図1は、半導体レーザ素子のように活性層を有する半導体光素子の端面に設けられたコーティング膜の振幅反射率rを複素平面上に示す図である。なお、図中の位相角θは、振幅反射ベクトルrv、つまり複素平面上での振幅反射率rの位置を示すベクトルと、正の実軸とが成す角度である。
活性層を伝搬する光の波長を一般的にλで表現すると、当該光に対する振幅反射率rは、実部をrr(λ)、虚部をri(λ)すると、r=rr(λ)+iri(λ)で表現できる。ただし、iは虚数単位であって、i2=−1である。
そして、rr(λ)及びri(λ)がそれぞれ以下の式(1),(2)を満足すると、波長λ=λ0のときに振幅反射率rは零となり、|r|2で表される電力反射率Rも零となる。
従って、式(1),(2)を満足するようにコーティング膜を設計することにより、無反射膜のコーティング膜を作製することができる。
一方で、無反射膜のコーティング膜ではなく、零よりも大きい電力反射率Rを有するコーティング膜を作製する場合には、上記方法は採用できない。図2は、活性層1aを含む半導体光素子1の端面1bに単層のコーティング膜2を有する半導体光装置の構造を示す側面図である。図2に示されるような、空気や窒素で満たされた自由空間3に接する単層のコーティング膜2の電力反射率Rは、以下の式(3)を満足する場合に波長λ=λ0で極小となり、そのときの振幅反射率rは以下の式(4)で表される。
なお、dfは単層のコーティング膜2の膜厚を、nfはコーティング膜2の屈折率を、ncは半導体光素子1の実効屈折率をそれぞれ示している。また、mは0、1、2等の負でない整数である。
例えば、半導体光素子の実効屈折率ncが3.37であって、コーティング膜2の屈折率nfが2.248または1.499の場合、式(3)を満足するようにコーティング膜2の膜厚d1を設定すると、電力反射率Rは波長λ=λ0で極小となり、その極小値は4%となる。
図3は、λ0=980nm、nc=3.37、nf=1.499に設定された場合でのコーティング膜2の電力反射率Rの波長依存性を示すグラフである。図中のグラフ103は、コーティング膜2の膜厚df=λ0/(4nf)=169.08nmに設定した場合のグラフであって、グラフ104は膜厚df=5λ0/(4nf)=845.41nmに設定した場合のグラフである。
図3に示されるように、膜厚dfがλ0/(4nf)に設定された場合であっても、5λ0/(4nf)に設定された場合でも、波長λが980nmで電力反射率Rは極小となり、その極小値は4%となる。そして、膜厚dfがλ0/(4nf)に設定された場合には、グラフ103より、電力反射率Rが極小値4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は848nmから1161nmとなり、その波長帯域幅は313nmとなる。一方、膜厚dfが5λ0/(4nf)に設定された場合には、グラフ104より、電力反射率Rが極小値4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は951nmから1011nmとなり、その波長帯域幅は60nmとなる。このとき、波長帯域の広さの目安となる、波長帯域幅60nmを当該波長帯域の中心値である981nmで割った値は約0.06である。このように、図2に示されるコーティング膜2では、その膜厚dfがλ0/(4nf)の奇数倍で大きくなると、電力反射率Rが所定範囲内となる波長帯域が狭くなる。
以上のように、コーティング膜2の膜厚dfをλ0/(4nf)の奇数倍に設定すると、上述の式(4)からも理解できるように振幅反射率rは実数となるため、コーティング膜2の振幅反射ベクトルrvは実軸上に存在する。つまり、振幅反射ベクトルrvが実数上に位置するようにコーティング膜の膜厚を設計する必要がある。従って、この方法では、コーティング膜の設計自由度が低く、所望の特性が得られないことがある。
本発明では、振幅反射率rの値として、虚数、つまり虚部が零でない複素数を採用することによって、振幅反射率の値として同じ大きさを有する様々な複素数を考慮して所定の電力反射率Rを有するコーティング膜の膜厚を設計することを可能にし、これによって当該コーティング膜の膜厚の設計自由度を向上させる。以下に、コーティング膜が2層構造を有する場合を例に挙げて、本発明の基本原理を説明する。
<本発明の基本原理>
図4は、半導体光素子1の端面1bに2層構造のコーティング膜6が設けられた半導体光装置の構造を示す側面図である。図4に示される半導体光装置は、半導体レーザ装置、発光ダイオード装置、半導体アンプ装置、あるいは半導体変調器として使用することができる。図4に示されるように、半導体光素子1は光を伝搬する活性層1aを有する。例えば、半導体光素子1が半導体レーザ素子であれば、活性層1aで発生した光が、当該活性層1aを狭持する2つのクラッド層(図示せず)で反射を繰り返すことによって、半導体光素子1からレーザ光が出力される。
コーティング膜6は、屈折率n1で膜厚d1の第1層膜4と、屈折率n2で膜厚d2の第2層膜5とを備えており、活性層1aの端面を含む半導体光素子1の端面1b上にこの順で積層されている。
活性層1aを伝搬する光の波長を一般的にλで表現すると、第1層膜4での光の位相変化量φ1及び第2層膜5での光の位相変化量φ2は、以下の式(5a),(5b)でそれぞれ表される。
そして、複素平面上の振幅反射率rは以下の式(6)で表される。
ただし、m11,m12,m21,m22は、コーティング膜6における特性行列の各要素であって、以下の行列式(7a)を満足する。
そして、式(6)を式(7a)を用いて書き直すと、以下の式(6a)となる。
以上のように、式(6a)は、コーティング膜6の各層の屈折率n1,n2及び位相変化量φ1,φ2と、半導体光素子1の実効屈折率ncとで振幅反射率rを規定している。そして、位相変化量φ1は、式(5a)より、膜厚d1、屈折率n1及び活性層1aを伝搬する光の波長λで規定され、位相変化量φ2は、式(5b)より、膜厚d2、屈折率n2及び波長λで規定される。従って、式(6)は、屈折率n1,n2と、実効屈折率ncと、膜厚d1,d2と、波長λとに基づいて振幅反射率rを規定している式であると言える。
ここで、電力反射率RがRtであるコーティング膜6の振幅反射率rの大きさ|r|はRt 1/2であることから、当該振幅反射率rは、複素平面上において、原点を中心とする半径Rt 1/2の円上に位置することになる。従って、電力反射率Rの設計値をRtとし、電力反射率R=Rtとなるコーティング膜6を設計する際には、複素平面上での振幅反射率rの位置を、原点を中心とする半径Rt 1/2の円上の任意の位置に設定すれば良いことになる。言い換えれば、振幅反射ベクトルrvを、原点を始点とする大きさRt 1/2の任意のベクトルに設定すれば良い。以後、電力反射率Rの設計値Rtを「設計反射率Rt」と呼ぶ。
以上のことから、式(6a)の振幅反射率rの値が、原点を中心とする半径Rt 1/2の円上の任意の点に位置する複素数と一致するように位相変化量φ1及びφ2を決定し、その後式(5a),(5b)を用いてコーティング膜6の各層の膜厚d1,d2を決定することによって、電力反射率R=Rtとなるコーティング膜6を設計することができる。以下に、波長λ=λtで電力反射率R=Rtとなるコーティング膜6の各層の膜厚d1,d2の決定方法について説明する。
図5はコーティング膜の膜厚設計方法を示すフローチャートである。図5に示されるように、まずステップs1において、複素平面上において原点を中心とする半径Rt 1/2の円上の任意の一つの点を選択する。そして、ステップs2において、ステップs1で選択した点に位置する複素数を、振幅反射率rの値として式(6a)に代入する。そして、ステップs3において、コーティング膜6の各層の屈折率n1,n2と、実効屈折率ncとを式(6a)に代入する。これにより、位相変化量φ1,φ2を未知数とする式(6a)が得られる。
次に、ステップs4において、ステップs3で得られた式(6a)の左辺及び右辺のそれぞれを実部と虚部に分解して、実部に関する方程式と、虚部に関する方程式を作成する。例えば、式(6a)の左辺の値がa+ibであり、右辺の値がc+idだとすると、a=bの方程式と、c=dの方程式とを作成する。これにより、未知数が2つで、2つの方程式から成る連立方程式が得られる。そして、ステップs5において、ステップs4で得られた連立方程式から位相変化量φ1,φ2の値を求める。
次に、ステップs6において、ステップs4で求めた位相変化量φ1,φ2を式(5a),(5b)にそれぞれ代入して、更に式(5a),(5b)のそれぞれに波長λの設計値λtを代入して、膜厚d1,d2を求める。これにより、コーティング膜6の各層の膜厚d1,d2が決定される。以後、波長λの設計値λtを「設計波長λt」と呼ぶ。
このように、大きさRt 1/2の複素数を振幅反射率rの値として式(6a)に代入し、それによって得られる式を用いて膜厚d1,d2を決定することによって、波長λ=λtで電力反射率R=Rtとなるコーティング膜6を設計することができる。
ここで、上述の特許文献3のように、振幅反射率rの値として実数が採用される場合には、上記ステップs1では、正の実軸上の点か、あるいは負の実軸上の点しか選択することができない。従って、ステップs6で決定される膜厚d1,d2のペアとしては2種類しか存在せず、コーティング膜6の膜厚の設計自由度を十分に確保できない。
そこで、本発明では、式(6a)に代入される振幅反射率rの値として虚数を採用して、振幅反射率rの値が虚数となるようにコーティング膜2の各層の膜厚を決定する。これにより、ステップs1では、原点を中心とする半径Rt 1/2の円上の点のうち実軸上の点を除く任意の点を選択することが可能となり、2点よりも多い点を選択することが可能となる。そのため、ステップs2では、同じ大きさを有するより多くの複素数を式(6a)に代入することが可能となり、ステップs6では、より多くの種類の膜厚d1,d2のペアを決定することができる。従って、コーティング膜6の膜厚の設計自由度が向上し、所望の特性を有するコーティング膜6を設計し易くなる。
以下の実施の形態1〜20では、コーティング膜の層構造などに関して様々な条件を設定し、それらの条件において、本発明に係る膜厚設計方法を用いて設計されたコーティング膜の特性について説明する。
<実施の形態1>
図6は、半導体光素子1の端面1bに6層構造を有するコーティング膜13が設けられた半導体光装置の構造を示す側面図である。図6に示されるように、本実施の形態1に係るコーティング膜13は、屈折率n1で膜厚Ad1の第1層膜7と、屈折率n2で膜厚Ad2の第2層膜8と、屈折率n1で膜厚Bd1の第3層膜9と、屈折率n2で膜厚Bd2の第4層膜10と、屈折率n1で膜厚Cd1の第5層膜11と、屈折率n2で膜厚Cd2の第6層膜12とを備えている。
第1層膜7、第3層膜9及び第5層膜11のそれぞれは酸化タンタル(Ta2O5)層であって、第2層膜8、第4層膜10及び第6層膜12のそれぞれは酸化シリコン(SiO2)層である。従って、本実施の形態1に係るコーティング膜13は、酸化タンタル層と酸化シリコン層との2種類の材料層から成る。
本実施の形態1では、第1層膜7及び第2層膜8が、第3層膜9及び第4層膜10が、第5層膜11及び第6層膜12が、それぞれ、酸化タンタル層と酸化シリコン層とが積層されて成る単位層対を構成している。つまり、本実施の形態1に係るコーティング膜13は、酸化タンタル層と酸化シリコン層とが積層されて成る単位層対を3対含んでいる。そして、コーティング膜13の各層の膜厚を規定するA〜Cは、単位層対ごとに個別に定められており、コーティング膜13全体の膜厚に対する、対応する単位層対の膜厚の寄与率を示すパラメータである。また、本実施の形態1に係るd1,d2は材料層ごとに個別に定められた基本膜厚である。従って、本実施の形態1では、基本膜厚に寄与率を示すパラメータを掛け合わせることによって、コーティング膜6の各層の膜厚を規定している。
第1層膜7〜第6層膜12での位相変化量は、上記式(5a),(5b)を用いると、それぞれAφ1、Aφ2、Bφ1、Bφ2、Cφ1、Cφ2で表される。ここで、本実施の形態1に係るφ1、φ2は材料層ごとに個別に定められた基本位相変化量である。従って、本実施の形態1に係るコーティング膜13の特性マトリックスの各要素m11,m12,m21,m22は以下の行列式(7b)を満足する。
本実施の形態1では、振幅反射率rの値が虚数となるようにコーティング膜13の膜厚を設計する際には、パラメータA〜Cの値を予め決定しておき、上述の式(6)と式(7b)とを用いてステップs1〜s5を実行して基本位相変化量φ1,φ2の値を決定する。その後、ステップs6を実行して基本膜厚d1,d2の値を決定し、予め決定しておいたパラメータA〜Cの値と、ステップs6で決定した基本膜厚d1,d2の値とを用いて、コーティング膜13の各層の膜厚を決定する。そして、設計したコーティング膜13の特性が不十分である場合には、パラメータA〜Cを変化させて、再度基本膜厚d1,d2を決定し、コーティング膜13の各層の膜厚を再設計する。
また本実施の形態1では、半導体光素子1の実効屈折率ncは“3.37”であって、屈折率n1は、nc 1/2(=1.84)よりも大きい“2.057”であって、屈折率n2は、nc 1/2よりも小さい“1.480”である。また、設計波長λtは980nmである。
以上のような条件において、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが4%(Rt=4%)となるコーティング膜13の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第1象限に位置するように位相角θが60°となるような点を選択する。そうすると、選択された点での複素数の大きさは0.2であることから、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.1”及び“+0.1732058”となる。
そして、A=1.22、B=1.84、C=2.19に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.3449”及び“0.463002”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は、それぞれ124.41nm、59.53nm、187.64nm、89.78nm、223.33nm、及び106.86nmとなる。
このように設計されたコーティング膜13の電力反射率Rの波長依存性、つまり波長λを仮想的に変化させた際の電力反射率Rの変化の様子は図7のようになる。図7に示されるように、波長λが設計波長980nmのときには、電力反射率Rは4%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率4%付近となる波長帯域は広く、波長λが833nmから1078nmまでの間では電力反射率Rは3.3%から6.0%に収まっている。
電力反射率Rの許容範囲(以後、「反射率許容範囲」と呼ぶ)を例えば設計反射率4%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も833nmから1078nmであって、その波長帯域幅Wは245nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは956nmである。従って、波長帯域の広さの目安となる、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.256となる。この値は、0.06よりも大きく、図3のグラフ103で示される特性を有する上述のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けた場合よりも十分大きな値である。従って、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
なお本明細書では、中心波長λcの値が小数点以下を含む場合には、小数点第1位の値を四捨五入して当該中心波長λcの値を整数で示している。また、後述する中心波長λcの1/4倍の値trについても同様である。
また、第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は上述のような値となることから、コーティング膜13の光学膜厚t、つまりコーティング膜13における各層の屈折率と膜厚の積の総和は1480.41nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(239nm)の約6.19倍であって、3λc/4よりも十分大きく、コーティング膜13は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、本実施の形態1に係る半導体光装置の比較対象として、図2に示される半導体光装置を考える。図2に示される半導体光装置において、屈折率nfが“1.4989”で、膜厚dfが159.45nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(956nm)のときに電力反射率Rが極小となりその値は4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図8に示す。図8に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は928nmから986nmであって、その波長帯域幅Wrは58nmである。
なお、屈折率nfについての上記“1.4989”の値は、以下の式(8)に対して、Rtに“0.04”を、ncに“3.37”をそれぞれ代入して得られるnfの値である。
以上のように、本実施の形態1に係るコーティング膜13での波長帯域幅W(245nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(58nm)よりも広く、広帯域であると言える。
また、一般的に、活性層1aを伝搬する光の波長λは温度変化等によって設計波長λtから変化することがある。従って、波長λが変化した場合であっても半導体光装置に関して安定した特性を得るためには、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じか、あるいはそれに近い値に設定される方が望ましい。例えば、上記例と同様に基本位相変化量φ1,φ2をそれぞれ“1.3449”及び“0.463002”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長λtではなく1006nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜13の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長λtの980nmに近い値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図9に示す。
図9に示されるように、波長λが855nmから1107nmまでの間では電力反射率Rは3.3%から6.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も855nmから1107nmであって、その波長帯域幅Wは252nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは981nmであって、設計波長980nmに非常に近い値となっている。また、波長帯域幅W(252nm)を中心波長λc(981nm)で割った値は約0.257となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときのコーティング膜13の第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は、それぞれ127.71nm、61.11nm、192.63nm、92.16nm、229.26nm、109.69nmとなり、コーティング膜13の光学膜厚t、つまりコーティング膜13における各層の膜厚と屈折率との積の総和は1519.69nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(245nm)の約6.20倍となっており、コーティング膜13は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、図9に示される特性のコーティング膜13を備える半導体光装置の比較対象として、図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.4989”で、膜厚dfが163.62nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(981nm)のときに電力反射率Rが極小となりその値は4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図10に示す。図10に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は951nmから1011nmであって、その波長帯域幅Wrは60nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtに近づけた場合であっても、コーティング膜13での波長帯域幅W(252nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(60nm)よりも広くなる。
なお上記例では、中心波長λcは設計波長λtに近い値となっていたが、パラメータA〜Cの値、あるいは式(5a),(5b)中のλに代入する値を調整することによって、中心波長λcを設計波長λtに完全に一致させることも可能である。
また、仮に半導体光素子1の端面1bにコーティング膜13が存在しない場合には、当該端面1bでの電力反射率Rの値は約29.4%となる。この値は、半導体光素子1の実効屈折率nc(3.37)と自由空間3での屈性率とで規定される値であって、自由空間3での屈折率を“1”とすると、((3.37−1)/(3.37+1))2 で求められる。
図9,11に示されるように、波長λが設計波長λtのときには電力反射率Rが4%となるため、本実施の形態1に係る半導体光装置での電力反射率Rは、波長λが設計波長λtと同じ値のときには、半導体光素子1の端面1bにコーティング膜13が存在しない場合の当該端面1bでの電力反射率Rよりも小さくなる。
<実施の形態2>
図11は、本発明の実施の形態2に係る半導体光装置でのコーティング膜13における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態2に係る半導体光装置は、実施の形態1に係る半導体光装置において、コーティング膜13の第2層膜8、第4層膜10及び第6層膜12の材料層として酸化シリコン層の替わりにアルミナ(Al2O3)層を採用したものである。従って、本実施の形態2に係るコーティング膜13は、酸化タンタル層とアルミナ層との2種類の材料層から成る。
本実施の形態2では、酸化シリコン層の替わりにアルミナ層が採用されているため、屈折率n2は“1.620”となっている。また、本実施の形態2では、設計波長λtは808nmに設定される。
以上のような半導体光装置において、波長λが設計波長808nmのときに電力反射率Rが4%(Rt=4%)となるコーティング膜13の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第2象限に位置するように位相角θが150°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.17320508”及び“+0.1”となる。
そして、A=2.15、B=2.00、C=2.00に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.587068”及び“1.04832”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は、それぞれ78.91nm、178.92nm、73.40nm、166.43nm、73.40nm及び166.43nmとなる。
図11は、このように設計されたコーティング膜13の電力反射率Rの波長依存性を示している。図11に示されるように、波長λが設計波長808nmのときには、電力反射率Rは4%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率4%付近となる波長帯域は広く、波長λが779nmから962nmまでの間では電力反射率Rは3.6%から6.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率4%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も779nmから962nmであって、その波長帯域幅Wは183nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは871nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.210となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜13における各層の屈折率と膜厚の積の総和である光学膜厚tは1293.37nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(218nm)の約5.93倍であって、3λc/4よりも十分大きく、コーティング膜13は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態1と同様に“1.4989”で、膜厚dfが145.27nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(871nm)のときに電力反射率Rが極小となりその値は4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図12に示す。図12に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は845nmから899nmであって、その波長帯域幅Wrは54nmである。
このように、本実施の形態2に係るコーティング膜13での波長帯域幅W(183nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(54nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、上記例と同様に基本位相変化量φ1,φ2をそれぞれ“0.587068”及び“1.04832”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長λtではなく751nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜13の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長808nmに近い値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図13に示す。
図13に示されるように、波長λが724nmから894nmまでの間では電力反射率Rは3.3%から6.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も724nmから894nmであって、その波長帯域幅Wは170nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは809nmであって、設計波長808nmに非常に近い値となっている。また、波長帯域幅W(170nm)を中心波長λc(809nm)で割った値は約0.210となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜13の第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は、それぞれ73.34nm、166.29nm、68.23nm、154.69nm、 68.23nm及び154.69nmとなり、コーティング膜13における各層の屈折率と膜厚の積の総和である光学膜厚tは1202.14nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(202nm)の約5.95倍であって、コーティング膜13は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.4989”で、膜厚dfが134.93nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(809nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図14に示す。図14に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は784nmから834nmであって、その波長帯域幅Wrは50nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtに近づけた場合であっても、コーティング膜13での波長帯域幅W(170nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(50nm)よりも広くなる。
なお上記例では、中心波長λcは設計波長λtに近い値となっていたが、実施の形態1と同様に、パラメータA〜Cの値、あるいは式(5a),(5b)中のλに代入する値を調整することによって、中心波長λcを設計波長λtに完全に一致させることも可能である。
<実施の形態3>
図15は、本発明の実施の形態3に係る半導体光装置の構造を示す側面図である。本実施の形態3では、半導体光素子1の端面1bには7層構造を有するコーティング膜21が設けられている。
図15に示されるように、本実施の形態3に係るコーティング膜21は、屈折率n2で膜厚Od2の第1層膜14と、屈折率n1で膜厚Ad1の第2層膜15と、屈折率n2で膜厚Ad2の第3層膜16と、屈折率n1で膜厚Bd1の第4層膜17と、屈折率n2で膜厚Bd2の第5層膜18と、屈折率n1で膜厚Cd1の第6層膜19と、屈折率n2で膜厚Cd2の第7層膜20とを備えている。
第1層膜14、第3層膜16、第5層膜18及び第7層膜20のそれぞれはアルミナ層であって、第2層膜15、第4層膜17及び第6層膜19のそれぞれは酸化タンタル層である。従って、本実施の形態3に係るコーティング膜21は、アルミナ層と酸化タンタル層との2種類の材料層から成る。
本実施の形態3では、第2層膜15及び第3層膜16が、第4層膜17及び第5層膜18が、第6層膜19及び第7層膜20が、それぞれ、アルミナ層と酸化タンタル層とが積層されて成る一つの単位層対を構成している。そして、コーティング膜21の第2層膜15〜第7層膜20の膜厚を規定するA〜Cは、単位層対ごとに個別に定められており、コーティング膜21全体の膜厚に対する、対応する単位層対の膜厚の寄与率を示すパラメータである。また、第1層膜14の膜厚を規定するOも、コーティング膜21全体の膜厚に対する第1層膜14の膜厚の寄与率を示すパラメータである。なお、本実施の形態3に係るd1,d2も材料層ごとに個別に定められた基本膜厚である。
第1層膜14〜第7層膜20での位相変化量は、上記式(5a),(5b)を用いると、それぞれOφ2、Aφ1、Aφ2、Bφ1、Bφ2、Cφ1、Cφ2で表される。従って、本実施の形態3に係るコーティング膜21の特性マトリックスの各要素m11,m12,m21,m22は以下の行列式(7c)を満足する。
本実施の形態3では、振幅反射率rの値が虚数となるようにコーティング膜21の膜厚を設計する際には、パラメータA〜C,Oの値を予め決定しておき、上述の式(6)と式(7c)とを用いてステップs1〜s5を実行して基本位相変化量φ1,φ2の値を決定する。その後、ステップs6を実行して基本膜厚d1,d2の値を決定し、予め決定しておいたパラメータA〜C,Oの値と、ステップs6で決定した基本膜厚d1,d2の値とを用いて、コーティング膜21の各層の膜厚を決定する。そして、設計したコーティング膜21の特性が不十分である場合には、パラメータA〜C,Oを変化させて、再度基本膜厚d1,d2を決定し、コーティング膜21の膜厚を再設計する。
また、本実施の形態3では、半導体光素子1の実効屈折率ncは3.37であって、屈折率n1,n2はそれぞれ“2.057”及び“1.620”である。また、設計波長λtは1310nmである。
以上のような条件において、波長λが設計波長1310nmのときに電力反射率Rが4%(Rt=4%)となるコーティング膜21の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第3象限に位置するように位相角θが225°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.141421356”及び“−0.141421356”となる。
そして、O=0.10、A=1.80、B=2.00、C=2.00に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.992102”及び“0.536659”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ6.91nm、181.00nm、124.32nm、201.12nm、138.14nm、201.12nm及び138.14nmとなる。
このように設計されたコーティング膜21の電力反射率Rの波長依存性は図16のようになる。図16に示されるように、波長λが設計波長1310nmのときには、電力反射率Rは4%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率4%付近となる波長帯域は広く、波長λが1116nmから1383nmまでの間では電力反射率Rは4.0%から6.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率4%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も1116nmから1383nmであって、その波長帯域幅Wは267nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1250nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.216となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は上述のような値となることから、コーティング膜21の光学膜厚t、つまりコーティング膜21における各層の屈折率と膜厚の積の総和は1859.89nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(313nm)の約5.94倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態1と同様に“1.4989”で、膜厚dfが208.49nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1250nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図17に示す。図17に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1213nmから1290nmであって、その波長帯域幅Wrは77nmである。
このように、本実施の形態3に係るコーティング膜21での波長帯域幅W(267nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(77nm)よりも広い。
また、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあることから、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じか、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“0.992102”及び“0.536659”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長λtではなく1374nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜21の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長1310nmに近い値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図18に示す。
図18に示されるように、波長λが1170nmから1451nmまでの間では電力反射率Rは4.0%から6.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も1170nmから1451nmであって、その波長帯域幅Wは281nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1311nmであって、設計波長1310nmに非常に近い値となっている。また、波長帯域幅W(281nm)を中心波長λc(1311nm)で割った値は約0.214となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときのコーティング膜21の第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ7.24nm、189.85nm、130.40nm、210.94nm、144.88nm、210.94nm及び144.88nmとなり、コーティング膜21の光学膜厚tは1950.72nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(328nm)の約5.95倍となっており、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.4989”で、膜厚dfが218.66nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1311nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図19に示す。図19に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1271nmから1352nmであって、その波長帯域幅Wrは81nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtに近づけた場合であっても、コーティング膜21での波長帯域幅W(281nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(81nm)よりも広くなる。
なお上記例では、中心波長λcは設計波長λtに近い値となっていたが、実施の形態1,2と同様に、パラメータA〜C,Oの値、あるいは式(5a),(5b)中のλに代入する値を調整することによって、中心波長λcを設計波長λtに完全に一致させることも可能である。
<実施の形態4>
図20は、本発明の実施の形態4に係る半導体光装置の構造を示す側面図である。本実施の形態4では、半導体光素子1の端面1bには7層構造を有するコーティング膜29が設けられている。
図20に示されるように、本実施の形態4に係るコーティング膜29は、屈折率n3で膜厚d3の第1層膜22と、屈折率n1で膜厚Ad1の第2層膜23と、屈折率n2で膜厚Ad2の第3層膜24と、屈折率n1で膜厚Bd1の第4層膜25と、屈折率n2で膜厚Bd2の第5層膜26と、屈折率n1で膜厚Cd1の第6層膜27と、屈折率n2で膜厚Cd2の第7層膜28とを備えている。
第1層膜22は窒化アルミニウム層であって、第2層膜23、第4層膜25及び第6層膜27のそれぞれは酸化タンタル層であって、第3層膜24、第5層膜26及び第7層膜28のそれぞれはアルミナ層である。従って、本実施の形態4に係るコーティング膜29は、窒化アルミニウム層と、酸化タンタル層と、アルミナ層との3種類の材料層から成る。
本実施の形態4では、第2層膜23及び第3層膜24が、第4層膜25及び第5層膜26が、第6層膜27及び第7層膜28が、それぞれ、酸化タンタル層とアルミナ層とが積層されて成る一つの単位層対を構成している。そして、コーティング膜29の第2層膜23〜第7層膜28の膜厚を規定するA〜Cは、単位層対ごとに個別に定められており、コーティング膜29全体の膜厚に対する、対応する単位層対の膜厚の寄与率を示すパラメータである。なお、本実施の形態4に係るd1,d2も材料層ごとに個別に定められた基本膜厚である。
第2層膜23〜第7層膜28での位相変化量は、上記式(5a),(5b)を用いると、それぞれAφ1、Aφ2、Bφ1、Bφ2、Cφ1、Cφ2で表される。また、第1層膜22の位相変化量φ3は、以下の式(9)で表される。
従って、本実施の形態4に係るコーティング膜29の特性マトリックスの各要素m11,m12,m21,m22は以下の行列式(7d)を満足する。
本実施の形態4では、振幅反射率rの値が虚数となるようにコーティング膜29の膜厚を設計する際には、パラメータA〜Cの値を予め決定するとともに、第1層膜22の膜厚d3を予め決定して位相変化量φ3の値を既知として取り扱い、上述の式(6)と式(7d)とを用いてステップs1〜s5を実行して基本位相変化量φ1,φ2の値を決定する。その後、ステップs6を実行して基本膜厚d1,d2の値を決定し、予め決定しておいたパラメータA〜Cの値と、ステップs6で決定した基本膜厚d1,d2の値とを用いて、コーティング膜29の第2層膜23〜第7層膜28の膜厚を決定する。そして、設計したコーティング膜29の特性が不十分である場合には、パラメータA〜Cあるいは膜厚d3を変化させて、再度基本膜厚d1,d2を決定し、コーティング膜29の膜厚を再設計する。
なおここでは、コーティング膜が3種類の材料層から成る場合の膜厚決定方法について説明したが、4種類以上の材料層から成る場合であっても、コーティング膜を構成する複数の層のうち、1種類目の材料層から成る層の膜厚と、2種類目の材料層から成る層の膜厚とを未知数とし、3種類目以降の材料層から成る層の膜厚を既知とすることによって、本実施の形態4と同様にして、コーティング膜の各層の膜厚を決定することができる。
本実施の形態4では、半導体光素子1の実効屈折率ncは3.37であって、屈折率n1〜n3はそれぞれ“2.057”、“1.620”及び“2.072”である。また、設計波長λtは1550nmである。
以上のような条件において、波長λが設計波長1550nmのときに電力反射率Rが4%となるコーティング膜29の各層の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第4象限に位置するように位相角θが330°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.17320508”及び“−0.1”となる。
そして、A=1.69、B=1.65、C=2.08に設定し、d3=7.5nmに設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.33612”及び“0.478116”となる。従って、ステップs6で求められる第2層膜23〜第7層膜28の膜厚は、それぞれ270.80nm、123.04nm、264.39nm、120.13nm、333.29nm及び151.44nmとなる。
このように設計されたコーティング膜29の電力反射率Rの波長依存性は図21のようになる。図21に示されるように、波長λが設計波長1550nmのときには、電力反射率Rは4%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率4%付近となる波長帯域は広く、波長λが1420nmから1898nmまでの間では電力反射率Rは2.1%から6.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率4%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も1420nmから1898nmであって、その波長帯域幅Wは478nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1659nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.288となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜22〜第7層膜28の膜厚は上述のような値となることから、コーティング膜29の光学膜厚t、つまりコーティング膜28における各層の屈折率と膜厚の積の総和は2441.27nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(415nm)の約5.88倍であって、コーティング膜29は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態1と同様に“1.4989”で、膜厚dfが276.70nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1659nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図22に示す。図22に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1609nmから1712nmであって、その波長帯域幅Wrは103nmである。
このように、本実施の形態4に係るコーティング膜29での波長帯域幅W(478nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(103nm)よりも広い。
また、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあることから、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じか、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、上記例において、d3=7.02nmとすると、基本位相変化量φ1,φ2はそれぞれ“1.33612”及び“0.478115”となる。そして、これらの値を式(5a),(5b)にそれぞれ代入するとともに、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく1451nmを代入して得られる基本膜厚d1,d2の値を用いてコーティング膜29の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長1550nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図23に示す。
図23に示されるように、波長λが1322nmから1777nmまでの間では電力反射率Rは2.0%から6.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も1322nmから1777nmであって、その波長帯域幅Wは455nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1550nmであって、設計波長1550nmと同じ値になっている。また、この場合の波長帯域幅W(455nm)を中心波長λc(1550nm)で割った値は約0.294となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときのコーティング膜29の第1層膜22〜第7層膜28の膜厚は、それぞれ7.02nm、253.50nm、115.18nm、247.50nm、112.46nm、312.01nm及び141.77nmとなり、コーティング膜29の光学膜厚tは2285.35nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(388nm)の約5.89倍となっており、コーティング膜29は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、図2に示される半導体光装置において、屈折率nfが上記例と同様に“1.4989”で、膜厚dfが258.52nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1550nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図24に示す。図24に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1503nmから1600nmであって、その波長帯域幅Wrは97nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜29での波長帯域幅W(455nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(97nm)よりも広くなる。
<実施の形態5>
図25は、本発明の実施の形態5に係る半導体光装置の構造を示す側面図である。本実施の形態5では、半導体光素子1の端面1bには8層構造を有するコーティング膜38が設けられている。
図25に示されるように、本実施の形態5に係るコーティング膜38は、屈折率n1で膜厚Ad1の第1層膜30と、屈折率n2で膜厚Ad2の第2層膜31と、屈折率n1で膜厚Bd1の第3層膜32と、屈折率n2で膜厚Bd2の第4層膜33と、屈折率n1で膜厚Cd1の第5層膜34と、屈折率n2で膜厚Cd2の第6層膜35と、屈折率n1で膜厚Dd1の第7層膜36と、屈折率n2で膜厚Dd2の第8層膜37とを備えている。
第1層膜30、第3層膜32、第5層膜34及び第7層膜36のそれぞれは酸化タンタル層であって、第2層膜31、第4層膜33、第6層膜35及び第8層膜37のそれぞれは酸化シリコン層である。従って、本実施の形態5に係るコーティング膜38は、酸化タンタル層と、酸化シリコン層との2種類の材料層から成る。
本実施の形態5では、第1層膜30及び第2層膜31、第3層膜32及び第4層膜33、第5層膜34及び第6層膜35、第7層膜36及び第8層膜36が、それぞれ、酸化タンタル層と酸化シリコン層とが積層されて成る単位層対を構成している。つまり、コーティング膜38は、酸化タンタル層と酸化シリコン層とが積層されて成る単位層対を4対含んでいる。そして、コーティング膜38の各層の膜厚を規定するA〜Dは、単位層対ごとに個別に定められており、コーティング膜38全体の膜厚に対する、対応する単位層対の膜厚の寄与率を示すパラメータである。なお、本実施の形態5に係るd1,d2は、実施の形態1と同様に、材料層ごとに個別に定められた基本膜厚である。
第1層膜30〜第8層膜37での位相変化量は、上記式(5a),(5b)を用いると、それぞれAφ1、Aφ2、Bφ1、Bφ2、Cφ1、Cφ2、Dφ1、Dφ2で表される。従って、本実施の形態5に係るコーティング膜38の特性マトリックスの各要素m11,m12,m21,m22は以下の行列式(7e)を満足する。
本実施の形態5では、振幅反射率rの値が虚数となるようにコーティング膜38の膜厚を設計する際には、パラメータA〜Dの値を予め決定しておき、上述の式(6)と式(7d)とを用いてステップs1〜s5を実行して基本位相変化量φ1,φ2の値を決定する。その後、ステップs6を実行して基本膜厚d1,d2の値を決定し、予め決定しておいたパラメータA〜Dの値と、ステップs6で決定した基本膜厚d1,d2の値とを用いて、コーティング膜38の各層の膜厚を決定する。そして、設計したコーティング膜38の特性が不十分である場合には、パラメータA〜Dを変化させて、再度基本膜厚d1,d2を決定し、コーティング膜38の膜厚を再設計する。
また、本実施の形態5に係る半導体光素子1では、GaN(窒化ガリウム)系半導体が使用されているため、その実効屈折率ncは2.50となっている。また、設計波長λtは410nmである。酸化タンタル層の屈折率n1は、nc 1/2(=1.581)よりも大きい値であって、設計波長λtが410nmと短いため、波長分散を考慮して“2.128”としている。そして、酸化シリコン層の屈折率n2はnc 1/2よりも小さい“1.480”である。
以上のような条件において、波長λが設計波長410nmのときに電力反射率Rが4%となるコーティング膜38の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第1象限に位置するように位相角θが45°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.141421356”及び“+0.141421356”となる。
そして、A=1.38、B=2.30、C=2.00、D=2.00に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.56840”及び“0.526521”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜30〜第8層膜37の膜厚は、それぞれ66.37nm、32.04nm、110.62nm、53.39nm、96.19nm、46.43nm、96.19nm及び46.43nmとなる。
このように設計されたコーティング膜38の電力反射率Rの波長依存性は図26のようになる。図26に示されるように、波長λが設計波長410nmのときには、電力反射率Rは4%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率4%付近となる波長帯域は広く、波長λが386nmから488nmまでの間では電力反射率Rは3.9%から6.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率4%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も386nmから488nmであって、その波長帯域幅Wは102nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは437nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.233となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜30〜第8層膜37の膜厚は上述のような値となることから、コーティング膜38の光学膜厚t、つまりコーティング膜28における各層の屈折率と膜厚の積の総和は1049.89nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(109nm)の約9.63倍であって、コーティング膜38は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが“1.291”で、膜厚dfが84.62nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(437nm)のときに電力反射率Rが極小となりその値は4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図27に示す。図27に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は419nmから457nmであって、その波長帯域幅Wrは38nmである。
なお、屈折率nfについての上記“1.291”の値は、式(8)に対して、Rtに“0.04”を、ncに“2.50”をそれぞれ代入して得られるnfの値である。
このように、本実施の形態5に係るコーティング膜38での波長帯域幅W(102nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(38nm)よりも広い。
また、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあることから、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じか、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“1.56840”及び“0.526521”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長λtではなく384nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜38の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長410nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図28に示す。
図28に示されるように、波長λが362nmから457nmまでの間では電力反射率Rは3.9%から6.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も362nmから457nmであって、その波長帯域幅Wは95nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは410nmであって、設計波長410nmと同じ値になっている。また、この場合の波長帯域幅W(95nm)を中心波長λc(410nm)で割った値は約0.224となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜38の第1層膜30〜第8層膜37の膜厚は、それぞれ62.16nm、30.00nm、103.60nm、50.00nm、90.09nm、43.48nm、90.09nm及び43.48nmとなり、コーティング膜38の光学膜厚tは983.26nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(103nm)の約9.55倍となっており、コーティング膜38は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記の“1.291”で、膜厚dfが79.40nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(410nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図29に示す。図29に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は393nmから429nmであって、その波長帯域幅Wrは36nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜38での波長帯域幅W(95nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(36nm)よりも広くなる。
<実施の形態6>
図30は、本発明の実施の形態6に係る半導体光装置の構造を示す側面図である。本実施の形態6では、半導体光素子1の端面1bには8層構造を有するコーティング膜47が設けられている。
図30に示されるように、本実施の形態6に係るコーティング膜47は、屈折率n3で膜厚d3の第1層膜39と、屈折率n2で膜厚Ad2の第2層膜40と、屈折率n1で膜厚Bd1の第3層膜41と、屈折率n2で膜厚Bd2の第4層膜42と、屈折率n1で膜厚Cd1の第5層膜43と、屈折率n2で膜厚Cd2の第6層膜44と、屈折率n1で膜厚Dd1の第7層膜45と、屈折率n2で膜厚Dd2の第8層膜46とを備えている。
第1層膜39は窒化アルミニウム層であって、第2層膜40、第4層膜42、第6層膜44及び第8層膜46のそれぞれは酸化シリコン層であって、第3層膜41、第5層膜43及び第7層膜45のそれぞれは酸化タンタル層である。従って、本実施の形態6に係るコーティング膜47は、窒化アルミニウム層と、酸化シリコン層と、酸化タンタル層との3種類の材料層から成る。
本実施の形態6では、第3層膜41及び第4層膜42、第5層膜43及び第6層膜44、第7層膜45及び第8層膜46が、それぞれ、酸化タンタル層と酸化シリコン層とが積層されて成る一つの単位層対を構成している。そして、コーティング膜47の第3層膜41〜第8層膜46の膜厚を規定するB〜Dは、単位層対ごとに個別に定められており、コーティング膜47全体の膜厚に対する、対応する単位層対の膜厚の寄与率を示すパラメータである。また、第2層膜40の膜厚を規定するAも、コーティング膜47全体の膜厚に対する第2層膜40の膜厚の寄与率を示すパラメータである。なお、本実施の形態6に係るd1,d2も材料層ごとに個別に定められた基本膜厚である。
第2層膜40〜第8層膜46での位相変化量は、上記式(5a),(5b)を用いると、それぞれAφ2、Bφ1、Bφ2、Cφ1、Cφ2、Dφ1、Dφ2で表される。また、第1層膜39の位相変化量φ3は、上記式(9)で表される。従って、本実施の形態6に係るコーティング膜47の特性マトリックスの各要素m11,m12,m21,m22は以下の行列式(7f)を満足する。
本実施の形態6では、振幅反射率rの値が虚数となるようにコーティング膜47の膜厚を設計する際には、パラメータA〜Dの値を予め決定するとともに、第1層膜39の膜厚d3を予め決定して位相変化量φ3の値を既知として取り扱い、上述の式(6)と式(7f)とを用いてステップs1〜s5を実行して基本位相変化量φ1,φ2の値を決定する。その後、ステップs6を実行して基本膜厚d1,d2の値を決定し、予め決定しておいたパラメータA〜Dの値と、ステップs6で決定した基本膜厚d1,d2の値とを用いて、コーティング膜47の第2層膜40〜第8層膜46の膜厚を決定する。そして、設計したコーティング膜47の特性が不十分である場合には、パラメータA〜Dあるいは膜厚d3を変化させて、再度基本膜厚d1,d2を決定し、コーティング膜47の膜厚を再設計する。
また、本実施の形態6では、半導体光素子1の実効屈折率ncは3.37であって、屈折率n1〜n3はそれぞれ“2.057”、“1.480”及び“2.072”である。また、設計波長λtは650nmである。
以上のような条件において、波長λが設計波長650nmのときに電力反射率Rが4%となるコーティング膜47の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第2象限に位置するように位相角θが135°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.141421356”及び“+0.141421356”となる。
そして、A=2.50、B=1.90、C=1.00、D=2.05に設定し、d3=40.0nmに設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.674374”及び“1.15311”となる。従って、ステップs6で求められる第2層膜40〜第8層膜46の膜厚は、それぞれ201.50nm、64.44nm、153.14nm、33.92nm、80.60nm、69.53nm及び165.23nmとなる。
このように設計されたコーティング膜47の電力反射率Rの波長依存性は図31のようになる。図31に示されるように、波長λが設計波長650nmのときには、電力反射率Rは4%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率4%付近となる波長帯域は広く、波長λが630nmから736nmまでの間では電力反射率Rは4.0%から6.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率4%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も630nmから736nmであって、その波長帯域幅Wは106nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは683nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.155となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜39〜第8層膜46の膜厚は上述のような値となることから、コーティング膜47の光学膜厚t、つまりコーティング膜47における各層の屈折率と膜厚の積の総和は1316.93nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(171nm)の約7.70倍であって、コーティング膜47は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態1と同様に“1.4989”で、膜厚dfが113.92nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(683nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図32に示す。図32に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は663nmから705nmであって、その波長帯域幅Wrは42nmである。
このように、本実施の形態6に係るコーティング膜47での波長帯域幅W(106nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(42nm)よりも広い。
また、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあることから、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じか、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、上記例において、d3=38.03nmとすると、基本位相変化量φ1,φ2はそれぞれ“0.674368”及び“1.15312”となる。そして、これらの値を式(5a),(5b)にそれぞれ代入するとともに、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく618nmを代入して得られる基本膜厚d1,d2の値を用いてコーティング膜47の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長650nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図33に示す。
図33に示されるように、波長λが599nmから700nmまでの間では電力反射率Rは4.0%から6.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も599nmから700nmであって、その波長帯域幅Wは101nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは650nmであって、設計波長650nmと同じ値になっている。また、この場合の波長帯域幅W(101nm)を中心波長λc(650nm)で割った値は約0.155となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときのコーティング膜47の第1層膜39〜第8層膜46の膜厚は、それぞれ38.03nm、191.59nm、61.27nm、145.61nm、32.25nm、76.63nm、66.10m及び157.10nmとなり、コーティング膜47の光学膜厚tは1252.11nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(163nm)の約7.68倍となっており、コーティング膜47は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記の“1.4989”で、膜厚dfが108.41nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(650nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図34に示す。図34に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は631nmから670nmであって、その波長帯域幅Wrは39nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜47での波長帯域幅W(101nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(39nm)よりも広くなる。
<実施の形態7>
図35は、本発明の実施の形態7に係る半導体光装置の構造を示す側面図である。本実施の形態7では、半導体光素子1の端面1bには9層構造を有するコーティング膜57が設けられている。
図35に示されるように、本実施の形態7に係るコーティング膜57は、屈折率n2で膜厚Od2の第1層膜48と、屈折率n1で膜厚Ad1の第2層膜49と、屈折率n2で膜厚Ad2の第3層膜50と、屈折率n1で膜厚Bd1の第4層膜51と、屈折率n2で膜厚Bd2の第5層膜52と、屈折率n1で膜厚Cd1の第6層膜53と、屈折率n2で膜厚Cd2の第7層膜54と、屈折率n1で膜厚Dd1の第8層膜55と、屈折率n2で膜厚Dd2の第9層膜56とを備えている。
第1層膜48、第3層膜50、第5層膜52、第7層膜54及び第9層膜56のそれぞれはアルミナ層であって、第2層膜49、第4層膜51、第6層膜53及び第8層膜55のそれぞれは酸化タンタル層である。従って、本実施の形態7に係るコーティング膜57は、アルミナ層と酸化タンタル層との2種類の材料層から成る。
本実施の形態7では、第2層膜49及び第3層膜50が、第4層膜51及び第5層膜52が、第6層膜53及び第7層膜54が、第8層膜55及び第9層膜56が、それぞれ、アルミナ層と酸化タンタル層とが積層されて成る一つの単位層対を構成している。そして、コーティング膜57の第2層膜49〜第9層膜56の膜厚を規定するA〜Dは、単位層対ごとに個別に定められており、コーティング膜57全体の膜厚に対する、対応する単位層対の膜厚の寄与率を示すパラメータである。また、第1層膜48の膜厚を規定するOも、コーティング膜57全体の膜厚に対する第1層膜48の膜厚の寄与率を示すパラメータである。なお、本実施の形態7に係るd1,d2も材料層ごとに個別に定められた基本膜厚である。
第1層膜48〜第9層膜56での位相変化量は、上記式(5a),(5b)を用いると、それぞれOφ2、Aφ1、Aφ2、Bφ1、Bφ2、Cφ1,Cφ2、Dφ1、Dφ2で表される。従って、本実施の形態7に係るコーティング膜57の特性マトリックスの各要素m11,m12,m21,m22は以下の行列式(7g)を満足する。
本実施の形態7では、振幅反射率rの値が虚数となるようにコーティング膜57の膜厚を設計する際には、パラメータA〜D,Oの値を予め決定しておき、上述の式(6)と式(7g)とを用いてステップs1〜s5を実行して基本位相変化量φ1,φ2の値を決定する。その後、ステップs6を実行して基本膜厚d1,d2の値を決定し、予め決定しておいたパラメータA〜D,Oの値と、ステップs6で決定した基本膜厚d1,d2の値とを用いて、コーティング膜57の各層の膜厚を決定する。そして、設計したコーティング膜57の特性が不十分である場合には、パラメータA〜D,Oを変化させて、再度基本膜厚d1,d2を決定し、コーティング膜57の膜厚を再設計する。
また、本実施の形態7では、半導体光素子1の実効屈折率ncは3.37であって、屈折率n1,n2はそれぞれ“2.057”、“1.620”である。また、設計波長λtは980nmである。
以上のような条件において、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが4%(Rt=4%)となるコーティング膜57の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第3象限に位置するように位相角θが240°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.1”及び“−0.17320508”となる。
そして、O=0.46、A=1.44、B=2.00、C=2.00、D=2.00に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.15080”及び“0.506897”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜48〜第9層膜56の膜厚は、それぞれ22.45nm、125.65nm、70.28nm、174.52nm、97.61nm、174.52nm、97.61nm、174.52nm及び97.61nmとなる。
このように設計されたコーティング膜57の電力反射率Rの波長依存性は図36のようになる。図36に示されるように、波長λが設計波長980nmのときには、電力反射率Rは4%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率4%付近となる波長帯域は広く、波長λが913nmから1031nmまでの間では電力反射率Rは4.0%から6.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率4%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も913nmから1031nmであって、その波長帯域幅Wは118nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは972nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.121となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜48〜第9層膜56の膜厚は上述のような値となることから、コーティング膜57の光学膜厚t、つまりコーティング膜57における各層の屈折率と膜厚の積の総和は1960.03nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(243nm)の約8.07倍であって、コーティング膜57は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態1と同様に“1.4989”で、膜厚dfが162.12nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(972nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図37に示す。図37に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は943nmから1003nmであって、その波長帯域幅Wrは60nmである。
このように、本実施の形態7に係るコーティング膜57での波長帯域幅W(118nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(60nm)よりも広い。
また、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあることから、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じか、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“1.15080”及び“0.506897”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく988nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜57の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長980nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図38に示す。
図38に示されるように、波長λが921nmから1039nmまでの間では電力反射率Rは4.0%から6.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も921nmから1039nmであって、その波長帯域幅Wは118nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは980nmであって、設計波長980nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(118nm)を中心波長λc(980nm)で割った値は約0.120となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜57の第1層膜48〜第9層膜56の膜厚は、それぞれ22.63nm、126.68nm、70.85nm、175.94nm、98.40nm、175.94nm、98.40nm、175.94nm及び98.40nmとなり、コーティング膜57の光学膜厚tは1975.97nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(245nm)の約8.07倍となっており、コーティング膜57は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.4989”で、膜厚dfが163.45nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(980nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性は上述の図10に示されるものとほぼ同じになる。図10に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は951nmから1011nmであって、その波長帯域幅Wrは60nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜57での波長帯域幅W(118nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(60nm)よりも広くなる。
<実施の形態8>
図39は、本発明の実施の形態8に係る半導体光装置の構造を示す側面図である。本実施の形態8では、半導体光素子1の端面1bには10層構造を有するコーティング膜68が設けられている。
図39に示されるように、本実施の形態8に係るコーティング膜68は、屈折率n3で膜厚d3の第1層膜58と、屈折率n2で膜厚Ad2の第2層膜59と、屈折率n1で膜厚Bd1の第3層膜60と、屈折率n2で膜厚Bd2の第4層膜61と、屈折率n1で膜厚Cd1の第5層膜62と、屈折率n2で膜厚Cd2の第6層膜63と、屈折率n1で膜厚Dd1の第7層膜64と、屈折率n2で膜厚Dd2の第8層膜65と、屈折率n1で膜厚Ed1の第9層膜66と、屈折率n2で膜厚Ed2の第10層膜67とを備えている。
第1層膜58はアルミナ層であって、第2層膜59、第4層膜61、第6層膜63、第8層膜65及び第10層膜67のそれぞれは酸化シリコン層であって、第3層膜60、第5層膜62、第7層膜64及び第9層膜66のそれぞれは窒化アルミニウム層である。従って、本実施の形態8に係るコーティング膜68は、アルミナ層と、酸化シリコン層と、窒化アルミニウム層との3種類の材料層から成る。
本実施の形態8では、第3層膜60及び第4層膜61、第5層膜62及び第6層膜63、第7層膜64及び第8層膜65、第9層膜66及び第10層膜67が、それぞれ、酸化シリコン層と窒化アルミニウム層とが積層されて成る一つの単位層対を構成している。そして、コーティング膜68の第3層膜60〜第10層膜67の膜厚を規定するB〜Eは、単位層対ごとに個別に定められており、コーティング膜67全体の膜厚に対する、対応する単位層対の膜厚の寄与率を示すパラメータである。また、第2層膜59の膜厚を規定するAも、コーティング膜68全体の膜厚に対する第2層膜59の膜厚の寄与率を示すパラメータである。なお、本実施の形態8に係るd1,d2も材料層ごとに個別に定められた基本膜厚である。
第2層膜59〜第10層膜67での位相変化量は、上記式(5a),(5b)を用いると、それぞれAφ2、Bφ1、Bφ2、Cφ1、Cφ2、Dφ1、Dφ2、Eφ1、Eφ2で表される。また、第1層膜58の位相変化量φ3は、上記式(9)で表される。従って、本実施の形態8に係るコーティング膜68の特性マトリックスの各要素m11,m12,m21,m22は以下の行列式(7h)を満足する。
本実施の形態8では、振幅反射率rの値が虚数となるようにコーティング膜68の膜厚を設計する際には、パラメータA〜Eの値を予め決定するとともに、第1層膜58の膜厚d3を予め決定して位相変化量φ3の値を既知として取り扱い、上述の式(6)と式(7h)とを用いてステップs1〜s5を実行して基本位相変化量φ1,φ2の値を決定する。その後、ステップs6を実行して基本膜厚d1,d2の値を決定し、予め決定しておいたパラメータA〜Eの値と、ステップs6で決定した基本膜厚d1,d2の値とを用いて、コーティング膜68の第2層膜59〜第10層膜67の膜厚を決定する。そして、設計したコーティング膜68の特性が不十分である場合には、パラメータA〜Eあるいは膜厚d3の値を変化させて、再度基本膜厚d1,d2を決定し、コーティング膜68の膜厚を再設計する。
また本実施の形態8では、半導体光素子1の実効屈折率ncは3.37であって、屈折率n1〜n3はそれぞれ“2.072”、“1.480”及び“1.620”である。また、設計波長λtは808nmである。
以上のような条件において、波長λが設計波長808nmのときに電力反射率Rが4%となるコーティング膜68の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第4象限に位置するように位相角θが315°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.141421356”及び“−0.141421356”となる。
そして、A=0.63、B=1.87、C=2.01、D=2.00、E=2.00に設定し、d3=40.0nmに設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.219827”及び“1.23802”となる。従って、ステップs6で求められる第2層膜59〜第10層膜67の膜厚は、それぞれ67.77nm、25.51nm、201.16nm、27.42nm、216.22nm、27.29nm、215.14nm、27.29nm及び215.14nmとなる。
このように設計されたコーティング膜68の電力反射率Rの波長依存性は図40のようになる。図40に示されるように、波長λが設計波長808nmのときには、電力反射率Rは4%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率4%付近となる波長帯域は広く、波長λが793nmから893nmまでの間では電力反射率Rは4.0%から6.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率4%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も793nmから893nmであって、その波長帯域幅Wは100nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは843nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.119となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜58〜第10層膜67の膜厚は上述のような値となることから、コーティング膜68の光学膜厚t、つまりコーティング膜68における各層の屈折率と膜厚の積の総和は1642.40nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(211nm)の約7.78倍であって、コーティング膜68は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態1と同様に“1.4989”で、膜厚dfが140.60nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(843nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図41に示す。図41に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は818nmから870nmであって、その波長帯域幅Wrは52nmである。
このように、本実施の形態8に係るコーティング膜68での波長帯域幅W(100nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(52nm)よりも広い。
また、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあることから、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、d3=40.47nmとし、A=0.63、B=1.87、C=1.96、D=2.00、E=2.00とすると、基本位相変化量φ1,φ2はそれぞれ“0.235529”及び“1.21623”となる。そして、これらの値を式(5a),(5b)にそれぞれ代入するとともに、式(5a),(5b)中のλに設計波長λtではなく779nmを代入して得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜68の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長808nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図42に示す。
図42に示されるように、波長λが763nmから853nmまでの間では電力反射率Rは2.0%から6.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も763nmから853nmであって、その波長帯域幅Wは90nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは808nmであって、設計波長808nmと同じ値になっている。また、この場合の波長帯域幅W(90nm)を中心波長λc(808nm)で割った値は約0.111となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜68の第1層膜58〜第10層膜67の膜厚は、それぞれ40.47nm、64.19nm、26.35nm、190.53nm、27.62nm、199.70nm、28.19nm、203.77nm、28.19nm及び203.77nmとなることから、コーティング膜68の光学膜厚tは1569.91nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(202nm)の約7.77倍となっており、コーティング膜47は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置におて、屈折率nfが上記“1.4989”で、膜厚dfが134.77nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(808nm)のときに電力反射率Rが4%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図43に示す。図43に示されるように、電力反射率Rが設計反射率4%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は774nmから834nmであって、その波長帯域幅Wrは60nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜68での波長帯域幅W(90nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(60nm)よりも広くなる。
<実施の形態9>
図44は本発明の実施の形態9に係る半導体光装置でのコーティング膜13における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態9に係る半導体光装置は、実施の形態1に係る半導体光装置において、設計波長λtが980nmから1310nmに変更されたものである。
本実施の形態9では、波長λが設計波長1310nmのときに電力反射率Rが8%(Rt=8%)となるコーティング膜13の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第1象限に位置するように位相角θが30°となるような点を選択する。そうすると、選択された点での複素数の大きさは0.282842712であることから、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.244948974”及び“+0.141421356”となる。
そして、A=3.15、B=2.54、C=2.05に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.23348”及び“0.560095”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は、それぞれ393.82nm、248.54nm、317.56nm、200.41nm、256.30nm及び161.75nmとなる。
上述の図44は、このように設計されたコーティング膜13の電力反射率Rの波長依存性を示している。図44に示されるように、波長λが設計波長1310nmのときには、電力反射率Rは8%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率8%付近となる波長帯域は広く、波長λが1059nmから1509nmまでの間では電力反射率Rは6.5%から10.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率8%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も1059nmから1509nmであって、その波長帯域幅Wは450nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1284nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.356となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜13における各層の屈折率と膜厚の積の総和である光学膜厚tは2894.35nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(321nm)の約9.02倍であって、コーティング膜13は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが“1.3726”で、膜厚dfが223.86nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1284nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図45示す。図45に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1241nmから1330nmであって、その波長帯域幅Wrは89nmである。
なお、屈折率nfについての上記“1.3726”の値は、式(8)に対して、Rtに“0.08”を、ncに“3.37”をそれぞれ代入して得られるnfの値である。
このように、本実施の形態9に係るコーティング膜13での波長帯域幅W(450nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(89nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“1.23348”及び“0.560095”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく1336nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜13の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長1310nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図46に示す。
図46に示されるように、波長λが1080nmから1539nmまでの間では電力反射率Rは6.5%から10.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も1080nmから1539nmであって、その波長帯域幅Wは459nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1310nmであって、設計波長1310nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(459nm)を中心波長λc(1310nm)で割った値は約0.350となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜13の第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は、それぞれ401.64nm、253.48nm、323.86nm、204.39nm、261.38nm及び164.96nmとなり、コーティング膜13における光学膜厚tは2951.80nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(328nm)の約9.00倍であって、コーティング膜13は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.3726”で、膜厚dfが238.60nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1310nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図47に示す。図47に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1266nmから1357nmであって、その波長帯域幅Wrは91nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜13での波長帯域幅W(459nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(91nm)よりも広くなる。
<実施の形態10>
図48は本発明の実施の形態10に係る半導体光装置でのコーティング膜13における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態10に係る半導体光装置は、実施の形態2に係る半導体光装置において、設計波長λtが808nmから1550nmに変更されたものである。
本実施の形態10では、波長λが設計波長1550nmのときに電力反射率Rが8%(Rt=8%)となるコーティング膜13の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第2象限に位置するように位相角θが120°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.141421356”及び“+0.244948974”となる。
そして、A=2.00、B=2.00、C=2.00に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.591234”及び“1.06568”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は、それぞれ141.81nm、324.56nm、141.81nm、324.56nm、141.81nm及び324.56nmとなる。
上述の図48は、このように設計されたコーティング膜13の電力反射率Rの波長依存性を示している。図48に示されるように、波長λが設計波長1550nmのときには、電力反射率Rは8%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率8%付近となる波長帯域は広く、波長λが1441nmから1868nmまでの間では電力反射率Rは7.2%から10.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率8%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も1441nmから1868nmであって、その波長帯域幅Wは427nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1655nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.258となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜13の光学膜厚tは2452.47nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(414nm)の約5.92倍であって、コーティング膜13は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態9と同様に“1.3726”で、膜厚dfが301.44nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1655nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図49に示す。図49に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1600nmから1714nmであって、その波長帯域幅Wrは114nmである。
このように、本実施の形態10に係るコーティング膜13での波長帯域幅W(427nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(114nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“0.591234”及び“1.06568”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長λtではなく1452nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜13の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長1510nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図50に示す。
図50に示されるように、波長λが1350nmから1750nmまでの間では電力反射率Rは7.2%から10.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も1350nmから1750nmであって、その波長帯域幅Wは400nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1550nmであって、設計波長1550nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(400nm)を中心波長λc(1550nm)で割った値は約0.258となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときのコーティング膜13の第1層膜7〜第6層膜12の膜厚は、それぞれ132.84nm、304.04nm、132.84nm、304.04nm、132.84nm及び304.04nmとなり、コーティング膜13における光学膜厚tは2297.39nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(388nm)の約5.92倍であって、コーティング膜13は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.3726”で、膜厚dfが282.31nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1550nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図51に示す。図51に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1498nmから1606nmであって、その波長帯域幅Wrは108nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜13での波長帯域幅W(400nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(108nm)よりも広くなる。
<実施の形態11>
図52は本発明の実施の形態11に係る半導体光装置でのコーティング膜21における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態11に係る半導体光装置は、図15に示される実施の形態3に係る半導体光装置において、第1層膜14、第3層膜16、第5層膜18及び第7層膜20の材料層がアルミナ層から酸化シリコン層に変更され、更に半導体光素子1の実効屈折率ncが“3.37”から“2.50”に、設計波長λtが1310nmから410nmに変更されたものである。
このように、本実施の形態11では、アルミナ層の替わりに酸化シリコン層が採用されているため、第1層膜14、第3層膜16、第5層膜18及び第7層膜20の屈折率n2は1.480となっている。また、設計波長λtが410nmであることから、波長分散を考慮して酸化タンタル層から成る第2層膜15、第4層膜17及び第6層膜19の屈折率n1は“2.128”に設定されている。
なお、実施の形態11に係る半導体光素子1では、GaN系半導体が使用されているため、実効屈折率ncが上述のように“2.50”となっている。
本実施の形態11では、波長λが設計波長410nmのときに電力反射率Rが8%(Rt=8%)となるコーティング膜21の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第3象限に位置するように位相角θが210°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.244948974”及び“−0.141421356”となる。
そして、O=0.25、A=2.35、B=2.00、C=2.00に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.98646”及び“0.294825”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ3.25nm、143.15nm、30.55nm、121.83nm、26.00nm、121.83nm及び26.00nmとなる。
上述の図52は、このように設計されたコーティング膜21の電力反射率Rの波長依存性を示している。図52に示されるように、波長λが設計波長410nmのときには、電力反射率Rは8%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率8%付近となる波長帯域は広く、波長λが362nmから424nmまでの間では電力反射率Rは7.7%から10.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率8%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も362nmから424nmであって、その波長帯域幅Wは62nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは393nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.158となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜21の光学膜厚tは950.12nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(98nm)の約9.70倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが“1.1822”で、膜厚dfが83.11nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(393nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図53に示す。図53に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は373nmから415nmであって、その波長帯域幅Wrは42nmである。
なお、屈折率nfについての上記“1.1822”の値は、式(8)に対して、Rtに“0.08”を、ncに“2.50”をそれぞれ代入して得られるnfの値である。
このように、本実施の形態11に係るコーティング膜21での波長帯域幅W(62nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(42nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“1.98646”及び“0.294825”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく427nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜21の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長410nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図54に示す。
図54に示されるように、波長λが377nmから442nmまでの間では電力反射率Rは7.7%から10.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も377nmから442nmであって、その波長帯域幅Wは65nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは410nmであって、設計波長410nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(65nm)を中心波長λc(410nm)で割った値は約0.159となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜21の第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ3.38nm、149.08nm、31.81nm、126.88nm、27.08nm、126.88nm及び27.08nmとなり、コーティング膜21の光学膜厚tは989.48nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(103nm)の約9.61倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.1822”で、膜厚dfが86.70nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(410nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図55に示す。図55に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は389nmから433nmであって、その波長帯域幅Wrは44nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜21での波長帯域幅W(65nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(44nm)よりも広くなる。
<実施の形態12>
図56は本発明の実施の形態12に係る半導体光装置でのコーティング膜29における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態12に係る半導体光装置は、図20に示される実施の形態4に係る半導体光装置において、設計波長λtが1550nmから650nmに変更されたものである。
本実施の形態12では、波長λが設計波長650nmのときに電力反射率Rが8%(Rt=8%)となるコーティング膜29の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第4象限に位置するように位相角θが300°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.141421356”及び“−0.244948974”となる。
そして、A=1.23、B=2.00、C=2.00に設定し、膜厚d3=10.0nmに設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.707793”及び“2.25201”となる。従って、ステップs6で求められる第2層膜23〜第7層膜28の膜厚は、それぞれ43.78nm、176.89nm、71.19nm、287.62nm、71.19nm及び287.62nmとなる。
上述の図56は、このように設計されたコーティング膜29の電力反射率Rの波長依存性を示している。図56に示されるように、波長λが設計波長650nmのときには、電力反射率Rは8%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率8%付近となる波長帯域は広く、波長λが594nmから709nmまでの間では電力反射率Rは6.0%から10.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率8%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も594nmから709nmであって、その波長帯域幅Wは115nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは652nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.176となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜22〜第7層膜28の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜29の光学膜厚tは1622.10nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(163nm)の約9.95倍であって、コーティング膜29は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態9と同様に“1.3726”で、膜厚dfが118.75nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(652nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図57に示す。図57に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は630nmから675nmであって、その波長帯域幅Wrは45nmである。
このように、本実施の形態12に係るコーティング膜29での波長帯域幅W(115nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(45nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、膜厚d3=10.0nmとし、パラメータA〜Cを調整することによって基本位相変化量φ1,φ2をそれぞれ“0.70747”及び“2.25219”とする。そして、式(5a),(5b)中のλに設計波長650nmを代入して得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜29の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長650nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図58に示す。
図58に示されるように、波長λが592nmから707nmまでの間では電力反射率Rは6.0%から10.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も592nmから707nmであって、その波長帯域幅Wは115nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは650nmであって、設計波長650nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(115nm)を中心波長λc(650nm)で割った値は約0.177となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜29の第1層膜22〜第7層膜28の膜厚は、それぞれ10.00nm、43.63nm、176.36nm、70.94nm、286.76nm、70.94nm及び286.76nmとなり、コーティング膜29の光学膜厚tは1617.12nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(163nm)の約9.92倍であって、コーティング膜29は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.3726”で、膜厚dfが118.39nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(650nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図59に示す。図59に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は629nmから673nmであって、その波長帯域幅Wrは44nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜29での波長帯域幅W(115nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(44nm)よりも広くなる。
<実施の形態13>
図60は本発明の実施の形態13に係る半導体光装置でのコーティング膜38における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態13に係る半導体光装置は、図25に示される実施の形態5に係る半導体光装置において、設計波長λtが410nmから980nmに変更されたものである。
本実施の形態13では、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが8%(Rt=8%)となるコーティング膜38の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第1象限に位置するように位相角θが15°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.27320508”及び“+0.07320508”となる。
そして、A=1.96、B=1.13、C=2.02、D=2.00に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.30917”及び“1.12523”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜30〜第8層膜37の膜厚は、それぞれ45.95nm、232.49nm、26.49nm、134.00nm、47.35nm、239.54nm、46.89nm及び237.17nmとなる。
上述の図60は、このように設計されたコーティング膜38の電力反射率Rの波長依存性を示している。図60に示されるように、波長λが設計波長980nmのときには、電力反射率Rは8%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率8%付近となる波長帯域は広く、波長λが934nmから1129nmまでの間では電力反射率Rは6.0%から10.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率8%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も934nmから1129nmであって、その波長帯域幅Wは195nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1032nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.189となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜30〜第8層膜37の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜21の光学膜厚tは1590.80nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(258nm)の約6.17倍であって、コーティング膜38は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態9と同様に“1.3726”で、膜厚dfが187.96nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1032nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図61に示す。図61に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は998nmから1069nmであって、その波長帯域幅Wrは71nmである。
このように、本実施の形態13に係るコーティング膜38での波長帯域幅W(195nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(71nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“0.30917”及び“1.12523”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく931nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜38の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長980nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図62に示す。
図62に示されるように、波長λが887nmから1073nmまでの間では電力反射率Rは6.0%から10.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も887nmから1073nmであって、その波長帯域幅Wは186nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは980nmであって、設計波長980nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(186nm)を中心波長λc(980nm)で割った値は約0.190となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜38の第1層膜30〜第8層膜37の膜厚は、それぞれ43.65nm、220.80nm、25.17nm、127.30nm、44.99nm、227.56nm、44.54nm及び225.31nmとなり、コーティング膜38の光学膜厚tは1511.16nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(245nm)の約6.17倍であって、コーティング膜38は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.3726”で、膜厚dfが178.49nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(980nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図63に示す。図63に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は947nmから1015nmであって、その波長帯域幅Wrは68nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜38での波長帯域幅W(186nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(68nm)よりも広くなる。
<実施の形態14>
図64は本発明の実施の形態14に係る半導体光装置でのコーティング膜47における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態14に係る半導体光装置は、図30に示される実施の形態6に係る半導体光装置において、第2層膜40、第4層膜42、第6層膜44及び第8層膜46の材料層が酸化シリコン層から酸化タンタル層に変更され、第3層膜41、第5層膜43及び第7層膜45の材料層が酸化タンタル層から酸化シリコン層に変更され、更に設計波長λtが650nmから808nmに変更されたものである。従って、本実施の形態14では、屈性率n1,n2の値はそれぞれ“1.480”及び“2.057”である。
本実施の形態14では、波長λが設計波長808nmのときに電力反射率Rが8%(Rt=8%)となるコーティング膜47の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第2象限に位置するように位相角θが105°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.07320508”及び“+0.27320508”となる。
そして、A=2.13、B=2.33、C=2.00、D=2.00に設定し、膜厚d3=20.0nmに設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.94893”及び“0.761851”となる。従って、ステップs6で求められる第2層膜40〜第8層膜46の膜厚は、それぞれ101.45nm、394.57nm、110.98nm、338.69nm、95.26nm、338.69nm及び95.26nmとなる。
上述の図64は、このように設計されたコーティング膜47の電力反射率Rの波長依存性を示している。図64に示されるように、波長λが設計波長808nmのときには、電力反射率Rは8%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率8%付近となる波長帯域は広く、波長λが804nmから893nmまでの間では電力反射率Rは6.3%から10.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率8%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も804nmから893nmであって、その波長帯域幅Wは89nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは849nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.105となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜39〜第8層膜46の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜29の光学膜厚tは2456.79nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(212nm)の約11.59倍であって、コーティング膜47は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態9と同様に“1.3726”で、膜厚dfが154.63nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(849nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図65に示す。図65に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は821nmから879nmであって、その波長帯域幅Wrは58nmである。
このように、本実施の形態14に係るコーティング膜47での波長帯域幅W(89nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(58nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、上記例において膜厚d3=20.0nmとし、パラメータA〜Dを調整して基本位相変化量φ1,φ2をそれぞれ“1.96555”及び“0.745004”とする。そして、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく770nmを代入して得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜47の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長808nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図66に示す。
図66に示されるように、波長λが766nmから850nmまでの間では電力反射率Rは6.1%から10.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も766nmから850nmであって、その波長帯域幅Wは84nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは808nmであって、設計波長808nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(84nm)を中心波長λc(808nm)で割った値は約0.104となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜47の第1層膜39〜第8層膜46の膜厚は、それぞれ20.00nm、94.54nm、379.22nm、103.42nm、325.51nm、88.77nm、325.51nm及び88.77nmとなり、コーティング膜47の光学膜厚tは2338.60nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(202nm)の約11.58倍であって、コーティング膜47は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.3726”で、膜厚dfが147.17nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(808nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図67に示す。図67に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は781nmから837nmであって、その波長帯域幅Wrは56nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜47での波長帯域幅W(84nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(56nm)よりも広くなる。
<実施の形態15>
図68は本発明の実施の形態15に係る半導体光装置でのコーティング膜57における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態15に係る半導体光装置は、図35に示される実施の形態7に係る半導体光装置において、第1層膜48、第3層膜50、第5層膜52、第7層膜54及び第9層膜56の材料層がアルミナ層から酸化タンタル層に変更され、第2層膜49、第4層膜51、第6層膜53及び第8層膜55の材料層が酸化タンタル層からアルミナ層に変更され、更に設計波長λtが980nmから1310nmに変更されたものである。従って、屈折率n1,n2は、それぞれ“1.620”及び“2.057”となっている。
本実施の形態15では、波長λが設計波長1310nmのときに電力反射率Rが8%(Rt=8%)となるコーティング膜57の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第3象限に位置するように位相角θが195°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.27320508”及び“−0.07320508”となる。
そして、O=2.05、A=4.20、B=2.00、C=2.00、D=2.00に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.410749”及び“0.777027”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜48〜第9層膜56の膜厚は、それぞれ161.45nm、222.03nm、330.78nm、105.73nm、157.52nm、105.73nm、157.52nm、105.73nm及び157.52nmとなる。
上述の図68は、このように設計されたコーティング膜57の電力反射率Rの波長依存性を示している。図68に示されるように、波長λが設計波長1310nmのときには、電力反射率Rは8%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率8%付近となる波長帯域は広く、波長λが1358nmから1626nmまでの間では電力反射率Rは6.0%から10.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率8%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も1358nmから1626nmであって、その波長帯域幅Wは268nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1492nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.180となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜48〜第9層膜56の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜21の光学膜厚tは2858.11nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(373nm)の約7.66倍であって、コーティング膜57は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態9と同様に“1.3726”で、膜厚dfが271.75nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1492nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図69に示す。図69に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1442nmから1545nmであって、その波長帯域幅Wrは103nmである。
このように、本実施の形態15に係るコーティング膜57での波長帯域幅W(268nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(103nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“0.410749”及び“0.777027”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく1150nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜57の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長1310nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図70に示す。
図70に示されるように、波長λが1192nmから1427nmまでの間では電力反射率Rは6.0%から10.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も1192nmから1427nmであって、その波長帯域幅Wは235nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1310nmであって、設計波長1310nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(235nm)を中心波長λc(1310nm)で割った値は約0.179となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜57の第1層膜48〜第9層膜56の膜厚は、それぞれ141.73nm、194.91nm、290.38nm、92.81nm、138.28nm、92.81nm、138.28nm、92.81nm及び138.28nmとなり、コーティング膜57の光学膜厚tは2508.99nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(328nm)の約7.65倍であって、コーティング膜57は非常に厚い膜となっている。
また、図2に示される半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.3726”で、膜厚dfが238.60nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1310nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図71に示す。図71に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1266nmから1357nmであって、その波長帯域幅Wrは91nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜57での波長帯域幅W(235nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(91nm)よりも広くなる。
<実施の形態16>
図72は本発明の実施の形態16に係る半導体光装置でのコーティング膜68における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態16に係る半導体光装置は、図39に示される実施の形態8に係る半導体光装置において、第1層膜58の材料層をアルミナ層から窒化アルミニウム層に変更し、第3層膜60、第5層膜62、第7層膜64及び第9層膜66の材料層を窒化アルミニウム層から酸化タンタル層に変更し、更に設計波長λtを808nmから1550nmに変更したものである。従って、本実施の形態16では、屈性率n1,n3の値はそれぞれ“2.057”及び“2.072”である。
本実施の形態16では、波長λが設計波長1550nmのときに電力反射率Rが8%(Rt=8%)となるコーティング膜68の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第4象限に位置するように位相角θが285°となるような点を選択する。そうすると、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.07320508”及び“−0.27320508”となる。
そして、A=2.10、B=1.30、C=2.00、D=2.00、E=1.65に設定し、膜厚d3=20.0nmに設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.722395”及び“1.59546”となる。従って、ステップs6で求められる第2層膜59〜第10層膜67の膜厚は、それぞれ558.47nm、112.63nm、345.72nm、173.27nm、531.87nm、173.27nm、531.87nm、142.95nm及び438.79nmとなる。
上述の図72は、このように設計されたコーティング膜68の電力反射率Rの波長依存性を示している。図72に示されるように、波長λが設計波長1550nmのときには、電力反射率Rは8%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率8%付近となる波長帯域は広く、波長λが1534nmから1659nmまでの間では電力反射率Rは7.6%から10.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率8%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も1534nmから1659nmであって、その波長帯域幅Wは125nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1597nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.078となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜58〜第10層膜67の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜68の光学膜厚tは4841.95nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(399nm)の約12.14倍であって、コーティング膜68は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが実施の形態9と同様に“1.3726”で、膜厚dfが290.87nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1597nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図73に示す。図73に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1544nmから1654nmであって、その波長帯域幅Wrは110nmである。
このように、本実施の形態16に係るコーティング膜68での波長帯域幅W(125nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(110nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、膜厚d3=20.0nmとし、A=2.10、B=1.30、C=2.00、D=2.00、E=1.65とすると、基本位相変化量φ1,φ2はそれぞれ“0.723268”及び“1.59370”となる。そして、これらの値を式(5a),(5b)にそれぞれ代入するとともに、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく1505nmを代入して得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜68の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長1550nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図74に示す。
図74に示されるように、波長λが1489nmから1610nmまでの間では電力反射率Rは7.6%から10.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も1489nmから1610nmであって、その波長帯域幅Wは121nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1550nmであって、設計波長1550nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(121nm)を中心波長λc(1550nm)で割った値は約0.078となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときのコーティング膜68の第1層膜58〜第10層膜67の膜厚は、それぞれ20.00nm、541.65nm、109.49nm、335.31nm、168.44nm、515.86nm、168.44nm、515.86nm、138.97nm及び425.59nmとなり、コーティング膜68の光学膜厚tは4700.20nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(388nm)の約12.11倍であって、コーティング膜68は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.3726”で、膜厚dfが282.31nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1550nm)のときに電力反射率Rが8%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図75に示す。図75に示されるように、電力反射率Rが設計反射率8%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1498nmから1606nmであって、その波長帯域幅Wrは108nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜68での波長帯域幅W(121nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(108nm)よりも広くなる。
<実施の形態17>
図76は本発明の実施の形態17に係る半導体光装置でのコーティング膜21における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。本実施の形態17に係る半導体光装置は、図15に示される実施の形態3に係る半導体光装置において、第1層膜14、第3層膜16、第5層膜18及び第7層膜20の材料層がアルミナ層から酸化タンタル層に変更され、第2層膜15、第4層膜17及び第6層膜19の材料層が酸化タンタル層から酸化シリコン層に変更され、設計波長λtが1310nmから980nmに変更されたものである。従って、屈折率n1,n2はそれぞれ“1.480”及び“2.057”となっている。
本実施の形態17では、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが12%(Rt=12%)となるコーティング膜21の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第1象限に位置するように位相角θが75°となるような点を選択する。そうすると、選択された点での複素数の大きさは0.346410161であることから、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.089657547”及び“+0.334606521”となる。
そして、O=2.56、A=2.95、B=2.00、C=2.00に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.43423”及び“0.68016”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ132.03nm、445.89nm、152.14nm、302.30nm、103.15nm、302.30nm及び103.15nmとなる。
上述の図76は、このように設計されたコーティング膜21の電力反射率Rの波長依存性を示している。図76に示されるように、波長λが設計波長980nmのときには、電力反射率Rは12%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率12%付近となる波長帯域は広く、波長λが938nmから1087nmまでの間では電力反射率Rは11.3%から14.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率12%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も938nmから1087nmであって、その波長帯域幅Wは149nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1013nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.147となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜21の光学膜厚tは2563.62nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(253nm)の約10.13倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが“1.27902”で、膜厚dfが199.00nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1013nm)のときに電力反射率Rが12%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図77に示す。図77に示されるように、電力反射率Rが設計反射率12%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は975nmから1054nmであって、その波長帯域幅Wrは79nmである。
なお、屈折率nfについての上記“1.27902”の値は、式(8)に対して、Rtに“0.12”を、ncに“3.37”をそれぞれ代入して得られるnfの値である。
このように、本実施の形態17に係るコーティング膜21での波長帯域幅W(149nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(79nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“1.43423”及び“0.68016”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長λtではなく948nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜21の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長980nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図78に示す。
図78に示されるように、波長λが907nmから1052nmまでの間では電力反射率Rは11.3%から14.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率12%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も907nmから1052nmであって、その波長帯域幅Wは145nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは980nmであって、設計波長980nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(145nm)を中心波長λc(980nm)で割った値は約0.148となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜21の第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ127.72nm、431.33nm、147.17nm、292.43nm、99.78nm、292.43nm及び99.78nmとなり、コーティング膜21の光学膜厚tは2479.91nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(245nm)の約10.12倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.27902”で、膜厚dfが191.55nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(980nm)のときに電力反射率Rが12%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図79に示す。図79に示されるように、電力反射率Rが設計反射率12%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は943nmから1020nmであって、その波長帯域幅Wrは77nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜21での波長帯域幅W(145nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(77nm)よりも広くなる。
<実施の形態18>
図80は、上述の実施の形態17に係る半導体光装置において、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが16%となるコーティング膜21における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。
上述の実施の形態17において、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが16%となるコーティング膜21の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第2象限に位置するように位相角θが165°となるような点を選択する。そうすると、選択された点での複素数の大きさは0.4であることから、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.38637033”及び“+0.103527618”となる。
そして、O=2.50、A=3.75、B=3.37、C=1.80に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“0.651305”及び“0.381901”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ72.39nm、257.40nm、108.59nm、231.31nm、97.59nm、123.55nm及び52.12nmとなる。
上述の図80は、このように設計されたコーティング膜21の電力反射率Rの波長依存性を示している。図80に示されるように、波長λが設計波長980nmのときには、電力反射率Rは12%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率12%付近となる波長帯域は広く、波長λが945nmから1219nmまでの間では電力反射率Rは15.0%から18.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率16%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も945nmから1219nmであって、その波長帯域幅Wは274nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1082nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.253となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜21の光学膜厚tは1586.37nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(271nm)の約5.85倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが“1.20178”で、膜厚dfが225.08nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1082nm)のときに電力反射率Rが16%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図81に示す。図81に示されるように、電力反射率Rが設計反射率16%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1034nmから1134nmであって、その波長帯域幅Wrは100nmである。
なお、屈折率nfについての上記“1.20178”の値は、式(8)に対して、Rtに“0.16”を、ncに“3.37”をそれぞれ代入して得られるnfの値である。
このように、本実施の形態18に係るコーティング膜21での波長帯域幅W(274nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(100nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“0.651305”及び“0.381901”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく887nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜21の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長980nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図82に示す。
図82に示されるように、波長λが856nmから1103nmまでの間では電力反射率Rは15.0%から18.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率16%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は856nmから1103nmであって、その波長帯域幅Wは247nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは980nmであって、設計波長980nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(247nm)を中心波長λc(980nm)で割った値は約0.252となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときのコーティング膜21の第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ65.52nm、232.97nm、98.29nm、209.36m、88.33nm、111.83nm及び47.18nmとなり、コーティング膜21の光学膜厚tは1435.86nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(245nm)の約5.86倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.20178”で、膜厚dfが203.86nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(980nm)のときに電力反射率Rが16%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図83に示す。図83に示されるように、電力反射率Rが設計反射率16%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は937nmから1027nmであって、その波長帯域幅Wrは90nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜21での波長帯域幅W(247nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(90nm)よりも広くなる。
<実施の形態19>
図84は、上述の実施の形態17に係る半導体光装置において、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが20%となるコーティング膜21における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。
上述の実施の形態17において、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが20%となるコーティング膜21の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第3象限に位置するように位相角θが255°となるような点を選択する。そうすると、選択された点での複素数の大きさは0.447213595であることから、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“−0.115747395”及び“−0.431975161”となる。
そして、O=2.00、A=2.00、B=2.71、C=1.02に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.01212”及び“0.703719”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ106.72nm、213.33nm、106.72nm、289.06nm、144.60nm、108.80nm及び54.43nmとなる。
上述の図84は、このように設計されたコーティング膜21の電力反射率Rの波長依存性を示している。図84に示されるように、波長λが設計波長980nmのときには、電力反射率Rは20%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率20%付近となる波長帯域は広く、波長λが911nmから1365nmまでの間では電力反射率Rは18.0%から22.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率20%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も911nmから1365nmであって、その波長帯域幅Wは454nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1138nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.399となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜21の光学膜厚tは1753.01nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(285nm)の約6.15倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが“1.13456”で、膜厚dfが250.76nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1138nm)のときに電力反射率Rが20%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図85に示す。図85に示されるように、電力反射率Rが設計反射率20%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は1076nmから1207nmであって、その波長帯域幅Wrは131nmである。
なお、屈折率nfについての上記“1.13456”の値は、式(8)に対して、Rtに“0.20”を、ncに“3.37”をそれぞれ代入して得られるnfの値である。
このように、本実施の形態19に係るコーティング膜21での波長帯域幅W(454nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(131nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“1.01212”及び“0.703719”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく844nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜21の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長980nmと同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図86に示す。
図86に示されるように、波長λが784nmから1176nmまでの間では電力反射率Rは18.0%から22.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率20%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も784nmから1176nmであって、その波長帯域幅Wは392nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは980nmであって、設計波長980nmと同じ値となっている。また、波長帯域幅W(392nm)を中心波長λc(980nm)で割った値は約0.400となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときコーティング膜21の第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ91.91nm、183.72nm、91.91nm、248.94nm、124.54nm、93.70nm及び46.87nmとなり、コーティング膜21の光学膜厚tは1509.72nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(245nm)の約6.16倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.13456”で、膜厚dfが215.94nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(980nm)のときに電力反射率Rが20%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図87に示す。図87に示されるように、電力反射率Rが設計反射率20%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は927nmから1040nmであって、その波長帯域幅Wrは113nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtと同じ値にした場合であっても、コーティング膜21での波長帯域幅W(392nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(113nm)よりも広くなる。
<実施の形態20>
図88は、上述の実施の形態17に係る半導体光装置において、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが24%となるコーティング膜21における電力反射率Rの波長依存性を示す図である。
上述の実施の形態17において、波長λが設計波長980nmのときに電力反射率Rが24%となるコーティング膜21の膜厚を設計する場合には、例えば、ステップs1において、振幅反射ベクトルrvが複素平面上において第4象限に位置するように位相角θが345°となるような点を選択する。そうすると、選択された点での複素数の大きさは0.489897948であることから、ステップs2において、振幅反射率rの値として入力される複素数の実部rr及び虚部riの値は、それぞれ“+0.47320508”及び“−0.126794919”となる。
そして、O=1.95、A=1.85、B=0.10、C=1.96に設定すると、ステップs5で求められる基本位相変化量φ1,φ2がそれぞれ“1.40351”及び“0.680892”となる。従って、ステップs6で求められる第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ100.68nm、273.64nm、95.51nm、14.79nm、5.16nm、289.91nm及び101.19nmとなる。
上述の図88は、このように設計されたコーティング膜21の電力反射率Rの波長依存性を示している。図88に示されるように、波長λが設計波長980nmのときには、電力反射率Rは24%となっている。また、電力反射率Rが設計反射率24%付近となる波長帯域は広く、波長λが961nmから1153nmまでの間では電力反射率Rは22.0%から24.0%に収まっている。
反射率許容範囲を例えば設計反射率24%に対して±2%の範囲とすると、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域も961nmから1153nmであって、その波長帯域幅Wは192nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは1057nmである。従って、波長帯域幅Wを中心波長λcで割った値は約0.182となる。この値は、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域は広帯域であると言える。
また、第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は上述の値を示すことから、コーティング膜21の光学膜厚tは1478.27nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(264nm)の約5.60倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。このため、半導体光素子1の端面1bにおける放熱特性が向上し、端面温度上昇を抑制することができる。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが“1.07415”で、膜厚dfが246.01nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(1057nm)のときに電力反射率Rが24%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図89に示す。図89に示されるように、電力反射率Rが設計反射率24%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は978nmから1150nmであって、その波長帯域幅Wrは172nmである。
なお、屈折率nfについての上記“1.07415”の値は、式(8)に対して、Rtに“0.24”を、ncに“3.37”をそれぞれ代入して得られるnfの値である。
このように、本実施の形態20に係るコーティング膜21での波長帯域幅W(192nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(172nm)よりも広い。
また、上述のように、活性層1aを伝搬する光の波長λの値は変化することがあるため、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcは設計波長λtと同じ値か、それに近い値に設定される方が望ましい。例えば、基本位相変化量φ1,φ2を上記例と同様にそれぞれ“1.40351”及び“0.680892”とし、式(5a),(5b)中のλに設計波長ではなく909nmを代入し、それによって得られる基本膜厚d1,d2を用いてコーティング膜21の膜厚を決定すると、中心波長λcは設計波長980nmとほぼ同じ値となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図90に示す。
図90に示されるように、波長λが891nmから1070nmまでの間では電力反射率Rは22.0%から26.0%に収まっている。電力反射率Rが設計反射率24%に対して±2%の範囲内となる波長帯域も891nmから1070nmであって、その波長帯域幅Wは179nmとなる。そして、当該波長帯域の中心波長λcは981nmであって、設計波長980nmとほぼ同じ値となっている。また、波長帯域幅W(179nm)を中心波長λc(981nm)で割った値は約0.182となり、0.06よりも大きく、電力反射率Rが反射許容範囲内となる波長帯域が広帯域であることが分かる。
また、このときのコーティング膜21の第1層膜14〜第7層膜20の膜厚は、それぞれ93.38nm、253.81nm、88.59nm、13.72nm、4.79nm、268.90nm及び93.86nmとなり、コーティング膜21の光学膜厚tは1371.15nmとなる。この値は、中心波長λcの1/4倍の値tr(245nm)の約5.60倍であって、コーティング膜21は非常に厚い膜となっている。
ここで、比較対象として図2に示される半導体光装置を考えると、当該半導体光装置において、屈折率nfが上記“1.07415”で、膜厚dfが228.32nmの5倍、つまりλc/(4nf)の5倍のコーティング膜2を半導体光素子1の端面1bに設けると、波長λがλc(981nm)のときに電力反射率Rが24%となる。このときの電力反射率Rの波長依存性を図91に示す。図91に示されるように、電力反射率Rが設計反射率24%に対して±2%の範囲内となる波長帯域は907nmから1066nmであって、その波長帯域幅Wrは159nmである。
このように、中心波長λcを設計波長λtに近い値に設定した場合であっても、、コーティング膜21での波長帯域幅W(179nm)は、図2に示されるコーティング膜2での波長帯域幅Wr(159nm)よりも広くなる。
なお上記例では、中心波長λcは設計波長λtに近い値となっていたが、実施の形態1〜3と同様に、パラメータA〜C,Oの値、あるいは式(5a),(5b)中のλに代入する値を調整することによって、中心波長λcを設計波長λtに完全に一致させることも可能である。
以上の実施の形態1〜20での条件及び結果をまとめると図92,93のようになる。
以上のように、本発明に係る実施の形態1〜20では、半導体光素子1の端面1bに設けられるコーティング膜の振幅反射率rの値として虚数が採用されているため、実数が採用される場合よりも、振幅反射率rの値として同じ大きさを有する多くの複素数を考慮して、所定の電力反射率Rを有するコーティング膜の膜厚を設計することができる。従って、コーティング膜の膜厚の設計自由度が向上し、所望の特性を有するコーティング膜を設計し易くなる。
また、コーティング膜の電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域の中心波長λcが設計波長λtと一致するように、コーティング膜に含まれる層の膜厚を決定するため、実際のデバイスにおいて波長λが設計波長λtから変化したとしても、電力反射率Rの変化の少ないコーティング膜を提供できる。
また、実施の形態1〜20に係る半導体光装置では、コーティング膜の電力反射率Rが反射率許容範囲内となる波長帯域が広いため、活性層1aを伝搬する光の波長λが変化した場合であっても、コーティング膜の電力反射率Rの変化は少ない。従って、特性がコーティング膜での電力反射率Rの波長依存性の影響を受けにくい半導体光装置を提供することができる。
また、実施の形態1〜20では、反射率許容範囲はその中心値(設計反射率Rt)に対して±2%の範囲に設定されているため、波長λが変化した場合であってもコーティング膜の電力反射率Rの変化を確実に抑制できる。
なお、実施の形態1〜20では、コーティング膜が6層構造、7層構造、8層構造、9層構造及び10層構造有する場合について説明したが、本発明はこれらに限定されるわけではなく、他の層構造を有するコーティング膜にも適用可能である。
また、パラメータA〜E,Oの値は一例に過ぎず、その他の値においても同様の効果を得ることができる。
また、実施の形態1〜20では、設計波長λtが410nm、650nm、808nm、980nm、1310nm及び1550nmの場合について説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その他の波長でも本発明を適用することができる。
また、コーティング膜の材料層について3種類までしか説明しなかったが、4種類以上であっても本発明を適用することができる。
1 半導体光素子、1a 活性層、1b 端面、2,6,13,21,29,38,47,57,68 コーティング膜、3 自由空間、4,7,14,22,30,39,48,58 第1層膜、5,8,15,23,31,40,49,59 第2層膜、9,16,24,32,41,50,60 第3層膜、10,17,25,33,42,51,61 第4層膜、11,18,26,34,43,52,62 第5層膜、12,19,27,35,44,53,63 第6層膜、20,28,36,45,54,64 第7層膜、37,46,55,65 第8層膜、56,66 第9層膜、67 第10層膜。