JP2006083405A - ダイヤモンド合成用cvd装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 放電室10を球状に形成し、この内面11を鏡面仕上げとする。放電室10の半径は、導入されるマイクロ波の波長の3/4の長さとする。そして、胴部が絶縁部材(石英)で囲まれた同軸アンテナ21の先端には基板ホルダ30が載せられ、さらにその上に処理対象物Aが載せられる。この基板ホルダ30あるいは処理対象物Aは、放電室10の中心に位置する。同軸構造20の底部は真空シール部40で完全メタルシールされている。
【選択図】 図1
Description
これらのうち、高温高圧法は、天然のダイヤモンド生成過程を再現して、合成可能な高温かつ高圧の環境下で炭素からダイヤモンドに変換させる方法である。この高温高圧法によれば、ダイヤモンド粉末を大量に生産できる。このため、例えば、工業用の研磨材ダイヤモンドなどは、そのほとんどが高温高圧法により生産されている。
このCVD法は、従来から様々な方法が開発されてきたが、代表的なものとして、例えば熱フィラメントCVD法やプラズマCVD法などがある。
熱フィラメントCVD法は、1500℃〜2000℃程度に加熱された、主にタングステンなどを材料とするフィラメントを、CVDにおける気相分子の励起源として使用し、さらに触媒として作用させて、基板上にダイヤモンドを成長させる方法である。
特に、高周波の中でもマイクロ波を用いてプラズマを発生させた場合、そのプラズマ中のイオンやラジカル種の発生密度が高くなることが知られている。
これらCVD法では、合成されるダイヤモンドは薄膜状で、通常は結晶の集合体である多結晶薄膜となる。これは、任意の形状の基材にコーティングできることを意味し、機械工具などへのハードコーティングや、熱伝導の良さを利用したヒートシンクへの応用、赤外線や放射線用の窓材への応用などが期待されている。
しかも、ダイヤモンドは、高硬度、熱伝導率の大きさ、光透過波長帯の広さ、誘電率の小ささ、化学的安定性などの特性を有している。このため、半導体デバイス、電子放出デバイス、バイオセンサ、発光素子など、高耐圧のパワーデバイスの材料として、また、高速デバイスの材料としての応用が期待されている。
このマイクロ波プラズマCVD法に関する改良技術は、従来から種々提案されている。
例えば、図4に示すように、石英製放電管110を導波管120に貫通させた構造のものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照、第一の従来技術。)。これは、導波管120により送られてきたマイクロ波を励起源として、放電管110内の反応ガスを励起させプラズマを発生させて、放電管110内の基板(処理対象物)130の表面にダイヤモンドの結晶を形成するものである。
また、他の改良技術として、図5に示すように、金属製の真空容器(放電室210)に特定の共振モードを励起して基板220の周辺にプラズマを発生させるものがある(例えば、特許文献3参照、第二の従来技術。)。
また、ダイヤモンドを成長させるためには、基板を約1000℃に加熱する必要があり、マイクロ波の電力は、この加熱に多くの部分が消費されている。すなわち、大型化のためには、基板の面積に比例したマイクロ波電力の投入が必要になる。
また、窓材、あるいは真空容器材料等がスパッタリングされることなどによる不純物の混入など、多くの問題を抱えていた。
楕円には二つの焦点があり、一方の焦点からマイクロ波を放射すると、楕円面で反射して他方の焦点に収束する。これを利用し、片側の焦点にマイクロ波アンテナ320を置き、もう一方の焦点に基板330を置いておく。このようにすれば、基板近傍にだけマイクロ波が集中し、条件を整えれば、ここだけにボール状のプラズマを発生させることができる。すなわち、プラズマは、容器壁に接触することなく、ダイヤモンド薄膜が成膜される基板近傍にのみ発生する。このため、窓などにダメージを与えることがなくなり、真空容器材料による不純物の混入を防止できる。
この装置は、楕円形状の容器の中に、ガラス(石英)製の真空容器を置き、さらにこの中に基板を置くといった構成としてある。ガラス容器自体は、基板から充分に離れ、かつ、電界が集中しない位置に配置されている。このため、プラズマが容器壁に接触することを防止できる。
例えば、その楕円形状の短径は、パラボラアンテナの直径と波長の関係から類推できるように、充分に機能させるためには波長の4〜6倍の大きさが必要となっていた(具体的には、2.45GHzの波長で短径48cm〜72cm)。このため、装置が大型化し、消費電力も増大してしまい、生産コストから考えて好ましくなかった。
第三の従来技術は、本来多結晶ダイヤモンド薄膜をシリコン基板に成膜することを使用目的として開発されたものである。実際に、この装置の真空容器中にシリコン基板を置き、915MHzのマイクロ波を供給すると、直径150mmの多結晶ダイヤモンド薄膜を成膜できる。このとき、供給されたマイクロ波電力は、数十kWである。
このように、ダイヤモンド薄膜の合成では、通常シリコン基板が用いられ、この場合は、多結晶のダイヤモンド薄膜となる。
半導体デバイス製作には、単結晶のダイヤモンドが必要であるために、ダイヤモンド基板を用いたホモエピタキシャル成長が不可欠となる。
単結晶ダイヤモンドを成膜する場合、現在、種結晶に使用可能な単結晶ダイヤモンド基板は1〜4mmの大きさである。このため、基板ホルダは、直径10mmもあれば充分である。
ところが、第三の従来技術では、マイクロ波電界集中部を避けるために大口径のガラス容器を使う必要があり、金属シールは困難であった。
さらに、エピタキシャル成長においては、不純物の混入は極力低減されなければならず、すなわち、ベースになる真空度と真空の質の向上が重要になる。
ところが、上述したように、現在開発されている合成装置は、大面積の多結晶ダイヤモンド成長を製造目的・使用目的としたものがほとんどであり、また、真空度向上などの不純物混入に対しての対策などが十分配慮された装置は開発されていない。ダイヤモンドの半導体への応用研究を進める上では、高純度のホモエピタキシャル成長を考えた装置の開発が必要、不可欠であり、研究者からの強い要望があった。
しかしながら、この方法だけでは、希望の場所に効率よくプラズマを発生することは極めて難しい。例えば、マイクロ波が容器内の各部で反射することによる局所的なプラズマの発生などが生じる。これは、不純物混入、効率の面からも好ましくない。
このため、例えば放電室が円筒形状や楕円形状に形成されている場合、さらにはそれら放電室の内部に設けられた同軸構造により基板に給電した場合と比較して、より効率的に、基板近傍だけでプラズマを発生させることができる。
さらに、放電室が球形に形成されているため、この放電室の表面積を最小化できる。したがって、排気効率を向上でき、しかも、リークや脱離ガスを減少させることができる。
ダイヤモンド合成用CVD装置をこのような構成とすれば、放電室の内面(内壁)で赤外光を効率よく反射させることができる。しかも、基板から放射された熱も、基板に返すようにすることができ、熱効率を高めることができる。
なお、放電室の内面は、マイクロ波の反射効率及び、赤外線の反射率をさらに高めるために金などのコーティングを行うことも有効である。
ダイヤモンド合成用CVD装置をこのような構成とすると、放電室の中心でマイクロ波(2.45GHz)の電界強度が最大となるため、放電室自体を共振構造とすることができる。
しかも、マイクロ波の波長が2.45GHzの場合、放電室の実際の直径は、18cmとなる。これは、例えば、第三の従来技術である楕円形状の放電室が、短径で48cm〜72cmであったのに比べて非常に小さい。このため、装置の小型化が可能となる。
ダイヤモンド合成用CVD装置をこのような構成とすれば、同軸アンテナの胴部が絶縁部材で覆われるため、その同軸アンテナの先端部分のみで選択的に放電させるようにすることができる。しかも、同軸アンテナの先端(すなわち、載置部材あるいは処理対象物)は放電室の中心に位置するため、放射されたマイクロ波や赤外線を放電室の内面で反射させて、その同軸アンテナの先端に収束させることができる。したがって、マイクロ波給電のための消費電力量を低減できる。
ダイヤモンド合成用CVD装置をこのような構成とすると、マイクロ波放電の遮断が可能となる。
なお、誘電率の関係から、セラミックよりも石英を用いる方が望ましい。
ダイヤモンド合成用CVD装置をこのような構成とすれば、放電室内を完全な超高真空状態に保つことができる。
ダイヤモンド合成用CVD装置をこのような構成とすれば、載置部材の上面周縁にプラズマが偏在することを防止できる。
そして、放電室の内面は鏡面に磨き上げられた構造としてある。このため、赤外光が効率的に反射するとともに、処理対象物から放射された熱も、処理対象物に返ってくるようにすることができる。
さらに、放電室の半径は、マイクロ波の波長の3/4とし、これにより放電室自身を共振構造としてある。しかも、アルミナをメタライズし真空ろう付けを行うことで、真空シールを完全メタルシールとしてある。
したがって、半導体デバイス製作に必要な単結晶のダイヤモンドの合成に適したダイヤモンド合成用CVD装置を提供できる。
同図は、本実施形態のダイヤモンド合成用CVD装置の構造を示す縦方向断面図である。
放電室(チャンバ)10は、内部で反応ガスをプラズマ化させて処理対象物(基板)Aにダイヤモンド薄膜を施すための容器である。
この放電室10は、全体に球状に形成されている。
この放電室10の寸法は、導入されるマイクロ波の波長の3/4を半径とする。具体的には、例えば、そのマイクロ波の波長が2.45GHzの場合、1波長を約12cmとすると、放電室10の内径は、180mm(φ180)となる。
このような構造とすることにより、放電室10の中心部でマイクロ波の振幅が最大になるようすることができる。すなわち、放電室10それ自体が共振構造となっている。
なお、放電室10の内面11は、マイクロ波の反射効率や赤外線の反射率をさらに高めるために、金などのコーティングを行なうこともできる。
複数あるポート11のうち少なくとも一つは、反応ガス(例えば、水素(H2)とメタン(CH4)との混合ガス)の導入口として用いられる。
そして、他のポート11は、ダイヤモンド薄膜の形成状態の観察や、処理対象物Aの取り替えなどを行なうために用いられる。
なお、マイクロ波の基板から見える放電室10の上半分には、できる限りポート類11を少なくし、必要最小限度とすることが望ましい。これは、効率的にマイクロ波と赤外線を中心部に集中させて反射面積の減少を最大限減らすためである。
同軸アンテナ21は、導波管50(あるいは、同軸ケーブル(図示せず)など)により送られてきたマイクロ波を放電室10の内部へ供給するためのアンテナである。この同軸アンテナ21の先端には、基板ホルダ30を載せることができる。
また、同軸アンテナ21の胴部周囲には、絶縁部材22が設けられている。絶縁部材22は、同軸アンテナ21の胴部のみ覆い、同軸アンテナ21の先端は覆わないようにしてある。これは、同軸アンテナ21の先端部分のみで選択的に放電させるようにするためである。
具体的に、絶縁部材22は、絶縁材料を充填した構成とすることができる。絶縁材料としては、例えば、石英やセラミックなどを用いることができる。
Moは、硬質素材のため変形がなく、ハンドリングしやすいといった特徴を有することから、基板ホルダ30の材料として適している。
なお、本実施形態において、基板ホルダ30は、Mo製としてあるが、Mo製に限るものではなく、例えば、Ta(タンタル)、石英あるいはセラミック製などを用いることもできる。
基板ホルダ30にエッジがある場合、このエッジに電界が集中する。そうすると、基板ホルダ30の周囲に発生したプラズマが偏在してしまい、良質なダイヤモンド薄膜を形成できなくなる。基板ホルダ30の上面周縁の面取りは、これを防止するためのものである。
放電室10の内部に設けられた同軸アンテナ21は、他方が導波管50の内部に達している。このため、放電室10の内部空間と導波管50の内部空間とは、同軸アンテナ21の表面を介して通じる可能性がある。そうすると、導波管50内部の気圧により放電室10内部の超高真空状態が崩されてしまう(超高真空状態の保持が困難となる)。これを回避するために、それら放電室10の内部空間と導波管50の内部空間とが通じる部分に真空シール部40を設ける。
なお、真空シール部40は、これ以外にコバールガラスによるシールも可能である。
機械的強度の点から実際の実験はアルミナろう付けを選択したが、コスト的にはガラスシールの方が優れており、選択肢の一つと考えられる。
本発明のダイヤモンド合成用CVD装置(球状チャンバ型CVD装置)と他のダイヤモンド合成用CVD装置(円筒チャンバ型CVD装置)とを実際に組み立て、それぞれにおいて動作試験を行った。
なお、円筒チャンバ型CVD装置の構造図を、図3に示す。球状チャンバ型CVD装置と円筒チャンバ型CVD装置とは、放電室の形状が相違するものの、同軸構造(図1の同軸構造20、図3の同軸構造420)を有した点で共通する。
メタンガス(CH4)を水素で1%に希釈し、5kPa程度の圧力にし、2.45GHzのマイクロ波を導入しプラズマを発生させた。
その結果、プラズマ放電は、基板部分のみならず、放電室(チャンバ)底部、同軸部などでも発生した。ガス流量、チャンバ圧力、マイクロ波電力及びマッチングの調整により、基板部分のみにプラズマを限定することが可能であったが、極めて調整範囲が狭かった。
調整後、プラズマ放電が、基板部分のみで放電した場合、φ10mmの基板ホルダが約1000℃に加熱するには、マイクロ波電力は約600Wが必要であった。
円筒チャンバ型CVD装置と同様、メタンガス(CH4)を水素で1%に希釈し、5kPa程度の圧力にし、2.45GHzのマイクロ波を導入しプラズマを発生させた。
その結果、プラズマ放電は、ガス流量、チャンバ圧力、マイクロ波電力及びチューナを幅広く可変しても、基板部分のみで安定的に発生し、約200Wのマイクロ波電力でφ10mmの基板ホルダが約1000℃に加熱された。
しかも、球状チャンバ型CVD装置では、基板近傍にだけ容易にプラズマを発生させることが可能になった。
この装置の直径10mmMo製基板ホルダに4mm角のダイヤモンド基板を載せ、ベーキングを行い、容器内を10−5Pa以下になるまで排気した。
高純度のCH4を水素で1%以下に希釈し、6kPaになるよう容器に導入し、500Wのマイクロ波を印加し、成膜を行なった。その結果作成された単結晶ダイヤモンド薄膜は、二次イオン質量分析では不純物濃度は測定装置の測定限界以下(炭素に対し、0.001%以下)となり、235nm付近に強いフォトルミネッセンスを観測した。
例えば、上述した実施形態では、同軸構造が放電室の下方に位置する形状となっているが、同軸構造は放電室の下方に位置することに限るものではなく、例えば、側方や上方に位置していてもよい。ただし、基板ホルダあるいは処理対象物は放電室の中心に位置していることが望まれる。
10 放電室(チャンバ)
11 内面
20 同軸構造
21 同軸アンテナ
22 絶縁部材
30 基板ホルダ(載置部材)
40 真空シール部
60 アルミナ
A 処理対象物(基板)
Claims (7)
- 処理対象物の表面にダイヤモンドの薄膜を形成するダイヤモンド合成用CVD装置であって、
球状に形成された放電室と、
この放電室の内部へマイクロ波を供給する同軸アンテナと、
この同軸アンテナの先端に設けられた載置部材とを備え、
この載置部材又はこの載置部材上に置かれた前記処理対象物が、前記放電室の中心に位置する
ことを特徴とするダイヤモンド合成用CVD装置。 - 前記放電室の内面が、鏡面加工してある
ことを特徴とする請求項1記載のダイヤモンド合成用CVD装置。 - 前記放電室の半径が、前記マイクロ波の波長の3/4の長さである
ことを特徴とする請求項1又は2記載のダイヤモンド合成用CVD装置。 - 前記同軸アンテナの胴部周囲に、絶縁部材を設けた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のダイヤモンド合成用CVD装置。 - 前記絶縁部材の絶縁材料が、石英又はセラミックからなる
ことを特徴とする請求項4記載のダイヤモンド合成用CVD装置。 - 前記放電室の内部を超高真空に保つため、前記同軸アンテナの表面を介して前記放電室の内部空間と導波管の内部空間とが通じる箇所をメタライズされたアルミナで覆い真空ろう付けした真空シール部を設けた
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のダイヤモンド合成用CVD装置。 - 前記載置部材の上面周縁が、面取り加工された
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダイヤモンド合成用CVD装置。
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