JP2006161020A - 熱可塑性エラストマー成形品、熱可塑性エラストマー成形品の表面処理方法、医療用チューブ、および輸液セット - Google Patents

熱可塑性エラストマー成形品、熱可塑性エラストマー成形品の表面処理方法、医療用チューブ、および輸液セット Download PDF

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Abstract

【課題】透明性、柔軟性、軽量性、機械強度などの熱可塑性エラストマー成形品の一般物性を大きく損なうことなく、作業環境性に優れ、滑り性、摺動摩耗性を改良させた医療用チューブなどの熱可塑性エラストマー成形品を提供すること。
【解決手段】シリコーン濃度が1〜30重量%の、シリコーンエマルジョンおよび/または水溶性シリコーンを含有するシリコーン水溶液で表面処理された熱可塑性エラストマー成形品。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明性、成形性、柔軟性、軽量性などの熱可塑性エラストマー成形品本来の物性を損なうことなく、滑り性、摺動摩耗性に優れたシリコーンエマルジョンおよび/またはシリコーン水溶液にて表面改質された医療用チューブなどの熱可塑性エラストマー成形品に関する。
熱可塑性エラストマーあるいはその組成物、例えば、1,2−ポリブタジエンや、1,2−ポリブタジエンとスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー組成物は、透明性、柔軟性、非薬液吸着性に優れることから、医療用輸液チューブなどの成形品に使用されている。医療用輸液チューブは、薬液を一定量送り流すために薬液定量ポンプに装着され使用されることがあるが、1,2−ポリブタジエンは耐摩耗性が充分ではなく、輸液チューブと薬液定量ポンプ可動部との擦れにより輸液チューブ表面が削れ易い問題がある。また、1,2−ポリブタジエンは、耐滑り性が強く、薬液定量ポンプの固定部に装着される際に装着し難く、無理に装着することでチューブが伸びてしまい、チューブ径が細くなることで定量速度が変わる問題がある。
ところで、シリコーンによる表面処理は一般的ではあるが、シリコーンオイル塗布による方法は粘度が高いことから、塗布効率(作業性)悪く表面がベタつく問題もある。一方、溶液(溶剤希釈)型のシリコーンは、塗布効率(作業性)は優れるものの、溶剤希釈されていることによりチューブ成形品の内部にシリコーン成分が浸透しやすく、チューブ成形品が白化する問題が起こることがあり、溶剤飛散による作業環境悪化の問題がある。また、チューブ成形品の組成物中にシリコーン成分をあらかじめ複合させるとチューブ成形品が白化する問題がある。
本発明は、透明性、柔軟性、軽量性、機械強度などの熱可塑性エラストマー成形品の一般物性を大きく損なうことなく、作業環境性が良好で、滑り性、摺動摩耗性を改良させた医療用チューブなどの熱可塑性エラストマー成形品を提供することにある。
本発明は、シリコーン濃度が1〜30重量%の、シリコーンエマルジョンおよび/または水溶性シリコーンを含有するシリコーン水溶液で表面処理された熱可塑性エラストマー成形品に関する。
ここで、本発明の成形品を構成する熱可塑性エラストマーとしては、1,2−結合含量が70%以上、結晶化度が5〜50%である1,2−ポリブタジエン20〜100重量%とその他の熱可塑性エラストマー80〜0重量%〔ただし、1,2−ポリブタジエン+他の熱可塑性エラストマー=100重量%〕が挙げられる。
また、1,2−ポリブタジエンと併用できる他の熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が好ましい。
次に、本発明は、異形押し出し成形された熱可塑性エラストマー成形品を、シリコーン濃度が1〜30重量%の、シリコーンエマルジョンおよび/または水溶性シリコーンを含有するシリコーン水溶液に浸漬して成形品表面を処理する可塑性エラストマー成形品の表面処理方法に関する。
以上の熱可塑性エラストマー成形品の具体例としては、医療用チューブが挙げられる。
また、本発明は、上記医療用チューブを構成要素とする輸液セットに関する。
本発明によれば、例えば、1,2−ポリブタジエン20〜100重量%とスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体80〜0重量%の熱可塑性エラストマー組成物からなる異形押し出し成形されたチューブなどの成形品を、シリコーン濃度が1〜30重量%の、シリコーンエマルジョンおよび/または水溶性シリコーンを含有するシリコーン水溶液を用い、簡易に表面処理することにより、透明性、柔軟性、軽量性、機械強度などの熱可塑性エラストマー本来の一般物性を大きく損なうことなく、作業環境性に優れ、当該成形品表面の滑り性、摺動摩耗性を改良させることができる。
本発明は、医療用チューブなどの成形品にのみならず、各種チューブ、シート、ホースに応用することも可能である。
熱可塑性エラストマー成形品
本発明の医療用チューブなどの熱可塑性エラストマー成形品に用いられる熱可塑性エラストマーとしては特に制限はないが、好ましくは1,2−ポリブタジエン単独で、あるいは、1,2−ポリブタジエンおよびその他の熱可塑性エラストマーとの組成物が用いられる。
このうち、1,2−ポリブタジエンは、1,2−結合含量が70%以上、好ましくは80%以上で、結晶化度が5〜50%、好ましくは10〜40%の結晶性を有するシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンであり、その融点は、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは60〜140℃の範囲にある。結晶化度・融点がこの範囲にあることにより、引張強度、引裂強度などの力学強度と柔軟性のバランスに優れる結果となる。
なお、結晶化度が5〜25%程度までのシンジオタクチック1,2−ポリブタジエン(以下「低結晶RB」ともいう)は、柔軟性に優れるので、チューブ本体として用いられることが多い。この低結晶RBは、融点が低いので(融点=約70〜95℃)、耐蒸気滅菌性に劣る。このため、後述するように、電子線照射により、架橋させて耐熱性を付与することも可能である。
本発明に用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、1,2−結合含有量が70%以上のものであり、例えば、コバルト化合物およびアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエンを重合して得られるものであるが、この製造方法に限定されるものではない。
本発明に用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンのブタジエン結合単位における1,2−結合含有量は、通常、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。1,2−結合含有量が70%以上であることにより、当該1,2−ポリブタジエンが良好な熱可塑性エラストマーとしての性質が発揮される。
本発明に用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、ブタジエン以外の共役ジエンが少量共重合していてもよい。ブタジエン以外の共役ジエンとしては、1,3−ペンタジエン、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。
このうち、高級アルキル基で置換された1,3−ブタジエン誘導体としては、1−ペンチル−1,3−ブタジエン、1−ヘキシル−1,3−ブタジエン、1−ヘプチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。
ここで、2−アルキル置換−1,3−ブタジエンの代表的なものは、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ブチル−1,3−ブタジエン、2−イソブチル−1,3−ブタジエン、2−アミル−1,3−ブタジエン、2−イソアミル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2−シクロヘキシル−1,3−ブタジエン、2−イソヘキシル−1,3−ブタジエン、2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、2−イソヘプチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、2−イソオクチル−1,3−ブタジエンなどが挙げられる。これらの共役ジエンのなかで、ブタジエンと共重合される好ましい共役ジエンとしては、イソプレン、1,3−ペンタジエンが挙げられる。重合に供される単量体成分中のブタジエンの含有量は50モル%以上、特には70モル%以上が好ましい。
本発明で用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンは、上述したように、例えば、コバルト化合物およびアルミノオキサンを含有する触媒の存在下に、ブタジエンを重合して得られる。上記コバルト化合物としては、好ましくは炭素数4以上のコバルトの有機酸塩を挙げることができる。このコバルトの有機酸塩の具体例として、酪酸塩、ヘキサン酸塩、ヘプチル酸塩、2−エチルヘキシル酸などのオクチル酸塩、デカン酸塩や、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸などの高級脂肪酸塩、安息香酸塩、トリル酸塩、キシリル酸塩、エチル安息香酸などのアルキル、アラルキル、アリール置換安息香酸塩やナフトエ酸塩、アルキル、アラルキルもしくはアリール置換ナフトエ酸塩を挙げることができる。これらのうち、2−エチルヘキシル酸のいわゆるオクチル酸塩や、ステアリン酸塩、安息香酸塩が、炭化水素溶媒への優れた溶解性のために好ましい。
上記アルミノオキサンとしては、例えば下記一般式(I)または一般式(II)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2006161020
この一般式(I)あるいは(II)で表されるアルミノオキサンにおいて、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭化水素基であり、好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。また、mは、2以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10〜100の整数である。アルミノオキサンの具体例としては、メチルアルミノオキサン、エチルアルミノオキサン、プロピルアルミノオキサン、ブチルアルミノオキサンなどを挙げることができ、メチルアルミノオキサンが特に好ましい。
重合触媒は、上記コバルト化合物とアルミノオキサン以外に、ホスフィン化合物を含有することが極めて好ましい。ホスフィン化合物は、重合触媒の活性化、ビニル結合構造および結晶性の制御に有効な成分であり、好ましくは下記一般式(III)で表される有機リン化合物を挙げることができる。
P(Ar)n(R')3-n ……(III)
一般式(III)中、Arは下記で示される基を示す。
Figure 2006161020
(上記基において、R1、R2、R3は、同一または異なって、水素原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数が好ましくは1〜6のアルコキシ基または炭素数が好ましくは6〜12のアリール基を表す。)
また、一般式(III)中、R'はシクロアルキル基、アルキル置換シクロアルキル基を示し、nは0〜3の整数である。
一般式(III)で表されるホスフィン化合物としては、具体的に、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−エチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−t−ブチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(3−メチル−5−エチルフェニル)ホスフィン)、トリ−(3−フェニルフェニル)ホスフィン、トリ−(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニルホスフィン)、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリ(4−メチルフェニルホスフィン)、トリ(4−エチルフェニルホスフィン)などを挙げることができる。これらのうち、特に好ましいものとしては、トリフェニルホスフィン、トリ−(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリ−(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)ホスフィンなどが挙げられる。
また、コバルト化合物として、下記一般式(IV)で表される化合物を用いることができる。







Figure 2006161020
上記一般式(IV)で表される化合物は、塩化コバルトに対し上記一般式(III)においてnが3であるホスフィン化合物を配位子に持つ錯体である。このコバルト化合物の使用に際しては、あらかじめ合成したものを使用してもよいし、あるいは重合系中に塩化コバルトとホスフィン化合物を接触させる方法で使用してもよい。錯体中のホスフィン化合物を種々選択することにより、得られるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの1,2−結合の量、結晶化度の制御を行なうことができる。
上記一般式(IV)で表されるコバルト化合物の具体例としては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−イソプロピルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−t−ブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチル−5−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−フェニルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,4,5−トリメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エトキシ−3,5−ジエチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ブトキシ−3,5−ジブチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メトキシフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−ドデシルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−エチルフェニルホスフィン)〕ジクロライドなどを使用することができる。
これらのうち、特に好ましいものとしては、コバルトビス(トリフェニルホスフィン)ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3−メチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライド、コバルトビス〔トリス(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルホスフィン)〕ジクロライドなどが挙げられる。
触媒の使用量は、ブタジエン単独重合の場合は、ブタジエン1モル当たり、共重合する場合は、ブタジエンとブタジエン以外の共役ジエンとの合計量1モル当たり、コバルト化合物を、コバルト原子換算で0.001〜1ミリモル、好ましくは0.01〜0.5ミリモル程度使用する。また、ホスフィン化合物の使用量は、コバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)として、通常、0.1〜50、好ましくは0.5〜20、さらに好ましくは1〜20である。さらに、アルミノオキサンの使用量は、コバルト化合物のコバルト原子に対するアルミニウム原子の比(Al/Co)として、通常、4〜107、好ましくは10〜106である。なお、一般式(IV)で表される錯体を用いる場合は、ホスフィン化合物の使用量がコバルト原子に対するリン原子の比(P/Co)が2であるとし、アルミノオキサンの使用量は、上記の記載に従う。
重合溶媒として用いられる不活性有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族炭化水素溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ブタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素溶媒およびこれらの混合物が挙げられる。
重合温度は、通常、−50〜120℃で、好ましくは−20〜100℃である。
重合反応は、回分式でも、連続式でもよい。なお、溶媒中の単量体濃度は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜35重量%である。
また、重合体を製造するために、本発明の触媒および重合体を失活させないために、重合系内に酸素、水あるいは炭酸ガスなどの失活作用のある化合物の混入を極力なくすような配慮が必要である。重合反応が所望の段階まで進行したら反応混合物をアルコール、その他の重合停止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加し、次いで通常の方法に従って生成重合体を分離、洗浄、乾燥して本発明に用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンを得ることができる。
本発明に用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの重量平均分子量は、好ましくは1万〜500万、さらに好ましくは1万〜150万、特に好ましくは5万〜100万である。重量平均分子量が1万未満では流動性が極端に高く、加工が非常に困難となり、また成形品(医療用部材)がべたつくため好ましくなく、一方、500万を超えると流動性が極端に低く、加工が非常に困難となり好ましくない。
本発明に用いられるシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの具体例としては、JSR社製の、RB810(1,2−結合量=90%、メルトフローレート(150℃、2.16kg)=3g/10分、結晶化度=18%)、RB820(1,2−結合量=92%、メルトフローレート(150℃、2.16kg)=3g/10分、結晶化度=25%)、RB830(1,2−結合量=93%、メルトフローレート(150℃、2.16kg)=3g/10分、結晶化度=29%)、RB840(1,2−結合量=90%、メルトフローレート(150℃、2.16kg)=8g/10分、結晶化度=35%)などが挙げられる。
一方、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン以外の他の熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、これらの水素化物(SEPS、SEBS)、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−オクテン共重合体(EOM)、各種ポリエチレン(LLDPE、ULDPE、LDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体の群から選ばれた少なくとも1種などが挙げられ、好ましくはスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)である。
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の具体例としては、JSR社製のSIS5229P(スチレン含量=15重量%、メルトフローレート(190℃、2.16kg)=3g/10分)、SIS5002(スチレン含量=22重量%、メルトフローレート(190℃、2.16kg)=2g/10分)などが挙げられる。
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の具体例としては、JSR社製のTR2003(スチレン含量=43重量%、メルトフローレート(190℃、2.16kg)=5g/10分)、TR2827(スチレン含量=24重量%、メルトフローレート(190℃、2.16kg)=2g/10分)などが挙げられる。
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素化物(SEPS、SEBS)の具体例としては、クラレ社製のSEPSセプトン2043(スチレン含量=13重量%、メルトフローレート(230℃、2.16kg)=4g/10分)、クレイトン社製のSEBSクレイトンG1657(スチレン含量=13重量%、メルトフローレート(200℃、5kg)=8g/10分)などが挙げられる。
ポリイソプレンの具体例としては、JSR社製のIR2200(シス1,4−ポリイソプレン含量=98重量%)などが挙げられる。
エチレン−プロピレン共重合体(EPM)の具体例としては、JSR社製のEP01P(プロピレン含量=22重量%、メルトフローレート(230℃、2.16kg)=4g/10分)、EP07P(プロピレン含量=27重量%、メルトフローレート(230℃、2.16kg)=1g/10分)などが挙げられる。
エチレン−オクテン共重合体(EOM)の具体例としては、デュポンダウエラストマー社製のENGAGE8550(密度=0.902)などが挙げられる。
各種ポリエチレン(LLDPE、ULDPE、LDPE)の具体例としては、日本ポリエチレン社製のYF30(LDPE、メルトフローレート(190℃、2.16kg)=1g/10分)、UF240(LLDPE、メルトフローレート(190℃、2.16kg)=2g/10分)などが挙げられる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の具体例としては、日本ポリエチレン社製のLV440(酢酸ビニル含有量=15重量%、メルトフローレート(190℃、2.16kg)=2g/10分)などが挙げられる。
なお、本発明に用いられる組成物において、上記熱可塑性エラストマー成分以外に、必要に応じて、滑剤、フィラーまたは老化防止剤などの添加剤を含有してもよい。上記添加剤の具体例としては、パラフィンオイル、シリコーンオイル、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、低分子ポリエチレンなどの滑剤のほか、タルク、シリカ、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ガラス、カーボンファイバー、ガラスバルーンなどのフィラー、フェノール系老化防止剤、リン系老化防止剤などの老化防止剤を挙げることができる。
なお、滑剤の使用量は、上記熱可塑性エラストマー成分100重量部に対し、5重量部以下、好ましくは0.01〜2重量部である。5重量部を超えると、滑剤が製品からブリードアウトし、使用薬剤に溶出するので、好ましくない。
また、電子線照射による耐熱性と柔軟性とのバランスを向上させるために、その他の添加剤、例えば、トリメチルプロパントリメタクリレートなどの多官能モノマー、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの光重合開始剤、ベンゾフェノンなどの光増感剤などを、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン100重量部に対して5重量部以下含有させてもよい。
組成物の調製と成形
本発明の熱可塑性エラストマー成形品に用いられる成分は、上記1,2−ポリブタジエン単独、あるいは、この1,2−ポリブタジエンと他の熱可塑性エラストマー、これらにさらに必要に応じて、上記添加剤などを添加して、加熱軟化させて、混練し成形する。
混練と成形は、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンの軟化温度ないし溶融温度以上の成形性の良好な温度範囲で行い、均質な成形品(チューブなどの医療用部材)にする。このため、成形温度は、90〜170℃程度が良い。チューブ、シート、ホースなどの各種成形品を得るには、プレス成形、押し出し成形、射出成形、ブロー成形、異形押し出し成形、Tダイフィルム成形、インフレーション成形、パウダースラッシュ成形、回転成形などで成形される。
電子線照射
本発明のポリブタジエンなどの熱可塑性エラストマー成形品(以下「熱可塑性エラストマー成形品」ともいう)のうち、チューブは柔軟性を必要とするため、低結晶RBが好ましく用いられるが、融点が低いため、耐蒸気滅菌性を発現させるために、次いで電子線を照射し、架橋することができる。電子線を照射すると、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンのビニル基のラジカル重合により三次元架橋構造となり、成形品(チューブ)の耐熱性を付与させる。電子線は、合成樹脂に対して透過性があり、その透過の程度は、成形品の厚みと、電子線のエネルギーに依存する。
その照射厚みに従って厚み方向に均一に透過可能に電子線のエネルギーを調節すると、厚み方向で架橋度を均一にした成形品(チューブ)とすることができる。
電子線のエネルギーは、上記のチューブなどの熱可塑性エラストマー成形品(医療用チューブなどの医療用部材)に対して、好ましくは50〜3,000kV、さらに好ましくは300〜2,000kVとするが、50kVより小さいと、表層部で捕獲吸収される電子の割合が相対的に多くなって、成形品を透過する電子線が少なくなり、表層部に比して内部の架橋が遅れて、架橋度に差が生じるので、好ましくない。一方、3,000kVより大きいと、架橋度が大きくなり過ぎて、硬質となるとともに弾力性や伸びが小さくなり好ましくない。
また、この際の電子線の照射量は、好ましくは1〜100Mrad(SI単位系で、10〜1,000kGyに相当する)、さらに好ましくは1〜50Mradの範囲で照射して架橋硬化させる。1Mradより少ないと、1,2−ポリブタジエンの架橋度が小さく、一方、100Mradを超えると、架橋度が大きくなり過ぎて、硬質となるので、弾力性や伸びが小さいので好ましくない。
電子線照射による架橋は、電子線加速電圧と照射量の積で表すことができ、本発明においては、電子線加速電圧(kV)と照射線量(Mrad)の積を、好ましくは2,000〜20,000(kV・Mrad)、さらに好ましくは5,000〜16,000(kV・Mrad)とする。2,000(kV・Mrad)より小さいと、表層部で捕獲吸収される電子の割合が相対的に多くなって、熱可塑性エラストマー成形品(医療用部材)を透過する電子線が少なくなり、表層部に比して内部の架橋が遅れて、架橋度に差が生じるので、好ましくない。一方、20,000(kV・Mrad)より大きいと、架橋度が大きくなり過ぎて、硬質となるので、弾力性や伸びが小さいので好ましくない。
熱可塑性エラストマー成形品の表面処理
本発明では、以上の熱可塑性エラストマー成形品の表面を、シリコーン濃度が1〜30重量%の、シリコーンエマルジョンおよび/または水溶性シリコーンを含有するシリコーン水溶液を用いて表面処理する。このように、シリコーンエマルジョンおよび/またはシリコーン水溶液で表面処理すると、成形品表面にシリコーン皮膜が付与されるので、透明性、柔軟性、軽量性、機械強度などの熱可塑性エラストマー成形品の一般物性を損なうことなく、滑り性、摺動摩耗性を改良させることができる。
このうち、シリコーンエマルジョンは、非水溶性のシリコーン樹脂を主として水に分散させたエマルジョン状態のものあればいかなるものでもよいが、例えば、特開2004−211060号公報の段落「0017」に記載されたシリコーンエマルジョンが挙げられる。
すなわち、シリコーンエマルジョンは、例えば、以下に示す方法で得ることができる。
(1)アルキルシリケート化合物またはその部分加水分解・縮合物を各種界面活性剤を用いて乳化し、水性エマルジョンとする方法(特開昭58−213046号公報、特開昭62−197369号公報、特開平3−115485号公報、特開平3−200793号公報)。さらに、このエマルジョンに、重合性ビニルモノマーを乳化重合したエマルジョンを混合する方法(特開平6−344665号公報)。
(2)界面活性剤を使用せずにアルキルシリケート化合物を水中で加水分解して得られる水溶性ポリマーの存在下、ラジカル重合可能なビニルモノマーを乳化重合する方法(特開平8−60098号公報)。
(3)ビニル重合性アルキルシリケートを含有するアルキルシリケート混合物を加水分解・縮合することにより、固形のシリコーン樹脂を含む水性エマルジョンとし、さらにラジカル重合性ビニルモノマーを加え、乳化重合することにより、グラフト共重合体微粒子(固形)エマルジョンを得る方法(特開平5−209149号公報、特開平7−196750号公報)。
(4)ラジカル重合性官能基を乳化重合したエマルジョンにアルキルシリケート化合物を添加し、加水分解・縮合させ、エマルジョン粒子中にシリコーン樹脂を導入する方法(特開平3−45628号公報、特開平8−3409号公報)
(5)ビニル重合性官能基含有アルキルシリケートを、ラジカル重合性ビニルモノマーと共に乳化重合し、エマルジョンを作成する方法(特開昭61−9463号公報、特開平8−27347号公報)。
これらのシリコーンエマルジョンは、通常、固形分濃度(シリコーン濃度)が10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%の水系エマルジョンである。
本発明では、このシリコーンエマルジョンを、純水、精製水、イオン交換水などの純度の高い水にて希釈することにより、シリコーン濃度を1〜30重量%、好ましくは2〜10重量%のエマルジョンとして用いることができる。シリコーン濃度が1重量%未満では、静摩擦係数の低下が小さく、滑り性、摺動摩耗性の改良効果が小さく、一方、30重量%を超えると、静摩擦係数の低下は下限となり、滑り性、摺動摩耗性の改良効果も変わらずにコストが高くなる。
一方、本発明に使用される水溶性シリコーンは、水に溶解可能なシリコーンであればよく、その種類などは特に限定されないが、例えば、特開2001−261961号公報の段落「0008」〜「0012」に記載されているものを挙げることができる。
すなわち、かかる水に溶解可能なシリコーンとしては、ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、アミノアルキル基含有シリコーンオイル、アミド基含有シリコーンオイル、カルビノール基含有シロキサンオリゴマーなどが挙げられるが、これらの中でもポリオキシアルキレン変性シリコーンオイルが好ましい。
このうち、ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイルとしては、下記平均分子式で示されるような側鎖または末端にポリオキシアルキレン基を有するオルガノポリシロキサンが例示される。
Figure 2006161020
{式中、xおよびyは1以上の整数であり、zは0または1以上の整数である。Aは、一般式:−(CH2−O−(C24O)p(C36O)qR(式中、aは1〜3の整数、pは1以上の整数、qは0または1以上の整数であり、Rは水素原子またはメチル基、エチル基、プロピル基などの炭素原子数1〜4のアルキル基である。)示される有機基であり、Bは一般式:−(CH−CH(式中、rは0以上の整数である。)で示される有機基である。}
Figure 2006161020
Figure 2006161020
かかるポリオキシアルキレン変性シリコーンオイルが良好な水溶性を得るためには、ポリオキシアルキレン部分がポリオキシエチレン、またはオキシエチレンオキシプロピレンコポリマーであり、分子中のその含有量が50重量%以上であるものが好ましい。
以上の水溶性シリコーンを用いて、シリコーン水溶液を調製するには、純水、精製水、イオン交換水などの純度の高い水が好ましい。
シリコーン水溶液におけるシリコーン濃度は、1〜30重量%、好ましくは2〜10重量%である。シリコーン濃度が1重量%未満では、静摩擦係数の低下が小さく、滑り性、摺動摩耗性の改良効果が小さく、一方、30重量%を超えると、静摩擦係数の低下は下限となり、滑り性、摺動摩耗性の改良効果も変わらずにコストが高くなる。
熱可塑性エラストマー成形品の表面処理は、以上のシリコーンエマルジョンおよび/またはシリコーン水溶液を用いて、当該成形品の表面を常法に従って処理すればよい。
表面処理としては、浸漬処理、ハケ、布などによる塗布処理、噴霧機などによるスプレー処理などが挙げられる。好ましくは、浸漬処理である。
すなわち、浸漬処理は、シリコーン濃度が1〜30重量%の、シリコーンエマルジョンおよび/またはシリコーン水溶液が入った浸漬浴中に、医療用チューブなどの熱可塑性エラストマー成形品を浸漬する。浸漬浴の温度は、通常、10〜30℃、好ましくは常温である。また、異形押し出しによるチューブ成形の場合は、ダイより異形押し出しされたチューブを浸漬浴中に連続して浸漬することで、成形品の冷却と表面処理を同時に行うことも可能である。次いで、熱可塑性エラストマー成形品を浸漬浴から引き上げて、好ましくは20〜80℃、さらに好ましくは30〜60℃で、好ましくは10〜480分、さらに好ましくは20〜240分、乾燥すればよい。
なお、この際、熱可塑性エラストマー成形品に対するシリコーン(皮膜)の付着量(固形分換算)は、0.1g/m〜8g/m、好ましくは0.2g/m〜4g/m、さらに好ましくは0.4g/m〜2g/mである。0.1g/m未満では、静摩擦係数の低下が小さく、滑り性、摺動摩耗性の改良効果が小さく、一方、8g/mを超えると、静摩擦係数の低下は下限となり、滑り性、摺動摩耗性の改良効果も変わらずにコストが高くなる。シリコーンの付着量は、シリコーン濃度により調整することができる。
次に、本発明の熱可塑性エラストマー成形品である医療用チューブを用いた輸液セットについて、図1を用いてさらに具体的に説明する。
この輸液セット10は、輸液バッグ12内の輸液排出用管14との結合のための接続部材(コネクタ)15と、接続部材15と点滴筒11とを接続する第1のチューブC1と、点滴筒11と穿刺針13とを接続する第2のチューブC2と、輸液速度を調整するためのクレンメ18と、穿刺針13を被包するキャップ16とを有している。なお、符号19は、第2のチューブC2と穿刺針13とを接続するための接合部材である。
ここで、穿刺針13としては、先端に穿刺用刃先を有する中空のステンレス鋼などからなる金属針、合成樹脂製針が使用される。また、クレンメ18としては、ローラークレンメが用いられており、このローラークレンメは、移動可能に設けられたローラ17を備え、このローラ17の穿刺針13側への移動により第2のチューブC2の流路が狭くなり、輸液速度の調整が可能である。点滴筒11内には、万一、輸液剤などに異物が含まれていた場合に備えてフィルター(図示せず)が収納されている。なお、穿刺針13としては、従来より使用されているものが用いられる。
また、本発明においては、接合部材15、点滴筒11、接合部材19は、いずれも、「チューブ接続部を有するコネクタ」に該当し、ポリカーボネート、ポリエステル、透明ABS、塩化ビニルなどの硬質樹脂が用いられる。
また、チューブC1、C2としては、透明性を有する軟質チューブが好適であり、具体的には、従来より使用の、軟質塩化ビニル樹脂、さらに、本発明の結晶化度5%以上、好ましくは結晶化度が5〜25%程度の低結晶化度のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンをシリコーンエマルジョンおよび/または水溶性シリコーンを含有するシリコーン水溶液で表面処理したものが用いられる。
ここで、チューブC1、C2の各先端と結合部材15、点滴筒11、接合部材19(いずれも、本発明におけるコネクタに相当)におけるチューブ接続部とは、溶剤接着、接着剤による接着、超音波接着、あるいは高周波接着により、強固に固定されている。
ここで、溶剤接着としては、上記のようにテトラヒドロフラン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、トルエンなどが挙げられる。
また、この輸液セットでは、チューブがシリコーンエマルジョンおよび/またはシリコーン水溶液で表面処理されているものを用いているので、接着面のシリコーン成分を水洗いするか、チューブ内面を接着面としたほうが好ましい。
なお、本発明において、チューブとチューブ接合部を有するコネクタからなる医療用部材は、上記の輸液セットの構成要素、薬剤投与用カテーテルなどの医療用器具への構成要素としても適用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部および%は特に断らない限り、重量基準である。また、実施例中の試験片(プレートおよびチューブ)の調製、ならびに各種の測定は、以下に従った。
(試験片調製)
1,2−ポリブタジエン(JSR社製、RB820)を、温度120℃〜140℃の射出成形機にて厚さ2mmのプレートに成形した。さらに、チューブは、温度120℃〜140℃の異形押出成形機(L/D=28)を用いて、内径3mmφ、外径4.4mmφ、肉厚0.7mmのチューブに成形した。
1,2−ポリブタジエン(JSR社製、RB820)にシリコーンオイルを添加する場合は、温度120〜140℃の単軸押出機(L/D=32)を用いて、予め混練りしたものを温度120℃〜140℃の射出成形機を用いて、厚さ2mmのプレートに成形した。さらに、チューブは、温度120℃〜140℃の異形押出成形機(L/D=28)にて内径3mmφ、外径4.4mmφ、肉厚0.7mmのチューブに成形した。
1,2−ポリブタジエン(JSR社製、RB820)とスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(JSR社製、SIS5229P)、さらにシリコーンオイルを添加する場合は、温度120〜170℃の単軸押出機(L/D=32)を用いて、予め混練りしたものを温度120℃〜170℃の射出成形機用いて、厚さ2mmのプレートに成形した。さらに、チューブは、温度120℃〜170℃の異形押出成形機(L/D=28)を用いて、内径3mmφ、外径4.4mmφ、肉厚0.7mmのチューブに成形した。
上記のプレートまたはチューブを表面処理する場合については、上記のプレートまたはチューブを300ccの各種シリコーン含有液中に2秒間完全に浸漬した後に取り出し、50℃恒温槽中で3時間乾燥して実施した。
(シリコーン付着量)
300ccのシリコーン含有液の重量を測定した後に、縦50mm×横50mm×厚さ2mmのプレート10枚を300ccのシリコーン含有液に順に2秒間完全に浸漬してから取り出しシリコーン含有液の重量を再度測定する。シリコーン含有液の消費重量を算出して、プレート10枚の表面積とシリコーン濃度から表面積あたりのシリコーン付着量を算出した。
(静摩擦係数)
東測精密工業社製のフィルム摩擦係数測定機(AFT−15−1)を使用してプレートにて測定した。
(ポンプ削れ性)
チューブをポンプ(JMS社製、OT−711)に装着して輸液速度500ml/hr、15時間運転後のチューブの削れ具合を目視評価した。
○:チューブ表面に毛羽立った削れあとが殆ど見られず、削れた材料粉がチューブ表面に殆ど付着していない
×:チューブ表面に毛羽立った削れあとが多く見られ、削れた材料粉がチューブ表面に多く付着している
(ヘイズ)
ヘイズ値は、透明性の尺度であり、その値が小さくなる程、透明性がよくなる。このヘイズ値は、プレートを用いてASTM D−1003に準拠して測定した。
(ベタツキ性)
プレートおよびチューブ表面を触手評価した。
○:表面がサラサラしておりベタツキ(粘着性)を感じない。
×:表面がベタベタしておりベタツキ(粘着性)を感じる。
(作業環境)
○:表面処理の際、300ccのシリコーン含有液槽に鼻を近づけても溶剤臭がしない。
△:表面処理の際、300ccのシリコーン含有液槽に鼻を近づけると溶剤臭がする。
×:表面処理の際、300ccのシリコーン含有液槽から2m離れた場所で溶剤臭がする。
(密度)
密度は、プレートを用いてJIS K7112に準拠して測定した。
(硬度)
硬度は、プレートを用いてJIS K6253に準拠して測定した。
(引張試験:破断強度)
引張試験は、プレートを用いてJIS K6251に準拠して測定した。
実施例1
1,2−ポリブタジエン(JSR社製、RB820)を用いて得られたプレートおよびチューブを用い、シリコーン濃度2%のエマルジョンで表面処理したものの評価結果を、表1に示す。
実施例2〜8、比較例1〜8
1,2−ポリブタジエン(JSR社製、RB820)単独、あるいはRB820とスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(JSR社製、SIS5229P)、さらにシリコーンオイルとのブレンド物を用いて得られたプレートおよびチューブを用い、実施例1と同様にして、各種表面処理したものとしていないものの評価結果を、表1〜2に示す。
実施例1〜8は、いずれも、作業環境性に優れ、静摩擦係数が小さく、ポンプ削れ性が少なく、ベタツキがないうえ、透明で、1,2−ブタジエン(およびこれとSISブロック共重合体とのブレンド物)成形品が本来有する物性(密度、硬度、破断強度)を具備している。
これに対し、比較例1〜2は表面処理を施していない例であり、静摩擦係数が高く、ポンプ削れ性の評価が悪い。比較例3〜4は、成形品中にシリコーンオイルをブレンドした例であり、静摩擦係数が高く、透明性にも劣る。比較例5、7は、シリコーンオイルで成形品の表面処理をした例であり、粘度が高いことから、塗布効率(作業性)悪くベタツキ性の評価が悪い。比較例6、8は、シリコーンのトルエン溶液で表面処理をした例であり、透明性が劣り、作業環境(溶剤飛散)も悪い。

















Figure 2006161020
Figure 2006161020
*1)JSR社製、RB820、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、1,2−ビニル結合含量=92%、結晶化度=25%
*2)JSR社製、SIS5229P、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体
*3)信越化学工業社製、シリコーンオイルSH200
*4)信越化学工業社製、シリコーンエマルジョンKM742(シリコーン濃度28%)を水希釈にて濃度調整したエマルジョン
*5)信越化学工業社製、水溶性型シリコーンKM244F(シリコーン濃度100%)を水希釈にて濃度調整した水溶液
*6)信越化学工業社製、溶液型シリコーンKS725(溶剤:石油系炭化水素、シリコーン濃度50%)をトルエン希釈にて濃度調整した溶液
本発明によれば、熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品を、シリコーン濃度が1〜30重量%の、シリコーンエマルジョンおよび/または水溶性シリコーンを含有するシリコーン水溶液を用い、簡易に表面処理することにより、透明性、柔軟性、軽量性、機械強度などの熱可塑性エラストマー本来の一般物性を大きく損なうことなく、作業環境性に優れ、当該成形品表面の滑り性、摺動摩耗性を改良させることができる。本発明は、医療用チューブなどの成形品にのみならず、各種チューブ、シート、ホースなどに応用することも可能である。
本発明のポリブタジエンからなる医療用チューブ(医療用部材)を構成要素とする輸液セットの平面図である。
符号の説明
10 輸液セット
11 点滴筒
12 輸液バッグ
13 穿刺針
14 輸液排出用管
15 接続部材(コネクタ)
18 クレンメ
C1〜C2 チューブ

Claims (6)

  1. シリコーン濃度が1〜30重量%の、シリコーンエマルジョンおよび/または水溶性シリコーンを含有するシリコーン水溶液で表面処理された熱可塑性エラストマー成形品。
  2. 成形品を構成する熱可塑性エラストマーが、1,2−結合含量が70%以上、結晶化度が5〜50%である1,2−ポリブタジエン20〜100重量%とその他の熱可塑性エラストマー80〜0重量%〔ただし、1,2−ポリブタジエン+他の熱可塑性エラストマー=100重量%〕からなる請求項1記載の熱可塑性エラストマー成形品。
  3. 他の熱可塑性エラストマーが、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体である請求項2記載の熱可塑性エラストマー成形品。
  4. 異形押し出し成型された熱可塑性エラストマー成形品を、シリコーン濃度が1〜30重量%の、シリコーンエマルジョンおよび/または水溶性シリコーンを含有するシリコーン水溶液に浸漬して、該成形品の表面を処理する熱可塑性エラストマー成形品の表面処理方法。
  5. 熱可塑性エラストマー成形品が医療用チューブである請求項1〜3いずれかに記載の熱可塑性エラストマー成形品。
  6. 請求項5記載の医療用チューブを構成要素とする輸液セット。
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