JP2004276468A - インクジェット記録材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】光透過性に優れ、外部光の反射光によるぎらつきを防止した医療用インクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】光透過性支持体上に少なくとも1層のインク受容層を設けた医療用インクジェット記録材料において、該インク受容層が気相法シリカ微粒子を主体としてなる空隙性のインク受容層であり、かつ該インク受容層を設けた面に、コロイダルシリカを主体としてなる表面被覆層を有することを特徴とする医療用インクジェット記録材料。
【選択図】 なし。
【解決手段】光透過性支持体上に少なくとも1層のインク受容層を設けた医療用インクジェット記録材料において、該インク受容層が気相法シリカ微粒子を主体としてなる空隙性のインク受容層であり、かつ該インク受容層を設けた面に、コロイダルシリカを主体としてなる表面被覆層を有することを特徴とする医療用インクジェット記録材料。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用インクジェット記録材料に関し、光透過性に優れ、印字面の反対面からの透過光により画像を見るバックライト方式での使用において、透過光以外の外部光の反射光(戻り光)による画像のぎらつきを防止した医療用インクジェット記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に親水性ポリマーのインク受容層や非晶質シリカ等の顔料と水溶性バインダーからなる多孔質のインク受容層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭56−080489号、同59−174381号、同60−220750号、同61−32788号、同63−160875号、特開平3−69388号公報等に開示のごとく、澱粉、ポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを支持体に塗布した記録材料が提案されている。
【0004】
また、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号、特開平3−21508、同4−67986号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料やアルミナゾルを水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
【0005】
更に、特公平3−56552号、特開平2−188287号、同平8−132728号、同平10−81064号、同平10−119423号、同平10−175365号、同10−203006号、同10−217601号、同平11−20300号、同平11−20306号、同平11−34481号公報には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いた記録材料が開示されている。
【0006】
一方、胸部X線や超音波診断などの医療画像をインクジェット記録方式で作製することも検討されている。この医療用インクジェット記録材料は、光透過性が高いことに加えて、反射光によって記録画像がぎらつかないことが要求される。この画像のぎらつきは、透過光以外の外部光の反射光(戻り光)によって記録画像がぎらつく現象であり、画像を見づらくして診断に支障を来す場合がある。上記した画像のぎらつき防止には、表面を粗面化(マット化)するのが有効である。しかし、この粗面化は、透明性を悪化させるうえに、粗面化のために大きな粒子を表面層に添加すると、画像部に白抜けという現象を発生させる場合がある。
【0007】
医療用途に用いられるインクジェット記録材料としては、例えば、濁度が10%以上90%未満である記録媒体(特許文献1参照)をはじめとして、特開2000−335104号、同2001−150803号公報に記載されている記録材料が挙げられる。しかしながら、これらの記録材料では、上記した医療用途に要求される、光透過性、画像のぎらつき防止を満足させるものではなかった。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−341419号公報(第1−5頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、光透過性に優れ、印字面の反対面からの透過光により画像を見るバックライト方式での使用において、透過光以外の外部光の反射光(戻り光)による画像のぎらつきを防止した医療用インクジェット記録材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、鋭意検討の結果、下記の手段によって達成されることが判明した。
【0011】
(1)光透過性支持体上に少なくとも1層のインク受容層を設けた医療用インクジェット記録材料において、該インク受容層が気相法シリカ微粒子を主体としてなる空隙性のインク受容層であり、かつ該インク受容層を設けた面に、コロイダルシリカを主体としてなる表面被覆層を有することを特徴とする医療用インクジェット記録材料。
【0012】
(2)前記気相法シリカ微粒子の凝集粒子の平均粒子径が300nm以下である前記1に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0013】
(3)前記コロイダルシリカの平均一次粒子径が、40nm以上である前記1または2に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0014】
(4)前記コロイダルシリカがカチオン化されたものである請求項1、2または3に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0015】
(5)前記表面被覆層が、ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤とベタイン型界面活性剤とを含有する前記1〜4の何れかに1項に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0016】
(6)JIS−K−7105で規定されるヘイズ値が25%以下である前記1〜5の何れか1項に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0017】
(7)JIS−H−8686で規定される写像性C値が83%以下である前記1〜6の何れか1項に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、光透過性支持体に塗設されるインク受容層は、気相法シリカ微粒子を主体としてなる空隙性のインク受容層であり、ここでいう主体とはインク受容層の全固形分の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上を含有することをいう。
【0019】
ここで合成シリカについて説明する。合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがあり、通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、▲1▼ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または▲2▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、▲3▼シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数μmから10μm位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には▲4▼シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。湿式法シリカは一般的には表面のシラノール基は5個/nm2以上である。
【0020】
これに対し、本発明においてインク受容層に主体として用いられる気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。気相法シリカの表面のシラノール基は5個/nm2未満が一般的である。
【0021】
気相法シリカの平均一次粒子径は5〜50nm、好ましくは5〜20nmであることが好ましく、かつ高い吸収性を得るためにBET法による比表面積が90〜400m2/gのものを用いるのが好ましい。BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0022】
気相法シリカの特徴は、一次粒子が網目構造または鎖状につながりあって二次的に凝集した状態(本発明でいう「凝集粒子」を指す)で存在して適度な空隙を形成することにあり、本発明では好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下の平均粒子径になるまで超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕、分散させた凝集粒子が光透過性とインク吸収性を両立できるため好ましい。
【0023】
本発明において、気相法シリカはカチオン化した状態で用いられる。カチオン化された気相法シリカは、カチオン性ポリマーもしくは多価金属の存在下で水を主体とする分散媒中で気相法シリカを分散して得られる。このとき、ポリビニルアルコールのような親水性バインダーやホウ酸等の架橋剤(硬膜剤)は含まない状態で分散するのが好ましい。
【0024】
カチオン化された気相法シリカとしては、特開平11−321079号、特開2000−239536号、特開2001−19421号、特開2001−80204号、特開2001−207078号公報等にカチオン性ポリマーの存在下で気相法シリカを分散する方法が記載されており、いずれも本発明に採用することができる。
【0025】
本発明の気相法シリカの一次粒子の平均粒子径は、分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒径として求めることができる。また、凝集粒子の平均粒子径は緩いせん断力で分散した粒子を電子顕微鏡で観察して求めることができる。
【0026】
本発明において、インク受容層を設ける場合には、皮膜としての特性を維持するためにバインダーを用いることができる。このバインダーとしては、透明性が高くインクの高い浸透性が得られる親水性バインダーが適しているが、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、室温付近で比較的膨潤性の低いものがバインダーとして好ましく用いられる。例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン等やこれらの変性物であり、中でも完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0027】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度1000〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0028】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。また、他の親水性ポリマーやラテックスも併用することができるが、ポリビニルアルコールに対して20質量%程度以下であることが好ましい。
【0029】
本発明において、インク受容層の気相法シリカに対する親水性バインダーの質量比は5〜35質量%であり、好ましくは8〜30質量%の範囲である。これにより、光透過性の低下、乾燥時のひび割れや表面強度の低下を発生することなく、優れたインク吸収性を得ることができる。
【0030】
本発明において、インク受容層は、耐水性改良目的等でカチオン性化合物を含有することができる。カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー、水溶性金属化合物が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられるカチオン性化合物としては、例えばカチオン性ポリマーや水溶性金属化合物が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000〜10万程度が好ましい。
【0032】
これらのカチオン性ポリマーの使用量は気相法シリカ微粒子に対して1〜10質量%、好ましくは2〜7質量%である。
【0033】
本発明に用いられる水溶性金属化合物として、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。中でも透明性、耐水性改良効果の高いジルコニウム系化合物が好ましい。
【0034】
また、カチオン性化合物として、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が挙げられる。塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2又は3で示され、例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+、[Al21(OH)60]3+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0035】
[Al2(OH)nCl6−n]m ・・一般式1
[Al(OH)3]nAlCl3 ・・一般式2
Aln(OH)mCl(3n−m) 0<m<3n ・・一般式3
【0036】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できるが、pHが不適当に低い物もあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。
【0037】
本発明において、上記水溶性の金属化合物のインク受容層中の含有量は、0.1g/m2〜10g/m2、好ましくは0.2g/m2〜5g/m2である。
【0038】
上記したカチオン性化合物は2種以上を併用することができる。例えば、カチオン性ポリマーと水溶性金属化合物を併用してもよい。
【0039】
本発明のインク受容層には、光透過性やインク吸収性の低下、記録画像の白抜けを発生させるおそれがあるので主体としてなる気相法シリカ以外には顔料はなるべく含有させない方が好ましい。使用する場合でも、好ましくはインク受容層の全固形分の0.5質量%以下で調整する。使用できる顔料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和水物、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料やポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、尿素樹脂等の有機顔料が挙げられる。光透過性の低下や画像の白抜けを発生させないためには好ましくは平均粒径が10μm以下、更に好ましくは5μm以下のものを用いるのが良い。
【0040】
本発明のインク受容層には、皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することもできる。そのような油滴として、室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は親水性バインダーに対して0.1〜10質量%の範囲で用いることができる。
【0041】
本発明のインク受容層には、耐水性、ドット再現性を向上させる目的で硬膜剤を適宜添加することができる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する水溶性ポリマー100gに対して0.01〜10gが好ましく、より好ましくは0.1〜5gである。
【0042】
本発明のインク受容層には、塗布液の塗布適性、表面性向上等の目的で界面活性剤が使用できる。カチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン、レシチン等、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等から適時1種類以上が選択される。カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤も使用出来るが、インク受容層組成物との凝集性から量は制限される。
【0043】
その他、インク受容層には、更に、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、有機溶剤、レベリング剤、防腐剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0044】
本発明において、インク受容層の塗布液のpHは3.3〜6.0の範囲が好ましく、更にpH3.5〜5.5の範囲がより好ましい。
【0045】
本発明において、インク受容層の固形分塗布量は、8〜32g/m2であり、好ましくは10〜28g/m2であることにより、塗布層の強度を維持しつつ、優れたインク吸収性を得ることができる。
【0046】
本発明の医療用インクジェット記録材料は、コロイダルシリカを主体とする表面被覆層を有する。ここでいう主体とはインク受容層の全固形分の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上を含有することをいう。コロイダルシリカを主体とする表面被覆層を有することによって、インク受容面に形成された画像のぎらつきを適度に防止することができる。
【0047】
本発明に用いられるコロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる二酸化珪素をコロイド状に水中に分散させたものであり、平均一次粒子径が数nm〜100nm程度の湿式法合成シリカである。
【0048】
コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)社からスノーテックスST−20、ST−30、ST−40、ST−C、ST−N、ST−20L、ST−O、ST−OL、ST−S、ST−XS、ST−XL、ST−YL、ST−ZL、ST−OZL、ST−AK、ST−AKL、ST−AKYL等が市販されている。
【0049】
本発明において、平均一次粒子径が20〜100nmの範囲のコロイダルシリカが使用されるが、高いインク吸収性を維持しつつ、ぎらつき防止効果と高い光透過性を両立できる点から40nm以上のものが好ましい。平均一次粒子径の異なる2種類以上のコロイダルシリカを併用することもできる。
【0050】
また、一般的なコロイダルシリカが球状または球状に近い粒子が連結せずに独立して存在しているのに対して、小さいシリカ粒子が細長く連結した鎖状粒子、またそれらが三次元網目構造を有しているもの、球状の一次粒子が複数個連結し、真珠のネックレスに似た形状を示すパールネックレス状の粒子等の形状で存在する非球状コロイダルシリカを使用することもできる。これらの鎖状シリカ粒子やパールネックレス状シリカ粒子からなる被膜は機械的強度にも優れており、優れた耐傷性を得るのに好適である。また、適度なすべり性が得られやすいうえに、透明性が求められる本発明のような場合にはヘイズ値の悪化もなく好ましい。
【0051】
細長い形状の鎖状粒子とは三次元方向には伸長を有さず、同一平面内に伸長したものをいう。細長い形状の鎖状粒子には、ほぼ真っ直ぐなもの、屈曲しているもの、分枝を有するもの、環を有するもの等が含まれる。これに対し、三次元網目構造を有する粒子とは、これらの細長い形状の鎖状粒子が文字通り三次元的に絡まった網目状構造を有するもの等である。
【0052】
パールネックレス状粒子や鎖状粒子はいずれもシリカの一次粒子が連結した、分岐を有する細長い形状であるが、両者の違いは球状一次粒子の占める割合にある。ここでパールネックレス状粒子とは電子顕微鏡による二次元像において、球状一次粒子に起因する円状図形が真円度70%以上を有し、かつ各円状図形の内接円の合計面積がパールネックレス状粒子全投影面積の70%以上を占め、かつ各円状図形の内接円が互いに重ならないもの等である。ここで真円度とは、対象とする図形輪郭の外接円の半径に対する内接円の半径の比率で表され、真円では100%となる。
【0053】
本発明において、コロイダルシリカとしてカチオン性のものを用いるのが好ましく、これによりインク吸収性の阻害を生じさせにくくできる。カチオン性のコロイダルシリカとは、コロイダルシリカにアルミニウムイオン等の多価金属イオンを反応させて得られたもので、少なくともシリカ粒子表面はカチオン性に帯電したものである。
【0054】
本発明の表面被覆層には、界面活性剤としてポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤と、ベタイン型界面活性剤とを併用するのが好ましい。表面被覆層は後述するように塗布量が比較的少量であるのが好ましく、このような低塗布量で、多層同時塗布が可能なスライドビード塗布方式あるいはスライドカーテン塗布方を用いて高速塗布(例えば100m/分以上)する場合、塗布面に塗布筋等が発生しやすく、この問題は、表面被覆層にポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤とベタイン型界面活性剤とを併用することによって解決する。
【0055】
ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの中でもポリオキシエチレンアルキルエーテルが特に好ましい。ベタイン型界面活性剤としては、下記の化合物が挙げられる。
【0056】
【化1】
【0057】
【化2】
【0058】
上記ベタイン型界面活性剤の中でも特にスルホベタイン型界面活性剤が好ましい。
【0059】
表面被覆層における界面活性剤の合計の含有量は、表面被覆層の全固形分の0.1〜8質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。上記したポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤とベタイン型界面活性剤の含有比率は、前者の含有量1に対して後者の含有量は、0.1〜10の範囲が適当であり、0.2〜5の範囲が好ましい。
【0060】
本発明の表面被覆層には、皮膜としての特性を維持するためにバインダーを含有するのが好ましい。バインダーとしては、インク受容層に使用したものと同様のものを用いることができ、これらの中でも特に好ましいのは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。バインダーはコロイダルシリカに対する固形分の質量比で0.5〜10質量%で用いるのが好ましく、1〜7質量%の範囲がより好ましい。
【0061】
本発明の表面被覆層には、カチオン性化合物または多価金属を含有することもできる。ここで用いられるカチオン性化合物及び多価金属としては、インク受容層に使用したものと同様のものを用いることができる。
【0062】
更に、本発明の表面被覆層には、架橋剤、界面活性剤、着色染顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、粘度安定剤、pH調節剤等を含有することができるが、インク吸収性、光透過性やぎらつき感の防止効果を低下させないことが重要である。
【0063】
本発明において、表面被覆層の塗布液のpHは3.3〜6.0の範囲が好ましく、更にpH3.5〜5.5の範囲がより好ましい。
【0064】
本発明において、表面被覆層の固形分塗布量は、インク吸収性の阻害を生じさせないためには0.1〜8.0g/m2の範囲が好ましく、0.3〜5.0g/m2の範囲がより好ましい。
【0065】
本発明において、インク受容層及び表面被覆層の塗布方法は、1層ずつ塗布する逐次塗布方法(例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター等)、あるいは多層同時重層塗布方法(例えば、スライドビードコーターやスライドカーテンコーター等)のいずれの方法であっても、本発明の効果は得られる。特に本発明では、多層同時重層塗布方法が適しており、インク受容層を構成する各層を乾燥工程を設けないで殆ど同時に塗布することにより各層に要求される特性が効率よく得られる。その理由は、各層を湿潤状態で積層することで各層に含有される成分が下層へ浸透しにくいので乾燥後も各層の成分構成が良く保たれるためと考えられる。更に、多層同時重層塗布方法は、生産効率の点からも好ましい。
【0066】
本発明の医療用インクジェット用記録材料に形成された記録画像を透過光で観察する際に画像の鮮鋭性を低下させないためには、JIS−K−7105で規定されるヘイズ値が25%以下であることが好ましく、18%以下であることが更に好ましい。
【0067】
更に好ましくは、本発明の医療用インクジェット記録材料は、JIS−H−8686で規定される写像性C値が83%以下である。写像性C値が大きいほど表面性が良好であり、一般の写真や印刷、出版用途では好ましいが、本発明のような医療用インクジェット記録材料の場合には、インク受容層表面の写像性が高いと透過光による画像が外部光による光反射によってぎらついて見づらくなる。特に医療用途等のように画像内容から重大な判断を下す必要が有る場合には特にぎらつきの改良は重要である。本発明では写像性C値は85%以下であり、好ましくは83%以下、更に好ましくは80%以下である。
【0068】
本発明に用いられる光透過性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレートのようなポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートのようなセルロースエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルムが挙げられる。特にポリエステルフィルムが耐熱性等の特性と価格で好ましく用いられる。これらの樹脂フィルム支持体の厚みは、カール性や取り扱い安さ等から50〜250μm程度のものが好ましい。
【0069】
光透過性支持体の透明性、色調を調整する場合には、例えば熱可塑性樹脂に無機微粒子等を配合して作成するが、無機微粒子としては炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、シリカや、カーボンブラック等の着色顔料等が利用出来る。医療用には青色に着色されたブルーPETフィルムが特に好ましく使用される。
【0070】
プラスチック樹脂フィルム支持体にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が通常行われる。
【0071】
本発明は、プラスチック樹脂フィルム等の光透過性支持体上に合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。
【0072】
フィルム上に設けられるプライマー層は合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。アクリル樹脂としては、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体あるいはこれらの共重合体が一般的である。ポリエステル樹脂としては、グリコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール)と脂肪族あるいは芳香族二塩基酸等の多塩基酸との重縮合物が一般的である。塩化ビニリデン樹脂としては、単独重合体あるいはアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル及び/またはアクリロニトリルとの共重合体が好ましい。ポリウレタン樹脂としては、水分散型ポリウレタンエマルジョンが好ましい。これらの樹脂は、有機溶剤の溶液あるいは水溶液として支持体上に塗布することができるが、好ましくは水分散性のポリマーであり、エマルジョンやラテックスとして支持体上に塗布することである。
【0073】
これらの合成樹脂は、プライマー層を構成する全固形分に対して、60質量%以上が含有される。好ましくは80質量%以上含有されるものである。更に、プライマー層には、界面活性剤、イソシアネート、エポキシ等の架橋剤、コロイダルシリカ等の微粒子、ゼラチン、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを含有することができる。
【0074】
上記プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
【0075】
本発明において、光透過性支持体のインク受容層が設けられた他方の面に、帯電防止性、搬送性、カール防止性を目的として、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0076】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。以下に記した部数は固形分質量部を示している。
【0077】
実施例1
下記に示す光透過性支持体を用意した。
(A)光透過性支持体
厚み175μmで青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルム(不透明度15%)の両面に下記組成のプライマー層を乾燥膜厚が0.3μmになるように設け、光透過性支持体を得た。
【0078】
<プライマー層>
塩化ビニリデン:メチルアクリレート:アクリル酸(90:9:1、重量%)のラテックス(平均分子量42000)。
【0079】
(B)インク受容層及び表面被覆層の塗工
下記の固形分組成のインク受容層塗布液を支持体に近い下層として固形分塗布量が22g/m2に、下記の固形分組成の表面被覆層塗布液1を表面被覆層として固形分塗布量が1g/m2になるように、前記(A)でプライマー層を設けた面にスライドビードコーターで塗布速度80m/分にて同時重層塗布し、実施例1の医療用インクジェット記録材料を得た。
【0080】
インク受容層塗布液は、気相法シリカをカチオン性化合物であるジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマーとともに水分散媒中で予備分散し、次いで高圧ホモジナイザーを用いて分散した後に、他の添加剤を加えて作製した。分散後の気相法シリカの凝集粒子の平均粒子径は150nmであった。なお、インク受容層塗布液、及び表面被覆層塗布液1は固形分濃度が各々12質量%、8質量%の固形分濃度となるように調製した。
【0081】
塗布後の乾燥条件を下記に示す。
5℃で30秒間冷却後、全固形分濃度が90質量%までを45℃10%RHで乾燥し、次いで35℃10%RHで乾燥した。
【0082】
<インク受容層塗布液>
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径12nm)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 3部
ほう酸 4部
ポリビニルアルコール 20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
【0083】
<表面被覆層塗布液1>
カチオン性コロイダルシリカ 100部
(日産化学工業製、スノーテックスAK−L、平均粒子径40nm)
ポリビニルアルコール 4部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤 0.5部
(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)
【0084】
実施例2
実施例1の表面被覆層塗布液1を、下記の固形分組成(表面被覆層塗布液2)に変更した以外は同様にして実施例2の医療用インクジェット記録材料を得た。
【0085】
<表面被覆層塗布液2>
カチオン性コロイダルシリカ 100部
(日産化学工業製、スノーテックスAK−YL、平均粒子径60nm)
ポリビニルアルコール 4部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤 0.5部
(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)
ベタイン型界面活性剤 1部
(例示S−2)
【0086】
比較例1
実施例1の表面被覆層を設けなかった以外は同様にして比較例1の医療用インクジェット記録材料を得た。
【0087】
比較例2
実施例1のインク受容層の気相法シリカを、湿式法シリカ(日本シリカ工業製、ニップシールE−220A、平均粒径2μm)に変更した以外は同様にして比較例2の医療用インクジェット記録材料を得た。
【0088】
上記の実施例及び比較例で作成したインクジェット記録材料について23℃、50%RHの環境で一昼夜静置後、下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
<ヘイズ値>
透明性を評価するために、日本電色工業製NDH−300A(JIS−K−7105準拠)を用いてヘイズ値を測定した。本発明で好ましくは25%以下である。
【0090】
<写像性>
スガ試験機株式会社製写像性測定器を使用し、JIS−H−8616で規定される写像性C値を光学くしの幅2.0mmで測定した。試料取り付け台への試料固定は吸引式で行いカール等での測定値の低下のないようにし、各サンプルで5回測定して平均値を採用した。本発明で好ましくは写像性C値が85%以下、更に好ましくは83%以下である。
【0091】
<画像の見やすさ>
実施例及び比較例で得られた記録材料に前記プリンターにより光学濃度が1.5〜2.5の黒画像を印字し、10000ルクスの光源によるシャウカステン(診断用投光装置)により実際の目視での見やすさを、画像の鮮鋭性、ぎらつき感や画像中の白抜けも含めて評価した。
○:良好。
△:やや見にくいが実用可。
×:見にくい。
【0092】
【表1】
【0093】
表1から明らかなように、実施例1〜3の医療用インクジェット記録材料は、光透過性、写像性及び目視による画像の見やすさが、良好な結果を示しており、医療用途でバックライト方式で使用するのに適した医療用インクジェット記録材料である。
【0094】
これに対し、比較例1はぎらつき感がありバックライト方式で使用するには適していない。また、比較例2は光透過性が低く透過光で画像を観察した場合の鮮鋭性に劣っているうえ、記録画像に微小な白抜けが多発しており実使用不可のレベルである。
【0095】
次に、実施例1、2について同様に塗布試験を実施した。但し、塗布速度を120m/分に増速した。実施例1、2の塗布面を評価したところ、実施例1の塗布面は、わずかに塗布筋が認められたが、実施例2の塗布面は塗布筋は全くなく極めて良好であった。実施例2では表面被覆層に、ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤とベタイン型界面活性剤とを併用することにより、高速塗布適性が得られている。
【0096】
【発明の効果】
上記結果から明らかなように、本発明により、光透過性に優れ、印字面の反対面からの透過光により画像を見るバックライト方式での使用において、透過光以外の外部光の反射光(戻り光)による画像のぎらつきを防止した医療用インクジェット記録材料が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、医療用インクジェット記録材料に関し、光透過性に優れ、印字面の反対面からの透過光により画像を見るバックライト方式での使用において、透過光以外の外部光の反射光(戻り光)による画像のぎらつきを防止した医療用インクジェット記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に親水性ポリマーのインク受容層や非晶質シリカ等の顔料と水溶性バインダーからなる多孔質のインク受容層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭56−080489号、同59−174381号、同60−220750号、同61−32788号、同63−160875号、特開平3−69388号公報等に開示のごとく、澱粉、ポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを支持体に塗布した記録材料が提案されている。
【0004】
また、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号、特開平3−21508、同4−67986号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料やアルミナゾルを水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
【0005】
更に、特公平3−56552号、特開平2−188287号、同平8−132728号、同平10−81064号、同平10−119423号、同平10−175365号、同10−203006号、同10−217601号、同平11−20300号、同平11−20306号、同平11−34481号公報には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いた記録材料が開示されている。
【0006】
一方、胸部X線や超音波診断などの医療画像をインクジェット記録方式で作製することも検討されている。この医療用インクジェット記録材料は、光透過性が高いことに加えて、反射光によって記録画像がぎらつかないことが要求される。この画像のぎらつきは、透過光以外の外部光の反射光(戻り光)によって記録画像がぎらつく現象であり、画像を見づらくして診断に支障を来す場合がある。上記した画像のぎらつき防止には、表面を粗面化(マット化)するのが有効である。しかし、この粗面化は、透明性を悪化させるうえに、粗面化のために大きな粒子を表面層に添加すると、画像部に白抜けという現象を発生させる場合がある。
【0007】
医療用途に用いられるインクジェット記録材料としては、例えば、濁度が10%以上90%未満である記録媒体(特許文献1参照)をはじめとして、特開2000−335104号、同2001−150803号公報に記載されている記録材料が挙げられる。しかしながら、これらの記録材料では、上記した医療用途に要求される、光透過性、画像のぎらつき防止を満足させるものではなかった。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−341419号公報(第1−5頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、光透過性に優れ、印字面の反対面からの透過光により画像を見るバックライト方式での使用において、透過光以外の外部光の反射光(戻り光)による画像のぎらつきを防止した医療用インクジェット記録材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、鋭意検討の結果、下記の手段によって達成されることが判明した。
【0011】
(1)光透過性支持体上に少なくとも1層のインク受容層を設けた医療用インクジェット記録材料において、該インク受容層が気相法シリカ微粒子を主体としてなる空隙性のインク受容層であり、かつ該インク受容層を設けた面に、コロイダルシリカを主体としてなる表面被覆層を有することを特徴とする医療用インクジェット記録材料。
【0012】
(2)前記気相法シリカ微粒子の凝集粒子の平均粒子径が300nm以下である前記1に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0013】
(3)前記コロイダルシリカの平均一次粒子径が、40nm以上である前記1または2に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0014】
(4)前記コロイダルシリカがカチオン化されたものである請求項1、2または3に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0015】
(5)前記表面被覆層が、ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤とベタイン型界面活性剤とを含有する前記1〜4の何れかに1項に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0016】
(6)JIS−K−7105で規定されるヘイズ値が25%以下である前記1〜5の何れか1項に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0017】
(7)JIS−H−8686で規定される写像性C値が83%以下である前記1〜6の何れか1項に記載の医療用インクジェット記録材料。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、光透過性支持体に塗設されるインク受容層は、気相法シリカ微粒子を主体としてなる空隙性のインク受容層であり、ここでいう主体とはインク受容層の全固形分の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上を含有することをいう。
【0019】
ここで合成シリカについて説明する。合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがあり、通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、▲1▼ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または▲2▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、▲3▼シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数μmから10μm位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には▲4▼シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。湿式法シリカは一般的には表面のシラノール基は5個/nm2以上である。
【0020】
これに対し、本発明においてインク受容層に主体として用いられる気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。気相法シリカの表面のシラノール基は5個/nm2未満が一般的である。
【0021】
気相法シリカの平均一次粒子径は5〜50nm、好ましくは5〜20nmであることが好ましく、かつ高い吸収性を得るためにBET法による比表面積が90〜400m2/gのものを用いるのが好ましい。BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0022】
気相法シリカの特徴は、一次粒子が網目構造または鎖状につながりあって二次的に凝集した状態(本発明でいう「凝集粒子」を指す)で存在して適度な空隙を形成することにあり、本発明では好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下の平均粒子径になるまで超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で粉砕、分散させた凝集粒子が光透過性とインク吸収性を両立できるため好ましい。
【0023】
本発明において、気相法シリカはカチオン化した状態で用いられる。カチオン化された気相法シリカは、カチオン性ポリマーもしくは多価金属の存在下で水を主体とする分散媒中で気相法シリカを分散して得られる。このとき、ポリビニルアルコールのような親水性バインダーやホウ酸等の架橋剤(硬膜剤)は含まない状態で分散するのが好ましい。
【0024】
カチオン化された気相法シリカとしては、特開平11−321079号、特開2000−239536号、特開2001−19421号、特開2001−80204号、特開2001−207078号公報等にカチオン性ポリマーの存在下で気相法シリカを分散する方法が記載されており、いずれも本発明に採用することができる。
【0025】
本発明の気相法シリカの一次粒子の平均粒子径は、分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒径として求めることができる。また、凝集粒子の平均粒子径は緩いせん断力で分散した粒子を電子顕微鏡で観察して求めることができる。
【0026】
本発明において、インク受容層を設ける場合には、皮膜としての特性を維持するためにバインダーを用いることができる。このバインダーとしては、透明性が高くインクの高い浸透性が得られる親水性バインダーが適しているが、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、室温付近で比較的膨潤性の低いものがバインダーとして好ましく用いられる。例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン等やこれらの変性物であり、中でも完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0027】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度1000〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0028】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。また、他の親水性ポリマーやラテックスも併用することができるが、ポリビニルアルコールに対して20質量%程度以下であることが好ましい。
【0029】
本発明において、インク受容層の気相法シリカに対する親水性バインダーの質量比は5〜35質量%であり、好ましくは8〜30質量%の範囲である。これにより、光透過性の低下、乾燥時のひび割れや表面強度の低下を発生することなく、優れたインク吸収性を得ることができる。
【0030】
本発明において、インク受容層は、耐水性改良目的等でカチオン性化合物を含有することができる。カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー、水溶性金属化合物が挙げられる。
【0031】
本発明に用いられるカチオン性化合物としては、例えばカチオン性ポリマーや水溶性金属化合物が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000〜10万程度が好ましい。
【0032】
これらのカチオン性ポリマーの使用量は気相法シリカ微粒子に対して1〜10質量%、好ましくは2〜7質量%である。
【0033】
本発明に用いられる水溶性金属化合物として、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられる。カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。中でも透明性、耐水性改良効果の高いジルコニウム系化合物が好ましい。
【0034】
また、カチオン性化合物として、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が挙げられる。塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2又は3で示され、例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+、[Al21(OH)60]3+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0035】
[Al2(OH)nCl6−n]m ・・一般式1
[Al(OH)3]nAlCl3 ・・一般式2
Aln(OH)mCl(3n−m) 0<m<3n ・・一般式3
【0036】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できるが、pHが不適当に低い物もあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。
【0037】
本発明において、上記水溶性の金属化合物のインク受容層中の含有量は、0.1g/m2〜10g/m2、好ましくは0.2g/m2〜5g/m2である。
【0038】
上記したカチオン性化合物は2種以上を併用することができる。例えば、カチオン性ポリマーと水溶性金属化合物を併用してもよい。
【0039】
本発明のインク受容層には、光透過性やインク吸収性の低下、記録画像の白抜けを発生させるおそれがあるので主体としてなる気相法シリカ以外には顔料はなるべく含有させない方が好ましい。使用する場合でも、好ましくはインク受容層の全固形分の0.5質量%以下で調整する。使用できる顔料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和水物、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料やポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、尿素樹脂等の有機顔料が挙げられる。光透過性の低下や画像の白抜けを発生させないためには好ましくは平均粒径が10μm以下、更に好ましくは5μm以下のものを用いるのが良い。
【0040】
本発明のインク受容層には、皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することもできる。そのような油滴として、室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は親水性バインダーに対して0.1〜10質量%の範囲で用いることができる。
【0041】
本発明のインク受容層には、耐水性、ドット再現性を向上させる目的で硬膜剤を適宜添加することができる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する水溶性ポリマー100gに対して0.01〜10gが好ましく、より好ましくは0.1〜5gである。
【0042】
本発明のインク受容層には、塗布液の塗布適性、表面性向上等の目的で界面活性剤が使用できる。カチオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩等、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン、レシチン等、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等から適時1種類以上が選択される。カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアニオン性界面活性剤も使用出来るが、インク受容層組成物との凝集性から量は制限される。
【0043】
その他、インク受容層には、更に、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、有機溶剤、レベリング剤、防腐剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0044】
本発明において、インク受容層の塗布液のpHは3.3〜6.0の範囲が好ましく、更にpH3.5〜5.5の範囲がより好ましい。
【0045】
本発明において、インク受容層の固形分塗布量は、8〜32g/m2であり、好ましくは10〜28g/m2であることにより、塗布層の強度を維持しつつ、優れたインク吸収性を得ることができる。
【0046】
本発明の医療用インクジェット記録材料は、コロイダルシリカを主体とする表面被覆層を有する。ここでいう主体とはインク受容層の全固形分の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上を含有することをいう。コロイダルシリカを主体とする表面被覆層を有することによって、インク受容面に形成された画像のぎらつきを適度に防止することができる。
【0047】
本発明に用いられるコロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる二酸化珪素をコロイド状に水中に分散させたものであり、平均一次粒子径が数nm〜100nm程度の湿式法合成シリカである。
【0048】
コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業(株)社からスノーテックスST−20、ST−30、ST−40、ST−C、ST−N、ST−20L、ST−O、ST−OL、ST−S、ST−XS、ST−XL、ST−YL、ST−ZL、ST−OZL、ST−AK、ST−AKL、ST−AKYL等が市販されている。
【0049】
本発明において、平均一次粒子径が20〜100nmの範囲のコロイダルシリカが使用されるが、高いインク吸収性を維持しつつ、ぎらつき防止効果と高い光透過性を両立できる点から40nm以上のものが好ましい。平均一次粒子径の異なる2種類以上のコロイダルシリカを併用することもできる。
【0050】
また、一般的なコロイダルシリカが球状または球状に近い粒子が連結せずに独立して存在しているのに対して、小さいシリカ粒子が細長く連結した鎖状粒子、またそれらが三次元網目構造を有しているもの、球状の一次粒子が複数個連結し、真珠のネックレスに似た形状を示すパールネックレス状の粒子等の形状で存在する非球状コロイダルシリカを使用することもできる。これらの鎖状シリカ粒子やパールネックレス状シリカ粒子からなる被膜は機械的強度にも優れており、優れた耐傷性を得るのに好適である。また、適度なすべり性が得られやすいうえに、透明性が求められる本発明のような場合にはヘイズ値の悪化もなく好ましい。
【0051】
細長い形状の鎖状粒子とは三次元方向には伸長を有さず、同一平面内に伸長したものをいう。細長い形状の鎖状粒子には、ほぼ真っ直ぐなもの、屈曲しているもの、分枝を有するもの、環を有するもの等が含まれる。これに対し、三次元網目構造を有する粒子とは、これらの細長い形状の鎖状粒子が文字通り三次元的に絡まった網目状構造を有するもの等である。
【0052】
パールネックレス状粒子や鎖状粒子はいずれもシリカの一次粒子が連結した、分岐を有する細長い形状であるが、両者の違いは球状一次粒子の占める割合にある。ここでパールネックレス状粒子とは電子顕微鏡による二次元像において、球状一次粒子に起因する円状図形が真円度70%以上を有し、かつ各円状図形の内接円の合計面積がパールネックレス状粒子全投影面積の70%以上を占め、かつ各円状図形の内接円が互いに重ならないもの等である。ここで真円度とは、対象とする図形輪郭の外接円の半径に対する内接円の半径の比率で表され、真円では100%となる。
【0053】
本発明において、コロイダルシリカとしてカチオン性のものを用いるのが好ましく、これによりインク吸収性の阻害を生じさせにくくできる。カチオン性のコロイダルシリカとは、コロイダルシリカにアルミニウムイオン等の多価金属イオンを反応させて得られたもので、少なくともシリカ粒子表面はカチオン性に帯電したものである。
【0054】
本発明の表面被覆層には、界面活性剤としてポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤と、ベタイン型界面活性剤とを併用するのが好ましい。表面被覆層は後述するように塗布量が比較的少量であるのが好ましく、このような低塗布量で、多層同時塗布が可能なスライドビード塗布方式あるいはスライドカーテン塗布方を用いて高速塗布(例えば100m/分以上)する場合、塗布面に塗布筋等が発生しやすく、この問題は、表面被覆層にポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤とベタイン型界面活性剤とを併用することによって解決する。
【0055】
ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの中でもポリオキシエチレンアルキルエーテルが特に好ましい。ベタイン型界面活性剤としては、下記の化合物が挙げられる。
【0056】
【化1】
【0057】
【化2】
【0058】
上記ベタイン型界面活性剤の中でも特にスルホベタイン型界面活性剤が好ましい。
【0059】
表面被覆層における界面活性剤の合計の含有量は、表面被覆層の全固形分の0.1〜8質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。上記したポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤とベタイン型界面活性剤の含有比率は、前者の含有量1に対して後者の含有量は、0.1〜10の範囲が適当であり、0.2〜5の範囲が好ましい。
【0060】
本発明の表面被覆層には、皮膜としての特性を維持するためにバインダーを含有するのが好ましい。バインダーとしては、インク受容層に使用したものと同様のものを用いることができ、これらの中でも特に好ましいのは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。バインダーはコロイダルシリカに対する固形分の質量比で0.5〜10質量%で用いるのが好ましく、1〜7質量%の範囲がより好ましい。
【0061】
本発明の表面被覆層には、カチオン性化合物または多価金属を含有することもできる。ここで用いられるカチオン性化合物及び多価金属としては、インク受容層に使用したものと同様のものを用いることができる。
【0062】
更に、本発明の表面被覆層には、架橋剤、界面活性剤、着色染顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、粘度安定剤、pH調節剤等を含有することができるが、インク吸収性、光透過性やぎらつき感の防止効果を低下させないことが重要である。
【0063】
本発明において、表面被覆層の塗布液のpHは3.3〜6.0の範囲が好ましく、更にpH3.5〜5.5の範囲がより好ましい。
【0064】
本発明において、表面被覆層の固形分塗布量は、インク吸収性の阻害を生じさせないためには0.1〜8.0g/m2の範囲が好ましく、0.3〜5.0g/m2の範囲がより好ましい。
【0065】
本発明において、インク受容層及び表面被覆層の塗布方法は、1層ずつ塗布する逐次塗布方法(例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター等)、あるいは多層同時重層塗布方法(例えば、スライドビードコーターやスライドカーテンコーター等)のいずれの方法であっても、本発明の効果は得られる。特に本発明では、多層同時重層塗布方法が適しており、インク受容層を構成する各層を乾燥工程を設けないで殆ど同時に塗布することにより各層に要求される特性が効率よく得られる。その理由は、各層を湿潤状態で積層することで各層に含有される成分が下層へ浸透しにくいので乾燥後も各層の成分構成が良く保たれるためと考えられる。更に、多層同時重層塗布方法は、生産効率の点からも好ましい。
【0066】
本発明の医療用インクジェット用記録材料に形成された記録画像を透過光で観察する際に画像の鮮鋭性を低下させないためには、JIS−K−7105で規定されるヘイズ値が25%以下であることが好ましく、18%以下であることが更に好ましい。
【0067】
更に好ましくは、本発明の医療用インクジェット記録材料は、JIS−H−8686で規定される写像性C値が83%以下である。写像性C値が大きいほど表面性が良好であり、一般の写真や印刷、出版用途では好ましいが、本発明のような医療用インクジェット記録材料の場合には、インク受容層表面の写像性が高いと透過光による画像が外部光による光反射によってぎらついて見づらくなる。特に医療用途等のように画像内容から重大な判断を下す必要が有る場合には特にぎらつきの改良は重要である。本発明では写像性C値は85%以下であり、好ましくは83%以下、更に好ましくは80%以下である。
【0068】
本発明に用いられる光透過性支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレートのようなポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートのようなセルロースエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルムが挙げられる。特にポリエステルフィルムが耐熱性等の特性と価格で好ましく用いられる。これらの樹脂フィルム支持体の厚みは、カール性や取り扱い安さ等から50〜250μm程度のものが好ましい。
【0069】
光透過性支持体の透明性、色調を調整する場合には、例えば熱可塑性樹脂に無機微粒子等を配合して作成するが、無機微粒子としては炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、シリカや、カーボンブラック等の着色顔料等が利用出来る。医療用には青色に着色されたブルーPETフィルムが特に好ましく使用される。
【0070】
プラスチック樹脂フィルム支持体にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が通常行われる。
【0071】
本発明は、プラスチック樹脂フィルム等の光透過性支持体上に合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。
【0072】
フィルム上に設けられるプライマー層は合成樹脂を主体とする。係る合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特にアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。アクリル樹脂としては、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの単独重合体あるいはこれらの共重合体が一般的である。ポリエステル樹脂としては、グリコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール)と脂肪族あるいは芳香族二塩基酸等の多塩基酸との重縮合物が一般的である。塩化ビニリデン樹脂としては、単独重合体あるいはアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル及び/またはアクリロニトリルとの共重合体が好ましい。ポリウレタン樹脂としては、水分散型ポリウレタンエマルジョンが好ましい。これらの樹脂は、有機溶剤の溶液あるいは水溶液として支持体上に塗布することができるが、好ましくは水分散性のポリマーであり、エマルジョンやラテックスとして支持体上に塗布することである。
【0073】
これらの合成樹脂は、プライマー層を構成する全固形分に対して、60質量%以上が含有される。好ましくは80質量%以上含有されるものである。更に、プライマー層には、界面活性剤、イソシアネート、エポキシ等の架橋剤、コロイダルシリカ等の微粒子、ゼラチン、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーを含有することができる。
【0074】
上記プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられる。好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
【0075】
本発明において、光透過性支持体のインク受容層が設けられた他方の面に、帯電防止性、搬送性、カール防止性を目的として、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0076】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。以下に記した部数は固形分質量部を示している。
【0077】
実施例1
下記に示す光透過性支持体を用意した。
(A)光透過性支持体
厚み175μmで青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルム(不透明度15%)の両面に下記組成のプライマー層を乾燥膜厚が0.3μmになるように設け、光透過性支持体を得た。
【0078】
<プライマー層>
塩化ビニリデン:メチルアクリレート:アクリル酸(90:9:1、重量%)のラテックス(平均分子量42000)。
【0079】
(B)インク受容層及び表面被覆層の塗工
下記の固形分組成のインク受容層塗布液を支持体に近い下層として固形分塗布量が22g/m2に、下記の固形分組成の表面被覆層塗布液1を表面被覆層として固形分塗布量が1g/m2になるように、前記(A)でプライマー層を設けた面にスライドビードコーターで塗布速度80m/分にて同時重層塗布し、実施例1の医療用インクジェット記録材料を得た。
【0080】
インク受容層塗布液は、気相法シリカをカチオン性化合物であるジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマーとともに水分散媒中で予備分散し、次いで高圧ホモジナイザーを用いて分散した後に、他の添加剤を加えて作製した。分散後の気相法シリカの凝集粒子の平均粒子径は150nmであった。なお、インク受容層塗布液、及び表面被覆層塗布液1は固形分濃度が各々12質量%、8質量%の固形分濃度となるように調製した。
【0081】
塗布後の乾燥条件を下記に示す。
5℃で30秒間冷却後、全固形分濃度が90質量%までを45℃10%RHで乾燥し、次いで35℃10%RHで乾燥した。
【0082】
<インク受容層塗布液>
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径12nm)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 3部
ほう酸 4部
ポリビニルアルコール 20部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
【0083】
<表面被覆層塗布液1>
カチオン性コロイダルシリカ 100部
(日産化学工業製、スノーテックスAK−L、平均粒子径40nm)
ポリビニルアルコール 4部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤 0.5部
(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)
【0084】
実施例2
実施例1の表面被覆層塗布液1を、下記の固形分組成(表面被覆層塗布液2)に変更した以外は同様にして実施例2の医療用インクジェット記録材料を得た。
【0085】
<表面被覆層塗布液2>
カチオン性コロイダルシリカ 100部
(日産化学工業製、スノーテックスAK−YL、平均粒子径60nm)
ポリビニルアルコール 4部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤 0.5部
(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)
ベタイン型界面活性剤 1部
(例示S−2)
【0086】
比較例1
実施例1の表面被覆層を設けなかった以外は同様にして比較例1の医療用インクジェット記録材料を得た。
【0087】
比較例2
実施例1のインク受容層の気相法シリカを、湿式法シリカ(日本シリカ工業製、ニップシールE−220A、平均粒径2μm)に変更した以外は同様にして比較例2の医療用インクジェット記録材料を得た。
【0088】
上記の実施例及び比較例で作成したインクジェット記録材料について23℃、50%RHの環境で一昼夜静置後、下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
<ヘイズ値>
透明性を評価するために、日本電色工業製NDH−300A(JIS−K−7105準拠)を用いてヘイズ値を測定した。本発明で好ましくは25%以下である。
【0090】
<写像性>
スガ試験機株式会社製写像性測定器を使用し、JIS−H−8616で規定される写像性C値を光学くしの幅2.0mmで測定した。試料取り付け台への試料固定は吸引式で行いカール等での測定値の低下のないようにし、各サンプルで5回測定して平均値を採用した。本発明で好ましくは写像性C値が85%以下、更に好ましくは83%以下である。
【0091】
<画像の見やすさ>
実施例及び比較例で得られた記録材料に前記プリンターにより光学濃度が1.5〜2.5の黒画像を印字し、10000ルクスの光源によるシャウカステン(診断用投光装置)により実際の目視での見やすさを、画像の鮮鋭性、ぎらつき感や画像中の白抜けも含めて評価した。
○:良好。
△:やや見にくいが実用可。
×:見にくい。
【0092】
【表1】
【0093】
表1から明らかなように、実施例1〜3の医療用インクジェット記録材料は、光透過性、写像性及び目視による画像の見やすさが、良好な結果を示しており、医療用途でバックライト方式で使用するのに適した医療用インクジェット記録材料である。
【0094】
これに対し、比較例1はぎらつき感がありバックライト方式で使用するには適していない。また、比較例2は光透過性が低く透過光で画像を観察した場合の鮮鋭性に劣っているうえ、記録画像に微小な白抜けが多発しており実使用不可のレベルである。
【0095】
次に、実施例1、2について同様に塗布試験を実施した。但し、塗布速度を120m/分に増速した。実施例1、2の塗布面を評価したところ、実施例1の塗布面は、わずかに塗布筋が認められたが、実施例2の塗布面は塗布筋は全くなく極めて良好であった。実施例2では表面被覆層に、ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤とベタイン型界面活性剤とを併用することにより、高速塗布適性が得られている。
【0096】
【発明の効果】
上記結果から明らかなように、本発明により、光透過性に優れ、印字面の反対面からの透過光により画像を見るバックライト方式での使用において、透過光以外の外部光の反射光(戻り光)による画像のぎらつきを防止した医療用インクジェット記録材料が得られる。
Claims (7)
- 光透過性支持体上に少なくとも1層のインク受容層を設けた医療用インクジェット記録材料において、該インク受容層が気相法シリカ微粒子を主体としてなる空隙性のインク受容層であり、かつ該インク受容層を設けた面に、コロイダルシリカを主体としてなる表面被覆層を有することを特徴とする医療用インクジェット記録材料。
- 前記気相法シリカ微粒子の凝集粒子の平均粒子径が300nm以下である請求項1に記載の医療用インクジェット記録材料。
- 前記コロイダルシリカの平均一次粒子径が、40nm以上である請求項1または2に記載の医療用インクジェット記録材料。
- 前記コロイダルシリカがカチオン化されたものである請求項1、2または3に記載の医療用インクジェット記録材料。
- 前記表面被覆層が、更にポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤とベタイン型界面活性剤とを含有する請求項1〜4の何れかに1項に記載の医療用インクジェット記録材料。
- JIS−K−7105で規定されるヘイズ値が25%以下である請求項1〜5の何れか1項に記載の医療用インクジェット記録材料。
- JIS−H−8686で規定される写像性C値が83%以下である請求項1〜6の何れか1項に記載の医療用インクジェット記録材料。
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