JP2006096694A - 食物アレルギー予防剤 - Google Patents

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俊彦 庄司
Hiroshi Akiyama
浩 穐山
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雄嗣 佐藤
Tomomasa Kanda
智正 神田
Tamio Yonetani
民雄 米谷
Yukihiro Aida
幸広 合田
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Abstract

【課題】アレルギー予防や治療として、植物由来のプロアントシアニジン成分を摂取することは安全性の面からもこれまでの食経験があり、毎日摂取することにも問題が少ないと考えられ、安全でかつ有効な予防および治療剤を提供することができる。本発明者らは、植物由来ポリフェノールのなかでもプロアントシアニジンが腸管免疫系を介して全身免疫系を改善することを見出した。
【解決手段】本発明は植物由来プロアントシアニジン類を有効成分として含むことを特徴とする食物アレルギー予防剤である。

Description

本発明は、経口免疫寛容誘導能を有する食物アレルギー予防剤に関する。
食品は、大きく三つの機能に分けることができる。栄養機能である1次機能、嗜好機能である2次機能、および生体調節や疾病予防機能である3次機能がある。食品の3次機能は、食品中の成分を長期間にわたり継続的に摂取することによる共存有害物質に対する中和解毒作用や、人の様々な体調機能の調節、生命維持、健康増進に働く作用など、高次の生命活動に対する調節機能である。
具体的には、食品による生体リズムの調節、吸収機能の調節、神経の覚醒と鎮静、免疫機能の強化や調製等の生体防御、老化抑制などに関わる機能と定義されている。その生理活性の例として、抗酸化活性(脂質過酸化抑制、ラジカル消去、潰瘍予防、動脈硬化予防)、抗菌活性、血圧上昇抑制、抗炎症活性、抗アレルギー活性、育毛促進活性、抗変異原性、発ガン抑制、抗腫瘍活性等が報告されている。
最近、我が国においてアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー患者が増加の一途をたどり深刻な社会問題となっている。また、国民の約3割が何らかのアレルギー症状を訴えているといわれている。これを受け厚生労働省では平成14年4月1日から特定原材料5品目(卵、牛乳、小麦、そば、落花生)の表示を義務化するなど、食物アレルギー患者への対策がなされている。アレルギーは、体調機能の調節ならびに生体防御機能に異常をきたした状態と捉えることができる。すなわち、通常、我々は異物が体内に進入すると、その異物を排除する防御機構を有している。この防御機構の代表的なものとして進入した異物(抗原)特異的な反応により除去するのが免疫反応である。この免疫反応が何らかの理由により過剰あるいは異常に反応し、炎症など生体に障害を与える反応がアレルギーである。また、食物アレルギーでは、食品アレルゲンが腸管を介して生体内へ吸収された場合、通常は抗原に対して応答しない(腸管免疫寛容)が、何らかの理由でアレルゲンの透過性が増大するもしくは、アレルゲンに対する腸管での免疫系が不十分な体質の人では、アレルギーを発症する。
一方、アレルギー症状の改善方法は、専ら抗アレルギー薬を主体とした医学的治療の分野で考えられ、I型アレルギー発症に大きく関与するヒスタミンなどの化学伝達物質阻害剤、ステロイド薬などによるアレルギー症状の緩和を目的とした対症療法や原因となる食品アレルゲンの除去に依存しているのが現状である。
しかし、食品の持つ三次機能が明らかにされるにつれて、アレルギー症状を抑制する食品の存在、例えば茶やヨーグルト(乳酸菌)、ニンジン、リンゴ、ブドウ種子に免疫調節機能が認められるようになった。とりわけ抗アレルギー活性は、甲殻類のキチンや糖鎖のコンドロイチン硫酸、植物由来のポリフェノールであるタンニンや赤い色素のアントシアニンが関わっていると報告されている。茶のほかにも、カカオ種子、赤ダイコンなど様々な植物において研究がなされている。これらの報告をふまえ、食品やその成分のアレルギー反応に対する影響を明らかにし、その影響を正しく評価することはアレルギー疾患の予防と治療に対して重要な意義を持つと思われる。
これら生体調節機能に関する報告がされている様々な食品や食品成分の中でも盛んに研究が行われている成分群の一つとして植物由来のポリフェノール成分が挙げられる。ポリフェノールとは、複数のフェノール性水酸基を有する化合物群の総称であり、非常に広範な成分からなる化合物群である。代表的なものとしてフェノール酸類、クマリン類、フラボノイド類、タンニン類、等が知られている。ポリフェノール化合物の生合成には、質・量的な差異はあるが高等植物の大部分は何らかのポリフェノール化合物を生合成していると考えられている。植物性食品に含まれるポリフェノールは、主に色素成分や苦み成分を構成し、様々な生理活性を示すことが知られている。
例えば、リンゴ由来のポリフェノールはI型アレルギーの発症における重要なステップであるヒスタミン遊離の抑制活性、経口投与によるI型アレルギーモデルマウスに対する耳介肥厚抑制活性、リンゴ由来プロシアニジン類の重合度別各画分共存下での相乗効果、アトピー性疾患患者臨床的適応が確認されている。
リンゴは、日本で年間88万トンが生産され、最も親しみの深い果実の一つであり、今日では栽培技術や品種改良が進み、味、大きさ、外観など様々な品種が栽培されている。リンゴのポリフェノール類は、クロロゲン酸などのカフェー酸誘導体、カテキン、エピカテキンのカテキン類、ケルセチン配糖体類およびアントシアン系色素等のフラボノイド類、ならびにカテキン類が重合したプロシアニジン類(縮合型タンニン類)に分類される。プロシアニジン類は強酸性条件下で加熱分解することで構成カテキン単位に対応したアントシアニジンを生成する。プロアントシアニジンは植物の成分として量的に希少なものでなく、日常的な食品成分として高い安全性が期待できることから、近年その生理活性に関心が高まっている。リンゴ由来プロシアニジン類はカテキンおよびエピカテキンを構成単位とし、これらが4β→8または4β→6で結合することにより重合したもので少なくとも15量体まで存在していることが報告されている(特許文献1)(図1)。
特開平7−285876号公報
以上説明してきたように、アレルギーの発症機構を考えるとアレルギー症状の改善方法には、ヒスタミンなどの化学伝達物質阻害剤、ステロイド薬などの薬剤の開発以外に、腸管免疫を調節し、全身免疫を改善する物質を見いだせば、生体の免疫恒常性の安定に保ち、アレルギー予防や治療に役立てることが期待できる。また、アレルギー予防や治療として、植物由来のプロアントシアニジン成分を摂取することは安全性の面からもこれまでの食経験があり、毎日摂取することにも問題が少ないと考えられ、安全でかつ有効な予防および治療剤を提供することができる。
このような背景の下、本発明者らは、植物由来ポリフェノールについて各種実験を行い、生化学的・医学的な見地から鋭意研究に努めた結果、植物由来ポリフェノールのなかでもプロアントシアニジンが腸管免疫系を介して全身免疫系を改善することを見出した。本発明の目的は、植物由来プロアントシアニジンの安全性の高い新規な植物アレルギー予防剤、並びにこれを含有する医薬品および機能性食品を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、植物由来のプロアントシアニジン成分を有効成分として含有することを特徴とする植物アレルギー予防剤が提供される。好ましくは、本発明の成分であるプロアントシアニジン類はリンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、大麦、グァバ、ホップ、小豆、松樹皮などに含まれる化合物である。
本発明の植物アレルギー予防剤は植物由来ポリフェノール、なかでもプロアントシアニジンを用いるので、腸管免疫系を介して全身免疫系を改善することができる。植物由来プロアントシアニジンを用いたので従来のアレルギー予防剤よりも高い安全性が得られる。
以下に本発明について詳細に説明する。本発明において植物アレルギー予防剤の有効成分として用いられるプロアントシアニジン成分は市販のものや、植物から直接抽出・分離したものが利用できる。本発明でいうプロアントシアニジンは、植物体中に存在する縮合型タンニン類、すなわちフラバン−3−オール類を構成単位として4→8又は4→6で縮合もしくは重合により結合した化合物の混合物であって、これらは酸処理によりシアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン等のアントシアニジンを生成する。本発明では、上記構成単位の2〜15量体以下の高分子のプロシアニジン、プロデルフィニジン、プロペラルゴニジン等のプロアントシアニジンである。
例えば、リンゴ果実からのプロアントシアニジン成分の抽出・精製は特開平7−285876号公報、特開2000−16951号公報および特開2002−87978号公報に記載の方法を利用することができる。原料であるリンゴは特開平7−285876号に記載されているようにリンゴ未熟果を利用しても良いし、特願2000−277228号に記載されているようにリンゴ野生種(Crab Apple)を利用しても良い。
まず、特開平7−285876号の方法に基づいて抽出物を得る。具体的には、リンゴ果実を洗浄した後、そのままもしくは亜硫酸を添加しながら破砕、圧搾により果汁を得、遠心分離、濾過などにより清澄果汁を調製できる。清澄果汁は適宜、公知の手法により濃縮しても良い。粗リンゴポリフェノール成分の抽出方法としては、得られた果汁を原料として用いても良いが、果実をアルコール類と混合して破砕し、そのまま浸漬し、圧搾、又は加熱還流しながら抽出し、次いでアルコールを溜去した後、遠心分離及び濾過、又はヘキサン、クロロホルムなどの有機溶媒による分配及び濾過を行い、清澄抽出物を得る方法を挙げることができる。
ついで、特開2000−16951号の方法にて上記抽出物を精製する。具体的には、ポリフェノールを選択的に吸着できる吸着剤、例えばスチレンジビニルベンゼン系の合成吸着樹脂、陰イオン交換樹脂などが充填されたカラムに上記の清澄果汁又は清澄抽出液を通すことによりポリフェノール成分を吸着させる。次いで、蒸留水によってカラムを洗浄した後、20−100%、好ましくは40−60%のアルコール溶液をカラムに通すことによりポリフェノール成分を溶出、回収できる。得られたアルコール溶液画分からアルコールを溜去すると粗リンゴポリフェノール画分となる。この粗リンゴポリフェノール画分には、図1のような成分が含まれている。
更に、粗リンゴポリフェノール画分を特開2002−87978号公報に開示された方法で処理し、プロアントシアニジン画分を得る。具体的には、得られた粗ポリフェノール画分を酢酸メチルを液相として用いた固液抽出によりプロシアニジン2−5量体画分と6量体以上画分に分離精製することも可能である。酢酸メチルに抽出されないプロシアニジン6量体以上画分は、公知の方法により酢酸メチルを溜去する。酢酸メチルに抽出されたプロシアニジン2−5量体画分は公知の方法により抽出溶液を濃縮した後、蒸留水に溶解させる。更に、プロシアニジン2−5量体画分は順相クロマトグラフィーにより重合度別(分子量別)に分離精製し、重合度数の均一なプロシアニジンオリゴマーを得ることができる。
また、プロアントシアニジンとしては、合成法によって得られたものも用いることができる。このようにして調製されたプロアントシアニジン製剤は免疫調節剤として医薬品に用いることができる。医薬組成物としては、従来からの免疫調節剤と混合しても良い。免疫調節剤を含有する医薬品は、公知の方法により錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤などの経口剤、座剤、軟膏、噴霧剤、注射剤などの非経口剤とすることができる。この際、製薬化において用いられることが知られている、種種の添加剤を用いることもできる。
また、食物アレルギー予防剤を含有する食品一般として、あるいは、食品一般に添加して免疫調節能を有する食品として好適に用いることができる。具体例としては、アルコール飲料、炭酸飲料、果汁飲料、乳酸菌飲料、コーヒーや紅茶などの清涼飲料、アイスクリーム、飴、ガム、菓子、パン、麺類などに用いることができる。
更にまた、アトピー性皮膚炎などの一部のアレルギー患者に対しては、食物アレルギー予防剤を化粧品に添加して用いることもできる。添加される化粧品としては、石鹸、洗顔料、クリーム、乳液、化粧水、パウダー、香水、口紅などの皮膚化粧品や浴用化粧品、更にはシャンプー、リンスなどの毛髪用化粧品ならびに歯磨き粉などを挙げることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
特開平7−285876号公報および特開2000−16951号公報に開示された方法により粗リンゴポリフェノール画分を、特開2002−87978号公報に開示された方法によりプロアントシアニジン画分を調製した。粗リンゴポリフェノール画分を逆相系高速液体クロマトグラフィーを用いて分析したところ、クロロゲン酸類(約20%)、フロレチン配糖体類(約5%)、フラボノール類(約15%)、プロアントシアニジン類(約50%)及びその他褐変物質(約10%)からなることが確認できた。更に、このプロアントシアニジン類はMALDI-TOF/MSによる解析の結果、フラバン−3−オール類であるカテキンやエピカテキンからなる2量体から15量体までが確認され、高分子のポリフェノールであった[M. Ohnishi-Kameyama et al., Mass Spectrometry, 11, 31-36, 1997]。
こうして得られた粗リンゴポリフェノール画分には、プロアントシアニジン画分を約50%含有していることが確認され、後述する経口免疫に与える影響を評価するための試料とした。
[試験例1:経口自由摂取における腸管免疫系に及ぼす影響]
下記手法により実施例1で得たリンゴ由来プロシアニジン画分について試験に用いた。腸管免疫系の影響及び全身免疫系へ作用する可能性を検討するために、リンゴ由来プロシアニジン画分を経口的に感作状態にすることが可能である肥満細胞遺伝的欠損マウス(W/Wマウス)に自由経口摂取させて、その影響を検討した。
すなわち、9週齢の雌性W/WマウスにOVA1mg/匹を9週間連日経口投与し、9週後に全採血を行い血清中OVA特異的抗体価(IgE、IgA、IgG1及びIgG2a)を測定した。リンゴ由来プロシアニジン画分は1%濃度で純水に溶解したものをOVAの連続経口投与開始の1週間前からIEL及び脾細胞採取の日まで自由に摂取させた。なお、水を自由飲水して免疫応答を施した群を対照群とした。
次に、血清中のOVA特異的抗体価、マウスから摘出した脾臓由来の培養脾細胞から産生される各種サイトカインならびに小腸から腸管上皮細胞間リンパ球(IEL)を分離精製し、フローサイトメーター(FCM)によるサブセット解析を指標に腸管免疫系を介した全身免疫系に及ぼす影響について検討した。
[OVA特異的抗体価(IgE, IgA, IgG1及びIgG2a)]
マウスから全採血を行い血清中OVA特異的抗体価(IgE、IgA、IgG1及びIgG2a)を測定した。抗原(OVA)を0.05M炭酸塩−重炭酸塩で希釈し、96wellマイクロプレートに50μL/well加え4℃で一晩静置して、抗原を固相化した。固相化の後にwell内を洗浄し、夾雑物をブロッキングするために0.1%カゼイン−PBSを200μL/well加え室温で1時間静置した。ブロッキングの後にwell内を洗浄し、0.1%カゼイン−PBSで希釈した血清試料を50μL/well加え4℃で1日静置して、固相化抗原と血清中抗体(1次抗体)を抗原抗体反応させた。抗原(1次)抗体反応の後にwell内を洗浄し、ウサギ抗マウス抗体(2次抗体)を50μL/well加え、室温下1時間抗原抗体反応させた。抗原(2次)抗体反応の後にwell内を洗浄し、β-Gal-GAR IgG(3次抗体)を50μL/well加え、室温下抗原抗体反応させた。抗原(3次)抗体反応の後にwell内を洗浄し、酵素反応の基質として0.1mM4−MUGを100μL/well加え、37℃で1時間反応させた。酵素反応の後に1M炭酸ナトリウム25μL/well加え反応を停止させ、反応産物4-methyl-umbelliferoneの蛍光強度を励起波長330nm、蛍光波長453nmの吸収波長を蛍光プレートリーダーで測定した。各検体の抗体価は、コントロール群の血清中抗体の示した蛍光強度の1/2倍の値を示す希釈度(力価)で表した。
[サイトカイン産生量(IFN-γ、IL-4、IL-5、IL-2、IL-10)の測定法]9週間後脾臓を摘出して細胞懸濁液(5.0×106cells/ml)を調製し、培養プレートに分注し、in vitroにおいて卵白アルブミン(OVA)を最終濃度100ppmとなるよう添加して、培養温度37℃、CO濃度5%の条件下で3日間培養し、脾細胞より産生された培養上清中のサイトカイン(IL-5,IL-6,IL-12,IL-2及びIFN-γ)濃度をELISAで定量した。対照群には生理食塩水を添加した。
サイトカインの測定は、市販のOptEIA Mouse setを用いて行った。すなわち、96wellプレ−トに希釈したCapture Antibodyをウエルごとに100μL加え、4℃、オーバーナイトでインキュベートした。次いで、プレートウォッシャーで5回洗浄した。洗浄後、アッセイ希釈液を200μL加え、室温で1時間反応させた後、5回洗浄した。脾細胞の培養上清もしくは標準品を100μL加え、室温で2時間反応させた後、洗浄した。Working Detectorを100μL加え、室温で1時間反応させ、10回洗浄した。酵素反応の基質を100μL加え、室温、暗所で30分間反応させた。反応停止液50μLを加え、反応を停止させた後、450nmの吸光度をプレートリーダーで測定した。標準品で作成した検量線から検体のサイトカイン量を求めた。
脾臓T細胞などの全身免疫系T細胞がαβT細胞レセプター(TCRαβ)を発現し、CD4、CD8分子の発現により2つのサブセット(TCRαβCD4,TCRαβCD8)に分類されるのに対し、腸管上皮内リンパ球(IEL)はTCRγδ陽性細胞が約半分を占め、CD4、CD8α鎖、CD8β鎖の発現とあわせて5つのサブセット(TCRαβCD4CD8,TCRαβCD4CD8,TCRαβCD8αα,TCRαβCD8αβ,TCRγδCD8αα)に分類される。これらのサブセットの割合に対するACT経口投与による影響をフローサイトメーター(FCM)による表面抗原解析法を用いて検討した。
上記手法によりリンゴ由来プロシアニジン画分の食物アレルギーモデルマウスにおける経口自由摂取の免疫系に与える影響を検討した。まず、血清中OVA特異的抗体価において、リンゴ由来プロシアニジン画分摂取群は対照群に比べて血清中OVA特異的抗体が減少する傾向が見られ、OVA特異的抗体IgE抗体価とIgE1抗体価が有意に減少したことから、リンゴ由来プロシアニジン画分がOVAの経口感作を抑制することが示唆された。またそのIgE抗体産生減少に関してリンゴ由来プロシアニジン画分経口摂取の濃度依存性が観察された。(図2)
次に、免疫感作したW/Wマウスから摘出した脾細胞をOVAと共に3日間培養し、培地に産生される各種サイトカインをELISA法で定量し、サイトカイン産生に与える影響を検討した。サイトカインとは、リンパ球(T細胞、B細胞)などから何らかの刺激に応じて細胞外に出すタンパク質で、細胞同士が相互作用を発揮する際の情報交換を行う微量物質である。また、免疫応答に重要な役割を有するヘルパーT細胞(Th)には、2種類のタイプが存在し、いずれもナイ−ブCD4T細胞(Th0細胞)という同じ前駆細胞から分化する。生体の免疫の恒常性が、このTh1、Th2細胞によって形成される免疫調節のバランス(Th1/Th2バランス)によって保たれていると考えられており、そのバランスはそれぞれが分泌するサイトカインにより制御されている。従って、サイトカイン産生量を調べることは、免疫系に与える影響を評価する指標となる。
培養脾臓細胞のサイトカイン濃度を測定したところ、リンゴ由来プロシアニジン類画分摂取群は対照群と比べIL−2、IL−12及びIFN−γ産生には大きな変化がみられなかったが、IL−5及びIL−6、IL−10産生は抑制された(図3)。このことからTh2型の分化が抑制され、Th1/Th2バランスを改善することが示唆された。
最後に、IELのサブセット解析においては、リンゴ由来プロシアニジン画分摂取群は対照群と比べTCRγδ陽性細胞組成比の有意な増加が認められた。また、その現象には濃度依存性が確認された(表1)。
以上の事から、リンゴ由来プロシアニジン画分は経口感作誘導によるTCRγδTcellの減少を抑制するとことにより、経口感作を抑制し、経口免疫寛容を誘導する可能性が示唆された。
以上の結果より、プロアントシアニジン画分は免疫感作マウスの脾細胞におけるTh1型サイトカインであるIL−2、IL−12およびIFN−γ産生には影響を与えず、Th2型サイトカインであるIL−5、IL−6およびIL−10産生の有意な抑制を認め、Th1/Th2バランスをTh1に誘導した。また、上皮内リンパ球の表面抗原組成であるTCRγδの組成を有意に増加させることが明らかになった。しかも、結果は示さないが、プロアントシアニジン類の構成成分であるカテキン類には腸管免疫寛容誘導能は見られなかった。
特開平7−285876号公報、特開2000−16951号公報および特開2002−87978号公報に記載の方法を利用してリンゴから抽出画分に含まれる代表的なポリフェノール成分の構造式を示した。 リンゴ由来プロアントシアニジン類の血清中OVA特異的抗体に与える影響を示した。 リンゴ由来プロアントシアニジン画分(ACT)のOVA免疫感作マウス由来脾臓細胞サイトカイン産生に与える影響を示した。

Claims (5)

  1. 植物由来プロアントシアニジン類を有効成分として含むことを特徴とする食物アレルギー予防剤。
  2. 植物がリンゴ、ナシ、モモ、ブドウ、大麦、グァバ、ホップ、小豆、松樹皮であることを特徴とする請求項1に記載の食物アレルギー予防剤。
  3. プロアントシアニジン類がプロシアニジン類であることを特徴とする請求項1または2に記載の食物アレルギー予防剤。
  4. 医薬品であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の食物アレルギー予防剤。
  5. 機能性食品であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の食物アレルギー予防剤。
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