JP2006096567A - ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 特に、小さな粒径のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末を得る際して、正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性の高いものを得る。
【解決手段】 ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末を製造する際の少なくとも2種以上の主原料粉末を準備する工程と、これらの少なくとも2種以上の主原料粉末を混合する工程と、混合された主原料粉末を加圧成型して成形体を形成する工程と、成形体を仮焼きする工程と、仮焼きにより形成されたペロブスカイト構造を有する酸化物を解砕・粉砕する工程とを有し、前記成形体を形成する工程において、前記加圧成型された成形体の密度を2.6g/cm3以下とするとともに、前記解砕・粉砕する工程により得られたペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の比表面積を5.0m2/g以上としてなるように操作する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、例えば、積層型チップコンデンサの誘電体層の形成材料に用いられるペロブスカイト構造を有する酸化物粉末(例えば、チタン酸バリウム粉末)の製造方法に関する。
ペロブスカイト構造を有する酸化物、例えば、チタン酸バリウムなどは、積層型チップコンデンサ(積層セラミックコンデンサ)などの電子部品のための誘電体材料として用いられている。
近年、このようなペロブスカイト構造を有する酸化物を、誘電体材料(誘電体原料粉末)として用いる場合、粒子径が小さく、かつ高い正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性を有する原料粉末であることが要望されている。積層型チップコンデンサにおいては、小型かつ大容量化を図るために誘電体層(誘電体セラミック層)の厚みをできるだけ薄くする必要があるからである。
例えば、チタン酸バリウム粉末の正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性を高めるためには、いわゆる固相反応法において、仮焼き温度を高くし、仮焼き時間を長くすることが効果的であるとされている。すなわち、炭酸バリウム等のバリウム化合物と二酸化チタン等のチタン酸化物とを混合してペレット状に成形した後、仮焼き温度を高くし、仮焼き時間を長くする操作が有効であるとされている。
しかしながらこのような高温・長時間の仮焼き条件では、粒子の成長や粒子同士の凝結が生じてしまう。そのため、この凝結部を分離させたり、粒子のより微粒子化を図るためにボールミル等に仮焼き粉末を投入して湿式粉砕が行なわれる。しかしながら、湿式粉砕を行なうと、チタン酸バリウム粉末の表層部分よりBaイオンが遊離するため、湿式粉砕物の乾燥後に得られるチタン酸バリウム粉末には、Baイオンと空気中の炭酸ガスとの反応により生じたと思われる炭酸バリウムの量が多くなるとともに、チタン酸バリウム粉末の正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性が低下するという問題が生じてしまう。
特開2001−316114号公報 特開2002−255552号公報 特開平10−87372号公報
このような問題を解決するために、本発明者らはすでに、特願2003−091549として、仮焼き工程における酸素分圧と、仮焼き後に行なわれる湿式粉砕の条件を規定する旨を提案しており、この提案によって、ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性の低下を極めて効果的に抑制して、正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性の極めて良好なペロブスカイト構造を有する酸化物粉末を得ている。
しかしながら、粒子径が小さく、かつ高い正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性を有する酸化物粉末製造への要求は際限がなく、さらなる良好な特性を備える酸化物粉末を得るべく新規な製造方法の提案が求められている。
このような課題を解決するために、本発明は、ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末を製造する際の少なくとも2種以上の主原料粉末を準備する工程と、これらの少なくとも2種以上の主原料粉末を混合する工程と、混合された主原料粉末を加圧成型して成形体を形成する工程と、成形体を仮焼きする工程と、仮焼きにより形成されたペロブスカイト構造を有する酸化物を解砕・粉砕する工程と、を有するペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法であって、前記成形体を形成する工程において、前記加圧成型された成形体の密度を2.6g/cm3以下とするとともに、前記解砕・粉砕する工程により得られたペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の比表面積を5.0m2/g以上としてなるように操作される。
また、本発明の好ましい態様として、前記解砕・粉砕する工程により得られたペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の平均粒径は、0.25μm以下となるように操作される。
また、本発明の好ましい態様として、前記酸化物粉末の比表面積は、5.0〜7.0m2/gとなるように操作される。
また、本発明の好ましい態様として、前記酸化物粉末の平均粒径は、0.12〜0.25μmとなるように操作される。
また、本発明の好ましい態様として、前記仮焼き前の成形体の密度は、1.8〜2.6g/cm3となるように構成される。
また、本発明の好ましい態様として、前記解砕・粉砕する工程は、湿式粉砕する工程を含み、該湿式粉砕がpH=8.5〜12.5の溶液中で処理されてなるように構成される。
また、本発明の好ましい態様として、前記主原料粉末を仮焼きする工程は、その仮焼き雰囲気における酸素分圧Poが1×104Pa以下の範囲(酸素を含まない零を含む)で操作される。
また、本発明の好ましい態様として、前記主原料粉末がABO3(AはBa,Sr,Caのグループから選ばれた少なくとも1種であり、BはTi,Zrのグループから選ばれた少なくとも1種)で表されるペロブスカイト構造の酸化物のAサイトを構成する化合物粉末およびBサイトを構成する化合物粉末であるように構成される。
また、本発明の好ましい態様として、前記ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末がチタン酸バリウム粉末であり、前記主原料粉末がチタン化合物およびバリウム化合物であるように構成される。
本発明の積層型チップコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された素子本体を有し、誘電体層を形成するために用いられる酸化物粉末が上記のいずれかに記載された製造方法により形成されたものであるように構成される。
本発明のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法は、ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末を製造する際の少なくとも2種以上の主原料粉末を準備する工程と、これらの少なくとも2種以上の主原料粉末を混合する工程と、混合された主原料粉末を加圧成型して成形体を形成する工程と、成形体を仮焼きする工程と、仮焼きにより形成されたペロブスカイト構造を有する酸化物を解砕・粉砕する工程とを有し、前記成形体を形成する工程において、前記加圧成型された成形体の密度を2.6g/cm3以下とするとともに、前記解砕・粉砕する工程により得られたペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の比表面積を5.0m2/g以上としてなるように操作しているので、特に、小さな粒径のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末を得る際して、正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性の高いものが得られる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法について説明する前に、本発明の製造方法により製造される酸化物粉末の好適な用途例の一つである誘電体層(誘電体セラミック層)を備える一般的な積層型チップコンデンサの概略構成について、図1〜図3を参照しつつ説明する。
図1は、積層型チップコンデンサの一実施形態を示す斜視図であり、図2は、図1に示される積層型チップコンデンサのA−A線矢視断面図であり、図3は、積層構造の形成過程を分かりやすく説明するための一例を示す斜視図である。
図1〜図3に示される好適な一例としての積層型チップコンデンサ1は、第1内部電極層23と第2内部電極層28とが誘電体層7を介して交互に積層された素子本体2と、この素子本体2の対向する端面に設けられた一対の外部電極11,15とを備えている。誘電体層7が本発明の製造方法により製造される酸化物粉末の好適な用途例の一つである。
素子本体2は、通常、直方体形状とされるが、特に形状に制限はない。また、素子本体2の寸法も特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、例えば、(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜2.5mm)程度の大きさとすることができる。
内部電極層23、28は、上述したように誘電体層7を介して交互に積層された第1内部電極層23と第2内部電極層28から構成されている。このような構造を形成するための好適例が図3に示されており、この図によれば、誘電体層7と第1内部電極層23を有するシート体73と、誘電体層7と第2内部電極層28を有するシート体78とが互いに順次繰り返し多層に積層される。
積層される第1内部電極層23は、図3に示されるように前記第1外部電極11側に露出する接続部23aを有し、この接続部23aは第1外部電極11に接続されている。図3に示されるごとく第1内部電極層23は、誘電体層7との関係で、誘電体層7の外周枠から露出している部分は接続部23aのみ(より正確には接続部の端部のみ)である。
この一方で、積層される第2内部電極層28は、図3に示されるように第2外部電極15側に露出する接続部28aを有し、この接続部28aは第2外部電極15に接続されている。図3に示されるごとく第2内部電極層28は、誘電体層7との関係で、誘電体層7の外周枠から露出している部分は接続部28aのみ(より正確には接続部28aの端部のみ)である。
上述したように本発明の製造方法の対象となるペロブスカイト構造を有する酸化物粉末は、誘電体層7の形成材料として好適に使用される。
以下、本発明のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法について、工程順に説明する。
〔ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末を製造する際の少なくとも2種以上の主原料粉末を準備する工程〕
主原料粉末は、ABO3で表されるペロブスカイト構造の酸化物のAサイトを構成する化合物粉末およびBサイトを構成する化合物粉末から構成される。上記AはBa,Sr,Caのグループから選ばれた少なくとも1種を表し、上記BはTi,Zrのグループから選ばれた少なくとも1種を表す。
ぺロブスカイト構造を有する酸化物粉末を製造する際の主原料材料は、一般に、金属酸化物粉末および金属炭酸塩粉末が用いられることが多い。
ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末として、チタン酸バリウム粉末を好適例として挙げて、以下説明する。
ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末であるチタン酸バリウム粉末を得るためには、まず、加熱分解によって酸化バリウムを生成するバリウム化合物の粉末が準備される。このバリウム化合物としては、例えば、炭酸バリウム(BaCO3)を好適に使用することができる。炭酸バリウム(BaCO3)の比表面積は、5.0〜30.0m2/gとされる。炭酸バリウムに代えて、水酸化バリウム(Ba(OH)2)を用いてもよい。また、2種類以上のバリウム化合物を併用してもよい。
金属酸化物粉末としては二酸化チタンが準備される。このものは、例えば、四塩化チタンを熱分解することによって得ることができる。二酸化チタンの比表面積は、15.0〜50.0m2/g(平均粒径に換算すると、0.1〜0.02μm程度)とされる。
〔主原料粉末を混合する工程〕
上記二酸化チタンで例示される金属酸化物粉末と、上記炭酸バリウムで例示される金属炭酸塩粉末とを、所定のモル比となるように秤量して、混合する。Ba/Ti比は、0.990〜1.020程度とされる。
混合に際しては、上記原料粉末に水を添加して行なう湿式混合とすることが好ましい。より具体的な好適例として、上記混合対象粉末を水およびジルコニアボールとともにボールミルに入れて、湿式で、16時間以上混合することが望ましい。
このような混合により得られたスラリーは、通常、乾燥させられて混合粉体が形成される。
〔加圧成型により仮焼き前の成形体を形成する工程〕
上記混合工程で得られた混合粉体は、加圧成型によって例えばペレット状物に成形される。すなわち仮焼き前の成形体が形成される。加圧成型は、通常、上記混合粉体に水が添加され成型可能な状態とされた後に行なわれる。
仮焼き前の成形体の密度は、2.6g/cm3以下、好ましくは1.8〜2.6g/cm3、より好ましくは2.2〜2.6g/cm3、最も好ましくは2.3〜2.5g/cm3に設定される。この成形体の密度が、2.6g/cm3を超えると、仮焼き条件等を調整して仮焼きにより本願が目的とする所定の微細粒子(後述する所定の比表面性(平均粒径))のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末を製造したとしても、正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性に優れる酸化物粉末とすることが困難であるという不都合が生じる。この一方で、成形体の密度が1.8g/cm3未満となると成形体が型崩れしやすくなり仮焼き工程での取り扱い(搬送時の形態維持など)が困難となり作業性が劣るという不都合が生じる。
仮焼き前の成形体の密度は、成形圧力を調整することにより、適宜設定することができる。また、本発明における仮焼き前の成形体の密度は、成形体の直径(縦、横の長さ)、厚み、重量を測定することによって求められる。
〔主原料粉末の成形体を仮焼きする工程〕
このように成型された成形物(通常、ペレット状物)は仮焼きされる。本発明における主原料粉末の成形物を仮焼きする工程は、その仮焼き雰囲気における酸素分圧Poが1×104Pa以下の範囲(酸素を含まない零を含む)に設定されることが望ましい。
仮焼き雰囲気の全圧力を1×105Pa(1atm)で行なう場合には、上記の酸素分圧は全圧に対して0%〜10%の範囲となる。仮焼き雰囲気の全圧力を1×105Pa(1atm)で操作することは、減圧や増圧のための特別な装置を必要とせず炉の設計が容易であること、種々のタイプの炉に容易に適用させることが可能であること等、種々のメリットがある。
仮焼き雰囲気の全圧力は、3×104Pa〜2×105Paとすることが好ましい。
酸素分圧以外の他の分圧ガス要素としては、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス等が好適に用いられる。
上述してきた仮焼き雰囲気以外の他の仮焼き条件は、例えば、以下に示すような条件とすることが好ましい。
・昇温速度:100〜300℃/hr
・保持温度:900〜1000℃
・保持時間:1〜10hr
・冷却温度:100〜300℃/hr
〔仮焼きにより形成されたペロブスカイト構造を有する酸化物の解砕・粉砕工程〕
上記仮焼きされた成形物(ペレット状物)は、解砕機等により解砕された後、粉砕の処理が施される。
粉砕処理後に得られるペロブスカイト構造を有する酸化物粉末(チタン酸バリウム粉末)の平均粒径は、比表面積が5.0m2/g以上(平均粒径に換算すると0.25μm以下)、好ましくは5.5m2/g以上(平均粒径に換算すると0.2μm以下)、より好ましくは5.5〜7.0m2/g(平均粒径に換算すると0.20〜0.12μm)である。
酸化物粉末(チタン酸バリウム粉末)の比表面積が5.0m2/g未満となると(平均粒径が、0.25μmを超えると)、上記の仮焼き前の成形体の密度との関係で、本願発明における成形体密度に設定しても、本願発明の効果である高い正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性を有する原料粉末が得られないという不都合が生じる。この現象は学術的に十分な解析ができておらず、いまのところ明細書上で十分な説明をすることはできないが、非常に興味ある結果を引き起こしている。
つまり、仮焼き前の成形体を形成する際に、成形圧力を調整して成形体を本願発明における成形体密度の範囲内に設定し、さらに必要に応じて仮焼き温度条件や最初の原料粉末の粒径等を調整して、最終的に粉砕処理後に得られるペロブスカイト構造を有する酸化物粉末(チタン酸バリウム粉末)の比表面積が5.0m2/g以上(平均粒径に換算すると0.25μm以下)となるように操作するのである。すると、得られた酸化物粉末(チタン酸バリウム粉末)は、粒子径が小さにもかかわらず、高い正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性を有する原料粉末となるのである。
換言すれば、本発明の方法は、粒子径の小さい酸化物粉末(チタン酸バリウム粉末)であって、しかも高い正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性を有する酸化物粉末を製造することのできる方法である。
本発明における、酸化物粉末(チタン酸バリウム粉末)の比表面積の値は、いわゆるBET法で求めた。酸化物粉末(チタン酸バリウム粉末)平均粒径は、SEMにより粒子観察を行い、粒子300個の直径の平均を求めることで平均粒径とした。
また、本発明における粉砕は、湿式粉砕とすることが好ましい。湿式粉砕は、pHが8.5〜12.5(好ましくは、9.0〜12.1、さらに好ましくは、9.7〜12.1)のアルカリ溶液(溶媒)中で粉砕処理することが好ましい。すなわち、解砕されたペロブスカイト構造を有する酸化物は、好ましくは上記の好適なpH範囲内に調製された溶媒の中に入れられ、ジルコニアボールとともにボールミル内で湿式粉砕されることが望ましい。ボールミル粉砕方法以外に、遊星ミル、振動ミル等の粉砕方法を用いてもよい。
溶液(溶媒)のpH調整手段は特に制限されるものではないが、水にアンモニア水を加えて調整する方法を採用するのが簡便で好ましい。
その他の湿式粉砕条件は、例えば以下の条件とすることが好ましい。
・スラリー濃度(固形分濃度):20〜40wt%
・粉砕時間:10〜20hr
このようにして得られたペロブスカイト構造を有する酸化物粉末(チタン酸バリウム粉末)は、焼成工程を経て焼結体とされることによって、例えば、上述した積層チップコンデンサの誘電体層(誘電体セラミック)として好適に用いることができる。誘電体層(誘電体セラミック)形成に際しては、上述のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末に、Caや、Sc,Yを含む希土類元素、Zr,Mn,Mg,Siなどの添加物を添加することができる。
なお、上述してきた説明は、ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末として、二酸化チタンと炭酸バリウムとを用いて合成されたチタン酸バリウムを好適例として示してきたが、この発明は、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ジルコン酸ストロンチウム、およびこれらの複合酸化物などの他のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法にも適用することが可能である。
以下、具体的実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
〔実験例I〕
比表面積5.8m2/gの炭酸バリウム粉末および比表面積22.6m2/g(平均粒径0.07μm)の二酸化チタン粉末を準備した。二酸化チタン粉末は四塩化チタンの熱分解により製造されたものである。
炭酸バリウムと二酸化チタンとのモル比が1.005:1.000となるように、炭酸バリウム粉末および二酸化チタン粉末をそれぞれ秤量した。
次いで、これらの原料粉末を水およびジルコニアボールとともにボールミル内に入れ、湿式で16時間混合した。得られたスラリー(混合物)を乾燥機に入れ、120℃で乾燥させて混合粉体とした。次いで、得られた混合粉体に水を10wt%添加して、所定量の原料粉を金型に投入して所定の成形密度となるように加圧成型することにより、ペレット状物を得た。
次いで、下記に示される条件でペレット物の仮焼きを行なった。
成形体条件
原料混合粉重量:3g
密度:成形圧力を変えて下記表1に示すごとく種々の密度の成形体(ペレット径17φ)を作製した。なお、成形体密度は上述したように成形体の直径(縦、横の長さ)、厚み、重量を測定することによって求めた。
仮焼き条件
・仮焼き雰囲気:
窒素(N2)−100 vol%(2L/min)
・昇温速度:200℃/hr
・保持温度:975℃〜1025℃
・保持時間:2hr
・冷却温度:200℃/hr
焼成後、得られたペレット状サンプルを、乳鉢で粉砕後、ライカイ機により一定時間粉砕し、粉体特性評価性用サンプルとした。得られた各種のチタン酸バリウム粉末について、X線回折測定を行い、その結晶のc/a軸比、(111)面の半値幅ΔH(111)、および比表面積を求めた。得られた実験結果を整理して、下記表1に示した。
Figure 2006096567
表1に示される結果より、本発明の効果は明らかである。
すなわち、比表面積が5.0m2/g以上で代表されるような粒子径の小さいものを得ようと試みた場合、仮焼き前の成形体を形成する際に、成形圧力を調整して成形体を本願発明における成形体密度の範囲内(2.6g/cm3以下)に設定することにより、高い正方晶性(テトラゴナリティ)および優れた結晶性を有する原料粉末(チタン酸バリウム粉末)が得られる。
〔実験例II〕
上記実験例Iにおいて得られたチタン酸バリウム粉末サンプルの中から選定された1つ目の基準サンプル(仮焼き前の成形体密度=2.44g/cm3;チタン酸バリウム粉末の比表面積(SSA)=5.741m2/g(平均粒径=0.174μm);チタン酸バリウム粉末結晶のc/a軸比=1.010494;チタン酸バリウム粉末結晶(111)面の半値幅ΔH(111)=0.124deg.)作製と同様な手順で、仮焼き工程までを行った。
その後、得られたペレット状物を解砕し、湿式粉砕の対象となるチタン酸バリウム粉末とした。このものを下記表3に示すようにpH調整された溶液(溶媒)中にジルコニアボールとともにボールミル内に入れ、湿式粉砕した。湿式粉砕条件は以下のとおり。
湿式粉砕条件
・溶媒pH:(表2示すpHとなるように水に、適宜、アンモニア水を加えることにより調整した)
・処理される粉体量:110g
・スラリー濃度(固形分濃度):23wt%
・粉砕時間:16時間
このような湿式粉砕処理により下記表2に示されるような種々のチタン酸バリウム粉末サンプルを作製した。
このようにして得られた各実施例および比較例のサンプルについて、X線回折測定を行い、(1)結晶のc/a軸比、および(2)(111)面の半値幅ΔH(111)をそれぞれ求めた。
次いで、下記表2に示されるような種々のチタン酸バリウム粉末サンプルを用いて図1に示されるような積層型チップコンデンサを作製し、LCRメーターで、1kHz、1Vrmsの条件にて静電容量を測定し、誘電体層厚みおよび電極面積から誘電率εを求めた。
これらの測定結果を下記表2に示した。
Figure 2006096567
表2中、pH=7.4は水添加による湿式粉砕であり、これが比較の基準となる。
〔実験例III〕
上記実験例Iにおいて得られたチタン酸バリウム粉末サンプルの中から選定された2つ目の基準サンプル(仮焼き前の成形体密度=2.44g/cm3;チタン酸バリウム粉末の比表面積(SSA)=5.121m2/g(平均粒径=0.195μm);チタン酸バリウム粉末結晶のc/a軸比=1.010866;チタン酸バリウム粉末結晶(111)面の半値幅ΔH(111)=0.119deg.)作製と同様な手順で、仮焼き工程までを行った。
その後、得られたペレット状物を解砕し、湿式粉砕の対象となるチタン酸バリウム粉末とした。このものを下記表3に示すようにpH調整された溶液(溶媒)中にジルコニアボールとともにボールミル内に入れ、湿式粉砕した。湿式粉砕条件は以下のとおり。
湿式粉砕条件
・溶媒pH:(表3示すpHとなるように水に、適宜、アンモニア水を加えることにより調整した)
・処理される粉体量:110g
・スラリー濃度(固形分濃度):23wt%
・粉砕時間:16時間
このような湿式粉砕処理により下記表3に示されるような種々のチタン酸バリウム粉末サンプルを作製した。
このようにして得られた各実施例および比較例のサンプルについて、X線回折測定を行い、(1)結晶のc/a軸比、および(2)(111)面の半値幅ΔH(111)をそれぞれ求めた。
次いで、下記表3に示されるような種々のチタン酸バリウム粉末サンプルを用いて図1に示されるような積層型チップコンデンサを作製し、LCRメーターで、1kHz、1Vrmsの条件にて静電容量を測定し、誘電体層厚みおよび電極面積から誘電率εを求めた。
これらの測定結果を下記表3に示した。
Figure 2006096567
表3中、pH=7.4は水添加による湿式粉砕であり、これが比較の基準となる。
上記表2および表3の結果より、本発明における解砕・粉砕する工程は、pH=8.5〜12.5の溶液中で湿式粉砕する工程を含ませることにより、粉砕溶媒に水を用いた通常の粉砕に比べ、比表面積に対する正方晶性(テトラゴナリティ)および結晶性を高くすることができる。
本発明は、積層型チップコンデンサの誘電体層の形成材料に用いられるペロブスカイト構造を有する酸化物粉末(例えば、チタン酸バリウム粉末)の製造産業や、その酸化物粉末を利用して電子部品を製造する電子産業に利用することができる。
図1は、積層型チップコンデンサの一実施形態を示す斜視図である。 図2は、図1に示される積層型チップコンデンサのA−A線矢視断面図である。 図3は、積層構造の形成過程を分かりやすく説明するための斜視図である。
符号の説明
1…積層型チップコンデンサ
2…素子本体
7…誘電体層
11,15…外部電極
23,28…内部電極層

Claims (10)

  1. ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末を製造する際の少なくとも2種以上の主原料粉末を準備する工程と、
    これらの少なくとも2種以上の主原料粉末を混合する工程と、
    混合された主原料粉末を加圧成型して成形体を形成する工程と、
    成形体を仮焼きする工程と、
    仮焼きにより形成されたペロブスカイト構造を有する酸化物を解砕・粉砕する工程と、
    を有するペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法であって、
    前記成形体を形成する工程において、前記加圧成型された成形体の密度を2.6g/cm3以下とするとともに、前記解砕・粉砕する工程により得られたペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の比表面積を5.0m2/g以上としてなるように操作してなることを特徴とするペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法。
  2. 前記解砕・粉砕する工程により得られたペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の平均粒径が0.25μm以下となるように操作される請求項1に記載のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法。
  3. 前記酸化物粉末の比表面積が5.0〜7.0m2/gとなるように操作される請求項1に記載のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法。
  4. 前記酸化物粉末の平均粒径が0.12〜0.25μmとなるように操作される請求項2に記載のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法。
  5. 前記仮焼き前の成形体の密度が1.8〜2.6g/cm3である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法。
  6. 前記解砕・粉砕する工程は、湿式粉砕する工程を含み、該湿式粉砕がpH=8.5〜12.5の溶液中で処理されてなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法。
  7. 前記主原料粉末を仮焼きする工程は、その仮焼き雰囲気における酸素分圧Poが1×104Pa以下の範囲(酸素を含まない零を含む)である請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法。
  8. 前記主原料粉末がABO3(AはBa,Sr,Caのグループから選ばれた少なくとも1種であり、BはTi,Zrのグループから選ばれた少なくとも1種)で表されるペロブスカイト構造の酸化物のAサイトを構成する化合物粉末およびBサイトを構成する化合物粉末である請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法。
  9. 前記ペロブスカイト構造を有する酸化物粉末がチタン酸バリウム粉末であり、前記主原料粉末がチタン化合物およびバリウム化合物である請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のペロブスカイト構造を有する酸化物粉末の製造方法。
  10. 誘電体層と内部電極層とが交互に積層された素子本体を有する積層型チップコンデンサであって、該誘電体層を形成するために用いられる酸化物粉末が請求項1ないし請求項9のいずれかに記載された製造方法により形成されたものであることを特徴とする積層型チップコンデンサ。
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