JP2006142748A - インクジェット記録体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】写真画像の出力に適した高光沢、高印字濃度のインクジェット記録体であって、インク吸収性に優れ、かつ顔料インクの定着性を併せ持ったインクジェット記録体を提供する。
【解決手段】支持体上、又は支持体上に形成された少なくとも1層の下塗り層上に、顔料としてシリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を含有し、更にバインダーと、該バインダーの架橋剤を含有するインク受容層を形成し、
インク受容層上にコロイド状粒子とインク定着剤を含有する表面層用塗液を塗布して表面層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明はインクジェット記録体に関し、特に写真画像の出力に適した高光沢、高印字濃度のインクジェット記録体であって、インク吸収性に優れ、かつ顔料インクの定着性を併せ持ったインクジェット記録体に関する。
水性インクを微細なノズルから噴出して画像を形成させるインクジェット記録方式は、フルカラー化が容易であること、高速記録が可能であること、少量部数の印刷で他の印刷装置より安価であること等の理由により、端末用プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、あるいは帳票印刷などで広く利用されている。
近年、プリンタの急速な普及と、高精細化・高速化とが進み、それに伴って、インクジェット記録体には、従来以上のインク吸収速度の向上が求められ、さらに、デジタルカメラで撮影した記録画像に対し、銀塩方式の写真に匹敵する、高い画質の実現が強く求められている。また、印刷画像の品質を写真の品質により近づけるために、印刷画像の色濃度及び光沢感の更なる向上が望まれている。
一方で、銀塩写真と同等の画像保存性を実現するために、インク自体の改良も提案されている。従来のインクジェット記録用インクの主流を占める親水性の高い着色剤を使用する水性染料インク(以下、染料インクという。)とともに、耐水性及び耐光性に優れた、疎水性着色顔料を着色剤として含むインク(以下、顔料インクという。)もしばしば用いられるようになっている。
顔料インク中の着色顔料は塗工表面に留まり易く、これまでに供されている染料インク対応の高光沢のインクジェット記録体では、顔料インクの定着性や擦過性が劣っているため、染料、顔料インクともに高画質で印画可能な記録メディアが強く要望されている。
これを実現するためにインク受容層には微細顔料を用い、塗工層の細孔直径分布曲線におけるピークがほぼ0.1μm以下、つまり塗膜のひび割れを制御してドットの真円性を再現しながら、更に高いインク吸収速度と光沢を得るための技術が必須である。
例えば、特開平11−115308号公報(特許文献1参照)や特開2001−246832号公報(特許文献2参照)では、インク記録層に平均一次粒子径20nm以下の無機顔料微粒子とバインダーにポリビニルアルコールを含んで構成されているインクジェット記録シートが提案されている。これは、ほう砂又はほう酸とポリビニルアルコールの架橋反応を利用して、該記録層が減率乾燥速度を示すようになる前に塗料をゲル化させて、塗膜のひび割れを抑制しながら高い塗工量を付与することができる。これによってドットの真円性が再現され、染料インクにおいては優れた画質を得ることができるが、記録シートの表面の層が微細顔料とポリビニルアルコールにより形成されるため表面光沢性が不十分であり、また顔料インクにおいてはインク吸収性がまだ十分なものではなかった。
特開2001−246832号公報(特許文献2参照)では、支持体とインク記録層との間の支持体上に、硼酸またはホウ素化合物が支持体の一方の表面あたり0.1g/m以上塗工されており、記録層中のポリビニルアルコールは下塗りの硼酸またはホウ素化合物により架橋されて、該記録層が減率乾燥速度を示すようになる前に塗料がゲル化して、塗膜のひび割れを抑制している。しかし、この方法においても得られた記録体の表面光沢はまだ満足できるレベルのものではなかった。
また、特開2000−301828号公報(特許文献3参照)では非吸水性の支持体に第一多孔質層を塗布乾燥後、もしくは乾燥終了より前に第二の多孔質層を塗布して、膜面に気泡の発生しないインクジェット記録シートが提案されている。この方法によって、気泡やひび割れのないインク記録層は得られるが、光沢やインク吸収速度はまだ不十分であった。
特開平5−104848号公報(特許文献4参照)や特公平7−37175号公報(特許文献5参照)では、吸水性の原紙を支持体に用いたインクジェット記録用紙の製造方法が記載されている。特開平5−104848号公報は、片艶紙の艶面にホウ砂または硼酸処理層及びインク受容層が順次設けられるものであるが、インク受容層には平均粒子径が1μm以上の湿式シリカを使用しているため、光沢及び画像濃度の向上には至らなかった。
また特公平7−37175号公報は、ホウ砂または硼酸を片面あたり0.1g/m以上塗工してなる基紙及び及び該基紙の被塗工面の一方に5〜20g/mのインク受容層を設けるインクジェット記録体であるが、これも平均粒子径が1μm以上の湿式シリカをインク受容層に使用しているため、高い光沢や画像濃度は得られなかった。
特許第3322980号公報(特許文献6参照)では、布地に硼酸または硼酸塩を担持された後、ポリビニルアルコールを含むベーマイトゾルを塗布してインクジェットプリンター用の布地を製造する方法が提案されている。これは、木綿からなる布地をオルトホウ酸ナトリウム水溶液に含浸し、乾燥させた後にベーマイトゾルを塗工するものであり、インクジェットプリンターで高精細の画像が得られる布地の製造方法に関するものである。
また、光沢を付与する技術として特開平7−101142号公報(特許文献7参照)では、ミクロンオーダーの顔料を主成分とする記録層上にコロイド粒子と高分子ラテックスを含有する光沢発現層を設ける試みがあった。このような構成では、ある程度の光沢は得られるが、インク中の染料がミクロンオーダーの記録層に定着するため、画像濃度が低く、画像の均一性も劣る。また、光沢発現層の細孔分布曲線におけるピークが0.1μmより大きく、つまり光沢発現層がひび割れているため、目視光沢が低く、顔料インクの定着性も劣る問題があった。
更に光沢を上げるために、特開平7−117335号公報(特許文献8参照)は、光沢発現層が湿潤状態のうちに加熱された鏡面ドラムに圧着し、その鏡面を写し取る方法が提案された。この方法によってある程度の光沢は得られるようになったが、光沢発現層にはひび割れがあるため画像の均一性が劣り、画像濃度や顔料インク適性の解決に至らなかった。
特開2001−10220号公報(特許文献9参照)は、基材上に2層以上の記録層を設け、かつ平均粒子径1μm以下の凝集体顔料を使用した最表層が、湿潤状態のうちに加熱された鏡面ドラムに圧着してキャスト加工し、光沢、画像濃度、インク吸収性などの問題を解決する試みがあった。しかし、最表層の細孔直径分布曲線におけるピークが0.1μm以下のみになっていない、つまり最表層のひび割れを制御していないため、印字後のドットが真円性に欠け、画像濃度が不足し、画像の均一性も低いものであった。また、昨今のプリンターの高精細・高速化に伴いインク吸収性も不足しており、顔料インクを用いた場合には、塗膜のひび割れ部分に着色顔料が多く吸収されるため、画像にムラが生じ不適であった。
特開平11−115308号公報(第3〜6頁) 特開2001−246832号公報(第3〜6頁) 特開2000−301828公報(第5〜6頁) 特開平5−104848号公報(第2〜3頁) 特公平7−37175号公報(第2〜3頁) 特許第3322980号公報(第2頁) 特開平7−101142号公報(第4および9〜10頁) 特開平7−117335号公報(第4頁) 特開2001−10220号公報(第3および9〜10頁)
本発明は上記の問題を解決し、インク吸収性が良好で高速記録が可能であり、写真画像の出力に適する濃度が高く、及び光沢が極めて良好なインクジェット記録体を提供しようとするものであり、顔料インクにおいても染料インクと同等の銀塩写真並みの高画質が得られる、染料、顔料インク共用のインクジェット記録体を提供しようとするものである。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、支持体上、或いは必要により形成される下塗り層上に、特定のインク受容層を形成し、インク受容層上に特定の表面層を形成し、インク定着剤を主として表面層用塗液により付与することにより、達成できることを見出し、本発明に至ったのである。
(1)本発明は、支持体上、又は支持体上に形成された少なくとも1層の下塗り層上に、顔料としてシリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を含有し、更にバインダーと、該バインダーの架橋剤を含有するインク受容層を形成し、インク受容層上にコロイド状粒子とインク定着剤を含有する表面層用塗液を塗布して表面層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法である。
(2)インクジェット記録体の印刷される面全体に含有する全インク定着剤のうち、75質量%以上が、表面層用塗液により付与されている(1)記載のインクジェット記録体の製造方法である。
(3)表面層用塗液に含有されるインク定着剤が、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩、ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体及び5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を含有する、(1)又は(2)に記載のインクジェット記録体の製造方法である。
(4)表面層用塗液に含有されるコロイド状粒子が、平均1次粒子径0.01〜0.06μmの単分散コロイド顔料、平均2次粒子径1μm以下のアルミナ、平均2次粒子径1μm以下のアルミナ水和物、平均2次粒子径0.7μm以下の気相法シリカ、平均2次粒子径0.5μm以下の湿式ゲル法シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれか一に記載のインクジェット記録体の製造方法である。
(5)表面層用塗液に含有されるコロイド状粒子が、カチオン性コロイダルシリカである(1)〜(4)のいずれか一に記載のインクジェット記録体の製造方法である。
(6)表面層が、表面層用塗液が湿潤状態にある間に、加熱された鏡面仕上げの金属面に圧着処理して形成することを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか一に記載のインクジェット記録体の製造方法である。
(7)前記支持体が透気性支持体である、(1)〜(6)のいずれか一に記載のインクジェット記録体の製造方法である。
(8)インク受容層が、平均粒子径0.01〜1μmの微細顔料と親水性バインダーを含有するインク受容層用塗液を、支持体上又は下塗り層上に塗布、乾燥され、且つ、該塗布と同時に、ないしは乾燥時の塗液が減率乾燥速度を示すようになる前に、該塗布された塗液を架橋剤により増粘またはゲル化させて形成され、表面層は、インク受容層が減率乾燥速度を示すようになった後のインク受容層層上に、塗工して形成することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか一に記載のインクジェット記録体の製造方法である。
本発明のインクジェット記録体の製造方法で製造されたインクジェット記録体は、高い光沢性を有するとともに、染料インクで記録した際の印画濃度や印字にじみ、インクドット真円性等に優れるため高精細な画像を印字可能であり、更に顔料インクに対しても優れた記録適性を有するので、極めて実用性の高いものである。
本第1発明は、支持体上、又は支持体上に形成された少なくとも1層の下塗り層上に、顔料としてシリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を含有し、更にバインダーと、該バインダーの架橋剤を含有するインク受容層を形成し、インク受容層上にコロイド状粒子とインク定着剤を含有する表面層用塗液を塗布して表面層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法である。
この製造方法で得られたインクジェット記録体に、染料タイプのインクジェットインクで印字を行うと、印字濃度が高いため印字画像の色彩が鮮やかな画像を得ることができる。
この理由は必ずしも定かではないが、インク定着剤を表面層用塗液で付与させることにより、記録体のインクを受ける側の表面付近に多量のインク定着剤が存在し、表面側から厚み方向に向かって徐々に濃度が低くなるように層内に存在させることができ、染料タイプのインクジェットインクで印字を行なった際、供給されたインク染料の大部分がインク受容層面の表面付近で保持されるものと思われる。特に、インク受容層面の全インク定着剤の75質量%以上を表面層処理液で付与させると、この効果が顕著でありより好ましい。
加えて、顔料としてシリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を含有し、バインダーと、該バインダーの架橋剤を含有するインク受容層を形成することによりマイクロポーラスな層となり、インク吸収速度とインク吸収容量のバランスが層構成となる。
更に、該インク受容層上にコロイド状粒子を含有する表面層用塗液を塗布することにより、透明性と平滑性に優れた表面層を形成する効果が得られ、反射率の高い塗工表面を得ることができるものと思われる。これら、反射率の高い塗工表面を得る効果と、インク染料の大部分を塗工層表面付近で保持する効果を組み合わせることにより、高い印字濃度を達成でき、印字画像の色彩が鮮やかになるものと推定される。
このような構成のインクジェット記録体は、例えば、平均粒子径0.01〜1μmの微細顔料と親水性バインダーを含有するインク受容層用塗液を、支持体上又は下塗り層上に塗布、乾燥され、且つ、該塗布と同時に、ないしは乾燥時の塗液が減率乾燥速度を示すようになる前に、該塗布された塗液を架橋剤により増粘またはゲル化させてインク受容層を形成し、インク受容層が減率乾燥速度を示すようになった後のインク受容層層上に、コロイド状粒子とインク定着剤を有する表面層用塗液を塗工して形成するとよい。
得られたインクジェット記録体は、高い光沢性を有するとともに、染料インクで記録した際の印画濃度や印字にじみ、インクドット真円性等に優れるため高精細な画像を印字可能であり、更に顔料インクに対しても優れた記録適性を有するので、極めて実用性の高いものである。更に、表面層は表面層用塗液が湿潤状態にある間に、加熱された鏡面仕上げの金属面に圧着処理して形成すると特に光沢性が向上する。
以下に、本発明の構成要素について、例示する。
「支持体について」
支持体としては、インクジェット記録体用として使用できる公知のシート状基材であれば特に限定するものではなく、透気性支持体、非透気性支持体ともに使用できる。
(透気性支持体について)
透気性支持体としては、例えば上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、箔紙、クラフト紙、バライタ紙、板紙、含浸紙、蒸着紙、水溶性紙、或いは、一般の塗工紙等に使用される酸性紙、あるいは中性紙等の塗工紙原紙等の紙基材類が適宜使用される。また、透気性を有する樹脂シート類も用いることができる。
紙基材としては、木材パルプを主成分として構成され、必要に応じて填料、各種助剤等の添加剤を含有するものが挙げられる。
木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS−P−8121)程度である。平滑性を高めるためには叩解度を進めるほうが望ましいが、用紙に記録した場合にインク中の水分によって起こる用紙のボコツキや記録画像のにじみは、叩解を進めないほうが良好な結果を得る場合が多い。従ってフリーネスは300〜500ml程度が好ましい。
填料は、不透明性等を付与したり、インク吸収性を調整する目的で配合し、炭酸カルシウム、焼成カオリン、シリカ、酸化チタン等が使用できる。特に炭酸カルシウムは、白色度が高い紙基材となり、インクジェット記録体の光沢感が高まるので好ましい。紙基材中の填料の含有率(灰分)は1〜20質量%程度が好ましく、多すぎると紙力が低下するおそれがある。少ないと紙基材の透気性が悪くなるので、好ましい填料の含有率は7〜20質量%である。この範囲にすると、平滑度、透気度、紙力のバランスがとれているので、結果として光沢度、像鮮明度が優れたインクジェット記録体が得られ易くなる。
紙基材には、助剤としてサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。紙力増強剤としては、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、N−ビニルホルムアミド・ビニルアミン共重合体等の紙力増強剤を内添あるいは塗布もしくは含浸して用いることができる。特にポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂は湿潤時の紙の寸法安定性を向上させる効果をもっているため、好適に使用される。
紙基材には、さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂等を塗布・含浸させ、表面強度、サイズ度等を調整できる。
紙基材のステキヒトサイズ度(100g/mの紙として)は1〜200秒程度が好ましい。サイズ度が低いと、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる場合があり、高いとインク吸収性が低下したり、印字後のカールやコックリングが著しくなる場合がある。より好ましいサイズ度の範囲は4〜120秒である。紙基材の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m程度である。
透気性支持体の透気度としては、王研式透気度が10〜350秒にあることが好ましい。因みに10秒以上とすることにより、塗工液が支持体や必要により形成される下塗り層に浸透することを抑制できる。350秒以下とすることにより、後で説明する鏡面ロールでの圧着処理する際に、操業性が劣るという問題を抑制できる。好ましい王研式透気度は10〜200秒であり、より好ましくは20〜100秒である。
(非透気性支持体について)
一方、非透気性支持体として、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の樹脂フィルム類、樹脂被覆紙(例えばポリエチレンラミネート紙)、金属フォイル、金属箔、合成紙、不織布などのシート基材類が適宜使用される。また、透気性支持体にフィルムなどを貼り合せた貼合シートも非透気性支持体として使用できる。中でも、樹脂フィルムあるいは樹脂被覆紙は、銀塩写真の画質に近い風合いを有するので好ましい。
樹脂フィルムとしては、熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ナイロンのフィルム等が例示できる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリシクロヘキセンテレフタレート等が、またポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体からなるもの、またはこれらを主成分とするものを例示できる。また、これらの熱可塑性樹脂を1種または2種以上適宜選択して使用でき、他の熱可塑性樹脂としてポリスチレン、アクリル酸エステル共重合体等を混合して使用することもできる。
これら熱可塑性樹脂を縦方向および/または横方向に延伸して成形したフィルムも使用できる。この他、この熱可塑性樹脂中に無機質微細粉末を混合してフィルムを形成し、これを例えば1軸延伸処理または2軸延伸処理して紙状の層としてもよい。本発明においては、このようなフィルムを複数層積層して得られた多層フィルムを支持体として使用し、例えば、基材層と両面または片面に紙状の層を設けた2〜3層フィルム、または更にその少なくとも片面の紙状の層上に表面層を形成した3〜5層フィルム等を使用してもよい。このように熱可塑性樹脂を紙状の層としたものは一般に合成紙として知られている。
樹脂被覆紙としては、熱可塑性樹脂を押出しラミネートした紙が例示でき、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂が例示できる。熱可塑性樹脂中には、二酸化チタンなどの顔料をはじめ、染料や紫外線吸収剤、分散助剤、酸化防止剤などを適宜配合することができる。
なお、非透気性支持体の場合、後で述べるように、鏡面ロールで光沢仕上げをする場合には、鏡面ロールから剥離した後に、乾燥する必要がある。
(その他支持体について)
支持体には、その上に形成される塗工層(下塗り層、インク受容層、表面層)の形成方法、或いは、使用される用途などに応じて、上記例示の支持体の中から適宜選択使用できる。勿論、支持体表面に蛍光染料、蛍光顔料などにより色目を調節する層を形成したり、帯電防止層、アンカー層、バリヤー層を形成してもよく、コロナ処理などを施しても構わない。また印刷時のカール等の防止や、摩擦性の調整、プリンター搬送性の向上や、手触り、風合いなどの調整を目的として、樹脂、及び必要に応じて顔料や染料を含む裏面層を設けることができる。裏面層をプリンターでの搬送性などの目的で裏面処理層を設けることもできる。
「下塗り層について」
支持体上に、必要に応じて下塗り層を形成することもできる。下塗り層を形成することにより、インクジェットプリンターで印刷した際のインクの吸収性を好適に調整でき、印字濃度や印字にじみ、ベタ均一性等の記録適性が向上する傾向にある。下塗り層は、インクの溶媒成分をいち早く吸収する機能を有する層であり、顔料と接着剤を含有することが好ましい。
(顔料について)
下塗り層に配合される顔料としては、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、合成非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料を1種もしくはそれ以上、併用することができる。これらの中で、酸化亜鉛、酸化チタン、プラスチックピグメント類は、白紙部の黄変を防ぐことができるので配合することが好ましい。また、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライトはインク吸収性が高いので主成分として含有させることが好ましい。
顔料の平均粒子径(凝集顔料の場合は凝集粒子径)は、1〜12μm程度が好ましく、より好ましくは2〜10μm、更に好ましくは2〜6μmである。1μm以上とすることにより、インク吸収速度向上効果が得られ、12μm以下とすることにより、インク受容層の平滑性や光沢の低下を防ぐことができる。異なる平均粒子径の顔料を併用することも可能である。
また、インク吸収性を調整したり、下塗り層上に塗工する塗工液の浸透を制御する目的で、副成分として、平均粒子径の小さい、例えば平均粒子径が1μm未満の顔料を配合することができる。この様な顔料としてはコロイダルシリカ、アルミナゾルが挙げられ、特にコロイダルシリカが好ましい。
副成分として配合されるコロイダルシリカ(コロイダルシリカ(a))は、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂(b)と組み合わせて配合されることが好ましい。
すなわち、下塗り層中には、コロイダルシリカ(a)と、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂(b)とを含有させるか、あるいは、コロイダルシリカ(a)と重合体樹脂(b)との複合体(c)を含有させることが好ましい。これにより、表面光沢がより向上する。さらに、その理由は不明であるが、記録体を高光沢仕上げするために、表面層が湿潤状態にある間に、加熱された鏡面仕上げの金属面に圧着、好ましくは圧着・乾燥させる場合、鏡面仕上げの金属面からの離型性が向上する傾向がある。
光沢がより発揮される理由は必ずしも明らかではないが、コロイダルシリカ(a)及び重合体樹脂(b)、あるいは複合体(c)の存在が、下塗り層のインク吸収性を維持したまま、インク受容層を形成するための塗工液が下塗り層へ浸透するのを抑制するためと推定される。
コロイダルシリカ(a)にはアルカリ性タイプと酸性タイプがあり、どちらも使用可能であるが、下塗り層用塗工液のpH等の物性に合わせて適宜使い分ける必要がある。コロイダルシリカの粒子形状としては、球状コロイダルシリカ、非球状コロイダルシリカ共に使用することができる。非球状コロイダルシリカとは、球状コロイダルシリカが直列あるいは一部分岐してつながった状態のコロイダルシリカである。光沢の出やすさは、どちらかといえば球状コロイダルシリカの方が優れており、インク吸収性については非球状コロイダルシリカの方が優れている。これらは、目的に合わせてどちらかを選定もしくは両者を適宜混合して使用することが重要である。
コロイダルシリカの粒子径は4〜200nmの範囲が好ましく、10〜60nmがより好ましい。
コロイダルシリカ(a)の配合量は、コロイダルシリカ(a)以外の顔料100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは1〜10質量部の範囲で調節される。
エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂(b)としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレン、ブタジエン等のエチレン性モノマーを重合して得られる重合体が挙げられる。なお、重合体樹脂(b)は、必要に応じて2種類以上のエチレン性モノマーを併用した共重合体であってもよいし、さらに、これら重合体あるいは共重合体の置換誘導体でもよい。因みに、置換誘導体としては、例えばカルボキシ基化したもの、又は該カルボキシ基をアルカリ反応性にしたもの等が例示される。
重合体樹脂(b)の配合量は、コロイダルシリカ(a)以外の顔料100質量部に対し、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは1〜5質量部の範囲で調節される。
複合体(c)は、コロイダルシリカ(a)と重合体樹脂(b)とを複合体化したものであり、コロイダルシリカ(a)と重合体樹脂(b)との複合体化の方法としては、(I)上記のエチレン性モノマーをシランカップリング剤等とコロイダルシリカの存在下で重合させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体(c)とする方法、あるいは(II)必要に応じシラノール基等で変性した重合体樹脂(b)とコロイダルシリカ(a)を反応させ、Si−O−R結合(R:重合体成分)によって複合体(c)とする方法、等が挙げられる。
上記複合体(c)の重合体成分(重合体樹脂(b))のガラス転移点(Tg)は40℃以上が好ましく、50〜100℃の範囲がより望ましい。ガラス転移点が40℃以上であると、乾燥の際に成膜が進みすぎにくく、インクの吸収が速くなり、インクのにじみが発生しにくくなる傾向がある。
さらに、その理由は必ずしも明らかではないが、ガラス転移点が40℃以上の場合、記録用紙を高光沢仕上げするために、表面層が湿潤状態にある間に、鏡面仕上げの金属面に圧着、好ましくは圧着・乾燥させる場合、鏡面ドラムからの離型性がより向上する傾向がある。
複合体(c)の配合量は、コロイダルシリカ(a)以外の顔料100質量部に対し、好ましくは1〜40質量部、より好ましくは1〜15質量部の範囲で調節される。
また、複合体(c)中の、コロイダルシリカ(a)と重合体樹脂(b)との比率(質量比)は、好ましくは95:5〜50:50、より好ましくは80:20〜60:40である。
(接着剤について)
下塗り層に配合される接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等の、一般に塗工紙用として用いられている従来公知の接着剤が単独、あるいは併用して用いられる。
なお、水性ポリウレタン樹脂は、ウレタンエマルジョン、ウレタンラテックス、ポリウレタンラテックス等とも通称されている。また、ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物と活性水素含有化合物との反応から得られるものである。比較的多数のウレタン結合及び尿素結合を含む高分子化合物である。
顔料と接着剤の配合割合は、その種類にもよるが、一般に、顔料100質量部に対し接着剤1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で調節される。
(その他下塗り層について)
下塗り層には、さらに、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。また、下塗り層中に、蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
(下塗り層の形成について)
下塗り層は、上記材料をもって構成される下塗り層用塗工液を支持体上に塗工し、乾燥することにより形成できる。下塗り層用塗工液は、固形分濃度5〜50質量%程度に調整して塗工される。
下塗り層用塗工液の塗工量は、乾燥質量で、好ましくは2〜60g/m、より好ましくは2〜30g/m程度、更に好ましくは4〜20g/m程度である。塗工量を2g/m以上とすることにより、インク吸収性改良効果が充分に得られ、インク受容層を設けた際に優れた光沢性が得られ、60g/m以下とすることにより、印字濃度が高くなったり、塗工層の強度が向上し、粉落ちや傷が付きにくくなる傾向がある。
下塗り層用塗工液の塗工には、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター等の各種公知公用の塗工装置が使用できる。
また、下塗り層の形成後、さらに、必要に応じてスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。なお、下塗り層は、2層以上形成しても構わない。
「インク受容層について」
インク受容層は、表面層を通過あるいは吸収しきれないインク中の染料や溶剤成分を吸収定着すること目的で形成する層である。そのため、インク吸収速度とインク吸収容量のバランスが要求される。また、表面層の光沢性を高めるために、インク受容層には平滑性や成膜性が要求されるが、過度の成膜は、インクの吸収性を損なうことになる。
本発明のインク受容層は、顔料としてシリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を含有し、更にバインダーと、該バインダーの架橋剤を含有するインク受容層である。
このような層を形成する好ましい製造方法としては、顔料と親水性バインダーとを含有するインク受容層用塗液を塗布、乾燥し、且つ塗布と同時に、或いは塗布した層が乾燥途中であって、該インク受容層が減率乾燥部になる(減率乾燥速度を示す)前に、架橋剤により増粘またはゲル化(例えば、ホウ素化合物等の架橋剤によって塗液を増粘またはゲル化)させて形成する方法が例示できる。この方法は、塗料を乾燥初期に増粘またはゲル化させることで乾燥時の熱風による塗工層のひび割れを防ぎ、また支持体への塗料のしみ込みを防止する大きな効果を得ることができる。
(顔料について)
インク受容層に使用する顔料としては、シリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を使用する。これらの中で、平均粒子径が10nm以上1000nm以下、好ましくは700nm以下の微細顔料を使用することが好ましい。平均粒子径が1000nmより大きいと、インク受容層の透明度が低下し、インクジェット記録した際に当該インク受容層中に定着した着色剤の発色性が低下し所望の印字濃度が得られないという問題が発生する。また平均粒子径10nm以上とすることにより、インクの吸収性が低下し、にじみ等が発生し、所望とする画像品位を得ることができないという傾向を抑制できる。
微細顔料を構成する一次粒子の平均粒子径3nm以上40nm以下が好ましい。より好ましくは5nm以上30nm以下、さらに好ましくは7nm以上20nm以下である。平均1次粒子径3nmより小さいと、1次粒子間の空隙が著しく小さくなり、インク中の溶剤や着色剤を吸収する能力が低下し、所望とする画像品位を得ることができない傾向にある。また、平均1次粒子径40nmより大きいと、凝集した2次粒子が大きくなり、インク受容層の透明性が低下し、インクジェット記録した際にインク受容層に定着された着色剤の発色性が低下し、所望とする印字濃度が得られない傾向がある。
平均粒子径1000nm以下の微細顔料は、たとえば機械的手段で強い力、所謂breakingdown法(塊状原料を細分化する方法)により得ることが可能である。機械的手段としては、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、液流衝突式ホモジナイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、乳鉢、擂解機(鉢状容器中の被粉砕物を、杵状攪拌棒で磨砕混練する装置)、サンドグラインダー等が挙げられる。粒子径を小さくする為に、分級と繰り返し粉砕を行なうことができる。
本発明でいう平均粒子径は、顔料が粉体、スラリー状に関係なく、まず3%の顔料水分散液を200g調整し、続いて市販のホモミキサーで1000rpm、30分間を攪拌分散した後、直ちに電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し平均したもの。「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年参照)。
微細顔料としては、特に、気相法シリカ、メソポーラスシリカ、活性ケイ酸を縮合させて製造された湿式法シリカのコロイド状物、アルミナ酸化物、およびアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。このなかで、気相法シリカとアルミナ酸化物が好ましく選択される。アルミナ酸化物の中では気相法(フュームド)アルミナ酸化物が好ましい。
好ましく使用される気相法シリカは、フュームドシリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化珪素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化珪素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシランなどのシラン類も、単独または四塩化珪素と混合した状態で使用することができる。
メソポーラスシリカとは、1.5〜100nmに平均細孔径を有するシリカ多孔体である。また、アルミニウム、チタン、バナジウム、ホウ素、マンガン原子等を導入したメソポーラスシリカも使用できる。多孔体の物性としては特に限定されないが、BET比表面積(窒素吸着比表面積)は200〜1500m/gが好ましく、細孔容積としては0.5〜4ml/gが好ましい。メソポーラスシリカの合成方法は特に限定されないが、米国特許第3556725号明細書に記載されている、シリカのアルコキシドをシリカ源として、長鎖のアルキルを含む4級アンモニウム塩をテンプレートとした合成方法、特表平5−503499号公報等に記載されているアモルファスシリカ粉末やアルカリシリケート水溶液をシリカ源として、長鎖のアルキル基を有する4級アンモニウム塩、あるいはホスホニウム塩をテンプレートとする水熱合成法、特開平4−238810号公報等に記載されているシリカ源としてカネマイト等の層状ケイ酸塩を、長鎖のアルキルアンモニウムカチオン等をテンプレートとしてイオン交換法により合成する方法、更にドデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアミン、ノニオン系界面活性剤等をテンプレートとして、シリカ源として水ガラス等をイオン交換した活性シリカを用いて合成する方法などである。ナノポーラスシリカ前駆体からのテンプレートの除去方法としては高温で焼成する方法、有機溶媒で抽出する方法が挙げられる。
活性ケイ酸を縮合させて製造された湿式法シリカのコロイド状物とは、コロイド状に分散したシリカシード液にアルカリを添加したのち、該シード液に対し活性珪酸水溶液及びアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種類からなるフィード液を少量ずつ添加してシリカ微粒子を成長させて得る2次シリカ分散体であり、例えば特開平2001−354408号公報などに記載されている方法で得ることが可能である。
アルミナ酸化物とは、一般的に結晶性を有する酸化アルミナとも呼ばれる。具体的には、χ、κ、γ、δ、θ、η、ρ、擬γ、α結晶を有する酸化アルミナが挙げられる。本発明は光沢感、インク吸収性から気相法アルミナ酸化物、γ、δ、θ結晶を有するアルミナ酸化物が好ましく選択される。粒度分布がシャープで、成膜性が特に優れる気相法アルミナ酸化物(フュームドアルミナ)が最も好ましい。
気相法アルミナ酸化物とは、ガス状アルミニウムトリクロライドの高温加水分解によって形成されたアルミナであり、結果として高純度のアルミナ粒子を形成する。これら粒子の1次粒子サイズはナノオーダーであり、非常に狭い粒子サイズ分布(粒度分布)を示す。かかる気相法アルミナ酸化物は、カチオン表面チャージを有する。インクジェット塗工における気相法アルミナ酸化物の使用は、例えば米国特許第5,171,626号公報に示されている。
アルミナ水和物とは、特に限定するものではないが、インク吸収速度や成膜性の観点からベーマイトか擬ベーマイトが好ましく選択される。アルミナ水和物の製造方法は例えばアルミニウムイソプロポキシドを水で加水分解する方法(B.E.Yoldas,Amer.Ceram.Soc.Bull.,54,289(1975)など)やアルミニウムアルコキシドを加水分解する方法(特開平06−064918号公報など)などが挙げられる。
(接着剤について)
インク受容層に含有する親水性バインダーとしては、インクジェット記録用として公知のバインダーの中で、インク受容層用塗液を塗工と同時、或いはその後に増粘またはゲル化する水溶性バインダー、水分散性バインダーであれば使用できる。
例えば、架橋剤を組み合わせて増粘またはゲル化する場合、架橋剤と架橋反応を起こすバインダーを選択使用する。架橋速度の速いホウ素化合物を代表例とすると、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、スチレンーブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート、スチレンー酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。このなかで、特に顔料との接着性からポリビニルアルコールが好ましく選択される。このなかで、成膜性とインク吸収性のバランスから重合度2000以上のポリビニルアルコールが好ましく、重合度3600〜5000のポリビニルアルコールがより好ましい。なお、インク吸収性などを改善する意味で2種以上のバインダー(例えば、水溶性樹脂と水溶性樹脂、水溶性樹脂とラテックスなど)を併用しても良い。
(架橋剤について)
架橋剤としては、バインダーの架橋剤として知られている材料のほか、バインダーをゲル化させる各種公知のゲル化剤も使用できる。例えば、ポリビニルアルコールに対する架橋性を有する化合物としては、グリオキザールなどのアルデヒド系架橋剤、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、ビスビニルスルホニルメチルエーテルなどのビニル系架橋剤、硼酸および硼砂などのホウ素含有化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等などが例示できる、中でも、ホウ素含有化合物は、増粘またはゲル化が早く生じるので特に好ましい。
ホウ素含有化合物としては、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことである。例としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。このなかで、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが塗料を適度に増粘させる効果があるために好ましく用いられる。
ホウ素化合物の含有量は、ホウ素化合物及びポリビニルアルコールの重合度にもよるが、基材の片面に0.01〜2.0g/m含有されるのが好ましい。2.0g/mより多いと親水性バインダーとの架橋密度が高くなり、塗膜が硬くなって折り割れしやすくなる。また、0.01g/mより少ないと親水性バインダーとの架橋が弱く、塗料のゲル化も弱くなって塗膜がひび割れやすくなる。
(インク定着剤について)
また、インク受容層には、印字部の耐水性を向上させる目的で、インク定着剤を配合してもよい。インク定着剤は、インク中の着色剤(染料及び/又は着色顔料)成分を定着する成分で、印刷の発色性や保存性を向上するために必要に応じて用いられる。
インク定着剤としては、公知の各種カチオン性化合物等が例示できる。その具体例としては、(1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、(2)第2級又は第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体や、それらのアクリルアミドの共重合体、(3)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類、(4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、(7)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、(8)ジアリルアミン塩−SO重縮合体、(9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、(11)アリルアミン塩の共重合体、(12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、(14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂、(15)ジメチルアミノプロピルアクリルアミド重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上用いることができる。
中でも、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩、ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体、及び5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが、発色性に優れ、にじみが少なく、発色ムラのない優れた印刷が得られるので好ましい。
本発明は、後で述べる表面層用塗液にインク定着剤を配合するため、予めインク受容層用塗液に配合するインク定着剤は、全インク受容層中のインク定着剤のうち、25質量%以下にとどめることが好ましい。なお、予め配合するインク定着剤と、表面層用塗液に配合するインク定着剤は異なるものを使用することができる。
なお、顔料として好適に用いられるシリカは一般にアニオン性を呈するため、インク受容層用塗液にカチオン性のインク定着剤を配合する際に、凝集体を生成する場合がある。これは特に微細シリカで顕著である。この場合、一般に市販されている非晶質シリカ(数μmの比較的大きな二次粒子径を有する)にインク定着剤の少なくとも一部を添加し分散させてから、粉砕微細化する、あるいは微細化したシリカ二次粒子分散体にインク定着剤を添加混合し、一旦凝集させた後、再度粉砕する等の手順を採ることが好ましい。これによって、粒径の大きい凝集体の生成を抑制し、顔料を所望の粒径に調整することができる。このようにして処理した顔料は、インク定着剤が一部結合した構造を呈することで安定化しているのか、更にインク定着剤を追添しても凝集し難いという特性を有する。
以下、かかる顔料を、カチオン性複合微細顔料と称す。カチオン性複合微細顔料に用いられる顔料としては、シリカの他、アルミノシリケート等があるが、シリカ、特に気相法シリカが好ましい。
前記顔料と前記インク定着剤の混合物、もしくは凝集物を分散あるいは粉砕するには、ホモミキサー、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、アルティマイザー、ナノマイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダー、クレアミックス等が用いられる。
カチオン性微細顔料の平均2次粒子径が1000nmを超える場合は、ホモミキサーなどの弱い機械力で処理すれば充分分散するが、平均2次粒子径を1000nm以下に粉砕するには、より強い機械力を加えることが効果的であり、圧力式分散方法を用いることが好ましい。
本発明において圧力式分散方法とは、原料粒子のスラリー状混合物をオリフィス中、高圧で連続的に通過させて高圧粉砕する方法であり、処理圧力は19.6×10〜343.2×10Pa(200〜3500kgf/cm)、より好ましくは49.0×10〜245.3×10Pa(500〜2500kgf/cm)、さらに好ましくは、98.1×10〜196.2×10Pa(1000〜2000kgf/cm)である。上記高圧粉砕により処理することで良好な分散あるいは粉砕が達成できる。さらに高圧でオリフィスを通過したスラリー状混合物を対向衝突させることによる分散、あるいは粉砕方式を用いることがより好ましい。対向衝突による方法は、分散液を加圧することによって入口側に導き、分散液を二つの通路に分岐してさらに流路をオリフィスにより狭めることによって流速を加速して対向衝突させて粒子を衝突させて粉砕する。分散液を加速したり衝突させたりする部分を構成する材料としては、材料の摩耗を抑えるなどの理由からダイヤモンドが好ましく用いられる。
高圧粉砕機としては、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、ナノマイザーが用いられ、特に高速流衝突型ホモジナイザーとしてマイクロフルイタイザー、ナノマイザ−が好ましい。
このようにして処理されたカチオン性微細顔料は、一般に、固形分濃度が5〜20質量%程度の水分散体(スラリーあるいはコロイド粒子)として得られる。
カチオン性微細顔料中における顔料とインク定着剤との質量比は特に制限はないが、顔料100質量部に対して、インク定着剤を1〜30質量部、特に3〜20質量部とすることが好ましい。また、インク受容層を構成する全顔料中に占めるカチオン性微細顔料の比率を50質量%以上とすることが、インク受容層の透明性が優れるので好ましい。
(その他インク受容層について)
インク受容層用塗液には、一般の塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、蛍光増白剤、着色剤等の各種添加剤を添加することができる。またインク受容層用塗液には、表面層用塗液の項で後述するような保存性改良材を添加することができ、また好ましい。
インク受容層用塗液は、一般に固形分濃度5〜50質量%程度に調整される。好ましい固形分濃度は5〜20質量%である。固形分濃度を5%以上とすることで、インク受容層の乾燥工率が向上する。また、20質量%以下とすることにより、表面層用塗液で処理する前の塗工層の水分を、後述する好ましい水分である12質量%以上とすることが容易になる。
塗工量は特に制限はないが、絶乾質量で、好ましくは2〜15g/m、より好ましくは2〜10g/m、更に好ましくは3〜8g/mである。塗工量を2g/m以上とすることで、優れた光沢性とインク吸収性が得られ、15g/m以下とすることで、インク受容層のひび割れが抑制され、インクジェット印刷時のドット真円性等が良好なものとなる。
支持体上、又は必要に応じて設けられる下塗り層上に、上記インク受容層用塗液を塗工する方法としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター、スプレー等の各種公知公用の塗工装置が使用できる。この中でもエアーナイフコーター、リップコーター、スライドコーター、カーテンコーター、スロットダイコーターが好適に用いられる。これらの塗工装置を用いると、支持体や下塗り層の微少な凹凸の影響を受けにくく均一な厚さで塗被層を形成できるためか、光沢感がより良好になる傾向にある。
処理液としては、水や有機溶媒等が用いられ、使用の簡便性の点で水が好ましく用いられる。処理液に、インク定着剤や保存性改良剤を添加すると、該成分が支持体や下塗り層に浸透し、耐水性の向上や耐熱湿にじみの向上効果が見られ、好ましい。その他、硼素化合物やジルコニウム化合物等の架橋剤、pH調製剤、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等の助剤を添加することもできる。また、キャスト加工時の乾燥を遅くして、印刷適性の良好なインク受容層を得るために、有機溶媒を配合又は併用することもできる。
(塗液塗被層の乾燥について)
増粘又はゲル化した塗液塗被層は、次いで乾燥され、インク受容層を形成する。乾燥方法としては、特に限定するものではなく、熱風乾燥機、赤外線ヒーター等、公知公用の乾燥機が、好適に使用できる。乾燥の条件(水分)は、特に限定するものではなく、後工程の表面層用塗液を付与後、更に乾燥されることから、塗液塗被層の乾燥については、半乾燥状態であっても構わない。
後で述べる表面層を加熱された鏡面ロールで仕上げる場合、支持体によって好ましい塗液塗被層の水分は異なる。
支持体が透気性支持体である場合、塗液塗被層の水分は12質量%以上であることが好ましく、12〜40質量%であることがより好ましく、14〜35質量%であることが更に好ましく、18〜32質量%であることが最も好ましい。塗液塗被層(インク受容層)中に水分を12質量%以上有する状態で、表面層用塗液を塗布することにより、表面層用塗液がインク受容層の内部に浸透することが妨げられるためか、光沢性が向上する。また、水分を40質量%以下とすることで、加熱された鏡面仕上げの金属面での水分蒸発量が多いために、塗工面にピンホール等の塗工欠陥が発生しやすくなり、光沢性が低下しやすい傾向を抑制できる。
一方、支持体として非透気性支持体(例えば、樹脂被覆紙など)を用いる場合、塗液塗被層の水分は12質量%以下にすることが好ましい。12質量%を超えるような場合、表面層用塗液を付与後、加熱された鏡面ロールに圧接の際に、塗液被覆層(インク受容層)中から蒸発した水分の逃げ場がなくなり、支持体と鏡面ロールの間に蒸気が溜まり、充分に圧接ができなくなり、光沢性が得られない傾向にある。
水分の測定は、例えば、赤外線水分計KJT−100((株)ケット科学研究所製)を使用し測定する。なお、同様の原理で測定できる装置を用いるのであれば、上記のものに限定されるものではない。
測定原理は、近赤外線域にある水の吸収波長(1.2μm、1.45μm、1.94μm)の光を塗工層に当てると、塗工層の含有水分に応じて光が吸収される。その減衰量から水分値が計算できる。ただしこの吸収波長のみの計測では、物質の表面状態や色等の影響を受け安定した測定が難しいため、水の影響を受けにくい近赤外線(参照波長)を別に設定し、吸収波長と参照波長を交互に当て、反射してくる両波長光のエネルギーの比から、水分値を算出する。
水分計は、コーターにおいて、表面層用塗液が塗布される直前の位置に設置される。但し塗工紙の、測定面と反対側(裏側)の位置にペーパーロールが存在するとその影響で測定値に誤差が生じることがあるので、紙が空中にある状態で測定するのがよい。
「表面層について」
表面層は、インク受容層上にコロイド状粒子とインク定着剤を含有する表面層用塗液を塗布して形成する。更に、必要に応じて、接着剤を配合してもよい。表面層は表面光沢性を高め、且つインク中の染料または顔料をすばやく定着させ、高発色(高印字濃度)であり、しかも均一な画像を得るための塗工層である。特に、表面層用塗液を塗布後の湿潤状態で、或いは表面層用塗液の塗布と同時に加熱された鏡面ロールに圧接することにより、光沢仕上げして表面層を形成することが好ましい。
(インク定着剤について)
インク定着剤としては、インクジェット記録用インク中の着色剤(染料又は着色顔料)成分を定着する目的でインクジェット記録体に配合される公知の化合物が使用でき、特に限定するものではないが、代表的なものとして、カチオン性高分子化合物が例示できる。例えば、カチオン性基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性高分子化合物が好適に用いられる。
この高分子化合物の構成としては、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体や、これらカチオン性基を有するモノマーと、これらカチオン性基を持たないモノマーの共重合体、又は上記塩基性基の対イオンを置換した塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、有機酸塩等が挙げられる。例えば、1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、2)第2級アミノ基、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、3)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類、4)ジシアンジアミド・ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、5)ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、6)エピクロルヒドリン・ジメチルアミン共重合体、7)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、8)ジアリルアミン塩−SO重縮合体、9)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、10)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、11)アリルアミン塩の共重合体、12)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、13)アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体、14)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等のカチオン性化合物が例示できる。これらは、単独で用いても、併用してもよい。
中でも、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合体の塩酸塩、ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体及び5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが、印字濃度が高くなり、にじみが少なく、均一な発色が得られ、鮮明で高精細な画像が得られるので好ましい。これらの高分子化合物の水溶性ポリマーや水溶性ラテックス粒子が、共に好ましく用いられる。
該カチオン性高分子化合物の分子量としては、2000〜400000が好ましい。前記分子量を2000以上とすることで、キャスト加工した際の光沢性が向上する傾向にある。また400000以下とすることで、表面層用塗液がしみ込みにくくなり、印字部の耐水性が低下する傾向を抑制できる。
一方で、インク定着剤として低分子のカチオン性化合物も使用可能である。低分子のカチオン性化合物としては、炭素数12以上のカチオン性界面活性剤や、水溶性多価金属塩が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム、ハロゲン化アルキルピリジニウム等の第四アンモニウム塩等が挙げられる。水溶性多価金属塩としては、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、ミョウバン等が使用可能である。また、多価金属を含む化合物であるポリ塩化アルミニウムも、この目的で使用可能である。
これらのカチオン性化合物が単独もしくは併用されて使用される。特に、カチオン性高分子化合物を主として少量の低分子のカチオン性化合物を併用することで、記録用紙のインクを受ける側の表面付近に多量のカチオン性化合物が存在し、表面側から厚み方向に向かって徐々に濃度が低くなるように層内に存在させることができやすくなり、好ましい。
インク定着剤は、下塗り層用塗液やインク受容層用塗液にも配合することができるが、印刷される面全体に(下塗り層、インク受容層及び表面層)に含有する全インク定着剤のうち、75質量%以上が表面層用塗液により付与することが、印字濃度が高くなるので好ましい。
(コロイド状粒子について)
表面層に含有するコロイド状粒子としては、例えば、前記インク受容層で例示した微細顔料のコロイド状粒子やコロイダルシリカ等が使用でき、具体的には、気相法シリカ、メソポーラスシリカ、活性ケイ酸を縮合させて製造された湿式法シリカのコロイド状物、コロイダルシリカ、アルミナ酸化物、およびアルミナ水和物から少なくとも1種が選ばれる。このなかで、コロイダルシリカ、気相法シリカ、アルミナ酸化物は、優れた光沢が得られるので好ましい。
コロイド状粒子の形態は、単分散体であっても凝集粒子分散体であってもよいが、表面層には高印字濃度、高光沢を得るために、単分散体、もしくは凝集粒子分散体のなかでも粒子径の小さいものが主に好ましく用いられる。単分散体(例えばコロイダルシリカ)の場合、平均1次粒子径3〜100nmが好ましく、10〜80nmがより好ましい。凝集粒子分散体の場合、平均1次粒子径3〜70nm、好ましくは5〜40nm、平均(2次)粒子径700nm以下、好ましくは400nm以下の微細顔料が好ましい。なお、単分散体顔料を用いる場合は、真球状の顔料が好ましい。
特に本発明では、表面層用塗液にインク定着剤が含有されるため、カチオン性の微細顔料が好ましい。特に、気相法アルミナ酸化物と、カチオン性コロイダルシリカが、好適に用いられる。顔料としてアニオン性のシリカ等を使用する場合は、前記インク受容層で例示した、シリカとインク定着剤を混合し凝集させることによって得られたシリカ−インク定着剤凝集体粒子を上記平均粒子径の範囲に粉砕したカチオン性複合微細顔料を用いることができ、また好ましく用いられる。
インク定着剤とコロイド状粒子の配合量は、コロイド状粒子100質量部に対し、インク定着剤が1〜500質量部程度、好ましくは5〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部の範囲内で調節される。配合量を1質量部以上とすることで、該インクジェット記録体に含有される全インク定着剤の75質量%以上を塗布することが容易となる。500質量部以下とすることで、塗布量が多くなりすぎてインク受容層中の空隙をふさぎ、インクの吸収性を悪化させる傾向を抑制できる。
(表面層の形成)
表面層用塗液は、コロイド状粒子としてコロイダルシリカを用いる場合は、接着剤を含有しなくても塗布することができるが、通常、コロイド状粒子と接着剤とを配合する。接着剤としては、インクジェット記録体で使用される公知の接着剤が使用できる。例えば、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル系重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョン、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂および水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で従来公知の各種接着剤が単独、あるいは併用して使用できる。本発明では、表面層用塗液にインク定着剤を配合するため、接着剤もカチオン変性のものが特に好ましい。
表面層を塗布後、加熱された鏡面ロールで光沢仕上げを行なう場合、使用する接着剤のガラス転移温度は、−20℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上であり、60℃以上であることがさらに好ましい。−20℃以上とすることで、インクジェットプリンターのインクの吸収性が悪化しやすい傾向を抑制できる。また、インクジェット記録体を高光沢仕上げするために、表面層が湿潤状態にある間に、加熱された鏡面仕上げの金属面に圧着、好ましくは圧着・乾燥する際に、鏡面仕上げの金属面からの離型性が低下しやすい傾向を抑制できる。このガラス転移温度に格別の上限はないが、一般に150℃以下であることが好ましい。150℃を超えると、表面層が脆くなるため、断裁時にダストが多くなったり、折り目から表面層が欠けたりする、強度不足によるトラブルが発生する場合がある。
ガラス転移温度の異なる、2種類以上の接着剤を組み合わせることも、求められる特性によっては、しばしば効果的である。この理由は定かではないが、ガラス転移温度の低い接着剤と高い接着剤が均一に混合されるのではなく、あたかも海/島構造を構成し、それぞれの接着剤の特徴を一層効果的に発揮するためと推測される。2種類以上の接着剤を組み合わせる場合、好ましくは少なくとも一方はガラス転移点−20℃以上の樹脂とする。
表面層用塗液中の接着剤と顔料との組成比(固形分質量比)は、顔料100質量部に対して、好ましくは、100質量部以下であり、より好ましくは、2〜50質量部の範囲であり、さらに好ましくは、5〜40質量部の範囲である。接着剤の比率が100質量部以下とすることで、インク吸収性が低下する傾向を抑止できる。
また、表面層用塗液には、記録像の保存性を改良するために、保存性改良剤を配合することができる。保存性改良剤としては、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物や、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物等の水溶性多価金属塩や、ビス[2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル]スルホン、2−(フェニルチオ)エタノール等の含イオウ化合物、ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤、ビタミンC、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、ルチン等の酸化防止剤などが配合できる。中でも、ビス[2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル]スルホンは、インクジェットプリンターで印字した際の画像の耐光性が向上するため、好ましい。これら保存性改良剤は、下塗り層用塗液やインク受容層用塗液等にも配合することができるが、表面層用塗液に含有することが最も効果が高く、好ましい。
さらに表面層用塗工液中には、白色度、粘度、流動性等を調節するために、一般の印刷用塗工紙やインクジェット記録体に使用されている顔料、消泡剤、着色剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防腐剤及び分散剤、増粘剤等の各種助剤が適宜添加される。
表面層用塗液の塗工には、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、リップコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、スライドコーター、スプレー等の各種公知公用の塗工装置が使用できる。この中でもエアーナイフコーター、リップコーター、スライドコーター、カーテンコーター、スロットダイコーターが好適に用いられる。これらの塗工装置を用いると、支持体や下塗り層およびインク受容層の微少な凹凸の影響を受けにくく均一な厚さで塗工層を形成できるためか、光沢感がより良好になる傾向にある。
また、一つの装置で、インク受容層を塗工、乾燥後、引き続き、表面層を塗工することが好ましい。この方法を採用すると、一旦インク受容層を塗工したシートを巻き取る必要がないので、巻き取りの際に、芯に近い部分と、表面に近い部分の間の圧力差によるインク受容層状態変化を防ぐことができるので、製造の流れ方向で均質なインク受容層及び表面層が形成できる。
表面層の塗布量は、0.1〜10g/mの範囲が好ましく、0.2〜5g/mがより好ましく、0.5〜3g/mがさらに好ましい。塗布量を0.1g/m以上とすることで、塗膜が薄くなり光による干渉色が生じ易い傾向を抑制できる。また、塗布量を10g/m以下とすることで、インク吸収速度が低下し易い傾向を抑制できる。
(鏡面ロール仕上げについて)
また本発明では、インクジェット記録体を高光沢仕上げするために、表面層が湿潤状態にある間に、加熱された鏡面仕上げの金属面(例えば鏡面ロール)に圧着・乾燥する、所謂キャスト法で光沢性が付与されることが、最も良好な光沢性を得ることができ、特に好ましい。これには、ウェットキャスト法、リウェットキャスト法、ゲル化キャスト法、プレキャスト法等公知のキャスト法が採用できる。特に、鏡面ロールとプレスロールのニップ部で、インク受容層面と鏡面ロールの間に表面層用塗液の塗料溜まりを形成して表面層を塗工後、湿潤状態にあるうちに加熱した鏡面仕上げの金属面に圧着する塗工方法が、光沢向上に極めて大きな効果を示すため、特に好ましい。
また、鏡面仕上げの金属面(鏡面ロール)で乾燥するのでなく、鏡面仕上げの金属面(鏡面ロール)に圧着(ニップ)した後、剥離し、後工程で乾燥を行っても構わない。後工程の乾燥方法としては、特に限定するものではなく、従来から公知の熱風乾燥、ガスヒーター乾燥、高周波乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥、レーザー乾燥、電子線乾燥等の各種加熱乾燥方式が適宜使用される。このなかで、熱風乾燥がコストの面で有利であるため好ましく採用される。
この方法は、支持体として非透気性支持体(例えば樹脂被覆紙)を用いた場合に好適である。通常のキャスト法においては、湿潤した塗料を鏡面ロールに接触させて、接触させた状態で乾燥するため、塗料中の水分が蒸気となって裏面に抜けることになる。しかしながら、非透気性支持体の場合、発生した蒸気は逃げ場がなく、支持体と鏡面ロールの間に存在することになる。このとき、鏡面ロールに接触中に逃げ場のなくなった蒸気が支持体を持ち上げ、塗工層(インク受容層、表面層、下塗り層)の最も弱い部分を破壊してしまうことがある。或いは、鏡面仕上げの加熱された鏡面ロールに対する塗料の接着が弱い場合は、塗工層と鏡面ロールの界面で剥離し、鏡面ロールの鏡面を十分に写し取ることができず、いわゆる密着不良という現象を引き起こすことになる。或いは、鏡面ロールと塗料との接着力より未乾燥の塗工層の方が弱い場合は、塗工層内部で破断するため、塗工層の一部が鏡面ロールの表面に残り、鏡面ロール汚れを引き起こすことになる。
どちらの場合も、美しいキャスト面を形成することが不可能であり、品質上、操業上のトラブルとなる。本発明では、樹脂被覆紙やプラスチックフィルムのような、非透気性支持体を使用する場合、鏡面ロールに圧接した後、剥離し、後工程で乾燥を行なうことが好ましい。
なお、透気性支持体を用いる場合においても、鏡面ロールに圧着後、表面層の乾燥が不十分である場合は、後工程で乾燥するとよいし、鏡面ロールに圧着、乾燥の際に、裏面から、赤外線などにより、乾燥を補助することも可能である。また、得られたインクジェット記録体のカールを矯正するために、乾燥後に調湿エリアを設けてもよい。
鏡面ロールなどの金属面の表面温度は、80〜120℃であることが好ましい。金属面の表面温度が80℃未満の場合、乾燥効果が悪く、生産性が低下するおそれがあり、120℃を越えると、表面層用塗液が金属面上で突沸し、光沢性や印字適性が低下するおそれがある。
また、記録体を高光沢仕上げするために、表面層が湿潤状態にある間に、加熱された鏡面仕上げの金属面(鏡面ロール)に圧着、好ましくは圧着・乾燥する場合には、表面層用塗工液中には、鏡面仕上げの金属面等からの離型性を付与する目的で、離型剤を表面層用塗液に添加するのが好ましい。鏡面ロールに予め離型剤を塗布しておくことも可能である。
離型剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス類、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモミウム等の高級脂肪酸アルカリ塩類、レシチン、シリコーンオイル、シリコーンワックス等のシリコーン化合物、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物が挙げられる。これらの中で、カチオン性の離型剤の使用が特に好ましい。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
・支持体の作製
(支持体A(透気性支持体)の作製)
木材パルプ(LBKP:ろ水度440mlCSF)100部、填料(炭酸カルシウム3:タルク1の比率)15部、市販サイズ剤(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー(株)製)0.05部、硫酸バンド0.45部、澱粉0.45部、紙力増強剤としてポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂0.4部、歩留向上剤少々よりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量188g/mの紙基材を得た後、150kg/cmの線圧でスーパーカレンダー処理を施し、紙基材を得た。
得られた紙基材の厚さは210μm、透気度は30秒、インク定着剤は含有していない。
(支持体B(非透気性支持体)の作製)
上記支持体Aの両面に、コロナ放電処理した後、バンバリーミキサーで混合分散した下記のポリオレフィン樹脂組成物1を、支持体Aのフェルト面側に、塗工量25g/mとなるようにして、またポリオレフィン樹脂組成物2を、支持体Aのワイヤー側に、塗工量20g/mとなるように、T型ダイを有する溶融押出し機(溶融温度320℃)で塗布し、フェルト面側を鏡面のクーリングロール、ワイヤー面側を粗面のクーリングロールで冷却固化して、樹脂被覆した支持体を得た。
「ポリオレフィン樹脂組成物1」
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(商品名:A−220、石原産業社製)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(商品名:Irganox 1010、チバガイギー社製)0.03部、群青(商品名:青口群青NO.2000、第一化成社製)0.09部、蛍光増白剤(商品名:UVITEX OB、チバガイギー社製)0.3部を溶融混合し、ポリオレフィン樹脂組成物1とした。
「ポリオレフィン樹脂組成物2」
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm、メルトインデックス20g/10分)65部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm、メルトインデックス2g/10分)35部を溶融混合し、ポリオレフィン樹脂組成物2とした。
・各層用塗液の調製
(下塗り層用塗液の調製)
下記組成、及び特性の下塗り層用塗液A〜Cを調製した。
「下塗り層用塗液A(インク定着剤含有しない)の調製」
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−45、トクヤマ社製、平均二次粒子径4.5μm)100部、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、クラレ社製)25部、蛍光染料(商品名:WhitexBPS(H)、住友化学社製)2部。固形分濃度15%。
「下塗り層用塗工液B(インク定着剤含有)の調製」
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−45、トクヤマ社製、平均二次粒子径4.5μm)100部、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、クラレ社製)25部、蛍光染料(商品名:WhitexBPS(H)、住友化学社製)2部、インク定着剤として5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(商品名:ハイマックスSC−700M、ハイモ社製)3部。固形分濃度15%。インク定着剤の含有率は全固形分の2.3質量%であった。
「下塗り層用塗工液C(インク定着剤含有)の調製」
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−45、トクヤマ社製、平均二次粒子径4.5μm)100部、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、クラレ社製)25部、蛍光染料(商品名:WhitexBPS(H)、住友化学社製)2部、インク定着剤としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)5部。固形分濃度15%。インク定着剤の含有率は全固形分の3.8質量%であった。
「下塗り層用塗工液D(インク定着剤含有)の調製」
合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−45、トクヤマ社製、平均二次粒子径4.5μm)100部、シリル変性ポリビニルアルコール(商品名:R1130、クラレ社製)25部、蛍光染料(商品名:WhitexBPS(H)、住友化学社製)2部、インク定着剤としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体からなるカチオン性化合物(商品名:ユニセンスCP−102、センカ社製)5部。固形分濃度15%。インク定着剤の含有率は全固形分の3.8質量%であった。
(微細顔料の調製)
下記組成、及び特性の微細顔料A〜Fを調製した。
「微細顔料Aの調製」
平均粒子径1.0μmの気相法シリカ(商品名:アエロジルA300、日本アエロジル(株)製、平均1次粒子:約0.008μm)をホモミキサーにより分散した後、平均粒子径が0.15μmになるまで高速流衝突型ホモジナイザーで粉砕分散し、10%の微細シリカ水分散液を調製した。
「微細顔料Bの調製」
平均粒子径1.0μmの気相法シリカ(商品名:アエロジルA300、日本アエロジル(株)製、平均1次粒子:約0.008μm)をホモミキサーにより分散した後、平均粒子径が0.08μmになるまで高速流衝突型ホモジナイザーで粉砕分散し、10%の水分散液を調製した。
該分散液100部に、インク定着剤である5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(商品名:ハイマックスSC−700M、ハイモ(株)製)10部を添加し、顔料の凝集と分散液の増粘を起こさせた後、再度高速流衝突型ホモジナイザーで更に分散し、平均粒子径が0.15μmの10%のカチオン性複合微細顔料水分散液を調製した。インク定着剤の含有率は全固形分の9.1質量%であった。
「微細顔料Cの調製」
平均粒子径約3.0μmの高純度アルミナ(住友化学工業社製、商品名:AKP−G015、γ結晶酸化アルミナ、平均1次粒子径:約0.1μm)を用い、ホモミキサーにより分散した後、高速流衝突型ホモジナイザーで更に分散し、平均粒子径が0.8μmになるまで液流衝突型ホモジナイザーで粉砕分散操作を繰り返し、10%のアルミナ水分散液を調製した。
「微細顔料Dの調製」
平均粒子径約3.0μmの高純度アルミナ(住友化学工業社製、商品名:AKP−G015、γ結晶酸化アルミナ、平均1次粒子径:約0.1μm)を用い、ホモミキサーにより分散した後、高速流衝突型ホモジナイザーで更に分散し、平均粒子径が0.4μmになるまで液流衝突型ホモジナイザーで粉砕分散操作を繰り返し、10%のアルミナ水分散液を調製した。
「微細顔料Eの調製」
平均粒子径約5μmのアルミナ水和物(触媒化成社製、商品名:AS−3)を用い、ホモミキサーにより分散した後、高速流衝突型ホモジナイザーで更に分散し、平均粒子径が0.5μmになるまで液流衝突型ホモジナイザーで粉砕分散操作を繰り返し、10%の微細アルミナ水分散液を調製した。
「微細顔料Fの調製」
市販の気相法シリカ(トクヤマ社製、商品名:レオロシールQS−30、一次粒子径0.009μm、比表面積300m/g)を用いて、破砕分散を繰り返し、分級後、平均二次粒子0.008μmの10%シリカ分散液を調製した。
該分散液100部に、インク定着剤であるジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(商品名:PAS−J−81、日東紡績社製)10部を添加し、上記微細顔料Bの調製と同じようにしてシリカ分散液を調製し、平均粒子径が0.15μmの10%のカチオン性複合微細顔料水分散液を調製した。インク定着剤の含有率は全固形分の9.1質量%であった。
(インク受容層用塗液の調製)
下記組成、及び特性のインク受容層用塗液A〜Eを調製した。
「インク受容層用塗液Aの調製」
前記微細顔料A(微細シリカ)100部、バインダーとしてポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−235、重合度3500、けん化度88.5%)18部、分散剤(東亜合成社製、商品名:アロンSD−10)0.05部の混合水分散液(濃度:15%)を調製した。
「インク受容層用塗液Bの調製」
前記微細顔料B(カチオン性複合微細顔料)100部、バインダーとしてポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−235、重合度3500、けん化度88.5%)18部、分散剤(東亜合成社製、商品名:アロンSD−10)0.05部の混合水分散液(濃度:15%)を調製した。インク定着剤の含有率は全固形分の7.7質量%であった。
「インク受容層用塗液Cの調製」
前記微細顔料C(微細アルミナ)100部、バインダーとしてポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−235、重合度3500、けん化度88.5%)18部、分散剤(東亜合成社製、商品名:アロンSD−10)0.05部の混合水分散液(濃度:15%)を調製した。
「インク受容層用塗液Dの調製」
前記微細顔料D(微細アルミナ)100部、バインダーとしてポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−235、重合度3500、けん化度88.5%)18部、分散剤(東亜合成社製、商品名:アロンSD−10)0.05部の混合水分散液(濃度:15%)を調製した。
「インク受容層用塗液Eの調製」
前記微細顔料E(アルミナ水和物)100部、バインダーとしてポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−235、重合度3500、けん化度88.5%)18部、分散剤(東亜合成社製、商品名:アロンSD−10)0.05部の混合水分散液(濃度:15%)を調製した。
(表面層用塗液の調製)
下記組成、及び特性の表面層用塗液A〜Dを調製した。
「表面層用塗液A(インク定着剤含有しない)の調製」
平均粒子径0.05μmのアニオン性コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスOL、日産化学工業(株)製)100部(コロイド状粒子)、離型剤(ポリエチレンワックス、ノニオン性)1部。固形分濃度15%。インク定着剤(カチオン性化合物)は含まれていない。
「表面層用塗液B(インク定着剤含有)の調製」
平均粒子径0.03μmのカチオン性コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスAK−L、日産化学工業(株)製)100部(コロイド状粒子)、インク定着剤として5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(商品名:ハイマックスSC−700M、ハイモ(株)製)40部(インク定着剤)、離型剤(ポリエチレンワックス、ノニオン性)1部。固形分濃度15%。インク定着剤の含有率は全固形分の28.4質量%であった。
「表面層用塗液C(インク定着剤含有)の調製」
前記微細顔料F100部(コロイド状粒子)、インク定着剤としてアクリルアミド−ジアリルアミン共重合体からなるカチオン性化合物(商品名:スミレーズレジン1001、住友化学社製)40部、離型剤(ポリエチレンワックス、ノニオン性)1部。固形分濃度15%。インク定着剤の含有率は全固形分の28.4質量%であった。
「表面層用塗液D(インク定着剤含有)の調製」
平均粒子径約3.0μmの高純度アルミナ(住友化学工業社製、商品名:AKP−G015、γ結晶酸化アルミナ、平均1次粒子径:約0.1μm)100質量部、インク定着剤として5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(商品名:ハイマックスSC−700M、ハイモ(株)製)40部、離型剤(ポリエチレンワックス、ノニオン性)1部。固形分濃度15%。インク定着剤の含有率は全固形分の28.4質量%であった。
実施例1
前記支持体A上に、前記下塗り層用塗液A(インク定着剤含有しない)を、乾燥質量で6g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥し、下塗り層を形成した。
下塗り層上に、3質量%の硼砂水溶液を、乾燥塗工量が1.5g/mになるように、塗布し、乾燥せずに、次いで、前記インク受容層用塗液A(インク定着剤含有しない)を、絶乾質量で4g/mになるようにダイコーターで塗工し、乾燥した。
続いてインク受容層上に前記表面層用塗液B(インク定着剤含有)を塗布し、直ちに表面温度100℃の鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げ、インクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は2g/mであった。インク定着剤は、表面層用塗液にのみ含有されていた。
実施例2
前記下塗り層用塗液B(インク定着剤含有)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は2g/mであった。インク定着剤は、下塗り層用塗液と表面層用塗液に含有され、含有率はそれぞれ、20%、80%であった。
実施例3
前記下塗り層用塗液C(インク定着剤含有)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は2.0g/mであった。インク定着剤は、下塗り層用塗液と表面層用塗液に含有され、含有率はそれぞれ、30%、70%であった。
実施例4
前記下塗り層用塗液D(インク定着剤含有)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は2.0g/mであった。インク定着剤は、下塗り層用塗液と表面層用塗液に含有され、含有率はそれぞれ、30%、70%であった。
実施例5
前記表面層用塗液C(インク定着剤含有)を、用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は2g/mであった。インク定着剤は、表面層用塗液にのみ含有されていた。
実施例6
前記支持体Bを用い、前記下塗り層用塗液A(インク定着剤含有しない)を、乾燥質量で6g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥し、下塗り層を形成した。
下塗り層上に、3質量%の硼砂水溶液を、乾燥塗工量が1.5g/mになるように、塗布し、乾燥せずに、次いで、前記インク受容層用塗液A(インク定着剤含有しない)を、絶乾質量で4g/mになるようにダイコーターで塗工し、乾燥した。
続いてインク受容層上に前記表面層用塗液C(インク定着剤含有)を塗布し、直ちに表面温度100℃の鏡面ドラムに圧接し、ドラムから剥離後、乾燥して仕上げ、インクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は2g/mであった。カチオン性化合物は、表面層用塗液にのみ含有されていた。
比較例1
前記インク受容層用塗液B(インク定着剤含有)と、前記表面層用塗液A(インク定着剤含有しない)とを用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は0.1g/mであった。インク定着剤は、インク受容層用塗液にのみ含有されていた。
比較例2
前記表面層用塗液A(インク定着剤含有しない)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は0.1g/mであった。インク定着剤は含有されなかった。
比較例3
前記表面層用塗液D(インク定着剤含有)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は0.1g/mであった。インク定着剤は表面層用塗液のみに含有するが、使用した顔料は約3.0μmのアルミナでありコロイド状粒子ではない。
比較例4
前記紙基材A上に、前記下塗り層用塗液A(インク定着剤含有しない)を、乾燥質量で6g/mになるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥し、下塗り層を形成した。
下塗り層上に、前記インク受容層用塗液A(インク定着剤含有しない)を絶乾質量で4g/mになるようにダイコーターで塗工した。このときの塗工層の水分は22%であった。続いて塗工層に前記表面層用塗液B(インク定着剤含有)を塗布し、直ちに表面温度100℃の鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げ、インクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は0.6g/mであった。インク定着剤は、表面層用塗液にのみ含有されていた。
実施例7
前記インク受容層用塗液C(インク定着剤含有しない)を用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は0.1g/mであった。インク定着剤は、インク受容層用塗液にのみ含有されていた。
実施例8
前記インク受容層用塗液Dを用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は0.5g/mであった。インク定着剤は、表面層用塗液にのみ含有されていた。
実施例9
前記インク受容層用塗液Eを用いた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録体を得た。塗布された表面層用塗液の絶乾質量は3.0g/mであった。インク定着剤は、表面層用塗液にのみ含有されていた。
(評価方法、及び評価基準)
上記実施例、比較例で得られたインクジェット記録体について、光沢性及びインクジェット記録における印字適性を下記の基準で評価した。その結果を表1に示す。また、表1には、各インクジェット記録体の、下塗り層用塗液、インク受容層用塗液、表面層用塗液のそれぞれのカチオン性化合物の含有率と、架橋剤の有無と、表面層用塗液塗布前のインク受容層の水分の値とを併記する。
「水分の測定」
インク受容層の水分の測定は、赤外線水分計KJT−100((株)ケット科学研究所製)を用いて行った。
「光沢性」
インクジェット記録体の表面に対し横方向より、光沢感、平滑感を目視により評価した。
◎:極めて高い光沢感がある。
○:高い光沢感がある。
△:光沢感がある。
×:光沢感がやや劣る。
××:光沢が無くマット調。
「インクジェット記録特性」
・評価用プリンター
プリンターA:市販の染料インクタイプのインクジェットプリンター(商品名:PM−G800、セイコーエプソン(株)製)
プリンターB:市販の顔料インクタイプのインクジェットプリンター(商品名:PX−G900、セイコーエプソン(株)製)
・印字濃度
プリンターA(染料インクタイプ)を用いて黒のベタ印字を行ない、その印字濃度をマクベス反射濃度計(Macbeth RD−914)で測定した。
・印字にじみ
プリンターA(染料インクタイプ)を用いて、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの各色ベタを、互いに境界を接するようにマス目状に配置した印字を行ない、各色間の境界部でのインクのにじみを目視にて評価した。
◎:印字のにじみは全く認められず、優れたレベル。
○:印字のにじみがわずかに認められるが実用上問題の無いレベル。
△:印字のにじみがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字のにじみが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
・インクドット真円性
プリンターA(染料インクタイプ)を用いて、各インク滴が重ならないような、インク密度の低いハーフトーンの印字を行ない、ハーフトーン印字部分を光学顕微鏡にて200倍に拡大して観察し、それぞれのインクドットの形状が真円を示しているかどうかを目視にて評価した。
◎:インクドットの形状が真円であり、非常に良好なレベル。
○:インクドットの形状が円形であり、良好なレベル。
△:インクドットの形状はほぼ円形であるものの一部に形状の乱れが見られ、やや不良なレベル。
×:インクドットの形状が不安定であり、不良なレベル。
・顔料インクの記録適性
プリンターB(顔料インクタイプ)を用いて、写真画像(JIS X 9204準拠「高精細カラーディジタル標準画像(XYZ/SCID)データ」、画像の識別記号:N1、画像の名称:グラスと女性)の印字を行ない、印字部の均一性を目視にて評価した。
◎:印字部は均一で印字ムラは認められず、優れたレベル。
○:印字ムラがわずかに認められるが実用上問題の無いレベル。
△:印字ムラがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字ムラがあり、実用上重大な問題となるレベル。
Figure 2006142748
本発明のインクジェット記録体は、写真画質を狙った染料系や顔料系インクジェットプリンターに適した記録適性を持ち、かつ、印字濃度が高いため印字画像の色彩が鮮やかな、極めて実用性の高いものである。

Claims (4)

  1. 支持体上、又は支持体上に形成された少なくとも1層の下塗り層上に、顔料としてシリカ、アルミナ、及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を含有し、更にバインダーと、該バインダーの架橋剤を含有するインク受容層を形成し、
    インク受容層上にコロイド状粒子とインク定着剤を含有する表面層用塗液を塗布して表面層を形成することを特徴とするインクジェット記録体の製造方法。
  2. インクジェット記録体のインク受容層面に含有する全インク定着剤のうち、75質量%以上が、表面層用塗液により付与されている請求項1記載のインクジェット記録体の製造方法。
  3. 表面層用塗液に含有されるコロイド状粒子が、カチオン性コロイダルシリカである請求項1又は2に記載のインクジェット記録体の製造方法。
  4. 表面層が、表面層用塗液が湿潤状態にある間に、加熱された鏡面仕上げの金属面に圧着処理して形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録体の製造方法。

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