JP2006097852A - 動圧軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低コスト化を達成でき、かつ静電気の帯電を確実に防止することのできる動圧軸受装置を提供する。
【解決手段】 ラジアル軸受部R1、R2を多円弧軸受で構成する。スラスト軸受部Tのスラスト軸受隙間を、軸受スリーブ8のハウジング開口側の端面8aとこれに対向する軸部材2のフランジ部端面2b2との間に形成する。ハウジング7は、体積固有抵抗106Ω・cm以下の通電性を有する樹脂で形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】 ラジアル軸受部R1、R2を多円弧軸受で構成する。スラスト軸受部Tのスラスト軸受隙間を、軸受スリーブ8のハウジング開口側の端面8aとこれに対向する軸部材2のフランジ部端面2b2との間に形成する。ハウジング7は、体積固有抵抗106Ω・cm以下の通電性を有する樹脂で形成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、軸受隙間に生じる流体(潤滑流体)の動圧作用によって回転部材を非接触支持する動圧軸受装置に関する。この軸受装置は、情報機器、例えばHDD、FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置などのスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受(流体動圧軸受)の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
例えば、HDD等のディスク装置のスピンドルモータに組込まれる動圧軸受装置では、ハウジングの内周に軸受スリーブを固定すると共に、軸受スリーブの内周に軸部材を配置した構造が知られている(例えば、特許文献1)。この軸受装置では、軸部材の回転により、軸受スリーブの内周と軸部材の外周との間のラジアル軸受隙間に流体の動圧作用で圧力を発生させ、この圧力で軸部材をラジアル方向に非接触状態で支持する。
特開2002−61636公報
従来、上記動圧軸受装置のハウジングとしては、真鍮や銅等の金属の旋削品が使用されている。しかしながら、金属の旋削品では製作コストが高騰し、軸受装置の低コスト化を図る上で障害となる。
その一方、上記構造の動圧軸受装置では、その回転時に軸部材とハウジングとの間が潤滑油によって絶縁されるため、磁気ディスク等の回転体と空気との摩擦によって発生した静電気が逃げることができず、回転体に帯電しやすい。この帯電を放置すると、磁気ディスクと磁気ヘッドの間で電位差を生じたり、静電気の放電により周辺機器が損傷する等の不具合を招くおそれがある。
そこで、本発明は、低コスト化を達成でき、かつ静電気の帯電を確実に防止することのできる動圧軸受装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明にかかる動圧軸受装置は、一端を開口したハウジングと、ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、ハウジング及び軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、軸受スリーブと軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部とを備えた動圧軸受装置において、スラスト軸受部のスラスト軸受隙間が、軸受スリーブのハウジング開口側の端面とこれに対向する軸部材の端面との間に形成され、ハウジングが通電性を有する樹脂で形成されていることを特徴とするものである。
この構成において、ラジアル軸受部は、ラジアル軸受隙間に複数のくさび状隙間を有する多円弧軸受で構成することができる。
このようにハウジングを樹脂製とすれば、これを射出成形等の型成形により高精度かつ低コストに成形することが可能となる。特にハウジングを、軸受スリーブをインサート部品として樹脂の型成形(インサート成形)で形成すれば、ハウジングと軸受スリーブの組立作業が不要となるので、組立コストのさらなる低減を図ることができる。
その一方、一般に樹脂は絶縁材料であるため、上記樹脂製ハウジングでは、帯電した静電気をハウジングを通じて接地側に放電させることができず、静電気の帯電が問題となる。この対策として、ハウジングを通電性のある樹脂(導電性樹脂組成物)で形成すれば、軸部材と軸受スリーブとの相対回転時、ディスク等に蓄積された静電気を、軸部材およびハウジングを経て接地側の部材(ケーシング6等)に放電させることが可能となり、静電気の帯電を確実に防止することができる。
動圧軸受の回転中は、回転側の部材と固定側の部材は通常非接触となるので、軸部材とハウジングとの間には、回転側と固定側の通電性を確保する手段(通電手段)を設けるのが望ましい。この通電手段の一例として、軸受隙間を満たす潤滑流体に導電性を持たせること(例えば潤滑油として導電性潤滑油を使用する)が考えられる。また、軸部材から軸受スリーブを経てハウジングに至る通電経路を確保するため、軸受スリーブを導電性の金属材料、例えば焼結金属で形成するのが望ましい。この場合、静電気は、軸部材→潤滑油→軸受スリーブ→ハウジングというルート、および軸受スリーブを経ることなく、軸部材→潤滑油→ハウジングというルートを経て放電される。
本発明におけるスラスト軸受部はハウジングの底部側ではなく、ハウジングの開口側に設けられる。この場合のスラスト軸受隙間は、例えば軸部材にフランジ部を設け、このフランジ部の端面と、これに対向する軸受スリーブのハウジング開口側の端面との間の隙間で構成することができる。
ハウジングの内部に満たされた潤滑流体を密封するため、ハウジングには、軸部材との間でシール空間を形成するシール部材を設けるのが望ましい。この場合、一方のスラスト方向での軸部材の抜けを防止するため、シール部材がフランジ部と軸方向で係合可能となるよう構成するのが望ましい。
導電性を有する樹脂製ハウジングは、体積固有抵抗106Ω・cm以下の導電性樹脂組成物で形成することができる。体積固有抵抗が106Ω・cmを超えると、ハウジングの導電性が不十分となり、静電気を接地側に放電することが難しくなる。
ハウジングの導電性を確保する手段として、基材樹脂に導電化剤として金属粉や炭素繊維を配合することも考えられる。しかしながら、これらの導電化剤は、一般に粒径や線径が数十μm〜数百μm程度に達する大径であり、しかも導電性確保のために配合量を多くする必要がある。そのため、樹脂の流動性が低下して成形品の寸法精度が悪化したり、ハウジングが他部材と摺動する際(例えばハウジング内周に軸受スリーブを圧入する際、あるいはハウジングをモータに組み付ける際)にこれら導電化剤が基材樹脂から脱落し、コンタミネーション発生の要因となるおそれがある。
これに対し、ハウジングを、平均粒径が1μm以下の粉末状導電化剤を8重量%以下配合し、あるいは平均線径が10μm以下で平均繊維長が100μm以下の繊維状導電化剤(例えば炭素繊維)を20重量%以下配合した導電性樹脂組成物で形成すれば、導電化剤の径が小さく、かつ配合量も少なくて済むことから、溶融状態で良好な流動性を確保でき、かつ導電化剤が基材樹脂から脱落しにくくなり、コンタミネーションの問題を回避することができる。
導電化剤としては、カーボンナノマテリアルを使用するのが望ましい。カーボンナノマテリアルは、従来から導電化剤として用いられているカーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉などと比較して、次のような特徴を有する。
(1)高い導電性を有し、少量の添加で良好な導電性が得られる。
(2)高アスペクト比を有するため、マトリックス中で分散されやすい。また、アブレッシブ摩耗に強く、摩擦による脱落が少ない。
(3)添加量が少なくてすむため、樹脂本来の物性を損なうことがなく、溶融状態における樹脂の流動性も良好である。
(4)不純物が少なく、従来の導電化剤(特に炭素系)に比べてアウトガスが少ない。
(1)高い導電性を有し、少量の添加で良好な導電性が得られる。
(2)高アスペクト比を有するため、マトリックス中で分散されやすい。また、アブレッシブ摩耗に強く、摩擦による脱落が少ない。
(3)添加量が少なくてすむため、樹脂本来の物性を損なうことがなく、溶融状態における樹脂の流動性も良好である。
(4)不純物が少なく、従来の導電化剤(特に炭素系)に比べてアウトガスが少ない。
従って、ハウジングを、導電化剤としてカーボンナノマテリアルを配合した導電性樹脂組成物で形成すれば、樹脂の流動性低下やコンタミネーションの発生を回避しつつ、ディスク等に帯電した静電気を確実に接地側に放電することができる。具体的には、導電性樹脂組成物におけるカーボンナノマテリアルの配合量を1〜10wt%に設定すれば、上記体積固有抵抗値(106Ω・cm以下)を実現することができる。
カーボンナノマテリアルとしては、カーボンナノファイバーやC60に代表されるフラーレンなどが有名である。このうち、フラーレンは一般に絶縁体であるので、本発明では良好な導電性を有するカーボンナノファイバーを使用するのが望ましい。ここでいうカーボンナノファイバーには、直径が40〜50nm以下の「カーボンナノチューブ」と呼ばれるものも含まれる。
このカーボンナノファイバーの具体例として、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カップ積層型カーボンナノファイバー、あるいは気相成長炭素繊維などが知られているが、本発明では、これら何れのカーボンナノファイバーも使用することができる(これらを一種のみ使用するほか、二種以上の混合物として使用することもできる)。
これらのカーボンナノファイバーは、アーク放電法、レーザ蒸着法、あるいは化学的気相成長法などによって製造することができる。
軸受の運転中、ハウジングは発生した熱により昇温されるが、その際の膨張量が大きいと軸受スリーブの変形を招き、動圧溝の精度を低下させるおそれがある。かかる事態を防止するため、ハウジングは線膨張係数、特に径方向の線膨張係数が5×10-5/℃以下の樹脂組成物で形成するのが望ましい。
軸受スリーブは、金属材料の他、体積固有抵抗が106Ω・cm以下の上記各種導電性樹脂組成物で形成することもできる。これにより軸受スリーブの導電性が確保されるので、ディスク等に蓄積した静電気を導電性のハウジングを介して確実に接地側に放電することが可能となる。
以上のように、本発明によれば、動圧軸受装置の低コスト化を図ることができると共に、静電気の帯電を確実に防止することができる。従って、この動圧軸受装置を備えた情報機器、例えば磁気ディスク装置のスピンドルモータの動作安定性を高めることができる。
以下、本発明の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、この実施形態にかかる動圧軸受装置1を組み込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に圧入等の手段で装着されたロータ(ディスクハブ)3と、半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はケーシング6の外周に取り付けられ、ロータマグネット5はディスクハブ3の内周に取り付けられる。動圧軸受装置1のハウジング7は、ケーシング6の内周に装着される。ディスクハブ3には、磁気ディスク等のディスクDが一または複数枚保持される。ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間の電磁力でロータマグネット5が回転し、それによってディスクハブ3および軸部材2が一体となって回転する。
図2は、動圧軸受装置1の拡大断面図である。図示のように、この動圧軸受装置1は、ハウジング7と、ハウジング7に固定された軸受スリーブ8と、軸部材2と、シール部材10とを主要な構成部品としている。この実施形態では、軸部材2が回転側の部材となり、ハウジング7、軸受スリーブ8、およびシール部材10が固定側の部材となる。
ハウジング7は、樹脂材料で一端に開口部7aを有すると共に、他端を閉じた有底円筒状に形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの他端側に一体に連続した底部7cとを備えている。このハウジング7は、例えば射出成形等の型成形で形成される。軸受スリーブ8をインサート部品としてハウジング7を型成形(インサート成形)してもよい。この他、側部7bと底部7cとを別体に形成し、両者を接着、溶着(超音波溶着等)の手段で相互に結合することもできる。なお、以下の説明では、便宜上、ハウジング7の底部7cの側を下側、開口部7aの側を上側として説明を進める。
ハウジング7を形成する樹脂材料は特に限定されず、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂の中から適宜に選択して用いることができる。熱可塑性樹脂の場合、例えば非結晶性樹脂として、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)等、結晶性樹脂として、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。
軸部材2は、軸部2aおよび円盤状のフランジ部2bからなり、何れもステンレス鋼等の導電性および耐摩耗性に富む金属材で形成される。フランジ部2bは軸部2aの下端よりも上方に設けられ、軸部2aと一体または別体をなす。フランジ部2bの下端面2b2は、軸受スリーブ8の上端面8aと対向し、軸部材2の回転時には、両面2b2、8aの間にスラスト軸受部Tのスラスト軸受隙間が形成される。なお、軸部2aの芯部やフランジ部2b、もしくはその双方は樹脂材料で形成することもできる。
軸受スリーブ8は、ハウジング7の内周面、より詳細には側部7bの内周面に固定される。この時、軸受スリーブ8の下端面8bをハウジング7の底部7cに当接させることにより、軸受スリーブ8の軸方向での位置決めが行なわれる。軸受スリーブ8のハウジング内周への固定方法は、両者間の通電性が確保される限り、圧入、接着、圧入と接着の併用、あるいは溶着等の固定手段が設計条件に応じて選択される。なお、接着する場合、接着剤層がハウジングと軸受スリーブ間の通電性に悪影響を与えないよう、例えば部分接着する等の対策を講じるのが望ましい。
軸受スリーブ8は、焼結金属からなる多孔質体、特に銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。このような焼結金属は、内部に多数の気孔(内部組織としての気孔)を備えていると共に、これら気孔が外表面に通じて形成される多数の開孔を備えている。この焼結金属は、潤滑油や潤滑グリースを含浸させた含油焼結金属として用いられる。なお、焼結金属に限らず、導電性を有する他の金属材料、例えば黄銅等の軟質金属で軸受スリーブ8を形成することも可能である。
軸受スリーブ8の内周面の上下に離隔した領域には、図3に示すように、第一ラジアル軸受部R1および第二ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる複数の円弧面13がそれぞれ形成される。各円弧面13は、回転軸芯Oから等距離オフセットした点を中心とする偏心円弧面であり、円周方向で等間隔に形成される。各偏心円弧面13の間に軸方向の分離溝14が形成されている。
軸受スリーブ8の内周面に軸部材2の軸部2aを挿入することにより、軸受スリーブ8の偏心円弧面13および分離溝14と軸部2aの真円状外周面との間に、第一および第二ラジアル軸受部R1、R2の各ラジアル軸受隙間がそれぞれ形成される。ラジアル軸受隙間のうち、偏心円弧面13と対向する領域は、隙間幅を円周方向の一方で漸次縮小させたくさび状隙間15となる。くさび状隙間15の縮小方向は軸部材2の回転方向に一致している。
シール部材10は、黄銅等の金属材料や樹脂材料で形成された円環状をなす部材であり、接着、圧入、あるいは溶着等の固定手段でハウジング7(側部7b)の開口部7a内周に固定される。シール部材10の円筒状の内周面10aは、軸部2aの外周面と所定のシール空間Sを介して対向し、毛細管シールを構成する。なお、シール空間Sは、図4に示すように、上側(ハウジング7に対して外部側)に向かって漸次隙間幅を拡大させたテーパ状のシール空間Sとすることもできる。図4では、シール部材10の内周面10aをテーパ面状に形成する場合を例示しているが、軸部2aの外周面をテーパ面状に形成して(図示省略)テーパ状のシール空間S’を形成することもできる。シール部材10で密封されたハウジング7の内部空間には、軸受スリーブ8の内部気孔も含めて、潤滑流体としての潤滑油が充満されている。この潤滑油の油面は、シール空間Sの範囲内に維持される。潤滑油には、金属微粒子等を配合して導電性を持たせるのが望ましい。
シール部材10の下側の端面10bは、フランジ部2bの上側端面2b1と軸方向の隙間を介して対向している。軸部材2が上方へ変移すると、フランジ部2bの上側端面2b1がシール部材10の下側端面10bと軸方向で係合し、軸部材2の抜け止めがなされる。このように本実施形態におけるシール部材10は、シールとしてだけでなく、抜け止めとしての機能も併せ持つものである。
動圧軸受装置1は以上のように構成され、軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面のラジアル軸受面となる領域(上下二箇所の領域)は、それぞれ軸部材2の外周面とラジアル軸受隙間を介して対向し、それぞれ多円弧軸受(テーパ軸受とも称される)を構成する。軸部材2の回転に伴い、ラジアル軸受隙間内の潤滑油がくさび状隙間15の縮小側に押し込まれて、その圧力が上昇する。このような潤滑油の動圧作用によって、軸受スリーブ8と軸部2aを非接触支持する第一ラジアル軸受部R1と第二ラジアル軸受部R2がそれぞれ構成される。
同時に、スラスト軸受隙間にも動圧溝の動圧作用によって潤滑油の圧力が発生し、スラスト軸受隙間内に形成される潤滑油の油膜によって、軸部材2のフランジ部2bが一方のスラスト方向に回転自在に非接触支持され、軸部材2をスラスト方向に回転自在に非接触支持するスラスト軸受部Tが構成される。
本発明では、上述のようにハウジング7を樹脂製としているが、この樹脂製ハウジング7は、溶融状態の樹脂材料に導電化剤を配合することにより導電性を持つように形成される。導電性の良否は、ハウジング7の体積固有抵抗で評価することができ、本発明においては、体積固有抵抗が106Ω・cm以下となるように導電化剤が配合される。ここで、体積固有抵抗とは、1cm×1cm×1cmの物体を電流が流れる時の抵抗をいい、単位長さを辺とする立方体の対向する面間の抵抗で定義される。なお、この導電性を確保できる樹脂材料であれば、軸受スリーブ8を当該樹脂材料で成形してもよい。
導電化剤としては、粉末状あるいは繊維状のものを使用することができる。導電化剤の粒径が大きすぎたりその配合量が多すぎる場合、ハウジング7を射出成形する際に樹脂の溶融流動性が低下し、成形品の寸法精度が低下したり、ハウジング7をケーシング9の内周に圧入する際等に作用する摺動摩擦により基材樹脂から導電化剤が脱落し、コンタミネーションの問題が発生するおそれがある。本発明者が検討した結果、粉末状の導電化剤を使用する場合は、平均粒径が1μm以下のものを8重量%以下(望ましくは5重量%以下)配合し、繊維状の導電化剤を使用する場合は、平均線径が10μm以下で繊維長が100μm以下のものを20重量%以下(望ましくは15重量%以下)配合すれば、上記不具合を回避できることが判明した。
上記の条件を満たす導電化剤の一例として、カーボンナノマテリアル、特にカーボンナノファイバーを挙げることができる。この導電化剤1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%を基材樹脂に配合することにより、少ない配合量でもハウジング7に高い導電性(体積固有抵抗106Ω・cm以下)を付与することができる。
カーボンナノファイバーとしては、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、カップ積層型カーボンナノファイバー、あるいは気相成長炭素繊維(VGCF)などが使用可能である。ちなみにSWCNTは外径0.4〜5nmで、長さ1〜数十μm、MWCNTは外径10〜50nm(内径3〜10nm)で、長さ1〜数十μm、カップ積層型カーボンナノファイバーは外径0.1〜数百μm、長さ25〜30cmである。
軸部材2の回転中は、空気との摩擦で磁気ディスクDに静電気が生じる。上述のように本発明ではハウジング7に導電性を持たせているため、この静電気は、ディスクハブ3、軸部材2、潤滑油、軸受スリーブ8、およびハウジング7を経てケーシング9に伝わり、接地側に放電される。この他、軸受スリーブ8を経由することなく潤滑油から直接ハウジング7に伝わる場合もあり、あるいは軸受スリーブ8と軸部材2の瞬間的な接触によって潤滑油を経ることなく接地側に放電される場合もある。これにより、磁気ディスクDの帯電を確実に防止することができ、磁気ディスクDと磁気ヘッドとの間の電位差の形成や、蓄積した静電気の放電による機器の損傷を防止することができる。
ところで、樹脂製ハウジング7の線膨張係数が大きいと、軸受運転中に発生した熱で昇温したハウジング7が膨張して軸受スリーブ8を変形させ、これによって内周面の偏心円弧面13の精度が低下するおそれがある。かかる事態を防止するため、ハウジング7は径方向の線膨張係数が5×10-5/℃以下の樹脂組成物で形成するのが望ましい。
図5に、動圧軸受装置1の他の実施形態を示す。この動圧軸受装置1は、図2に示す実施形態と異なり、シール部材10の内周面10aと、フランジ部2bの外周面との間にシール空間Sを形成したものである。シール部材10に抜け止めとしての機能はないので、必要があれば、別途適当な手段で軸部材2の抜け止めを図る必要がある。シール空間Sは、図6に示すように、テーパ状のシール空間S’とすることもでき、この場合、図示のように、シール部材10の内周面10aをテーパ面状に形成する他、軸部2aの外周面をテーパ面状に形成することもできる。この実施形態でもハウジング7を導電性の樹脂材で形成することにより、磁気ディスクDの帯電を確実に防止することが可能となる。これ以外の構成は、図2に示す実施形態と共通するので、構成および機能が共通する部材には共通の参照番号を付して重複説明を省略する。
図7は、第一および第二ラジアル軸受部R1、R2を構成する多円弧軸受の他の実施形態を示すものである。この実施形態では、図3に示す構成において、各偏心円弧面13の最小隙間側の所定領域θが、それぞれ回転軸真Oを中心とする同心の円弧で構成されている。従って、各所定領域θにおいて、ラジアル軸受隙間(最小隙間)は一定となる。このような構成の多円弧軸受は、テーパ・フラット軸受と称されることもある。この実施形態でもハウジング7を導電性の樹脂材で形成することにより、磁気ディスクDの帯電を確実に防止することが可能となる。
図8では、軸受スリーブ8の内周面のラジアル軸受面となる領域が3つの円弧面13で形成されると共に、3つの円弧面13の中心は、回転軸心Oから直径方向に等距離オフセットされている。3つの偏心円弧面13で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間は、円周方向の両方向に対してそれぞれ漸次縮小した形状を有している。この実施形態でもハウジング7を導電性の樹脂材で形成することにより、磁気ディスクDの帯電を確実に防止することが可能となる。
以上に説明したラジアル軸受部R1、R2の多円弧軸受は、何れもいわゆる3円弧軸受であるが、これに限らず、いわゆる4円弧軸受、5円弧軸受、さらには6円弧以上の数の円弧面で構成された多円弧軸受を採用してもよい。また、ラジアル軸受部R1、R2のように、2つのラジアル軸受部を軸方向に離隔して設けた構成とするほか、軸受スリーブ8の内周面の上下領域にわたって1つのラジアル軸受部を設けた構成としても良い。
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
10 シール部材
R1 第一ラジアル軸受部
R2 第二ラジアル軸受部
S シール空間
T スラスト軸受部
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
10 シール部材
R1 第一ラジアル軸受部
R2 第二ラジアル軸受部
S シール空間
T スラスト軸受部
Claims (14)
- 一端を開口したハウジングと、ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、ハウジング及び軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、軸受スリーブと軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、スラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部とを備えた動圧軸受装置において、
スラスト軸受部のスラスト軸受隙間が、軸受スリーブのハウジング開口側の端面とこれに対向する軸部材の端面との間に形成され、ハウジングが通電性を有する樹脂で形成されていることを特徴とする動圧軸受装置。 - ラジアル軸受部が多円弧軸受で構成されている請求項1記載の動圧軸受装置。
- 軸部材にフランジ部を設け、このフランジ部の端面と軸受スリーブのハウジング開口側の端面との間に前記スラスト軸受隙間を形成した請求項1記載の動圧軸受装置。
- ハウジングに、軸部材との間でシール空間を形成するシール部材を設けた請求項3記載の動圧軸受装置。
- シール部材を、軸部材のフランジ部と軸方向で係合可能とした請求項4記載の動圧軸受装置。
- ハウジングが、体積固有抵抗106Ω・cm以下の導電性樹脂組成物で形成されている請求項1記載の動圧軸受装置。
- ハウジングが、平均粒径が1μm以下の粉末状導電化剤を8重量%以下配合した導電性樹脂組成物で形成されている請求項1記載の動圧軸受装置。
- ハウジングが、平均径が10μm以下で平均繊維長が100μm以下の繊維状導電化剤を20重量%以下配合した導電性樹脂組成物で形成されている請求項1記載の動圧軸受装置。
- ハウジングが、導電化剤としてカーボンナノマテリアルを配合した導電性樹脂組成物で形成されている請求項1記載の動圧軸受装置。
- カーボンナノマテリアルの配合量が1〜10wt%である請求項9記載の動圧軸受装置。
- カーボンマテリアルとして、単層または複層のカーボンナノチューブ、カップ積層型カーボンナノファイバー、および気相成長炭素繊維のうち少なくとも何れか一種を使用した請求項9記載の動圧軸受装置。
- ハウジングの径方向の線膨張係数が、5×10-5/℃以下である請求項1〜10何れか記載の動圧軸受装置。
- 軸受スリーブを、金属または体積固有抵抗が106Ω・cm以下の導電性樹脂組成物で形成した請求項1記載の動圧軸受装置。
- 請求項1〜13の何れかに記載された動圧軸受装置を有するディスク装置のスピンドルモータ。
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---|---|---|---|
JP2004287132A JP2006097852A (ja) | 2004-09-30 | 2004-09-30 | 動圧軸受装置 |
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JP2009541051A (ja) * | 2006-06-26 | 2009-11-26 | イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド | 帯電防止塗料カッブ |
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