JP2006127922A - 燃料電池用金属部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の燃料電池用金属部材は、金属部材の表面全体において表面加工変質層が除去されていることを特徴とする。また、本発明の燃料電池用金属部材の製造方法は、該金属部材の表面全体において表面加工変質層を除去する工程を含むことを特徴とする。
【選択図】 図5
Description
なかでも、固体高分子膜を2種類の電極で挟み込み、更に、これらの部材をセパレータで挟んだ構成の固体高分子電解質形燃料電池は、100℃以下の低温で動作可能であり、小型化しやすく、短時間で起動する長所を備えているため注目され、自動車、家庭用及び携帯機器用の燃料電池として開発が進められている。
第1図は、従来より用いられている固体高分子電解質形燃料電池の単電池の基本構成を模式的に示す部分断面図である。第1図において、1は固体高分子電解質膜、2は燃料極、3は酸化剤極、4はセパレータ、5は反応ガス流路、6は触媒層、7は多孔質のガス拡散層、8は単位セル、10は単電池である。
第1図に示すように、固体高分子電解質形燃料電池の単電池は、固体高分子電解質膜1の両主面に電極となる燃料極2と酸化剤極3を密接して配置して単位セル8を構成し、さらにその両外面にセパレータ4を配して単電池10を構成している。
セパレータ4は、燃料極2に燃料ガスを供給する反応ガス流路5と、酸化剤極3に酸化剤ガスを供給する反応ガス流路5とを備え、反応ガス流路5は、燃料極2あるいは酸化剤極3に面するように配置している。
燃料極2と酸化剤極3は、ともに白金等からなる触媒層6とこれを支持する多孔質のガス拡散層7とからなり、それぞれの触媒層6を固体高分子電解質膜1に密着させて配置している。
固体高分子電解質膜1は、イオン交換基としてスルフォン酸基を持つパーフルオロカーボンスルフォン酸構造を持つ薄膜などが用いられ、分子中にプロトン(水素イオン)交換基を備えており、プロトン導電性電解質として機能する。
燃料極 : H2 → 2H+ + 2e- (1)
酸化剤極: 2H+ + (1/2)O2 + 2e- → H2O (2)
すなわち、燃料極2でセパレータから供給された水素を酸化反応させてプロトンと電子とを生成せしめ、プロトンについては固体高分子電解質膜中1を移動させて酸化剤極3に供給すると共に、電子についてはセパレータ4を介して外部回路に取り出す。一方、酸化剤極3では、固体高分子電解質膜中1を移動してきたプロトン、外部回路からセパレータ4を介して供給される電子、及びセパレータ4から供給された酸素あるいは空気を反応させるもので、燃料極2で外部回路に取り出した電子が電流として仕事をする。
第2図に示すように、燃料電池スタック20は、複数の単電池10を積層し、その外側に電気絶縁と熱絶縁の用を果たす絶縁シート11を配設したのち、エンドプレート12で挟み、皿ネジ13、ナット14を用いて締めつけ、加圧して保持されている。
第3図(a)は、燃料電池スタックにおけるセパレータの構成を模式的に示す側面図である。第3図(a)において、21は燃料ガスを供給するための反応ガス流路、22は酸化剤ガスを供給するための反応ガス流路、30はセパレータである。第3図(a)に示すように、セパレータ30は、一方の面には隣接する一方の単位セルに燃料ガスを供給するための反応ガス流路21が形成され、他方の面には隣接する他方の単位セルに酸化剤ガスを供給するための反応ガス流路22が形成されており、セパレータ面に沿って燃料ガスあるいは酸化剤ガスが供給される。
第3図(b)は、燃料電池スタックにおけるセパレータを一方の面から見た平面図である。第3図(b)において、23は反応ガス供給口、24は反応ガス排出口、25は反応ガス供給口連通孔、26は反応ガス排出口連通孔である。第3図(b)に示すように、セパレータ30は、その中央部に反応ガス流路21が配設されている。外部より供給される反応ガス、即ち水素等の燃料ガスあるいは空気等の酸化剤ガスは、上部に設けられた反応ガス供給口23より供給されて、反応ガス流路21を下側へと通流し、電気化学反応に寄与したのち、余剰のガスは下部に設けられた反応ガス排出口24より外部へと排出される。なお、反応ガス供給口連通孔25および反応ガス排出口連通孔26は、このセパレータ30に相対して配設されるセパレータへ通流される反応ガスの入口と出口に連通する孔で、これらの孔を通して通流することにより、積層された複数の単電池の各セパレータへ反応ガスが供給されることとなる。
改質反応:CH3OH + H2O → 3H2 +CO2 (3)
しかし、次のシフト反応により、微量のCOが燃料ガス中に混入する。
シフト反応:CO2 + H2 → CO + H2O (4)
燃料電池に供給される燃料ガス中のCO濃度が高いと、燃料電池の触媒として用いられる白金がCOによって被毒し、発電性能が低下したり、場合によっては発電不能になるという問題がある。特にCOによる被毒は低温ほど著しいため、作動温度を150℃以上の高温にすることによって、触媒に付着したCOを解離させ、COによる被毒の影響を低減することが検討されている。
(第1実施形態)
第4図(f)は本発明による固体高分子電解質形燃料電池用のセパレータの一実施例を示す部分断面図で、第4図(a)〜第4図(f)はその製造工程断面図である。第4図において、31は金属板材、31Aはセパレータ用の金属基体、34は溝部、32はレジストパターン、33はレジストの開口、35は貴金属めっきである。
この実施形態における固体高分子電解質形燃料電池用のセパレータは、第4図(f)に示すように、その両面に溝部34を有する金属基体31Aの表面部全体に、めっき等の手段で貴金属を被覆している。尚、溝部34の形状については、第4図(f)に示す形状は一例で、これに限らない。また、特開2004−47397号公報に開示されているような平面型の燃料電池用セパレータの場合には、溝部に換えて貫通孔が形成される。
以下、簡単に、第4図(f)に示すセパレータの製造工程の一例を第4図(a)〜第4図(f)に基づき説明する。先ず、セパレータ作製用の金属板材31を用意する(第4図(a))。金属板材31の材質としては、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、42ニッケル−鉄合金、冷間圧延鋼板等が挙げられ、機械的強度や加工性、重量等により、適宜選択する。次いで、金属板材31の表面部全体を表面加工変質層が除去されるまでエッチングする(第4図(b))。表面加工変質層の厚さは、ステンレスの圧延鋼板では、1μm〜数十μm程度と考えられる。この工程で用いるエッチング液としては、塩化第二鉄、硫酸、塩酸、フッ酸(過酸化水素を添加したフッ酸過水、アンモニアを添加した緩衝フッ酸でも良い)等が挙げられ、金属板材として選択した材質により適宜選択する。次いで、加工形状にあわせ、レジストパターン32を形成する(第4図(c))。レジストとしては、所望の解像性を有し、処理性の良いものであれば特に限定はされない。次に、レジストパターン32を耐エッチングマスクとして、金属板材31をエッチングし、所望の溝部34を形成する(第4図(d))。この工程で用いるエッチング液としては、塩化第二鉄、硫酸、塩酸、フッ酸(過酸化水素を添加したフッ酸過水、アンモニアを添加した緩衝フッ酸でも良い)等が挙げられ、金属板材として選択した材質により適宜選択する。次いで、所定の剥離液にてレジストパターン32を除去して、セパレータ用の金属基体31Aを得る(第4図(e))。次いで、必要に応じ、洗浄処理、めっき前処理等を施した後、金属基体31Aの表面部全体に貴金属めっき35を施す(第4図(f))。貴金属めっきとしては、金、白金、ルテニウム等のめっきが挙げられる。
また、結晶粒が微細化された加工変質層上に貴金属めっきを施すと、めっきの結晶粒も微細なものとなり多くの結晶粒界を持ってしまう。セパレータを使用する温度範囲内では、金属の熱拡散は主に結晶粒界を通じて起こるため、多くの結晶粒界を持った貴金属めっき中には金属板材の成分が拡散しやすく、高温時の耐腐食性が劣る。加工変質層を除去することで結晶粒界の少ない、結晶粒の大きな貴金属めっきを施すことができ、下地金属の拡散を抑制することが出来る。
第5図(f)は本発明による固体高分子電解質形燃料電池用セパレータのもう一つの実施例を示す部分断面図で、第5図(a)〜第5図(f)はその製造工程断面図である。第5図において、41は金属板材、41Aはセパレータ用の金属基体A、41Bはセパレータ用の金属基体B、44は溝部、42はレジストパターン、43はレジストの開口、45は貴金属めっきである。
この実施形態における固体高分子電解質形燃料電池用のセパレータの構成は、第4図(f)と同様であり、第5図(f)に示すように、その両面に溝部44を有する金属基体41Aの表面部全体に、めっき等の手段で貴金属を被覆しており、溝部44の形状については、第5図(f)に示す形状に限られない。
以下、簡単に、第5図(f)に示すセパレータの製造工程の一例を第5図(a)〜第5図(f)に基づき説明する。先ず、セパレータ作製用の金属板材41を用意する(第5図(a))。金属板材41の材質としては、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、42ニッケル−鉄合金、冷間圧延鋼板等が挙げられ、機械的強度や加工性、重量等により、適宜選択する。次いで、加工形状にあわせ、レジストパターン42を形成する(第5図(b))。レジストとしては、所望の解像性を有し、処理性の良いものであれば特に限定はされない。次に、レジストパターン42を耐エッチングマスクとして、金属板材41をエッチングし、所望の溝部44を形成する(第5図(c))。この工程で用いるエッチング液としては、塩化第二鉄、硫酸、塩酸、フッ酸(過酸化水素を添加したフッ酸過水、アンモニアを添加した緩衝フッ酸でも良い)等が挙げられ、金属板材として選択した材質により適宜選択する。次いで、所定の剥離液にてレジストパターン42を除去し、セパレータ用の金属基体B41Bを得る(第5図(d))。次に、このセパレータ用の金属基体B41Bの表面部全体を表面加工変質層が除去されるまでエッチングを行い、セパレータ用の金属基体A41Aを得る(第5図(e))。表面加工変質層の厚さは、ステンレスの圧延鋼板では、1μm〜数十μm程度と考えられる。この工程で用いるエッチング液としては、塩化第二鉄、硫酸、塩酸、フッ酸(過酸化水素を添加したフッ酸過水、アンモニアを添加した緩衝フッ酸でも良い)等が挙げられ、金属板材として選択した材質により適宜選択する。次いで、必要に応じ、洗浄処理、めっき前処理等を施した後、金属基体A41Aの表面部全体に貴金属めっき45を施す(第5図(f))。
実施例1は、第1実施形態のセパレータを作製する例で、金属板材をセパレータ形状に加工する前に、金属板材の表面部全体をエッチングすることにより、セパレータ用の金属基体の表面加工変質層を除去する例である。まず、セパレータ用の金属板材としてステンレス板(SUS304、0.6mm厚)を用意し、脱脂洗浄、水洗を行なった。脱脂洗浄は、50℃の10%パクナFD−1(ユケン工業)を用いて30秒間洗浄した。
次に、ステンレス板の表面全体をエッチングし、表面加工変質層を除去した後、水洗、乾燥を行った。この際のエッチング条件は、30℃の10%塩化第二鉄を用いて1分間行った。この時のエッチング量は、約2.0μmであった。
次に、ステンレス板の両面に、カゼインに重クロム酸アンモニウムを混合した感光材料からなる厚さ20μmのフォトレジスト膜を形成し、その両面から、セパレータとしての反応ガス流路の形状が形成してあるパターンを用い、5KW高圧水銀灯によって60秒間露光し、40℃の温水をスプレーして現像し、後に行なうエッチングに対して耐性のあるレジスト膜を形成した。
その後、金属板材の両側から70℃に加熱した塩化第二鉄をシャワーリングして、所定の深さまでエッチングが進行した時点でエッチング加工を完了とした。
これを80℃の110%苛性ソーダ水溶液を用いてシャワーリングしてレジストを剥離し、次いで洗浄処理、乾燥を行ない、目的とする反応ガス流路の形状を有するステンレス板が、セパレータ用の金属基体として得られた。
このようにして得られたセパレータ用の金属基体の表面全体に金めっきを行った。この際のめっき条件は、60℃のテンペレジストK−91S(日本高純度化学)を用いて、電流密度0.4A/dm2で5分間のめっきを行った。
このようにして作製されたセパレータについて、耐熱性の評価を行い、その結果を図6(a)に示した。この耐熱性の評価は、セパレータを大気中において125℃から250℃の各温度で4時間加熱したときのめっき表面に析出した元素の量をXPS(光電子分光分析)にて、以下の条件で測定した。
測定装置:アルバックファイ社製のQuantum2000
X線源:AlKα単色光
X線ビーム系:200μm
X線出力:30W
光電子取込み角:45°
図6(a)の結果から、このセパレータは、225℃の高温にしても金属板材の成分である鉄の析出は見られなかった。
実施例において、金属板材又は金属基体の表面部全体のエッチングを行わない従来のセパレータについて、実施例と同様の耐熱性評価を行い、その結果を図6(b)に示した。この結果から、比較例のセパレータは、175℃以上の熱をかけると金属板材の成分である鉄の析出が見られた。
2・・・燃料極
3・・・酸化剤極
4,30・・・セパレータ
5・・・反応ガス流路
6・・・触媒層
7・・・ガス拡散層
8・・・単位セル
10・・・単電池
11・・・絶縁シート
12・・・エンドプレート
13・・・皿ネジ
14・・・ナット
20・・・燃料電池スタック
21・・・燃料ガスを供給するための反応ガス流路
22・・・酸化剤ガスを供給するための反応ガス流路
23・・・反応ガス供給口
24・・・反応ガス排出口
25・・・反応ガス供給口連通孔
26・・・反応ガス排出口連通孔
31,41・・・金属板材
31A・・・セパレータ用の金属基体
32,42・・・レジストパターン
33,43・・・レジストの開口
34,44・・・溝部
35,45・・・貴金属めっき
41A・・・セパレータ用の金属基体A
41B・・・セパレータ用の金属基体B
Claims (7)
- 燃料電池用の金属部材であって、該金属部材の表面全体において表面加工変質層が除去されていることを特徴とする燃料電池用金属部材。
- 請求項1に記載の燃料電池用金属部材において、該金属部材が、ステンレス、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、42ニッケル−鉄合金、冷間圧延鋼板のいずれか一つ、又は、これらの合金からなることを特徴とする燃料電池用金属部材。
- 請求項1又は請求項2に記載の燃料電池用金属部材において、表面加工変質層が除去された金属部材の表面に貴金属の被覆層が形成されていることを特徴とする燃料電池用金属部材。
- 請求項3に記載の燃料電池用金属部材において、前記貴金属の被覆層は、金、白金、ルテニウムのいずれか一つからなることを特徴とする燃料電池用金属部材。
- 請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の燃料電池用金属部材において、前記金属部材は、片面若しくは両面に溝部又は貫通孔が形成されたセパレータであることを特徴とする燃料電池用金属部材。
- 燃料電池用の金属部材の製造方法であって、該金属部材の表面全体において表面加工変質層を除去する工程を含むことを特徴とする燃料電池用金属部材の製造方法。
- 請求項6に記載の燃料電池用金属部材の製造方法において、前記表面加工変質層を除去する工程は、塩化第二鉄、硫酸、塩酸、フッ酸によるエッチング工程であることを特徴とする燃料電池用金属部材の製造方法。
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