JP2006085845A - 多層光情報記録媒体及び光情報記録再生装置 - Google Patents

多層光情報記録媒体及び光情報記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 個々の記録膜の光透過率を高く保ちつつ反射率を高め、記録再生光の光効率を向上させた多層光情報記録媒体を提供すること。
【解決手段】 複数の記録膜を有する多層光情報記録媒体の1個の記録膜200は、Ag-O層212,214及びSiO層211,213が交互に繰り返し積層された積層型選択層210と、記録材料層230とを有し、レーザ光250の照射により発熱した記録材料層230から伝達された熱エネルギーによりAg−O層212,214に高反射部が形成され、記録再生光の光効率が向上する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、多層光情報記録媒体等に関し、より詳しくは、記録再生光の光効率が向上する多層光情報記録媒体等に関する。
近年、マルチメディア化に対応して、大量のデータを高密度で記録し、かつ迅速に記録再生する情報記録媒体としての光情報記録媒体(光ディスク)が注目されている。このような光ディスクとしては、例えば、CDまたはレーザーディスク等のように、ディスク製作時にスタンピングされた情報の再生のみが行われる再生専用型ディスク、CD−R等のように、一回だけの記録を可能とした追記型ディスク、光磁気記録方式や相変化記録方式を用いて、何回もデータの書き換え消去が可能な書き換え型ディスク等が知られている。
一方、光ディスクにデータを記録し、記録されたデータを再生する方法は、レーザ光を対物レンズを用いて回折限界にまで絞り込んだ光スポットを照射して行われる。この光スポットの径は、レーザ光の波長λと対物レンズの開口数NAとを用いて(λ/NA)程度となる。近年の光ディスクの大容量化の要求に応えるべく、これらの光ディスク製品は高密度化され、これらに情報を記録再生するための光ヘッド装置は、光ディスク面上に集光するスポット径を小さくする必要があるために、レーザ光源の波長を650nmまたは635nmとしたり、対物レンズの開口数(NA)を0.6にしている。さらに、次世代の光記録においてはレーザ光源の波長を400nm程度、NAを0.6以上とすることにより、より大きな記録密度を得ることが提案されている。
さらに、レーザ光源の短波長化や高NA化が限界に達すると、新しい大容量化技術として、複数の記録膜を有する多層光情報記録媒体が注目されている。このような多層光情報記録媒体としては、2層再生専用型ディスク(DVD−ROM)がすでに商品化されており、同様に、2層追記型ディスクや2層書き換え型ディスクも開発が進められている。また、3層以上の多層光情報記録媒体も盛んに検討されており、今後の大容量化技術として期待されている。
これらの多層光情報記録媒体では、記録再生光の光入射側から見て奥側に設けた記録膜にアクセスする際、入射光が手前の記録膜を透過する必要があり、そのため、手前の記録膜の透過率を予め高くしておく必要性がある。その一方、記録膜の反射率は十分に高いことが求められるため、透過率と反射率との相反するバランスをとり、両者を同時に高める膜設計がなされる。また、光入射側から見て奥側になるほど記録膜の反射率が高いことが必要となるために、透過率と反射率とのバランスを考慮すると、奥から2番目の記録膜の膜設計が最も難しく、記録膜の総数はこの膜設計が可能な範囲に限定される。
このような膜設計の方法として、Ge−Sb−Te等の記録材料からなる半透明記録層と、所定温度以下では光透過性の銀酸化物からなる可変反射層との積層体からなる記録膜を複数備えた多層記録媒体が報告されている(特許文献1参照)。この多層記録媒体においては、記録再生光が照射されることにより半透明記録層が局所的に発熱し、その熱が伝達されることにより可変反射層の銀酸化物が銀と酸素とに分解し、その結果、可変反射層に高反射部が形成される。この高反射部は、複数の記録膜の中の記録再生光がアクセスする記録膜のみに形成されるため、信号検出が可能となるとされている。
国際公開第02/031825号パンフレット
ところで、特許文献1に記載されているような方法を用いても、記録膜の総数を増加させるためには以下のような問題が生じる。即ち、複数の記録膜を有する多層記録媒体の記録膜の1つを、所定の記録材料からなる記録層と、所定の温度以上で高反射部が形成される可変反射層とを組み合わせた構造とした場合でも、記録膜の透過率を高く保ち、且つ、反射率や吸収率を高く保つことは困難である。また、多層になるほど、記録再生光の光入射側から見て奥側に設けた記録膜の反射率や吸収率をさらに大きくする必要がある。
本発明は、このような技術的課題を解決すべくなされたものである。
即ち本発明の目的は、複数の記録膜を有する多層光情報記録媒体において、個々の記録膜の透過率を高く保ちつつ、記録膜の反射率や吸収率を高め、記録再生光の光効率が向上する多層光情報記録媒体を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、多層光情報記録媒体に情報を記録し、記録された情報を再生する光情報記録再生装置を提供することにある。
かかる目的を達成するために、本発明によれば、光照射によって情報信号が記録再生される複数の透明又は半透明な記録膜を備え、複数の記録膜の少なくとも1つの記録膜は、記録膜に印加される所定のエネルギーにより光学特性が変化する層が複数含まれた積層構造を有することを特徴とする多層光情報記録媒体が提供される。
本発明が適用される多層光情報記録媒体において、複数の記録膜の中の少なくとも1つの記録膜は、印加される所定のエネルギーにより記録膜の反射率及び/又は吸収率が増大することを特徴とすれば、記録再生光の光効率を向上させることができる。即ち、透明又は半透明な記録膜は、エネルギー印加により、光学特性である反射率及び/又は吸収率が増大するので、透過率を高く保ちつつ、記録膜の反射率や吸収率を高めることが可能となる。また、透明又は半透明な記録膜の光学特性を変化させるために印加されるエネルギーとしては、所定の波長を有するレーザ光が好ましい。
本発明が適用される多層光情報記録媒体において、少なくとも1つの記録膜が有する積層構造は、印加される所定のエネルギーにより光学特性が変化する層と、印加される所定のエネルギーに対して安定な性質の材料からなる層とが、繰り返し交互に積層された積層体(積層型選択層)であることが好ましい。このような積層型選択層を有する記録膜に所定のエネルギーを印加し、光学特性の変化を増幅することができる。
さらに、記録膜は、上述した積層型選択層に対して光照射される側に設けた所定の光記録材料を含有する記録材料層を有することが好ましい。記録材料層が、例えば、有機色素または相変化材料等の光照射により発熱する材料を用いて形成されるものである場合は、これらの材料の発熱反応によって生じる熱エネルギーが積層型選択層に印加され、高反射部等が形成される。
次に、本発明によれば、複数の記録膜を有する多層光情報記録媒体の光情報記録再生装置であって、印加される所定のエネルギーにより光学特性が変化する層が複数含まれた積層構造を有する記録膜に、エネルギーを印加するエネルギー印加手段と、記録膜に光情報の記録再生を行う記録再生手段と、を有することを特徴とする光情報記録再生装置が提供される。このような光情報記録再生装置におけるエネルギー印加手段は、光ヘッドから照射されるレーザ光を所望の記録膜に集光させる機構を有することが好ましい。
かくして本発明によれば、複数の記録膜を有する多層光情報記録媒体において、個々の記録膜の透過率を高く保ちつつ、記録膜の反射率や吸収率を高め、記録再生光の光効率が向上する多層光情報記録媒体が得られる。
以下、添付図面に基づき、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態)について詳述する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、ここでは、カバー層側から光再生光を入射する方式の膜面入射型多層光情報記録媒体について述べるが、本発明によれば、基板側から記録再生光を入射する方式の基板入射型多層光情報記録媒体に適用することもできる。尚、本実施の形態においては、多層光情報記録媒体に記録再生光が入射する側を多層光情報記録媒体の上側とし、一方、記録再生光が入射する側と反対側を多層光情報記録媒体の下側として説明を行う。例えば、膜面入射型多層光情報記録媒体の場合は、カバー層側が、多層光情報記録媒体の上側となり、ディスク基板側が多層光情報記録媒体の下側となる。
(多層光情報記録媒体)
図1は、本実施の形態が適用される多層光情報記録媒体を説明する図である。図1には、6個の記録膜を有する膜面入射型の多層光情報記録媒体100の層構成が示されている。多層光情報記録媒体100は、ディスク基板110と、このディスク基板110上に積層された6個の記録膜121〜記録膜126と、記録膜121〜記録膜126の、2個の記録膜間にそれぞれ設けられた5個のスペーサー層131〜スペーサー層135と、記録膜126上に設けられたカバー層140と、から構成される。図1に示すように、多層光情報記録媒体100は、カバー層140側から入射するレーザ光150を記録再生光として6個の記録膜121〜記録膜126に情報が記録され、記録された情報が再生される。
(記録膜)
次に、記録膜121〜記録膜126について説明する。
図2は、記録膜の第1の実施形態を説明する図である。図2は、高光透過性の記録膜200の構造が示されている。図2に示すように、記録膜200は、SiOからなる層とAg−Oからなる層との積層体である積層型選択層210と、積層型選択層210上の入射するレーザ光250側に設けられた下地層220と、所定の記録材料からなる記録材料層230と、記録材料層230上に積層された誘電体層240と、を有している。
(積層型選択層)
さらに、積層型選択層210は、誘電体であるSiOからなるSiO層211及びSiO層213と、所定の温度以上に熱せられることにより分解し、光学特性の光透過率が光透過性から光反射性に変化する酸化銀からなるAg−O層212及びAg−O層214とが交互に積層された積層構造を有している。
この記録膜200は、各層の屈折率が互いに同程度で、かつ、各層の消衰係数がほぼゼロの透明層であることが望ましい。
積層型選択層210に含まれるAg−O層212及びAg−O層214は、印加される所定のエネルギーにより光学特性が変化する材料からなる層(以下、選択層と記すことがある。)である。即ち、積層型選択層210は、所定の温度以下では光透過性であり、且つ、エネルギー印加により光学特性が変化する層を二層以上含む積層構造により形成されている。
積層型選択層210を形成し、印加される所定のエネルギーにより光学特性が変化する材料としては、具体的には、複屈折率または形状が可逆的に変化する材料を用いることができる。このような材料としては、例えば、クロミズム材料、熱分解性(熱解離性)材料または熱変形材料等が挙げられる。クロミズム材料としては、例えば、電子供与呈色性色素と電子受容性化合物とを組み合わせた系に第3成分を存在させ、熱反応により変色するサーモクロミック材料;スピロピラン系、フルギド系、ジアリールエテン系等の光の作用により変色するフォトクロミック材料;ビオロゲン系、希土類ジフタロシアニン等の電気化学的な酸化還元により変色するエレクトロクロミック材料等が挙げられる。熱分解性(熱解離性)材料としては、Ag−O、Pt−O、Co−O、Fe−O等の金属酸化物が挙げられる。
積層型選択層210の選択層に用いる前述した材料は、必要に応じて適宜選択され、例えば、印加されるエネルギーとしてレーザ集光を用いる場合は、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、熱分解性(熱解離性)材料、熱変形材料等が使用される。また、電圧印加を用いる場合は、エレクトロクロミック材料等が利用可能である。
(下地層)
下地層220を形成するための材料としては、特に限定されず、例えば、MgO、CoO、NiO等が挙げられる。下地層220の厚さは、通常、1nm〜50nm、好ましくは1nm〜10nmである。
(記録材料層)
記録材料層230を形成するための材料としては、特に限定されず、例えば、有機色素を記録材料とするものは、例えば、ベンゾフェノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、シアニン系色素等が挙げられる。相変化型記録材料としては、例えば、Sb−Te系、Ge−Te系、Ge−Sb−Te系、In−Sb−Te系、Ag−In−Sb−Te系、Sn−Sb−Te系、In−Se−Tl系、Sn−Sb−Se系等が挙げられる。また、Bi−Dy−Fe−Al−Oガーネット光磁気記録透明材料等も用いることができる。記録材料層230の厚さは、通常、5nm〜50nm、好ましくは、5nm〜20nmである。
(誘電体層)
誘電体層240を形成するための材料としては、特に限定されず、例えば、SiO、ZnS−SiO、Si−N等が挙げられる。誘電体層240の厚さは、通常、20nm〜200nm、好ましくは、20nm〜50nmである。
次に、記録膜200の作用について説明する。
本実施の形態においては、先ず、レーザ光250の照射により発熱した記録材料層230から積層型選択層210のAg−O層212及びAg−O層214に熱エネルギーが印加され、印加された熱エネルギーによってAg−O層212及びAg−O層214が銀と酸素とに分解し、その結果、光透過性の積層型選択層210に高反射部が形成され、反射率が増大する。
本実施の形態が適用される多層光情報記録媒体100においては、積層型選択層210が、印加される所定のエネルギーにより光学特性が変化する材料からなる層(選択層)と誘電体層とが交互に積層された積層構造を有することにより、積層型選択層210に印加されるエネルギーによる光学特性の変化を増幅することができる。尚、エネルギー印加手段は、レーザ集光を用いることが好ましく、また、電圧印加を用いることもできる。
図3は、記録膜の第2の実施形態を説明する図である。図3は、高反射性の記録膜300の構造が示されている。図3に示すように、記録膜300は、SiOからなる層とAg−Oからなる層との積層体である積層型選択層310と、積層型選択層310上の入射するレーザ光360側に設けられた反射層350と、下地層320と、所定の記録材料からなる記録材料層330と、記録材料層330上に積層された誘電体層340と、を有している。
さらに、積層型選択層310は、誘電体であるSiOからなるSiO層311及びSiO層313と、所定の温度以上に熱せられることにより分解し、光学特性の光透過率が光透過性から光反射性に変化する酸化銀からなるAg−O層312及びAg−O層314とが交互に積層された積層構造を有している。
この記録膜300は、積層型選択層310と反射層350を併用した反射率の高いタイプの記録膜である。積層型選択層310と反射層350の積層順は、熱制御や結晶制御などが適切に行えるように順番を変えてもよい。
本実施の形態が適用される多層光情報記録媒体100における6個の記録膜121〜記録膜126は、レーザ光150の入射側から見て手前側に、図2で示される記録膜200の構造を有する記録膜を配置し、また、レーザ光150の入射側から見て奥側に、図3で示される記録膜300の構造を有する記録膜を配置することが好ましい。
即ち、前述したように、図2に示される記録膜200は、各層の屈折率が互いに同程度で、且つ、各層の消衰係数がほぼゼロの透明層であることが望ましく、また、図3に示される記録膜300は、積層型選択層310と反射層350とを併用した反射率の高いタイプの記録膜である。したがって、本実施の形態が適用される多層光情報記録媒体100において、レーザ光150の入射側から見て手前側に、高光透過性の記録膜を配置し、また、レーザ光150の入射側から見て奥側に、高反射率を有する記録膜を配置することにより、6個の記録膜121〜記録膜126の総てにおいて、情報の記録再生が良好に行われる。
尚、図2に示される記録膜200または図3に示される記録膜300の膜構造は、例えば、記録再生方式等に応じ、適切な膜構造に変更することができる。
例えば、光磁気記録方式であれば図2及び図3に示される膜構造が利用できる。また、相変化記録方式では、記録材料層230または記録材料層330の界面に界面層を挿入することが好ましい。さらに、ピット列を再生する方式または樹脂の変形により情報信号を記録する方式では、下地層220または下地層320、記録材料層230または記録材料層330及び誘電体層240または誘電体層340を省略することができる。
また、積層型選択層210または積層型選択層310そのものを記録層としても機能するように材料を選択すれば、記録膜200または記録膜300は積層型選択層210または積層型選択層310のみで構成できるので好ましい。各記録膜の記録方式や記録再生条件や膜材料等は、それぞれ異なっていてもよい。
さらに、本実施の形態が適用される多層光情報記録媒体100においては、記録膜を構成する積層型選択層210または積層型選択層310は、Ag−O層212等のように、印加された所定のエネルギーにより光学特性が変化する材料からなる層(選択層)と、SiO層211等のように、印加されたエネルギーに対して安定な材料からなる層とが、交互に積層された構造を有するものであるが、積層型選択層210または積層型選択層310の構造はこれに限定されない。
積層型選択層210または積層型選択層310の他の構造としては、例えば、SiO層211等の安定な層を介さず、印加された所定のエネルギーにより光学特性が変化する材料からなる層(選択層)を直接2層以上積層した構造が挙げられる。この場合、複数の選択層において、所定のエネルギーにより変化する光学特性の種類がそれぞれ異なる場合と、同じ種類の光学特性の変化の程度が異なる場合と、が考えられる。
次に、本実施の形態が適用される多層光情報記録媒体100の他の層について説明する。
(ディスク基板)
ディスク基板110は、所要の剛性を有する材料により、通常、厚さ0.4mm〜2.4mm、直径80mm〜130mm寸法の円形状に形成されている。ディスク基板110の材料としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂(特に、非晶質ポリオレフィン)、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等のプラスチック;ガラス、セラミック、金属等が挙げられる。
ディスク基板110の表面には、中心側から外周側まで連続するスパイラル状または同心円状のトラッキング案内溝(図示せず)が形成されている。ディスク基板110を射出成型法により形成する場合、トラッキング案内溝などのプリフォーマットパターンが形成された原盤にニッケル等の金属を電鋳してスタンパを作製し、このスタンパを射出成型用の金型内に設置した後、溶融樹脂を充填し、充填後の樹脂は、充填直後の溶融状態にあるとき成形機のピストンに連動して動くカットパンチによって内周孔を打ち抜かれ、表面にプリフォーマットパターンが転写された樹脂製基板が形成される。尚、このディスク基板110には、ディスク認識情報やアドレス情報等がトラッキング案内溝のウォブルやプリピットによって予め記録されている。情報記録用のトラックとして、溝あるいは溝間のどちらか一方を用いることができる。
(スペーサー層)
スペーサー層131〜スペーサー層135は、ディスク基板110上に、前述した6個の記録膜121〜記録膜126と交互に積層されるようにそれぞれ設けられている。スペーサー層131〜スペーサー層135は、通常、紫外線硬化樹脂、プラスチックフィルム等の光透過性の透明材料により各々形成されている。スペーサー層131〜スペーサー層135のそれぞれの厚さは特に限定されないが、通常、1μm〜100μmの範囲である。
スペーサー層131〜スペーサー層135を形成する際、前述したディスク基板110を形成する際に使用するスタンパを用いて、スペーサー層131〜スペーサー層135のそれぞれの表面にプリフォーマットパターンを転写してもよい。また、6個の記録膜121〜記録膜126同士のクロストークを防止するために、スペーサー層131〜スペーサー層135のそれぞれの厚さが異なるようにしてもよい。また、前述した積層型選択層210または積層型選択層310を、電圧印加により光学特性が変化する材料を用いて構成する場合は、スペーサー層131〜スペーサー層135として、それぞれの厚さが数10nm〜数100nmである透明層を用いることができる。
(カバー層)
カバー層140は、記録膜126上に形成されている。カバー層140の材料は、前述したスペーサー層131〜スペーサー層135を構成する材料と同様なものが挙げられる。カバー層140の厚さは特に限定されないが、通常、1μm〜100μmの範囲である。
尚、カバー層140は、薄型カバー層として厚さ数nm〜数10nmのカーボン系保護層を形成した表面に潤滑材を塗布してもよい。
(光情報記録再生装置)
次に、光情報記録再生装置について説明する。ここでは、多層光情報記録媒体のカバー層側からレーザ光を入射するタイプの光磁気記録方式について説明するが、本実施の形態によれば、基板側からレーザ光を入射する方式にも適用でき、また、相変化記録方式等の他の光情報記録再生方式にも適用できる。
図4は、本実施の形態が適用される光情報記録再生装置を説明する図である。図4に示す光情報記録再生装置400は、多層光情報記録媒体100を回転駆動する回転駆動装置401と、多層光情報記録媒体100の所望の記録膜120に所定のエネルギーを印加するエネルギー印加手段402と、多層光情報記録媒体100に対してレーザ光を照射及び受光する光ヘッド403と、光ヘッド403を所望の位置に移動するヘッド駆動装置404と、記録再生される信号を処理する記録再生信号処理装置405と、を備えている。
尚、エネルギー印加手段402としては、光ヘッド403から照射されるレーザ光を所望の記録膜120に集光させる機構が好ましい。あるいは、記録膜120に設けた電極に所定の電圧を印加する機構のエネルギー印加手段であってもよい。
図5は、図4に示す光情報記録再生装置400の光ヘッド403の光学系を説明する図である。図5に示す光ヘッド403は、レーザ光源510と、球面収差補正機構520と、対物レンズ530と、光検出器541,542,543と、磁気コイル590とを備えている。
図5に示すように、レーザ光源510より発生されたレーザ光は、球面収差補正機構520を通じて、対物レンズ530により多層光情報記録媒体100の所望の記録膜120に集光される。このとき、対物レンズ530はフォーカス機構及びトラッキング機構(図示せず)によって駆動され、それぞれ所望の記録膜120及び所望の記録トラックに追随するようにレーザ集光位置が調整される。その後、記録膜120から反射されたレーザ光は光検出器541,542,543によって検出される。また、情報を記録するときは、磁気コイル590から、記録膜面に垂直方向の磁界が発生される。このときの磁界は100Oe〜300Oeが好ましい。また、記録方式は光変調方式又は磁界変調方式又は光パルス磁界変調方式等を用いることができる。
前述したように、本実施の形態が適用される多層光情報記録媒体100は、6個の記録膜121〜記録膜126を有し、カバー層140に接する記録膜126からディスク基板側110に接する記録膜121迄の間隔が広い。このため、光学系の球面収差補正が特定の記録膜に対して最適となるように固定化されていると、他の記録膜にレーザ光が集光されたときに球面収差が生じる。球面収差補正機構520は、それぞれの記録膜に応じて光学系を調整することにより、すべての記録膜においてそれぞれ球面収差を補正する役割を持っている。具体的な球面収差補正機構としては、同心円状に配置した複数のリング状の液晶素子、可動式のリレーレンズが挙げられる。
以下に、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
(光ディスク記録再生装置)
本実施の形態に従い、予め調製した光ディスクのカバー層側からレーザ光を入射するタイプの光磁気記録再生装置を製作した。所望の記録膜へのエネルギー印加手段としては、光ヘッドから照射されるレーザ光を所望の記録膜に集光する機構を適用し、フォーカス機構と兼用にした。球面収差補正機構としては、可動式のリレーレンズを光学系に挿入した。レーザ光源は波長405nmの半導体レーザとし、対物レンズの開口数NAは0.85とした。磁気コイルには、約200Oeの磁界を発生するコイルを用いた。また、記録方式は光変調方式とした。また、光ディスクを、光ディスク記録再生装置に装填して記録再生動作を試行し、フォーカス動作、トラッキング動作および記録再生の3項目について、動作試験を行った。
(実施例)
(1)光ディスク1の調製
レーザ集光により複素屈折率の変化する材料であるAg−Oを用いて、本実施の形態に基づく光ディスク1を作製した。先ず、プリフォーマットパターンが形成された原盤にニッケルを電鋳したスタンパを用い、射出成形法にてポリカーボネート製の厚さ1.1mm、内径15mm、外径120mm、トラックピッチ0.32μm、グルーブの深さ24nmのランド/グルーブ構造を有するディスク基板を成形した。
次に、このディスク基板上に、記録膜(合計6個)と紫外線硬化樹脂からなるスペーサー層(合計5個)を交互に形成し、さらに紫外線硬化樹脂からなる厚さ25μmのカバー層を形成した。スペーサー層は平均厚さ15μmとし、各層の厚さが数μmずつ異なるようにした。また、紫外線硬化樹脂にスタンパを押し当てながら紫外線を照射することにより、スペーサー層表面にディスク基板と同様のランド/グルーブ形状を形成した。
ディスク基板側から数えて2個の記録膜(記録膜1,2)は、SiO層とAg−O層とを繰り返し積層した積層型選択層と、AlTi反射層と、MgO下地層と、Bi−Dy−Fe−Al−Oガーネット光磁気記録透明材料からなる記録材料層と、SiO誘電体層とをこの順番に積層した。その他の記録膜(記録膜3〜記録膜6)は、AlTi反射層を設けずに、SiO層とAg−O層とを繰り返し積層した積層型選択層と、MgO下地層と、Bi−Dy−Fe−Al−O記録材料層と、SiO誘電体層とがこの順番に積層された構造とした。
記録膜1〜記録膜6のそれぞれの積層型選択層及び反射層の個数および厚さを表1に示すように設定し、その他の層の条件は各層とも同一にした。
(2)光学計算
予め調製した光ディスク1の各記録膜の透過率、反射率、吸収率をコンピュータ・シミュレーションにより求めた。入射光の条件は、レーザ光波長を405nm、対物レンズの開口数NAを0.85、リムインテンシティを0.5と設定した。コンピュータ・シミュレーションにより求めた結果を表1に示す。
表1中、Tは、調製後の記録膜の透過率であり、Rは、調製後の記録膜の反射率であり、Aは、調製後の記録膜の吸収率である。また、Tは、レーザ光照射時の記録膜の透過率であり、Rは、レーザ光照射時の記録膜の反射率であり、Aは、レーザ光照射時の記録膜の吸収率である。尚、実際のレーザ光は媒体表面や所望の記録膜以外の記録膜による損失が、反射ならば往復分、吸収ならば片道分あるため、それらを考慮した実効反射率(実効R)と、実効吸収率(実効A)とを併せて計算した。
さらに、光ディスク1を光ディスク記録再生装置に装填して記録再生動作を試行し、フォーカス動作、トラッキング動作および記録再生の3項目について、動作試験を行った。動作試験の結果を表1に示す。
(比較例)
(光ディスク2の調製)
実施例と同じ操作を行い、積層型選択層を有しない記録膜を6個(記録膜a〜記録膜f)備えた多層光情報記録媒体である光ディスク2を調製した。光ディスク2の6個の記録膜a〜記録膜fの構成及び厚さを表1に示す。表1に示すように、記録膜a,bは、AlTi反射層と、MgO下地層と、Bi−Dy−Fe−Al−Oガーネット光磁気記録透明材料からなる記録材料層と、SiO誘電体層とをこの順番に積層した構造である。記録膜c〜記録膜fは、単一のAg−O層またはAlTi反射層と、MgO下地層と、Bi−Dy−Fe−Al−Oガーネット光磁気記録透明材料からなる記録材料層と、SiO誘電体層とをこの順番に積層した構造である。
実施例と同様に、光ディスク2の各記録膜の透過率、反射率、吸収率をコンピュータ・シミュレーションにより求めた。また、実施例と同様に、光ディスク2を光ディスク記録再生装置に装填して記録再生動作を試行し、フォーカス動作、トラッキング動作および記録再生の3項目について動作試験を行った。動作試験の結果を表1に示す。
Figure 2006085845
表1の結果から、積層型選択層を備えた6個の記録膜(記録膜1〜記録膜6)を有する多層光情報記録媒体である光ディスク1(実施例)は、高い透過率T(記録膜1を除き、T>84%)を保ちつつ、反射率Rが2倍以上に増幅(R>15%)されることが分かる。これにより、光ディスク1は、カバー層表面の反射率R(5.5%)及び6個の記録膜1〜記録膜6の反射率R(<8%)に比べて十分大きな実効R(>10%)が、記録膜1〜記録膜6の総てにおいて得られる。また、記録膜1〜記録膜6の透明性が高い((記録膜1)T>72%、(記録膜2〜記録膜6)T>84%)にもかかわらず、記録膜1〜記録膜6において、大きい吸収率A(A>57%)を示し、それぞれの記録膜における積層型選択層が、吸収層としての役割を持つことが分かる。
さらに、動作試験の結果、光ディスク1は、記録膜1〜記録膜6において比較的高い実効R(>10%)及び実効A(>32%)が得られており、すべての記録膜において、フォーカス、トラッキング及び記録再生が良好であった。
一方、積層型選択層を有しない6個の記録膜(記録膜a〜記録膜f)を設けた多層光情報記録媒体である光ディスク2(比較例)は、AlTi反射層と、MgO下地層と、Bi−Dy−Fe−Al−Oガーネット光磁気記録透明材料からなる記録材料層と、SiO誘電体層とをこの順番に積層した構造の記録膜a,bは、実効Aが低く(実効A<12%)、プリピットなどの再生は可能であったが、記録パワー感度が非常に低く記録が不可能であった。また、単一のAg−O層と、AlTi反射層と、MgO下地層と、Bi−Dy−Fe−Al−Oガーネット光磁気記録透明材料からなる記録材料層と、SiO誘電体層とをこの順番に積層した構造の記録膜c〜記録膜fは、実効Rが低く(R<6%)、フォーカスやトラッキングが困難であった。
本実施の形態が適用される膜面入射型の多層光情報記録媒体を説明する図である。 記録膜の第1の実施形態を説明する図である。 記録膜の第2の実施形態を説明する図である。 本実施の形態が適用される光情報記録再生装置を説明する図である。 図4に示す光情報記録再生装置の光ヘッドの光学系を説明する図である。
符号の説明
100…多層光情報記録媒体、110…ディスク基板、120,121〜126,200,300…記録膜、131〜135…スペーサー層、140…カバー層、150,250,360…レーザ光、210,310…積層型選択層、220,320…下地層、230,330…記録材料層、240,340…誘電体層、350…反射層、400…光情報記録再生装置、401…回転駆動装置、402…エネルギー印加手段、403…光ヘッド、404…ヘッド駆動装置、405…記録再生信号処理装置、510…レーザ光源、520…球面収差補正機構、530…対物レンズ、541〜543…光検出器、590…磁気コイル

Claims (7)

  1. 光照射によって情報信号が記録再生される複数の透明又は半透明な記録膜を備え、
    前記複数の記録膜の少なくとも1つの記録膜は、当該記録膜に印加される所定のエネルギーにより光学特性が変化する層が複数含まれた積層構造を有することを特徴とする多層光情報記録媒体。
  2. 前記記録膜は、印加される前記所定のエネルギーにより当該記録膜の反射率及び/又は吸収率が増大することを特徴とする請求項1記載の多層光情報記録媒体。
  3. 前記記録膜は、当該記録膜に照射される所定の波長を有するレーザ光により前記光学特性が変化することを特徴とする請求項1記載の多層光情報記録媒体。
  4. 前記積層構造は、印加される前記所定のエネルギーにより光学特性が変化する層と、印加される前記所定のエネルギーに対して安定な性質の材料からなる層とが、繰り返し交互に積層された積層体であることを特徴とする請求項1記載の多層光情報記録媒体。
  5. 前記記録膜は、前記光照射される側に設けた所定の光記録材料を含有する記録材料層をさらに有することを特徴とする請求項1記載の多層光情報記録媒体。
  6. 複数の記録膜を有する多層光情報記録媒体の光情報記録再生装置であって、
    印加される所定のエネルギーにより光学特性が変化する層が複数含まれた積層構造を有する記録膜に、前記エネルギーを印加するエネルギー印加手段と、
    前記記録膜に光情報の記録再生を行う記録再生手段と、を有することを特徴とする光情報記録再生装置。
  7. 前記エネルギー印加手段は、光ヘッドから照射されるレーザ光を所望の前記記録膜に集光させる機構を有することを特徴とする請求項6記載の光情報記録再生装置。
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