JP2006117731A - 液晶性ポリエステル樹脂組成物、成形体、成形回路基板 - Google Patents

液晶性ポリエステル樹脂組成物、成形体、成形回路基板 Download PDF

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Abstract

【課題】衝撃強さやはんだ耐熱性をはじめとする機械的、熱的特性に優れ、しかも表面に金属層を形成するにあたって密着性に優れた液晶性ポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 液晶性ポリエステルと、表面にエポキシ基含有エチレン共重合体を付着させた無機フィラーとを含有して、液晶性ポリエステル樹脂組成物を調製する。無機フィラーの表面はエラストマライクなエネルギー吸収性能に優れたエポキシ基含有エチレン共重合体で被覆されており、無機フィラーと液晶性ポリエステルのマトリクスとの界面の接着性を向上できると共にこの界面でのエネルギー吸収能力を飛躍的に向上することができ、成形して得られた成形体の衝撃強さ等の機械的特性に加えて、はんだ耐熱性や熱変形温度などの耐熱特性を大きく改良することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶性ポリエステル樹脂組成物、及びこの液晶性ポリエステル樹脂組成物を用いて成形した成形体と成形回路基板に関するものである。
液晶性ポリエステルは、耐熱性や耐薬品性、低線膨張率、難燃性、機械的強度、弾性率などに優れ、さらには電気的特性にも優れているため、電子部品や機械部品等の広い分野で利用されている。特にエレクトロニクス分野で関連の深いはんだ耐熱性については、液晶性ポリエステルはプラスチックの中で最高の部類に位置する。
液晶性ポリエステルの特徴は、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートとは異なって、溶融状態でも分子の配向がみられ、配向した分子の絡み合いが少なく、わずかなせん断を受けるだけで一方向に配向して、液状でも結晶性を示すいわゆる液晶性を示すところにある。そして温度を下げても溶融状態における分子の配向がそのまま固定され、これによって例えば薄肉流動性などの成形加工性、強度や弾性率などの力学的特性、寸法安定性、耐熱性などの種々の優れた特性が発現されるものである。また成形加工性に優れることも相俟って、液晶性ポリエステルを成形して得られる成形体はMID(Molded Interconnect Device)などの立体回路基板として用いることも行なわれている。
一方、成形体のマトリックスとなる樹脂の機械物性、耐熱性等を改良するために、ガラス繊維、タルク、マイカ等の無機フィラーを樹脂に配合することが行なわれている。このような無機フィラーが配合された材料系では、樹脂と無機フィラーの界面における接着性が材料性能を決める最も重要な因子になる。そのため、樹脂と無機フィラーとを複合化する際に、両者の濡れ性を向上して樹脂と無機フィラーとの間に化学結合を生じさせ、接着性を向上させることが好適であり、そこで一般的には、無機フィラーをシラン系やチタネート系のカップリング剤で湿式表面処理を施すことが行なわれている。例えば、エポキシ樹脂に対してはエポキシシラン系カップリング剤が、ポリアミドに対してはアミノシラン系カップリング剤が界面接着性の向上に有効であることが知られている。
しかし、液晶性ポリエステルは耐熱性や耐薬品性に優れていることからわかるように、分子鎖が極めて剛直で直線状であり、化学的に極めて不活性であるため、無機フィラーを通常のカップリング剤で表面処理しても、液晶性ポリエステルと無機フィラーとの接着性を向上させる効果は期待することができない。例えば材料技術研究会発行「複合材料と界面」、162・169頁には、液晶性ポリエステルと同様な剛直性分子であるポリエステル繊維及びアラミド繊維への表面処理による接着性の改良は困難であることが報告されている。しかも液晶性ポリエステルはその成形加工温度が通常のカップリング剤の沸点を超えるため、無機フィラーをカップリング剤で処理していてもカップリング剤が熱分解してしまい、この点でも無機フィラーとの界面接着性を向上させることは難しかった。むしろ、カップリング剤の熱分解に伴なってガスが大量に発生するので、押出し成形によるペレタイジングや射出成形加工が困難になったり、あるいは成形加工が可能であっても成形体の外観や機械的強度に問題が生じるものであった。
また、液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して作製した成形体は、樹脂固有の分子剛直性と金型内流動時の分子配向により、成形体の表層部は特に高配向状態になる。しかし成形体の表面に電気回路を形成して成形回路基板を作製する場合、成形体の表面の高度に配向した液晶性ポリエステルがフィブリル化して容易に破壊されるので、電気回路の密着力を実用に供することができる程度に得ることは簡単なことではなかった。特に、ガラス繊維などの無機フィラーと液晶性ポリエステルとの界面接着性が十分でないために、フィブリル化破壊がより助長され、電気回路の密着力の問題が大きく生じるものであった。
また成形体に電気回路を形成して成形回路基板を作製するにあたっては、成形体の表面をプラズマ処理した後、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)で成形体の表面に金属層を形成し、レーザを用いて金属層の不要部分を除去して回路パターンを形成した後、回路パターンに電解めっきを施して所要厚みの電気回路を作製するという、1ショットレーザ薄膜除去法が望ましい。この方法では、エッチング処理を行なうことによって成形体の表面を粗面化し、粗面の凹凸への金属層の機械的投錨効果で密着力を得る2ショット法とは異なり、プラズマ処理によって金属層と樹脂の成形体との間に化学的結合を形成させ、これにより粗面化処理をすることなく平滑な成形体の表面に密着力の高い電気回路を形成することができるものであり、微細配線が可能になるものである。しかしこのようにプラズマ処理によって電気回路の密着性を向上させる場合、密着力は成形体の表層部の状態に直接的に影響されることになり、電気回路の密着力を高めるためには、上記のようにガラス繊維などの無機フィラーと液晶性ポリエステルとの界面の接着性を改良することが求められる。
そこで、液晶性ポリエステルの優れた耐熱性と機械的性質を保持しつつ、引張強度やウェルド強度を改良した液晶性ポリエステル樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、液晶性ポリエステルをマトリックスとする材料の衝撃強さや耐熱性の向上を目的として、無機フィラーの表面処理の方法が検討されている。例えば、衝撃強さを向上するために、イソシアネート基を末端に有するように無機フィラーの表面を処理する方法が提案されており(特許文献2参照)、また耐熱性向上のために、表面処理された無機フィラーに熱処理を行なう方法が提案されている(特許文献3参照)。
特許第3399120号公報 特開2002−363438号公報 特許第3524597号公報
特許文献1は、液晶性ポリエステルと、エポキシ基含有エチレン共重合体と、ガラス繊維からなる液晶性ポリエステル樹脂組成物に関するものであるが、強化材であるガラス繊維には表面処理等が施されておらず、衝撃強さや熱変形温度などの機械的特性や耐熱性は十分ではなく、液晶性ポリエステルの持つ潜在能力を十分に発現させたものとは言い難いものであった。
また特許文献2は、イソシアネート基と反応するアミノ基、エポキシ基、メルカプト基または水酸基などの官能基を有するカップリング剤で無機フィラーを表面処理した後、ポリイソシアネート化合物でさらに表面処理して、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基を上記官能基と反応させるなどの方法により、イソシアネート基を末端に有するよう無機フィラーを表面処理するようにしたものである。しかし、このように表面処理した無機フィラーを配合した熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体のアイゾット衝撃強さの改良効果はせいぜい5kJ/m程度に過ぎず、最大でも22kJ/m程度のアイゾット衝撃強さを得ることができるに過ぎないものであり、無機フィラーと樹脂との界面接着強度を十分に改良することができているとはいえない。従って、例えば携帯電話に搭載される部材など落下衝撃試験に耐えうる水準の成形体を得ることは難しい。
さらに特許文献3は、シラン系等のカップリング剤で無機フィラーを表面処理した後に、300℃以上の温度で10分〜10時間加熱処理し、このように処理した無機フィラーを芳香族液晶性ポリエステルと混練して得られる樹脂組成物に関するものある。このような処理によって成形体のはんだ耐熱性が70℃程度向上することが示されているが、はんだ耐熱性は最大でも290℃であって十分であるとは言い難く、鉛フリータイプの高温はんだディップ(温度約400℃)には耐えることはできないものであった。
従って、上記の特許文献1〜3の技術に基づく液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形体を成形回路基板に用いることは、耐衝撃性、耐熱性、回路密着性の観点から困難であった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、衝撃強さやはんだ耐熱性をはじめとする機械的、熱的特性に優れ、しかも表面に金属層を形成するにあたって密着性に優れた液晶性ポリエステル樹脂組成物及び成形体を提供することを目的とするものであり、さらに表面の粗面化を行なう必要なく回路密着性に優れた成形回路基板を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る液晶性ポリエステル樹脂組成物は、液晶性ポリエステルと、表面にエポキシ基含有エチレン共重合体を付着させた無機フィラーとを含有して成ることを特徴とするものである。
この発明によれば、無機フィラーの表面はエラストマライクなエネルギー吸収性能に優れたエポキシ基含有エチレン共重合体でよく被覆されており、無機フィラーと液晶性ポリエステルのマトリクスとの界面の接着性を向上できると共にこの界面でのエネルギー吸収能力を飛躍的に向上することができ、成形して得られた成形体の衝撃強さ等の機械的特性に加えて、はんだ耐熱性や熱変形温度などの耐熱特性を大きく改良することができるものである。しかも成形体の表層の靭性が向上し、表面に金属層を形成するにあたって金属層との密着性を向上することができるものである。
また請求項2の発明は、請求項1において、エポキシ基含有エチレン共重合体は、分子中に、エチレン単位ならびに不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を有するものであることを特徴とするものである。
この発明によれば、エポキシ基含有エチレン共重合体を組成物中に含有することによる耐熱性低下を防ぐことができるものである。
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、液晶性ポリエステルは、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を、式(1)で表されるイミダゾール化合物の存在下、エステル交換して重縮合することによって得られたものであることを特徴とするものである。
Figure 2006117731
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、炭素数1〜4のシアノアルキル基、炭素数1〜4のシアノアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアミノアルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、フェニルプロピル基、フォルミル基から選ばれる基を示す)
この発明によれば、液晶性ポリエステルをマトリクスとする成形体と金属層との密着性を向上する効果を高く得ることができるものである。
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、無機フィラーに対するエポキシ基含有エチレン共重合体の付着量は、0.1〜3質量%であることを特徴とするものである。
この発明によれば、エポキシ基含有エチレン共重合体の付着量を適正化することができ、衝撃強さ等の機械的特性や、はんだ耐熱性や熱変形温度などの耐熱特性を改良する効果を高く得ることができるものである。
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、液晶性ポリエステル100質量部に対してエポキシ基含有エチレン共重合体が2〜30質量部配合されたものであることを特徴とするものである。
この発明によれば、エポキシ基含有エチレン共重合体は液晶性ポリエステル中に数百nmサイズで微分散され、これにより無機フィラーの表面のエポキシ基含有エチレン共重合体と液晶性ポリエステルとの親和性が高めることができ、無機フィラーと液晶性ポリエステルの界面の接着性がより向上するものである。またエポキシ基含有エチレン共重合体の配合によって成形体の表層の靭性が向上し、表面に金属層を形成するにあたって金属層との密着性を向上することができるものであり、しかも成形体の耐熱性や、成形の際の流動性が低下することを防ぐことができるものである。
また請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、エポキシ基含有エチレン共重合体は、分子中に、エチレン単位を50〜98質量%ならびに不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を2〜50質量%含むものであることを特徴とするものである。
この発明によれば、エポキシ基含有エチレン共重合体を組成物中に含有することによる耐熱性低下を防ぐことができるものである。
また請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかにおいて、無機フィラーが、繊維径4〜15μm、アスペクト比5〜50の繊維状であることを特徴とするものである。
この発明によれば、使用する無機フィラーの形状・寸法を適正化することができ、金属層との密着性を確保しつつ、成形体にウェルドラインがあってもクラックが発生することを防ぐことができるものである。
本発明の請求項8に係る成形体は、請求項1乃至7のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して作製され、成形後に、液晶性ポリエステル樹脂の流動開始温度より20〜120℃低い温度で熱処理が施されたものであることを特徴とするものである。
この発明によれば、衝撃強さ等の機械的特性や、はんだ耐熱性や熱変形温度などの耐熱特性に優れた成形体を得ることができると共に、表面に金属層を形成するにあたって金属層との密着性が優れた成形体を得ることができるものである。
また請求項9の発明は、請求項8において、熱処理は不活性ガス雰囲気で行なわれるものであることを特徴とするものである。
この発明によれば、成形体の機械的特性や耐熱特性が低下することを防ぐことができるものである。
本発明の請求項10に係る成形回路基板は、請求項1乃至7のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して作製され、表面に電気回路が形成されて成ることを特徴とするものである。
この発明によれば、金属層に対する密着性の優れた表面に、粗面化を行なう必要なく高い密着性で電気回路を形成することができるものである。
本発明に係る液晶性ポリエステル樹脂組成物にあって、無機フィラーの表面はエラストマライクなエネルギー吸収性能に優れたエポキシ基含有エチレン共重合体で被覆されており、無機フィラーと液晶性ポリエステルのマトリクスとの界面の接着性を向上できると共にこの界面でのエネルギー吸収能力を飛躍的に向上することができ、成形して得られた成形体の衝撃強さ等の機械的特性に加えて、はんだ耐熱性や熱変形温度などの耐熱特性を大きく改良することができるものである。しかも成形体の表層の靭性が向上し、表面に金属層を形成するにあたって金属層との密着性を向上することができるものである。
また本発明に係る成形体にあっては、衝撃強さ等の機械的特性や、はんだ耐熱性や熱変形温度などの耐熱特性に優れた成形体を得ることができるものであり、しかも熱処理によって、金属層との密着性が優れた成形体を得ることができるものである。
また本発明に係る成形回路基板にあっては、衝撃強さ等の機械的特性や、はんだ耐熱性や熱変形温度などの耐熱特性が優れ、しかも金属層に対する密着性が優れた成形体の表面に、粗面化を行なう必要なく高い密着性で電気回路を形成することができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明において液晶性ポリエステルとしては、特に限定されるものではないが、光学的異方性を有する溶融相を形成する芳香族骨格からなるものであり、芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも一つのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物でアシル化したアシル化物と、芳香族ジカルボン酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも一つとを、エステル交換して重縮合することによって得られたものが好ましい。
ここで、上記の芳香族ジオールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン、アセトキシハイドロキノン、ニトロハイドロキノン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、ビス−(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等を挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。そしてこれらの中でも、4,4’−ジヒドロキシビフェニル (後記で(C1)と略記)、ハイドロキノン(後記で(C2)と略記)、レゾルシン(後記で(C3)と略記)、2,6−ジヒドロキシナフタレン(後記で(C4)と略記)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(後記で(C5)と略記)、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(後記で(C6)と略記)が、入手の容易性のうえから好ましい。
また上記の芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、パラヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−4−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−カルボキシジフェニルエーテル、2,6−ジクロロ−パラヒドロキシ安息香酸、2−クロロ−パラヒドロキシ安息香酸、2,6−ジフルオロ−パラヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルカルボン酸等を挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。そしてこれらの中でも、パラヒドロキシ安息香酸(後記に(A1)と略記)、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸(後記に(A2)と略記)が入手の容易性のうえから好ましい。
さらに上記の芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、メチルテレフタル酸、メチルイソフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルケトン−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジカルボン酸等を挙げることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。そしてこれらの中でも、テレフタル酸(後記に(B1)と略記)、イソフタル酸(後記に(B2)と略記)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(後記に(B3)と略記)が入手の容易性のうえから好ましい。
また、芳香族ジオールや芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基と反応してアシル化する脂肪酸無水物としては、特に限定されるものではないが、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸等を用いることができる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いても良い。これらのなかでも、価格と取り扱い性の点で、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、より好ましくは、無水酢酸である。
上記のように芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも一つのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物でアシル化したアシル化物と、芳香族ジカルボン酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも一つとを、エステル交換して重縮合させるにあたって、この反応を式(1)で表されるイミダゾール化合物の存在下で行なわせるようにするのが好ましい。イミダゾール化合物の存在下で反応させて得られる液晶性ポリエステルは、金属との密着性がより向上するものである。
Figure 2006117731
(式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、炭素数1〜4のシアノアルキル基、炭素数1〜4のシアノアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアミノアルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、フェニルプロピル基、フォルミル基から選ばれる基を示す)
この式(1)で表されるイミダゾール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−4−エチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−エチル−2−エチルイミダゾール、1−エチル−2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、4−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール等を挙げることができる。
式(1)で表されるイミダゾール化合物として特に好ましいのは、式(1)中のRが炭素数1〜4のアルキル基、R〜Rが水素原子であるイミダゾール化合物である。さらに入手の容易性の点で、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾールが最も好ましい。
そして上記のように芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも一つのフェノール性水酸基を脂肪酸無水物でアシル化したアシル化物と、芳香族ジカルボン酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも一つとを、エステル交換して重縮合させるにあたって、前者と後者の仕込み量は、前者の芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェノール性水酸基の量が、後者の芳香族ジカルボン酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基に対する水酸基の当量数で0.8〜1.2となるように設定するのが好ましい。またエステル交換の反応は、130〜400℃の範囲で、0.1〜50℃/分の割合で昇温しながら行なわせることが好ましく、150〜350℃の範囲で、0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら行なわせることがより好ましい。この反応は、例えば回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
ここで、上記の芳香族ジオールや芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物としては、反応器内でフェノール性水酸基を脂肪酸無水物でアシル化することによって調製したものを用いるか、フェノール性水酸基が既にアシル化されたアシル化物、すなわち脂肪酸とのエステルを用いることができる。芳香族ジオールや芳香族ヒドロキシカルボン酸に対する脂肪酸無水物の仕込み量は、フェノール性水酸基に対する当量数で、1.0〜1.2倍となる量が好ましく、さらに好ましくは1.05〜1.1倍である。脂肪酸無水物の量が、フェノール性水酸基に対する当量数で1.0倍未満の場合には、アシル化時の平衡が脂肪酸無水物側にずれて液晶性ポリエステルへの重合時に原料が昇華し、反応系が閉塞し易くなる。逆に1.2倍を超える場合には、得られる液晶性ポリエステルの着色が著しくなるので好ましくない。アシル化反応させる際の反応条件は、130〜180℃の温度で30分〜20時間に設定するのが好ましく、140〜160℃の温度で1〜5時間に設定するのがより好ましい。この反応は、例えば回分装置、連続装置等を用いて行うことができる。
また上記のようにアシル化された脂肪酸のエステルとカルボン酸とをエステル交換反応させる際に、平衡をずらしてエステル交換反応を促進するために、副生する脂肪酸と未反応の脂肪酸無水物は蒸発させて系外へ留去するのが好ましい。このとき留出する脂肪酸の一部を還流させて反応器に戻すことによって、脂肪酸と同伴して蒸発または昇華する原料成分を凝縮または逆昇華し、脂肪酸に溶解させて反応器に戻すようにすることができる。
また、エステル交換反応に際して添加する式(1)のイミダゾール化合物の添加量は、原料仕込みに用いる上記の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸の合計100質量部に対して、0.005〜1質量部、特に、色調、生産性の点から0.05〜0.5質量部の割合となるように設定することが好ましい。添加量が0.005質量部未満では、イミダゾール化合物を添加して反応させることによる金属との密着性向上の効果を十分に得ることができず、逆に1質量部を超えると反応の制御が困難になるので好ましくない。このイミダゾール化合物は、少なくともエステル交換する際の一時期に反応系に存在しておれば良く、その添加時期は任意であり、エステル交換して重縮合を行なう直前又は途中に添加することができる。
上記のエステル交換による重合反応においてエステル化及び重合速度を増加させる目的で、必要に応じて、触媒を使用することができる。このような触媒としては、酸化ゲルマニウムのようなゲルマニウム化合物、蓚酸第一スズ、酢酸第一スズ、ジアルキルスズ酸化物、ジアリールスズ酸化物のようなスズ化合物、二酸化チタン、チタンアルコキシド、アルコキシチタンケイ酸類のようなチタン化合物、三酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸第一鉄のような有機酸の金属塩、トリフッ化ホウ素や、塩化アルミニウムのようなルイス酸類、アミン類、アミド類、塩酸、硫酸などの無機酸などを挙げることができる。
上記のようにして調製される本発明の液晶性ポリエステルは、光学的異方性を有する溶融相を形成する芳香族環骨格からなるものであり、耐熱性及び耐衝撃をバランス良く有するように、次の式(2)で表される繰り返し単位を少なくとも30モル%含むことが好ましい。また液晶性ポリエステルの分子量は特に限定されるものではないが、重量平均分子量で10000〜100000の範囲のものが好ましい。
Figure 2006117731
また上記のようにして調製される本発明の液晶性ポリエステルは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールに基づく繰り返し単位の組み合わせが、次の(a)〜(f)のものが好ましい。
(a):上記(A1)に基づく構造単位と、上記(B1)に基づく構造単位、又は上記(B1)及び(B2)の混合物に基づく構造単位と、上記(C1)に基づく構造単位との組み合わせ、
(b):上記(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、上記(C1)に基づく構造単位の一部または全部を上記(C2)に基づく構造単位に置き換えたもの、
(c):上記(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、上記(C1)に基づく構造単位の一部または全部を上記(C4)に基づく構造単位に置き換えたもの、
(d):上記(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、上記(B2)に基づく構造単位の一部または全部を上記(B3)に基づく構造単位に置き換えたもの、
(e):上記(a)の構造単位の組み合わせのものにおいて、上記(B3)に基づく構造単位の一部または全部を上記(B2)及び(B3)の混合物に基づく構造単位に置き換えたもの、
(f):上記(a)〜(e)の構造単位の組み合わせのものにおいて、上記(A1)に基づく構造単位の一部または全部を上記(A2)に基づく構造単位に置き換えたもの。
上記の(a)〜(f)のなかでも、液晶性ポリエステルは、p−ヒドロキシ安息香酸(A1)に由来する繰り返し構造単位30〜80mol%、芳香族ジオールに由来する繰り返し構造単位35〜10mol%、および芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位35〜10mol%からなるものが好ましい。各構造単位がこれらの範囲で含有されていることによって、液晶性樹脂としての優れた特性を有する液晶性ポリエステルを得ることができるものである。
次に、エポキシ基含有エチレン化合物について説明する。本発明で用いるエポキシ基含有エチレン共重合体は、分子中にエチレン単位を50〜98質量%(特に64〜94質量%の範囲が好ましい)、ならびに不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を2〜50質量%(特に6〜36質量%の範囲が好ましい)を含むものが好ましい。これらの単位の他に、必要に応じてエチレン系不飽和エステル単位を含むことができるが、エチレン系不飽和エステル単位は50質量%以下であることが好ましい。
エポキシ基含有エチレン共重合体を配合することによる成形体の耐熱性低下や靭性低下を防いで、高い耐熱性や靭性を得るためには、分子中にエチレン単位を80〜95質量%、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を5〜25質量%含むエポキシ基含有エチレン共重合体がより好ましい。エポキシ基含有エチレン共重合体中のエチレン単位が80質量%未満であると、特に上記のように50質量%未満であると、耐熱性や靭性の低下を防ぐ効果を十分に得ることができない。また液晶性ポリエステルにエポキシ基含有エチレン共重合体を配合して後述のように金属層の密着性を高めるためには、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位が5質量%以上含有されていることが好ましく、少なくとも上記のように2質量%以上含有されていることが好ましい。
また上記の不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位あるいは不飽和グリシジルエーテル単位を与える化合物は、次の式(3)、式(4)で表されるものである。
Figure 2006117731
具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等を例示することができる。
また、エポキシ基含有エチレン共重合体として、エチレン、不飽和カルボン酸グリシジルエステル又は不飽和グリシジルエーテル以外にエチレン系不飽和エステルが含まれる三元系以上の多元系共重合体を使用する場合、エチレン系不飽和エステル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル、α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等を挙げることができる。これらのなかでも特に酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
そしてエポキシ基含有エチレン共重合体は、通常、エチレン単位を与える化合物と、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位または不飽和グリシジルエーテル単位を与える化合物と、必要に応じてエチレン系不飽和エステル単位を与える化合物を、ラジカル発生剤の存在下、500〜4000気圧、100〜300℃の条件で、適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる方法により製造することができるものである。
本発明に使用されるエポキシ基含有エチレン共重合体として具体的には、例えばエチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位、グリシジルメタクリレート単位およびグリシジルメチルアクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位、グリシジルメタクリレート単位およびグリシジルエチルアクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位、グリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体などを挙げることができ、これらの中でもエチレン単位とグリシジルメタクリレートからなる共重合体が最も好ましい。
またエポキシ基含有エチレン共重合体は、そのメルトインデックス(MFR:JIS K7210、測定条件190℃、2.16kg荷重)が0.5〜1000g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは2〜500g/10分である。メルトインデックスはこの範囲外であってもよいが、メルトインデックスが高すぎると、液晶性ポリエステルと混合した樹脂組成物を成形して得られる成形体の機械物性が低下するおそれがあるので好ましくなく、逆に低いと液晶性ポリエステルとの相溶性が劣るので好ましくない。
次に無機フィラーについて説明する。無機フィラーとしては特に限定されるものではないが、繊維状、針状、板状、粉末状、球状など各種の形態のものを用いることができる。ここで、無機フィラーとして繊維状無機フィラーを用いると、成形体を補強することができ、樹脂組成物を射出成形等して成形体を作製するにあたって、成形体にウェルドラインが生じても、ウェルドラインの箇所を繊維状無機フィラーで補強して、クラック等が生じることを防ぐことができるものである。樹脂組成物への繊維状無機フィラーの配合量は、液晶性ポリエステル100質量部に対して5〜500質量部の範囲に設定するのが好ましい。
繊維状無機フィラーとしては、繊維径が4〜15μmで、且つアスペクト比(繊維長/繊維径)が5〜50のものが用いられるものである。繊維状無機フィラーの繊維径が4μm未満であると、繊維状無機フィラー自体の強度が低いために、樹脂組成物と混練する際や、樹脂組成物を成形する際の剪断作用で繊維状無機フィラーが破損し、補強効果を十分に得ることができない。また繊維状無機フィラーを樹脂組成物に均一に分散させることが難しくなるという問題もある。逆に繊維状無機フィラーの繊維径が15μmを超えると、樹脂組成物中における繊維状無機フィラーの充填量は低いレベルで限界量を超えることになり、成形体の単位体積当たりの繊維状無機フィラーの繊維量が低下する。その結果、成形体において繊維状無機フィラーが存在する部位と存在しない部位との間の熱膨脹・収縮率の差が大きくなって成形体の平滑性が損なわれるおそれがあり、成形体の表面に形成される金属膜の平滑性も損なわれることになって、成形体を成形回路基板として用いる場合の、ICチップ等の実装部品へのワイヤボンディング時のワイヤの接合性が悪化することになる。また繊維状無機フィラーのアスペクト比が5未満であると、繊維状無機フィラーによる補強効果が不十分になり、例えばウェルドラインにクラックが生じることを防ぐことが難しくなる。逆に繊維状無機フィラーのアスペクト比が50を超えると、樹脂組成物を混練する際や、樹脂組成物を成形する際に、繊維同士の絡み合いが増えるため抵抗が増し、混練時に繊維状無機フィラーの充填量が低いレベルで限界を迎えることになると共に、射出成形において流動性の低下で成形性が悪くなるおそれがある。
上記のような繊維状無機フィラーとしては、特に限定されるものではないが、ガラス繊維、炭素繊維などを挙げることができる。
また、無機フィラーとしてウィスカを用いると、ウィスカは線膨脹率が小さいために、成形体の線膨脹率の低減効果を非常に高く得ることができ、成形体の寸法安定性を向上することができる。このため、成形体を成形回路基板として用いてフリップチップ実装を行なう場合、アンダーフィル樹脂を硬化させる際や、ICチップ実装後のリフロー工程において成形体が熱膨張することを抑制することができ、実装時のバンプ接合性を確保して信頼性を高めることができるものである。
ウィスカは径が1μm程度以下の細長い結晶物(ひげ状結晶)の針状無機フィラーであり、ウィスカとしては炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、アルミナ、チタン酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、マグネシウムオキシサルフェート等を用いることができる。特に、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム等のホウ酸塩を用いると、これらは線膨脹率が非常に小さいために、成形体の線膨脹率の低減効果が非常に高くなるだけでなく、成形体の表層の強度が高まるので、成形体と金属層との密着性を向上させることができるものであり、さらに成形回路基板に実装されたICチップ等の部品への負荷応力を低減し、実装部品への応力の蓄積を抑制して、実装部品内からのノイズの発生等の誤動作や、実装部品の破損を防止することができるなどの効果を得ることもできる。また、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩を用いた場合にも、ホウ酸塩と同様に、成形体と金属層との密着性を向上させることができ、また成形体の誘電正接をより低減することができると共に、比誘電率を広い範囲でコントロールすることができるものである。
また、無機フィラーとして針状結晶のウィスカを用いる場合、樹脂組成物を射出成形などして成形体を成形する際に、樹脂組成物の流れ方向とそれに直交する方向とで無機フィラーが配向することによる異方性が、繊維状フィラーなど繊維長の長いものに比べて緩和されるものであり、成形体の樹脂組成物の流れ方向とそれに直交する方向における線膨張率や成形収縮率の差を小さくすることができるものである。このため、成形収縮率の異方性に起因した成形反りや線膨張率の異方性に起因した加熱時の変形、なかでも面外方向への反り変形(面外変形)が発生することを低減することができるものであり、成形時の平面度(初期平面度)に優れると共に加熱による平面度の変化を小さくした成形体を得ることができるものである。例えば、樹脂組成物を成形して得られた成形体を成形回路基板として用いてフリップチップ実装を行なう場合、成形体の成形反りは平面度を損なうことになるので、実装時のバンプ接合(初期接合性)を確保することが困難になる。このように熱変形はバンプの接合信頼性を低下させる要因になるが、ウィスカとして直径が0.5〜5μm、長さが10〜50μmの範囲のものを用いることによって、バンプ接合性を向上して信頼性を安定化させることができるものである。また成形体の表面に金属層を形成するにあたって、このように成形体の熱変形が小さいと、成形体と金属層との界面で大きな応力が発生することがなくなり、この金属層により形成される回路の密着強度の低下を防いで、回路の導通信頼性を確保することができるものである。
また樹脂組成物へのウィスカの配合量は、液晶性ポリエステル100質量部に対してウィスカが20〜235質量部になるように設定するのが好ましい。ウィスカの配合量が20質量部未満であると、成形体の線膨張率を低くする効果を得ることができず、線膨張率は極端に大きくなる。そのため、例えばICチップなどをフリップチップ実装する場合にバンプ接合に不良が生じるおそれがある。逆にウィスカの配合量が235質量部を超えると、樹脂組成物を押出機で混練・押し出ししてペレットを作製する際に、押出しスクリューに噛み込んで行かず、ペレットを作製することができなくなるおそれがある。ウィスカの配合量が過剰になると、成形体と金属層との密着性が阻害されるおそれもある。
また、無機フィラーとして板状無機フィラーを用いると、樹脂組成物を射出成形などして成形体を成形する際に、樹脂組成物の流れ方向とそれに直交する方向とで無機フィラーが配向することによる異方性が、上記のウィスカを使用した場合よりもさらに小さくなり、成形体の樹脂組成物の流れ方向とそれに直交する方向における線膨張率や成形収縮率の差がより小さくなると共に、さらに線膨張率の絶対値も小さくすることができるものである。このため、成形収縮率の異方性に起因した成形反りや線膨張率の異方性に起因した加熱時の変形、なかでも面外方向への反りの変形を一層低減することができるものであり、従って、バンプ接合性を向上して接合信頼性を安定化させる効果をより高く得ることができるものであり、さらに成形体と金属層の密着強度が低下することを防ぐ効果をより高く得ることができ、回路の導通信頼性を確保することができるものである。
板状無機フィラーとしては、特に限定されるものではないが、タルク、マイカ、ガラスフレーク、モンモリロナイト、スメクタイトなどを用いることができる。板状無機フィラーの寸法は特に限定されるものではないが、平均長さが1〜80μmの範囲、より好ましくは1〜50μmであり、平均アスペクト比(長さ/厚み)が2〜60の範囲、より好ましくは10〜40である。平均長さが1μm未満であると、板状無機フィラーの添加による補強効果や変形防止効果が小さく、熱による成形体の寸法変化が大きくなるおそれがあり、平均長さが80μmを超えると、板状無機フィラーの疎密な状態が発生するため、微視的にみて成形体に対する金属層の密着力に分布が発生するおそれがある。またアスペクト比が2未満であると、板状無機フィラーの添加による補強効果や変形防止効果が小さく、熱による成形体の寸法変化が大きくなるおそれがある。平均アスペクト比が60を超えると、板状無機フィラーの剛性が小さくなって、変形防止効果が小さくなり、熱による成形体の寸法変化が大きくなるおそれがある。
また樹脂組成物への板状無機フィラーの配合量は、液晶性ポリエステル100質量部に対して板状無機フィラーが10〜40質量部になるように設定するのが好ましい。板状無機フィラーの配合量が10質量部未満であると、成形体の線膨張率の異方性が小さくなるように改良する効果を得ることができず、逆に板状無機フィラーの配合量が40質量部を超えると、成形体と金属膜との密着性が低下するおそれがある。
尚、上記の繊維状無機フィラー、ウィスカ、板状無機フィラーは、単独で用いる他に、任意の組み合わせで併用するようにしてもよい。これらを併用すると、各無機フィラーが有する特性が組み合わされた相乗効果を得ることができるものである。
そして上記の無機フィラーは、前記のエポキシ基含有エチレン共重合体で表面処理して用いられるものである。エポキシ基含有エチレン共重合体は常温で固体であるので、エポキシ基含有エチレン共重合体を有機溶媒に溶解あるいは分散させ、この溶液を無機フィラーに付着させる湿式法によって、無機フィラーの表面にエポキシ基含有エチレン共重合体を付着させる処理を行なうことができる。有機溶媒としてはトルエン、キシレンなどを用いることができる。ここで無機フィラーとしてガラス繊維などの連続繊維のものを用いる場合、ストランドの状態でエポキシ基含有エチレン共重合体を含有する溶液中に浸漬することによって、無機フィラーの表面処理を行なうことができる。またガラス繊維でもチョップド繊維やミルド繊維のような短繊維の場合や、粉末状の無機フィラーの場合には、エポキシ基含有エチレン共重合体を含有する溶液を無機フィラーに噴霧することによって処理を行なうことができる。さらにこのようなエポキシ基含有エチレン共重合体を溶解乃至分散した溶液を用いる代りに、エポキシ基含有エチレン共重合体の水性エマルジョンを用いて、同様に無機フィラーを処理するようにしてもよい。
このように無機フィラーの表面をエポキシ基含有エチレン共重合体の溶液で処理した後、溶媒を蒸発させる。溶媒を蒸発させるにあたっては、溶媒に応じた温度で加熱することによって行なうことができるが、加熱は溶媒を蒸発させることを目的とするので、最高でも100℃程度の温度で行なうのが好ましい。低沸点溶媒の場合には特に加熱を行なわないで風乾することもできる。このような乾燥の装置としては、スプレードライヤーなどの噴霧式の乾燥機を用いることができる。
このように溶媒を蒸発させた後、さらにエポキシ基含有エチレン共重合体を付着させた無機フィラーを加熱処理するのが好ましい。加熱処理の温度は80℃以上で行なうのが好ましく、100℃以上がより好ましく、120℃がさらに好ましい。加熱温度の上限は特に設定されないが、エポキシ基含有エチレン共重合体が部分的にも分解を起こさない温度であることが必要である。加熱処理の時間は適宜選択可能であるが、5分〜10時間の範囲が好ましい。このように加熱処理することによって、収率よくエポキシ含有エチレン共重合体を無機フィラーに付着させることができる。上記のようにして無機フィラーの表面にエポキシ基含有エチレン共重合体を付着させることができるものであり、無機フィラーに対するエポキシ基含有エチレン共重合体の付着量は0.1〜3質量%の範囲であることが好ましく、さらに0.05〜1.0質量%の範囲がより好ましい。エポキシ基含有エチレン共重合体の付着量が0.1質量%未満であると、液晶性ポリエステルと無機フィラーとの界面の接着性の改良効果を十分に得ることができず、衝撃強さや耐熱性などの機械的、熱的性質を十分に向上させることができない。また成形体の表面に金属層を形成したときの密着力も十分に向上させることができない。一方、エポキシ基含有エチレン共重合体の付着量3質量%を超えても、界面密着性改良の効果はそれ以上向上せず、樹脂組成物を射出成形等する際にガス発生が顕著になるので、エポキシ基含有エチレン共重合体の付着量は3質量%以下であることが好ましい。
ここで、無機フィラーに対するエポキシ基含有エチレン共重合体の付着量は、110℃で1時間乾燥した後、デシケータに入れて室温まで放冷してその質量を測定する。これを625℃に保ったマッフル炉に入れて1時間加熱した後、デシケータに入れて室温まで放冷してその質量をはかり次の式に基づいて計算されるものである。
Figure 2006117731
本発明に係る液晶性ポリエステル樹脂組成物は、液晶性ポリエステルに、表面にエポキシ基含有エチレン共重合体を付着させた無機フィラーを配合し、混合することによって得ることができるものである。また本発明において、これにさらにエポキシ基含有エチレン共重合体を配合して液晶性ポリエステル樹脂組成物を調製するようにしてもよい。エポキシ基含有エチレン共重合体は液晶性ポリエステル中に数百nmサイズで微分散されるので、これにより無機フィラーの表面のエポキシ基含有エチレン共重合体と液晶性ポリエステルとの親和性が高められ、無機フィラーと液晶性ポリエステルの界面の接着性がより向上するものである。またエポキシ基含有エチレン共重合体の配合によって成形体の表層の靭性が向上し、表面に金属層を形成するにあたって金属層との密着性を向上することができるものである。さらにエポキシ基含有エチレン共重合体は反応性の高い官能基を持つので、プラズマ処理によって活性化され易いものであり、従って、エポキシ基含有エチレン共重合体を配合した樹脂組成物を成形して得た成形体を後述のようにプラズマ処理することによって、成形体の表面を活性化し、成形体に対する金属の密着性をより高めることができるものである。
ここで、液晶性ポリエステルに対するエポキシ基含有エチレン共重合体の配合量は、液晶性ポリエステルやエポキシ基含有エチレン共重合体の種類などによって変動するが、液晶性ポリエステル100質量部に対して、エポキシ基含有エチレン共重合体を2〜30質量部の範囲が好ましく、特に5〜25質量部の範囲が好ましい(但し、ここでいう該エポキシ基含有エチレン共重合体の配合量には、無機フィラーに付着させているエポキシ基含有エチレン共重合体の量を含まない)。エポキシ基含有エチレン共重合体の配合量が2質量部未満であると、エポキシ基含有エチレン共重合体を配合することによる上記の効果を十分に得ることができないものであり、またエポキシ基含有エチレン共重合体の配合量が30質量部を超えると、成形体の耐熱性が大きく低下するおそれがあると共に、樹脂組成物の流動性が極端に低下し、所望の形状の成形体に成形することができなくなるおそれがある。
尚、本発明では、表面にエポキシ基含有エチレン共重合体を付着させた無機フィラーは液晶性ポリエステルに配合して使用されるものであるが、各種の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に配合することも可能である。より好ましい樹脂は熱可塑性樹脂であって、例えば6ナイロン(PA6)、6−6ナイロン(PA6−6)、4−6ナイロン(PA46)、11ナイロン(PA11)、6−10ナイロン,PA−MXD−6、ポリフタルアミド等の芳香族ポリアミド(PA6T、PA9T等)などのポリアミド;ポリフェニレンサルファイド;ポリフェニレンエーテル;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリケトン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリエーテルイミド、ポリイミドなどを例示することができる。
そして上記の液晶性ポリエステル樹脂組成物を射出成形等することによって、成形体を得ることができるものであるが、本発明はこの成形体に熱処理を行なうようにしてある。後述のプラズマ処理に先立って熱処理を行なうことによって、成形体の表面に金属層を設けるにあたって、金属層の密着性が高まる顕著な効果を得ることができるものである。熱処理は液晶性ポリエステルの流動開始温度より低い温度で行なうものであり、熱処理温度は液晶性ポリエステルの流動開始温度より20〜120℃低い温度であることが好ましい。ここで、流動開始温度は、内径1mm、長さ10mmのノズルをもつ毛細管レオメータを用い、100kgf/cm(980N/cm)の荷重下において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出す時に、溶融粘度が48000ポイズを示す温度を意味する。(関連規格はJISK6719−1977)
この熱処理は残留酸素濃度が1%以下(特に0.5%以下)の窒素ガスなど不活性ガス雰囲気で行なうのが好ましく、加熱処理の時間は1〜4時間程度が好ましい。このように、成形体を流動開始温度よりも20〜120℃低い温度で熱処理を行なうことによって、液晶性ポリエステルとエポキシ基含有エチレン共重合体との重合反応がより促進され、液晶性ポリエステルと無機フィラーとの界面及び液晶性ポリエステル分子鎖間に化学的な結合が形成されて靭性が向上し、衝撃強さなどの機械的特性だけでなく、はんだ耐熱性や熱変形温度などの耐熱特性も向上するものである。またこのように重合反応の促進によって靭性が向上するので、成形体と金属層との密着性を一層高めることができるものであり、特に成形体の熱膨張率を低減できるので、熱負荷後の金属層の密着力の安定化がより高まるものである。熱処理の温度が液晶性ポリエステルの流動開始温度から120℃を引いた温度より低いと、熱処理による効果を十分に得ることができず、また熱処理の温度が液晶性ポリエステルの流動開始温度から20℃を引いた温度より高いと、熱処理の際に成形体に反り等の変形が発生するおそれがある。
本発明に係る成形体は、上記のように液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して得られるものであり、液晶性ポリエステルが有する耐熱性、耐薬品性、低線膨張率、難燃性、機械的強度、制振性、弾性率等の優れた機械的特性や熱的特性を有しており、しかもエポキシ基含有エチレン共重合体を表面に付着させた状態で無機フィラーが配合してあるので、液晶性ポリエステルと無機フィラーの界面での接着性が向上し、機械的特性や熱的特性をさらに向上させることができるものである。従って本発明に係る成形体は、これらの特性を活かした用途に使用することができるものであり、例えばコネクタ、リレー、光ピックアップ、半導体パッケージなど電気・電子部品全般に使用することができるものである。
また本発明に係る成形体はこれらの特性に優れる他に、エポキシ基含有エチレン共重合体を表面に付着させた無機フィラーや、エポキシ基含有エチレン共重合体の配合、さらには熱処理によって、金属層との密着性に秀でた特徴を示すものである。従って成形体を絶縁基板としてその表面に金属層を形成し、金属層にパターンニングを施して回路形成することによって、回路密着性に優れた成形回路基板として使用することができるものである。
成形体の表面に金属層を形成するにあたっては、まず成形体の表面をプラズマ処理し、成形体の表面を化学的に活性化させる。プラズマ処理は、チャンバー内に一対の電極を対向配置し、一方の電極に高周波電源を接続すると共に他方の電極を接地して構成したプラズマ処理装置を用いて行なうことができる。そして成形体の表面をプラズマ処理するにあたっては、成形体を電極間において一方の電極の上にセットし、チャンバー内を真空引きして10−4Pa程度に減圧した後、チャンバー内にNやNH等の化学的反応が活性なガスを導入して流通させると共に、チャンバー内のガス圧を8〜15Paに制御し、次に高周波電源によって電極間に高周波電圧(RF:13.56MHz)を10〜100秒程度印加する。このとき、電極間の高周波グロー放電による気体放電現象によって、チャンバー内の活性ガスが励起され、陽イオンやラジカル等のプラズマが発生し、陽イオンやラジカル等がチャンバー内に形成される。そしてこれらの陽イオンやラジカルが成形体の表面に衝突することによって、成形体の表面を活性化することができるものであり、成形体とその表面に被覆される金属層との間で化学的結合が形成されて、密着性を高めることができるものである。特に陽イオンが成形体に誘引衝突すると、成形体の表面に金属と結合し易い窒素極性基や酸素極性基が導入されるので、金属層との密着性がより向上するものである。
プラズマ処理条件は上記のものに限定されるものではなく、成形体の表面がプラズマ処理で過度に粗面化されない範囲で、任意に設定して行なうことができる。またプラズマの種類も特に限定されるものではないが、窒素プラズマ処理が好ましい。窒素プラズマでは、酸素プラズマ処理の場合のような、樹脂のエステル結合が切断されて炭酸ガスを脱離することが少ないので、成形体の表層部の強度低下を抑制することができ、金属層の密着性が低下することを防ぐことができるものである。
そして上記のように成形体をプラズマ処理した後、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどから選ばれる物理蒸着法(PVD法)により、成形体の表面に金属層を形成する。ここで、上記のように成形体をチャンバー内でプラズマ処理した後、このチャンバー内を大気開放することなく、スパッタリングや真空蒸着やイオンプレーティングなどを連続プロセスで行なうのが好ましい。金属層を形成する金属としては、銅、ニッケル、金、アルミニウム、チタン、モリブデン、クロム、タングステン、スズ、鉛、黄銅、ニクロムなどの単体、あるいは合金を用いることができる。
スパッタリングとしては、例えばDCスパッタ方式を適用することができる。すなわち、まずチャンバー内に成形体を配置した後、真空ポンプによりチャンバー内の圧力が10−4Pa以下になるまで真空引きし、この状態でチャンバー内にアルゴン等の不活性ガスを0.1Paのガス圧になるように導入する。さらに500Vの直流電圧を印加することによって、銅ターゲットをボンバードし、200〜500nm程度の膜厚の銅などの金属層を成形体の表面に形成することができるものである。
また真空蒸着としては、例えば電子線加熱式真空蒸着方式を適用することができる。すなわちまず真空ポンプによりチャンバー内の圧力が10−4Pa以下になるまで真空引きを行なった後、400〜800mAの電子流を発生させ、この電子流をるつぼの中の蒸着材料に衝突させて加熱すると蒸着材料が蒸発し、200nm程度の膜厚の銅などの金属層を成形体の表面に形成することができる。
さらにイオンプレーティングで金属層を形成するにあたっては、例えば、まずチャンバー内の圧力を10−4Pa以下になるまで真空引きを行ない、上記の真空蒸着の条件で蒸着材料を蒸発させると共に、成形体とるつぼの間に設けた誘導アンテナ部にアルゴン等の不活性ガスを導入し、ガス圧を0.05〜0.1Paとなるようにしてプラズマを発生させ、そして誘導アンテナに13.56MHzの高周波で500Wのパワーを印加すると共に、成形体を載せている電極に所望のバイアス電圧になるように高周波を印加することによって、200〜500nm程度の膜厚の銅などの金属層を成形体の表面に形成することができるものである。
上記のようにして物理蒸着法で成形体の表面に金属層を形成するにあたって、成形体の表面は上記のようにプラズマ処理によって化学的に活性化されており、成形体の表面に対する金属層の密着性を高く得ることができるものである。成形体の表面に物理蒸着法で金属層を形成するにあたって、プラズマ処理を行なわないで金属層によって回路形成することができる程度の密着力を得ることは困難であり、また液晶性ポリエステルからなる成形体は単にプラズマ処理を行なっただけでは、回路形成することができる程度の密着力を得ることは困難である。そして本発明では、液晶性ポリエステルにエポキシ基含有エチレン共重合体で表面処理した無機フィラーや、エポキシ基含有エチレン共重合体を混合して調製される樹脂組成物を成形した成形体を用い、この成形体を熱処理した後にプラズマ処理することによって、成形体の靭性を高めることができると共に成形体の表面を活性化することができ、回路形成をすることができる程度の十分な密着力を得ることが可能になるのである。
次に回路形成について説明する。まず上記のように成形体の表面に通常200〜500nm程度の厚みで銅などの金属層を形成し、そしてこの金属層で回路パターン形成をすることによって、成形回路基板として仕上げることができるものである。ここで、成形体を三次元立体表面を有するように形成し、この立体表面に金属層を形成した後に回路パターン形成することによって、MID等の立体回路基板として仕上げることができるものである。回路パターン形成は例えばレーザ法によって行うことができる。すなわち、回路形成部分と回路非形成部分との境界に沿って金属層にレーザ光を照射し、この境界部分の金属層を除去することによって、回路形成部分の金属層を回路パターンとして、金属層の他の部分から分離する。次に、この回路形成部分の金属層に通電して銅などの電解メッキを施して厚付けし、5〜20μm程度の厚みの導電層にする。次にソフトエッチング処理をして、回路非形成部分に残る金属層を除去すると共に、電解メッキを施した回路形成部分は残存させることによって、所望のパターン形状の回路を形成した成形回路基板を得ることができるものである。この回路の表面には、さらにニッケルメッキや金メッキ等の導電層を数μm程度の厚みで設けるようにしてもよい。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(液晶性ポリエステルの合成例1)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸を911g(6.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを409g(2.2モル)、テレフタル酸を274g(1.65モル)、イソフタル酸を91g(0.55モル)及び無水酢酸を1235g(12.1モル)、さらに1−メチルイミダゾールを0.17g、それぞれ仕込んだ。そして反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
次に、さらに1−メチルイミダゾール1.69gを加え、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。内容物から得られた固形分を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から288℃まで5時間かけて昇温し、288℃で3時間保持し、固相で重合反応を進め、液晶性ポリエステルを得た。この合成例1の液晶性ポリエステルの流動開始温度をフローテスター〔島津製作所社製、「CFT−500型」〕を用いて測定したところ、320℃であった。
(液晶性ポリエステルの合成例2)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸を911g(6.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを409g(2.2モル)、テレフタル酸を274g(1.65モル)、イソフタル酸を91g(0.55モル)及び無水酢酸を1235g(12.1モル)、それぞれ仕込んだ。そして反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で15分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。
次に留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。内容物から得られた固形分を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から283℃まで5時間かけて昇温し、283℃で3時間保持し、固相で重合反応を進め、液晶性ポリエステルを得た。この合成例1の液晶性ポリエステルの流動開始温度をフローテスター〔島津製作所社製、「CFT−500型」〕を用いて測定したところ、320℃であった。
また、エポキシ基含有エチレン共重合体として、以下の住友化学工業株式会社製「ボンドファースト(登録商標)」シリーズを使用した。なおMFR(メルトフローレート)はJIS−K7210に準拠し、190℃、2160g荷重の条件下で測定した値を示す。
(ボンドファースト(登録商標)BF−E)
エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体(グリシジルメタクリレート単位の含有量12質量%:MFR=3g/10分)
(ボンドファースト(登録商標)BF−2C)
エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体(グリシジルメタクリレート単位の含有量6質量%:MFR=3g/10分)
(ボンドファースト(登録商標)BF−7M)
エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体(グリシジルメタクリレート単位の含有量6質量%、アクリル酸メチル単位の含有量30質量%:MFR=9g/10分)
(ボンドファースト(登録商標)BF−2B)
エチレン-グリシジルメタクリレート-アクリル酸メチル共重合体(グリシジルメタクリレート単位の含有量12質量%、酢酸ビニル単位の5質量%:MFR=3g/10分)
上記の各エポキシ基含有エチレン共重合体について、分子中のエチレン単位(E)、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位(GMA:グリシジルメタクリレート)、エチレン系不飽和エステル単位(VA:ビニルアセテート、MA:メチルアクリレート)の質量比率を表1に示す。
Figure 2006117731
(無機フィラーの表面処理)
エポキシ基含有エチレン共重合体を5重量%になるようトルエンに80℃で溶解させ、この溶液中に無機フィラーを加えて、無機フィラーの表面にエポキシ基含有エチレン共重合体を付着させる。得られた表面処理された無機フィラーを110℃で1時間乾燥した後、デシケータに入れて室温まで放冷してその質量を測定する。これを625℃に保ったマッフル炉に入れて1時間加熱した後、デシケータに入れて室温まで放冷してその質量をはかり付着量を算出する。
(実施例1)
合成例1で得た液晶性ポリエステル100質量部に、無機フィラーとして、エポキシ基含有エチレン共重合体(ボンドファースト(登録商標)BF−E)で表面処理して0.2質量%の付着量で付着させたミルドガラス繊維(MGF:セントラルガラス(株)製「EFH−7501」:繊維径10μm、アスペクト比10)を67質量部混合して液晶性ポリエステル樹脂組成物を調製した。そしてこの樹脂組成物を用い、2軸押出機(池貝鉄工(株)「PCM−30」)によって340℃で造粒した。得られたペレットを日精樹脂工業(株)製射出成形機「PS40E5ASE」を用いて、シリンダー温度350℃、金型温度130℃で射出成形し、40mm×30mm×厚さ1mmの成形体を得た。
そしてこの成形体の表面をプラズマ処理し、さらにDCマグネトロンスパッタリング装置を使って金属層を形成した。すなわち、まず成形体をプラズマ処理装置のチャンバー内にセットし、チャンバー内を真空引きして10−4Pa程度に減圧した後、チャンバー内に活性ガスとしてNを導入して流通させると共に、チャンバー内のガス圧を10Paに制御し、この後、電極間にパワー300Wの高周波電圧(RF:13.56MHz)を30秒間印加することによって、プラズマ処理を行った。さらに、チャンバー内の圧力が10−4Pa以下になるまで真空引きし、この状態でチャンバー内にアルゴンガスを0.1Paのガス圧になるように導入した後、更に500Vの直流電圧を印加することによって、銅ターゲットをボンバードし、成形体の表面に400nmの膜厚の銅の金属膜を形成した。
この後、レーザ照射により金属層に幅5mmの剥離強度試験用パターンを施し、銅の金属膜の表面に電解メッキで銅メッキを施すことによって、厚み15μmの剥離強度試験用パターン回路を形成した。
(比較例1)
エポキシ基含有エチレン共重合体で表面処理をしていないミルドガラス繊維(MGF:セントラルガラス(株)製「EFH−7501」:繊維径10μm、アスペクト比10)を用い、あとは実施例1と同様にして成形体を成形した。そしてこの成形体に対して、実施例1と同様にして金属層の形成、剥離強度試験用パターン回路の形成を行なった。
上記の実施例1及び比較例1で得た成形体について、パターン回路のピール強度、アイゾット衝撃強さ、はんだ耐熱温度を測定した。ピール強度の測定は、万能材料試験機(島津製作所製「EG Test」)を用いて行ない、単位幅当りのピール強度(90度ピール強度)を測定した。またアイゾット衝撃強さの測定はJISK7110に準拠して行なった。さらにはんだ耐熱温度の測定は、試料をはんだ浴に60秒間浸漬したときに、変形を生じるはんだ浴の限界温度を計測することによって行ない、これをはんだ耐熱温度とした。結果を表2に示す。
Figure 2006117731
表2にみられるように、エポキシ基含有エチレン共重合体で表面処理をしていないミルドガラス繊維を用いた比較例1のものは、ピール強度、アイゾット衝撃強さ、はんだ耐熱性のいずれもが低いが、実施例1のようにエポキシ基含有エチレン共重合体で表面処理をしたミルドガラス繊維を用いることによって、ピール強度、アイゾット衝撃強さ、はんだ耐熱性のいずれもが高くなっており、回路密着性、機械的特性、耐熱特性を向上できることが確認される。
(実施例2)
合成例2で得た液晶性ポリエステル100質量部に、無機フィラーとして、エポキシ基含有エチレン共重合体(ボンドファースト(登録商標)BF−E)で表面処理して0.2質量%の付着量で付着させたミルドガラス繊維(MGF:セントラルガラス(株)製「EFH−7501」:繊維径10μm、アスペクト比10)を67質量部混合して液晶性ポリエステル樹脂組成物を調製した。そしてこの樹脂組成物を用い、あとは実施例1と同様にして成形体を成形し、さらに実施例1と同様にして金属層の形成、剥離強度試験用パターン回路の形成を行なった。
上記の実施例2及び前記の実施例1で得た成形体について、パターン回路のピール強度を測定し、結果を表3に示した。
Figure 2006117731
表3にみられるように、イミダゾール化合物の存在下で合成した液晶性ポリエステルを用いた実施例1のものは、イミダゾール化合物が存在しない状態で合成した液晶性ポリエステルを用いた実施例2のものよりも、回路密着性が高いことが確認される。
(実施例3〜7)
無機フィラーとして、エポキシ基含有エチレン共重合体(ボンドファースト(登録商標)BF−E)で表面処理して表4に示す付着量で付着させたミルドガラス繊維(MGF:セントラルガラス(株)製「EFH−7501」:繊維径10μm、アスペクト比10)を用いるようにした。その他は実施例1と同様にして液晶性ポリエステル樹脂組成物を調製し、あとは実施例1と同様にして成形体の成形、金属層の形成、剥離強度試験用パターン回路の形成を行なった。
上記の実施例3〜7及び前記の実施例1で得た成形体について、パターン回路のピール強度、アイゾット衝撃強さ、はんだ耐熱温度を測定し、結果を表4に示した。
Figure 2006117731
表4にみられるように、無機フィラーへのエポキシ基含有エチレン共重合体の付着量が0.1〜3.0質量%の範囲である実施例1、3〜6のものは、ピール強度、アイゾット衝撃強さ、はんだ耐熱性のいずれもが高い。一方、付着量が3.0質量%を超える実施例7のものは、付着量が3.0質量%の実施例6と各特性が同程度であり、また射出成形の際にガス発生を伴なうものであった。従って、無機フィラーへのエポキシ基含有エチレン共重合体の付着量が0.1〜3.0質量%の範囲が好ましいことが確認される。
(実施例8〜12)
合成例1で得た液晶性ポリエステル100質量部に、エポキシ基含有エチレン共重合体(ボンドファースト(登録商標)BF−E)を表5の配合量で混合し、さらに無機フィラーとして、エポキシ基含有エチレン共重合体(ボンドファースト(登録商標)BF−E)で表面処理して0.2質量%の付着量で付着させたミルドガラス繊維(MGF:セントラルガラス(株)製「EFH−7501」:繊維径10μm、アスペクト比10)を67質量部混合して液晶性ポリエステル樹脂組成物を調製した。そしてこの樹脂組成物を用い、あとは実施例1と同様にして成形体を成形し、さらに実施例1と同様にして金属層の形成、剥離強度試験用パターン回路の形成を行なった。
上記の実施例8〜12で得た成形体について、パターン回路のピール強度を測定し、結果を表5に示した。
Figure 2006117731
表5にみられるように、液晶性ポリエステルにエポキシ基含有エチレン共重合体を配合することによって、回路密着性が向上することがが確認される。
(実施例13〜15)
液晶性ポリエステル100質量部に混合するエポキシ基含有エチレン共重合体として表6に示すものを用いるようにした他は、実施例10と同様にして液晶性ポリエステル樹脂組成物を調製した。あとは実施例1と同様にして成形体の成形、金属層の形成、剥離強度試験用パターン回路の形成を行なった。
上記の実施例13〜15及び前記の実施例10で得た成形体について、パターン回路のピール強度、成形体の荷重たわみ温度(DTUL)を測定した。成形体の荷重たわみ温度(DTUL)の測定は、ASTM D648に準拠して行ない、1.82MPaでの熱変形温度を求めた。結果を表6に示した。
Figure 2006117731
表6にみられるように、エポキシ基含有エチレン共重合体として分子中のエチレン単位の含有率が高いものは、成形体のDTULが高く、耐熱性が高いものであった。
(実施例16〜23)
合成例1で得た液晶性ポリエステル100質量部に、エポキシ基含有エチレン共重合体(ボンドファースト(登録商標)BF−E)を表7の配合量で配合した。そして無機繊維フィラーの、エポキシ基含有エチレン共重合体(ボンドファースト(登録商標)BF−E)を0.2質量%の付着量で付着させたミルドガラス繊維(MGF:セントラルガラス(株)製「EFH−7501」)として、繊維径及びアスペクト比が表7のものを用いて30質量部配合し、さらに無機フィラーとしてウィスカとタルクを50質量部と20質量部配合して混合し、液晶性ポリエステル樹脂組成物を調製した。そしてこの樹脂組成物を用い、あとは実施例1と同様にして成形体を成形し、さらに実施例1と同様にして金属層の形成、剥離強度試験用パターン回路の形成を行なった。
上記の実施例16〜23で得た成形体について、パターン回路のピール強度を測定し、また成形体のウエルドラインの強度評価を行なった。ウエルドラインの強度の評価は、15mm×15mm×厚み0.6mmの中に5×5mmの穴があるテストサンプルの成形体を射出成形し、このテストサンプルを250℃の窒素置換雰囲気で3時間加熱処理し、クラックが生じたものを「×」、クラックが生じなかったものを「○」と判定することによって行なった。尚、ピール強度は250℃の窒素置換雰囲気で3時間加熱処理した後の測定値である。結果を表7に示す。
Figure 2006117731
表7にみられるように、繊維状フィラーとして繊維径が4〜15μm、アスペクト比が5〜50の範囲のものを用いた実施例16〜20のものは、成形体にウエルドラインのクラックが発生せず、繊維状フィラーによる補強効果を高く得ることができるが、繊維径やアスペクト比がこの範囲から外れる実施例21〜23のものでは、成形体にウエルドラインのクラックが発生し、繊維状フィラーによる補強効果を高く得ることができないことが確認される。
(実施例24〜27)
実施例9と同様にして成形体を成形し、この成形体を窒素雰囲気中、表8に示す温度で3時間、熱処理した。後は実施例1と同様にしてこの成形体をプラズマ処理した後、実施例1と同様にして金属層を形成し、剥離強度試験用パターン回路の形成を行なった。
(実施例28)
実施例12と同様にして成形体を作製し、この成形体を酸素雰囲気中、300℃で2時間、熱処理した。後は実施例1と同様にしてこの成形体をプラズマ処理した後、実施例1と同様にして金属層を形成し、剥離強度試験用パターン回路の形成を行なった。
上記の実施例24〜27及び実施例28で得た成形体について、パターン回路のピール強度、アイゾット衝撃強さ、はんだ耐熱温度、DTULを測定し、結果を表8に示した。
Figure 2006117731
表8にみられるように、窒素雰囲気下で熱処理を行なうようにした実施例24〜27のものは、熱処理を行なっていない実施例9のものと比較して、回路密着性が飛躍的に向上しており、また衝撃強さや耐熱性も向上するという注目すべき結果が得られるものであった。

Claims (10)

  1. 液晶性ポリエステルと、表面にエポキシ基含有エチレン共重合体を付着させた無機フィラーとを含有して成ることを特徴とする液晶性ポリステル樹脂組成物。
  2. エポキシ基含有エチレン共重合体は、分子中に、エチレン単位ならびに不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
  3. 液晶性ポリエステルは、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸、および芳香族ジカルボン酸を、式(1)で表されるイミダゾール化合物の存在下、エステル交換して重縮合することによって得られたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
    Figure 2006117731
    (式(1)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、シアノ基、炭素数1〜4のシアノアルキル基、炭素数1〜4のシアノアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、炭素数1〜4のアミノアルキル基、炭素数1〜4のアミノアルコキシ基、フェニル基、ベンジル基、フェニルプロピル基、フォルミル基から選ばれる基を示す)
  4. 無機フィラーに対するエポキシ基含有エチレン共重合体の付着量は、0.1〜3質量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
  5. 液晶性ポリエステル100質量部に対してエポキシ基含有エチレン共重合体が2〜30質量部配合されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
  6. エポキシ基含有エチレン共重合体は、分子中に、エチレン単位を50〜98質量%ならびに不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および/または不飽和グリシジルエーテル単位を2〜50質量%含むものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
  7. 無機フィラーが、繊維径4〜15μm、アスペクト比5〜50の繊維状であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して作製され、成形後に、液晶性ポリエステル樹脂の流動開始温度より20〜120℃低い温度で熱処理が施されたものであることを特徴とする成形体。
  9. 熱処理は不活性ガス雰囲気で行なわれるものであることを特徴とする請求項8に記載の成形体。
  10. 請求項1乃至7のいずれかに記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形して作製され、表面に電気回路が形成されて成ることを特徴とする成形回路基板。
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