乳化重合法で合成したPFAを使用している。ミセル内でのみ重合反応が生じる乳化重合法では、球形状のPFA粒子が得られる。重合開始剤,界面活性剤濃度等の重合条件によって平均粒径を0.05〜1μmの範囲に調整するとき、適度のチクソトロピー性が付与され、塗装原板に塗布した状態で最密充填形態を採るPFA粒子が得られる。因みに、懸濁重合法で合成したPFA粒子は異型粒子であり最密充填され難い。
PES,PPS,PAI等の耐熱樹脂に乳化重合法で合成したPFAを配合した樹脂塗料を塗装原板に塗布すると、PFAが塗膜表層に移行し最密充填形態を採る。この状態で加熱すると、PFAの溶融流動が僅かに生じるだけで、PFAが表面張力を最小化するように連続塗膜で表面を覆う。
更に加熱すると、溶融状態の耐熱樹脂とPFAとの界面では、耐熱樹脂とPFAとの相溶性が高く、熱力学的に安定した形態を採るべく耐熱樹脂,PFAの溶融粘度が低下するに伴い界面積が徐々に増大する現象が生じる。そこで、400℃を超える高温域での入熱総量を20℃・秒以上に管理することにより、耐熱樹脂/PFAの界面に界面積を増大させるウネリが生じ、直線的な界面から波形状の界面に変わる。他方、入熱総量が20℃・秒に満たないと、高粘度の耐熱樹脂,PFA間の界面積増大に必要な流動が不足し、効果的な波形状の界面が形成されない。
400℃を超える高温域における制御加熱を受けた塗膜は、塗装原板1の表面に耐熱樹脂層2が部分的に盛り上がり、耐熱樹脂層2の隙間を埋めるようにPFA層3が入り込んだ波形状の界面4を形成している(図1)。波形状界面4は、耐熱樹脂層2とPFA層3との接触面積を大きくすると共に、PFA層3にアンカー効果を付与し、耐熱樹脂層2に対するPFA層3の密着性を向上させる。
他方、400℃以下の焼付け温度や高温域での制御加熱が不十分な場合、耐熱樹脂層2とPFA層3との界面5がフラットになりやすい(図2)。フラットな界面5は、耐熱樹脂層2/PFA層3の接触面積を増加させることなく、耐熱樹脂層2に対するPFA層3のアンカー効果面も期待できない。結果として、耐熱樹脂層2とPFA層3との界面5でのミクロ剥離が懸念される。
PFA層3の耐ミクロ剥離性は、界面4の波形化が進行するほど向上する。耐ミクロ剥離性と波形化の程度との関係は、部分的に盛り上がった耐熱樹脂層2のサイズや高低差等に影響され一概に規定できないが、塗装原板1表面の直線長さに比較して耐熱樹脂層2/PFA層3の界面長さの比(波形比)を110%(好ましくは、115%)以上にすることにより耐ミクロ剥離性の向上が顕著になる。しかし、大きすぎる波形比ではPFA層が局部的に薄膜化し、却ってミクロ剥離が増加する傾向にあるので波形比の上限を300%(好ましくは、270%)にすることが好ましい。
塗膜の表層には、最密充填形態のPFA粒子から形成された連続塗膜(PFA層3)があるため、フッ素樹脂特有の耐熱非粘着性が付与される。しかも、PFA層3の耐ミクロ剥離性が改善されているので、非粘着耐久性も優れたプレコート金属板となる。
塗装原板には、亜鉛系めっき鋼板,アルミニウム系めっき鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム板,アルミニウム合金板,銅板,銅合金板等が使用される。亜鉛系めっき鋼板には、通常の亜鉛めっき鋼板の他に耐食性に優れたAl-Zn合金めっき鋼板,Zn-Al-Mg合金めっき鋼板等がある。アルミニウム系めっき鋼板には、Alめっき鋼板,Al-Si合金めっき鋼板等がある。ステンレス鋼板には、フェライト系,オーステナイト系等のステンレス鋼が使用される。
塗装原板には、必要に応じてリン酸塩処理,クロメート処理,クロムフリー処理等の塗装前処理が施される。
耐熱塗料,PFAの混合樹脂塗料を塗装原板に直接塗布・焼付けすることにより耐熱非粘着塗膜を形成することもできるが、耐熱樹脂を主成分とする着色塗料を用いて下塗り塗膜を形成するとニーズに合った色調が付与される。主成分の耐熱樹脂にはPES,PPS,PAIの少なくとも一種以上が使用され、金属板素地の隠蔽,耐熱非粘着塗膜(上塗り塗膜)との組合せで色調を付与する酸化チタン,カーボンブラック,酸化クロム,酸化鉄等の耐熱着色顔料が配合される。必要に応じ防錆顔料,体質顔料等を配合した着色顔料も使用可能であり、透明又は半透明な耐熱非粘着塗膜ではメタリック顔料の配合によって意匠性を高めることもできる。
着色塗料は、乾燥膜厚:2〜20μmの下塗り塗膜が形成される割合でロールコート法,カーテンフロー法等により塗装原板に塗布され、着色塗料に含まれる耐熱樹脂の中で最も高い樹脂の融点を超える温度で焼き付けられる。
次いで、PES,PPS,PAI等の耐熱樹脂に乳化重合法で合成したPFAを配合した混合樹脂塗料を塗布し焼き付けることにより、着色又は透明耐熱非粘着塗膜を形成する。PFAとしては、必要なチクソトロピー性を発現させる上で平均粒径0.05μm以上が好ましいが、大きすぎる平均粒径では最密充填形態での空隙が大きくなりすぎるので、平均粒径:0.05〜1μmの樹脂粒子が使用される。着色耐熱非粘着塗膜の場合、酸化チタン,カーボンブラック,酸化クロム,酸化鉄等の耐熱顔料を配合すると必要な色調が付与される。必要に応じ防錆顔料,体質顔料等を配合することもあり、鱗片状基質の分散によってメタリック調を付与することも可能である。
耐熱非粘着塗膜は、PFAの割合が高くなるほど非粘着耐久性が向上するが、PFAの増加に伴い耐熱樹脂量が減少して塗料のロールコート適性が低下し、硬度低下に起因した塗膜疵も発生し易くなる。そこで、非粘着耐久性,塗膜硬度等の塗膜特性と塗料特性とをバランスさせるため、耐熱性樹脂とPFAとの配合比を好ましくは40:60〜80:20(更に好ましくは50:50〜70:30)の範囲で選定する。
耐熱非粘着塗膜は、乾燥膜厚が2〜20μmとなるように塗装原板に塗布される。使用される塗料は、溶剤に溶解する耐熱性樹脂を含むためロールコート法で塗布できるが、溶剤に溶解しないPFAを含むためチクソトロピー性を呈する。したがって、トップフィードフルリバース方式のロールコート法による塗装が好ましい。塗布された塗料は、塗料に含まれている耐熱性樹脂及びPFAの中で最も融点の高い樹脂の融点を超える温度で焼き付けられる。
焼付け時、400℃を超える高温域での入熱総量が20℃・秒以上となるように加熱条件を設定することが重要である。高温域の入熱総量を調整することにより、耐熱樹脂層2とPFA層3との界面4が波形状になる(図1)。界面4の波形状化は入熱総量が多くなるに応じて進行し、20℃・秒以上の入熱総量で耐熱樹脂層2に対するPFA層3の密着性向上に有効な波形状界面4の形成が顕著になる。しかし、過剰な入熱総量は、耐熱樹脂とPFAとの界面波形比を著しく増大させるばかりでなく、耐熱非粘着塗膜の熱分解が懸念されるので上限を1000℃・秒とする。
印刷意匠を組み合わせた塗装では、耐熱性着色塗装(下塗り塗膜)が施された金属板に耐熱性印刷インキ層をグラビアオフセット法で印刷する。グラビアオフセット印刷にはプレコート金属板製造用の連続塗装設備を使用し、ロールコーターのアプリケーターロールをオフセットロールに置き換え、グラビアロールを配置するだけで必要な製造ラインが構築される。その結果、高価な印刷フィルムを使用する必要がなく、金属板に印刷フィルムを十分な接着性で積層するために必要で煩雑な処理が省略される。したがって、低い製造コストで印刷意匠を付けた耐熱非粘着プレコート金属板が安価かつ簡便に製造できる。
グラビアオフセット印刷に使用される耐熱性印刷インキは、PTFE,PFAの少なくとも1種以上のフッ素樹脂とアクリル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリエステル樹脂の少なくとも1種以上の水溶性又は水分散性樹脂との混合物をベースとする水性印刷インキ組成物である。印刷インキの一成分であるフッ素樹脂は顔料の分散性が悪く、フッ素樹脂単独では適正なグラビアオフセット印刷性が得られない、この点、アクリル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリエステル樹脂の少なくとも1種以上の水溶性又は水分散性樹脂を混合してインキ化することによって顔料の分散性が格段に改善され、優れたグラビアオフセット印刷適性を得ることができる。フッ素樹脂と水溶性又は水分散性樹脂との配合比は、水溶性又は水分散性樹脂の量が増加するほど耐熱性が低下するため、重量比で99:1〜95:5の範囲に調整することが好ましい。
フッ素樹脂と水溶性又は水分散性樹脂とを混合した樹脂組成物に、酸化チタン,カーボンブラック,酸化クロム,酸化鉄等の耐熱顔料を分散させ、必要に応じて顔料分散剤等の添加剤を用いてインキ化する。調製されたインキは、意匠性を考慮して通常0.5〜10μmの厚みで着色塗膜表面の一部又は全面にグラビアオフセット印刷される。印刷後に乾燥,必要に応じて焼き付け処理する。
耐熱性印刷インキ層の上に耐熱性樹脂を主成分とする透明塗膜(中塗り塗膜)が設けられる。耐熱性樹脂としては、PES,PPS,PAIの少なくとも1種以上の樹脂が使用される。透明塗膜は、耐熱性印刷インキ中のフッ素樹脂と透明耐熱非粘着塗膜(上塗り塗膜)のPFAとを隔離する作用を呈する。透明塗膜は、その上に形成される透明耐熱非粘着塗膜と相俟って、着色塗膜及びグラビアオフセット印刷による印刷意匠を外観上保護する作用も呈することから、透明であることが要求される。ただし、着色塗膜(下塗り塗膜)及び印刷柄を隠蔽しない限り、透明塗膜の塗料に種々の添加剤が必要に応じて添加される。また、塗料中に微量のアルミ粉,着色顔料等を配合することによって、着色塗膜及び印刷柄との組合せで意匠性を向上させることも可能である。
透明塗膜層は、乾燥塗膜厚さが1〜10μmとなるように塗布される。耐熱性樹脂を溶剤に溶解した塗料をロールコート法,カーテンフロー法等で塗装し、含有する耐熱性樹脂の中で最も融点の高い樹脂の融点を超える温度で焼き付ける。
透明塗膜の上面には、印刷意匠性を組み合わせない場合と同様に透明耐熱非粘着塗膜が設けられる。すなわち、PES,PPS,PAI等の耐熱樹脂の少なくとも1種以上の耐熱性樹脂と乳化重合法で調製した平均粒径0.05〜1μmのPFAとの混合物を主成分とする透明耐熱非粘着塗膜を透明塗膜に積層する。この場合にもアルミ粉等のメタリック顔料を透明耐熱非粘着塗膜に分散させ、印刷意匠性を更に向上させることもできる。
板厚0.45mmのSUS430ステンレス鋼板を脱脂した後、塗布型クロメート処理を施し、カーボンブラックを配合した耐熱着色塗料をロールコートし300℃で焼き付け、乾燥膜厚:8μmの耐熱着色塗膜(下塗り塗膜)を設けた。耐熱着色塗膜の上に表1の耐熱非粘着塗料をロールコートし焼き付けることにより、乾燥膜厚:12μmの耐熱非粘着塗膜(上塗り塗膜)を重ねた。耐熱非粘着塗料を焼き付ける際には、表2のヒートパターンを採用した。
Figure 2006168251
Figure 2006168251
次いで、耐熱非粘着塗膜の断面を顕微鏡観察し、耐熱樹脂層2とPFA層3との界面を調査した。500倍の視野で耐熱樹脂層2に最大高低差:0.4μm以上の部分隆起が検出され、その隙間にPFA層3が入り込んでいる界面を波形状界面4(図1)と判定し、部分隆起が小さく実質的に耐熱樹脂層2,PFA層3が層状に重なっている界面をフラットな界面5(図2)と判定した。また、波形状界面4,フラットな界面5を定量的に区別するため、画像処理で界面4,5の界面長さを算出し、原板表面の直線長さに対する界面長さの比(波形比)を算出した。
各耐熱非粘着プレコート鋼板から切り出した試験片を加工試験,摩耗試験に供し、耐熱非粘着塗膜の加工密着性を調査した。
加工試験では、"JIS K5400 8.1 耐屈曲性"に準拠して試験片を180度密着折り曲げ試験した後、折曲げ部に感圧接着テープを貼り付け、テープを引き剥がした。テープ剥離後に耐熱非粘着塗膜の外観を観察し、剥離が検出されなかった塗膜を○,剥離した塗膜を×として加工性を評価した。
摩耗試験では、"JIS H8582 アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐磨耗性試験方法 6.往復運動平面摩耗試験方法"に定められた往復運動平面摩耗試験機を転用し、摩耗輪に代えて回転しないように直径10mmの鋼球を取り付け、ストローク幅:50mm,50往復/分で往復運動するように調整し、試験片に鋼球を摺擦させた。鋼球に加わる荷重を2kgに設定し、摩耗回数:200回後に耐熱非粘着塗膜を観察し、脱落が生じていない塗膜を○,脱落が検出された塗膜を×として耐磨耗性を評価した。
表3の試験結果にみられるように、界面の波形比が110%以上になると、加工後の塗膜密着性に優れ、摩耗に曝されてもPFA層3がミクロ剥離し難い耐熱非粘着塗膜であった。波形比:110%以上の界面は、表2の焼付け条件から400℃を超える高温域での入熱総量を20℃・秒以上とすることにより形成することが理解される。他方、最高到達板温が400℃以下,或いは400℃を超える高温域での入熱総量が20℃・秒に達しない場合、耐熱樹脂層2とPFA層3との間にフラットな界面5(図2)が形成されやすく、加工試験後や摩耗試験後にPFA層3のミクロ剥離が散見された。
Figure 2006168251
良好な耐ミクロ剥離性を示した試験番号1〜5の耐熱非粘着プレコート鋼板について、耐熱性,非粘着耐久性を調査した。
耐熱試験では、試験片を300℃に300時間加熱した後、塗膜のフクレ有無を観察すると共に碁盤目密着試験で塗膜残存状況を調査した。
非粘着耐久性試験では、醤油/砂糖/卵=1/1/1の混合液及び牛乳を塗膜表面に0.5ml滴下し、260℃の加熱炉に1時間入れ、十分に冷却した後で塗膜表面に対する醤油/砂糖/卵=1/1/1の混合液及び牛乳の焦げつき状況を調査した。そして、醤油/砂糖/卵=1/1/1の混合液及び牛乳が焦げ付くことなく除去できる回数で非粘着耐久性を評価した。システムキッチンタイプでは、10回以上の繰返し除去が可能なことを非粘着耐久性の良好な塗膜と判定される。
表4の試験結果にみられるように、何れの耐熱非粘着プレコート鋼板も優れた耐熱性を呈し、焦げ付きなく混合液及び牛乳を除去できる回数が優に20回を超えており、非粘着耐久性に優れたPFA層の特性を維持していることが判った。
Figure 2006168251
以上に説明したように、本発明の耐熱非粘着プレコート金属板は、PES,PPS,PAI等の耐熱樹脂に乳化重合法で合成したPFAを配合した耐熱塗料から成膜された耐熱非粘着塗膜の耐熱樹脂層とPFA層との界面を波形化しているので、耐熱樹脂層に対するPFA層の密着性が向上してミクロ剥離が抑えられる。そのため、PFA層は、汚染因子の焦付きを生じさせる欠陥のない連続塗膜となり、フッ化樹脂本来の非粘着性を長期間にわたって維持する。このようにして得られた耐熱非粘着プレコート金属板は、システムキッチンタイプのガステーブル天板,食品調理器具,加熱調理器具等の厨房機器は勿論、優れた非粘着耐久性や意匠性を活用して各種内装材,ケーシング材等として広範な分野に使用される。
波形状界面をもつ耐熱非粘着塗膜の断面模式図 フラットな界面をもつ耐熱非粘着塗膜の断面模式図
符号の説明
1:塗装原板 2:耐熱樹脂層 3:PFA層 4:波形状界面 5:フラットな界面

Claims (3)

  1. 塗装原板の表面に直接又は耐熱塗膜を介して設けられる耐熱非粘着塗膜がポリエーテルスルホン樹脂,ポリフェニルスルフィド樹脂,ポリアミドイミド樹脂の少なくとも一種からなる耐熱樹脂層,乳化重合法で合成したパーフルオロアルキルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体(PFA層)の二層構成になっており、部分的に隆起した耐熱樹脂層の間にPFA層が入り込み、耐熱樹脂層,PFA層の界面が波形化していることを特徴とする耐熱非粘着プレコート金属板。
  2. 原板表面の直線長さに対する耐熱樹脂層/PFA層の界面長さの比が110〜300%の範囲にある請求項1記載の耐熱非粘着プレコート金属板。
  3. ポリエーテルスルホン樹脂,ポリフェニルスルフィド樹脂,ポリアミドイミド樹脂の少なくとも一種からなる耐熱樹脂に乳化重合法で合成したパーフルオロアルキルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体(PFA)を配合した耐熱非粘着塗料を用意し、
    塗装原板の表面に直接又は耐熱塗膜を介して耐熱非粘着塗料を塗布し、
    400℃を超える高温域での板温Tと400℃との温度差ΔT(T−400)の加熱時間t(秒)に関する積分値で定義される入熱総量が20℃・秒以上となる条件下で耐熱非粘着塗料を焼き付けることを特徴とする耐熱非粘着プレコート金属板の製造方法。
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