JP2006089390A - キガマイシノン類及びその製造方法、並びに、該キガマイシノン類を含む薬用組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、新規な抗腫瘍剤や抗菌剤を探索し、スクリーニングすることは容易ではない一方、該新規な抗腫瘍剤や抗菌剤の開発が遅れれば、前記癌の化学療法や前記感染症の治療に支障をきたすという問題がある。
このため、前記薬剤耐性が発現する度に、新規な抗腫瘍剤や抗菌剤を更に探索し、スクリーニングすることが必要となり、前記癌の化学療法や前記細菌感染症の治療においては、既知の化合物とは異なる化学構造を有し、かつ優れた活性を示す新規化合物の発見乃至創製をすることが常に望まれている。
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 下記一般式で表される化合物及びその誘導体のいずれかであることを特徴とするキガマイシノン類である。
<2> 下記構造式(1)で表される化合物及びその誘導体のいずれかであることを特徴とするキガマイシノン類である。
<4> 無機塩がアルカリ金属塩から選択され、有機塩が第4級アンモニウム塩から選択される前記<1>から<3>のいずれかに記載のキガマイシノン類である。
<5> グラム陽性菌及びグラム陰性菌の少なくとも1種に対して抗菌活性を示し、癌細胞に対して増殖抑制活性を示す前記<1>から<4>のいずれかに記載のキガマイシノン類である。
<6> 薬効を必要とする対象部位に対して0.01μM以上の濃度で使用される前記<8>から<9>のいずれかに記載のキガマイシノン類である。
<7> 薬効を必要とする対象部位に対して0.1μM以上の濃度で使用される前記<8>から<9>のいずれかに記載のキガマイシノン類である。
<8> 癌細胞に対して使用される前記<6>から<7>のいずれかに記載のキガマイシノン類である。
<9> 受託番号FERM P−15442のアミコラトプシスML630−mF1株を培養し、その培養物から前記<1>から<8>のいずれかに記載のキガマイシン類を分離し、該キガマイシン類を酸水溶液にてインキュベーション処理することを特徴とするキガマイシノン類の製造方法である。
<10> 培養が、液体振とう培養である前記<9>に記載のキガマイシノン類の製造方法である。
<11> 前記<1>から<8>のいずれかに記載のキガマイシノン類を含むことを特徴とする薬用組成物である。
<12> 抗菌剤及び抗腫瘍剤のいずれかとして用いられる前記<11>に記載の薬用組成物である。
<13> キガマイシノン類を、薬効を必要とする対象部位における濃度が0.01μM以上となる濃度で含有する前記<11>から<12>のいずれかに記載の薬用組成物である。
<14> キガマイシノン類を、薬効を必要とする対象部位における濃度が0.01μM以上となる濃度で含有する前記<11>から<12>のいずれかに記載の薬用組成物である。
前記無機塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、などが好適に挙げられる。なお、前記アルカリ金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、などが挙げられ、前記アルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム塩、などが挙げられる。
前記有機塩としては、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、などが挙げられる。
前記キガマイシノン類は、酸性物質であるため、前記第4級アンモニウム塩などの有機塩基との塩、ナトリウム等のアルカリ金属(金属)との塩、などが好適に挙げられる。
A) 外観及び性質: 黄色粉末又は結晶
B) 融点: 230〜235℃(分解)
C) 比旋光度[α]D 24: −438°(c0.3、クロロホルム)
D) HPLCでの保持時間(Retention time)値: 3.08分
カプセルパック(タイプUG120 5μm、4.6mm×150mm、資生堂製)の高速液体クロマトグラフィーで溶出溶媒として40%アセトニトリル/60%精製水で溶出して測定した場合である。
E) ESI−マススペクトル(m/z): 551(M+H)+、574(M+Na)+
F) 高分解能ESI−マススペクトル: 実験値574.1336(M+Na)+、計算値:574.1325(C28H25NO11Naとして)
G) 分子式: C28H25NO11
H) 紫外部吸収スペクトル: キガマイシノン濃度10μg/mlで測定した(図1)。
メタノール溶液中で測定したUV吸収スペクトル。主なピークは次のとおりである。λmaxnm(ε)219(32,900)、253(32,200)、355(14,300)
I) 赤外部吸収スペクトル(KBr錠剤法): 図2
νmax(cm−1)3495、2885、1645、1610、1465、1440、1275、1200、1090
J) 1H−NMRスペクトル(CDCl3/CD3OD=2:1,TMS): 図3
K) 13C−NMRスペクトル(CDCl3/CD3OD=2:1,TMS): 図4
本発明のキガマイシノン類が抗菌性を示す細菌としては、例えば、スタヒロコッカス属、ミクロコッカス属、バシルス属、コリネバクテリウム属、エシェリヒア属、シゲラ属、サルモネラ属、プロテウス属、プロビデンシア属、セラチア属、クレブシエラ属、クレブシエラ属、ミコバクテリウム属、カンディダ属、などが挙げられる。
これらの中でも、本発明のキガマイシノン類は、スタヒロコッカス属、ミクロコッカス属、バシルス属、コリネバクテリウム属、エシェリヒア属、シゲラ属、サルモネラ属、プロビデンシア属、などに対して強い抗菌性を示し、スタヒロコッカス属、ミクロコッカス属、バシルス属、コリネバクテリウム属に対して、特に強い抗菌性を示す。
これらの細菌の中でも、本発明のキガマイシノン類は、スタヒロコッカス・アウレウス、ミクロコッカス・ルテウス、バシルス・サブチリス、バシルス・セレウス、コリネバクテリウム・ボビス、エシェリヒア・コリ、シゲラ・デイセンテリエ、サルモネラ・エンテリチジス、プロビデンシア・レトゲリに対して強い抗菌性を示し、具体的な菌株としては、例えば、スタヒロコッカス・アウレウスFDA209P、スタヒロコッカス・アウレウス・スミス、スタヒロコッカス・アウレウスMS9610、スタヒロコッカス・アウレウスMRSA No.5、スタヒロコッカス・アウレウスMRSA No.17、スタヒロコッカス・アウレウスMS16526、スタヒロコッカス・アウレウスTY−04282、ミクロコッカス・ルテウスFDA16、ミクロコッカス・ルテウスIFO3333、ミクロコッカス・ルテウスPCI1001、バシルス・サブチリスNRRL B−558、バシルス・サブチリスPCI219、バシルス・セレウスATCC10702、コリネバクテリウム・ボビス1810、エシェリヒア・コリNIHJ、エシェリヒア・コリBEM11、エシェリヒア・コリBE1186、シゲラ・デイセンテリエJS11910、サルモネラ・エンテリチジス、プロビデンシア・レトゲリGN466に対して強い抗菌性を示す。
本発明のキガマイシノン類を抗癌剤として使用する場合、該キガマイシノンの濃度としては、薬効を必要とする対象部位に対して、0.01μM以上で使用されるのが好ましく、0.1μM以上で使用されるのがより好ましい。
本発明のキガマイシノン類の製造方法は、受託番号FERM P−15442のアミコラトプシスML630−mF1株を培養し、その培養物から本発明の前記キガマイシン類を分離し、該キガマイシン類を酸水溶液にてインキュベーション処理することを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の処理を含む。
前記キガマイシンの誘導体としては、例えば、前記キガマイシノンの誘導体の説明において説明したものと同様のものが挙げられる。
前記キガマイシンの塩としては、例えば、前記キガマイシノンの塩の説明において説明したものと同様のものが挙げられる。
また、前記培養の条件(例えば、栄養培地、温度、接種菌、日数、方式等)については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記窒素源としては、例えば、市販されているペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スティープ・リカー、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、コーン・グルテン・ミールコットン・シード・ミール、トーストソーヤ、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記炭素源としては、例えば、グリセロール、デンプン、グルコース、ガラクトース、デキストリン、コーンスターチ、マルトース等の炭水化物、脂肪、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機塩類としては、例えば、食塩、炭酸カルシウム、などが挙げられる。
前記微量金属としては、例えば、マンガン、などが挙げられる。
前記接種菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記アミコラトプシスML630−mF1株の斜面(スラント)培養物、液体振とう培養物、などが好適に挙げられる。なお、前記接種菌の接種量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、前記遠心分離は、公知の遠心分離機を用いて適宜選択した遠心条件にて行うことができる。
なお、前記酸水溶液は、他の溶液等と混合して使用してもよく、このような併用が可能な溶液等としては、例えば、ジメチルスルホキシド、などが好適に挙げられる。
前記インキュベーション処理の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、温度としては0〜100℃程度であり、20〜40℃が好ましく、30〜40℃がより好ましく、時間としては1分間〜100時間程度である。
該インキュベーション処理により、前記キガマイシン類が前記キガマイシノン類に変換される。
こうして精製されたキガマイシノンについては、更に、該キガマイシノンを含む画分を濃縮し、メタノール:クロロホルム等で充填したカラム等に通導させる等により、該キガマイシノンの精製粉末を得ることができる。
本発明の薬用組成物は、本発明の前記キガマイシノン類を含むこと以外には、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択したその他の成分を含有してなる。
前記薬用組成物における前記キガマイシノン類の含有量が、薬効を必要とする対象部位に対して、0.01μM未満となる量であると、抗腫瘍性乃至抗癌性が十分でないことがあり、0.1μM以上となる量であると、癌細胞の生存率を低下させることができ、0.01μM以上となる量であると、極めて効果的に癌細胞の生存率を低下させることができる点で有利である。
前記その他の成分としては、製薬学的に許容できる常用の固体又は液状担体、例えば、エタノール、水、デンプン、などが好適に挙げられる。
前記薬用組成物は、抗菌剤、抗腫瘍剤等として好適に使用することができ、細菌感染症の治療等に用いる抗菌剤、癌細胞に細胞死を誘導する活性を有する抗腫瘍剤乃至抗癌剤、として特に好適に使用することができる。
ポテトスターチ2質量%、グルコース2質量%、酵母エキス0.5質量%、塩化ナトリウム0.25質量%、トーストソーヤミール2質量%、炭酸カリウム0.32質量%、硫酸銅0.0005質量%、塩化マンガン0.0005質量%、及び硫酸亜鉛0.005質量%を含む液体培地(pH7.4に調整)を三角フラスコ(500ml容)に110mlずつ分注し、常法により120℃で20分間滅菌したものに、寒天斜面培地に培養したアミコラトプシスML630−mF1株(FERM P−15442)を接種(接種量:一白金耳)し、その後、30℃で5日間回転振とう培養した。これにより種母培養液を得た。
次に、該シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる留出フラクションを、クロロホルム−メタノール混液で展開し、フラクションNo.133〜170について濃縮乾固して325.2mgの固形物を得、フラクションNo.171〜301について濃縮乾固して256.2mgの固形物を得た。
そして、その留出(溶出)分画No.74〜85を集めてキガマイシンA25.8mgを得、留出(溶出)分画No.55〜60を集めてキガマイシンDとキガマイシノンとの混合物(キガマイシンDの質量:キガマイシノンの質量=46:54)を7.9mg得た。
前記キガマイシンD15μg/mlの1.5容量%ジメチルスルホキサイド−0.1N塩酸水溶液を、恒温槽内で37℃で30分間インキュベーション処理すると、その28.6質量%がキガマイシノンに変換した。
また、前記キガマイシンD15μg/mlの0.01N塩酸水溶液を、恒温槽内で37℃で2時間インキュベーション処理すると、37.1質量%がキガマイシノンに変換した。
また、前記キガマイシンD(589mg)をテトラヒドロフラン(4ml)及び0.2N塩酸(1.5ml)に溶解し、室温で20時間撹拌して、キガマイシノンを生成させる反応を行った。こうして得た反応液に、水(100ml)を加え、酢酸エチル(100ml)を用いて、生成したキガマシノンの抽出を行った。次に、得られた抽出液に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、濾過し、該抽出液を濃縮した。次に、濃縮したキガマイシノンの精製は、40容量%アセトニトリル水を用いて平衡化しておいたODSカラム(50ml)に濃縮液を通導し、40容量%アセトニトリル水を用いて溶出することにより、行った。次に、キガマイシノンを含む画分を濃縮し、メタノール:クロロホルム(容量比)=5:1で充填したセファデックスLH−20に通導し、該キガマイシノンを含む画分を濃縮し、該キガマイシノンの精製粉末120mgを得た。
得られたキガマイシノンの理化学的性状を測定したところ、以下のとおりであった。
A) 外観及び性質: 黄色粉末又は結晶
B) 融点: 230〜235℃(分解)
C) 比旋光度[α]D 24 :−438°(c0.3、クロロホルム)
D) HPLCでの保持時間(Retention Time)値: 3.08分
カプセルパック(タイプUG120 5μm、4.6mm×150mm、資生堂製)の高速液体クロマトグラフィーで溶出溶媒として40容量%アセトニトリル水で溶出して測定した場合である。
E) ESI−マススペクトル(m/z): 552(M+H)+、574(M+Na)+
F) 高分解能ESI−マススペクトル: 実験値=574.1336(M+Na)+、計算値=574.1325(C28H25NO11Naとして)
G) 分子式: C28H25NO11
H) 紫外部吸収スペクトル: キガマイシノン濃度10μg/mlで測定した(図1)。図1は、メタノール溶液中で測定したUV吸収スペクトルであり、主なピークは、次のとおりである。即ち、λmaxnm(ε)219(32,900)、253(32,200)、355(14,300)
I) 赤外部吸収スペクトル(KBr錠剤法): 図2に示した。
νmax(cm−1)3495、に2885,1645,1610,1465、1440、1275,1200,1090
J) 1H−NMRスペクトル(CDCl3/CD3OD=2:1,TMS): 図3に示した。
K) 13C−NMRスペクトル(CDCl3/CD3OD=2:1,TMS): 図4に示した。
A) 抗菌活性
本発明のキガマイシノン類の各種細菌に対する最低発育阻止濃度は、次の表1に示す通りであった。この抗菌スペルトルは、日本化学療法学会標準法に基づき、ミュラーヒントン寒天培地で倍数希釈法により測定した。
前記キガマイシノン類は、ヒト膵臓癌細胞PANC−1細胞で、通常の細胞培養の条件下より栄養飢餓状態で細胞死を惹起する作用が強い。この結果を図5に示した。キガマイシノンは、通常の培地を使用した場合(通常状態)では、10.7μM濃度で50%の細胞死を来たしたが、栄養飢餓状態では、僅かに0.0195μM濃度でも50%の細胞死を惹起した。一般に固形癌では、血管新生が追い付かずに前記栄養飢餓状態にあると考えられ、上記結果より、前記キガマイシノンは、栄養条件のいい正常部位(通常状態)と比べて、前記固形癌等の前記栄養飢餓状態にある部位に選択的な活性を示し、制癌活性を示すと考えられる。
本発明のキガマイシノン類の製造方法としては、本発明の前記キガマイシノン類の製造に好適に使用することができる。
本発明の薬用組成物は、抗菌剤、抗腫瘍剤として好適に使用することができ、細菌感染症の治療に用いる抗菌剤、癌細胞に細胞死を誘導する活性を有する抗腫瘍剤、として特に好適に使用することができる。
Claims (10)
- 誘導体が、無機塩及び有機塩のいずれかである請求項1から2のいずれかに記載のキガマイシノン類。
- 無機塩がアルカリ金属塩から選択され、有機塩が第4級アンモニウム塩から選択される請求項1から3のいずれかに記載のキガマイシノン類。
- グラム陽性菌及びグラム陰性菌の少なくとも1種に対して抗菌活性を示し、癌細胞に対して増殖抑制活性を示す請求項1から4のいずれかに記載のキガマイシノン類。
- 請求項1から5のいずれかに記載のキガマイシノン類を製造する方法であって、受託番号FERM P−15442のアミコラトプシスML630−mF1株を培養し、その培養物からキガマイシン類を分離し、該キガマイシン類を酸水溶液にてインキュベーション処理することを特徴とするキガマイシノン類の製造方法。
- 培養が、液体振とう培養である請求項6に記載のキガマイシノン類の製造方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載のキガマイシノン類を含むことを特徴とする薬用組成物。
- 抗菌剤及び抗腫瘍剤のいずれかである請求項8に記載の薬用組成物。
- キガマイシノン類を、薬効を必要とする対象部位における濃度が0.01μM以上となる量含有する請求項8から9のいずれかに記載の薬用組成物。
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