JP2006194382A - 動圧軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 この種の動圧軸受装置の製造コストを低減する。
【解決手段】 係止部材9を、樹脂材料を射出成形して形成し、この係止部材9をハウジング7の開口部7a内周に固定して動圧軸受装置1を構成した状態では、上端面9cの外周縁部に、樹脂ゲート部9dを除去加工することにより形成された環状のゲート除去部9c1が現れるようにした。上記構成において、係止部材9の内周面9aと軸部材2の軸部2aの外周面2a1との間にシール空間Sが形成されるとともに、軸部材2の上方への相対変位時、フランジ部2bの下端面2b2と係止部材9の下端面9bとが係合して、軸部材2が係止される。
【選択図】図4
【解決手段】 係止部材9を、樹脂材料を射出成形して形成し、この係止部材9をハウジング7の開口部7a内周に固定して動圧軸受装置1を構成した状態では、上端面9cの外周縁部に、樹脂ゲート部9dを除去加工することにより形成された環状のゲート除去部9c1が現れるようにした。上記構成において、係止部材9の内周面9aと軸部材2の軸部2aの外周面2a1との間にシール空間Sが形成されるとともに、軸部材2の上方への相対変位時、フランジ部2bの下端面2b2と係止部材9の下端面9bとが係合して、軸部材2が係止される。
【選択図】図4
Description
本発明は、軸受隙間に生じる流体(潤滑流体)の動圧作用によって回転部材を非接触支持する動圧軸受装置に関する。この軸受装置は、情報機器、例えばHDD、FDD等の磁気ディスク装置、CD−ROM、CD−R/RW、DVD−ROM/RAM等の光ディスク装置、MD、MO等の光磁気ディスク装置などのスピンドルモータ、レーザビームプリンタ(LBP)のポリゴンスキャナモータ、あるいは電気機器、例えば軸流ファンなどの小型モータ用として好適である。
上記各種モータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化等が求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の1つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、上記要求性能に優れた特性を有する動圧軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
例えば、HDD等のディスク装置のスピンドルモータに組込まれる動圧軸受装置では、ハウジングの内周に軸受スリーブを固定すると共に、軸受スリーブの内周に軸部材を配置した構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この軸受装置では、軸部材の回転により、軸受スリーブの内周と軸部材の外周との間のラジアル軸受隙間に流体の動圧作用で圧力を発生させ、この圧力で軸部材をラジアル方向に非接触状態で支持する。
特開2002−61636号公報
この種の動圧軸受装置は、ハウジング、軸受スリーブ、軸部材をはじめとする種々の部品で構成され、情報機器の益々の高性能化に伴って必要とされる高い軸受性能を確保すべく、各部品の加工精度や組立精度を高める努力がなされている。その一方で、情報機器の低価格化・小型化の傾向に伴い、この種の動圧軸受装置に対するコスト低減の要求も益々厳しくなっている。
本発明の課題は、この種の動圧軸受装置の製造コストを低減することである。
前記課題を解決するため、本発明に係る動圧軸受装置は、一端が開口したハウジングと、前記ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、外径側に突出したフランジ部を有し、前記ハウジングおよび前記軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、前記ハウジングの開口側に設けられ、前記軸部材の外周面又は前記フランジ部との間にシール空間を形成するとともに、軸部材の軸方向一端側への相対変位時に前記フランジ部と係合して軸部材を係止可能で、かつ、樹脂材料で形成された係止部材と、前記軸受スリーブと前記軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧作用で前記軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、前記軸受スリーブのハウジング開口側の端面と、これに対向する前記フランジ部の端面との間のスラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で前記軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部とを備えたものである。このように、樹脂材料で形成された係止部材は、同様の部材を金属材料で形成する場合と比べて、旋削等の機械加工を必要としないので、低コストで製造することができる。
樹脂成形品の成形方法としては射出成形が一般的であるが、その成形精度は、射出成形の態様、例えば溶融樹脂を成形型内に充填するためのゲートの形状や位置に大きく影響を受ける。上述のように、係止部材を樹脂で射出成形する場合、上記ゲートの形状や位置の設定によっては、係止部材の成形精度が低下する、係止部材が所期の性能を発揮できない等、種々の不都合を生じる可能性がある。
かかる観点から、前記係止部材は、樹脂材料を射出成形して形成され、その何れか一方の端面の外周縁部に、樹脂ゲート部を除去加工することにより形成された環状のゲート除去部を有することが好ましい。
この環状のゲート除去部は、係止部材の一方の端面と円周方向全周に亘ってつながった状態で係止部材と同時に成形された樹脂ゲート部を除去加工することにより形成されるものであり、この樹脂ゲート部は、係止部材を成形する成形型内に、一方の端面側から円周方向全周に亘って溶融樹脂を充填することで形成される。したがって、樹脂成形品である係止部材は、ウェルド等の構造上の欠陥を有しておらず、また、真円度等の成形精度も良好である。
また、係止部材は、いずれか一方の端面の外周縁部に、ゲート除去部を有している。言い換えると、樹脂ゲート部を除去加工することにより形成されるゲート除去部は、係止部材の一方の端面の外周縁部に現れる。したがって、このゲート除去部からコンタミ(樹脂に配合された充填材等)が発生したとしても、そのコンタミは、係止部材の内周面の側に形成されるシール空間には脱落しにくくなる。
上記のゲート除去部は、動圧軸受装置の外部に臨む外側端面に形成されていることが好ましい。これにより、軸受内部の清浄度をより高いレベルに保つことができる。
係止部材を形成する樹脂材料は特に限定されず、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂の中から適宜に選択して用いることができる。熱可塑性樹脂の場合、例えば、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)等の非結晶性樹脂、あるいは、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の結晶性樹脂を使用することができる。
また、前記の樹脂に充填する充填材の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材を用いることができる。
例えば、HDD等のディスク駆動装置のスピンドルモータに組み込まれる動圧軸受装置では、磁気ディスク等のディスクと空気との摩擦によって発生した静電気を接地側に逃がすために、ハウジングだけでなく係止部材にも導電性が要求される場合がある。このような場合、係止部材を形成する樹脂に上記の導電性充填材を配合することにより、係止部材に導電性を与えることができる。
上記の導電性充填材としては、導電性の高さ、樹脂マトリックス中での分散性の良さ、低アウトガス性等の点から、カーボンナノマテリアルが好ましい。カーボンナノマテリアルとしては、カーボンナノファイバーが好ましい。このカーボンナノファイバーには、直径が40〜50nm以下の「カーボンナノチューブ」と呼ばれるものも含まれる。
上記構成において、ラジアル軸受部は、ラジアル軸受隙間に複数のくさび状隙間を有する多円弧軸受で構成することができる。
以上に述べた動圧軸受装置は、例えばディスク装置のスピンドルモータに組込んで好適に使用することができる。
本発明によれば、この種の動圧軸受装置における係止部材の製造コストを低減するとともに、射出成形による樹脂製の係止部材の強度や成形精度を高めることができる。
また、本発明によれば、軸受内部へのコンタミの混入を可及的に防止して、軸受内部の清浄度を保つことができる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る動圧軸受装置1を組込んだ情報機器用スピンドルモータの一構成例を概念的に示している。このスピンドルモータは、HDD等のディスク駆動装置に用いられるもので、軸部材2を回転自在に非接触支持する動圧軸受装置1と、軸部材2に装着されたディスクハブ3と、例えば半径方向のギャップを介して対向させたステータコイル4およびロータマグネット5とを備えている。ステータコイル4はケーシング6の外周に取付けられ、ロータマグネット5は、ディスクハブ3の内周に取付けられている。ディスクハブ3は、その外周に磁気ディスク等のディスク状情報記録媒体(以下、単にディスクという。)Dを一枚または複数枚保持している。このように構成されたスピンドルモータにおいて、ステータコイル4に通電すると、ステータコイル4とロータマグネット5との間に発生する電磁力でロータマグネット5が回転し、これに伴って、ディスクハブ3およびディスクハブ3に保持されたディスクDが軸部材2と一体に回転する。
図2は、動圧軸受装置1を示している。この動圧軸受装置1は、軸部材2と、ハウジング7と、ハウジング7に固定された軸受スリーブ8、および係止部材9とを主な構成要素として構成されている。なお、説明の便宜上、ハウジング7の開口部7aの側を上側、開口部7aと反対の側を下側として以下説明する。
軸部材2は、例えばステンレス鋼等の金属材料で形成され、軸部2aと、円盤状のフランジ部2bとを備えている。フランジ部2bは軸部2aの下端よりも上方に設けられ、軸部2aと一体または別体をなす。なお、軸部2aの芯部あるいはフランジ部2b、もしくはその双方は、樹脂材料で形成することもできる。
ハウジング7は、一端に開口部7aを有すると共に、他端を閉じた有底円筒状に形成され、円筒状の側部7bと、側部7bの他端側に一体に連続した底部7cとを備えている。このハウジング7は、例えば液晶ポリマー(LCP)や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等をベース樹脂とする樹脂組成物を射出成形することで形成される。このハウジング7は、軸受スリーブ8をインサート部品として型成形(インサート成形)することもできる。あるいは、側部7bと底部7cとを別体に形成し、両者を接着、溶着(超音波溶着等)の手段で相互に結合することもできる。なお、ハウジング7は、必ずしも樹脂で成形する必要はなく、例えば金属材料をプレス加工する等して成形することもできる。
また、上記樹脂組成物には、例えば、ガラス繊維等の繊維状充填材、チタン酸カリウム等のウィスカ状充填材、マイカ等の鱗片状充填材、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノマテリアル、各種金属粉等の繊維状または粉末状の導電性充填材を、目的に応じて適量配合することができる。
軸受スリーブ8は、例えば、銅やアルミ(合金を含む)等の軟質金属材料、あるいは焼結金属材料で形成されている。この実施形態において、軸受スリーブ8は、焼結金属からなる多孔質体、例えば銅を主成分とする焼結金属の多孔質体で円筒状に形成される。
軸受スリーブ8の内周面8aの上下に離隔した領域には、図3に示すように、第一ラジアル軸受部R1および第二ラジアル軸受部R2のラジアル軸受面となる複数の円弧面8a1がそれぞれ形成される。各円弧面8a1は、回転軸心Oからそれぞれ等距離オフセットした点を中心とする偏心円弧面であり、円周方向で等間隔に形成される。各偏心円弧面8a1の間には軸方向の分離溝8a2が形成される。
軸受スリーブ8の内周面8aに軸部材2の軸部2aを挿入することにより、軸受スリーブ8の偏心円弧面8a1および分離溝8a2と、軸部2aの真円状外周面2a1との間に、第一および第二ラジアル軸受部R1、R2の各ラジアル軸受隙間がそれぞれ形成される。ラジアル軸受隙間のうち、偏心円弧面8a1と対向する領域は、隙間幅を円周方向の一方で漸次縮小させたくさび状隙間8a3となる。くさび状隙間8a3の縮小方向は軸部材2の回転方向に一致している。
軸受スリーブ8の上端面8bの全面または一部の環状領域には、スラスト動圧発生部として、例えば図示は省略するが、スパイラル形状の動圧溝が形成される。この上端面8bの動圧溝形成領域は、フランジ部2bの下端面2b2と対向し、軸部材2の回転時には、両面8b、2b2の間にスラスト軸受部Tのスラスト軸受隙間が形成される(図2を参照)。
係止部材9は、例えば、結晶性樹脂としての液晶ポリマー(LCP)に、導電性充填材としてのカーボンナノチューブ又は導電性カーボンを2〜30vol%配合した樹脂組成物を射出成形して環状に形成される。係止部材9の円筒状の内周面9aは、ハウジング7の開口部7a内周に固定された状態(図2を参照)では、対向する軸部2aの外周面2a1との間に所定のシール空間Sを形成する。
係止部材9の下端面9bは、フランジ部2bの上端面2b1と軸方向の隙間を介して対向している。軸部材2が上方へ相対変位すると、フランジ部2bの上端面2b1が係止部材9の下端面9bと軸方向で係合し、軸部材2が係止される。このように、係止部材9は、シール機能と抜け止めの機能を併せ持つ。
ハウジング7の内周に、軸受スリーブ8を挿入し、軸受スリーブ8の下端面8cをハウジング7の底部7cに当接させる。こうして、ハウジング7に対する軸受スリーブ8の軸方向位置を定めた上で、接着、溶着などの固定手段により軸受スリーブ8をハウジング7に固定する。次に、係止部材9をハウジング7の開口部7a内周に配し、係止部材9の下端面9bと軸受スリーブ8の上端面8bとの間にフランジ部2bを収容した状態で、超音波溶着などの溶着、あるいは接着等の固定手段により係止部材9をハウジング7に固定する。これにより、図2に示す動圧軸受装置1が完成する。この際、係止部材9で密封されたハウジング7の内部空間は、軸受スリーブ8の内部気孔を含め、潤滑油で充満されると共に、潤滑油の油面はシール空間Sの範囲内に維持される。
上記構成の動圧軸受装置1において、軸部材2の回転時、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域(上下2箇所の領域)は、軸部2aの外周面2a1とラジアル軸受隙間を介して対向し、それぞれ多円弧軸受(テーパ軸受とも称される)を構成する。軸部材2の回転に伴い、ラジアル軸受隙間内の潤滑油がくさび状隙間8a3の縮小側に押し込まれて、その圧力が上昇する。このような潤滑油の動圧作用によって、軸部2aを非接触支持する第一ラジアル軸受部R1と第二ラジアル軸受部R2がそれぞれ構成される。
同時に、フランジ部2bの下端面2b2とこれに対向する軸受スリーブ8の上端面8bとの間のスラスト軸受隙間にも、動圧溝の動圧作用により潤滑油の油膜が形成され、この油膜の圧力によって、フランジ部2bをスラスト方向に回転自在に非接触支持するスラスト軸受部Tが構成される。
図4は、前述のように構成される動圧軸受装置1における係止部材9の成形工程を概念的に示している。固定型と可動型とで構成される成形金型には、ランナー10a、フィルムゲート10b、およびキャビティー10cが設けられる。フィルムゲート10bは、成形金型の、係止部材9の上端面9cの外周縁部に対応する位置に環状に形成され、そのゲート幅δは例えば0.2mm〜0.8mmの範囲に設定される。
図示されていない射出成形機のノズルから射出された溶融樹脂Pは、成形金型のランナー10a、フィルムゲート10bを通ってキャビティー10c内に充填される。このように、係止部材9の上端面9cの外周縁部に対応する位置に設けた環状のフィルムゲート10bからキャビティー10c内に溶融樹脂Pを充填することにより、溶融樹脂Pがキャビティー10cの円周方向および軸方向に均一に充填される。従って、成形寸法精度が高く、かつウェルドのない均質な係止部材9を低コストで製造することができる。
キャビティー10c内に充填された溶融樹脂Pが冷却されて固化した後、可動型を移動させて成形金型を型開きする。フィルムゲート10bを係止部材9の上端面9cの外周縁部に対応する位置に設けているため、型開き前の成形品は、係止部材9の上端面9cの外周縁部にフィルム状の樹脂ゲート部9dが環状につながった形態になる。この樹脂ゲート部9dは成形金型の型開動作によって自動的に切断され、成形品を成形金型から取り出した状態では、図4(b)に示すように、係止部材9の上端面9cの外周縁部に樹脂ゲート部9dの切り残し部分が残る。その後、樹脂ゲート部9dの切り残し部分を同図に示すX線に沿って除去加工(機械加工)して仕上げることで、係止部材9が完成する。
完成後の係止部材9において、樹脂ゲート部9dを除去加工することにより形成されたゲート除去部9c1は、係止部材9の上端面9cの外周縁部に幅の狭い環状形状で現れる。したがって、このゲート除去部9c1からコンタミ(樹脂に配合された充填材等)が発生したとしても、そのコンタミは、係止部材9の内周面9aの側に形成されるシール空間Sには脱落しにくくなる。そのため、動圧軸受装置1内部の清浄度が保たれる。
なお、潤滑油の漏れを防止するために、シール空間Sを形成する軸部材2の軸部2aの外周面2a1よりも上方の面や、係止部材9の上端面9cに溌油剤を塗布することもできる。この実施形態では、係止部材9の上端面9cを、ゲート除去部9c1が存在する外周縁部を除いて成形面(射出成形面)としているので、このような表面状態の上端面9cに溌油剤を塗布することにより、充分な溌油効果が発揮され、ハウジング7内部からの潤滑油の漏れが効果的に防止される。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。
以上の実施形態では、シール空間Sを、係止部材9の円筒状の内周面9aと、これに対向する軸部2aの外周面2a1との間に形成した場合を例示したが、本発明は、これ以外の形態に適用することも可能である。例えば図5は、ハウジング7外部側(図5では上側)に向けて径方向隙間幅を漸次拡大させたテーパ状のシール空間S’を形成した場合を例示したものである。この場合にも、係止部材9をフィルムゲートを用いて射出成形することで、成形寸法精度が高く、かつウェルドのない均質な係止部材9を低コストで製造することができる。また、上端面9cの外周縁部に、樹脂ゲート部9dの除去加工による環状のゲート除去部9c1が現れるようにすることで、コンタミをシール空間S’側へ脱落しにくくすることができる。
また、この図示例のように、テーパ状のシール空間S’を形成すれば、遠心力によるシール効果、および毛細間力によるシール効果をシール空間S’に付与することができる。なお、この図示例では、係止部材9の内周面9aを、その軸方向全長に亘って上方に拡径した形状としているが、内周面9aの上端側の一部をテーパ状面とし、残りの面を径一定の円筒面とすることもできる。あるいは、内周面9a全体を径一定の円筒面とし、これに対向する軸部2aの外周面2a1の側にテーパ状面を形成することもできる。
さらに、シール機能と軸部材2の抜止め機能を両立しつつも、ハウジング7の軸方向寸法を縮小して、動圧軸受装置1の小サイズ化を図ったものとして、例えば図6に示すような構成を挙げることができる。同図におけるシール空間S’は、フランジ部2bに設けられた軸方向の段差によって区画形成された外周面のうち、上側の外周面2b3と、これに対向する係止部材9の内周面9aとの間に形成される。また、段によって区画形成された上端面2b1のうち外径側の端面2b4は、係止部材9の下端面9bと対向する。このような構成とすることで、潤滑油の外部への漏れ出しが防止されるとともに、軸部材2の上方への変位時、フランジ部2bの外径側端面2b4が係止部材9の下端面9bと軸方向で係合し、軸部材2の抜止めがなされる。
また、この実施形態では、係止部材9は、その下端面9bの、外径側端面2b4と対向しない箇所を下方に向けて突出させた形態をなす。そのため、係止部材9の下方突出部9eを軸受スリーブ8の上端面8bに当接させることで、係止部材9の軸受スリーブ8に対する軸方向の位置決めが容易になされる。
図7は、第一および第二ラジアル軸受部R1、R2を構成する多円弧軸受の他の実施形態を示すものである。この実施形態では、図3に示す構成において、各偏心円弧面8a1の最小隙間側の所定領域θが、それぞれ回転軸心Oを中心とする同心の円弧で構成されている。従って、各所定領域θにおいて、ラジアル軸受隙間(最小隙間)は一定となる。このような構成の多円弧軸受は、テーパ・フラット軸受と称されることもある。
図8では、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受面となる領域が3つの円弧面8a1で形成されると共に、3つの円弧面8a1の中心は、回転軸心Oから等距離オフセットされている。3つの偏心円弧面8a1で区画される各領域において、ラジアル軸受隙間は、円周方向の両方向に対してそれぞれ漸次縮小した形状を有している。
以上に説明した第一および第二ラジアル軸受部R1、R2の多円弧軸受は、何れもいわゆる3円弧軸受であるが、これに限らず、いわゆる4円弧軸受、5円弧軸受、さらには6円弧以上の数の円弧面で構成された多円弧軸受を採用してもよい。また、ラジアル軸受部R1、R2のように、2つのラジアル軸受部を軸方向に離隔して設けた構成とするほか、軸受スリーブ8の内周面の上下領域に亘って1つのラジアル軸受部を設けた構成としてもよい。
また、以上の実施形態では、ラジアル軸受部R1、R2として、多円弧軸受を採用した場合を例示しているが、これ以外の軸受で構成することも可能である。ラジアル軸受部R1、R2を構成可能な軸受としては、例えば図示は省略するが、軸受スリーブ8の内周面8aのラジアル軸受隙間に面する領域(ラジアル軸受面となる領域)に、複数の軸方向溝形状の動圧溝を形成したステップ軸受が挙げられる。あるいは、軸方向溝に代えて、へリングボーン形状やスパイラル形状の傾斜溝を形成し、これら傾斜状の動圧溝により潤滑流体の動圧作用を発生させる構成を採ることもできる。
また、以上の実施形態では、動圧軸受装置1の内部に充満し、ラジアル軸受隙間や、スラスト軸受隙間に動圧作用を生じる流体として、潤滑油を例示したが、それ以外にも各軸受隙間に動圧作用を生じ得る流体、例えば空気等の気体や、磁性流体等の流動性を有する潤滑剤、あるいは潤滑グリース等を使用することもできる。
1 動圧軸受装置
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
9 係止部材
9a 内周面
9b 下側端面
9c 上側端面
9c1 ゲート除去部
9d 樹脂ゲート部
10a ランナー
10b フィルムゲート
10c キャビティー
P 溶融樹脂
δ ゲート幅
S、S’ シール空間
R1、R2 ラジアル軸受部
T スラスト軸受部
2 軸部材
2a 軸部
2b フランジ部
3 ディスクハブ
4 ステータコイル
5 ロータマグネット
7 ハウジング
8 軸受スリーブ
9 係止部材
9a 内周面
9b 下側端面
9c 上側端面
9c1 ゲート除去部
9d 樹脂ゲート部
10a ランナー
10b フィルムゲート
10c キャビティー
P 溶融樹脂
δ ゲート幅
S、S’ シール空間
R1、R2 ラジアル軸受部
T スラスト軸受部
Claims (5)
- 一端が開口したハウジングと、前記ハウジングの内部に固定された軸受スリーブと、外径側に突出したフランジ部を有し、前記ハウジングおよび前記軸受スリーブに対して相対回転する軸部材と、前記ハウジングの開口側に設けられ、前記軸部材の外周面又は前記フランジ部との間にシール空間を形成するとともに、軸部材の軸方向一端側への相対変位時に前記フランジ部と係合して軸部材を係止可能で、かつ、樹脂材料で形成された係止部材と、前記軸受スリーブと前記軸部材との間のラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧作用で前記軸部材をラジアル方向に非接触支持するラジアル軸受部と、前記軸受スリーブのハウジング開口側の端面と、これに対向する前記フランジ部の端面との間のスラスト軸受隙間に生じる流体の動圧作用で前記軸部材をスラスト方向に非接触支持するスラスト軸受部とを備えた動圧軸受装置。
- 前記係止部材は、樹脂材料を射出成形して形成され、その何れか一方の端面の外周縁部に、樹脂ゲート部を除去加工することにより形成された環状のゲート除去部を有することを特徴とする請求項1記載の動圧軸受装置。
- 前記係止部材の一方の端面は、前記動圧軸受装置の外部に臨む外側端面であることを特徴とする請求項1記載の軸受装置。
- 前記ラジアル軸受部が多円弧軸受で構成されていることを特徴とする請求項1記載の動圧軸受装置。
- 請求項1〜4の何れかに記載された動圧軸受装置を有するディスク装置のスピンドルモータ。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20080401 |