図1は本発明の一実施形態にかかる実装基板の検査装置の正面図、図2は同検査装置の内部構造を示す平面図である。これらの図に示すように、この検査装置は、実装機によって電子部品が実装された実装基板Pにおける電子部品の実装状態を検査するものであり、基板実装システムの基板実装ラインに沿って配置されている。
この検査装置は、脚部材が支える不図示の基台となるフレームを備え、フレームにはボルトでそれぞれ脱着可能に取り付けられている複数のパネルによりハウジング1が形成されている。ハウジング1内において内部コンベア2が基板搬送ラインXL(図2参照)に沿ってフレーム上に設けられている。図2に示すように、内部コンベア2は、Y軸移動手段20によって、水平面内において搬送ラインXLに対し直交するY軸方向(前後方向)に沿って移動自在に構成されている。すなわち内部コンベア2は、Y軸方向に沿って配置される一対のレール22にレール長さ方向に沿ってスライド移動自在に取り付けられている。更に内部コンベア2は、Y軸方向に沿って配置されるボールねじ23に螺着されており、モータ24の工藤によってボールねじ23が回転駆動されることにより、内部コンベア2がY軸方向に移動されるよう構成されている。こうして内部コンベア2は、Y軸移動手段20によって、搬送ラインXLと、ハウジング1内の後部(奥部)との間をY軸方向に沿って移動できるよう構成されている。
また内部コンベア2の両側における搬送ラインXL上には、コンベアカバー11,12で覆われた、それぞれ不図示の搬入コンベア、搬出コンベアが設けられている。ハウジング1には搬入コンベア、搬出コンベアがそれぞれ貫通する不図示の開口が設けられている。そして搬送ラインXL上に内部コンベア2が配置された状態においては、ハウジング1の外部から実装基板Pが搬入コンベアによって内部コンベア2上に搬送されるとともに、内部コンベア2上の基板Pが内部コンベア2及び搬出コンベアによってハウジング1の外部に搬出されるよう構成されている。
ハウジング1内における内部コンベア2の後方(奥部)には、撮像装置(撮像手段)としてのカメラ3が配置されている。このカメラ3は、X軸移動手段30によって、搬送ラインXLと平行なX軸方向に沿って移動可能に構成されている。すなわちカメラ3を指示する支持部材31は、X軸方向に沿って配置される一対のレール32にレール長さ方向に沿ってスライド自在に取り付けられている。更にカメラ支持部材31には、X軸方向に沿って配置されるボールねじ33に螺着されており、モータ34の駆動によってボールねじ33が回転駆動されることにより、カメラ3がX軸方向に移動されるよう構成されている。
またカメラ支持部材31には、カメラ3により撮像する領域を照明するための照明装置35が設けられている。
図3は検査装置の主制御系を示すブロック図である。同図に示すように、この装置においては、CPU5等からなるコンピュータを備えており、このCPU5によって各駆動部等の駆動が制御されて、後に詳述する動作が自動的に実行されるものである。同図において、キーボード等の入力装置41は検査に関連した各種の情報等を検査装置に入力するためのものであり、CRTディスプレイ等の表示装置42は、各種の情報等を表示するものである。更に記憶装置43は、検査に必要な各種のデータ等を記憶するものである。
また画像用フレームメモリ51は、画像入力ポート52を介して得られる分割撮像データ(分割画像)や、それを加工して得られる広域撮像データ(広域画像)、検査対象の電子部品データ(人工部品データ)等の画像データを記憶するものである。メモリ53は、検査に必要な各種のデータを一時的に記憶するものである。更に照明コントローラ54はカメラ3による撮像時に照明装置35の駆動を制御するものであり、モータコントローラ55及びモータアンプ56は、X軸移動手段30及びY軸移動手段20の駆動を制御して、カメラ3を実装基板Pに対しXY軸方向に相対移動させるものである。更にCPU5は各種I/Oポート57を介して周辺装置等をデータを送受できるよう構成されている。
図4はこの検査装置において検査対象の実装基板を撮影して得られた撮像画像の一例である。
この検査装置では、基板のサイズとカメラ視野(撮像範囲)とから、分割撮像に必要な撮像回数、撮像位置等が計算され、実装基板Pの検査対象領域を縦横(XY軸方向)に格子状に複数の撮像領域Pg・・・に分割して撮影が行われるようになっている。
この検査装置では、こうして撮影される検査対象基板の画像を、マスター基板等を撮影して得たマスター画像等ではなく、各電子部品Eの形状を人工的な数値データで表現した人工部品データと照合し、さらに各電子部品Eが搭載されるべき位置を示す搭載位置データと比較することによって、検査対象基板における電子部品Eの実装状態の良否を判定するようになっている。
以下、この実施形態における人工部品データの作成について説明する。
人工部品データは、検査対象基板を撮影して得られる撮像画像と比較・照合され、その良否判定の基準となる検査基準を構成するものである。また、人工部品データは検査用データの一部を構成している。
この人工部品データは、検査装置が備えるコンピュータまたは人工部品データを作成するためのプログラムを実行可能な外部のコンピュータ等において作成される。また、人工部品データを構成する各データは、検査用データの作成のためにオペレータ等によって入力するようにしても、検査装置よりも上流側の基板製造工程やマスク作成工程、クリームはんだ塗布工程、あるいは電子部品の実装工程等において使用される製造プログラムを元にして、ここから必要なデータを抽出して構成するようにしてもよい。検査装置が備えるキーボードやマウス等の入力装置または上流側工程を実施する装置とのデータ通信装置は、検査用データを取得する取得手段として機能する。また、検査装置が備えるコンピュータは、検査対象基板の撮像画像から得られる実装状態を検査用データと照合して検査する照合手段として機能する。
この実施形態における人工部品データは、モデルデータ(MODELデータ)、モジュールデータ(MODULEデータ)およびエレメントデータ(ELEMENTデータ)という3つの階層から構成されている。
モデルデータ(MODELデータ)は、検査対象とされる各電子部品に対応するデータ単位であり、1つのモデルデータが1つの電子部品に対応している。
各モデルデータは、1または複数のモジュールデータとエレメントデータを含む。
モジュールデータ(MODULEデータ)は、検査対象とする各電子部品の各部位を対象とする検査モジュールを表現するものであり、1つのモジュールデータが1つの検査モジュール(検査単位)に対応している。
この検査モジュール(検査単位)は、1つの電子部品であっても、検査精度の異なる部位が存在することに対応するものであり、1つの電子部品(モデルデータ)に対して要求精度の異なる複数の検査を可能とするものである。
たとえばリード部を有する部品であれば、リード部には電気的接続のために高度な実装精度が要求されるが、ボディ部のマーク表示などは、部品種類や極性(取り付けの向き)を判別できればその位置精度は要求されない。このような場合、リード部とボディ部のマーク表示とを別のモジュールデータ(検査モジュール)とすれば、それぞれについて適切な精度で検査を行うことができるようになる。
このため、各検査モジュールを表現するモジュールデータは、それぞれ異なる公差を設定可能となっている。
具体的には後述するようにこの実施形態では、各電子部品毎、すなわち各モデルデータ毎に代表公差が設定されている。そして、各モジュールデータ毎の公差は、前記代表公差に付加する付加値をモジュールデータを指定するモデルデータにおいて各モジュールデータに対応付けて設定できるようになっている。
このように、検査対象とする各電子部品に複数の検査モジュールを設定でき、各検査モジュールそれぞれに公差を設定可能としたので、電子部品の各部位に求められる実装精度に柔軟に対応した検査を行うことができる。
また、各検査モジュールにおける公差は、各電子部品の代表公差に対する付加値として設定できるため、電子部品の各部位に求められる実装精度に応じた相対的な公差を容易に設定することができる。たとえば、高い位置精度が求められるリード部に合わせて厳しい公差(代表公差)が設定されている部品であれば、ボディ部に求められる位置精度(公差)をリード部の公差に付加する付加量として捉えて設定することができる。
このモジュールデータは、電子部品の各部位のうち、検査対象とされる部位についてのみ作成すればよい。このため、前記モデルデータは、各電子部品を表現するものであるが、必ずしも部品全体の形状を表現するとは限らず、検査すべき部位の形状のみから構成されるものとできる。
また、同じ機能や同じ回路構成を有することで互換性のある電子部品であっても、製造メーカや製造ロットの違い等により外観の異なるものが存在するが、検査装置においては、これらは同一の部品として取り扱うことができる方が便利である。このため、後述するように、この実施形態では、各部位の外観をそれぞれ表現するモジュールデータであって、そのいずれかを満たせばよい複数のモジュールデータの組合せを、単一のモデルデータに含ませることができるようになっている。
各モジュールデータには、1または複数のエレメントデータが指定され、各エレメントデータが表現する形状を1または複数組み合わせることにより、各モジュールデータが対象とする部位の形状データが構成されるようになっている。
このため、各モジュールデータには、使用する1または複数のエレメントデータを指定する指定データと、各エレメントデータが表現する形状を配置する位置及び角度を指定する配置データとが含まれる。この配置データは、各部品中心を原点とする部品座標系での各形状の位置および角度を指定するものである。
また、この配置データは、エレメントデータが表現する形状をコピーして展開配置することもできる。展開配置には、形状を直線上にまたは格子状に展開する平行展開と、円弧上または多重の円弧上に展開する角度展開とが含まれる。平行展開の場合は、エレメントを展開するピッチおよび個数が指定される。角度展開の場合は、エレメントを展開する直径、角度ピッチ、個数が指定される。
このように配置データにおいてエレメントデータが表現する形状を展開配置することができるため、同一形状部位を複数有する部品形状を容易に入力設定することができる。
また、モジュールデータにおいて、複数のエレメントデータが表現する形状を組み合わせる際は、後述する各エレメントデータに(正確にはエレメントデータを構成する各基本図形に)設定された例や番号に応じて、各形状が重ね合わせられる。
エレメントデータ(ELEMENTデータ)は、モジュールデータにおいて指定され、各モジュールデータが検査対象とする部位の形状を構成する材料となる基本形状データを構成するものである。
エレメントデータは、原則として、円(CIRCLE)、楕円(ELLIPSE)、矩形(RECTANGLE)、多角形(POLYGON)等の基本図形から構成されるが、これら基本図形の複数の組合せとして構成することもできる。
複数の基本図形を組み合わせる際は、各エレメントデータの座標系における各基本図形の位置や姿勢と、各基本図形の重ね合わせにおける上下関係を表すレイヤ番号が設定される。レイヤ番号は、たとえば数値が大きい方が上側に位置することを意味する。
また、エレメントデータには色データが含まれ、たとえばRGB階調等で電子部品の色調色調や明暗を表現することができる。
図5〜図7は人工部品データの概念説明図である。これらの図は人工部品データにおける各部品の形状データの構成を示している。
図5の例のモデルデータMODEL1は、モジュールデータであるMODULE1,2と、エレメントデータであるELEMENT1〜5が含まれている。エレメントデータELEMENT1〜5はそれぞれ丸、三角、四角等の基本図形から構成されている。モジュールデータMODULE1ではELEMENT1,2が指定され、ELEMENT1の周囲に3つのELEMENT2を角度展開配置する配置データが含まれている。モジュールデータMODULE2ではELEMENT3,4が指定され、これらを上下に配置する配置データが含まれている。
図6の例のモデルデータMODEL1は、モジュールデータはMODULE1の1つだけであり、エレメントデータはELEMENT1〜4の4つが含まれている。モジュールデータMODULE1では指定されたELEMENT1〜4が適宜配置されることにより、MODULE1の形状データが構成されている。
図7の例のモデルデータMODEL1は、最終的には図6のそれと同じ検査対象部位を有しているが、この図7の例では、エレメントデータであるELEMENT1において丸や四角等の基本図形が組み合わされており、モジュールデータであるMODULE1は組み合わされた1つのエレメントデータELEMENT1から構成されている。
以上のようなデータ構成を有する人工部品データは、全て数値データを元にして構成されている。すなわち、エレメントデータにおける基本図形や、エレメントデータ及びモジュールデータにおける配置データ等の人工部品データの形状データは、全て数値入力されたデータから構成される。
このデータが数値入力は、検査用データを作成する時に限らず、上述したように上流側生産工程の生産用データや部品メーカが作成する電子カタログデータ等を利用して検査用データを作成する場合には、これら生産用データや電子カタログデータ等の入力時に行ってもよい。
人工部品データにおいては、こうして入力された電子部品の形状を示す数値データに応じて、電子部品の人工画像が作成される。
電子部品の人工画像は、各電子部品の見え方を表現するものであり、数値データとして入力された電子部品の形状データや色データに基づき、この数値データが表現する形状および色を有する電子部品が、検査装置のカメラや照明等からなる撮像系(撮影装置)によって撮影されたときに得られる画像を模して作成される。
この人工画像の作成は、数値データである形状データや色データに応じて作成される画像を、撮像系からの見え方に合わせるための加工を含む。この人工画像の加工は、形状データが示す電子部品の形状に色データが示す色情報を付して形成される画像に対し、その各部の色情報に応じて行われる。具体的には、撮像系から見たとき、色が変化する境界部分は、その色変化が滑らかになるように、若干ぼやけて見えることから、人工画像の加工は、近接する部位間の色変化の勾配を緩和するように、色の境界を滲ませる加工が行われる。
また、電子部品の周縁部分は、撮像系によって撮影されたとき、電子部品の背景色と隣接することになるため、かかる周縁部分はその色情報と電子部品の背景色とに応じた加工が行われる。具体的には、検査時には電子部品は実装基板上に搭載されているため、電子部品の周縁部分は、実装基板の地色との差異に応じて色の境界を滲ませる加工が行われる。
こうして作成される人工部品データの人工画像は、後述するように、検査対象とする実装基板を撮影して得られた電子部品の撮像画像と比較・照合され、各電子部品の実装状態が検査される。
このように、この検査装置では、数値データを元にした人工部品データを検査基準として検査が行われるため、誤差を解消した理想的な検査基準を作成することができ、信頼性の高い検査結果を得ることができる。
また部品が搭載された実物のマスター基板を必要としないため、検査基準の作成にマスター基板の完成を待つ製造工程のロスも解消され、効率的な検査用データの作成が可能となる。
また、人工部品データは実装基板の種類によらないため、複数の種類の基板で共用したり転用したりできる。また、人工部品データのモデルデータを構成するモジュールデータやエレメントデータも他の電子部品のモデルデータに転用することもできる。
また、人工部品データの数値データから部品の見え方に合わせた人工画像を作成して、実際の実装基板を撮影した撮像画像を人工画像と照合するため、電子部品の実装状態を的確に把握して正確な検査結果を得ることができる。
また、人工画像は、色勾配を緩和する処理を含む加工が施されるため、撮像画像と人工画像との照合をより正確に行うことができる。
図8は人工部品データを作成する方法の手順を示すフローチャートである。同図に示すように人工部品データの作成は、まず、実部品の形状パターンを認識して基本図形に分解した上で(ステップS11)、検査対象とする部位が決定される(ステップS12)。
続いてエレメントデータが作成され(ステップS13)、必要なエレメントデータがすべて作成されるまで繰り返される(ステップS14:NO)。
必要なエレメントデータが作成されれば(ステップS14:YES)、作成されたエレメントデータを利用してモジュールデータが作成され(ステップS15)、必要なモジュールデータがすべて作成されるまで繰り返される(ステップS16:NO)。
こうして必要なモジュールデータがすべて作成されれば、(ステップS16:YES)、作成されたエレメントデータおよびモジュールデータを利用してモデルデータが作成され(ステップS17)、一つの電子部品についての人工部品データの作成が完了する。
次に人工部品データを作成する具体例を説明する。図9は人工部品データの作成対象とする電子部品の外観説明図である。
この例では、リード部の搭載状態、ボディ部の位置および向き(極性)の判定、および部品の種類の判定という3つの検査項目が求められている場合を想定している。
なお、図9に示すように、第3の検査項目である部品の種類は、ボディ部に印刷されたIC型番マークを文字認識することにより行うことができ、この電子部品のIC型番には、製造ロットの違い等によって「A」と「B」の2種類のマークが付されたものが存在し、これら2種類の外観の電子部品を同一の電子部品として検査することが求められているとする。
まずエレメントデータを作成する。この例では、BODY−1、BODY−2、LEAD、LETTER−AおよびLETTER−Bの5つのエレメントデータが作成される。
図10は、エレメントデータBODY−1の入力画面例である。エレメントデータBODY−1は、ボディ部に付された部品の極性を示す丸マークの形状を表すものである。同図では、画面左上部でELEMENTタブが選択されていることからエレメントデータの入力・編集が行われていることが分かる。また、同図左中部の「ELEMENT NAME」表の選択表示により「BODY−1」の入力・編集が行われていることが分かる。
エレメントデータの作成では、同図下部の表に示すように、基本図形の種類(ここでは円:CIRCLE)が選択され、選択された基本図形に応じて設定すべき事項として、基本図形(円)をエレメントデータの座標系で配置する座標(X,Y,Z)および円の直径Dが設定される。また、色データとしてRGBそれぞれの階調値、他の基本図形や他のエレメントデータとの重ね合わせの上下関係を規定するレイヤ値(LAYER)が数値データとしてそれぞれ入力設定される。
また、こうしてエレメントデータの数値データが入力設定されれば、その数値データが表現する形状の検査時における見え方を表現する人工画像が自動的に作成され、同図右上部にイメージ表示される。
なお、ここで作成され、表示される人工画像は、上述したように形状を示す数値データに応じて各種の加工が施されている。
図11は、エレメントデータBODY−2の入力画面例である。エレメントデータBODY−2は、ボディ部の全体形状を表すものである。この例では、基本図形として矩形(RECTANGLE)が選択され、これに応じて配置する座標(X,Y,Z)、矩形の縦横サイズ(L,W)、配置する角度姿勢(R)、さらに各コーナー部の丸めサイズ(C1〜C4)、色データ、レイヤ値が設定されている。
図12は、エレメントデータLEADの入力画面例である。エレメントデータLEADは、各リード部(電極部)の形状を表すものである。この例では、エレメントデータLEADは1つのリード部を表しており、基本図形として矩形が選択され、これに応じて配置する座標(X,Y,Z)、矩形の縦横サイズ(L,W)、配置する角度姿勢(R)、さらに各コーナー部の丸めサイズ(C1〜C4)、色データ、レイヤ値が設定されている。
同図に示すように、リード部は上述したボディ部より小さく、そのイメージが拡大表示されているため、リード部の周縁部(エッジ部)における色勾配緩和処理の影響が大きく表現されたものとなっている。
図13は、エレメントデータLETTER−Aの入力画面例である。エレメントデータLETTER−Aは、ボディ部に付されたこの電子部品のIC型番を示す文字「A」の形状を表すものである。この例では文字「A」が3本の細い矩形の組み合わせとして構成されている。
図14は、エレメントデータLETTER−Bの入力画面例である。エレメントデータLETTER−Bは、ボディ部に付されたこの電子部品のIC型番を示す文字「B」の形状を表すものである。この例では文字「B」が表中に不図示の2つの楕円と、文字「B」の縦線をなす細い矩形と、楕円の左半分を隠すマスクとして機能する各色の階調が0とされた矩形とから構成されている。
次にモジュールデータを作成する。この例では、BODY、LEAD、LETTER−AおよびLETTER−Bの4つのモジュールデータが作成される。
図15は、モジュールデータBODYの入力画面例である。モジュールデータBODYはボディ部を検査対象部位とする検査モジュールを表すものである。同図では、画面左上部でMODULEタブが選択されていることからモジュールデータの入力・編集が行われていることが分かる。また、同図左中部の「MODULE NAME」表の選択表示により「BODY」の入力・編集が行われていることが分かる。
モジュールデータの作成では、同図下部の表に示すように、1または複数のエレメントデータが指定され、各エレメントデータが表現する形状を当該電子部品の座標系で配置する座標(X,Y,Z)と、これらを平行展開配置する場合のXY方向のピッチ(XP,YP)及び個数(XN,YN)と、角度展開配置する場合の半径RR、角度ピッチRA及び個数RNが配置データとして入力設定される。
このモジュールデータBODYではエレメントデータBODY−1およびBODY−2が指定され、ボディ部の全体形状を表すBODY−2を中心に配置し、部品の極性を示す丸マークの形状を表すBODY−1を左上部に配置する配置データが設定されている。
また、こうしてモジュールデータの数値データが入力設定されれば、その数値データが表現する形状の検査時における見え方を表現する人工画像が自動的に作成され、同図右上部にイメージ表示される。
ここで、エレメントデータBODY−1、BODY−2は平行展開配置はしていないので、XN=1、YN=1となり、X方向及びY方向にそれぞれ2列にエレメントデータBODY−1、BODY−2を平行展開配置する場合には、それぞれXN=2、YN=2となる。
図16は、モジュールデータLEADの入力画面例である。モジュールデータLEADはリード部を検査対象部位とする検査モジュールを表すものである。リード部は上述したとおり8つ存在するため、モジュールデータLEADでは、各リード部を表したエレメントデータLEADを平行展開配置している。具体的には、左下のリード部の座標X=−2.300,Y=−0.975から、X方向にピッチXP=4.600でXN=2回、Y方向にピッチYP=0.660でYN=4回コピーして展開配置することにより、8つのリード部が入力設定されている。
図17は、モジュールデータLETTER−Aの入力画面例である。モジュールデータLETTER−Aはボディ部に付された電子部品のIC型番を示す文字「A」を検査対象部位とする検査モジュールを表すものである。
図18は、モジュールデータLETTER−Bの入力画面例である。モジュールデータLETTER−Bはボディ部に付された電子部品のIC型番を示す文字「B」を検査対象部位とする検査モジュールを表すものである。
次にモデルデータを作成する。図19は、モデルデータSOP−Tiiの入力画面例である。SOP−Tiiはこの例において人工部品データの入力対象としている電子部品であり、モデルデータSOP−Tiiはこの電子部品に対する検査用データを表すものである。同図では、画面左上部でMODELタブが選択されていることからモデルデータの入力・編集が行われていることが分かる。また、同図左中部の「MODEL NAME」表の選択表示により当該部品「SOP−Tii」の入力・編集が行われていることが分かる。
モデルデータの作成では、同図下部の表に示すように、検査項目としてのモジュールデータ(検査モジュール)が指定される。ここで指定するモジュールデータは、電子部品の各部位のうち、検査対象とされる部位のみであり、このためモデルデータは必ずしも部品全体の形状を表現するものとはならない。
また、この実施形態では、1または複数のモジュールデータ(検査モジュール)を組み合わせたグループ(GROUP)を複数設定可能とされ、いずれかのグループに属する全てのモジュールデータが示す検査モジュールの検査結果が合格ならば当該電子部品の検査結果を合格とするようになっている。
この例では、ボディ部に印刷されたIC型番マークに「A」と「B」の2種類があり、いずれのマークが付されたものも同一の電子部品として検査することが求められるため、このIC型番マークを検査部位とするモジュールデータLETTER−AとLETTER−Bのみが異なる2つのグループが設定されている。
具体的には、グループ1は、モジュールデータBODY,LEADおよびLETTER−Aの組み合わせからなり、グループ2は、モジュールデータBODY,LEADおよびLETTER−Bの組み合わせからなる。
このように外観の異なる複数種類の電子部品であっても、それぞれの検査基準となる検査モジュールを組み合わせて束にしたグループを、1つの電子部品に対応するモデルデータに含ませることができるため、取り付けられるべき部品の種類が複数存在する場合にも柔軟に対応することができる。
またこの場合には、異なるグループで同一の検査モジュール(モジュールデータ)を共用することができるため、複数のグループを容易に入力設定することができる。
なおこの実施形態では、検査モジュールを組み合わせて束にしたグループを設定することにより、複数種類の部品に対応するようにしたが、各種類の部品で異なる部位を対象とする検査モジュールの組合せを設定し、そのいずれかを満たすこと(すなわちOR条件を満たすこと)を合格条件としてもよい。上記実施形態の例では、モジュールデータLETTER−AとLETTER−Bを組合せて、そのいずれかが満たされることを合格条件とすればよい。この場合、モジュールデータLETTER−AとLETTER−Bのいずれかに加え、他のモジュールデータBODY、LEADはすべてが満たされること(すなわちAND条件を満たすこと)が当該部品の合格条件となる。
また、モデルデータにおいては、各モジュールデータ(検査モジュール)毎に検査時の公差を設定できるようになっている。なお、このモデルデータにおいて設定される各モジュールデータ毎の公差は、各電子部品毎に設定される各部品の代表公差に付加する公差の付加値である。
このモデルデータにおいて設定される各モジュールデータの公差(付加値)は、具体的には、各モジュールデータが示す形状データの位置公差(POSITION TOLERANCE)と色公差(COLOR TOLERANCE)とが含まれる。位置公差にはXY方向の位置公差L1,W1と角度公差A1が含まれ、色公差にはRGB各色毎の色公差RED1,GREEN1,BLUE1が含まれる。
次に、実装基板において電子部品が搭載されるべき位置を示す搭載位置データについて説明する。
この検査装置では、検査対象基板を撮影して得られる撮像画像を、電子部品の形状を人工的な数値データで表現した人工部品データと比較・照合して、各電子部品の基板上の位置を検出するが、搭載位置データは、こうして検出された各電子部品の基板上の位置が許容できる正しい位置にあるか否かを判定するためのものである。このため、搭載位置データは人工部品データとともに電子部品の実装状態の検査の検査基準をなしている。また、搭載位置データは検査用データの一部を構成している。
この実施形態では、この搭載位置データも、マスター基板等を撮影したマスター画像等から抽出するのではなく、人工的な数値データとして入力設定されるようになっている。このように、搭載位置データも人工的な数値データを採用するため、電子部品の搭載位置についても誤差のない検査基準を得ることができる。
この搭載位置データもまた、検査装置が備えるコンピュータまたは人工部品データを作成するためのプログラムを実行可能な外部のコンピュータ等において作成される。また、搭載位置データを構成する各データは、検査用データの作成のためにオペレータ等によって入力するようにしても、検査装置よりも上流側の基板製造工程やマスク作成工程、クリームはんだ塗布工程、あるいは電子部品の実装工程等において使用される製造プログラムを元にして、ここから必要なデータを抽出して構成するようにしてもよい。
この実施形態における搭載位置データは、基板データ、アレンジメントデータ(ARRANGEMENTデータ)およびマウンティングデータ(MOUNTINGEデータ)という3つの階層から構成されている。
基板データは、検査対象とされる実装基板に対応するデータ単位であり、1つの基板データが1つの実装基板に対応している。各基板データは、複数のアレンジメントデータおよびマウンティングデータを設定することができるようになっている。
マウンティングデータ(MOUNTINGEデータ)は、1または複数の電子部品の搭載位置を各マウンティングデータの座標系(マウンティングデータ座標系)で規定するものである。
このマウンティングデータは、たとえば複数の割基板を含む実装基板等を対象とする場合には、各割基板における1または複数の電子部品の搭載位置を規定することができる。
各マウンティングデータには、搭載位置を規定する電子部品毎にマウントデータが設定され、各マウンティングデータは1または複数のマウントデータの束として構成される。
各マウントデータでは、搭載位置を指定する電子部品を指定するため、対象とする電子部品のモデルデータが関連付けられるとともに、その搭載位置をマウンティングデータ座標系で示す座標データが設定される。
また、このマウンティングデータにおいて、各電子部品の搭載位置の公差を個別に設定することができる。具体的には、各マウントデータにおいて、対応する電子部品の公差が設定できるようになっている。このようにマウンティングデータにおいて電子部品毎の公差を個別設定できることにより、各部品に求められる実装精度に応じた検査を行うことができる。
このマウンティングデータにおいて各電子部品に設定される公差は、上述した代表公差であり、各モジュールデータ(検査モジュール)についての検査においては、各モジュールデータに関連付けて設定された公差の付加値がこの代表公差に付加されて判定基準となる公差が決定される。なお、マウンティングデータにおいて公差設定されていない部品については、後述する各部品種類毎に設定した公差が適宜採用されるようになっている。これにより、個別に特別な公差を設定する必要のない電子部品については部品種類に応じた公差をそのまま採用し、公差の入力設定を容易に行うことができる。
アレンジメントデータ(ARRANGEMENTデータ)は、実装基板上におけるマウンティングデータの座標系の原点位置を規定するものである。すなわち、アレンジメントデータは、マウンティングデータで設定された電子部品の配置を、実装基板上で再配置するものである。このようなマウンティングデータとアレンジメントデータという階層を有するデータ構成により、実装基板における多様な電子部品の配置に柔軟に対応して、検査用データの作成を効率化することができる。
各アレンジメントデータは、1つのマウンティングデータを指定する指定データと、指定したマウンティングデータの原点位置および各マウンティングデータ座標系の角度を指定する配置データとが含まれる。この配置データは、実装基板の基板座標系における位置および角度を指定するものである。
また、この配置データは、マウンティングデータが表現する1または複数の電子部品の配置セットをコピーして展開配置することもできる。展開配置は、各マウンティングデータによる電子部品の配置セットを直線状にまたは格子状に展開する平行展開が含まれ、各マウンティングデータによる配置セットを展開するピッチおよび個数が指定される。
このように、アレンジメントデータによって展開配置ができることにより、マウンティングデータによる電子部品の配置セットを複数回利用して、実装基板全体の電子部品の搭載位置データの作成を効率的に行うことができる。
具体的には、複数の割基板を含む実装基板等を対象とする場合には、各割基板における1または複数の電子部品の搭載位置を規定したマウンティングデータを、展開配置することにより、複数の割基板を含む実装基板の搭載位置データを効率的に作成することができる。
また、上述したように、この実施形態では、1つの基板データに対して複数のアレンジメントデータを設定できることから、1枚の基板上に複数のマウンティングデータによる電子部品の配置セットを配置することができ、多様な部品レイアウトの実装基板における部品実装データに容易に対応することができる。
図20は、搭載位置データの概念説明図である。同図において基板データ1は、マウンティングデータであるMOUNTING1〜3と、アレンジメントデータであるARRANGEMENT1,2が含まれている。アレンジメントデータであるARRANGEMENT1,2は、それぞれマウンティングデータMOUNTING1,2が対応付けられている。
図21は、実装基板上に複数のマウンティングデータを展開配置した例を示す説明図である。同図の例では、2種類のマウンティングデータMOUNTING1,2が交互に展開配置されている。
従来の実装基板に電子部品を実装する際に用いられる実装データ(生産プログラム)では、1種類の割基板を展開配置することはできたが、複数種類の割基板を展開配置することはできなかった。
これに対し、この実施形態における検査用データをなす搭載位置データでは、1枚の実装基板に対して、複数のマウンティングデータとアレンジメントデータを設定することができるため、同図のような複数の繰り返し単位が配置される場合であっても、容易に対応して、検査用データを効率的に作成することができる。
図22は、実装基板上に単一の電子部品からなるマウンティングデータを展開配置した例を示す説明図である。
実際の基板では、同じ電子部品が所定ピッチで多数搭載される部分を有することも多いが、この実施形態における検査用データをなす搭載位置データでは、アレンジメントデータによって繰り返し展開配置が可能なマウンティングデータに、1つだけの電子部品をも対応させることができるため、同じ電子部品を所定ピッチで多数搭載する場合にも容易に対応して、効率的に検査用データを作成することができる。
次に搭載位置データを作成する具体例を説明する。
図23はマウンティングデータの入力画面例である。同図では、画面左上部でMOUNTタブが選択されていることからマウンティングデータの入力・編集が行われていることが分かる。また、同図左中部の「MOUNTING NAME」表の選択表示により、マウンティングデータ「BZ1」の入力編集が行われていることが分かる。
マウンティングデータには、上述したように各電子部品毎にマウントデータが設定される。同図に示す入力画面例では、各マウントデータは、同図右側の表の各行に対応している。各マウントデータには、名前(MOUNT NAME)が付けられ、対応する部品が搭載されるべき位置(POSITION)としてXY座標と、部品の姿勢(角度)Rとが設定される。
また、各マウントデータが搭載位置を規定する部品は、COMPONENT欄に設定される部品名称によって指定される。このCOMPONENT欄にて部品名称を設定すると、当該部品名称に関連付けられた人工部品データのモデルデータが存在する場合には、その人工画像が同図左下部の部品イメージ表示部に選択されたモデルデータの人工画像が表示され、データ入力するオペレータが意図する電子部品を指定したことを容易に確認できるようになっている。
なお、後述するようにCOMPONENT欄に設定される部品名は、人工画像が作成されているモデルデータの名称とは必ずしも一致しない。
また、各マウントデータには、その代表公差が設定される。この例では、搭載位置に関する公差としてXY方向の位置公差L0,W0と、取付姿勢に関する角度公差A0が設定される。また、各電子部品を認識する画像処理におけるRGBそれぞれの色公差RED0,GREEN0,BLUE0も設定される。
図24は、トレランスデータの入力画面例である。トレランスデータとは、電子部品の種類に応じて予め設定する標準公差を設定するものである。同図では、画面左上部でTOLERANCEタブが選択されていることからトレランスデータの入力・編集が行われていることが分かる。この例では、搭載位置に関する公差としてXY方向の位置公差L2,W2と、取付姿勢に関する角度公差A2、各電子部品を認識する画像処理におけるRGBそれぞれの色公差RED2,GREEN2,BLUE2も設定される。
同図中の表における部品名称COMPONENTは、前述したマウンティングデータの入力画面で使用する部品名称COMPONENTと対応している。マウンティングデータにおいて搭載位置が規定された部品の代表公差が、マウンティングデータで個別設定されていない場合には、このトレランスデータで設定された標準公差が当該電子部品の代表公差として採用される。
また、このトレランスデータの入力画面では、標準公差の設定に加え、COMPONENT欄に記載される部品名称と人工画像が作成されているモデルデータ(人工部品データ)とを関連付ける部品名称変換テーブルとしても機能する。この画面では、モデルデータ(人工部品データ)における部品名称はREPLACEMENT NAME欄に記載されている。
この部品名称変換テーブルにより、マウンティングデータで搭載位置が指定された電子部品のCOMPONENT欄に記載される部品名称が、人工部品データで人工画像が作成されているモデルデータを特定するREPLACEMENT欄に記載される部品名称に変換され、搭載位置データと人工部品データ(人工画像)とが関連付けられることになる。
このような部品名称の変換を行うのは、内部回路構成の異なる別種の部品であってもその外観が全く同一の電子部品があり、検査装置においてはこのような外観が同一の電子部品を区別する必要がなく、同一の人工画像(モデルデータ)を共用できるためである。
このため、この部品名称変換テーブルとして機能するトレランスデータの入力表では、異なるCOMPONENT名に対して同一のREPLACEMENT名を対応付けることができる。
こうして外観が共通する電子部品のCOMPONENT名を同一のREPLACEMENT名に対応付けることにより、外観が共通する電子部品を対象とする複数の搭載位置データを、同一の人工部品データ(人工画像)に関連付けて、作成すべき人工部品データの総数を減らし、人工部品データの入力設定作業の軽減化を図ることができる。
図25は、アレンジメントデータの入力画面例である。同図では、画面左上部でARRANGEMENTタブが選択されていることからアレンジメントデータの入力・編集が行われていることが分かる。同図中の表では、各行が各アレンジメントデータを構成している。
各アレンジメントデータには、名前(ARRANGE NAME)が付けられ、対象とするマウンティングデータの名前(MOUNTING NAME)が対応付けられ、そのマウンティングデータを配置する位置(POSITION)として、マウンティングデータの原点位置を基板座標系で表したXY座標と、マウンティングデータの配置姿勢(角度)Rとが設定される。
また、マウンティングデータを展開配置(PARALLEL ARRANGE)する場合には、XY方向のピッチXP,YPと回数XN,YNとが設定される。なお、この展開配置では、前記回数だけコピーされたマウンティングデータそれぞれの原点位置が、上記設定によるマウンティングデータの原点位置を基準として、ここからXYの正方向に前記ピッチで展開した位置に設定される。
次に、このような人工部品データおよび人工搭載位置データが設定された状態で、検査対象とする実装基板に対する電子部品の実装状態の検査を行う手順について説明する。
実装状態の検査では、まず人工部品データおよび搭載位置データを含む検査用データが取得される。この検査用データの取得は、上述したように、各データを入力設定することで作成しても、上流側工程で使用される生産データを加工して作成してもよい。
検査用データが検査装置に設定されれば、実際の検査対象とする基板に対する検査が実行される。
図26は実装基板上の電子部品の実装状態の検査を行う手順を示すフローチャートである。
この検査では、まず検査対象基板が撮像され、検査対象の撮像画像が取得される(ステップS21)。この撮影は、上述したように基板を格子状に分割し、各エリア毎にカメラを相対移動させることによって検査対象基板全体が撮像され、分割画像を合成して基板全体の広域画像が得られる。図4はこうして得られる広域画像の一例である。
こうして基板が撮影されれば、分割画像を合成した広域画像から検査範囲が切り出される(ステップS22)。この切り出し範囲は、各電子部品の人工部品データが示す各電子部品の大きさとその公差および想定される最大誤差を加味したマージンを加えた領域を、搭載位置データが示す部品中心位置座標に配置することで設定され、予め検査用データに含まれている。図27は、広域画像から切り出された検査範囲画像の一例である。
次に、切り出された撮像画像と、人工部品データとして作成された人工画像(検査基準)とが画像処理によって比較照合され、電子部品の実装状態が検査される(ステップS23)。この画像処理による検査は、上述した検査モジュール(モジュールデータ)毎に行われる。この検査では、撮像画像と人工部品データの人工画像とを比較照合して、検査モジュールが対象とする部位の位置や角度姿勢等が、実際の撮像画像においてどこにどのような姿勢で存在するかが求められ、当該部品の搭載位置データに規定されている搭載されるべき位置やあるべき角度姿勢等と比較され、そのずれ量が検査結果として求められる。また両画像における検査対象部位の色の差異はどの程度であるか等が算出される。
上述したように検査基準となる人工部品データが数値データを元に作成されているため、検査結果として各検査モジュールについて正確なずれ量を求めることができ、後述する生産工程の解析に寄与することができる。
図28は電子部品の撮像画像と人工画像との画像処理による検査の説明図である。同図において左側が実際の基板から撮影された撮像画像、右側が人工部品データにおける人工画像である。この例では、部品全体を1つの検査モジュールとしており、同図において×印が検査対象部位の中心位置を、黒丸印が搭載位置データに規定されている部品の中心位置を示しており、この例では×印と黒丸印の距離だけ部品の搭載位置がずれている。
次に、前記検査結果と、各電子部品について設定されている公差とが比較される(ステップS24)。公差は、上述したとおり、各部品毎に設定された代表公差と検査モジュール(モジュールデータ)において設定された付加量とから算出される。なお、検査結果と公差の比較は検査結果が公差内にあるか否かを判定するだけでなく、優良程度まで判定するようにしてもよい。
以上の検査をすべての検査対象部品のすべての検査モジュールについて繰り返し実行し(ステップS25:NO)、すべての検査モジュールの検査が完了すれば(ステップS25:YES)、検査結果がNG、すなわち公差を越えるずれのある検査モジュールが存在したかが判定される(ステップS26)。
検査結果がNGの検査モジュールがなければ(ステップS26:NO)、検査結果を出力して(ステップS27)、当該検査対象基板について合格判定を行い(ステップS28)、当該基板に対する一連の検査を終了する。
一方、検査結果がNGの検査モジュールが存在すれば(ステップS26:YES)、検査結果を出力して(ステップS29)、当該県差対象基板について不合格判定を行い(ステップS30)、当該基板に対する一連の検査を終了する。
なお、ステップS27,S29の検査結果の出力においては、基板全体としての合格不合格にかかわらず、各検査モジュールの検査結果の優良程度や、ずれ量の数値結果をもファイル出力し、複数の検査対象基板について蓄積することにより、検査工程より上流側の基板製造や部品実装等の生産工程における不具合の解析等に利用することができる。
そして検査結果の傾向を導くことによって上流側の生産工程に対して情報をフィードバックし、不良品の発生を未然に防ぐことができる。
このような検査結果データを分類し、表示することで、人の判断をサポートする機能(クオリティーアドバイザ)や、検査結果データを蓄積し、統計的に変化点を抽出することで、不良発生を予告、予防する機能(クオリティーアナライザ)にもつなげることができる。