JP2006093576A - 半導体装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 転写フィルム上に形成した配線導体の封止樹脂への転写を容易にする半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 電気絶縁性の転写フィルム92上に配線導体3を形成し、その配線導体3上に半導体素子86を搭載し、転写フィルム92上に配線導体3と半導体素子86の上部を封止すべく封止樹脂88を設けた後、転写フィルム92を剥離して形成する半導体装置1において、転写フィルム92上に形成する配線導体3の厚さ、粗さ、形状を、転写フィルム92の剥離力に対して配線導体3と封止樹脂88間の接着力が強まる厚さ、粗さ、形状にしたものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、半導体素子を搭載し、樹脂封止してなる半導体装置及びその製造方法に係り、特に、電気絶縁性の支持基板を有しない半導体装置及びその製造方法に関する。
従来の半導体装置(半導体パッケージ)は、半導体素子を搭載するためのダイパッド、半導体素子の電極を電気的に外部取り出すための導電性の内部接続端子、配線パターン、外部接続用パッド、外部接続端子等を有し、これを保持する基材には、電気絶縁性のガラスエポキシ樹脂、ポリイミドテープなどの配線基板を用いていた。この半導体パッケージ用の配線基板は通称モジュール基板と呼ばれている。従来のモジュール基板を用いた半導体パッケージを図8(a)および図8(b)に示す。
図8(a)および図8(b)に示すような半導体パッケージ81は、電気絶縁性の基板である、ガラスエポキシ樹脂、ポリイミドなどからなる樹脂基板82aを用いた配線基板82を備える。
配線基板82には、Cu箔などによるダイパッド86b、Cu箔などによる内部接続端子83a、配線パターン83b、外部接続用パッド83cなどで構成される配線導体83、外部端子用パッド84、スルーホール85が、フォトケミカルエッチングにより形成されている。図には示していないが、配線導体83、外部端子用パッド84、スルーホール85には、その表面に電気めっき、あるいは無電解めっき方式(方法)によるNi下地めっき、Auめっきなどが通常施されている。
この配線基板4のダイパッド86b上に、半導体素子(半導体チップ)86を導電性ペーストなどを用いて接着搭載し、さらに半導体素子電極86aと内部接続端子83aとをボンディングワイヤ87で接続してから、エポキシ樹脂などの封止樹脂88を用いて封止すると、半導体パッケージ81が完成する。通常は最後にはんだボールなどの球形の外部接続端子89を外部端子用パッド84に取り付ける。
また、最近モジュール基板を用いないコアレス構造の半導体パッケージ(コアレス半導体パッケージ)も提案されていて、すでに量産化されている。代表的なコアレス半導体パッケージの断面構造を図9に示す。
図9のコアレス半導体パッケージ91では、その底部にCu箔などからなる配線導体93を有するのみで、電気絶縁性の基板を有しないのが特徴である。すなわち、ダイパッド96b、配線導体93を構成する内部接続端子(特許文献1ではボンディング部)93a、配線パターン93b、外部接続用パッド93cなどの裏面がパッケージ底面に露出する構造になっている(例えば、特許文献1参照)。一般に、配線導体93の厚さd9は12μmである。
コアレス半導体パッケージ91の製造工程を図10(a)〜図10(e)に示す。まず、電気絶縁性の転写フィルム92上に、ダイパッド96b、配線導体93を形成する(図10(a))。その後ダイパッド96bに半導体素子86を搭載してから(図10(b))、Au線などのボンディングワイヤ87で半導体素子電極86aと内部接続端子93aを超音波接続する(図10(c))。次に、封止樹脂88によって半導体素子86を封止してから(図10(d))、最終的に転写フィルム92を剥離すると、コアレス半導体パッケージ91が得られる(図10(e))。この方式は配線導体93を封止樹脂88に転写するため、一般的に転写方式と呼ばれている。
コアレス半導体パッケージの転写方式による製造方法としては、転写フィルム92の代わりに厚い基材を用いる方法がある(例えば、特許文献2参照)が、基本的なプロセスは特許文献1に同じである。
特許文献1と類似の公知例としては、特許文献3がある。特許文献3の例では、特許文献1の配線導体が内部接続端子のみであるのに対して、さらに配線パターンと外部接続用パッドを有する点が異なる。また、特許文献3は、複数の半導体素子を転写フィルム基板上に搭載し、一体的に樹脂封止する点が特許文献1と異なっている。
特開平3−94459号公報 特開平9−252014号公報 特開平3−99456号公報
配線導体には通常電解Cu箔、圧延Cu箔などのCu箔が用いられ、このCu箔のフォトケミカルエッチング法によって、配線導体を構成するダイパッド、内部接続端子、配線パターン、外部接続用パッドなどを形成する。
図11のコアレス半導体パッケージ用の転写フィルム基板90の断面図に示すように、配線導体93の表面には機能めっき94がなされる。これは半導体素子の電極と配線導体93の接続を良好に行うためのものである。
具体的には、Au線を用いた超音波ワイヤボンディング法などで接続を行う場合の、接続用機能めっきとして行われる。この機能めっき94は、下地めっきとしての無電解Niめっきや、電気Niめっき、そしてその上の無電解Auめっきや電気Auめっきなどである。
このAuめっきは、前述のようにワイヤボンディングにおけるAu線との超音波接合を行うためのものであるが、Auめっき層は封止樹脂との密着性が極めて悪い問題がある。また下地ニッケルめっき層は、CuのAuめっき層への熱拡散防止膜(バリア膜)の役目を果たしている。
通常Niめっきは、半導体素子搭載や、ワイヤボンディングにおける加熱条件に応じて、例えば厚さ0.5〜2.0μmの範囲でなされる。Auめっきは、超音波ワイヤボンディングの接続信頼性が高く、またより短時間でめっきを行うために、そのめっき工程における最適厚さとして選定されるが、通常例えば0.1〜2.0μmの範囲で選定される。
これら機能めっき94は、半導体素子の搭載には欠かせないものであるが、一方ではCu箔と封止樹脂との接着性を阻害するものとなっている。すなわちCuの酸化物である亜酸化銅や酸化銅は、封止樹脂材料との接着が極めて高いことが知られている。この高い接着性の得られる要因は、銅酸化物と封止樹脂であるエポキシ樹脂などとが、電子の授受をともなう化学結合によって接着するからである。この高い密着性によって、Cu箔の配線導体とエポキシ樹脂などとの間には、信頼性の高い良好な接着界面が得られ、使用環境における半導体素子の動作を保証するものとなっている。
具体的には、高温加湿雰囲気、高温雰囲気下における半導体素子の動作が、Cu箔の配線導体と封止樹脂との高い接着信頼性によって維持されている。より具体的な例では、通常のリードフレームなどの1枚の金属(Cuの板)からなる配線導体では、ワイヤボンディングする内部接続端子のみにAuスポットめっきを施し、内部端子部以外はCuのみとすることによって、封止樹脂との密着性を阻害しない方策が採られている。
ところで、10〜50μmのCu箔を用いる配線導体では、Cu箔の機械的強度が低いことから、1枚の金属で加工が不可能である。このため、図11の転写フィルム基板90では、電気絶縁性の転写フィルム92の上にCu箔を貼り合わせ、フォトケミカルエッチングでCu箔の配線導体93を形成した材料が用いられる。
この転写フィルム92は、半導体パッケージの完成段階では最終的に不要なものであり、半導体パッケージの高さが高くなることや、軽量化に対してはマイナスになっている。このため、高さ1.0mm以下の超小型半導体パッケージでは、最終段階で転写フィルム92の配線導体93を半導体パッケージの封止樹脂側に転写し、転写フィルム92を剥離除去することが必要になっている。
また、Cuと比較してAuめっき層は、Auが化学的に非常に安定であることから、封止樹脂との密着性が極めて悪い。これは転写方式によってコアレス半導体パッケージを作る上での大きな障害になっている。
具体的には、内部接続端子93a、配線パターン93b、外部接続用パッド93cなどの配線導体93を半導体素子とともに樹脂封止し、その後転写フィルム92を剥離する時に、配線導体93が樹脂封止側に転写できず、転写フィルム92側に残ってしまう問題である。
これは図11に示すように、転写フィルム92と配線導体93間に接着層95があるためである。この接着層95は、Cu箔のフォトケミカルエッチングによる配線導体93の形成や、機能めっき94の形成時における配線導体93の剥離がおこらないように、これらの工程に耐えうる接着強度が求められる。この接着強度は、通常9.8N/cm(1kgf/cm)程度が必要になる。封止樹脂による封止後の転写フィルム92の剥離除去工程で、封止樹脂と配線導体93のAuめっき間の接着強度は、この転写フィルム92と配線導体93間の接着強度より高くなければならない。
しかし、Auめっきと封止樹脂間の本質的に弱い接着強度に起因して、封止樹脂による封止後に転写フィルム92を剥離すると、配線導体93は転写フィルム92側に残り、不良が多く発生する。この対策として、Cu箔の接着層95の接着力を弱く設定し、封止樹脂からの剥離をしやすくする方策が通常採られている。
しかしながら、機能めっき94の形成時に耐え、かつ封止樹脂から剥離しやすい接着剤の選定は非常に難しいという問題がある。また、接着層95の接着力を弱くし過ぎると、フォトケミカルエッチングによる配線導体93を形成する工程や機能めっき94を形成する工程で配線導体93が接着層95から剥離してしまう。これは、コアレス半導体パッケージ91の生産歩留まりや信頼性を低下させる。
以上のように、従来技術は、下記の解決すべき問題がある。
1)Auめっきを施した配線導体93の封止樹脂からの剥離による配線導体93の欠落。
2)転写フィルム92と配線導体93間の接着強度(接着層95の接着力)を弱くすることによる、フォトケミカルエッチングおよび機能めっき工程での配線導体の剥離不良の発生。
3)コアレス半導体パッケージ91の生産歩留まりの低下。
4)コアレス半導体パッケージ91の信頼性の低下。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、転写フィルム上に形成した配線導体の封止樹脂への転写を容易にする半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、電気絶縁性の転写フィルム上に配線導体を形成し、その配線導体上に半導体素子を搭載し、上記転写フィルム上に上記配線導体と上記半導体素子の上部を封止すべく封止樹脂を設けた後、上記転写フィルムを剥離して形成する半導体装置において、上記転写フィルム上に形成する上記配線導体の厚さ、粗さ、形状を、上記転写フィルムの剥離力に対して上記配線導体と上記封止樹脂間の接着力が強まる厚さ、粗さ、形状にした半導体装置である。
請求項2の発明は、上記配線導体の厚さを18μm以上にした請求項1記載の半導体装置である。
請求項3の発明は、上記配線導体の側面および表面を粗化した請求項1または2記載の半導体装置である。
請求項4の発明は、上記配線導体の側面および表面の粗さを最大粗さ(Rmax)で0.5μm以上にした請求項3記載の半導体装置である。
請求項5の発明は、上記配線導体の側面形状を刃状、R状、波状にし、あるいは上記配線導体の側面に突起を設けるなどして異形にした請求項1〜4いずれかに記載の半導体装置である。
請求項6の発明は、電気絶縁性の転写フィルム上に配線導体を形成し、その配線導体上に半導体素子を搭載し、上記配線導体と半導体素子電極を接続し、上記転写フィルム上に上記配線導体と上記半導体素子の上部を封止すべく封止樹脂を設けた後、上記転写フィルムを剥離して形成する半導体装置の製造方法において、上記転写フィルム上に形成する上記配線導体の厚さ、粗さ、形状を、上記転写フィルムの剥離力に対して上記配線導体と上記封止樹脂間の接着力が強まる厚さ、粗さ、形状にする半導体装置の製造方法である。
請求項7の発明は、上記配線導体の側面および表面を、機械的粗化法、化学的粗化法、粗化めっき法などによって粗化する請求項6記載の半導体装置の製造方法である。
請求項8の発明は、上記配線導体と上記半導体素子電極の接続を超音波ワイヤボンディング法、あるいはフリップチップ法などで行う請求項6または7記載の半導体装置の製造方法である。
上記構成によれば、転写フィルム上に形成する配線導体の厚さ、粗さ、形状を、転写フィルムの剥離力に対して上記配線導体と上記封止樹脂間の接着力が強まる厚さ、粗さ、形状にすることで、配線導体を転写フィルムから剥離しやすくなる。
例えば、配線導体の厚さを厚くすることによって、配線導体の側面の封止樹脂と接着する面積が増加し、封止樹脂から配線導体が剥離しにくくなる。
また、配線導体の側面、表面を粗化することによっても、配線導体と封止樹脂の接着面積が増加するので同じ効果が得られる。
さらに、配線導体は通常矩形であるが、この矩形形状に突起などを付けて異形の形状にすることによっても、配線導体の封止樹脂からの剥離耐力を向上させることが可能である。
本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
(1)Auめっきを施した配線導体の封止樹脂側からの剥離による配線導体の欠落を防ぎ、生産歩留まりを向上できる。
(2)フォトケミカルエッチングおよび機能めっき工程での配線導体の剥離不良の発生を防止でき、転写フィルム基板の生産歩留まりを向上できる。
(3)封止樹脂と配線導体の接着力が増加し、信頼性が向上する。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1(a)は本発明の好適な第1の実施の形態を示す半導体装置の断面図、図1(b)はその主要部を示す転写フィルム剥離前の拡大断面図である。
図1(a)および図1(b)に示すように、第1の実施の形態に係る半導体装置1は、配線導体3と、その配線導体3上に搭載される半導体素子86と、配線導体3と半導体素子電極86aとを電気的に接続するAu線などのボンディングワイヤ87と、配線導体3と半導体素子86の上部を封止する封止樹脂88とを備える。
この半導体装置1は、電気絶縁性の配線基板を有しないので、コアレス半導体パッケージとも呼ばれ、配線導体3の裏面がパッケージ底面に露出する構造である。
配線導体3は、電解Cu箔、あるいは圧延Cu箔などの金属箔で形成され、半導体素子電極86aとボンディングワイヤ87で接続される内部接続端子3a、配線パターン3b、外部接続用パッド3c、半導体素子86が搭載されるダイパッド3dなどで構成される。ダイパッド3dは、内部接続端子3a、配線パターン3b、外部接続用パッド3cと絶縁される。
ポリイミドテープなどからなる電気絶縁性の転写フィルム92は、転写フィルム本体上に接着層95を形成して構成される。配線導体3は、この接着層95上に形成される。配線導体3の側面および表面には、機能めっき94が施される。これら、転写フィルム92と、接着層95と、配線導体3と、機能めっき94とで転写フィルム基板10が構成される。
転写フィルム92は、ダイパッド3d上に半導体素子86を搭載し、内部接続端子3aと半導体素子電極86aをボンディングワイヤ87で接続し、転写フィルム92上に配線導体3と半導体素子86の上部を封止すべく封止樹脂88を設けた後、配線導体3および封止樹脂88から剥離される。
さて、半導体装置1は、転写フィルム92上に形成する配線導体3の厚さを、転写フィルム92の剥離力に対して配線導体3と封止樹脂88間の接着力が強まる厚さd1にしたものである。具体的には、配線導体3の厚さd1を18μm以上にする。
次に、半導体装置1の製造方法を説明する。
まず、転写フィルム本体上にアクリルゴム系などの接着剤を塗布して接着層95を形成し、転写フィルム92を作製する。作製した転写フィルム92上に厚さd1の電解Cu箔、あるいは圧延Cu箔を貼り合わせ、貼り合わせたCu箔をフォトケミカルエッチング法でエッチングし、配線導体3を形成する。
配線導体3の側面および表面に、下地めっきとしての無電解Niめっき、あるいは電気Niめっきを行い、その下地めっきの上に無電解Auめっき、あるいは電気Auめっきを行って機能めっき94を施し、転写フィルム基板10を作製する。
その後、ダイパッド3d上に、半導体素子86を導電性ペーストなどを用いて接着搭載し、超音波ワイヤボンディング法により、内部接続端子3aと半導体素子電極86aをボンディングワイヤ87で接続する。内部接続端子3aと半導体素子電極86aの接続は、実施例10で後述するフリップチップ法で行ってもよい。
さらに、転写フィルム92上に配線導体3と半導体素子86の上部を封止すべく封止樹脂88を設けた後、転写フィルム92を配線導体3および封止樹脂88から剥離すると、図1(a)に示した半導体装置1が得られる。
第1の実施の形態の作用を説明する。
半導体装置1は、転写フィルム92上に形成する配線導体3の厚さd1を、従来の厚さd9(一般に12μm)よりも厚くすることで、転写フィルム92の剥離力に対して配線導体3と封止樹脂88間の接着力が強まる厚さ(例えば、18μm以上)にしている。
単純に配線導体3の厚さd1を従来よりも厚くすることによって、封止樹脂88に入り込む配線導体3の表面積は、配線導体3の側面の面積が大きくなるので増加する。つまり、配線導体3の側面の封止樹脂88と接着する面積が増加し、封止樹脂88から配線導体3が剥離しにくくなる。
ただし、ダイパッド3d上には、半導体素子86が導電性ペーストなどを用いて接着搭載されるので、転写フィルム92の剥離力に対してダイパッド3dと半導体素子86間の接着力が強いことが多い。このため、ダイパッド3dの厚さは18μm以上にする必要はなく、従来の一般的な厚さ(図9の厚さd9)である12μmでもよい。ダイパッド2d以外の内部接続端子3a、配線パターン3b、外部接続用パッド3cの厚さは18μm以上にする。
これにより、半導体装置1は、配線導体3を転写フィルム92から剥離しやすく、すなわち配線導体3を封止樹脂88側に転写しやすくなるので、Auめっきを施した配線導体3の封止樹脂88側からの剥離による配線導体3の欠落を防ぎ、コアレス半導体パッケージの生産歩留まりを向上できる。
また、従来とは異なり、転写フィルム92と配線導体3間の接着強度(接着層95の接着力)を弱くする必要がないので、フォトケミカルエッチングおよび機能めっき工程での配線導体3の剥離不良の発生を防止でき、転写フィルム基板10の生産歩留まりを向上できる。
さらに、封止樹脂88と配線導体3の接着力が増加し、コアレス半導体パッケージの信頼性が向上する。
実験の結果、12μmの厚さのCu箔を用いて作製した配線導体93(図9および図11参照)と、25μmの厚さのCu箔を用いて作製した配線導体3とでは、封止樹脂88への転写率が厚さ12μmでは89%であったのに対して、25μmでは99%の転写率が得られた。ここで転写率とは、配線導体の総数に対する封止樹脂に転写された配線導体の数の占める率を言う。
通常、フォトケミカルエッチングなどの塩化第二鉄や塩化第二銅の水溶液を用いる湿式のエッチングでは、エッチングスプレイ圧力ほかの関係で、図1(b)に示すように配線導体3の断面形状が台形になる。この断面形状は封止樹脂から配線導体が抜けやすく、転写率を悪くしている原因にもなっている。したがって、配線導体3を厚くすることによって、側面部分の面積が増すことは、転写率の向上に対して非常に効果のあることが実験で実証された。
また、本実施の形態に係る製造方法によれば、生産歩留まりが高く、信頼性が高い半導体装置1を製造できる。
第2の実施の形態を説明する。
図2に示すように、第2の実施の形態に係る半導体装置は、転写フィルム92上に形成する厚さd9の配線導体93の粗さを、転写フィルム92の剥離力に対して配線導体93と封止樹脂88間の接着力が強まる粗さにしたものである。
具体的には、配線導体93の側面および表面を粗化し、粗化面21とする。配線導体93の側面および表面の粗さは、最大粗さ(Rmax)で0.5μm以上にするとよい。これは、Rmaxが0.5μm未満であると、配線導体93と封止樹脂88の接着面積があまり増加せず、転写フィルム92の剥離力に対して配線導体93と封止樹脂88間の接着力が十分強まらないからである。
粗化面21を形成するには、配線導体93の側面および表面を、化学的処理、機械的処理で粗化する方法と、粗化めっきを行って粗化する方法とがある。例えば、機械的粗化法では、Cu箔のフォトケミカルエッチングで形成された配線導体93を、エアーブラスト法などで粗化する方式がある。
また、化学的粗化法では、過酸化水素などの酸化剤を含む有機、無機の酸水溶液で処理する方法がある。図2では図示していないが、機械的粗化法や化学的粗化法で粗化面21を形成した後は、粗化面21に図1(b)の機能めっき94を施す。
さらに、粗化めっき法では、粗化のためのCuめっきを行う方法がある。粗化Cuめっきは、電解Cu箔、圧延Cu箔の接着層95側となる面の粗化方式として広く行われている方式である。従来は配線導体93の接着層95側だけを粗化したが、第2の実施の形態では配線導体の側面および表面も粗化したので、従来に比べ、転写フィルム92の剥離力に対して配線導体93と封止樹脂88間の接着力が強まった。
粗化Cuめっきは、通常は希薄な硫酸銅めっき液による電気めっき法などで行われる。また、Ni機能めっきを粗化めっきとして行う方法もある。この方法では、例えばワット浴の低濃度浴を用いた電気めっきがある。粗化Niめっきによって、その上の電気Auめっき面も粗化Niめっきの表面に倣って電気Auめっきされるので、電気Auめっきは粗化された表面になる。
第2の実施の形態に係る半導体装置によっても、配線導体93の側面、表面を粗化することで、配線導体93と封止樹脂88の接着面積が増加するので、図1の半導体装置1と同じ作用効果が得られる。
図2の変形例として、図3に示すように、厚さd1の配線導体3の側面および表面を粗化し、粗化面21としてもよい。
第3の実施の形態を説明する。
図4に示すように、第3の実施の形態に係る半導体装置は、転写フィルム92上に形成する厚さd9の配線導体43の形状を、転写フィルム92の剥離力に対して配線導体43と封止樹脂88間の接着力が強まる形状にしたものである。
具体的には、電解Cu箔あるいは圧延Cu箔をフォトケミカルエッチングすることで、配線導体43の側面形状を刃状、R状、波状にし、あるいは配線導体43の側面に突起を設けるなどして異形にする。
通常、従来の配線導体の形状(パターン)は、図5(a)の配線導体93のように平面視で矩形になっている。この形状は配線導体93の転写不良部の剥離挙動を観察することによって、非常に不利なことが判明した。すなわち、通常接着における剥離強度はN/cm(kgf/cm)で表されるように、接着界面の一線上にかかる瞬時の剥離力として表される。この剥離強度の通常の測定法は、角度90°の引き剥がし強度測定法が一般的である。
図5(a)の場合には、配線導体93が矩形であるために、剥離方向Pで示す方向に上述した転写フィルム92を剥がした時に、配線導体93の一端面(剥離方向Pと反対側の端面)93sに剥離力が瞬間的に集中して作用する。通常剥離スピードは工程時間の関係で、1cm/s(秒)程度である。この瞬間的な剥離力によって一端面93sが剥離を開始すると、剥離は配線導体93全体に亘って一気に進行し、最終的な配線導体93の上述した封止樹脂88からの完全剥離に至る。
このため、図4の配線導体43の側面形状をR状にする一例として、図5(b)は配線導体43bの形状を平面視で矩形ではなく楕円形(全体は楕円柱)にしている。図5(b)では省略したが、剥離方向は後述する図5(c)、図5(d)も含めて皆図5(a)の剥離方向Pと同じである。
平面視で矩形の配線導体93の代わりに、平面視で楕円形にした異形の配線導体43bを用いることで、転写フィルム92を剥がした時に、剥離力は剥離方向と直交する配線導体43bの端面に集中することがないため、配線導体43bの封止樹脂からの剥離耐力を向上させることが可能である。
また、図5(c)の配線導体43cに示すように、その側面形状を、平面視で4つのコーナー(角)部にRをつけてR状にしてもよい。この場合もコーナー部への剥離力の集中を防ぐことができる。
さらに、図5(d)の配線導体43dに示すように、平面視で四隅となる側面に角状の突起51を設けてもよい。この場合には、各突起51の突出方向と配線導体43dの側面とがなす角度を45°にすることで、四隅への剥離力の集中を防いでいる。
また、図4の配線導体43の側面形状を波状、あるいは刃状にする一例として、図5(a)〜図5(d)に示した配線導体93,43b〜43dの形状パターンの全周または一部に、波形、あるいは三角形状などに形成した突起を複数個配置した構造も考えられる。図5(e)の配線導体43eは、その全周に三角形状の突起52を複数個配置したものであり、図5(f)の配線導体43fは、その両側面に突起52を複数個配置したものである。
配線導体43e,43fでは、これら突起52により剥離力が分散され、また封止樹脂内の接触表面積が増加するので、よりいっそう封止樹脂との密着力が向上し、転写フィルムを剥離した際に封止樹脂内に配線導体43e,43fが残りやすくなる。
図4の変形例として、厚さd1の配線導体の形状を、図5(b)〜図5(d)のような形状としてもよい。
本発明の半導体装置には、半導体素子を組み込んだ半導体パッケージだけでなく、半導体素子のほかにコンデンサー、抵抗などのRC受動部品も組み込んだ電子装置などが含まれる。
(実施例1)
図6に示すように、50μmの厚さ、幅35mmの長尺ポリイミドテープを用いて、これにアクリルゴム系の接着剤を幅27mmで10μmの厚さに塗布し転写フィルム92を作製した。作製した転写フィルム92にはパイロットホール61を金型により穴開け加工を行った。このパイロットホール61は、TAB(Tape Automated Bonding)用テープにおける、フォトケミカルエッチング加工用の位置決め穴として用いられる。また半導体素子搭載プロセスにおける、長尺の転写フィルム基板の搬送用としても用いられる。
このようにして作製した転写フィルム92の上に幅が26.5mmで12μm、25μmの厚さの2種類の電解Cu箔をロールラミネーターを用いて貼り合わせた。その後フォトケミカルエッチング法で配線導体3,93を形成した。ケミカルエッチング液には塩化第二鉄水溶液を用いた。また配線導体3,93は、図6に示すような縦横に配列された試験パターンを用いた。試験用の配線導体3,93の形状は、幅1.0mm、長さ2.0mmの矩形状とした。
配線導体3,93を形成した後、図1(b)の機能めっき94として、配線導体3,93の全面にワット浴による電気Niめっき液を2μmの厚さに施してから、その上にシアン化金カリウムを金属塩とする電気Auめっき浴を用いて0.5μmの厚さのAuめっきを行い、転写フィルム基板を作製した。
その後、配線導体3,93の全面にエポキシ樹脂系の封止樹脂を、樹脂成形金型を用いて成形し封止した。実施例1では剥離試験のため、半導体素子の搭載およびワイヤボンディングは省略した。封止後、ポリイミドの転写フィルム92を図6に示す剥離方向Pの方向に剥離した。剥離は角度90°の剥離方式として、剥離速度を1.0cm/sの速度とした。
その結果、Cu箔厚さ12μmの配線導体93の転写率は85%であったのに対して、Cu箔厚さ25μmの配線導体3では99%の転写率が得られた。
(実施例2)
実施例1において、Cu箔厚さ12μm、25μmのほかに、35μm厚さのCu箔を用いて比較した。この結果、Cu箔厚さ35μmの配線導体3では転写率100%が得られた。
コアレス半導体パッケージは、通常、前述のTABテープ製造ラインで製造した転写フィルム基板10を用いて組み立てが行われる。TABテープでは通常12μm、25μmなどのCu箔厚さが一般的である。
しかしながら、コアレス半導体パッケージの主な用途となっている信号増幅用高周波デバイスや、数多くのRC受動素子を搭載するシステムデバイス用などでは、配線パターンの密度は通常0.1mmピッチ以上であることから、35μm厚さのCu箔でもフォトケミカルエッチングによる配線導体3の形成が可能である。
35μm厚さのCu箔は、通常配線密度のそれほど高くないFPC(フレキシブルプリント回路板)で用いられているが、本発明者らはこの点に着目し、TABテープ配線導体にこの厚いCu箔の採用を決定した。
(実施例3)
実施例1における矩形状の配線導体3,93両側を、直径1.0mmの半円形状とした。この結果、Cu箔厚さ12μmの配線導体93では99%の転写率が、またCu箔厚さ25μmの配線導体3では100%の転写率が得られた。
(実施例4)
実施例1において、配線導体3,93の粗化を粗化銅めっき法で行った。手順は、フォトケミカルエッチングによる配線導体3,93の形成後、配線導体3,93を電気粗化Cuめっき法で粗化してから、実施例1と同様の機能めっき94を行った。
電気粗化Cuめっき浴には硫酸銅濃度が50g/Lの低濃度常温浴を用いた。Cuめっきの厚さは2.0μmとした。粗化Cuめっきの粗さは、配線導体3,93の表面でRmax1.5μmであった。また、電気Niめっきおよび電気Auめっきの機能めっき94後の粗さは同じくRmax2.0μmであった。
ここで、表面粗さは触針式の表面粗さ計((株)東京精密のSurfcom(サーフコム)1400D)で測った。基準長さは0.8mm、カットオフ値は0.8mmとした。
この結果、転写率は、Cu箔厚さ12μmの配線導体93で99%、Cu箔厚さ25μmの配線導体3で100%であった。
(実施例5)
実施例1において、配線導体3,93の代わりに、図5(d)の配線導体43dを形成した。突起51の形状は幅0.3mm、長さ0.5mmである。この結果、転写率は、Cu箔厚さ12μmの配線導体43dで95%、Cu箔厚さ25μmの配線導体で100%であった。
(実施例6)
実施例1において、電気Niめっきに粗化電気Niめっき液を用いた。粗化電気Niめっきの粗さは電気Auめっき後で、Rmax0.5μmであった。この結果、転写率は、Cu箔厚さ12μmの配線導体93で95%、Cu箔厚さ25μmの配線導体3で100%であった。
(実施例7)
実施例4において、配線導体3,93の粗化を化学的粗化法で行って、電気粗化Cuめっき方式と比較した。化学粗化処理には過酸化水素を添加した硫酸水溶液を用いた。過酸化水素添加の硫酸水溶液は、Cu、Cu合金、Ni、Ni合金などの金属の組織観察用のエッチング溶液として用いられている。原理は金属の転移や空孔などの格子欠陥や、不純物を包含して格子歪みの発生した欠陥部を選択的にエッチングして、いわゆるエッチピットを形成して表面を粗化する作用にある。この方式による粗化後の配線導体3,93の表面粗さは、Rmax0.5μmであった。この結果、転写率は、Cu箔厚さ12μm、25μmの配線導体93,3ともに100%であった。
(実施例8)
図7に示すように、実施例1において、半導体素子を搭載できるダイパッド3dを含む配線導体3,93をフォトケミカルエッチングで作り、実際に半導体素子搭載、Au線による超音波ワイヤボンディングを行って、同様の封止および剥離実験を行った。
配線導体3,93は、図7に示すように、ダイパッド3dの周囲に、内部接続端子3a、配線パターン3b、外部接続用パッド3cを一体化して配列した試験パターンを用いた。ダイパッド周囲の配線導体の形状は、幅0.15mm、長さ0.3mmとした。またダイパッド寸法は1.5mm×2.0mmとした。
配線導体3,93を形成してから、機能めっき94を実施例1と同様に行った。その後、半導体素子(1.3mm×1.5mm、厚さ0.2mm)をエポキシ樹脂系のAgペーストを用いてダイパッド3dに接着搭載し、半導体素子の電極と内部接続端子とを、30μmφのAu線で超音波ワイヤボンディング方式で接続した。
さらに、半導体素子と配線導体3,93の上部全面を樹脂成形用金型を用いてエポキシ樹脂系封止材で封止した。最終的に転写フィルム92を封止樹脂88と配線導体3,93から剥離して図1(a)の半導体装置1を完成した。
この結果、電解Cu箔厚さ12μmの配線導体93の転写率は80%であった。また、電解Cu箔厚さ25μmの配線導体3の転写率は99%であった。配線導体3,93の剥離はすべてダイパッド3dではなく、ダイパッド3d周囲の配線導体であった。ダイパッド3dには半導体素子が搭載されており、剥離が起こりにくいと考えられる。
(実施例9)
実施例8において、電解Cu箔の厚さを35μmとして行った。この結果、転写率は100%であった。
(実施例10)
実施例8において、半導体チップの搭載をフリップチップ法で行った。フリップチップ接続法とは半導体素子の電極に突起状のバンプを作り、半導体電極を下面として超音波接続する、いわゆるフェイスダウン接続法と呼ばれる接続方式である。実施例10では20μmの高さのAuバンプを電気Auめっき法により半導体素子の電極に形成して、超音波接合方式によりAuめっき配線導体の上にAuバンプを接続した。
転写フィルム92の剥離試験の結果は、電解Cu箔厚さ12μmの配線導体93の転写率は80%であった。また、電解Cu箔厚さ25μmの配線導体3の転写率は99%であった。
図1(a)は本発明の好適な第1の実施の形態を示す半導体装置の断面図、図1(b)はその主要部を示す転写フィルム剥離前の拡大断面図である。 第2の実施の形態である半導体装置の主要部を示す転写フィルム剥離前の拡大断面図である。 図2の変形例である半導体装置の主要部を示す転写フィルム剥離前の拡大断面図である。 第3の実施の形態である半導体装置の主要部を示す転写フィルム剥離前の拡大断面図である。 図5(a)は背景技術の配線導体の平面図、図5(b)〜図5(f)は図4に示した半導体装置の配線導体の一例を示す平面図である。 実施例における転写フィルム基板の一例を示す平面図である。 実施例における転写フィルム基板の一例を示す平面図である。 図8(a)は背景技術の配線基板を用いた半導体パッケージの断面図、図8(b)はその平面図である。 背景技術のコアレス半導体パッケージの断面図である。 図10(a)〜図10(e)は、図9に示したコアレス半導体パッケージの製造方法の一例を示す断面図である。 背景技術の転写フィルム基板の拡大断面図である。
符号の説明
1 半導体装置
3 配線導体
86 半導体素子
86a 半導体素子電極
87 ボンディングワイヤ
88 封止樹脂
94 機能めっき
d1 配線導体の厚さ

Claims (8)

  1. 電気絶縁性の転写フィルム上に配線導体を形成し、その配線導体上に半導体素子を搭載し、上記転写フィルム上に上記配線導体と上記半導体素子の上部を封止すべく封止樹脂を設けた後、上記転写フィルムを剥離して形成する半導体装置において、上記転写フィルム上に形成する上記配線導体の厚さ、粗さ、形状を、上記転写フィルムの剥離力に対して上記配線導体と上記封止樹脂間の接着力が強まる厚さ、粗さ、形状にしたことを特徴とする半導体装置。
  2. 上記配線導体の厚さを18μm以上にした請求項1記載の半導体装置。
  3. 上記配線導体の側面および表面を粗化した請求項1または2記載の半導体装置。
  4. 上記配線導体の側面および表面の粗さを最大粗さ(Rmax)で0.5μm以上にした請求項3記載の半導体装置。
  5. 上記配線導体の側面形状を刃状、R状、波状にし、あるいは上記配線導体の側面に突起を設けるなどして異形にした請求項1〜4いずれかに記載の半導体装置。
  6. 電気絶縁性の転写フィルム上に配線導体を形成し、その配線導体上に半導体素子を搭載し、上記配線導体と半導体素子電極を接続し、上記転写フィルム上に上記配線導体と上記半導体素子の上部を封止すべく封止樹脂を設けた後、上記転写フィルムを剥離して形成する半導体装置の製造方法において、上記転写フィルム上に形成する上記配線導体の厚さ、粗さ、形状を、上記転写フィルムの剥離力に対して上記配線導体と上記封止樹脂間の接着力が強まる厚さ、粗さ、形状にすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
  7. 上記配線導体の側面および表面を、機械的粗化法、化学的粗化法、粗化めっき法などによって粗化する請求項6記載の半導体装置の製造方法。
  8. 上記配線導体と上記半導体素子電極の接続を超音波ワイヤボンディング法、あるいはフリップチップ法などで行う請求項6または7記載の半導体装置の製造方法。
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