JP7167455B2 - エンコーダー用光学式スケールおよび光学式エンコーダー - Google Patents

エンコーダー用光学式スケールおよび光学式エンコーダー Download PDF

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Description

本発明は、エンコーダー用光学式スケールおよび光学式エンコーダーに関する。
位置情報を取得するために、反射型光学式エンコーダーが用いられている。反射型光学式エンコーダーは、反射型光学式スケールと、スケールに光を照射する光源と、スケールからの反射光を検出する光検出器と、を含む。
例えば特許文献1には、第1領域(高反射領域)と第2領域(低反射領域)とが交互に配置された反射型光学式スケールが記載されている。
特開2013-101007号公報
しかしながら、特許文献1には、スケールの高反射領域および低反射領域ともに最表面は、酸化チタンで構成され、酸化チタンの屈折率は2.25程度であることが記載されている。そのため、特許文献1に記載されたスケールでは、空気と酸化チタンとの屈折率差が大きく、光の入射角によっては、低反射領域でも強度の大きい光が反射される場合がある。これにより、高反射領域での反射光の強度と、低反射領域での反射光の強度と、の差が小さくなって、光検出器のSN比が低下する。その結果、スケールの読み取りが難しくなり、エンコーダー特性が悪化する場合がある。
本発明に係るエンコーダー用光学式スケールの一態様は、
シリコン基板と、
前記シリコン基板上に設けられた積層体と、
前記積層体上に、周期的に設けられた複数の反射部材と、
を含み、
前記積層体は、
第1チタン層と、
前記第1チタン層上に設けられた第1酸化シリコン層と、
前記第1酸化シリコン層上に設けられた第2チタン層と、
前記第2チタン層上に設けられ、85nm以上140nm以下の厚さの第2酸化シリコン層と、
を有し、
前記反射部材の反射率は、前記積層体の前記第2酸化シリコン層側における反射率よりも高い。

前記エンコーダー用光学式スケールの一態様において、
前記反射部材は、前記第2酸化シリコン層上に設けられていてもよい。
前記エンコーダー用光学式スケールの一態様において、
前記第2酸化シリコン層は、前記反射部材を覆っていてもよい。
前記エンコーダー用光学式スケールの一態様において、
前記第2酸化シリコン層は、
前記第2チタン層上に設けられた第1層と、
前記第1層上に設けられた第2層と、
を有し、
前記反射部材は、前記第1層上に設けられ、
前記第2層は、前記反射部材を覆っていてもよい。
前記エンコーダー用光学式スケールの一態様において、
前記第1チタン層の厚さは、40nm以上であってもよい。
前記エンコーダー用光学式スケールの一態様において、
前記第1酸化シリコン層の厚さは、100nm以上140nm以下であってもよい。
前記エンコーダー用光学式スケールの一態様において、
前記第2酸化シリコン層の厚さは、85nm以上140nm以下であってもよい。
本発明に係る光学式エンコーダーの一態様は、
前記エンコーダー用光学式スケールの一態様と、
前記エンコーダー用光学式スケールの一態様に光を照射する光源と、
前記エンコーダー用光学式スケールの一態様からの反射光を検出する光検出器と、
を含む、光学式エンコーダー。
前記光学式エンコーダーの一態様において、
前記エンコーダー用光学式スケールの一態様に対する前記光の入射角は、0°より大きく65°以下であってもよい。
本実施形態に係るエンコーダー用光学式スケールを模式的に示す断面図。 本実施形態に係るエンコーダー用光学式スケールを模式的に示す平面図。 本実施形態の第1変形例に係るエンコーダー用光学式スケールを模式的に示す断面図。 本実施形態の第2変形例に係るエンコーダー用光学式スケールを模式的に示す断面図。 本実施形態に係る光学式エンコーダーを説明するための図。 入射角θを変化させた場合の反射率を示すグラフ。 入射角θを変化させた場合の反射率を示すグラフ。 入射角θを変化させた場合の反射率を示すグラフ。 入射角θを変化させた場合の反射率を示すグラフ。 第1チタン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフ。 第1酸化シリコン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフ。 第2チタン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフ。 第2酸化シリコン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフ。 第2酸化シリコン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフ。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. エンコーダー用光学式スケール
まず、本実施形態に係るエンコーダー用光学式スケールについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るエンコーダー用光学式スケール100を模式的に示す断面図である。図2は、本実施形態に係るエンコーダー用光学式スケール100を模式的に示す平面図である。なお、図1は、図2のI-I線断面図である。
エンコーダー用光学式スケール100(以下、「光学式スケール100」ともいう)は、図1および図2に示すように、基板10と、積層体20と、反射部材30と、を含む。
基板10は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、金属基板などであり、好ましくは、シリコン基板である。基板10がシリコン基板の場合は、半導体プロセスを用いて、光学式スケール100を製造することができる。
積層体20は、基板10上に設けられている。積層体20は、例えば、バッファー層21と、第1チタン層22と、第1酸化シリコン層24と、第2チタン層26と、第2酸化シリコン層28と、を有している。
バッファー層21は、基板10上に設けられている。バッファー層21の厚さ(膜厚)は、例えば、80nm以上120nm以下である。バッファー層21の材質は、例えば、酸化シリコンである。バッファー層21は、上層の第1チタン層22との密着性を上げるために有効であるが、バッファー層21は、設けられていなくてもよい。バッファー層21の厚さは、例えば、80nm以上400nm以下である。
第1チタン層22は、バッファー層21上に設けられている。第1チタン層22は、バッファー層21の基板10側とは反対側に設けられている。第1チタン層22の厚さT1は、例えば、40nm以上100nm以下である。
第1酸化シリコン層24は、第1チタン層22上に設けられている。第1酸化シリコン層24は、第1チタン層22のバッファー層21側とは反対側に設けられている。第1酸化シリコン層24の厚さT2は、例えば、100nm以上140nm以下であり、好ましくは110nm以上130nm以下である。
第2チタン層26は、第1酸化シリコン層24上に設けられている。第2チタン層26は、第1酸化シリコン層24の第1チタン層22側とは反対側に設けられている。第2チタン層26の厚さT3は、例えば、6nm以上12nm以下であり、好ましくは7nm以上10nm以下である。チタン層22,26は、例えば、主成分がチタン(Ti)である層である。チタン層22,26は、チタン(Ti)からなる層であってもよい。チタンは、金属材料であり、消衰係数が大きく光を通し難い。さらに、チタンは、アルミニウムなどの材料に比べて、反射率が低い。そのため、チタンは、積層体20を構成する材料として好適に用いることができる。
第2酸化シリコン層28は、第2チタン層26上に設けられている。第2酸化シリコン層28は、第2チタン層26の第1酸化シリコン層24側とは反対側に設けられている。積層体20の上面20aは、第2酸化シリコン層28の上面である。第2酸化シリコン層28の厚さT4は、例えば、85nm以上140nm以下であり、好ましくは100nm以上125nm以下であり、さらにより好ましくは105nm以上125nm以下である。酸化シリコン層24,28は、例えば、主成分が酸化シリコン(SiO)である層である。酸化シリコン層24,28は、酸化シリコン(SiO)からなる層であってもよい。
反射部材30は、積層体20上に設けられている。反射部材30は、積層体20の基板10側とは反対側に設けられている。図示の例では、反射部材30は、第2酸化シリコン層28上に設けられている。
反射部材30は、周期的に複数設けられている。反射部材30の数は、特に限定されない。図2に示す例では、積層体20の平面形状(第1チタン層22と第1酸化シリコン層24との積層方向からみた形状)は長方形であり、反射部材30は、積層体20の長手方向に沿って、周期的に設けられている。複数の反射部材30は、例えば、等間隔で、積層体20の長手方向に沿って、設けられている。反射部材30の平面形状は、例えば、長方形である。
反射部材30の材質は、例えば、金属である。具体的には、反射部材30の材質は、例えば、チタンタングステン(TiW)、アルミニウム(Al)やアルミニウムを主成分とした材料、銀(Ag)、金(Au)などである。
反射部材30の反射率は、積層体20の第2酸化シリコン層28側における反射率よりも高い。積層体20の第2酸化シリコン層28側から入射する光に対して、平面視において反射部材30と重なる領域は、高反射領域40であり、平面視において隣り合う反射部材30の間の領域は、低反射領域42である。高反射領域40の反射率は、低反射領域42の反射率よりも高い。低反射領域42の上面は、第2酸化シリコン層28の上面である。エンコーダーは、高反射領域での反射光の強度と、低反射領域での反射光の強度と、の差に基づいて、スケールを読み取ることができる。なお、反射率は、例えば、公知の方法により測定される。
光学式スケール100は、例えば、以下の特徴を有する。
光学式スケール100では、積層体20と、積層体20上に、周期的に設けられた複数の反射部材30と、を含み、積層体20は、第1チタン層22と、第1チタン層22上に設けられた第1酸化シリコン層24と、第1酸化シリコン層24上に設けられた第2チタン層26と、第2チタン層26上に設けられた第2酸化シリコン層28と、を有し、反射部材30の反射率は、積層体20の第2酸化シリコン層28側における反射率よりも高い。そのため、光学式スケール100では、平面において隣り合う反射部材30の間の領域(低反射領域)42の上面は、第2酸化シリコン層28の上面である。ここで、酸化シリコン層の屈折率は、例えば、1.46である。したがって、光学式スケール100では、低反射領域42の上面が酸化チタン(屈折率2.25)の場合に比べて、低反射領域42の上面と空気(屈折率1)との差を小さくすることができ、低反射領域42の上面において光が反射されることを抑制することができる。よって、光学式スケール100では、高反射領域40での反射光の強度と、低反射領域42での反射光の強度と、の差を大きくすることができる。
光学式スケール100では、反射部材30は、第2酸化シリコン層28上に設けられている。そのため、光学式スケール100では、反射部材30上に第2酸化シリコン層28が設けられていない。したがって、光学式スケール100では、反射部材30上に第2酸化シリコン層28が設けられている場合に比べて、高反射領域40での反射光の強度と、低反射領域42での反射光の強度と、の差を大きくすることができる。
光学式スケール100では、第1チタン層22の厚さは、40nm以上である。そのため、光学式スケール100では、第1チタン層22の厚さが上記の範囲外である場合に比べて、低反射領域42における反射率を低くすることができる(詳細は後述する「実験例」参照)。
光学式スケール100では、第1酸化シリコン層24の厚さは、100nm以上140nm以下である。そのため、光学式スケール100では、第1酸化シリコン層24の厚さが上記の範囲外である場合に比べて、低反射領域42における反射率を低くすることができる(詳細は後述する「実験例」参照)。
光学式スケール100では、第2チタン層26の厚さは、6nm以上12nm以下である。そのため、光学式スケール100では、第2チタン層26の厚さが上記の範囲外である場合に比べて、低反射領域42における反射率を低くすることができる(詳細は後述する「実験例」参照)。
光学式スケール100では、第2酸化シリコン層28の厚さは、85nm以上140nm以下である。そのため、光学式スケール100では、第2酸化シリコン層28の厚さが上記の範囲外である場合に比べて、低反射領域42における反射率を低くすることができる(詳細は後述する「実験例」参照)。
2. エンコーダー用光学式スケールの製造方法
次に、本実施形態に係るエンコーダー用光学式スケール100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、基板10上に、バッファー層21を形成する。バッファー層21は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、熱酸化法などによって形成される。
次に、バッファー層21上に、第1チタン層22を形成する。第1チタン層22は、例えば、スパッタ法などによって形成される。
次に、第1チタン層22上に、第1酸化シリコン層24を形成する。第1酸化シリコン層24は、例えば、CVD法などによって形成される。
次に、第1酸化シリコン層24上に、第2チタン層26を形成する。第2チタン層26は、例えば、スパッタ法などによって形成される。例えばスパッタ法において成膜速度を小さくすることにより、厚さ12nm以下であっても、膜状の第2チタン層26を形成することができる。
次に、第2チタン層26上に、第2酸化シリコン層28を形成する。第2酸化シリコン層28は、例えば、CVD法などによって形成される。以上の工程により、積層体20を形成することができる。
次に、第2酸化シリコン層28上に、反射部材30を形成する。具体的には、まず、第2酸化シリコン層28上に、例えば、スパッタ法などにより、反射部材30となる金属層(図示せず)を形成する。次に、金属層を、例えば、フォトリソグラフィーおよびエッチングによってパターニングする。以上の工程により、反射部材30を形成することができる。反射部材30となる金属層の材質がチタンタングステンの場合は、過酸化水素水を用いて金属層をエッチングする。これにより、第2酸化シリコン層28がエッチングされることを抑制しつつ、金属層をエッチングすることができる。反射部材30となる金属層の材質がアルミニウムの場合は、リン酸を主成分とした薬液を用いて金属層をエッチングする。これにより、第2酸化シリコン層28がエッチングされることを抑制しつつ、金属層をエッチングすることができる。
以上の工程により、エンコーダー用光学式スケール100を製造することができる。
3. エンコーダー用光学式スケールの変形例
3.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係るエンコーダー用光学式スケールについて、図面を参照しながら説明する。図3は、本実施形態の第1変形例に係るエンコーダー用光学式スケール200を模式的に示す断面図である。
以下、本実施形態の第1変形例に係るエンコーダー用光学式スケール200において、上述した本実施形態に係るエンコーダー用光学式スケール100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、以下に示す本実施形態の第2変形例に係るエンコーダー用光学式スケールにおいて、同様である。
上述した光学式スケール100では、図1に示すように、反射部材30は、第2酸化シリコン層28上に設けられていた。これに対し、エンコーダー用光学式スケール200(以下、「光学式スケール200」ともいう)では、図3に示すように、反射部材30は、第2チタン層26上に設けられている。
光学式スケール200では、第2酸化シリコン層28は、反射部材30を覆っている。第2酸化シリコン層28は、反射部材30上および第2チタン層26上に設けられている。さらに、第2酸化シリコン層28は、反射部材30の側面に設けられている。
光学式スケール200では、第2酸化シリコン層28は反射部材30を覆っているため、第2酸化シリコン層28によって反射部材30を保護することができる。例えば反射部材30の材質がアルミニウムの場合、温度や湿度などの使用環境の変化に応じて、アルミニウムが経時的に腐食し、反射部材30の反射率が低下する場合がある。そこで、第2酸化シリコン層28によって反射部材30を保護することにより、反射部材30の反射率が低下することを抑制することができる。
なお、光学式スケール200は、第1チタン層22、第1酸化シリコン層24、および第2チタン層26をこの順で形成した後に、反射部材30を形成し、次に、第2酸化シリコン層28を形成することによって製造される。
3.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係るエンコーダー用光学式スケールについて、図面を参照しながら説明する。図4は、本実施形態の第2変形例に係るエンコーダー用光学式スケール300を模式的に示す断面図である。
エンコーダー用光学式スケール300(以下、「光学式スケール300」ともいう)は、図4に示すように、第2酸化シリコン層28が第1層28aおよび第2層28bを有している点において、上述した光学式スケール100と異なる。
第1層28aは、第2チタン層26上に設けられている。第1層28aは、第2チタン層26の第1酸化シリコン層24側とは反対側に設けられている。第1層28aの厚さは、例えば、45nm以上110nm以下であり、好ましくは80nmである。反射部材30は、第1層28a上に設けられている。
第2層28bは、第1層28a上に設けられている。第2層28bは、第1層28aの第2チタン層26側とは反対側に設けられている。第2層28bは、反射部材30を覆っている。第2層28bは、反射部材30上および第1層28a上に設けられている。さらに、第2層28bは、反射部材30の側面に設けられている。第2層28bの厚さは、例えば、30nm以上40nm以下である。
光学式スケール300では、第2酸化シリコン層28は、第2チタン層26上に設けられた第1層28aと、第1層28a上に設けられた第2層28bと、を有し、反射部材30は、第1層28a上に設けられ、第2層28bは、反射部材30を覆っている。そのため、光学式スケール300では、低反射領域42における第2酸化シリコン層28の厚さを確保しつつ、第2酸化シリコン層28の反射部材30上に設けられた部分(第1層28a)を薄くすることができる。これにより、光学式スケール300は、例えば光学式スケール200よりも、高反射領域40での反射光の強度と、低反射領域42での反射光の強度と、の差を大きくすることができる。
なお、光学式スケール300は、第1チタン層22、第1酸化シリコン層24、第2チタン層26、および第1層28aをこの順で形成した後に、反射部材30を形成し、次に、第2層28bを形成することによって製造される。
4. 光学式エンコーダー
次に、本実施形態に係る光学式エンコーダーについて、図面を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係る光学式エンコーダー400を説明するための図である。なお、図5では、互い直交する3軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
本発明に係る光学式エンコーダーは、本発明に係るエンコーダー用光学式スケールを含む。以下では、本発明に係るエンコーダー用光学式スケールとして光学式スケール100を含む光学式エンコーダー400について説明する。
光学式エンコーダー400は、図5に示すように、光学式スケール100と、光源410と、光検出器420と、を含む。なお、便宜上、図5では、光学式スケール100を簡略化して図示している。
光学式スケール100は、移動体2に設けられている。図示の例では、移動体2は、X軸方向に移動可能である。反射部材30は、X軸方向に周期的に設けられている。高反射領域40および低反射領域42は、X軸方向に交互に配置されている。図示の例では、反射部材30は、積層体20の+Z軸方向側に設けられている。
光源410は、光学式スケール100に光L1を照射する。光L1は、光学式スケール100に入射する入射光である。図示の例では、光源410は、光学式スケール100の+Z軸方向側に設けられている。光源410は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、レーザーなどである。光L1の波長は、例えば、550nm以上650nmである。光学式スケール100に対する光L1の入射角θは、例えば、0°より大きく65°以下であり、好ましくは0°より大きく60°以下である。入射角θは、例えば、積層体20の下面の垂線Pと、光L1を射出する光源410の光射出面の垂線(図示せず)とがなす角度である。
光検出器420は、光学式スケール100からの反射光L2を検出する。反射光L2は、光L1のうちの光学式スケール100において反射した光である。光検出器420は、例えば、フォトダイオードなどである。
光学式エンコーダー400では、光学式スケール100からの反射光L2は、光検出器420において縞状の像を生成する。光検出器420は、光学式スケール100の位置が側長方向(X軸方向)に移動することによって生じる縞状の像の位相変化を検出する。この検出された縞状の像の位相変化に基づいて、光学式スケール100の位置の変位情報を処理し、移動体2の位置情報を取得することができる。
光学式エンコーダー400は、例えば、以下の特徴を有する。
光学式エンコーダー400では、高反射領域40での反射光の強度と、低反射領域42での反射光の強度と、の差を大きくすることができる光学式スケール100を含む。そのため、光学式エンコーダー400では、光検出器420のSN比を高くすることができる。その結果、光学式エンコーダー400では、光学式スケール100の読み取りが容易であり、良好なエンコーダー特性を有することができる。さらにSN比が高いことで、光源410からの光の強度が小さくても読み取りが容易であり、光学式エンコーダー400全体の消費電力を下げることができる。
光学式エンコーダー400では、光学式スケール100に対する光L1の入射角θは、0°より大きく65°以下である。そのため、光学式エンコーダー400では、入射角θが上記の範囲外である場合に比べて、低反射領域42における反射率を低くすることができる(詳細は後述する「実験例」参照)。
なお、光学式スケール100は、光源410および光検出器420に対して、相対的に移動可能となるように設けられていればよい。例えば、図示はしないが、光学式スケール100は固定され、光源410および光検出器420が移動体2に設けられてX軸方向に移動可能であってもよい。
5. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
以下の実験例では、所定のモデルにおいて、光学シミュレーションによって反射率を計算した。
5.1. 入射角θの評価
第1チタン(Ti)層、第1酸化シリコン(SiO)層、第2チタン(Ti)層、および第2酸化シリコン(SiO)層を、この順で形成させたモデル(実験例1に係るモデル)を作製した。第1チタン層の厚さを90nm、第1酸化シリコン層の厚さを120.6nm、第2チタン層の厚さを8.14nm、および第2酸化シリコン層の厚さを112.4nmとした。このようなモデルにおいて、入射角θを変化させた場合の反射率を計算した。図6は、入射角θを変化させた場合の反射率を示すグラフである。図6の横軸は、モデルに入射する入射光の波長である。
なお、実験例1に係るモデルは、上述した低反射領域42に相当するため、反射率は低い方が好ましい。具体的には、実験例1に係るモデルの反射率は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。例えば、高反射領域の反射率が80%であった場合には、高反射領域での反射光の強度Iと、低反射領域での反射光の強度Iと、の比(I/I)は、モデルの反射率が5%の場合で16倍、モデルの反射率が3%の場合で26.7倍となり、良好なエンコーダー特性を有することができる。このことは、以下に示す実験例2に係るモデルにおいて、同様である。
図6に示すように、入射角θが70°の場合では、いずれの波長でも、反射率は5%より高かった。入射角θが0°より大きく65°以下の場合では、波長が550nm以上650nm以下の範囲で、反射率は5%以下となった。
図7は、入射光の波長が632nmにおいて、入射角θを変化させた場合の反射率を示すグラフである。図7より、入射角θが65°以下であれば、反射率を5%以下にできることがわかった。さらに、入射角θが60°以下であれば、反射率を3%以下にできることがわかった。
したがって、入射角θを、0°より大きく65°以下、好ましくは0°より大きく60°以下とすることにより、低反射領域における反射率を低くできることがわかった。
ここで、図8は、実験例1に係るモデルにおいて、入射角θを変化させた場合の反射率を示すグラフであり、図6とは、縦軸の範囲および入射角θの値が異なる。図9は、実験例3に係るモデルにおいて、入射角θを変化させた場合の反射率を示すグラフである。
実験例3に係るモデルは、Ti層(厚さ90nm)、Al層(厚さ97.03nm)、Ti層(厚さ10.28nm)、Al層(厚さ92.56nm)を、この順で形成させたモデルである。
図8および図9より、SiO層を用いた実験例1のモデルの方が、Al層を用いた実験例3に係るモデルよりも反射率が低いことがわかった。
5.2. 第1チタン層の厚さの評価
シリコン基板上に、バッファー層(SiO)を形成し、バッファー層上に、第1チタン(Ti)層、第1酸化シリコン(SiO)層、第2チタン(Ti)層、および第2酸化シリコン(SiO)層を、この順で形成させたモデル(実験例2に係るモデル)を作製した。バッファー層の厚さを100nmとした。第1酸化シリコン層の厚さ、第2チタン層の厚さ、および第2酸化シリコン層の厚さを、上記の実験例1に係るモデルと同じとした。このようなモデルにおいて、第1チタン層の厚さを変化させた場合の反射率を計算した。図10は、第1チタン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフである。
なお、入射光の波長を、633nmとした。入射光の波長については、後述する「5.3. 第1酸化シリコン層の厚さの評価」「5.4. 第2チタン層の厚さの評価」、「5.5. 第2酸化シリコン層の厚さの評価」、および「5.6. 第1変形例に係る光学式スケールに対応するモデルの評価」において、同様である。
図10に示すように、第1チタン層の厚さが40nmより小さいと、反射率が急激に高くなった。これは、入射光の一部が第1チタン層を透過して、バッファー層およびシリコン基板に入射したためである。第1チタン層の厚さが40nm以上であると、反射率は、ほぼ一定となった。
したがって、第1チタン層の厚さを、40nm以上とすることにより、低反射領域における反射率を低くできることがわかった。
5.3. 第1酸化シリコン層の厚さの評価
上記の実験例2に係るモデルにおいて、第1チタン層の厚さを90nmとし、第1酸化シリコン層の厚さを変化させた場合の反射率を計算した。図11は、第1酸化シリコン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフである。
図11に示すように、入射角θが60°以下の場合では、第1酸化シリコン層の厚さが100nm以上140nm以下の範囲で、反射率は3%以下となった。入射角θが65°の場合では、第1酸化シリコン層の厚さが110nm以上130nm以下の範囲で、反射率は5%以下となった。
したがって、第1酸化シリコン層の厚さを、100nm以上140nm、好ましくは110nm以上130nm以下とすることにより、低反射領域における反射率を低くできることがわかった。
5.4. 第2チタン層の厚さの評価
上記の実験例2に係るモデルにおいて、第1チタン層の厚さを90nmとし、第2チタン層の厚さを変化させた場合の反射率を計算した。図12は、第2チタン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフである。
図12に示すように、入射角θが60°以下の場合では、第2チタン層の厚さが6nm以上12nm以下の範囲で、反射率は5%以下となり、さらに、第2チタン層の厚さが7nm以上10nm以下の範囲で、反射率は3%以下となった。入射角θが65°の場合では、第2チタン層の厚さが7nm以上10nm以下の範囲で、反射率は5%以下となった。
したがって、第2チタン層の厚さを、6nm以上12nm、好ましくは7nm以上10nm以下とすることにより、低反射領域における反射率を低くできることがわかった。
5.5. 第2酸化シリコン層の厚さの評価
上記の実験例2に係るモデルにおいて、第1チタン層の厚さを90nmとし、第2酸化シリコン層の厚さを変化させた場合の反射率を計算した。図13は、第2酸化シリコン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフである。
図13に示すように、入射角θが60°以下の場合では、第2酸化シリコン層の厚さが85nm以上140nm以下の範囲で、反射率は5%以下となり、さらに、第2酸化シリコン層の厚さが100nm以上125nm以下の範囲で、反射率は3%以下となった。入射角θが65°の場合では、第2酸化シリコン層の厚さが105nm以上125nm以下の範囲で、反射率は5%以下となった。
したがって、第2酸化シリコン層の厚さを、85nm以上140nm、好ましくは100nm以上125nm以下、より好ましくは105nm以上125nm以下とすることにより、低反射領域における反射率を低くできることがわかった。
5.6. 第1変形例に係る光学式スケールに対応するモデルの評価
シリコン基板上に、バッファー層(SiO)を形成し、バッファー層上に、第1チタン(Ti)層、第1酸化シリコン(SiO)層、第2チタン(Ti)層、反射部材、および第2酸化シリコン(SiO)層を、この順で形成させて、図3で示した光学式スケール200に対応するモデル(実験例4に係るモデル)を作成した。バッファー層の厚さを100nmとした。第1チタン層の厚さ、第1酸化シリコン層の厚さ、および第2チタン層の厚さを、上記の実験例1に係るモデルと同じとした。反射部材の材質を、アルミニウムとした。このようなモデルにおいて、第2酸化シリコン層の厚さを変化させた場合の反射率を計算した。図14は、第2酸化シリコン層の厚さを変化させた場合の反射率を示すグラフである。
なお、光は、平面視において反射部材と重なる位置に入射させた。したがって、図14では、反射率が高いほど好ましい。
アルミニウムの反射率は85%以上90%以下であり、反射部材上に第2酸化シリコン層を形成すると反射率は低下するが、図14より、第2酸化シリコン層の範囲が85nm以上140nm以下の範囲で、80%の反射率を確保できることがわかった。
5.7. 第2変形例に係る光学式スケールの評価
第2変形例に係る光学式スケール300においては、第2酸化シリコン層28は、第1層28aおよび第2層28bを有している。第2層28bは、反射部材30上に設けられており、反射部材30の経時的な腐食等による反射率の低下を抑制することができる。反射率の低下を抑制する上で第2酸化シリコン層の第2層28bの厚さは、30nm以上であることが好ましい。さらに、反射部材30の反射率は、できる限り高い方が好ましく、例えば、85%以上の反射率が得られればさらによい。図14より85%以上の反射率が得られるためには、40nm以下であることが好ましい。以上の点から、第2酸化シリコン層28の第2層28bの厚さは、30nm以上40nm以下であることが好ましい。低反射領域42に求められる、第2酸化シリコン層28の厚さは、85nm以上140nm以下である点から、第2酸化シリコン層28の第1層28aの厚さは、45nm以上110nm以下であることが好ましい。
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
2…移動体、10…基板、20…積層体、20a…上面、21…バッファー層、22…第1チタン層、24…第1酸化シリコン層、26…第2チタン層、28…第2酸化シリコン層、28a…第1層、28b…第2層、30…反射部材、40…高反射領域、42…低反射領域、100,200,300…エンコーダー用光学式スケール、400…光学式エンコーダー、410…光源、420…光検出器

Claims (8)

  1. シリコン基板と、
    前記シリコン基板上に設けられた積層体と、
    前記積層体上に、周期的に設けられた複数の反射部材と、
    を含み、
    前記積層体は、
    第1チタン層と、
    前記第1チタン層上に設けられた第1酸化シリコン層と、
    前記第1酸化シリコン層上に設けられた第2チタン層と、
    前記第2チタン層上に設けられ、85nm以上140nm以下の厚さの第2酸化シリコン層と、
    を有し、
    前記反射部材の反射率は、前記積層体の前記第2酸化シリコン層側における反射率よりも高い、エンコーダー用光学式スケール。
  2. 請求項1において、
    前記反射部材は、前記第2酸化シリコン層上に設けられている、エンコーダー用光学式スケール。
  3. 請求項1において、
    前記第2酸化シリコン層は、前記反射部材を覆っている、エンコーダー用光学式スケール。
  4. 請求項1において、
    前記第2酸化シリコン層は、
    前記第2チタン層上に設けられた第1層と、
    前記第1層上に設けられた第2層と、
    を有し、
    前記反射部材は、前記第1層上に設けられ、
    前記第2層は、前記反射部材を覆っている、エンコーダー用光学式スケール。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項において、
    前記第1チタン層の厚さは、40nm以上である、エンコーダー用光学式スケール。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項において、
    前記第1酸化シリコン層の厚さは、100nm以上140nm以下である、エンコーダー用光学式スケール。
  7. 請求項1ないしのいずれか1項に記載のエンコーダー用光学式スケールと、
    前記エンコーダー用光学式スケールに光を照射する光源と、
    前記エンコーダー用光学式スケールからの反射光を検出する光検出器と、
    を含む、光学式エンコーダー。
  8. 請求項において、
    前記エンコーダー用光学式スケールに対する前記光の入射角は、0°より大きく65°以下である、光学式エンコーダー。
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