JP2006130884A - 光学用フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 傷がなく外観美麗であり、かつ、ハンドリング性、厚み精度および光学特性に優れ、光学用途に好適なフィルムを容易に、かつ、安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るフィルムの製造方法は、距離を隔てて配置された2つの延伸ロール1・2により、非晶性の熱可塑性樹脂からなるフィルム4に対してロール縦延伸を行う際に用いられるものである。ここで、ニップロール3・9は、挟持部5が接触領域7の延伸ロール2側の端部になるとともに、挟持部6が接触領域8の延伸ロール1側の端部になるように配置されている。このようにして、フィルム4が延伸される挟持部5と挟持部6との間において、フィルム4は延伸ロール1、延伸ロール2の何れとも接することがないように構成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学用フィルムの製造方法に関するものであり、特に、非晶性の熱可塑性樹脂からなり、傷がなく外観美麗であり、かつ、ハンドリング性、厚み精度、および光学特性に優れ、光学用途に好適な光学用フィルムの製造方法に関するものである。
近年、ノート型パソコン、ワードプロセッサ、携帯電話、携帯情報端末等の小型化・薄型化・軽量化にともない、これらの電子機器に軽量・コンパクトという特長を生かした液晶表示装置が多く用いられるようになってきている。液晶表示装置には、その表示品位を保つために偏光フィルム等の各種フィルムが用いられている。また、携帯情報端末や携帯電話向けに液晶表示装置を更に軽量化するため、ガラス基板の代わりにプラスチックフィルムを用いた液晶表示装置も実用化されている。
液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置に用いるプラスチックフィルムには、適切な機械的特性と、高度に制御されたフィルム面内およびフィルム厚み方向の複屈折とが要求される。上記のプラスチックフィルムの機械的特性を改善し、かつ、フィルム面内およびフィルム厚み方向の複屈折を高度に制御しつつ付与するためには、二軸延伸を必要とする。この場合の二軸延伸としては、縦横の逐次延伸からなる逐次二軸延伸が一般的である。ここで、逐次二軸延伸における一軸目の縦延伸の方法として、ゾーン延伸法やロール縦延伸法が用いられる。
ゾーン延伸法とは、たとえば特許文献1に記載されているように、間に加熱ゾーンを設けた2組のニップロールによってフィルムを搬送する方法である。この方法では、2組のニップロール間の間に設けられた加熱ゾーンにおける熱によりフィルムが延伸される。この方法によれば、2つのニップロールの間隔を十分に長く取れるため、フィルム幅方向の収縮を妨げる力を小さくし、幅方向の収縮率を十分に稼ぐことができる。これによって、光学的な均質性が得やすいとされている。
ロール縦延伸法については、たとえば特許文献2に、ポリアミドフィルムをロール縦延伸法によって延伸する技術が記載されている。以下、図2を用いてロール縦延伸について説明する。
この方法では、図4に示すように、延伸ロール11および冷却ロール12を所定の間隔を開けて配置する。また、延伸ロール11の図面上側と、冷却ロール12の図面下側には、それぞれポリアミドフィルム14を挟持するためのニップロール13およびニップロール19が対向して設けられている。このような構成の各ロールに対して、ポリアミドフィルム14は、延伸ロール11と冷却ロール12との間を通過するように、すなわちS字状になるように、配置されている。ポリアミドフィルム14は、延伸ロール11と、これと対向するニップロール13とによって、挟持部15において挟持されている。また、ポリアミドフィルム14は、冷却ロール12と、これと対向するニップロール19とによって、挟持部16において挟持されている。
なお、ポリアミドフィルム14と延伸ロール11との接触領域17と、ポリアミドフィルム14と冷却ロール12とが接触領域18との間隔L(換言すれば、ポリアミドフィルム14が搬送される、延伸ロール11から冷却ロール12までの経路のうち、ポリアミドフィルム14が各ロールと接しない部分の距離)は、延伸ロール11、冷却ロール12の半径をそれぞれR1、R2とすると、以下の関係になっている。
L<R1+R2
そして、ポリアミドフィルム14が延伸ロール11から冷却ロール12に向かって搬送されるように、延伸ロール11および冷却ロール12を互いに反対方向に回転させる。このとき、延伸ロール11を所定の温度に過熱し、冷却ロール12を延伸ロール11よりも大きな回転速度で回転させる。これにより、延伸ロール11によって加熱されたポリアミドフィルム14が、挟持部15と挟持部16との間において、延伸ロール11と冷却ロール12との回転速度の差に応じて延伸される。
ところで、ロール縦延伸における傷の発生を解決する方法としては、たとえば、特許文献3に開示されている、特定の種類の粒子をフィルム中に含有させる方法、たとえば特許文献4に開示されている、縦延伸を多段階に分け、高温で延伸することにより、発生する傷を改善する方法等が挙げられる。
特開2000−147257号公報(平成12年(2000)5月26日公開) 特開平9−286054号公報(平成9年(1997)11月4日公開) 特開昭62−214518号公報(昭和62年(1987)9月21日公開) 特公昭57−49378号公報(昭和57年(1982)10月21日公告、公開番号:特開昭50−139872、昭和50年(1975)11月8日公開)
液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置に用いるプラスチックフィルムにおいて、フィルム表面に傷がある場合、または、厚みムラが大きい場合、いわゆるレンズ効果と称されるフィルム表面の凹凸により画像のゆがみ現象が生じ、液晶表示装置の画質品位が著しく低下してしまう。具体的には、色が部分的に薄くなるなどの色とび現象や、画像の歪みなどの弊害が出てしまう。従って、液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置に用いるプラスチックフィルムには、光学的に透明であり、光学的に均質であることが高いレベルで要求される。
しかしながら、上記従来の技術では、傷がなく外観美麗であり、かつ、ハンドリング性、厚み精度、および光学特性に優れ、光学用途に好適な樹脂によるフィルムを容易に、かつ、安価に製造することができないという課題を有している。
例えば、特許文献1の技術では、ゾーン内のフィルムの支持を精密に制御することが難しく、光学的な均質性を得るためには高価な設備コストを必要とする。
また、特許文献2に記載のロール縦延伸では、ゾーン延伸法に比べて設備コストを安価に抑えられるものの、ポリアミドフィルム14が挟持部15から挟持部16へと延伸されながら搬送される際に、延伸ロール11との接触領域17または冷却ロール12との接触領域18において滑りによる傷が発生してしまう。
より詳細に説明すると、ポリアミドフィルム14の移動速度は、挟持部15においては延伸ロール11の回転方向の線速度と等しく、挟持部16においては冷却ロール12の回転方向の線速度と等しくなっている。そして、挟持部15と挟持部16との間では、延伸ロール11の回転方向の線速度から冷却ロール12の回転方向の線速度に向けて徐々に加速している。従って、ポリアミドフィルム14と延伸ロール11との接触領域17のうち挟持部15よりも冷却ロール12側の領域において、ポリアミドフィルム14の移動速度は延伸ロール11の回転方向の線速度よりも速くなっている。このように、ポリアミドフィルム14の移動速度と、延伸ロール11の回転方向の線速度との間に差が生じるため、速度差による滑りがポリアミドフィルム14と延伸ロール11との間に生じることになる。
同様に、ポリアミドフィルム14の冷却ロール12との接触領域18のうち、挟持部16よりも延伸ロール11側の部分では、ポリアミドフィルム14の移動速度は冷却ロール12の回転方向の線速度よりも遅くなっている。これにより、速度差に基づく滑りがポリアミドフィルム14と冷却ロール12との間にも生じることになる。
このような滑りは、ポリアミドフィルム14の表面に傷を生じさせる原因となる。このような傷は一般のフィルムでは問題とならなかったが、光学用フィルムにおいては重大な問題となる。すなわち、上述したように、光学用フィルムには光学的に透明であり、かつ、光学的に均質であることが高いレベルで要求されるため、特許文献2に記載されている技術を光学用フィルムの製造に適用することはできない。
さらに、上述した特許文献3に開示されているような、特定の種類の粒子をフィルム中に含有させる方法では、光学的な透明性や均質性が高度に要求される光学フィルムに対して、粒子を添加することは好ましくない。従って、特許文献3に記載の方法を、光学用途に好適なフィルムに適用することはできない。
また、上述した特許文献4に開示されているような、縦延伸を多段階に分け、高温で延伸する方法では、多段階で延伸するには多数の延伸ロールを配置しなければならず、設備コストが高価になってしまう。
本発明は従来の技術が有する上記課題に鑑みてなされるものであり、傷がなく外観美麗であり、かつ、ハンドリング性、厚み精度および光学特性に優れ、光学用途に好適なフィルムを容易に、かつ、安価に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、距離を隔てて2つの延伸ロールを配置し、非晶性の熱可塑性樹脂からなるフィルムに対してロール縦延伸を行う際に、2つの延伸ロールの配置間隔を以下のように設定することにより、フィルムの傷の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る光学用フィルムの製造方法は、少なくとも非晶性の熱可塑性樹脂からなるフィルムに対して、第1延伸ロール及びこれに近接する第1ニップロールと、第2延伸ロール及びこれに近接する第2ニップロールとを用いてロール縦延伸処理を行う延伸工程を含む光学用フィルムの製造方法において、上記第1延伸ロール及び第1ニップロールによって上記フィルムが挟まれる部位を第1挟持部とし、上記第2延伸ロール及び第2ニップロールによって上記フィルムが挟まれる部位を第2挟持部とした場合、上記延伸工程では、上記第1挟持部の位置が、上記フィルムと上記第1延伸ロールとの接触領域における、上記第2延伸ロール側の端部となるとともに、上記第2挟持部の位置が、上記フィルムと上記第2延伸ロールとの接触領域における、上記第1延伸ロール側の端部となるように、上記各ロールを配置してロール縦延伸処理を行うことを特徴とする。
また、本発明に係る光学用フィルムの製造方法は、上記第1延伸ロールの回転方向及び上記第2延伸ロールの回転方向が、ともに上記フィルムの搬送方向と同じであり、かつ、上記第1延伸ロールの回転方向が、上記第2延伸ロールの回転方向と同じであることが好ましい。
また、本発明に係る光学用フィルムの製造方法は、上記フィルムと上記第1延伸ロールとの接触領域と、上記フィルムと上記第2延伸ロールとの接触領域との間隔が、上記各延伸ロールの半径の和以上であり、かつ、上記各延伸ロールの半径の和の10倍以下であることが好ましい。
また、本発明に係る光学用フィルムの製造方法は、上記非晶性の熱可塑性樹脂として、イミド樹脂を含有する樹脂組成物が用いられることが好ましい。
また、本発明に係る光学用フィルムの製造方法は、上記イミド樹脂が、下記の一般式(1)で表される単位と、下記の一般式(2)で表される単位及び/又は(3)で表される単位と、を有するイミド樹脂であることが好ましい。
Figure 2006130884
(ただし、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
Figure 2006130884
(ただし、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
Figure 2006130884
(ただし、Rは、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
また、本発明に係る光学用フィルムの製造方法は、上記2つの延伸ロールによるロール縦延伸処理の延伸倍率が約1.1倍以上約3倍以下であることが好ましい。
本発明に係る光学用フィルムの製造方法では、上述したように、上記フィルムと上記第1延伸ロールとの接触領域における、第2延伸ロール側の端部に第1挟持部があり、上記フィルムと上記第2延伸ロールとの接触領域における、第1延伸ロール側の端部に第2挟持部がある。
これによって、フィルムが延伸される第1挟持部と第2挟持部の間において、フィルムは第1延伸ロール、第2延伸ロールの何れとも接触することがない。従って、フィルムと各延伸ロールとの間における滑りを防止することができ、ひいては、傷がなく外観美麗なフィルムを製造することができるという効果を奏する。
また、ロール縦延伸処理を行うので、ハンドリング性、厚み精度、および光学特性に優れたフィルムを製造することができるという効果も奏する。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
〔フィルムの組成〕
まず、本発明に係る光学用フィルムの製造方法において用いられるフィルムについて説明する。本発明において、フィルムは少なくとも非晶性の熱可塑性樹脂からなる。この非晶性の熱可塑性樹脂としては、ポリメタクリル酸メチル系樹脂やポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、マレイミド・オレフィン系樹脂、グルタルイミド系樹脂などの単独樹脂、あるいはこれらを混合してなる樹脂組成物が挙げられる。
非晶性の熱可塑性樹脂としては、下記一般式(1)で表される単位を有するイミド樹脂が好ましく、下記一般式(1)で表される単位と下記一般式(2)で表される単位とが共重合したイミド樹脂、下記一般式(1)で表される単位と下記一般式(3)で表される単位とが共重合したイミド樹脂、又は、下記一般式(1)で表される単位と下記一般式(2)で表される単位と下記一般式(3)で表される単位とが共重合したイミド樹脂がより好ましい。
Figure 2006130884
(ただし、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
Figure 2006130884
(ただし、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
Figure 2006130884
(ただし、Rは、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
イミド樹脂は、通常、上記一般式(1)で表される単位を有する樹脂である。この一般式(1)で表される単位からなる樹脂は、正の固有複屈折を有している。一方、上記一般式(2)で表される単位からなる樹脂はゼロ近傍の固有複屈折を有し、式(3)で表される単位からなる樹脂は負の固有複屈折を有している。従って、上記一般式(1)で表される単位と上記一般式(2)及び/又は(3)で表される単位とが適切な比率で共重合したイミド樹脂を用いれば、光学用途に好適なゼロ複屈折のフィルム、又はそれに近いフィルムを実現することができる。
上記一般式(1)で表される単位を有する樹脂としては、例えば、グルタルイミド樹脂等が挙げられる。また、上記一般式(1)で表される単位と上記一般式(2)で表される単位とを有する樹脂としては、例えば、イミド化ポリメタクリル酸メチル樹脂(イミド化PMMA樹脂)等が挙げられる。また、上記一般式(1)で表される単位と上記一般式(3)で表される単位とを有する樹脂としては、例えば、イミド化スチレン樹脂等が挙げられる。また、上記一般式(1)で表される単位と上記一般式(2)で表される単位と上記一般式(3)で表される単位とを有する樹脂としては、例えば、イミド化メタクリルスチレン樹脂(イミド化MS樹脂)等が挙げられる。なお、これらの樹脂の合成方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いて合成することができる。
また、非晶性の熱可塑性樹脂としては、樹脂組成物であってもよい。本発明において、非晶性の熱可塑性樹脂として用いることができる樹脂組成物の具体的な組成は特に限定されるものではなく、上述した各種熱可塑性樹脂(好ましくは上記イミド樹脂)と、本発明の技術分野で公知の他の成分とを公知の比率で含有していればよい。他の成分としては、他の樹脂成分であってもよいし、以下の押出工程で一般的に用いられている安定剤や滑剤等、及び/又は紫外線吸収剤等であってもよい。
〔フィルムの成形方法〕
フィルムを成形する方法としては、従来公知の任意の方法が可能であり、たとえば、溶液流延法や溶融押出法などが挙げられる。そのいずれをも採用することができるが、地球環境上や作業環境上、あるいは製造コストの観点から、溶剤を使用しない溶融押出法が好ましい。
本発明にかかるフィルムの製造方法においては、少なくともロール縦延伸処理を行う延伸工程が含まれていればよく、他の工程については特に限定されるものではないが、好ましい実施形態としては、さらに、予備乾燥工程、押出工程、冷却工程の各工程を含む製造方法を挙げることができる。
予備乾燥工程は、フィルム化の前に、用いる熱可塑性樹脂を予備乾燥しておく工程である。予備乾燥は、例えば原料をペレットなどの形態にして、熱風乾燥機などを用いることによって行われる。以上の予備乾燥によって、押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。本工程を採用することによって、特に光学用フィルムを製造する場合には、発泡に伴う光学用フィルムの品質低下を回避できるため好ましい。予備乾燥の具体的な条件は特に限定されるものではなく、本発明の技術分野で公知の条件を採用することができる。なお、予備乾燥の際の温度は、水を充分に気化させられる程度に高温であり、かつ、原料ペレットがブロッキングしない程度に低温であればよい。
押出工程は、熱可塑性樹脂を押出機に供給してシート状に押出し、フィルムとして成膜する工程である。押出機の種類および押出条件は特に限定されるものではなく、本発明の技術分野で公知の条件を採用することができる。例えば、押出機内で加熱溶融された熱可塑性樹脂を、ギヤーポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する構成の押出機を好ましく用いることができる。ギヤーポンプを用いることによって、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みむらを低減させることができる。また、フィルターを用いることによって、樹脂中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。このような構成を採用することによって、得られる光学用フィルムの品質をより向上させることができる。
冷却工程は、押し出されるシート状の溶融樹脂を2つの冷却ドラムで挟み込んで冷却する工程である。冷却工程を採用することによって、光学用フィルムを効率的かつ高品質に成膜することができる。ここで、2つの冷却ドラムのうち、一方は表面が平滑な剛体製の金属ドラムであり、もう一方は表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルなドラムであることが特に好ましい。剛体製のドラムとフレキシブルなドラムとで、押し出されるシート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して成膜することにより、表面の微小な凹凸やダイラインなどが矯正されて、表面の平滑な、厚みむらが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
上記剛体製ドラムおよびフレキシブルドラムの具体的な材質や形状、大きさ等は特に限定されるものではなく、押し出されたシート状の溶融樹脂を十分に冷却できるようなドラムとなっていればよい。なお、本明細書において「冷却ドラム」とは、いわゆる「タッチロール」および「冷却ロール」をも包含するものである。
本冷却工程では、たとえ一方のドラムが弾性変形可能であったとしても、いずれのドラム表面も金属であるために、ドラムの面同士が接触してドラム外面に傷がつきやすく、また、ドラムそのものが破損しやすい。従って、成形するフィルムの厚みは10μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましく、80μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることが特に好ましい。
また、本冷却工程では、フィルムが厚いと、フィルムの冷却が不均一になりやすく、光学的特性が不均一になりやすい。従って、フィルムの厚みは200μm以下であることが好ましく、170μm以下であることがさらに好ましい。
なお、これより薄いフィルムを製造する場合の実施態様としては特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができるが、上記のような挟み込み成形で比較的厚みの厚い原料フィルムを得た後、一軸延伸あるいは二軸延伸して所定の厚みの延伸フィルムを製造する例を好ましく挙げることができる。より具体的な実施態様の一例を挙げれば、このような挟み込み成形で厚み150μmの原料フィルムを製造した後、縦横二軸延伸により、厚み40μmの延伸フィルムを製造することができる。
本発明の好ましい実施態様として、上記予備乾燥工程、押出工程、冷却工程、および後述する延伸工程を含む製造方法を例示したが、もちろん本発明はこれに限定されるものではなく、必要に応じて一部の工程を省略してもよいし、本発明の技術分野で公知の他の工程を追加してもよい。他の工程としては、後述する表面処理工程等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
〔フィルムの延伸方法1〕
本発明では、上記のようにして得られたフィルムに対して延伸工程を施すことにより延伸フィルムを得る。すなわち、延伸フィルムは、上記〔フィルムの成形方法〕において説明した方法などによって得られた未延伸状態のフィルムに対して、一軸延伸あるいは二軸延伸を行うことにより得られる。これらの延伸を行うことにより、フィルムの機械的特性を向上させるとともに、フィルム面内およびフィルム厚み方向の複屈折を適度に付与することができる。なお、原料フィルムを成形した後、必要に応じて一旦フィルムを保管もしくは移動して、その後にフィルムの延伸を行ってもよい。
本発明においては、縦延伸としてロール縦延伸を行う。具体的には、所定の温度に加熱した2つの延伸ロール間で、入口側の延伸ロールの回転速度より出口側の延伸ロールの回転速度を大きくすることによって延伸を行う。
以下、図1を用いてフィルムの延伸方法について説明する。本実施形態において、フィルム4を搬送するために、入口側の延伸ロール1および出口側の延伸ロール2が、距離を隔てて配置されている。また、延伸ロール1においてフィルム4を挟持するために、ニップロール3が延伸ロール1に近接して設けられ、同様に、延伸ロール2においてフィルム4を挟持するために、ニップロール9が延伸ロール1に近接して設けられている。これにより、フィルム14は、挟持部5および挟持部6において挟持されている。なお、ニップロール3及びニップロール9の配置の詳細については後述する。
本実施形態において、フィルム4は延伸ロール1から延伸ロール2へと搬送されることになるが、延伸ロール1から延伸ロール2までの経路は、図1に示すように延伸ロール1および延伸ロール2の共通接平面とほぼ一致する。本実施形態では、フィルム4が延伸ロール1の回転軸と延伸ロール2の回転軸とを含む平面と交わらないように(換言すればS字状にならないように)、フィルム4を延伸ロール1および延伸ロール2と接して配置している。この場合、延伸ロール1および延伸ロール2を、ともにフィルム14の搬送方向となるよう、同方向に回転させることになる。
ここで、図1に示すように、フィルム4が延伸ロール1と接する領域を接触領域7とし、フィルム4が延伸ロール2と接する領域を接触領域8とする。このとき、ニップロール3は、接触領域7の延伸ロール2側の端部にてフィルム4を挟持するように配置し、また、ニップロール9は、接触領域8の延伸ロール1側の端部にてフィルム4を挟持するように配置する。
このように配置することで、挟持部5は接触領域7の延伸ロール2側の端部にくることになり、挟持部6は接触領域8の延伸ロール1側の端部にくることになる。フィルム4は挟持部5と挟持部6との間で延伸されるため、上記のように配置すれば、フィルム4が延伸される部分(すなわち、挟持部5と挟持部6との間)において、フィルム4と延伸ロール1及び/又は延伸ロール2とが接触することはない。従って、フィルム4と延伸ロール1及び/又は延伸ロール2との間における滑りによって、フィルム4に傷が生じるのを防止することができる。
また、挟持部5と挟持部6との間隔を間隔L、延伸ロール1の半径をR1、延伸ロール2の半径をR2とする。ここで、延伸ロール1・2の配置から、間隔Lは必然的に以下の式を満たす。
L>R1+R2
一方、間隔Lが延伸ロール1の半径と延伸ロール2の半径との和の10倍よりも長い場合、延伸中にフィルムが冷えてしまいフィルムが破断しやすくなる等、安定して延伸することができない。また、縦延伸工程が長くなってしまうため、設備費が高額となってしまう等の問題が生じる。従って、間隔Lは、延伸ロール1の半径と延伸ロール2の半径との和の10倍よりも短いことが好ましい。すなわち、以下の関係を満たすように間隔Lを設定することが好ましい。
L<10×(R1+R2)
次に延伸ロール1及び延伸ロール2の回転速度について説明する。ロール縦延伸法では回転速度の差によってフィルム4を延伸するので、延伸ロール2の回転速度が延伸ロール1よりも大きくなるよう設定されている。ここで、フィルムの延伸倍率は、低速で回転するロールと高速で回転するロールとの線速度の比で定義される。すなわち、延伸倍率は以下の式で表される。
(延伸倍率)=(高速ロールの線速度)/(低速ロールの線速度)
ここで、好ましい延伸倍率は延伸温度にも依存するが、約1.1倍以上約3倍以下の範囲で選択されることが好ましく、約1.3倍以上約2.5倍以下がより好ましく、約1.5倍以上約2.3倍以下が特に好ましい。例えば、延伸倍率が約1.1倍以下である場合、フィルムは延伸工程にて実質的に殆ど延伸されていないため、フィルムの機械的特性を充分に改善することができない。これにより、延伸後のフィルムはすぐに割れてしまう。また、延伸倍率が約3倍以上である場合は、延伸前のフィルムが厚くなりすぎてしまう。例えば、光学用途に好適なフィルムとして厚み40μmの延伸後フィルムを製造する際、延伸倍率が約3.5倍であるとすると、延伸前フィルムの厚みは500μmにする必要がある。すなわち、上記押出工程にて500μmの延伸前フィルムを製造する必要がある。しかしながら、このようなフィルムは引取・巻取処理の際に割れてしまう。
また、上記の延伸工程によって得られたフィルムの厚みは、約10μm以上約200μm以下であることが好ましく、約20μm以上約150μm以下であることがより好ましく、約30μm以上約100μm以下であることがさらに好ましい。200μmよりも厚いフィルムを延伸工程によって得るためには、未延伸の原料フィルムとして200μmを越すフィルムが必要となり、それを用いる場合には、フィルムの冷却が不均一になり、光学的均質性などが低下してしまう。また、これより薄いフィルムを成形すると、延伸倍率が過大になり、ヘイズが悪化するなどの弊害がある。
上記の延伸工程によって得られたフィルムの光線透過率は、85%以上が好ましく、88%以上がより好ましい。また、フィルムのヘイズは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
上記の延伸工程によって得られたフィルムは、一軸延伸フィルムとして最終製品としてもよいし、さらに延伸工程を組み合わせることによって二軸延伸フィルムとしてもよい。また、最終製品として使用する前に各種加工を行うことによって、種々の用途に使用することもできる。特に優れた光学的均質性、透明性、低複屈折性などを利用して光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや位相差フィルムあるいは透明導電フィルムなど液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に好適に用いることができる。
上記の工程によって延伸したフィルムは、必要によりフィルムの片面あるいは両面に表面処理を行ってもよい。すなわち、本発明にかかる製造方法は、延伸フィルムに対して表面処理を施す表面処理工程が含まれていてもよい。表面処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射、またはアルカリ処理などが挙げられる。特に、フィルム表面にコーティング加工等の表面加工が施される場合や、粘着剤により別のフィルムがラミネートされる場合には、相互の密着性を上げるための手段として、フィルムの表面処理を行うことが好ましい。この場合、コロナ処理が特に好適な方法である。
また、本発明の光学用フィルムの表面には、必要に応じハードコート層などのコーティング層を形成することもできる。すなわち、本発明にかかる製造方法には、表面コート工程が含まれていてもよい。なお、上記表面処理方法や表面コート方法の具体的な条件等については特に限定されるものではなく、本発明の技術分野で公知の条件を採用することができる。
〔フィルムの延伸方法2〕
本実施形態では、上述の〔フィルムの延伸方法1〕の変形例を説明する。なお、本実施形態は、上述の〔フィルムの延伸方法1〕と以下の点で異なっており、それ以外については同じである。
本実施形態では、図2又は図3に示すように、フィルム4が延伸ロール1の中心と延伸ロール2の中心とを結ぶ線分と交わるように(換言すればS字状になるように)、フィルム4を延伸ロール1および延伸ロール2と接して配置する。そして、延伸ロール1および延伸ロール2を、ともにフィルム14の搬送方向となるよう、互いに逆方向に回転させる。この場合においても、ニップロール3及びニップロール9は、挟持部5が接触領域7の延伸ロール2側の端部となり、かつ、挟持部6が接触領域8の延伸ロール1側の端部となるように配置する。
また、挟持部5と挟持部6との間隔を間隔L、延伸ロール1の半径をR1、延伸ロール2の半径をR2とすると、延伸ロール1および延伸ロール2は、間隔Lが以下の関係を満たすように配置されることが好ましい。
L>R1+R2
すなわち、フィルム4が延伸ロール1と接する部分と、フィルム4が延伸ロール2と接する部分との間隔が、延伸ロール1の半径と延伸ロール2の半径との和よりも大きくなるように、上記2つの延伸ロールを配置する。これにより、フィルム4の延伸部分を充分にとることができ、ひいては光学的な均質性が得られる。
なお、上述の〔フィルムの延伸方法1〕と〔フィルムの延伸方法2〕とでは、〔フィルムの延伸方法1〕の方が好ましい。これは、〔フィルムの延伸方法1〕では2対の延伸ロール及びニップロールを平行移動した状態で配置するため、製造装置がコンパクトになり、かつ、レイアウトの変更がしやすいことによる。
〔得られる光学用フィルム〕
本発明にかかる製造方法により得られる光学用フィルムは、傷がなく外観美麗であり、かつ、ハンドリング性、厚み精度および光学特性に優れ、光学用途に好適なフィルムとなっている。具体的には、傷の無さについては、後述する実施例に記載するように、特定条件下での目視による観察、濁度計による全光線透過率およびフィルム濁度等により評価することができる。同様に、ハンドリング性は耐揉疲労により、フィルムの厚み精度は特定条件に基づく厚みムラの算出から評価することができる。なお、光学用フィルムとしては上記評価の結果、傷が1つも存在しないものが適しており、さらに、全光線透過率が90%、ヘイズが0.3%以下、耐柔疲労が150回以上であるものが好ましい。
本発明にかかる光学フィルムの具体的な用途は特に限定されるものではないが、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや位相差フィルムあるいは透明導電フィルムなど液晶表示装置周辺の光学部材として好適に用いることができる。
特に、液晶表示装置の光学部品として、本発明にかかる光学用フィルムを用いる場合には、光学用フィルムの表面に対して、コーティング層を介して、または、介さずに、スパッタリング法等によりインジウムスズ酸化物系等の透明導電層を形成することができる。これによって、本発明にかかる光学用フィルムを、プラスチック液晶表示装置の電極基板やタッチパネルの電極基板として用いることが可能となる。
本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法は次の通りである。
(1)フィルム外観検査
フィルムから、TD方向に長さ500mm、MD方向に長さ500mmのサンプルを2枚切り出し、暗室にてデスクスタンド(ナショナル製SQ948H、蛍光灯27W)の光を照射し、フィルムの傷の数を目視により評価した。
(2)フィルム全光線透過率
フィルムから50mm×50mmのサイズの試験片を切り出した。この試験片を、日本電色工業製濁度計300Aを用いて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の条件下で、JIS K7105に準じて測定した。
(3)フィルム濁度(ヘイズ)
日本電色工業製濁度計300Aを用いて、温度23℃±2℃、湿度50%±5%の条件下で、JIS K7136に準じて測定した。
(4)フィルム厚みむら
フィルムから、TD方向に長さ300mm、MD方向に長さ50mmのサンプルを切り出し、アンリツ製接触式連続厚み計KB601Bを用いて、TD方向全幅の厚みを測定した。そして下記の式を用いて、測定した厚みから目標とするフィルム厚み40μmに対しする厚みむらを求めた。
(厚みむら)={(最大厚み)−(最小厚み)}/2
(5)耐揉疲労
東洋精機製作所社製、MIT耐揉疲労試験機(FOLDING ENDURANCE TESTER)D型を使用し、JIS C5016に準拠して測定した。尚、測定は、幅15mm、長さ200mm、平均厚み50±5μmの形状のサンプルを使用し、135°折り曲げ(R=0.38)の条件で行った。また結果のMD値とは、MD方向に折り曲げたときの数値を示す。
(製造例1)
アクリル酸エステル系樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMAA)樹脂を、イミド化剤であるモノメチルアミンによりイミド化し、イミド化PMAA樹脂を製造した。この、イミド化PMAA樹脂は、実施形態の〔フィルムの組成〕に記載した一般式(1)で表される単位と一般式(2)で表される単位とが共重合したイミド樹脂に相当する。得られたイミド化樹脂を押出機にてペレットにし、得られたペレットを100℃で5時間乾燥した後、40mm単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて240℃で押出し、厚み150μmのフィルムを得た。
(製造例2)
ポリメタクリル酸メチル‐スチレン共重合体(MS)樹脂を、イミド化剤であるモノメチルアミンによりイミド化し、イミド化MS樹脂を製造した。このイミド化MS樹脂は、実施形態の〔フィルムの組成〕に記載した一般式(1)で表される単位と一般式(2)で表される単位と一般式(3)で表される単位とが共重合したイミド樹脂に相当する。得られたイミド化樹脂を押出機にてペレットにし、得られたペレットを140℃で5時間乾燥した後、40mm単軸押出機と400mm幅のTダイとを用いて240℃で押出し、厚み150μmのフィルムを得た。
〔実施例1〕
2本の延伸ロールと、上述の〔フィルムの延伸方法1〕で説明したように配置した2本のニップロールとを有するロール縦延伸機を用意した。すなわち、フィルムが2つの延伸ロールの回転軸を含む平面と交わらないように(換言すればS字状にならないように)フィルム及び延伸ロールを配置し、挟持部間でフィルムが延伸ロールと接することがないようにニップロールを配置した。そして、2つの延伸ロールを、ともにフィルムの搬送方向となるよう、互いに同方向に回転させた。また、延伸ロールの半径はそれぞれ100mmであり、間隔Lを300mmとした。このロール縦延伸機を用いて、製造例1のフィルムを、延伸温度120℃、延伸倍率1.9倍の条件にて縦延伸した。次に、縦延伸フィルムをテンターに導き、延伸温度130℃、延伸倍率2.1倍の条件にて横延伸した。そして、フィルムの耳をトリミングした後、厚み40μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムは、傷の数がゼロ、光線透過率は91.6%、ヘイズは0.3%、厚みムラは2μmであった。また、耐揉疲労はMD方向が220回、TD方向が210回であった。このように、得られたフィルムは、傷がなく外観美麗であり、かつ、ハンドリング性、厚み精度および光学特性に優れるフィルムであった。
〔実施例2〕
実施形態にて説明した間隔Lが1000mmとなるように延伸ロールを配置する以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムは、傷の数がゼロ、光線透過率は92.1%、ヘイズは0.3%、厚みムラは2μmであった。また、耐揉疲労はMD方向が222回、TD方向が197回であった。このように、得られたフィルムは、傷がなく外観美麗であり、かつ、ハンドリング性、厚み精度および光学特性に優れるフィルムであった。
〔実施例3〕
製造例2のフィルムを用い、かつ、縦延伸の延伸温度を162℃、横延伸の延伸温度を175℃とした以外は、実施例1と同様の方法で二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムは、傷の数がゼロ、光線透過率は91.7%、ヘイズは0.3%、厚みムラは2μmであった。また、耐揉疲労はMD方向が251回、TD方向が237回であった。このように、得られたフィルムは、傷がなく外観美麗であり、かつ、ハンドリング性、厚み精度および光学特性に優れるフィルムであった。
〔比較例1〕
製造例1のフィルムについて、延伸を行わずに性能を評価した。得られたフィルムは、傷の数がゼロ、光線透過率は91.3%、ヘイズは0.3%、厚みムラは2μmであった。しかし、耐揉疲労はMD方向が2回、TD方向が3回であり、得られたフィルムは、光学特性および厚み精度には優れるが、ハンドリング性が著しく劣るフィルムであった。
〔比較例2〕
2本の延伸ロールと、上述の背景技術で説明したように配置した2本のニップロールとを有するロール縦延伸機を用意した。すなわち、フィルムが2つの延伸ロールの回転軸を含む平面と交わるように(換言すればS字状になるように)配置し、挟持部間でフィルムが延伸ロールと接するようにニップロールを配置した。そして、2つの延伸ロールを、ともにフィルムの搬送方向となるよう、互いに逆方向に回転させた。また、延伸ロールの半径はそれぞれ100mmであり、間隔Lを50mmとした。このロール縦延伸機を用いて、製造例1のフィルムを、延伸温度120℃、延伸倍率1.9倍の条件にて縦延伸した。次に、縦延伸フィルムをテンターに導き、延伸温度130℃、延伸倍率2.1倍の条件にて横延伸した。そして、フィルムの耳をトリミングした後、厚み40μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムは、光線透過率は90.7%、ヘイズは0.3%、厚みムラは2μm、耐揉疲労はMD方向が232回、TD方向が212回であったが、傷がフィルム全面に無数に発生していた。このように、得られたフィルムは、ハンドリング性、厚み精度に優れるが、多数の傷を有し外観が著しく劣るフィルムであった。
〔比較例3〕
2本の延伸ロールと、上述の背景技術で説明したように配置した2本のニップロールとを有するロール縦延伸機を用意した。すなわち、フィルムが2つの延伸ロールの回転軸を含む平面と交わるように(換言すればS字状になるように)配置し、挟持部間でフィルムが延伸ロールと接触するようにニップロールを配置した。そして、2つの延伸ロールを、ともにフィルムの搬送方向となるよう、互いに逆方向に回転させた。なお、延伸ロールの半径、間隔Lを含むその他の条件は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムは、光線透過率は91.7%、ヘイズは0.3%、厚みムラは2μm、耐揉疲労はMD方向が209回、TD方向が198回であったが、短い傷がフィルム全面に無数に発生していた。このように、得られたフィルムは、ハンドリング性、厚み精度に優れるが、多数の傷を有し外観が著しく劣るフィルムであった。
〔比較例4〕
厚み40μmの二軸延伸フィルムを、約3.5倍の延伸倍率によって得るために、原反厚み(延伸前フィルムの厚み)を500μmとする以外は、製造例1と同様の方法で原反(延伸前フィルム)を製造した。
しかしながら、フィルムの引取処理の際にフィルム端部からのフィルム割れが頻発し、厚み500μmの原反を得ることはできなかった。
本発明の光学用フィルムの製造方法によれば、傷がなく外観美麗であり、かつ、ハンドリング性、厚み精度、および光学特性に優れ、光学用途に好適なフィルムを製造できる。従って、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや位相差フィルムあるいは透明導電フィルムなど液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に好適に用いることができる。
本発明の一実施形態を示すものであり、ロール縦延伸の方法を示す概略図である。 本発明の他の実施形態を示すものであり、ロール縦延伸の方法を示す概略図である。 本発明の他の実施形態を示すものであり、ロール縦延伸の方法を示す概略図である。 従来の技術を示すものであり、ロール縦延伸の方法を示す概略図である。
符号の説明
1 延伸ロール
2 延伸ロール
3 ニップロール
4 フィルム
5 挟持部
6 挟持部
7 接触領域
8 接触領域
9 ニップロール

Claims (6)

  1. 少なくとも非晶性の熱可塑性樹脂からなるフィルムに対して、第1延伸ロール及びこれに近接する第1ニップロールと、第2延伸ロール及びこれに近接する第2ニップロールとを用いてロール縦延伸処理を行う延伸工程を含む光学用フィルムの製造方法において、
    上記第1延伸ロール及び第1ニップロールによって上記フィルムが挟まれる部位を第1挟持部とし、上記第2延伸ロール及び第2ニップロールによって上記フィルムが挟まれる部位を第2挟持部とした場合、
    上記延伸工程では、上記第1挟持部の位置が、上記フィルムと上記第1延伸ロールとの接触領域における、上記第2延伸ロール側の端部となるとともに、上記第2挟持部の位置が、上記フィルムと上記第2延伸ロールとの接触領域における、上記第1延伸ロール側の端部となるように、上記各ロールを配置してロール縦延伸処理を行うことを特徴とする、光学用フィルムの製造方法。
  2. 上記第1延伸ロールの回転方向及び上記第2延伸ロールの回転方向が、ともに上記フィルムの搬送方向と同じであり、かつ、上記第1延伸ロールの回転方向が、上記第2延伸ロールの回転方向と同じであることを特徴とする、請求項1に記載の光学用フィルムの製造方法。
  3. 上記フィルムと上記第1延伸ロールとの接触領域と、上記フィルムと上記第2延伸ロールとの接触領域との間隔が、上記各延伸ロールの半径の和以上であり、かつ、上記各延伸ロールの半径の和の10倍以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学用フィルムの製造方法。
  4. 上記非晶性の熱可塑性樹脂として、イミド樹脂又はイミド樹脂を含有する樹脂組成物が用いられることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の光学用フィルムの製造方法。
  5. 上記イミド樹脂が、下記の一般式(1)で表される単位と、下記の一般式(2)で表される単位及び/又は(3)で表される単位と、を有するイミド樹脂であることを特徴とする、請求項4に記載の光学用フィルムの製造方法。
    Figure 2006130884
    (ただし、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基示す。)
    Figure 2006130884
    (ただし、RおよびRは、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
    Figure 2006130884
    (ただし、Rは、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、Rは、炭素数5〜15の芳香環を含む置換基を示す。)
  6. 上記2つの延伸ロールによるロール縦延伸処理の延伸倍率が約1.1倍以上約3倍以下であることを特徴とする、請求項4または5に記載の光学用フィルムの製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008015000A (ja) * 2006-07-03 2008-01-24 Japan Steel Works Ltd:The 偏光フィルムの湿式延伸製造方法及びその装置
JP2010208078A (ja) * 2009-03-09 2010-09-24 Kaneka Corp アクリル樹脂系フィルムの製造方法
JP2010271690A (ja) * 2009-04-23 2010-12-02 Nippon Shokubai Co Ltd 位相差フィルムの製造方法
JP2011245624A (ja) * 2010-05-21 2011-12-08 Kaneka Corp 光学用フィルムの製造方法

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