JP2006160649A - 風味改善作用を有するペプチド、それを配合して得られる食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】
乳蛋白質からの風味改善作用を有するペプチドおよびそれを含有する風味改善剤組成物を提供すること。
風味改善作用を有するペプチドおよびそれを含有する風味改善剤組成物を用いて風味改善された食品を提供すること。
【解決手段】
Trp―Val、Trp―Tyr、Tyr―Trp、Trp―Ile、Trp―LeuまたはGlu―Ile―Leuの配列からなる風味改善作用を有するペプチド。
前記のペプチドを含有することを特徴とする風味改善剤組成物。
【選択図】なし。
乳蛋白質からの風味改善作用を有するペプチドおよびそれを含有する風味改善剤組成物を提供すること。
風味改善作用を有するペプチドおよびそれを含有する風味改善剤組成物を用いて風味改善された食品を提供すること。
【解決手段】
Trp―Val、Trp―Tyr、Tyr―Trp、Trp―Ile、Trp―LeuまたはGlu―Ile―Leuの配列からなる風味改善作用を有するペプチド。
前記のペプチドを含有することを特徴とする風味改善剤組成物。
【選択図】なし。
Description
本発明は、ペプチドおよびその製造法、風味改善剤組成物、それらを配合して得られる食品に関する。
従来からペプチドの呈味性については、化学合成したジペプチドを中心に詳細に調べられており、また、蛋白質加水分解物中の呈味性ペプチドについても多数検討されてきた(非特許文献1)。しかし、これらのペプチドの多くは食品の品質を低下させる苦味を呈するものであった。他方、鰹節抽出残渣からの呈味向上作用を有する新規ペプチド(特許文献1)や魚醤中の旨味成分からの新規ペプチドが開発されている(特許文献2)。
日本食品科学工学会誌,46巻,8号,501−507頁,1999年 特開2002−255994
特開2003−104997
日本食品科学工学会誌,46巻,8号,501−507頁,1999年
しかしながら、上記の先行技術に記載の呈味改善剤では、必ずしも十分ではなかった。本発明は、乳蛋白質からの風味改善作用を有するペプチドおよびそれを含有する風味改善剤組成物を提供することを目的とする。また本発明は、風味改善作用を有するペプチドおよびそれを含有する風味改善剤組成物を用いて風味改善された食品を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下の通りである。
項1.Trp―Val、Trp―Tyr、Tyr―Trp、Trp―Ile、Trp―LeuまたはGlu―Ile―Leuの配列からなる風味改善作用を有するペプチド。
項2.項1記載のペプチドを含有することを特徴とする風味改善剤組成物。
項3.乳蛋白質を酵素分解することを特徴とする項1記載のペプチドを製造する方法。
項4.項1記載のペプチドまたは項2記載の呈味改善剤組成物を配合して得られる食品。
以下に本発明を詳細に説明する。
項1に係る本発明のペプチドは、ジペプチドとトリペプチドであり、これら6種のペプチドは、食品に添加した場合には、コク味、旨味およびボリューム感の増大などの風味改善作用を有する。また、その溶解性は難水溶性で塩、たとえば塩酸塩で水溶性となる。それらペプチドの中で最も風味改善性が付与されたものは、Trp−Leuであり、その閾値は、1ppbという極微量である。
これら6種のペプチドの光学体は、すべてL体アミノ酸から構成されているものと思われ、例えばTrp−Leuの光学体についてはその光学純度分析から、共にL体を有する、すなわち、L‐Trp−L‐Leuであることを確認している。
これら6種のペプチドの光学体は、すべてL体アミノ酸から構成されているものと思われ、例えばTrp−Leuの光学体についてはその光学純度分析から、共にL体を有する、すなわち、L‐Trp−L‐Leuであることを確認している。
本発明のペプチドは、ペプチド合成機を用いた固相法あるいは液相法などの通常の化学的合成法によって、構成アミノ酸を原料として製造することができる。また、合成されたペプチドの精製は、公知の方法にて液体クロマトグラフィーでカラム分離する方法などによって行うことができる。
また、本発明のペプチドは、該アミノ酸配列を有する蛋白質を原料として、通常の酸や酵素によって加水分解して製造した分解物から、例えば、合成吸着剤、イオン交換樹脂および疎水性クロマトグラフィーでカラム分画する方法や、ゲル濾過などにて分子量分画する方法などにより分離・濃縮する方法などによっても得ることができる。
前記蛋白質としては乳蛋白質が好ましく、例えばαs1-カゼイン、αs2-カゼイン等の各種カゼインやβ-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン等の各種ホエイ蛋白質等、該アミノ酸配列を有する蛋白質であれば特に限定はない。即ち、αs1-カゼインはTrp−Tyrを、αs2-カゼインはTrp−Ileを、β-ラクトグロブリンはGlu−Ile−Leuを、α-ラクトアルブミンはTrp−Val、Trp−Leuを得るのに適している。また、前記蛋白質を含有する乳、脱脂乳及びホエイ等も、本発明に適用する好ましい蛋白質含有材料である。
以上の中でも、原料由来の特有な香味が少なく、食品廃棄物のリサイクル促進技術による再資源化利用などから、乳製品からの副産物、中でも乳、脱脂乳及びホエイを限外濾過膜(以下、UF膜ともいう)で処理した後の透過液が特に好適である.
以上の中でも、原料由来の特有な香味が少なく、食品廃棄物のリサイクル促進技術による再資源化利用などから、乳製品からの副産物、中でも乳、脱脂乳及びホエイを限外濾過膜(以下、UF膜ともいう)で処理した後の透過液が特に好適である.
乳としては、例えば、牛乳のほか、山羊乳、羊乳、水牛乳、ロバ乳等が挙げられるが、特に牛乳が好ましい。脱脂乳としては、例えば、上記乳を遠心分離することにより脂質を低減したもの、特に、脂質を0.1〜0.5重量%(以下、%ともいう)程度にしたものが挙げられる。また、ホエイとしては、上記乳や脱脂乳からレンネットを用いて各種のチーズを製造する過程で、カードを分離した後に廃棄物として残るレンネットチーズホエイと呼ばれる水性成分や酸を用いてチーズを製造する過程で、廃棄物として残る酸ホエイがある。なお、本発明で用いるホエイとは、UF膜で処理されていないものを意味する。
前記UF膜は、分画分子量が10,000〜800,000Da程度のものであれば良く、好ましくは500,000Da程度以下、より好ましくは50,000Da程度以下のものが好適である。
得られるUF膜透過液中の固形分濃度は、通常、蛋白質が0.01〜0.8重量%程度、乳糖4.0〜4.7重量%程度に分離されて、次の蛋白質分解酵素処理に供される。
本発明に用いられる蛋白質分解酵素は、プロテアーゼまたはペプチターゼとも呼ばれ、ペプチド結合の加水分解反応を触媒する酵素の総称である。この酵素には、セリンプロテアーゼ、シスチンプロテアーゼ、アスパルティックプロテアーゼ、金属プロテアーゼなどのエンドペプチダーゼおよびアミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、ジペプジルアミノペプチダーゼ、ジペプジルカルボキシペプチダーゼ、セリンカルボキシペプチダーゼ、金属カルボキシペプチダーゼなどのエキソプチダーゼが挙げられる。これらの酵素は大部分が市販されており、容易に入手が可能である。
例えば、オリエンターゼONS、オリエンターゼ20A、オリエンターゼ90N、オリエンターゼ10NL、ヌクレイシン(以上、阪急バイオインダストリー社製)、トリプシン、フレーバーザイム1,000L、アルカラーゼ2.4L、ニュートラーゼ0.5L(以上、ノボノルディスクバイオインダストリー社製)、コクラーゼP(三共社製)、パパインW−40、ブロメラインF、プロレザー、パンクレアチンF、プロテアーゼM「アマノ」、プロテアーゼA「アマノ」、プロテアーゼN「アマノ」、プロテアーゼP「アマノ」、ウマミザイムG、ヌクレアーゼ「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、ビオプラーゼSP−15FG、パパイン、デナチームAP、デナプシン10P(以上、ナガセケムテックス社製)、プロチンAY−10、プロチンNY−10、サモアーゼY−10(大和化成社製)などが挙げられる。
例えば、オリエンターゼONS、オリエンターゼ20A、オリエンターゼ90N、オリエンターゼ10NL、ヌクレイシン(以上、阪急バイオインダストリー社製)、トリプシン、フレーバーザイム1,000L、アルカラーゼ2.4L、ニュートラーゼ0.5L(以上、ノボノルディスクバイオインダストリー社製)、コクラーゼP(三共社製)、パパインW−40、ブロメラインF、プロレザー、パンクレアチンF、プロテアーゼM「アマノ」、プロテアーゼA「アマノ」、プロテアーゼN「アマノ」、プロテアーゼP「アマノ」、ウマミザイムG、ヌクレアーゼ「アマノ」(以上、天野エンザイム社製)、ビオプラーゼSP−15FG、パパイン、デナチームAP、デナプシン10P(以上、ナガセケムテックス社製)、プロチンAY−10、プロチンNY−10、サモアーゼY−10(大和化成社製)などが挙げられる。
蛋白質分解酵素は単独でも用いられるが、2種以上組み合わせて用いるのが良い。特に好ましくは、パンクレアチンF、トリプシン等の動物由来の酵素、ブロメラインF、パパイン等の植物由来の酵素およびウマミザイムG、プロテアーゼM等の微生物由来の酵素をそれぞれ少なくとも1つを含む3種以上の酵素を組み合わせて用いるのが、旨味、コク味およびボリューム感が増大する点で良い。また、酵素は、一度に添加しても良いが、2〜3回に分けて添加し、酵素反応を行っても良い。
蛋白質分解酵素の使用量は、酵素の種類あるいは酵素活性などによって異なるが、膜分離透過液中の蛋白質1gに対して一般に約100unit〜約500万unit、好ましくは約1,000unit〜約100万unitの範囲内を例示することができる。
UF膜透過液を前記の酵素で分解処理する場合、UF膜透過液と酵素とを混合するが、これらの混合順序は特に限定されない。UF膜透過液はそのまま、あるいは濃縮したものなどあらゆる形態で用いられ、特に限定はされない。酵素処理条件としては、温度は20〜60℃、また処理時間は1〜24時間が適当である。なお、pH条件も酵素反応が進行する限り特に限定されないが、好ましい範囲としてpH4〜9が挙げられる。前記酵素処理において、UF膜透過液は酵素の作用を受けてペプチド、遊離アミノ酸等に分解される。酵素処理終了後、酵素処理液は、例えば75〜100℃に加熱して酵素を失活させることが好ましい。得られた酵素処理液は、濾過、遠心分離などの方法により変性蛋白質などの固形物から分離される。
このようにしてUF膜透過液の加水分解物が得られる。得られる膜分離透過液の加水分解での蛋白質分解度は、アミノ態窒素/全窒素やゲル濾過HPLCなどによって測定可能である。アミノ態窒素/全窒素は、0.27〜0.45で、更には0.30〜0.45が好ましい。また、ゲル濾過HPLC測定によるその推定分子量分布は、分子量100〜500の範囲が90%以上を占めていた。
酵素による加水分解を終了した溶液は、吸着剤と接触させたのち、エチルアルコールを主とする溶液を用いて該吸着剤に吸着した吸着成分を該吸着剤から溶出することにより、UF膜透過液の加水分解物であって、本発明のペプチドを含有するペプチド含有呈味成分が得られる。この吸着・脱着処理は、苦味ペプチドを除去する点でも有利である。この吸着剤処理によって苦味ペプチドは本発明のペプチド画分から排除される。
前記吸着剤には、活性炭、カーボンブラック、珪藻土、多孔性重合樹脂またはシリカゲル等が挙げられるが、これらの中でも多孔性重合樹脂が好ましい。多孔性重合樹脂としては、例えば、イオン交換樹脂や無官能基型合成吸着樹脂が挙げられるが、これらの中でも無官能基型合成吸着樹脂が好ましい。イオン交換樹脂としては、強酸性と弱酸性の陽イオン交換樹脂並びに強塩基性と弱塩基性の陰イオン交換樹脂が挙げられる。また、無官能基型合成吸着樹脂としては、スチレン・ジビニルベンゼン系とメタクリル酸エステル系等がある。本発明の酵素処理物およびフレーバーを好ましく得るのに用いられる市販の無官能基型合成吸着樹脂としては、ダイヤイオンHP、SPシリーズやアンバーライトXADシリーズ等が挙げられる。
これらの吸着剤とUF膜透過液の酵素処理液を接触させる方法としては特に限定はなく、例えばカラムに吸着剤を充填し、酵素処理液を通液させる方法(以下、カラム法ともいう)あるいはタンクに酵素処理液と吸着剤とを入れ攪拌して接触させる方法(以下、バッチ法ともいう)等がある。しかしながら繰り返し使用できる点からカラム法が好ましい。前記吸着剤と酵素処理液を接触させる場合の温度は、特に限定はないが約25℃以下が好ましく、酵素処理液は水で希釈して用いても良い。吸着剤の使用量は酵素処理液の固形分重量の1/2〜1/20が好ましい。
次に吸着剤に吸着した吸着成分は溶液中に溶出されて本発明のペプチド含有呈味成分が得られる。吸着成分を溶出するのに用いられる溶液は、エチルアルコールを主とする溶液であれば特に限定はないが、中でもエチルアルコールと水との混合溶液、該溶液とプロピレングリコールまたはグリセリンとの混合溶液が好ましい。特に好ましくは、エチルアルコールと水との混合溶液で、エチルアルコールの重量%(以下、%ともいう)が20〜99%の溶液、好ましくは30〜60%の溶液を用いるのが良い。
エチルアルコール溶液の溶出液の使用量には特に限定はないが、通液した酵素処理液量の10分の1乃至300分の1が好ましい。
その後、本発明のペプチド含有呈味成分は、ゲル濾過あるいはUF膜を用いて分子量で分画する。たとえば、分子量3,000以上、分子量500〜3,000および分子量100から500などの複数の画分に分けることができる。
また、各々の画分は、一般食品に1〜100ppm添加して、選出された、数名の専門パネリストによって、その風味改善性を確認しながら、寄与する化合物を探索することができる。
上記画分から更に、適当な分離カラム、例えばオクタデシルシリカ(ODS)カラムを用いてペプチドを分画・単離することができる。ペプチドの溶出はUV検出器によって検出することができる。最終的に、溶離されるピークを各々集めることにより、目的とするペプチドを回収することができる。
その際にも、一般食品に0.1〜10ppm添加して、選出された、数名の専門パネリストによって、各々の風味改善性を確認しながら行うことができる。
上記画分から更に、適当な分離カラム、例えばオクタデシルシリカ(ODS)カラムを用いてペプチドを分画・単離することができる。ペプチドの溶出はUV検出器によって検出することができる。最終的に、溶離されるピークを各々集めることにより、目的とするペプチドを回収することができる。
その際にも、一般食品に0.1〜10ppm添加して、選出された、数名の専門パネリストによって、各々の風味改善性を確認しながら行うことができる。
精製されたペプチドのアミノ酸配列は、プロテインシーケンサー(たとえば、島津プロテインシーケンサーPPSQ−21A)を用いて分析することができる。
分子量測定は、質量分析計(たとえば、島津LCMS−2010AやサーモクエストLCQ)を用いて行うことができる。
また、本発明のペプチドは、香料と組み合わせて風味改善剤組成物であるベース香料として使用することも可能である。前記の香料としては、例えば、乳製品フレーバー、ストロベリーやアップル等のフルーツ系フレーバー、シトラス系フレーバー、バニラ系フレーバー、コーヒー系フレーバー、洋酒系フレーバー、発泡酒・ビール系フレーバー、紅茶・ウーロン茶・緑茶などの茶系フレーバーまたは茶フレーバー等が挙げられる。
また、本発明のペプチドは、調味料成分と組み合わせて風味改善剤組成物である調味料として使用することも可能である。前記の調味料としては、カツオエキス、ホタテエキス、カニエキス、かきエキス、節類エキス(かつお節等)等の魚介系調味料、ビーフエキス、ポークエキス、チキンエキス等の畜肉系調味料、コンブエキス、シイタケエキス、キャベツエキス、たまねぎエキス等の植物系調味料を挙げることができる。前記風味改善剤組成物中の本ペプチドの含有量は、一般的には1〜30%が好ましい。風味改善剤組成物の食品への配合量は、風味改善剤組成物中に含まれる本ペプチドが食品に移行して、後記する食品へのペプチド添加量になるように計算して配合される。
本発明のベプチドによる風味向上などの風味改善効果が得られる食品としては、例えば、乳製品としてクリーム類(生クリーム、植物性油脂を含有するホイップクリーム、クリームソース等を含む)、バター類(植物性油脂を含有するデイリースプレッド等を含む)、チーズ類(プロセスチーズ、チーズフード等を含む)、アイスクリーム類(ラクトアイス等を含む)、濃縮乳類(脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、加糖脱脂濃縮乳等を含む)、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー類、調整粉乳類、牛乳、発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料及び、これら乳製品等を主要原料とする食品;飲料類として果実飲料類、炭酸飲料類、茶系飲料類(紅茶・ウーロン茶・緑茶など)、コーヒー飲料類、機能性飲料;酒類として洋酒類(ワイン・ウイスキー・ブランデー・ラム、ジン、リキュールなど)、清酒類、発泡酒・ビール類;菓子類として、キャンディー・デザート類、チューインガム類、チョコレート類、焼き菓子・ベーカリー類、冷菓類(アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類);スープ類;食肉加工品類;水産加工品類;調理食品類;冷凍食品類;調味料類;電子レンジ食品類;たばこ等が挙げられる。
前記食品に対する当ベプチドの添加量は、食品の種類や剤形によっても異なるが、一般的には1ppb〜100ppm、さらには50ppb〜10ppm添加することにより、食品の風味を有効に改善することができる。特にTrp−Leuのアミノ酸配列からなるベプチドが6種のペプチドの中で最も、コク味、旨味およびボリューム感の増大などの風味改善性が付与された。
本発明のペプチドまたは風味改善剤組成物は、食品にコク味、旨味、ボリューム感などを付与する。また、本発明の製造法によって、風味改善作用有するペプチドを得ることができる。更に、コク味、旨味、ボリューム感などが付与された食品を得ることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
実施例1(ペプチドの調製および同定)
1.酵素分解およびカラム吸・脱着処理によるペプチド混合物の製造
生乳を分画分子量50,000DaのUF膜で処理して得られた透過液(蛋白質0.5%、全固形分5.2%、オーム乳業社製)20kgを30Lタンクに仕込んで、攪拌しながら50℃になるまで加温した。なお、攪拌は、120rpmで行った。そのタンクにブロメラインF(天野エンザイム社製)、トリプシン(ノボザイム社製)およびウマミザイムG(天野エンザイム社製)を各々6.7gずつ加えて、4時間の酵素分解反応を行った。その後、熱失活して、その温度を室温まで下げた。
1.酵素分解およびカラム吸・脱着処理によるペプチド混合物の製造
生乳を分画分子量50,000DaのUF膜で処理して得られた透過液(蛋白質0.5%、全固形分5.2%、オーム乳業社製)20kgを30Lタンクに仕込んで、攪拌しながら50℃になるまで加温した。なお、攪拌は、120rpmで行った。そのタンクにブロメラインF(天野エンザイム社製)、トリプシン(ノボザイム社製)およびウマミザイムG(天野エンザイム社製)を各々6.7gずつ加えて、4時間の酵素分解反応を行った。その後、熱失活して、その温度を室温まで下げた。
三菱化学製ダイヤイオンHP-20充填剤200mlを95AL200mlに浸せき後、ステンレスカラム(内径4.8cm×長さ25cm)に充填し、95AL400ml、精製水600mlを流して、充填剤を洗浄した。次に、上記の酵素分解物を空間速度SV=50でカラムに通液した後、精製水600mlで洗浄し、57ALで吸着成分をSV=2で溶出させて、脱着液200gを得た。更に、減圧濃縮した後、凍結乾燥を行うと、固形物は2gであった。
2.ペプチド混合物のゲル濾過カラムによる分画
ゲル濾過分取HPLCを用いて、前記1.で得られたペプチド混合固形物を3つのフラクション、すなわち(A)分子量3,000以上、(B)分子量500〜3,000および(C)分子量75(グリシンの分子量)〜500に分画した。即ち、ペプチド混合固形分の10%水溶液を調製後、この溶液200μlをHPLCに注入し、前記フラクションを分取し(この操作を7回繰り返す)、凍結乾燥を行った。なお、そのゲル濾過分取カラムは、TSK−GEL G2000SW(東ソー、内径21.5mm×長さ300mm)を用いて、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)含有45%アセトニトリル水溶液の移動相により、流速3ml/分で溶出した。検出器は、紫外分光光度計を用いて、210nmの吸光度で検出した。データ解析は、GPCソフトウエア(島津製作所)を使用した。分子量マーカーとしてβ―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ヒトインシュリン、バシトラシン、グルタチオンおよびグリシンの分子量(対数目盛)と溶出時間から得られた分子量分布の検量線から、分子量10,000、5,000、1,000、500および100に相当する溶出時間を求めた。
ゲル濾過分取HPLCを用いて、前記1.で得られたペプチド混合固形物を3つのフラクション、すなわち(A)分子量3,000以上、(B)分子量500〜3,000および(C)分子量75(グリシンの分子量)〜500に分画した。即ち、ペプチド混合固形分の10%水溶液を調製後、この溶液200μlをHPLCに注入し、前記フラクションを分取し(この操作を7回繰り返す)、凍結乾燥を行った。なお、そのゲル濾過分取カラムは、TSK−GEL G2000SW(東ソー、内径21.5mm×長さ300mm)を用いて、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)含有45%アセトニトリル水溶液の移動相により、流速3ml/分で溶出した。検出器は、紫外分光光度計を用いて、210nmの吸光度で検出した。データ解析は、GPCソフトウエア(島津製作所)を使用した。分子量マーカーとしてβ―ラクトグロブリン、α―ラクトアルブミン、ヒトインシュリン、バシトラシン、グルタチオンおよびグリシンの分子量(対数目盛)と溶出時間から得られた分子量分布の検量線から、分子量10,000、5,000、1,000、500および100に相当する溶出時間を求めた。
前記分画凍結物を市販のチューハイに100ppm添加して、6名のパネリストで官能評価を行うと、いずれの分画物もアルコールの刺激臭を伴う辛みを和らげる効果を認めた。特に、フラクション(C)は、10ppm添加すると、果汁感を付与することが確認できた。
3.分子量75〜500の成分のODSカラムによる分画
上記の官能検査の結果から、フラクション(C)の分子量75〜500についてさらに詳細に分画を進めた。HPLC分取用ODSカラムを用いて、5つのフラクションに、2回に分けて分画した。そのときのHPLCクロマトグラムを図―1に示す。すなわち、フラクション (1)(保持時間;66〜83分)、(2)(保持時間;83〜88分)、 (3)(保持時間;88〜95分)、(4)(保持時間;95〜106分)および(5)(保持時間;106〜118分)であった。なお、その分取用ODSカラムは、YMC−Pack R&D ODS D−ODS−5−A(ワイエムシィ、内径20mm×長さ250mm)を用いて、0.1%TFA含有アセトニトリル濃度が0〜46%の直線濃度勾配(150分まで)のアセトニトリル水溶液移動相により流速4ml/分で溶出した。検出器は、紫外分光光度計を用いて、215nmの吸光度で検出した。次に、凍結乾燥後、各フラクションは、7%脱脂粉乳水溶液に1ppm賦香して、5名のパネリストで官能評価した。その結果、旨味、コク味およびボリューム感を最も付与することができたのは、全員、フラクション(5)とした。また、その次に風味改善性が付与されたとしたのは、フラクション(4)であった。このことは、疎水性の高いペプチドに風味改善作用が強いことを示唆した。
上記の官能検査の結果から、フラクション(C)の分子量75〜500についてさらに詳細に分画を進めた。HPLC分取用ODSカラムを用いて、5つのフラクションに、2回に分けて分画した。そのときのHPLCクロマトグラムを図―1に示す。すなわち、フラクション (1)(保持時間;66〜83分)、(2)(保持時間;83〜88分)、 (3)(保持時間;88〜95分)、(4)(保持時間;95〜106分)および(5)(保持時間;106〜118分)であった。なお、その分取用ODSカラムは、YMC−Pack R&D ODS D−ODS−5−A(ワイエムシィ、内径20mm×長さ250mm)を用いて、0.1%TFA含有アセトニトリル濃度が0〜46%の直線濃度勾配(150分まで)のアセトニトリル水溶液移動相により流速4ml/分で溶出した。検出器は、紫外分光光度計を用いて、215nmの吸光度で検出した。次に、凍結乾燥後、各フラクションは、7%脱脂粉乳水溶液に1ppm賦香して、5名のパネリストで官能評価した。その結果、旨味、コク味およびボリューム感を最も付与することができたのは、全員、フラクション(5)とした。また、その次に風味改善性が付与されたとしたのは、フラクション(4)であった。このことは、疎水性の高いペプチドに風味改善作用が強いことを示唆した。
4.ペプチドの単離
前記3.で得られたフラクション(4)について各々のピークをHPLC分取用ODSカラムで9回に分けて、単離した。分取した結果、ピーク(4)−1、(4)−2、(4)−3および(4)−4の4つのピーク(図―1参照)を得て、凍結乾燥を行った。なお、その分取用ODSカラムは、前記3.と同様なカラムを用いて、0.1%TFA含有アセトニトリル濃度が10〜34%の直線濃度勾配(150分まで)のアセトニトリル水溶液移動相により流速5ml/分で溶出した。検出器は、前記3.に準じた。
前記3.で得られたフラクション(4)について各々のピークをHPLC分取用ODSカラムで9回に分けて、単離した。分取した結果、ピーク(4)−1、(4)−2、(4)−3および(4)−4の4つのピーク(図―1参照)を得て、凍結乾燥を行った。なお、その分取用ODSカラムは、前記3.と同様なカラムを用いて、0.1%TFA含有アセトニトリル濃度が10〜34%の直線濃度勾配(150分まで)のアセトニトリル水溶液移動相により流速5ml/分で溶出した。検出器は、前記3.に準じた。
同様にしてフラクション(5)について各々のピークをHPLC分取用ODSカラムで11回に分けて、単離した。分取した結果、ピーク(5)−1と(5)−2の2つのピークを得て、凍結乾燥を行った。なお、その分取条件は、移動相の0.1%TFA含有アセトニトリル濃度を15〜34%の直線濃度勾配(150分まで)に変更する以外は、前記フラクション(4)と同様の条件で行った。
5.ペプチドの構造解析
前記4.で単離された各ピークのペプチド構造は、島津プロテインシーケンサPPSQ−21Aでの測定および液体クロマトグラフ質量分析計(島津LCMS−2010AとサーモクエストLCQ)による各々の分子量測定結果からアミノ酸配列を同定した。
前記4.で単離された各ピークのペプチド構造は、島津プロテインシーケンサPPSQ−21Aでの測定および液体クロマトグラフ質量分析計(島津LCMS−2010AとサーモクエストLCQ)による各々の分子量測定結果からアミノ酸配列を同定した。
6.Trp−Leuの光学純度分析
前記4.で単離したフラクション(5)−2(Trp-Leu)を、6N塩酸で加水分解後、キラル試薬D‐あるいはL‐FDAA[(1-フルオロ‐2、4‐ジニトロフェニル)‐アラニンアミド]で誘導体化して、標準アミノ酸(L‐あるいは D‐型)のそれと比較するために、HPLC分析を行った。そのODSカラムは、YMC−Pack ODS−A(ワイエムシィ、内径4.6mm×長さ150mm)を用いて、13%アセトニトリル/0.1Mリン酸(カリウム)緩衝液(pH5.0)の移動相により流速1ml/分で溶出した。検出器は、紫外分光光度計を用いて、340nmの吸光度で検出した。データ処理装置は、クロマトパック C−R7A(島津製作所)を使用した。HPLC分析後、得られたクロマトグラム中のピーク面積から各々のアミノ酸光学異性体比率(%)を算出した。その結果を表2に示す。
前記4.で単離したフラクション(5)−2(Trp-Leu)を、6N塩酸で加水分解後、キラル試薬D‐あるいはL‐FDAA[(1-フルオロ‐2、4‐ジニトロフェニル)‐アラニンアミド]で誘導体化して、標準アミノ酸(L‐あるいは D‐型)のそれと比較するために、HPLC分析を行った。そのODSカラムは、YMC−Pack ODS−A(ワイエムシィ、内径4.6mm×長さ150mm)を用いて、13%アセトニトリル/0.1Mリン酸(カリウム)緩衝液(pH5.0)の移動相により流速1ml/分で溶出した。検出器は、紫外分光光度計を用いて、340nmの吸光度で検出した。データ処理装置は、クロマトパック C−R7A(島津製作所)を使用した。HPLC分析後、得られたクロマトグラム中のピーク面積から各々のアミノ酸光学異性体比率(%)を算出した。その結果を表2に示す。
実施例2(L‐Trp‐L‐Leuの合成)
L‐TrpとL‐Leuとをペプチド合成機を用いた通常の固相法によって合成品を得た。合成品は、プロテインシーケンサおよびESIマススペクトルの測定値から目的物であることを確認した。さらにHPLCにより、純度がほぼ100%であることも確認した。
L‐TrpとL‐Leuとをペプチド合成機を用いた通常の固相法によって合成品を得た。合成品は、プロテインシーケンサおよびESIマススペクトルの測定値から目的物であることを確認した。さらにHPLCにより、純度がほぼ100%であることも確認した。
合成品と前記フラクション(5)−2とをHPLC分析を行った結果、同一の保持時間を有した。
本合成品(塩酸塩)の閾値は、3名のパネリストで調べた結果、精製水で1ppbであり、味覚(丸みと厚み)を感じた。
本合成品(塩酸塩)の閾値は、3名のパネリストで調べた結果、精製水で1ppbであり、味覚(丸みと厚み)を感じた。
実施例3(ペプチドの風味改善性評価)
単離されたジ・トリペプチド6種類について各々100ppm水溶液の塩酸塩を調製後、7%脱脂粉乳水溶液に各々0.1ppm賦香(pH7.0)して、5名のパネリストで官能評価した。その結果を表3に示す。
単離されたジ・トリペプチド6種類について各々100ppm水溶液の塩酸塩を調製後、7%脱脂粉乳水溶液に各々0.1ppm賦香(pH7.0)して、5名のパネリストで官能評価した。その結果を表3に示す。
実施例4(食品への配合)
実施例2で得られたL‐Trp-L‐Leu(塩酸塩)を、7%脱脂粉乳水溶液、市販のお茶およびインスタントコーヒーに各々0.1ppmを添加して、6名のパネリストで無添加品と比較して官能評価した。その結果、7%脱脂粉乳水溶液は、乳味感とボリューム感がアップし、コク味と厚みが付与され、さらに粉感がマスキングされ、苦味が感じられない効果があった。市販のお茶は、味に丸みが出て、色合いが濃くなり、高級感を付与することができた。また、インスタントコーヒーは、軽い立ち上がりで、すっきりしており、良好な風味、呈味を付与することができた。
実施例2で得られたL‐Trp-L‐Leu(塩酸塩)を、7%脱脂粉乳水溶液、市販のお茶およびインスタントコーヒーに各々0.1ppmを添加して、6名のパネリストで無添加品と比較して官能評価した。その結果、7%脱脂粉乳水溶液は、乳味感とボリューム感がアップし、コク味と厚みが付与され、さらに粉感がマスキングされ、苦味が感じられない効果があった。市販のお茶は、味に丸みが出て、色合いが濃くなり、高級感を付与することができた。また、インスタントコーヒーは、軽い立ち上がりで、すっきりしており、良好な風味、呈味を付与することができた。
実施例5(レトルト耐性)
精製水に実施例2のL‐Trp-L‐Leu(塩酸塩)3.6ppmを加え、レトルト殺菌(121℃、25分間)を行い、殺菌していない場合と比べて、2名のパネリストによる官能評価をすると共に、HPLC によるその定量分析をした。その結果、レトルト殺菌をすると、風味改善性が若干弱くなっているものの劣化臭もなく、コク味、まろやかさおよび丸みを強く感じ、またL‐Trp-L‐Leu(塩酸塩)も同量含有していた。
また、同様に7%脱脂粉乳水溶液についても3.6ppm添加し、レトルト殺菌を行った。その結果、レトルト殺菌によって、粉っぽさが少し生じて、そのマスキングが完全ではなくなったものの劣化臭もなく、コク味や厚みなどの風味改善効果は発揮されていて、3.1ppm含有していた。以上のことから、L‐Trp-L‐Leu(塩酸塩)にはレトルト耐性があることも確認された。
精製水に実施例2のL‐Trp-L‐Leu(塩酸塩)3.6ppmを加え、レトルト殺菌(121℃、25分間)を行い、殺菌していない場合と比べて、2名のパネリストによる官能評価をすると共に、HPLC によるその定量分析をした。その結果、レトルト殺菌をすると、風味改善性が若干弱くなっているものの劣化臭もなく、コク味、まろやかさおよび丸みを強く感じ、またL‐Trp-L‐Leu(塩酸塩)も同量含有していた。
また、同様に7%脱脂粉乳水溶液についても3.6ppm添加し、レトルト殺菌を行った。その結果、レトルト殺菌によって、粉っぽさが少し生じて、そのマスキングが完全ではなくなったものの劣化臭もなく、コク味や厚みなどの風味改善効果は発揮されていて、3.1ppm含有していた。以上のことから、L‐Trp-L‐Leu(塩酸塩)にはレトルト耐性があることも確認された。
Claims (4)
- Trp―Val、Trp―Tyr、Tyr―Trp、Trp―Ile、Trp―LeuまたはGlu―Ile―Leuの配列からなる風味改善作用を有するペプチド。
- 請求項1記載のペプチドを含有することを特徴とする風味改善剤組成物。
- 乳蛋白質を酵素分解することを特徴とする請求項1記載のペプチドを製造する方法。
- 請求項1記載のペプチドまたは請求項2記載の呈味改善剤組成物を配合して得られる食品。
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