JP2006084207A - ナノ粒子測定方法および装置 - Google Patents

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【課題】 ナノ粒子の粒子径等を、従来の動的散乱法に比してより高い感度で良好なS/Nのもとに測定することのできる方法および装置を提供する。
【解決手段】 媒体中に移動可能に分散させた粒子P群に対し、電極13a等により空間周期を有する電界を印加することで、粒子P群により空間周期的な濃度変化を持たせて擬似的な回折格子を生成させ、その状態で粒子P群に対してレーザ光を照射して得られる回折光を検出し、電界の印加を停止した時点からの回折光の時間変化から、粒子群の拡散係数および粒子径を算出する。多数の粒子Pによる擬似的回折格子による回折光を検出するので、動的散乱法のように個々の粒子による散乱光の揺らぎを検出する場合に比して、信号強度が強く、感度およびS/Nの向上を可能とする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、直径が100nm以下のいわゆるナノ粒子の粒子径を測定する方法および装置に関する。
粒子径が100nm以下の粒子は、一般にナノ粒子と称され、同じ材質であっても通常のバルク物質とは異なる性質を表すことから、さまざまな分野で利用され始めている。粒子径を測定する方法としては、レーザ回折・散乱式をはじめとして種々のものが知られているが、粒子径が100nm以下のナノ粒子については、主として動的散乱法(光子相関法)と称される測定方法に基づく方法が用いられている(例えば特許文献1,2参照)。
動的散乱法は、粒子のブラウン運動を利用したものであり、媒体中でブラウン運動をしている粒子に光ビームを照射し、粒子による散乱光の強度を所定の位置で測定して、粒子のブラウン運動に起因する散乱光強度の揺らぎ、つまり散乱光の経時的変化を捕らえ、各粒子がその粒径に応じた激しさでブラウン運動をすることを利用して被測定粒子群の粒度分布を算出する。
米国特許第5,094,532号明細書 特開2001−159595号公報
ところで、粒子からの散乱光の揺らぎを測定する動的散乱法(光子相関法)においては、大きな散乱光中の小さな揺らぎを測定する必要があること、換言すれば明るい視野中での光強度の変動を計測する必要があることから、その原理上、測定感度が低いとともに、S/Nが悪いといった問題は避けられない。
本発明の課題は、従来の動的散乱法に比して、ナノ粒子の粒子径を、高い感度で良好なS/Nのもとに測定することのできる方法および装置を提供することにある。
本発明のナノ粒子測定方法は、媒体中に移動可能に分散させた粒子群に対し、空間周期を有する電界を印加することにより当該粒子群に空間周期的な濃度変化を持たせて疑似的な回折格子を生成させ、その状態で粒子群に対してレーザ光を照射して得られる回折光を検出し、上記電界の印加を停止した時点からの回折光の時間変化から、粒子群の拡散係数および粒子径を算出することによって特徴づけられる(請求項1)。
また、本発明のナノ粒子測定装置は、請求項1に係る発明方法を用いた測定装置であって、被測定粒子群を媒体中に移動可能に分散させた試料を保持する試料保持手段と、その試料保持手段内の試料に対して空間周期を有する電界を印加する電極およびその電源と、試料保持手段内の試料にレーザ光を照射するレーザ光源と、そのレーザ光が試料を透過することにより生じる回折光を検出する検出光学系と、その検出光学系の出力を取込み、上記電界の印加により被測定粒子群に空間周期的な濃度変化を生成させた状態で電界の印加を停止した時点からの回折光の時間的変化から被測定粒子群の拡散係数および粒子径を算出するデータ処理手段を備えていることをによって特徴づけられる(請求項2)。
ここで、本発明のナノ粒子測定装置においては、上記試料保持手段が試料を収容する透明なセルであり、上記電極が、当該試料セルに対して装着され、所定の間隔で互いに平行に伸びる部分を含む透明電極である構成(請求項3)を好適に採用することができる。
本発明は、媒体中で拡散状態の粒子群に電界を印加することによって、粒子群の空間的な濃度変化による擬似的な回折格子を生成し、その回折格子による回折光を検出しつつ、電界の印加を停止して粒子群が再び拡散状態となる間の回折光の変化から、粒子群の拡散係数と粒子径を算出することにより、課題を解決するものである。
すなわち、媒体中に拡散している粒子群はゼータ電位を有しているため、その粒子群に対して空間周期を有する電界を印加することにより、粒子群はその電界に応じて媒体中を移動し、これによって粒子群に空間周期的な濃度変化が生じ、粒子群による回折格子が生成される。その状態で電界の印加を停止すると、粒子群は濃度が均一となるように再び拡散状態に戻り、回折格子は消失する。粒子が小さければ回折光ははやく消失し、粒子が大きければ回折光はゆっくりと消失する。粒子群による回折格子の生成状態からその回折格子が消失する間、粒子群にレーザ光を照射して回折光を検出すれば、回折光の消失に要する時間を知ることができ、この時間から後述する(2),(3)式を用いて粒子群の拡散係数と粒径を求めることができる。
粒子群による疑似回折格子にレーザ光を照射することによって発生する回折光は、粒子群を透過するレーザ光に対して、レーザ光の波長、回折格子の間隔に応じた角度で進行し、かつ、動的散乱法で得られる個々の粒子による散乱光に比して強いため、測定する信号が強く、動的散乱法に比してS/Nおよび感度が大幅に改善される。
本発明のナノ粒子測定装置においては、請求項3に係る発明のように、媒体中に被測定粒子群を移動可能に分散させた試料を保持する試料保持手段として透明なセルを用い、この試料に対して電界を印加するための電極として、透明セルに装着され、所定の間隔で互いに平行に伸びる部分を含む透明電極とし、特に、その屈折率を透明セルの構成材料の屈折率と近似させることにより、電極が回折光に及ぼす影響を少なくすることができて好適である。
本発明によれば、電界により被測定粒子群による擬似的な回折格子を生成し、その被測定粒子群による回折格子にレーザ光を照射して得られる回折光を検出して、電界の印加の停止により回折格子が消失する過程を回折光の検出によって行うことで、被測定粒子群の拡散係数と粒子径を算出するので、比較的簡単な装置構成のもとにナノ粒子の測定が可能となるとともに、従来の動的散乱法に比して、検出すべき信号の強度が格段に強くなり、S/Nの向上と感度の向上を達成することができる。
また、媒体に被測定粒子群を分散させた試料を透明セルに収容し、その透明セルに装着した透明電極によって空間周期的な電界を付与する請求項3に係る発明の構成を採用することにより、電極が回折光に及ぼす影響を少なくすることができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の構成図であり、光学的構成を表す模式図と、電気的構成を表すブロック図と併記して示す図である。また、図2は、図1における試料セル1の構造説明図であり、(A)はレーザ光の照射方向から見た模式的正面図で、(B)はそのB−B線で切断した模式的拡大断面図である。
試料セル1は、互いに微小な隙間を開けて対向する平行な透明ガラス11,12をその周壁の一部として含んでおり、使用状態ではこれらの透明ガラス11,12が鉛直方向に沿うように配置される。各透明ガラス11,12には、互いに対向する位置にそれぞれ上下方向に一定の間隔Δを開けて水平に伸びる多数の指部13aを備えた櫛形の透明電極13が装着されている。この透明電極13には、電極電源2から+もしくは−の直流電圧が選択的に供給される。透明電極13への電圧の供給により、試料セル1内の試料には指部13aのパターンに応じた空間周期を有する電界が印加されることになる。なお、透明電極13の材料としては、例えばITOを採用することができる。このITOは屈折率が約2.0程度であり、試料セル1の透明ガラス11として、屈折率2.0程度の高屈折率ガラス(例えばオハラ社製商品名s−LAH79;屈折率2.0)を用いることにより、後述するレーザ光の照射時に透明電極13による回折光が実質的に生じることがなく、好適である。
試料セル1には、その一方の透明ガラス11側からレーザ光源3からのレーザ光が略水平に照射される。試料セル1を挟んでレーザ光源3の反対側には、後述するように試料セル1を通過するレーザ光の回折光を検出するための検出光学系4が配置されている。この検出光学系4は、レーザ光源3からのレーザ光の光軸Lに対して後述する角度θの位置に配置されており、ピンホール4aとフォトダイオード4bによって構成されている。また、レーザ光軸L上には、試料セル1を通過したレーザ光が検出光学系4や外部などに漏れることを防止するためのビームストッパ5が配置されている。
フォトダイオード4bにより検出された回折光は、装置制御およびデータ取込み・処理装置6に取り込まれ、後述する演算によって被測定粒子群の拡散係数と粒子径の算出に供される。なお、この装置制御及びデータ取込み・処理装置6は、以上のデータ処理のほか、装置全体の制御を行うものであって、例えばパーソナルコンピュータとその周辺機器によって構成することができる。
次に、以上の構成からなる本発明の実施の形態による測定動作を、その原理とともに述べる。
試料セル1内には、被測定粒子群であるナノ粒子群を水などの媒体中に分散させた状態の試料が充填される。通常、液中に分散しているナノ粒子の表面は、+もしくは−の表面電位(ゼータ電位)を持っている。つまり帯電している。前記した透明電極13には、粒子が持つ荷電と同じ極性の電圧が印加される。例えば粒子が+の電荷を持っている場合には、透明電極13には+の電圧が印加される。ここで、粒子のゼータ電位が小さい場合には、分散剤(界面活性剤)や、媒液のPHを変化させるなどの方法で表面電位を調整することができる。
図3(A)に示すように、試料W中の被測定粒子Pが+の電荷をもっている場合には、電極13に+の電位を印加する。これにより、各粒子Pはクーロン力により電極13の各指部13aに対して反発し、図3(B)に示すように、電極13の各指部13aの間に移動し(静電泳動)、多数の粒子Pによって指部13aのパターンに応じた空間周期を有する擬似的な回折格子が生成される。この状態で試料セル1に対して照射されるレーザ光は、この多数の粒子Pによる回折格子により回折する。電極13の指部13a間の距離を上記のようにΔ、レーザ光の波長λ、回折角をθ、次数をmとすると、
mλ=Δ・sin θ ・・(1)
の関係が成立する。例えばλ=0.6328μm、指部13a間の距離Δを3μmとしたとき、1次の回折光はθ≒12°の角度に現れる。前記した検出光学系4はレーザ光の光軸Lに対してこの角度θの位置に配置されており、この回折光の強度を検出する。
図3(B)のように試料に対して電圧により擬似的な回折格子が生成されている状態から、透明電極13への電圧の印加を停止して電界を消失させると、図3(C)に示すように、各粒子Pは再び拡散状態に戻る。粒子Pの拡散により擬似的な回折格子は消滅し、回折光も消失する。電界の消失時点から回折光が消失する時間は、粒子の拡散時間に依存するので、回折光の消失時間を計測することにより、以下に示すように粒子の拡散係数Dを算出することができる。また、この拡散係数Dから粒子径を算出することができる。
図4に透明電極13に対する電圧のON/OFFのタイミングと、回折光強度の関係の例をグラフで示す。粒子Pの径が大きい場合には、電界の消失時点から粒子Pが拡散して回折格子が消失するまでに要する時間が長く、逆に粒子Pの径が小さい場合にはその時間は短くなる。
拡散による粒子Pの濃度変化は以下の拡散方程式で表される。
Figure 2006084207
ここで、u(x,t)は粒子濃度であり、xは指電極13aの間隔d方向への空間座標で、tは時間である。
粒子濃度の変化に対する回折光強度の変化をあらかじめ求めておくことにより、回折光強度の経時的変化を検出することで、(2)式を用いて粒子Pの拡散係数Dを算出することができる。
また、拡散係数Dと粒子径dの関係は、ボルツマン定数kと絶対温度T、および媒液の粘性率μ0 を用いて、以下のEinstein−Stokesの関係式で表される。
Figure 2006084207
装置制御及びデータ取込み・処理装置6は、電極13に印加する電圧をON・OFFするタイミングと、回折光強度をサンプリングするタイミングを同期させることにより、回折光の消失時間を正確に測定することができ、その測定結果を用いて(2)式を計算することによって拡散係数Dを求めることができ、その拡散係数Dを用いて(3)式を計算することによって被測定粒子Pの粒子径dを算出することができる。
以上の実施の形態において特に注目すべき点は、拡散係数Dおよび粒子径dを求めるための信号が、従来の動的散乱法のように個々の粒子からの散乱光の揺らぎの測定信号ではなく、多数の粒子群により形成された擬似的な回折格子による回折光の測定信号である点であり、これにより、動的散乱法に比して感度並びにS/Nが大幅に向上する。
ここで、以上の実施の形態において、試料セル1の透明ガラス11,12と透明電極13の屈折率差により回折光が発生する場合があり、この場合、その回折光強度が検出光学系4によって検出されることになるが、この回折光は時間的に変化しないため、測定後に全体の回折光強度から変化しない回折光強度分を減じることにより、測定への影響はない。
また、以上の実施の形態においては、試料セル1の互いに対向する透明ガラス11,12に透明電極13を対向して装着した例を示したが、図5に示すように、互いに対向する2枚の透明ガラス11,12のうちの一方にのみ、先の例と同等の指部13aを有する透明電極を装着してもよく、この場合においても粒子Pは各指部13aに電圧を印加することによって先の例と同等の擬似的な回折格子を形成する。
更に、本発明においては、図6に示すように、透明ガラス11および/または12に、先の例と同等の指部13aを備えた透明電極と、これとは逆極性の電圧が印加される指部14aを備えた透明電極を装着し、各指電極13a,14aを交互に配置した電極構成を採用することもできる。この場合、例えば+に帯電している粒子Pは−電圧が印加されている指電極14aに沿うように移動して擬似的な回折格子を形成し、この粒子群による回折格子の間隔は、指電極13a,14aによる回折格子の間隔の2倍となり、粒子群による回折光と、電極による回折光とは互いに異なる回折角を持つため、電極による回折光の影響をより少なくし得るという利点がある。
また、以上の実施の形態においては、被測定粒子群を媒液中に分散させた例を示したが、媒体としては液体のほか気体としてもよく、更には、粒子の種類によっては固体中に移動可能に分散しているものもあり、この場合には固体を媒体とすることもできる。
本発明の実施の形態の構成図であり、光学的構成を表す模式図と、電気的構成を表すブロック図と併記して示す図である。 図1における試料セル1の構造説明図であり、(A)はレーザ光の照射方向から見た模式的正面図で、(B)はそのB−B線で切断した模式的拡大断面図である。 本発明の実施の形態の作用説明図である。 本発明の実施の形態における透明電極13に対する電圧のON/OFFのタイミングと、回折光強度の関係の例をグラフである。 本発明の他の実施の形態における試料セルの電極構成の例の説明図である。 本発明の更に他の実施の形態における試料セルの電極構成の例の説明図である。
符号の説明
1 試料セル
11 透明ガラス
13 透明電極
13a 指部
2 電極電源
3 レーザ光源
4 検出光学系
4a ピンホール
4b フォトダイオード
5 ビームストッパ
6 装置制御およびデータ取込み・処理装置
P 粒子
W 試料

Claims (3)

  1. 媒体中に移動可能に分散させた粒子群に対し、空間周期を有する電界を印加することにより当該粒子群に空間周期的な濃度変化を持たせて疑似的な回折格子を生成させ、その状態で粒子群に対してレーザ光を照射して得られる回折光を検出し、上記電界の印加を停止した時点からの回折光の時間変化から、粒子群の拡散係数および粒子径を算出することを特徴とするナノ粒子測定方法。
  2. 被測定粒子群を媒体中に移動可能に分散させた試料を保持する試料保持手段と、その試料保持手段内の試料に対して空間周期を有する電界を印加する電極およびその電源と、試料保持手段内の試料にレーザ光を照射するレーザ光源と、そのレーザ光が試料を透過することにより生じる回折光を検出する検出光学系と、その検出光学系の出力を取込み、上記電界の印加により被測定粒子群に空間周期的な濃度変化を生成させた状態で電界の印加を停止した時点からの回折光の時間的変化から被測定粒子群の拡散係数および粒子径を算出するデータ処理手段を備えていることを特徴とするナノ粒子測定装置。
  3. 上記試料保持手段が試料を収容する透明なセルであり、上記電極が、当該試料セルに対して装着され、所定の間隔で互いに平行に伸びる部分を含む透明電極であることを特徴とする請求項2に記載のナノ粒子測定装置。
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