JP2006077885A - 遊星歯車変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 構造を大きく変えることなく、従来より高減速比が得られる遊星歯車変速機を提供する。
【解決手段】 遊星歯車変速機は、第1サンギア11と、第1サンギア11の第1回転軸13に回転可能に支持される第1キャリア31と、第1キャリア31に回転可能に支持され、第1サンギア11と噛み合う第1プラネタリギア12と、第1プラネタリギア12に固定され、同軸で回転可能な第2プラネタリギア22と、第1キャリア31に連結された第2キャリア32に回転可能に支持され、外周面に外周面ギア41、内周面に内周面ギア42がそれぞれ形成され、外周面ギア41が第2プラネタリギア22と噛み合うリングギア40と、第2キャリア32に回転可能に支持されリングギア40の内周面ギア42と噛み合う第2サンギア21とを備える。
【選択図】 図1

Description

本発明は、遊星歯車変速機に関し、特に大きな変速比が得られる遊星歯車変速機に関する。
遊星歯車変速機としては、例えば図4に示すような構成のものが知られている。ここでは、大きな減速比を得るため、遊星歯車が2段並立した構造となっている。すなわち、第1サンギア110に第1プラネタリギア120が噛み合うようにキャリア310に回転可能に支持されている。第1プラネタリギア120に固定され、第1プラネタリギア120とは同軸で回転する第2プラネタリギア220が第2サンギア210と噛み合うようになっている。キャリア310は第1サンギア110の第1回転軸130と第2サンギア210の第2回転軸230に回転可能に支持されている。
ここで、例えばキャリア310を固定端にし、第1回転軸130を入力端、第2回転軸230を出力端にして駆動すると、第1サンギア110の回転が第1プラネタリギア120に伝わり、第2プラネタリギア220の回転により、第2回転軸230が回転することになる。このときの減速比は、以下の式(1)によって計算される。
(n1/n2)nc=0=(Zb/Za)・(Zd/Zc) (1)
但し、n1は第1回転軸130の回転速度、n2は第2回転軸230の回転速度、ncはキャリア310の回転速度、Zaは第1サンギア110の歯数、Zbは第1プラネタリギア120の歯数、Zcは第2プラネタリギア220の歯数、Zdは第2サンギア210の歯数である。
また、キャリア310を固定端にし、第2回転軸230を入力端、第1回転軸130を出力端にして駆動した場合の減速比は、以下の式(2)によって計算される。
(n2/n1)nc=0=(Za/Zb)・(Zc/Zd) (2)
前記いずれも、第1プラネタリギア120および第2プラネタリギア220が自転しているが、公転していない場合の減速比である。
このような変速機を使ってより大きな減速比を得るためには、第1プラネタリギア120および第2プラネタリギア220が自転も公転もするようにキャリア310を入力端または出力端として回転させる。このとき、例えば、第2回転軸230を固定端にし、キャリア310を入力端、第1回転軸130を出力端にした場合、以下の式(3)で減速比が計算される。
nc/n1=1/{1−(n1/n2)nc=0} (3)
また、第1回転軸130を固定端にし、第2回転軸230を出力端にした場合、以下の式(4)によって減速比が計算される。
nc/n2=1/{1−(n2/n1)nc=0) (4)
ここで、例えばZaを20、Zbを11、Zcを10、Zdを21とすると、前記式(1)、式(2)により、キャリア310が固定された場合の減速比は、それぞれ、(n1/n2)nc=0が1.155、(n2/n1)nc=0が0.866となっている。
これに対して、キャリア310を入力端にした場合の減速比は、式(3)、式(4)によって、それぞれ、nc/n1が−6.45、nc/n2が7.45になっており、キャリア310を固定した場合より、大きな減速比を得ることができる。但し、キャリア310を入力端にし、第1回転軸130を出力端にした場合、入力端に対して出力端の回転が反転している。
キャリア310を入力端にした場合の減速比は、式(3)、式(4)で分かるように、(n1/n2)nc=0またはn2/n1)nc=0を1に近づけるほど、減速比を大きくすることができる。
ところで、(n1/n2)nc=0または(n2/n1)nc=0、すなわち第1回転軸130と第2回転軸230との回転速度比または第2回転軸230と第1回転軸130との回転速度比を1に近づけるには、第1サンギア110、第1プラネタリギア120、第2サンギア210、第2プラネタリギア220の歯数を増やす必要がある。しかしながら、例えばギアの大きさを維持したままで、歯数を増やすと、ギアのモジュールを小さくせざるを得ず、この結果、ギアの加工には高い加工精度が要求されるとともに、ギアの伝達トルクが小さくなることによって変速機の容量が低下してしまう。また変速機の容量を維持するようにギアのモジュールを維持したままで、減速比を上げようとすると、歯数の増加により変速機がかなり大きくなってしまう問題があった。
本発明は、前記従来の問題点に鑑み、構造を大きく変えることなく、高減速比が得られ、しかも高い加工精度を必要とせず、また容量が低下することもない遊星歯車変速機を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、第1サンギアと、第1サンギアの回転軸に回転可能に支持されるキャリアと、キャリアに回転可能に支持され、前記第1サンギアと噛み合う第1プラネタリギアと、前記第1プラネタリギアに固定され、同軸で回転可能な第2プラネタリギアと、前記キャリアに回転可能に支持され、外周面に外周面ギア、内周面に内周面ギアがそれぞれ形成され、外周面ギアが前記第2プラネタリギアと噛み合うリングギアと、前記キャリアに回転可能に支持され前記リングギアの内周面ギアと噛み合う第2サンギアとを備えるものとした。
請求項1に記載の発明によれば、第2プラネタリギアと第2サンギアの間にリングギアを介在させたので、第2プラネタリギアと第2サンギアの回転運動はリングギアを介して行われることになる。したがって、第1サンギア、第1プラネタリギア、第2サンギア、第2プラネタリギアのうち、歯数の多いギアを含まなくても、第1サンギアと第2サンギアの回転速度比を1に近づけることができ、極めて大きな減速比が得られる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遊星歯車装置であって、前記リングギアが、前記第1サンギアの回転中心に対して偏心した状態で前記キャリアに回転可能に支持され、前記第2サンギアは、前記第1サンギアと同じ回転中心で前記キャリアに回転可能に支持されているものとした。
請求項2に記載の発明によれば、第1サンギア、キャリア、第2サンギアは、同じ回転中心で回転することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の遊星歯車装置であって、前記第1サンギアと前記第2サンギアとは、互いに他方を軸支しているものとした。
請求項3に記載の発明によれば、変速機の軸方向寸法を大きくすることなく、第1サンギア、第2サンギアを両端支持構造とすることができる。
請求項4に記載の発明は、前記リングギアが、前記第2プラネタリギアおよび第2サンギアより柔軟な材料で構成されているものとした。
請求項4に記載の発明によれば、リングギアと第2プラネタリギアおよび第2サンギアとの噛み合い効率が向上する。
本発明においては、第2プラネタリギアと第2サンギアの間にリングギアを介在させることによって、ギアの歯数を増やさなくても、減速比を大幅に上げることができるため、ギアの加工が容易で、加工精度を向上させることなく、しかも小型の構成を維持しながら、伝達トルク容量を向上させることができる。
以下、本発明を適用した遊星歯車変速機の一実施形態について説明する。
図1および図2は、遊星歯車変速機の構成を示す図である。図1の(a)は遊星歯車変速機の外観を示す斜視図で、図1の(b)は(a)におけるA−A断面図である。図2の(a)は図1の(a)におけるB−B断面図で、図2の(b)は図1の(a)におけるC−C断面図である。
第1サンギア11の第1回転軸13にボールベアリング7を介して第1キャリア31が支持されている。
第1サンギア11の端部に第1回転軸13と回転中心が同じのプーリ31aが外方へ突出して形成されている。第1回転軸13は、プーリ31aの端面より外方へ突出し、その端部には他の部材と連結するための連結穴31dが三つ形成されている。
第1キャリア31に平行して第2キャリア32が配置され、第1キャリア31と第2キャリア32とは、円周方向で三つの連結部材5によって所定の間隔をもって連結され、第1回転軸13を中心に一体となって回転可能になっている。第1キャリア31と第2キャリア32は特許請求の範囲におけるキャリアに相当する。
第1キャリア31と第2キャリア32とは、互いに対向する位置に、中心の位置が同じ貫通孔31b、32bがそれぞれ形成され、支持軸24が貫通孔31b、32bに支持されている。第1プラネタリギア12と第2プラネタリギア22は、互いに一体に形成され、第1プラネタリギア12が第1サンギア11と噛み合うように支持軸24に回転可能に支持されている。なお、第1プラネタリギア12と第2プラネタリギア22は、ニードルベアリング52を介して支持軸24に支持されている。
第2キャリア32にボールベアリング9を介して第2サンギア21の第2回転軸23の一端が支持されている。第2回転軸23は、第1回転軸13と回転中心が同じで、その他端で第1回転軸13と互いに軸支されている。すなわち、第2回転軸23の他端の先端部が第1回転軸13の内部まで伸びニードルベアリング51を介して第2回転軸23と軸支されている。第2回転軸23の端部には第1回転軸13の端部と同様に連結穴32dが三つ形成されている。
第2キャリア32にはボールベアリング8を介してリングギア40が、第1サンギア11、第2サンギア21に対して偏心した状態で回転可能に支持されている。すなわち、リングギア40は、図2の(b)に示すように、第2プラネタリギア22の回転中心と第2サンギア21の回転中心とを結ぶ線m上に、第2サンギア21に対して第2プラネタリギア22の反対側に回転中心oが設定されて支持されるようになっている。
リングギア40は、第2プラネタリギア22および第2サンギア21より柔軟な材料で構成され、その外周面に外周面ギア41、内周面に内周面ギア42がそれぞれ形成され、外周面ギア41が第2プラネタリギア22と、内周面ギア42が第2サンギア21とそれぞれ噛み合うようになっている。
遊星歯車変速機は、以上のように構成され、図2の(a)に示すように、第1プラネタリギア12が第1サンギア11と噛み合っているので、例えば第1サンギア11に対して第1キャリア31を回転させた場合、第1プラネタリギア12が支持軸24を中心に自転しながら、第1サンギア11の中心を回転中心として公転する。
第1プラネタリギア12の回転で、図2の(b)に示すように第1プラネタリギア12と一体に形成された第2プラネタリギア22が回転する。このとき、第2キャリア32は第1キャリア31と同じ回転をするので、第2プラネタリギア22とリングギア40の外周面ギア41の噛み合い関係、リングギア40の内周面ギア42と第2サンギア21の噛み合い関係を維持して第2プラネタリギア22の回転を第2サンギア21に伝達することができる。
次に、前記の遊星歯車変速機の減速比について説明する。
図3は、前記遊星歯車の減速比を演算するためのスケルトン図である。
前記従来例で説明したように、このような遊星歯車を2段並立した変速機では、2軸駆動とした場合、プーリ31a、すなわち第1キャリア31および第2キャリア32を入力端として回転させた場合、プーリ31aと第1回転軸13との減速比およびプーリ31aと第2回転軸23との減速比を前記式(3)および式(4)によって計算することができる。ここで、第1回転軸13の回転速度をn1、第2回転軸23の回転速度をn2、プーリ31a(第1キャリア31および第2キャリア32)の回転速度をncとすることができる。このとき、式(3)、式(4)によって、(n1/n2)nc=0または(n2/n1)nc=0が1に近いほど、減速比が大きい。
ここで、その回転速度比について計算してみることにする。リングギア40を除く他のギアの歯数を前記従来例の21を最大とし、第1サンギア11の歯数Zaを20、第1プラネタリギア12の歯数zbを14、第2プラネタリギア22の歯数Zcを13、第2サンギア21の歯数Zdを12にそれぞれ設定する。そして、リングギア40の外周面ギア41の歯数Zeを26、内周面ギア42の歯数Zfを17に設定する。
このとき、(n1/n2)nc=1は、以下の式(5)で計算される。
(n1/n2)nc=1=(Zb/Za)・(Ze/Zc)・(Zd/Zf)
(5)
式(5)に前記各ギアの歯数を代入すると、(n1/n2)nc=1が0.988になる。
(n2/n1)nc=1は、(n1/n2)nc=1の逆数で、以下の式(6)で計算される。
(n2/n1)nc=1=(Za/Zb)・(Zc/Ze)・(Zf/Zd)
(6)
式(6)に前記各ギアの歯数を代入すると、(n2/n1)nc=1が1.012になる。
このように、第1サンギア11、第2サンギア21、第1プラネタリギア12、第2プラネタリギア22の歯数を従来より増やさなくても、(n1/n2)nc=1および(n2/n1)nc=1を1に近づけることができる。
このとき、前記式(3)により、プーリ31aと第1回転軸13との減速比nc/n1が85になる。
前記式(4)により、プーリ31aと第2回転軸23との減速比nc/n2が−84になる。
以上説明した通り、本発明によれば、従来の遊星歯車変速機に対して第2サンギア21と第2プラネタリギア22の間にリングギア40を介在させることにより、各ギアの歯数を少なく設定しても高減速比が得られるため、小型の構成を維持しながら、減速比を向上させることができる。また、モジュールを大きく取れることで、強度的に余裕ができ、樹脂化または焼結でコストコストを抑えることもできる。また、インボリュートギアを使用することができるため、加工が簡単で、しかも歯数が少ないため高い加工精度を必要としないので、加工コストを低減させることも可能になる。
また、小型であるゆえに、例えば第1キャリア31または第2キャリア32をモータの回転軸と直結してモータと一体に構成することもできる。
そして、各ギアの歯数差が小さいので、噛み合い効率がよく、伝達効率も高い。
さらに、歯数の選定自由度が高いため、リングギア40の内周面ギア42の歯数の設定で、リングギア40の内周面ギア42を加工する際に、トロコイド干渉を回避または低減させることができるので、リングギア40と他のギアの噛み合い効率を高め、また加工を容易にすることができる。
また、実施形態で示した構造では、第1回転軸13と第2回転軸23とは互いに軸支されているので、支持剛性が高く、各ギアが滑らかに回転することができるため、回転騒音を小さく抑えることができる。
さらに、リングギア40は、第2プラネタリギア22および第2サンギア21より柔軟な材料で構成されるため、それらとの噛み合い効率が向上し、ギアの回転を円滑、かつ静かにできる。
本実施形態は、以上示した構成のほかにも、変形して実施することができる。例えば、第2プラネタリギア22、リングギア40、第2サンギアの回転中心が同じ直線上でなくても配置することができる。また、第1回転軸13と第2回転軸23の軸支では、ニードルベアリング51を介さずに互いに直接で支持するようにしてもよいし、ボールベアリングを介して支持するようにしてもよい。また支持状態も、第1回転軸13が第2回転軸23の内部に支持されるのでなく、その逆で第1回転軸13が第2回転軸23の内部で支持されるようにしてもよい。
遊星歯車変速機の外観を示す斜視図で、(a)は遊星歯車変速機の外観を示す斜視図で、図1の(b)は(a)におけるA−A断面図である。 遊星歯車変速機の内部構造を示す断面図で、(a)は図1の(a)におけるB−B断面図で、(b)は図1の(a)におけるC−C断面図である。 遊星歯車の減速比を演算するためのスケルトン図である。 従来の遊星歯車変速機の減速比を演算するためのスケルトン図である。
符号の説明
5 連結部材
7 ボールベアリング
8 ボールベアリング
9 ボールベアリング
11 第1サンギア
12 第1プラネタリギア
13 第1回転軸
21 第2サンギア
22 第2プラネタリギア
23 第2回転軸
24 支持軸
31 第1キャリア
31a プーリ
31b 貫通孔
31d、32d 連結穴
32 第2キャリア
40 リングギア
41 外周面ギア
42 内周面ギア
51、52 ニードルベアリング

Claims (4)

  1. 第1サンギアと、
    第1サンギアの回転軸に回転可能に支持されるキャリアと、
    キャリアに回転可能に支持され、前記第1サンギアと噛み合う第1プラネタリギアと、
    前記第1プラネタリギアに固定され、同軸で回転可能な第2プラネタリギアと、
    前記キャリアに回転可能に支持され、外周面に外周面ギア、内周面に内周面ギアがそれぞれ形成され、外周面ギアが前記第2プラネタリギアと噛み合うリングギアと、
    前記キャリアに回転可能に支持され前記リングギアの内周面ギアと噛み合う第2サンギアとを備えることを特徴とする遊星歯車変速機。
  2. 前記リングギアは、前記第1サンギアの回転中心に対して偏心した状態で前記キャリアに回転可能に支持され、前記第2サンギアは、前記第1サンギアと同じ回転中心で前記キャリアに回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の遊星歯車変速機。
  3. 前記第1サンギアと前記第2サンギアとは、互いに他方を軸支していることを特徴とする請求項2に記載の遊星歯車変速機。
  4. 前記リングギアは、前記第2プラネタリギアおよび第2サンギアより柔軟な材料で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遊星歯車変速機。
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