ところで、画像のハイライト部分等をニー補正やヒストグラム等価で圧縮する、いわゆる階調変換による手法では、圧縮されるハイライト部やヒストグラムの少ない輝度域においては、ダイナミックレンジが圧縮されると同時に、被写体のコントラストも低下してしまうという欠点があった。また、このような階調変換による手法は、画素の輝度情報のみに依存しているため、画像内の2次元的な輝度の分布状況に応じて階調を圧縮することはできなかった。
一方、画像を撮影する際にハイライト部になりやすい領域には、例えば画面上部に空が写っている場合や、画面の一部が建物の陰になっている場合など、画面上の明暗の位置のパターンがあらかじめ定まっており、さらにその位置があまり変化しないという場合がある。このような場合に画像の明暗差を補正する有効な手段として、面の半分だけがNDフィルタとなっている光学ハーフNDフィルタをレンズの前あるいは後ろに装着し、NDの部分を空や日が当たっている部分に重なるように回転させて位置を調整するという方法があるが、この方法では撮影中にフィルタの装着や回転などの煩雑な操作が必要になるという欠点や、減衰パターンの形状と減衰率がフィルタごとにあらかじめ作り込まれているために、撮影中にハイライト部の明るさやパターンが変化した場合に対応できないという欠点があった。
そこで、本発明の目的は、上述の如き従来の問題点に鑑み、光学ハーフNDフィルタに相当する機能を電気的に実現し、その機能を撮像信号の処理系に持たせることで、効果的かつ柔軟に画像のダイナミックレンジを圧縮できるようにする。
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
本発明に係る撮像装置は、撮像手段と、2次元のグラデーションパターンを発生するパターン発生手段と、上記撮像手段により被写体を撮像して得られた画像信号に上記パターン発生手段により発生される2次元のグラデーションパターンに応じたゲインを乗じる乗算手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係る撮像装置では、例えば、上記パターン発生手段で発生する2次元のグラデーションパターンのグラデーション変化率を変更可能とすることができる。
また、本発明に係る撮像装置では、例えば、上記パターン発生手段で発生する2次元のグラデーションパターンを変更可能とすることができる。
本発明に係る画像処理方法は、被写体を撮像して得られた画像信号に2次元のグラデーションパターンに応じたゲインを乗じることにより、上記画像信号により示される画像の明暗差を低減させることを特徴とする。
本発明に係る撮像装置は、カラー撮像手段と、2次元のグラデーションパターンを発生するパターン発生手段と、上記カラー撮像手段により被写体を撮像して得られたカラー画像信号の各色信号に上記パターン発生手段により発生される2次元のグラデーションパターンに応じたゲインを乗じる乗算手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係る画像処理方法は、被写体を撮像して得られたカラー画像信号の各色信号にそれぞれ2次元のグラデーションパターンに応じたゲインを乗じることにより、上記カラー画像信号により示される画像のホワイトバランスを変化させることを特徴とする。
本発明によれば、画像中の明暗のパターンが一定している場合等に、効果的に明暗差が圧縮された、視認性の良い画像を得ることができる。また、フィルタの装着や回転などの機械的な操作をせずに、ダイナミックレンジの圧縮パターンや圧縮率を変更することができる。さらに、画面上部の空をより青くするなど、特定パターン形状に従って画像のホワイトバランスを変更することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
本発明は、例えば図1に示すような構成の撮像装置100に適用される。
この撮像装置100は、CCD(Charge Coupled Device )イメージセンサ等の固体撮像素子により被写体を撮像する撮像部10、この撮像部10により撮像出力信号として得られた画像信号が供給される補正処理部20、この補正処理部20によりシェーディング成分などの補正処理が施された画像信号が供給されるダイナミックレンジ圧縮処理部30、このダイナミックレンジ圧縮処理部30によりダイナミックレンジが圧縮された画像信号が供給されるカメラ信号処理部40、このカメラ信号処理部40によりガンマ補正などのカメラ信号処理を施した画像信号をVTR等の記録系や表示系50等に供給するようになっている。
上記ダイナミックレンジ圧縮処理部30は、その具体的な構成例を図2のブロック図に示すように、2次元のグラデーションパターンを発生するパターン発生部31と、上記補正処理部20から供給される入力画像信号Rin,Gin,Binに上記パターン発生部31により発生される2次元のグラデーションパターンに応じたゲイン係数R_GAIN,G_GAIN,B_GAINを乗じる乗算器32R,32G,32Bとからなる。
ここで、上記パターン発生部31は、固定パターン発生部31Aとゲイン変換部31Bからなり、固定パターン発生部31Aにおいて、例えば図3のような2次元的な固定パターンを発生し、後段のゲイン変換部31Bにて、その固定パターンのレベルを例えば固定パターンの白い部分は×1.0、黒い部分は×0.5などのゲイン係数R_GAIN,G_GAIN,B_GAINに変換して出力する。
上記固定パターン発生部31Aは、例えば図4に示すように、Hグラデーションパターン生成部311、Vグラデーションパターン生成部312、HグラデーションパターンとVグラデーションパターンのミックス部313、出力セレクタ314からなる。
Hグラデーションパターン生成部311は、水平方向の1次元グラデーションパターンを生成するモジュールであって、水平方向のグラデーションデータを保持するメモリ311Aと、上記メモリ311Aのアドレスを発生して該メモリ311Aから読み出したデータからグラデーションのレベルを算出して出力するラインパターン発生器311Bからなる。ここで、グラデーションパターンは32本の折れ線によって作成しており、メモリ311Aには各折れ線の傾きと切片のデータが保持されている。
また、Vグラデーションパターン生成部312は、垂直平方向の1次元グラデーションパターンを生成するモジュールであって、垂直方向のグラデーションデータを保持するメモリ312Aと、上記メモリ312Aのアドレスを発生して該メモリ312Aから読み出したデータからグラデーションのレベルを算出して出力するラインパターン発生器312Bからなる。ここで、グラデーションパターンは32本の折れ線によって作成しており、メモリ311Aには各折れ線の傾きと切片のデータが保持されている。
ここで、上記Hグラデーションパターン生成部311及びVグラデーションパターン生成部312は、各ラインパターン発生器311B,312Bに与えるH,Vそれぞれのグラデーションパターンの変化率の設定データh_grad_count_step/v_grad_count_stepを変えることで、図5の(A),(B),(C)に示すように、各メモリ311A,312Aの中身を書き換えずにグラデーションを急峻にしたり、緩やかにしたりすることができる。
また、上記Hグラデーションパターン生成部311及びVグラデーションパターン生成部312は、各ラインパターン発生器311B,312に与えるオフセットデータh_grad_offset/v_grad_offsetによって、H,Vそれぞれのグラデーションパターンのオフセット位置を設定することができる。ここで設定した画素数分だけ、パターンが左右(H)または上下(V)に平行移動する。
また、上記Hグラデーションパターン生成部311及びVグラデーションパターン生成部312は、各ラインパターン発生器311B,312Bに与える回転パラメータh_grad_rotate/v_grad_rotateによって、H,Vそれぞれのグラデーションパターンの回転量を設定することができる。実際には回転させているわけではなく、ラインごとに各メモリ311A,312Aの読み出し開始位置をずらして、徐々にオフセットを変えている。そのラインごとのオフセット量を、このパラメータで設定する。
この回転パラメータと、上記オフセットの設定、下記のパターンの反転を組み合わせると、各メモリ311A,312Aを書き換えずにグラデーションパターンを360°回転させることができる。
さらに、上記Hグラデーションパターン生成部311及びVグラデーションパターン生成部312は、各ラインパターン発生器311A,312Aに与える反転パラメータh_grad_inv/v_grad_invによって、H,Vそれぞれのグラデーションパターンの白/黒レベルを反転することができる。Hのグラデーションを反転させると出力パターンは左右に反転し、Vのグラデーションを反転させると上下に反転する。
また、ミックス部313は、HのグラデーションパターンとVのグラデーションパターンをミックスして出力するモジュールであって、上記Hグラデーションパターン生成部311により生成されたHのグラデーションパターンと上記Vグラデーションパターン生成部312により生成されたVのグラデーションパターンが供給される加算器313A及び乗算器313Bと、上記加算器313Aの出力の平均値を算出する除算器313Cからなる。
さらに、出力セレクタ314は、選択データgrad_hv_selに応じてHとVのグラデーションをミックスするパターンを選択するモジュールであって、ミックス部313を介して供給される図6の(A),(B),(C),(C)に示すようなHのグラデーションパターン、Vのグラデーションパターン、(H+V) /2のグラデーションパターン、H×Vのグラデーションパターンを選択して出力することができる。
そして、上記ゲイン変換部31Bでは、上記固定パターン発生部31Aから供給される固定パターンGRAD_PATTERNをR,G,Bそれぞれ個別のゲイン係数R_GAIN,G_GAIN,B_GAINに変換する。例えばRに対しては、固定パターンGRAD_PATTERNの白に相当する部分がR_GRAD_ND_HIに、黒に相当する部分がR_GRAD_ND_LOに変換され、それがゲイン係数R_GAIN,G_GAIN,B_GAINとし、固定パターンの白と黒の中間のレベルの信号は、R_GRAD_ND_HIとR_GRAD_ND_LOとを固定パターンのレベルに応じてαブレンドして出力される。
また、ゲイン変換部31Bでは、グラデーションパターンによるRGBのチャンネルごとの減衰率を設定する。
上記乗算器32R,32G,32Bは、上記補正処理部20から供給される入力画像信号Rin,Gin,Binに上記パターン発生部31により発生される2次元のグラデーションパターンに応じたゲイン係数R_GAIN,G_GAIN,B_GAINを乗じることにより、画像のダイナミックレンジを圧縮する。
この撮像装置10において、上記ダイナミックレンジ圧縮処理部30は、上記撮像部10により被写体を撮像して得られた画像信号Rin,Gin,Binに上記パターン発生部31により発生される2次元のグラデーションパターンに応じたゲイン係数R_GAIN,G_GAIN,B_GAINを乗算器32R,32G,32Bで乗じることにより、上記乗算器32R,32G,32Bによる乗算出力として得られる画像信号Rout,Gout,Boutにより示される画像の明暗差を低減させることができ、光学的なNDフィルタの機能を電気的な処理により実現している。
上記ダイナミックレンジ圧縮処理部30は、上記パターン発生部31で発生する2次元のグラデーションパターンのグラデーション変化率を変更可能としたり、2次元のグラデーションパターンを変更可能とすることにより、画像内の2次元的な輝度の分布状況に応じて階調を圧縮することができる。
また、上記ダイナミックレンジ圧縮処理部30は、ゲイン変換部31Bにおいて、画像信号Rin,Gin,BinのR用、G用、B用でそれぞれ別の値に変換することにより、固定パターン発生部31Aにて発生した固定パターンに応じて画像のホワイトバランスを調整することもできる。
これにより、例えば画面上部の空の部分で、R及びGのみゲインが下がるように設定すれば、空の青を強調することができる。
勿論、上記ホワイトバランスを調整する機能を有するダイナミックレンジ圧縮処理部30は、図7に示すように、R,G,Bそれぞれに対して固定パターン発生部31Ar,31Ag,31Ab及びゲイン変換部31Br,31Bg,31Bbを設けるようにしても実現できる。この場合は、回路規模が図2に示したものより大きくなるものの、R,G,Bそれぞれ個別にパターンを発生させることができるため、より柔軟に画像のホワイトバランスを調整することが可能になる。
10 撮像部、20 補正処理部、30 ダイナミックレンジ圧縮処理部、31 パターン発生部、31A,31Ar,31Ag,31Ab 固定パターン発生部、31B,31Br,31Bg,31Bb ゲイン変換部、32R,32G,32B 乗算器、40 カメラ信号処理部、50 記録系や表示系、311 Hグラデーションパターン生成部、311A,312A メモリ、311B,312B ラインパターン発生器、312 Vグラデーションパターン生成部、313 ミックス部、313A 加算器、313B 乗算器、313C 除算器、314 出力セレクタ、100 撮像装置