JP2006100164A - リチウム/二硫化鉄一次電池 - Google Patents

リチウム/二硫化鉄一次電池 Download PDF

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【課題】 この発明は、二硫化鉄を正極活物質とする正極と、リチウムを負極活物質とする負極とを有し、有機溶媒を電解液とする非水電解液電池、リチウム/二硫化鉄一次電池において保存時の開回路電圧上昇を抑制し、その電池特性を阻害することなく、コスト面でも優れたリチウム/二硫化鉄一次電池を提供することを目的としている。
【解決手段】 リチウム/二硫化鉄一次電池の正極中の導電剤として比表面積が250m2/g以下40m2/g以上のカーボンブラックを1%前後配合することで、導電剤表面の吸着活性種の影響を小さくし、長期保存時の開回路電圧上昇を抑制できるリチウム/二硫化鉄一次電池を提供するものである。
【選択図】 図1

Description

この発明は、二硫化鉄を正極活物質とする正極と、リチウムを負極活物質とする負極とを有し、有機溶媒を電解液とする非水電解液電池、リチウム/二硫化鉄一次電池に関するものである。
リチウム/二硫化鉄一次電池は、正極活物質の二硫化鉄が約894mAh/g、負極活物質のリチウムが約3863mAh/gと、非常に高い理論容量を示す正・負極材料から構成されており、高容量かつ軽量、負荷特性、低温特性といった電池特性の面からも、極めて優れた電池である。
さらに、リチウム/二硫化鉄一次電池は、初期の開回路電圧(以下、OCVと略す)が1.7〜1.8V、平均放電電圧が1.3〜1.6V付近であり、他の1.5V級一次電池、例えば水溶液を電解液に用いるマンガン電池、アルカリマンガン電池、酸化銀電池、空気電池、ニッケル/亜鉛電池と互換性を有する点からもその実用価値は高い。
しかしながらこの電池系は、製造直後に、開回路電圧が実用電圧よりも高い電位まで上昇してしまうという問題がある。そこで、製造後に予備放電を行うことによって、開回路電圧を実用電圧まで低下させる手法がとられるが、長期間保管している間に再び開回路電圧が上昇してしまう。場合によっては2Vを超えるという特徴をもつ。この状態では、他の1.5V級一次電池との互換性が失われ、使用機器側の保護回路が作動してしまい使用不可能となる。
この保存時における開回路電圧の上昇は、正極中の活性成分、例えば導電剤に吸着されている酸素や不純物などの残存活性種の影響、あるいは外部からの水分浸入とそれに伴う電池構成成分との反応などの影響が考えられる。
従来の電池系では、導電剤に吸着されている酸素や不純物などの残存活性種の影響に対しては、電解液中に添加したイソキサゾール誘導体あるいは正極中に添加した金属還元剤によって導電剤中の上記活性種を還元除去する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、外部からの水分浸入とそれに伴う電池構成成分との反応などの影響に対しては、浸入水分を電解液中に添加したフェノールあるいはヒドロキノン誘導体と優先的に反応させる方法などが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開昭59−181464号公報 特開平8−153521号公報
これらの手法は現状と比較して改善効果が見られるが、例えば上記のような追加成分の添加、特に有機物質の場合、その他の諸特性への悪影響やコスト面でもデメリットが大きい。したがって、この発明は、リチウム/二硫化鉄一次電池において保存時の開回路電圧上昇を抑制し、その電池特性を阻害することなく、コスト面でも優れたリチウム/二硫化鉄一次電池を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、この発明は正極合剤中に添加する導電剤に着目したものであり、正極活物質に二硫化鉄、負極活物質にリチウム、電解液に有機溶媒を用いたリチウム/二硫化鉄一次電池において、正極中の導電剤として比表面積が250m2/g以下のカーボンブラックを使用することで、導電剤表面の吸着活性種の影響を小さくし、長期保存時の開回路電圧上昇を抑制できるリチウム/二硫化鉄一次電池を提供するものである。
この発明によれば、導電剤の比表面積が開回路電圧に影響し、導電剤として比表面積250m2/g以下のカーボンブラックを用いることで放電性能を維持したままその上昇を抑制できる。
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。ここでの説明はあくまでも一例であり、この発明はこれに限定されるものではない。
図1に示す非水電解液二次電池は、いわゆる円筒型と言われるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶1の内部に、渦巻型電極体を有している。この渦巻型電極体は、正極活物質を有する帯状の正極2と負極活物質を有する帯状の負極3とが、イオン透過性を有するセパレータ4を介して多数回巻回されてなる。電池缶1は、例えばニッケルメッキが施された鉄により構成されており、一端部が閉鎖され、他端部が開放されている。また、電池缶1の内部には、渦巻型電極体を挟み込むように周面に対して垂直に一対の絶縁板5、6がそれぞれ配置されている。巻回電極体の正極2にはアルミニウム等よりなる正極リード11が接続されており、負極3にはニッケル等よりなる負極リード12が接続されている。正極リード11は安全弁8に溶接されることにより電池蓋7と電気的に接続されており、負極リード12は電池缶1に溶接され電気的に接続されている。また、正極2と負極3との間のセパレータ4には、非水電解質として例えば非水電解液が含浸されている。セパレータ4は、正極2と負極3との間に配されることによりこれらの物理的接触を防ぐとともに、孔中に非水電解液を保持すること、すなわちセパレータ4が非水電解液を吸収することにより、放電時にリチウムイオンを通過させるものである。
さらに、図2には、電池缶1の開放端部に設けられた電池蓋7の内側の断面図が示されている。電池蓋7の内側に設けられた安全弁8及び熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient PTC素子)9とが、封口ガスケット10を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶1の内部は密閉されている。この電池蓋7は、例えば電池缶1と同様の材料により構成されている。安全弁8は、熱感抵抗素子9を介して電池蓋7と電気的に接続されており、内部短絡又は外部からの加熱等により電池の内圧が一定以上となった場合に電池蓋7と渦巻型電極体との電気的接続を切断する、いわゆる電流遮断機構を備えている。熱感抵抗素子9は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。封口ガスケット10は、例えば絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
正極活物質である二硫化鉄は、主に自然界に存在する黄鉄鉱(Pyrite)を粉砕したものが用いられるが、化学合成、例えば、塩化第一鉄(FeCl2)を硫化水素(H2S)中にて焼成して得られる二硫化鉄なども使用可能である。
負極活物質についても特に限定はなく、リチウム金属、あるいはリチウムにアルミニウムなどの合金元素を添加したリチウム合金等が使用可能である。
電解液には、リチウム塩を電解質として、これを有機溶媒に溶解させた電解液が用いられる。ここで有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1、2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1、3-ジオキソラン、スルホラン、アセトニトリル、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の、単独もしくは二種類以上の混合溶媒が使用可能である。
電解質には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化りん酸リチウム(LiPf6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3Li)、よう化リチウム(LiI)等が使用可能である。
セパレータには、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンといったポリオレフィン系の微多孔性フィルム等が使用可能である。
以下、実施例および比較例により、この発明をさらに詳しく説明するが、この発明はこれに限定されるものではない。
導電剤の比表面積の測定方法
検討に用いた導電剤の比表面積は、正極の塗布電極をはがし、700℃でPVdfを焼き飛ばした後、王水でFeS2を処理した後に得た粉末を試料とした。この試料を用いて、BETの式を適用して求めた吸着量から試料の比表面積を求める気体吸着法により導電剤の比表面積を規定した。なお、比表面積の測定は全自動比表面積計HM−1208(MOUNTECH製)を使用して行った。
単四形リチウム/二硫化鉄一次電池の作製
まず、二硫化鉄と導電剤およびバインダーを重量比で95:1:4とし、N-メチル−2−ピロリドン(NMP)に十分に分散させて正極合剤スラリーとした。次に、正極合剤スラリーを正極集電体の両面に塗布し、温度120℃で2時間乾燥させてNMPを揮発させた後、一定圧力で圧縮成型して帯状の正極を作製した。なお、正極集電体としては厚さ20μmの帯状のアルミニウム箔を用いた。次に、以上のようにして作製された帯状の正極と、厚さ150μmの金属リチウム負極とを、正極、セパレータ、負極、セパレータの順に積層してから多数回巻回し、外計9mmの渦巻型電極体を作製した。以上のようにして得られた渦巻型電極体を、ニッケルメッキを施した鉄製の電池缶に収納した。そして渦巻型電極体の上下両面に絶縁板を配設し、アルミニウム製正極リードを正極集電体から導出して電池蓋に、ニッケル製負極リードを負極集電体から導出して電池缶に溶接した。次に、この電池缶の中に、1、3−ジオキソラン(DOL)と1、2−ジメトキシエタン(DME)が体積比で2:1の混合溶媒に、よう化リチウム(LiI)を1mol/lとなるように添加して作製した電解液を注入した。次に、アスファルトで表面を塗布した絶縁封口ガスケットを介して電池缶をかしめることにより、電流遮断機構を有する安全弁、PTC素子、及び電池蓋を固定し、電池内の気密性を保持させ、直径約10mm、高さ約44mmの円筒型電池を作製した。
実施例1〜9
導電剤に表1に示した各比表面積を有するグラファイトを用いて上記のように単四形リチウム/二硫化鉄一次電池を作製し評価を行った。
比較例1〜4
従来用いられていた高比表面積(1050m2/g)のカーボンブラック、比表面積が20m2/g、15m2/g、10m2/gのグラファイトを用いた以外は、上記と同様の方法で実施した。
このようにして作製したリチウム/二硫化鉄一次電池を予備放電により電池容量の10%程度を放電させた後、室温(20℃)で保存し、1000時間保存後の開回路電圧上昇を測定した。結果を表1に示す。表1より、導電剤の比表面積が小さいほど保存中に開回路電圧が低く、特に40m2/g以上250m2/g以下で上昇が大幅に抑制されることが分かる。比較例として示した低比表面積のグラファイトでは特に効果が顕著である。
しかしながら、グラファイトを使用した場合、表1に示した比較例1を1.00として算出した1500mW放電の0.9V終止における時間比放電の低下もまた顕著である。
これに対して、比表面積40m2/g以上250m2/g以下のカーボンブラックでは、重負荷特性の大幅な低下が認められない。カーボンブラックはグラファイトに比べて、高ストラクチャーであるため、電解液保液能力が高く、また表面官能基量が少ないことから高導電性を保つことができ、比表面積を低下させても放電性能を維持できる。
Figure 2006100164
実施例10〜14
実施例9のカーボンブラックを用いて、導電剤の混合比を0.5重量%、0.7重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、4.0重量%と変化させて上記同様に単四形リチウム/二硫化鉄一次電池を作製し測定を行った。それぞれの電池の開回路電圧および実施例9を1.00として算出した1500mW放電0.9V終止の放電時間比の測定結果は表2に示した。
Figure 2006100164
なお、予備放電条件および保存条件は上記同様とした。表2より、導電剤量を減少させると開回路電圧上昇は抑制される傾向にあるが、重負荷特性が大幅に低下する。また、導電剤量を増加させると開回路電圧は上昇し、さらには放電性能も低下傾向にある。よって、放電性能と開回路電圧の両面から考えて導電剤量は1.0重量%付近が好ましい。
なお、実施例には単四形のリチウム二硫化鉄一次電池を用いたが、この発明は正極活物質として酸化第二銅、硫化鉄、鉄複合酸化物、三酸化ビスマス等を用い、負極としてはリチウムに加え、ナトリウム等のアルカリ金属やそれらの合金を用いた場合にも適用可能である。また、電池形状も筒型に加え、ボタン型、コイン型、角型などに適用可能である。
この発明の単四形リチウム/二硫化鉄一次電池の構造を説明する断面側面図である。 この発明の単四形リチウム/二硫化鉄一次電池の電池蓋の内側の構造を説明する断面側面図である。
符号の説明
1 電池缶
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 絶縁板
6 絶縁板
7 電池蓋
8 安全弁
9 PTC素子
10 封口ガスケット
11 正極リード
12 負極リード

Claims (2)

  1. 正極活物質に二硫化鉄、負極活物質にリチウム、電解液に有機溶媒を用いたリチウム/二硫化鉄一次電池において,
    正極中の導電剤として比表面積が40m2/g以上250m2/g以下のカーボンブラックを用いたことを特徴とするリチウム/二硫化鉄一次電池。
  2. 上記導電剤量の配合量が0.7重量%以上1.5重量%以下である請求項1に記載のリチウム/二硫化鉄一次電池。
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