JP2006158301A - 鮮魚の鮮度保持方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】食用に供するための生魚、特に鮮度の高い魚について鮮度を保持しつつ輸送する方法を提供する。
【解決手段】色調保持効果や微生物の抑制効果があり、食品として認められているにがりを添加した食塩水溶液に魚を浸漬し、浸漬液の水切りを行ってから冷蔵輸送することとした。
【選択図】図1
【解決手段】色調保持効果や微生物の抑制効果があり、食品として認められているにがりを添加した食塩水溶液に魚を浸漬し、浸漬液の水切りを行ってから冷蔵輸送することとした。
【選択図】図1
Description
本発明は、鮮魚の鮮度保持方法に関するものである。
従来、食用生魚の一般的な鮮度の指標として、微生物の繁殖度合いや、魚体の色調、魚肉脂質の酸化度合いなどが知られており、食用に供される生魚、特に鮮度の高い魚において微生物の繁殖を抑制するための方法として、無臭性の塩素系殺菌剤である安定化二酸化塩素の溶液に浸漬する方法が知られている(特許文献1参照)。
また、魚体の色調保持や魚肉脂質の酸化防止を目的として、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ニコチン酸アミドなどの抗酸化物質を単独使用または併用する方法や、カテキンや茶抽出物を用いることで色調保持を図る方法が知られている(特許文献2参照)。
特開2003−250444号公報
特開2004−180614号公報
しかしながら、前記した無臭性の塩素系殺菌剤である安定化二酸化塩素の溶液に浸漬する方法や、魚体の色調保持や魚肉脂質の酸化防止を目的として、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、ニコチン酸アミドなどの抗酸化物質を単独使用または併用する方法は、近年消費者の健康志向の上昇によって食品添加物を避ける傾向があり、消費者の購買意欲を阻害する恐れがあった。
また、前記カテキンや茶抽出物を用いることで色調保持を図る方法では、食品由来の抽出物であることから消費者が購入するに際して抵抗感は少ないものの、魚体表面に存在する粘液にカテキンや茶抽出物の浸透が阻まれることから色調保持効果は低く、充分な効果を得るのは困難であった。
併せて、微生物の繁殖、魚体の色調、魚肉脂質の酸化度合いなど、一般的に魚の鮮度の目安として用いられている指標は、加工時や輸送時の温度上昇や時間の経過が主な劣化要因であることから、魚体の保冷が可能な輸送方法や輸送時間が短い輸送方法であることが望ましい。
そこで、本発明では、0.2〜5.0%(w/v)の食塩水ににがりを添加して、−3〜10℃の水温に保持した浸漬液中に、鮮魚を一定時間浸漬することを特徴とすることとした。
また、請求項2記載の本発明では、浸漬液中に一定時間浸漬した鮮魚を、同浸漬液から取り出すと共に水切りし、さらに、水切りした鮮魚の表面ににがりを噴霧することを特徴とすることとした。
また、請求項3記載の本発明では、−3〜10℃の水温に保持した0.2〜5.0%(w/v)の食塩水中に、鮮魚を一定時間浸漬し、同食塩水から取り出すと共に水切りし、さらに、水切りした鮮魚の表面ににがりを噴霧することとした。
また、請求項4記載の本発明では、少量の空気を封入した袋体内に鮮魚を密封することを特徴とすることとした。
また、請求項5記載の本発明では、断熱性の輸送用容器内の底部に蓄冷材を配置し、同蓄冷材の上に袋体内に密封した鮮魚を配置し、同鮮魚の上方にドライアイスを配置することとした。
さらに、請求項6記載の本発明では、輸送用容器には、ICタグ(Integrated Circuit Tag)を取付けると共に、同ICタグはメモリ等のICチップと、同ICチップに接続したアンテナと、同アンテナ及びICチップを被覆する被覆体とを具備することにも特徴を有する。
(1)請求項1記載の本発明では、0.2〜5.0%(w/v)の食塩水ににがりを添加して、−3〜10℃の水温に保持した浸漬液中に、鮮魚を一定時間浸漬するようにしている。
このようにして、浸漬液として食塩水ににがりを添加したものを使用することにより、氷等を入れることで同浸漬液の水温を−3〜10℃の範囲に保持することができ、しかも、にがりが鮮魚の鮮度保持に有効に機能する。
ここで、にがりには、自然海塩(成分無調整の塩)から生じるにがり(天然純にがり)と、イオン交換膜によって得られるにがりとがあり、天然純にがりとは、海水100%を原料とする天日塩、又は、平釜法により製塩される唯一自然海塩と呼ばれる自然塩より取り出されるものであり、マグネシウム、カルシウム、カリウム、銅、ケイ素、亜鉛、リチウム、ストロンチウム等の80元素近くが含まれているものである。
そして、マグネシウムと鉄は、赤色の魚、青物の色をより鮮やかにして、透明感を持続させる働きがある。
また、カリウムとカルシウムは、鮮魚の表面の一般生菌の増殖を抑制する働きがある。
マグネシウムとカリウムは、鮮魚の表面の皮の身締め効果をある。
亜鉛と銅は、マグネシウムの色調の保持を効果的に補助する効果がある。
しかも、生魚の筋肉は、ペーハー(pH)が7.2〜7.4であるが、劣化と共に乳酸が生成されて、pHが5〜6に低下し、肉質は透明感がなくなり、不透明化し、硬化し、その後、軟化する。これは、筋肉質内のタンパク質であるアクチンとミオシンとカルシウムイオンとの関係によるものであるが、にがりはこの反応を遅らせる働きがある。
さらには、生臭さは、トリメチルアミン、ジメチルアミンの臭いであり、時間とともに増加するが、にがりに含まれるマグネシウムのイオンとカルシウムのイオンは、この反応を抑制する働きがある。
(2)請求項2記載の本発明では、浸漬液中に一定時間浸漬した鮮魚を、同浸漬液から取り出すと共に水切りし、さらに、水切りした鮮魚の表面ににがりを噴霧するようにしている。
このようにして、水切りした鮮魚の表面ににがりを噴霧することにより、鮮魚の不透明化や軟化を遅らせ、生臭さを抑制し、色調を良好に保持することができる。
ここで、鮮魚の色素において、紅さけ、マス、カニ、エビ、鯛等の黄色〜橙色〜赤色は、カロチノイド系(アスタキサンチン)であり、鮮魚の表皮は、赤色、橙色、褐色、青緑色、黒色と種々の色調を呈しているが、黒色は主にメラニンによるもので、青色はビリベルジンであるが、これらにはカロチノイドが含まれているため、鮮魚に多種多様の色調がある。
そして、カロチノイドの変化は、パーオキシターゼ、リポキシターゼ等の酵素による酸化が主体であるが、この酵素をにがり成分の金属イオンが不活性化させて、色調を良好に保持させることができる。
なお、酵素によらない褐色反応や退色反応は、空気の存在化や品温の上昇において促進されるものである。
(3)請求項3記載の本発明では、−3〜10℃の水温に保持した0.2〜5.0%(w/v)の食塩水中に、鮮魚を一定時間浸漬し、同食塩水から取り出すと共に水切りし、さらに、水切りした鮮魚の表面ににがりを噴霧するようにしている。
このようにして、浸漬の際に用いるにがりを省くことができると共に、にがりを噴霧することで鮮魚の不透明化や軟化を遅らせ、生臭さを抑制し、色調を良好に保持することができる。
すなわち、浸漬に際して使用するにがりの費用を削減することができて、かつ、鮮魚の劣化を防止することができる。
(4)請求項4記載の本発明では、少量の空気を封入した袋体内に鮮魚を密封するようにしている。
このようにして、鮮魚を袋体内に密封することにより、鮮魚の油脂が酸化するのを防止することができる。
すなわち、鮮魚の魚皮では脂質が組織中に埋没して保護されているため、皮組織が破壊ないしは傷つけられると、油脂の酸化が急激に進むという不具合があるが、かかる不具合を防止することができる。
また、魚体表面が脱水・乾燥してシェルフライフを著しく短縮化するのを防止することができる。
(5)請求項5記載の本発明では、断熱性の輸送用容器内の底部に蓄冷材を配置し、同蓄冷材の上に袋体内に密封した鮮魚を配置し、同鮮魚の上方にドライアイスを配置するようにしている。
このようにして、輸送用容器内において、鮮魚の上方にドライアイスを配置しているため、同ドライアイスが一定時間(例えば、12時間)冷却効果を発揮し、その後、ドライアイスから気化した冷却状態の二酸化炭素が、輸送用容器内に充満して一定時間(例えば、8時間)保冷効果を発揮し、その後、蓄冷材が一定時間(例えば、8時間)保冷効果を発揮する。
その結果、輸送に28時間を要するような遠隔地に鮮魚を輸送する場合でも、輸送用容器内を一定の低温に確保することができて、鮮魚の鮮度を良好に確保することができる。
(6)請求項6記載の本発明では、輸送用容器には、ICタグを取付けると共に、同ICタグはメモリ等のICチップと、同ICチップに接続したアンテナと、同アンテナ及びICチップを被覆する被覆体とを具備するようにしている。
これによってICタグのICチップにあらかじめ書き込んだ輸送用容器内の商品に関する固有情報を、読取装置により読み取ることで、輸送用容器内の商品のトレーサビリティ等を行うことができる。
本発明に係る鮮魚の鮮度保持方法は、図1に示すように、流水洗浄工程(1)と、にがり含有氷塩水浸漬工程(2)と、水切り工程(3)と、にがり水噴霧工程(4)とを順次経て第1出荷工程(5)に至るものと、上記にがり水噴霧工程(4)からパック・脱気工程(6)を経て第2出荷工程(7)に至るものと、上記パック・脱気工程(6)から箱詰め工程(8)を経て第3出荷工程(9)に至るものとがある。以下に、各工程の順に説明する。
〔流水洗浄工程(1)〕
まず、水揚げした鮮魚を流水にて洗浄する。この流水洗浄によって、魚体表面に付着している汚れや余分な粘液などを洗浄できると共に、海洋由来の微生物なども洗い流すことができるので、魚体表面の初発菌数を低く抑えることができ、にがりによる微生物繁殖抑制作用が効果的に生起することができる。流水洗浄に用いる水は、飲用可能な程度に微生物数が少なくて清浄であれば良く、好ましくは上水道水等、さらに好ましくは上水道水等を用いて調製した0.2〜5.0%(w/v)の塩水が良い。
まず、水揚げした鮮魚を流水にて洗浄する。この流水洗浄によって、魚体表面に付着している汚れや余分な粘液などを洗浄できると共に、海洋由来の微生物なども洗い流すことができるので、魚体表面の初発菌数を低く抑えることができ、にがりによる微生物繁殖抑制作用が効果的に生起することができる。流水洗浄に用いる水は、飲用可能な程度に微生物数が少なくて清浄であれば良く、好ましくは上水道水等、さらに好ましくは上水道水等を用いて調製した0.2〜5.0%(w/v)の塩水が良い。
〔にがり含有氷塩水浸漬工程(2)〕
次に、0.2〜5.0%(好ましくは0.8〜3.5%、さらに好ましくは2.5〜3.5%)(w/v)の食塩水に0.05〜5.0%(好ましくは0.1〜2.0%)(w/v)のにがりを添加して、−3〜10℃(好ましくは−1〜−2℃)の水温に保持した浸漬液中に、鮮魚を一定時間浸漬する。本工程によって、にがりが含有しているマグネシウムと鉄は魚体色を鮮やかにし、カリウムとカルシウムは魚体表面の微生物の増殖を抑制し、マグネシウムとカリウムは魚皮の引き締め効果を生起し、亜鉛と銅は色調保持に寄与することとなる。本工程において食塩水に添加するにがりは、イオン交換膜によって得られるにがりであっても良いが、好ましくは、天然純にがりが良い。
次に、0.2〜5.0%(好ましくは0.8〜3.5%、さらに好ましくは2.5〜3.5%)(w/v)の食塩水に0.05〜5.0%(好ましくは0.1〜2.0%)(w/v)のにがりを添加して、−3〜10℃(好ましくは−1〜−2℃)の水温に保持した浸漬液中に、鮮魚を一定時間浸漬する。本工程によって、にがりが含有しているマグネシウムと鉄は魚体色を鮮やかにし、カリウムとカルシウムは魚体表面の微生物の増殖を抑制し、マグネシウムとカリウムは魚皮の引き締め効果を生起し、亜鉛と銅は色調保持に寄与することとなる。本工程において食塩水に添加するにがりは、イオン交換膜によって得られるにがりであっても良いが、好ましくは、天然純にがりが良い。
天然純にがりは、海水の水分を徐々に蒸発し、塩化ナトリウムと塩化ナトリウムよりも水に対する溶解度が低い物質との大部分を析出させて濾別した濾液のことをいう。したがって、本実施例でいう天然純にがりは、濾液の水分をさらに蒸発させることで濾液中の成分をより濃厚としたものであっても良く、自由水、結合水等を除去したものであっても良い。すなわち天然純にがりとは、原料の100%が海水である天日塩や、海水を平釜法に供することで得られる自然塩のことであり、マグネシウム、カルシウム、カリウム、銅、ケイ素、亜鉛、リチウム、ストロンチウム等80元素近くを含むものである。
さらに、にがりは、天然純にがりを使用せず、塩化マグネシウム等のにがりを構成する成分を適宜溶解して使用しても良く、好ましくはにがりを構成する成分を0.05〜5.0%(w/v)、さらに好ましくは0.1〜2.0%(w/v)となるように溶解して使用しても良い。
また、にがり含有氷塩水に浸漬する時間は、10〜120分間が好ましい。10分間未満であると、にがりが含有する各元素が魚体へ浸透しておらず、一方、120分間を経過していれば充分ににがりの効果が見られるので、魚体を更ににがり含有氷塩水へ浸漬しても、更なる効果が期待できないことから、120分間以上の浸漬は作業効率上好ましくない。
〔水切り工程(3)〕
にがり含有氷塩水に浸漬した魚体の水切りを行う。水切りを行うことで魚体に付着した余分な水分を除去することができ、後述するにがり水噴霧工程(4)でのにがり水が、魚体表面の水分によって濃度を希釈することなく、充分ににがりの効果を魚体に作用させることができる。
にがり含有氷塩水に浸漬した魚体の水切りを行う。水切りを行うことで魚体に付着した余分な水分を除去することができ、後述するにがり水噴霧工程(4)でのにがり水が、魚体表面の水分によって濃度を希釈することなく、充分ににがりの効果を魚体に作用させることができる。
〔にがり水噴霧工程(4)〕
次に、水切り工程(3)を経た魚体に対して、にがり水を噴霧する。噴霧するにがり水は、例えば天然純にがりをそのまま用いても良いが、天然純にがりを5〜50%(w/v)に調製したものであっても良い。さらに、にがり水は、天然純にがりを使用せず、塩化マグネシウム等のにがりを構成する成分を適宜溶解して噴霧しても良く、にがりを構成する成分を5〜50%(w/v)に調製して噴霧するようにしても良い。
次に、水切り工程(3)を経た魚体に対して、にがり水を噴霧する。噴霧するにがり水は、例えば天然純にがりをそのまま用いても良いが、天然純にがりを5〜50%(w/v)に調製したものであっても良い。さらに、にがり水は、天然純にがりを使用せず、塩化マグネシウム等のにがりを構成する成分を適宜溶解して噴霧しても良く、にがりを構成する成分を5〜50%(w/v)に調製して噴霧するようにしても良い。
本工程によって、魚体表面に噴霧したにがり成分が、良好な魚体色、引締まった魚肉、良好な微生物抑制状態など食品としての新鮮さを充分に保ちながら、官能的に非常に良好な鮮魚を消費者の手元に届けることができる。
〔第1出荷工程(5)〕
にがり水を噴霧した鮮魚は、本工程によって直接出荷することができる。すなわち、鮮魚を大量に入荷する市場や鮮魚店、飲食店等には、にがり水を噴霧した鮮魚を例えば発泡スチロール容器等に入れ、冷蔵車等により出荷することで、後述する個包装によるコストを削減できる。さらに、魚体表面に噴霧したにがり水は多量の塩類を含んでいることから、冷気が魚体に当たる冷蔵車内等の乾燥条件下でも水分が蒸発しにくく、にがり水を噴霧しない魚と比較して魚体表面のうるおい感を良好に保つことができる。
にがり水を噴霧した鮮魚は、本工程によって直接出荷することができる。すなわち、鮮魚を大量に入荷する市場や鮮魚店、飲食店等には、にがり水を噴霧した鮮魚を例えば発泡スチロール容器等に入れ、冷蔵車等により出荷することで、後述する個包装によるコストを削減できる。さらに、魚体表面に噴霧したにがり水は多量の塩類を含んでいることから、冷気が魚体に当たる冷蔵車内等の乾燥条件下でも水分が蒸発しにくく、にがり水を噴霧しない魚と比較して魚体表面のうるおい感を良好に保つことができる。
〔パック・脱気工程(6)〕
にがり水噴霧工程(4)を経た鮮魚は、本工程において個包装(パック)し、パック内に少量の空気を残して脱気する。パックには合成樹脂製の袋を用いることができるが、水密性及び気密性を有するものが好ましい。パックが水密性を有することで水分が漏出するのを防止するのは勿論のこと、気密性を有することで、パック周囲に存在する酸素が袋を介してパック内に滲入し、魚体の劣化が促進するのを防ぐことができる。さらにパック内には少量の空気を存在させることによって、不要な酸素を除去しながらも空気によるクッション性を残すことで、輸送時にパック同士がぶつかることによる魚体の損傷を防ぐことができる。
にがり水噴霧工程(4)を経た鮮魚は、本工程において個包装(パック)し、パック内に少量の空気を残して脱気する。パックには合成樹脂製の袋を用いることができるが、水密性及び気密性を有するものが好ましい。パックが水密性を有することで水分が漏出するのを防止するのは勿論のこと、気密性を有することで、パック周囲に存在する酸素が袋を介してパック内に滲入し、魚体の劣化が促進するのを防ぐことができる。さらにパック内には少量の空気を存在させることによって、不要な酸素を除去しながらも空気によるクッション性を残すことで、輸送時にパック同士がぶつかることによる魚体の損傷を防ぐことができる。
また、後述する箱詰め工程(8)において使用するドライアイスの冷気が、パック及びパック内部の空気層によって、鮮魚表面に直接当たることを防止することができて、魚体に冷凍焼けが生じることを防ぐことができる。
〔第2出荷工程(7)〕
パック・脱気工程(6)においてパッキングした鮮魚は、本工程で出荷することができる。すなわち、第1出荷工程(5)で出荷する鮮魚の状態と比較して、魚体全体がいわゆる真空パック状態とはならない程度に空気を除去して密封してあるために、酸素による魚肉脂質の自動酸化や魚肉の変色が起こりにくく、より新鮮さを保ちながら配送できるという長所がある。
パック・脱気工程(6)においてパッキングした鮮魚は、本工程で出荷することができる。すなわち、第1出荷工程(5)で出荷する鮮魚の状態と比較して、魚体全体がいわゆる真空パック状態とはならない程度に空気を除去して密封してあるために、酸素による魚肉脂質の自動酸化や魚肉の変色が起こりにくく、より新鮮さを保ちながら配送できるという長所がある。
また、魚体表面はにがり水で覆われているが、パッキングしていることで、空気が乾燥している条件下においても魚体表面の水分による潤いをさらに保つことができる。併せて、魚体は袋体によって外界から遮断されるので、塵や昆虫などの汚染媒介物を避けることができて、衛生的に大変好ましい状態での輸送環境を確立することができる。
〔箱詰め工程(8)〕
パック・脱気工程(6)を経た鮮魚は、本工程において消費者の手元まで低温条件下での配送ができるように、個別に冷蔵機能を持たせて梱包する。例えば、発泡スチロールの如く断熱機能を有する容器に、鮮魚を衝撃から保護するクッション材と、長時間低温状態を保つための蓄冷剤と、短時間で常温から低温に容器内の温度を下げるドライアイスとを備えることで長時間安定した低温下で鮮魚を配送することができる。
パック・脱気工程(6)を経た鮮魚は、本工程において消費者の手元まで低温条件下での配送ができるように、個別に冷蔵機能を持たせて梱包する。例えば、発泡スチロールの如く断熱機能を有する容器に、鮮魚を衝撃から保護するクッション材と、長時間低温状態を保つための蓄冷剤と、短時間で常温から低温に容器内の温度を下げるドライアイスとを備えることで長時間安定した低温下で鮮魚を配送することができる。
〔第3出荷工程(9)〕
箱詰め工程(8)を経た鮮魚は、本工程において個別の消費者の手元に直接届けることができる。さらに、箱詰めした鮮魚は送付状と共にICタグ(Integrated Circuit Tag)を付することによって、配送作業を効率良く行うことができ、消費者の手元に届くまでの時間短縮を図ることができるために、魚の鮮度をより維持した状態で提供することができる。
箱詰め工程(8)を経た鮮魚は、本工程において個別の消費者の手元に直接届けることができる。さらに、箱詰めした鮮魚は送付状と共にICタグ(Integrated Circuit Tag)を付することによって、配送作業を効率良く行うことができ、消費者の手元に届くまでの時間短縮を図ることができるために、魚の鮮度をより維持した状態で提供することができる。
以下において、図面を用いて魚の輸送方法の実施例について具体的に説明する。
〔流水洗浄工程(1)〕
図2は、本流水洗浄工程において、水揚げした魚11の魚体表面の洗浄について示している。水揚げした魚11は、例えばトレー13に載置し、ホース14から出る水道水である流水12によって魚体表面を洗浄する。水揚げした魚11の表面には、例えば魚11から剥がれ落ちた鱗や即殺時の血液などが付着している場合があり、これらは見た目を低下させるだけではなく、付着した部分から鮮度が低下する原因となりうる。そこで、魚11の表面を流水12で洗浄することにより、表面に付着している鱗や血液を洗い流し、鮮度低下の原因を除去することができる。また、魚11の表面には海洋由来の微生物も付着している。菌などの微生物の数は、保存時間が長くなるほど指数関数的に増加するので、微生物の観点から衛生的に魚体の鮮度を長く保つためには、初めに魚体表面に存在する菌数(初発菌数)を低く抑えておくことが好ましい。そこで、流水12で魚11を洗浄することにより、魚体表面の微生物を洗い流し、初発菌数を低く抑えることにより魚11の鮮度を長く保つことができる。
図2は、本流水洗浄工程において、水揚げした魚11の魚体表面の洗浄について示している。水揚げした魚11は、例えばトレー13に載置し、ホース14から出る水道水である流水12によって魚体表面を洗浄する。水揚げした魚11の表面には、例えば魚11から剥がれ落ちた鱗や即殺時の血液などが付着している場合があり、これらは見た目を低下させるだけではなく、付着した部分から鮮度が低下する原因となりうる。そこで、魚11の表面を流水12で洗浄することにより、表面に付着している鱗や血液を洗い流し、鮮度低下の原因を除去することができる。また、魚11の表面には海洋由来の微生物も付着している。菌などの微生物の数は、保存時間が長くなるほど指数関数的に増加するので、微生物の観点から衛生的に魚体の鮮度を長く保つためには、初めに魚体表面に存在する菌数(初発菌数)を低く抑えておくことが好ましい。そこで、流水12で魚11を洗浄することにより、魚体表面の微生物を洗い流し、初発菌数を低く抑えることにより魚11の鮮度を長く保つことができる。
また、図2では魚11をトレー13に載置して洗浄する状態を示しているが、魚11は複数を同時に洗浄しても良く、また、深さのある容器に流水浸漬するようにしても良い。
〔にがり含有氷塩水浸漬工程(2)〕
次に、流水洗浄工程を経た魚11は、にがり含有氷塩水22に対して浸漬する。にがり含有氷塩水22とは、例えば10lの水に対して20〜500g(好ましくは80〜350g、さらに好ましくは250〜350g)の食塩と、5〜500g(好ましくは10〜200g)のにがりとを溶解し、2〜10kgの氷を添加したものである。
次に、流水洗浄工程を経た魚11は、にがり含有氷塩水22に対して浸漬する。にがり含有氷塩水22とは、例えば10lの水に対して20〜500g(好ましくは80〜350g、さらに好ましくは250〜350g)の食塩と、5〜500g(好ましくは10〜200g)のにがりとを溶解し、2〜10kgの氷を添加したものである。
ここで食塩の量は、10lの水に対して20g未満ではにがり含有氷塩水22の浸透圧が低く、500gを超えると浸透圧が高いので魚11の魚肉組織に浸透圧による障害を引き起こすために好ましくない。好ましくは、10lの水に対して80〜350gの食塩を溶解することで、それぞれ生理的食塩水濃度〜海水塩濃度の範囲とすることができ、魚11の魚肉組織に対して、浸透圧による障害を与えずに浸漬することができる。また、さらに好ましくは10lの水に対して250〜350gの食塩を溶解することで、海水塩濃度付近とすることができるので、魚11の魚肉組織に対して、さらに浸透圧による障害を与える恐れを軽減することができる。
また、添加するにがりの量は、10lの水にたいして5g未満では、にがりが魚にもたらす効果が得られず、500gを超えて添加してもにがりの更なる効果は顕著に現れないので、製造上好ましくない。好ましくは、食塩水に対してにがりを10〜200g添加することで、無駄なく効果的ににがりの作用を享受することができる。
併せて、氷塊23の添加量は10lの水に対して2kg未満ではにがり含有氷塩水22の充分な冷却効果が得られず、10kgを超えると作業性が悪化すると共に、添加した氷塊23が魚体表面に当たることで傷つきやすくなる。
また、にがり含有氷塩水22に浸漬する時間は10〜120分が好ましく、さらに好ましくは10〜60分間が良い。10分間未満であると、にがりが含有する各元素が魚体へ浸透しておらず、一方、120分間を経過していれば充分ににがりの効果が見られるので、魚体を更ににがり含有氷塩水22へ浸漬しても、更なる効果が期待できないことから、120分間以上の浸漬は作業効率上好ましくない。
図3では容器21内に、氷塊23を混合したにがり含有氷塩水22を満たして、魚11を浸漬した状態について示している。本実施例においてにがり含有氷塩水22は、例えば水10lに対して300gの食塩と、100gのにがりとを加えて攪拌溶解し、7kgの氷を添加することで温度を−1℃としている。にがり含有氷塩水22を上記範囲内の組成としたことで、魚11には浸漬液の水温を氷点下である−1〜−2℃の範囲に保持することができ、しかも、にがりが鮮魚の鮮度保持に有効に機能する。
また、このにがり含有氷塩水浸漬工程によって、にがりが含むカリウムイオン及びカルシウムイオンが魚体表面の微生物の増殖を抑制し、マグネシウムイオンや鉄イオンが魚体の色をより鮮やかにして透明感を維持するようにしているものである。
ここでにがり含有氷塩水22の温度は、にがり含有氷塩水22及び魚11が凍結するような低温ではなく、且つ、微生物の増殖や魚体表面の色、魚肉脂質の酸化を助長するような温度でなければ良く、望ましくは4℃以下であってにがり含有氷塩水22または魚11の凍結温度のいずれか高い温度以上であり、さらに望ましくは、にがり含有氷塩水22に対して0.2〜1倍重量の氷塊23を混合してなる−1〜−2℃が良い。
また、ここで言うにがりは海水に対してイオン交換を行うことで得られるにがりでもよく、望ましくは海水を煮詰めることによって得られる天然純にがりであっても良い。
天然純にがりは、海水の水分を徐々に蒸発し、塩化ナトリウムと塩化ナトリウムよりも水に対する溶解度が低い物質との大部分を析出させて濾別した濾液のことをいう。したがって、本実施例でいう天然純にがりは、濾液の水分をさらに蒸発させることで濾液中の成分をより濃厚としたものであっても良く、自由水、結合水等を除去したものであっても良い。すなわち天然純にがりとは、原料の100%が海水である天日塩や、海水を平釜法に供することで得られる自然塩のことであり、マグネシウム、カルシウム、カリウム、銅、ケイ素、亜鉛、リチウム、ストロンチウム等80元素近くを含むものである。
〔水切り工程(3)〕
次に、にがり含有氷塩水浸漬工程で例えば60分間の浸漬を行った場合、にがり含有氷塩水22から魚11を取り出して、魚体表面の水切りを行う。
次に、にがり含有氷塩水浸漬工程で例えば60分間の浸漬を行った場合、にがり含有氷塩水22から魚11を取り出して、魚体表面の水切りを行う。
本工程は、魚体表面ににがり含有氷塩水22のにがり成分を残しつつ、余分な水分を除去することが目的であることから、完全ににがり含有氷塩水22を除去してしまう水きり方法でなければ良い。処理量が多ければ遠心力による脱水が可能であり、魚体への損傷などを極力避けるためには、清浄な布で軽くふき取るような方法でも良く、圧縮気体を魚体に吹き付けることで、水分を吹き飛ばす方法であっても良い。
〔にがり水噴霧工程(4)〕
次に、水切りを終えた魚11に対してにがり水31を噴霧する(図4)。図4では、魚11をトレー13に載置し、にがり水31を例えば噴霧器32で噴霧している状態を示している。本工程において使用するにがりは、イオン交換膜によって得たにがりであっても良いが、好ましくは天然純にがりが良い。なお、本実施例においては、25%(w/v)の天然純にがり水溶液をにがり水31として噴霧している。
次に、水切りを終えた魚11に対してにがり水31を噴霧する(図4)。図4では、魚11をトレー13に載置し、にがり水31を例えば噴霧器32で噴霧している状態を示している。本工程において使用するにがりは、イオン交換膜によって得たにがりであっても良いが、好ましくは天然純にがりが良い。なお、本実施例においては、25%(w/v)の天然純にがり水溶液をにがり水31として噴霧している。
また、にがり水31は雨滴状のにがり水31を魚11に浴びせる方法や、にがり水31に浸漬する方法であっても良いが、好ましくは噴霧器32(スプレータ)を用いてにがり水31を霧状にして魚11に噴霧する。にがり水31を霧状に噴霧することで、にがり水31を過剰に使用せず無駄がないので、製造上安価とすることができる。しかも、水切りを行った魚11に対して必要なにがり成分以上のにがり水31による水分を付着することがなく、更なる水切りが不要となる。
そして、魚11に付着したにがり水31は、にがりが含むイオンによってそれぞれ魚11に対して効果を及ぼす。マグネシウムと鉄は、赤色の魚、青物の色をより鮮やかにして、透明感を持続させる働きがあり、また、カリウムとカルシウムは、鮮魚の表面の一般生菌の増殖を抑制する働きがある。更に、マグネシウムとカリウムは、鮮魚の表面の皮の身締め効果をあり、亜鉛と銅は、マグネシウムの色調の保持を効果的に補助する効果がある。
しかも、生魚の筋肉は、ペーハー(pH)が7.2〜7.4であるが、劣化と共に乳酸が生成されて、pHが5〜6に低下し、肉質は透明感がなくなり、不透明化し、硬化し、その後、軟化する。これは、筋肉質内のタンパク質であるアクチンとミオシンとカルシウムイオンとの関係によるものであるが、にがりはこの反応を遅らせる働きがある。
さらには、生臭さは、トリメチルアミン、ジメチルアミンの臭いであり、時間とともに増加するが、にがりに含まれるマグネシウムのイオンとカルシウムのイオンは、この反応を抑制する働きがある。
〔第1出荷工程(5)〕
にがり水31を噴霧した魚11は、魚体表面がにがり水31で覆われており、鮮度を維持することができる状態であるので出荷に供することができる。すなわち、にがり水31は多量の塩を含んでいることから蒸発しにくく、輸送中でも魚体表面が潤いを保っているので、特に乾燥防止のための包装等を必要とせずに鮮度の高い魚11を出荷することができる。
にがり水31を噴霧した魚11は、魚体表面がにがり水31で覆われており、鮮度を維持することができる状態であるので出荷に供することができる。すなわち、にがり水31は多量の塩を含んでいることから蒸発しにくく、輸送中でも魚体表面が潤いを保っているので、特に乾燥防止のための包装等を必要とせずに鮮度の高い魚11を出荷することができる。
〔パック・脱気工程(6)〕
次に魚11の梱包形態について図5を用いて説明する。
次に魚11の梱包形態について図5を用いて説明する。
水切り工程を経た魚11は、少量の空気43と共に水密性及び気密性を有する袋体42に密封して、魚密封体41を形成する。ここで、魚密封体41を形成するにあたって封入する気体は空気43であれば製造上安価であるが、魚体の酸化の防止に効果のある窒素等の不活性気体であっても良い。
また、封入する空気43の量は魚体の酸化を防ぐために、陰圧にならぬ範囲でできるだけ少ない量にすることが望ましい。魚体全体に袋体42が密着する程度に陰圧(いわゆる真空パック状態)とすると、魚体から粘液が滲出して表皮を変質し、鮮度低下の原因となる。
また、箱詰め工程(8)において使用するドライアイス55の冷気が、袋体42及び袋体42内部の空気43によって、魚11の表面に直接当たることを防止することができて、魚11に冷凍焼けが生じることを防ぐことができる。
〔第2出荷工程(7)〕
魚密封体41は本工程で出荷することで、第1出荷工程での状態と比較して、さらに鮮度保持能を向上した状態で輸送に供することができる。すなわち、にがり水噴霧工程(4)を経ることで魚体表面に噴霧したにがり水31が水分の蒸発を抑えるのに加えて、パック・脱気工程(6)でパッキングすることによって、水密性および気密性を有する袋体42が水分の蒸発を更に阻止することから、表皮が乾燥することによる魚11の劣化を防止することができる。さらに、魚11はいわゆる真空パック状態とならない程度に脱気密封してあるために、酸素による魚肉脂質の自動酸化や魚肉の変色が起こりにくく、より新鮮さを保ちながら配送できるという長所がある。また、パッキングしていることで塵や昆虫などの汚染媒介物を避けることができるので、衛生的に大変好ましい状態での輸送環境を確立することができる。
魚密封体41は本工程で出荷することで、第1出荷工程での状態と比較して、さらに鮮度保持能を向上した状態で輸送に供することができる。すなわち、にがり水噴霧工程(4)を経ることで魚体表面に噴霧したにがり水31が水分の蒸発を抑えるのに加えて、パック・脱気工程(6)でパッキングすることによって、水密性および気密性を有する袋体42が水分の蒸発を更に阻止することから、表皮が乾燥することによる魚11の劣化を防止することができる。さらに、魚11はいわゆる真空パック状態とならない程度に脱気密封してあるために、酸素による魚肉脂質の自動酸化や魚肉の変色が起こりにくく、より新鮮さを保ちながら配送できるという長所がある。また、パッキングしていることで塵や昆虫などの汚染媒介物を避けることができるので、衛生的に大変好ましい状態での輸送環境を確立することができる。
〔箱詰め工程(8)〕
本箱詰め工程(8)では、パック・脱気工程(6)で形成した魚密封体41を、冷却機能および保冷機能を付して輸送に供するための輸送体51を形成する(図6)。輸送体51は、収納部53と収納部53を密閉する蓋体54とを有しており、収納部53の中には底部から上部にかけて魚密封体41への衝撃を緩衝する底部緩衝材57と、魚密封体41を保冷するための蓄冷剤56と、魚密封体41と、上部緩衝材59とを順に備えている。また、収納部53に対向する蓋体54の蓋体裏面58には、ドライアイス55を貼付しており、収納部53の内部を密閉後速やかに冷却できるようにしている。
本箱詰め工程(8)では、パック・脱気工程(6)で形成した魚密封体41を、冷却機能および保冷機能を付して輸送に供するための輸送体51を形成する(図6)。輸送体51は、収納部53と収納部53を密閉する蓋体54とを有しており、収納部53の中には底部から上部にかけて魚密封体41への衝撃を緩衝する底部緩衝材57と、魚密封体41を保冷するための蓄冷剤56と、魚密封体41と、上部緩衝材59とを順に備えている。また、収納部53に対向する蓋体54の蓋体裏面58には、ドライアイス55を貼付しており、収納部53の内部を密閉後速やかに冷却できるようにしている。
また、上部緩衝材59は、魚密封体41に対する外部からの衝撃を緩衝すると共に、蓋体裏面58に設けたドライアイス55の冷気が直接に魚密封体41へあたることで、魚密封体41内の魚11に凍結障害が発生することを防止している。なお、上部緩衝材58は、合成樹脂製のシートであっても良く、段ボールであっても良い。特に段ボールである場合は、蓋体裏面58に設けたドライアイス55を段ボールである上部緩衝材58に固定することもできる。
底部緩衝材57と上部緩衝材59とは平面状のものを例として記載しているが、緩衝能や冷気を緩慢に充満させるための効果を有していれば良く、発泡スチロールを適宜形成したものにすることもできる。
また、ドライアイス55は蓋体54の内面側に貼付するような形で取付けられているが、これに限定するものではなく、魚密封体41に接触して袋体42を凍結破損させたり、魚11を凍結させなければ良く、紙や布に包んで断熱容器52内に配置するようにしても良い。
また、収納部53内における蓄冷剤56や魚密封体41の配置は例示であって、これに限定されるものではない。
さらに、収納部53と蓋体54とは外気からの熱を遮断するために、例えば発泡スチロールのような断熱性を有する素材でできており、ドライアイス55の冷却効果や蓄冷剤56の保冷効果を長時間保持できるようにしている。
〔第3出荷工程(9)〕
次に、図7は収納部53を蓋体54で密閉して形成した輸送体51を示しており、輸送体51には様々な情報等を記録したICタグ62を付している。なお、内容物である魚密封体41等は図7では省略している。
次に、図7は収納部53を蓋体54で密閉して形成した輸送体51を示しており、輸送体51には様々な情報等を記録したICタグ62を付している。なお、内容物である魚密封体41等は図7では省略している。
このICタグ62を備えることで、流通段階におけるトレサビリティが向上する。すなわち、魚劣化の主な要因の一つである時間の経過を最小限に抑える方法として、前記断熱容器にICタグ62を備えることによって、円滑な流通を図り、輸送段階での鮮度低下を防止することができる。
また、ICタグ62は、図7及び図8に示すように、メモリ等のICチップ63と、同ICチップ63に接続したアンテナ64と、同アンテナ64及びICチップ63を被覆する被覆体65とを具備している。
そして、被覆体65は、合成樹脂により四角形の薄肉シート状ないしはフィルム状に形成すると共に、中央部片65aを左右一定幅(本実施の形態では収納部53の側壁53aの上端部53bの幅)だけ残して、左・右側部片65b,65cをそれぞれ90度折曲させることにより、両左・右側部片65b,65cが対向する折返し状態となし、各左・右側部片65b,65cの前後先端部には、楔状の係止片65d,65dを一体成形して設けている。
しかも、左・右側部片65b,65cには弾性力を付与しており、両左・右側部片65b,65cは、弾性力に抗して相互に離隔させる方向に変位させることができるようにしている。
ここで、ICタグ62は、上記左側片65bの略中央部にICチップ63を配置すると共に、同ICチップ63に導電回路(図示せず)を介してアンテナ64を接続しており、同アンテナ64は、被覆体65の周縁部、すなわち、中央部片65aと左・右側部片65b,65cの側縁部に沿わせて渦巻き状に配置して、上記ICチップ63への情報データの書き込み記録や、記録した情報データをICチップ63から読み出す動作電力を供給するための誘導起電力を発生させるようにしている。
そして、かかるICタグ62に対して、情報端末機(図示せず)に接続した読取装置(リーダー)66より電波による読み出し信号を発信して、アンテナ64に誘導起電力による読み出し信号を生じさせ、ICチップ63に予め書き込み記録されている情報データを読み出すことができるようにしている。
また、予め書き込み記録されている情報データは、輸送体51内の商品に関する貴重な固有情報であり、例えば、商品名称、原産地名、漁獲日、漁業組合名、住所、電話番号、賞味期限、調理レシピ、お知らせ情報等である。
このようにして、ICタグ62を、輸送体51に取り付ける際には、同輸送体51の側壁53aの上端部53bにICタグ62を上方から嵌合させて取り付けることができるため、特別に大掛かりな取付装置を必要とすることなく、手作業でも容易に取り付けることができる。
しかも、ICタグ62の左・右側部片65b,65cは弾性力を有しているため、嵌合・取付状態を良好に確保することができる。
この際、発泡スチロール製の収納部53の側壁53aの上端部53bに嵌合させて取り付けたICタグ62の先端部を、同側壁53a側に押し付けるだけで、同ICタグ62の先端部に設けた楔状の係止片65d,65dを、側壁53aに食い込ませて係止させることができるため、同ICタグ62を係止片65d,65dを介して収納部53に確実に係止することができる。
このように、既存の収納部53にICタグ62を必要に応じて適宜、確実に取り付けることができると共に、ドライバー等の工具を用いることにより、ICタグ62を収納部53から容易に取り外すこともできて、同ICタグ62を再使用することができる。その結果、輸送体51の製造コストの削減を図ることができる。
そして、上記ICチップ63は収納部53の内方に位置させて取り付けておくことにより、輸送体51を搬送している際に、輸送体51,51同士が衝突したり、他物が当ったりした場合でも、ICチップ63自体は確実に保護することができる。
その結果、ICチップ63に予め書き込んだ輸送体51内の商品に関する貴重な固有情報を、読取装置66により読み取ることができて、輸送体51内の商品のトレーサビリティ等を行うことができる。
また、図9に示すように、ICチップ63を設けていない右側片65cは、収納部53の表面に露出しているため、同右側片65cに向けて読取装置66より読み出し信号を発信することにより、確実に情報データを読み取ることができる。
また、ICタグ62の取付位置は、収納部53の側壁53aに限らず、図10に示すように、蓋体54の側端縁部54aに取り付けることもできる。
この場合、中央部片65aは、蓋体54の側端縁部54aの肉厚と略同一に形成して、ICチップ63が蓋体54の内面側に位置するように取り付けることができる。
そして、図11に示すように、ICチップ63を設けていない中央部片65aは、蓋体54の側端面に露出しているため、同中央部片65aに向けて読取装置66より読み出し信号を発信することにより、確実に情報データを読み取ることができる。
また他の実施形態として図12及び図13に示すが、本実施形態は、ICタグ62の取付形態と形状において異なる。
すなわち、本実施形態に示す輸送体51は、収納部53内にシート状の覆い体67を配置し、同覆い体67の略中央部に扁平シート状に形成したICタグ62を取り付けている。
ここで、覆い体67の右側縁部67aは、収納部53の内周面上部に形成した嵌合用段付き凹部53cに貼設して、同覆い体67の略中央部に取り付けているICタグ62が位置ずれしないようにしている。59は上部緩衝材である。
このようにして、輸送体51内に収容した魚密封体41等の商品の上面を上部緩衝材59により覆うと共に、同上部緩衝材59上をシート状の覆い体67により覆うことにより、同覆い体67の略中央部に取り付けたICタグ62を輸送体51内の所要の位置に配置することができて、図13に示すように、同ICタグ62のICチップ63に予め書き込んだ輸送用容器内の商品に関する貴重な固有情報を、読取装置66により確実に読み取ることができて、輸送体51内の魚密封体41等の商品のトレーサビリティ等を行うことができる。
なお、ICタグ62の場合、輸送体51との間に多少の距離があっても信号を読み取ることが可能であり、流通時における便宜を向上することができるが、特にICタグ62に限らず流通管理等ができれば良い場合は、例えばバーコードのごとくデータを図形化したものであっても良い。また、ICタグ62は送付伝票とは別に設けているが、これらを一体化させて輸送体51に備えても良い。
なお、ICタグ62の場合、輸送体51との間に多少の距離があっても信号を読み取ることが可能であり、流通時における便宜を向上することができるが、特にICタグ62に限らず流通管理等ができれば良い場合は、例えばバーコードのごとくデータを図形化したものであっても良い。また、ICタグ62は送付伝票とは別に設けているが、これらを一体化させて輸送体51に備えても良い。
なお、輸送体51にはドライアイス55による冷却や蓄冷剤56による保冷を可能としているので、常温下でも低温を維持できるよう構成しているが、冷蔵輸送とすることで更に低温を長時間維持することができる。
図14は、配送先に魚11を配送した際に、輸送体51内部の所定位置における温度変化を経時的測定した結果を示したものである。なお、縦軸は測定温度を摂氏で示し、横軸は出荷後の経過時間を示している。
また、図14中において、菱形でプロットした実線は魚体中心部の温度の経時変化を示しており、丸型でプロットした実線は輸送体51内気相部分の温度の経時変化を示したものである。
さらに、20時間〜28時間の網掛け部分は、出荷した輸送体51の多くが消費者の手元に届く時間帯を示している。
輸送体51内部の気相温度は、ドライアイス55の昇華で発生する低温の二酸化炭素によって、出荷後4時間目まで低下し、−8℃となった(ドライアイス効果)。
次に出荷後20時間目まで、ドライアイス55から発生した二酸化炭素の保冷効果によって、急激な温度上昇を抑制しつつ、氷点下の温度を保っていた(二酸化炭素の保冷効果)。
さらに、出荷後20時間目以降は、輸送体51内部に備えた蓄冷剤56によって、気相温度を低温に維持し、30時間目では2℃であった(蓄冷剤効果)。
一方、輸送体51内部の気相温度の変化に伴って、魚体中心温度は、−2℃〜2.3℃の範囲内で変化していた。
従って、魚11は、微生物が繁殖するような高温にさらされることなく、また、氷結することのない最適な温度で、消費者へ配送されていることが示された。
すなわち、ドライアイス55と、密閉可能な断熱容器52と、蓄冷剤56とが、冷却効果を互いに補完することで、輸送中における魚11の温度をチルド帯に維持しつつ、品温上昇による鮮度劣化のない魚11を消費者へ供給可能であることが示された。
次に、本発明者が第3出荷工程(9)を経て出荷した魚11(以下宅配鮮魚という)を購入した消費者に対して実施したアンケート結果を示す。
図15は、宅配鮮魚を購入した消費者に対して見た目についてアンケートを実施し、1052の有効回答例について魚種別に分類した結果を示したものである。評価は5段階で、心証の良い順に「大変良い」、「良い」、「ふつう」、「悪い」、「大変悪い」とした。その結果、宅配鮮魚を購入した消費者が「ふつう」よりも悪い心証を得た例は得られず、「大変良い」および「良い」が有効回答として得られた1052例のうち全例を占める結果となった。さらに、「大変良い」および「良い」と回答した消費者の構成比率(百分率)は、図15の円グラフに示すとおり、「大変良い」と回答した消費者が80.6%と8割を超え、残りの19.4%の消費者は「良い」と回答していた。
従って、見た目について実施したアンケートの結果より、本発明における鮮度保持のための梱包形態は、魚種にかかわらず好適な心証を消費者に与えることが示唆された。
図16は、宅配鮮魚を購入した消費者に対して品質についてアンケートを実施し、1038の有効回答例について魚種別に分類した結果を示したものである。見た目についてのアンケート結果と同様に、宅配鮮魚を購入した消費者が「ふつう」よりも悪い心証を得た例は得られず、「大変良い」および「良い」が有効回答として得られた1038例のうち全例を占める結果となった。さらに、「大変良い」および「良い」と回答した消費者の構成比率(百分率)は、図16の円グラフに示すとおり、「大変良い」と回答した消費者が85.7%であり、残りの14.3%の消費者は「良い」と回答していた。
従って、品質について実施したアンケートの結果より、本発明における宅配鮮魚の魚11は、一般に消費者が目にする魚と比較して、魚種にかかわらず高品質であるとの心証を消費者に与えることが示唆された。
図17は、宅配鮮魚を購入した消費者に対して味や食感についてアンケートを実施し、1048の有効回答例について魚種別に分類した結果を示したものである。本アンケート結果においても、宅配鮮魚を購入した消費者が「ふつう」よりも悪い心証を得た例は得られず、「大変良い」および「良い」が有効回答として得られた1048例のうち全例を占める結果となった。さらに、「大変良い」および「良い」と回答した消費者の構成比率(百分率)は、図17の円グラフに示すとおり、「大変良い」と回答した消費者が87.2%であり、残りの14.3%の消費者は「良い」と回答していた。
従って、味や食感について実施したアンケートの結果より、本発明における宅配鮮魚の魚11は、にがり含有氷塩水浸漬工程(2)やにがり水噴霧工程(4)を経ることで、魚体表面に付着したにがり成分が劣化防止効果を奏し、鮮度を保ったまま消費者の元に届いていることが示唆された。
図18は、宅配鮮魚を購入した消費者に対して総合評価についてアンケートを実施し、1048の有効回答例について魚種別に分類した結果を示したものである。本アンケート結果においても、宅配鮮魚を購入した消費者が「ふつう」よりも悪い心証を得た例は得られず、「大変良い」および「良い」が有効回答として得られた1048例のうち全例を占める結果となった。さらに、「大変良い」および「良い」と回答した消費者の構成比率(百分率)は、図18の円グラフに示すとおり、「大変良い」と回答した消費者が87.8%にのぼり、残りの12.2%の消費者も「良い」と回答していた。
従って、総合評価について実施したアンケートの結果より、本発明は鮮度保持のために用いるにがりや梱包形態等を含めて、消費者が食欲を減退するようなイメージを生起することなく、しかも、高品質で新鮮な状態の魚11が消費者へ届いていることを示している。
すなわち、本発明によって見た目が良く、鮮度を保持した魚11を届けることができるので、消費者を十分に満足させることができる。
袋体 42
空気 43
ドライアイス 55
蓄冷剤 56
空気 43
ドライアイス 55
蓄冷剤 56
Claims (6)
- 0.2〜5.0%(w/v)の食塩水ににがりを添加して、−3〜10℃の水温に保持した浸漬液中に、鮮魚を一定時間浸漬することを特徴とする鮮魚の鮮度保持方法。
- 浸漬液中に一定時間浸漬した鮮魚を、同浸漬液から取り出すと共に水切りし、さらに、水切りした鮮魚の表面ににがりを噴霧することを特徴とする請求項1記載の鮮魚の鮮度保持方法。
- −3〜10℃の水温に保持した0.2〜5.0%(w/v)の食塩水中に、鮮魚を一定時間浸漬し、同食塩水から取り出すと共に水切りし、さらに、水切りした鮮魚の表面ににがりを噴霧することを特徴とする鮮魚の鮮度保持方法。
- 少量の空気を封入した袋体内に鮮魚を密封することを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の鮮魚の鮮度保持方法。
- 断熱性の輸送用容器内の底部に蓄冷材を配置し、同蓄冷材の上に袋体内に密封した鮮魚を配置し、同鮮魚の上方にドライアイスを配置することを特徴とする請求項4記載の鮮魚の鮮度保持方法。
- 輸送用容器には、ICタグ(Integrated Circuit Tag)を取付けると共に、同ICタグはメモリ等のICチップと、同ICチップに接続したアンテナと、同アンテナ及びICチップを被覆する被覆体とを具備することを特徴とする請求項5記載の鮮魚の鮮度保持方法。
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- 2004-12-08 JP JP2004355067A patent/JP2006158301A/ja active Pending
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