JP3919350B2 - 内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外歯歯車を出力部材とし、該外歯歯車と噛合する内歯揺動体を偏心体によって揺動回転させることにより、外歯歯車に減速回転出力を取り出す内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内接噛合遊星歯車装置は、大トルクの伝達が可能であり且つ大減速比が得られるという利点があるので、種々の減速機分野で数多く使用されている。
【0003】
その中で、外歯歯車を出力部材とし、該外歯歯車と噛合する内歯揺動体を偏心体によって揺動回転させることにより回転出力を取り出す内歯揺動型の内接噛合遊星歯車装置が特許公報第2607937号にて知られている。
【0004】
図10、図11を用いて同歯車装置の一例を説明する。
【0005】
1はケーシングであり、互いにボルトやピン等の締結部材2で結合された第1支持ブロック1Aと第2支持ブロック1Bとからなる。5は入力軸で、入力軸5の端部にはピニオン6が設けられ、ピニオン6は、入力軸5の周りに等角度に配設された複数の伝動歯車7と噛合している。
【0006】
ケーシング1には、軸方向両端を軸受8、9によって回転自在に支持され且つ軸方向中間部に偏心体10A、10Bを有する3本の偏心体軸10が、円周方向に等角度間隔(120度間隔)で設けられており、前記伝動歯車7は各偏心体軸10の端部に結合されている。そして、入力軸5の回転を受けて伝動歯車7が回転することにより、全部の偏心体軸10が連動回転するようになっている。
【0007】
各偏心体軸10は、ケーシング1内に収容された2枚の内歯揺動体12A、12Bの貫通孔をそれぞれ貫通しており、各偏心体軸10の軸方向に隣接した2段の偏心体10A、10Bの外周と、内歯揺動体12A、12Bの貫通孔の内周との間にはコロ14が設けられている。
【0008】
一方、ケーシング1内の中心部には、出力軸20の端部に一体化された外歯歯車21が配されており、外歯歯車21の外歯23に、内歯揺動体12A、12Bのピンからなる内歯13が噛合している。内歯揺動体12A、12Bは、偏心体10A、10Bを支持する部分と内歯13部分を除いて残りの部分を切り欠いて構成されており、これによって第1、第2の支持ブロック1A、1Bの特に結合部分の断面積を大きくとれるようになっている。
【0009】
この装置は次のように動作する。
【0010】
入力軸5の回転は、ピニオン6を介して伝動歯車7に与えられ、伝動歯車7によって偏心体軸10が回転させられる。偏心体軸10の回転により偏心体10が回転させられると、内歯揺動体12A、12Bが揺動回転する。このため、内歯揺動体12A、12Bと噛合する外歯歯車21が減速回転されるものとなる。この場合、内歯揺動体12A、12Bの1回の揺動回転によって、該内歯揺動体12A、12Bと外歯歯車21はその歯数差だけ位相がずれるので、その位相差に相当する自転成分が外歯歯車21の(減速)回転となり、出力軸20から減速出力が取り出される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来の内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置では、3本の偏心体軸10を全て回転駆動することにより、内歯揺動体12A、12Bを揺動回転させるようになっており、偏心体軸10の本数だけ入力段ギヤ(伝動歯車7)が必要であり、部品点数が多かった。
【0012】
また、120度間隔で配した3つの伝動歯車7を1個のピニオン6で回転させる関係上、特別にリング状のアイドル歯車を1段余計に設けたりしない限り、ピニオン6及び入力軸5の位置が、歯車装置の中心(外歯歯車21の中心)にならざるを得ず、例えば、歯車装置の中心部に貫通孔を設けて(=中空軸を採用するなどして)、配管や配線等のスペースに有効利用するようなことが簡単には実現しにくかった。そのため、特に産業用のロボットの関節駆動のような用途において改善が求められていた。
【0013】
また、内接噛合遊星歯車部の減速比をいじらずに、減速比を複数種類用意するような場合には、入力段の伝動歯車7とピニオン6のギヤ比を変えた組み合わせセットを複数種類用意しなくてはならず、部品点数が増えるという問題があった。即ち、例えば1/4と1/2の減速比を得るためには、図12に示すような1/4の減速比を得る伝動歯車7Aとピニオン6Aのセットと、図13に示すような1/2の減速比を得る伝動歯車7Bとピニオン6Bのセットの2種類を用意しなくてはならず、部品点数が多くなりがちであった。
【0014】
本発明は、上記事情を考慮し、部品点数の減少を図りながら、必要に応じて装置の中心部に配線や配管等の貫通スペースを容易に確保することの可能な内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ケーシングと、該ケーシング内に配された出力部材としての外歯歯車と、該外歯歯車の外周側に配され前記ケーシングに回転自在に支持された複数の偏心体軸と、該偏心体軸に設けられた偏心体と、前記外歯歯車と噛合し前記偏心体が貫通すると共に該偏心体の回転によって揺動回転させられることで前記外歯歯車を回転させる内歯揺動体とを備えた内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において、前記複数の偏心体軸のうちの少なくとも2本を、該偏心体軸を回転駆動する入力軸と連結して同時に回転させるピニオンを備え、前記複数の偏心体軸のうちの少なくとも1本が、該ピニオンと非連結とされることにより、内歯揺動体の揺動に応じて従動回転しつつ内歯揺動体を支持する従動専用とされ、且つ、前記ピニオンが、当該歯車装置の中心からオフセットされていることにより、上記課題を解決したものである。
【0016】
偏心体軸は従来は当然のように全部を駆動していたが、1枚の内歯揺動体に対して最低2本の偏心体軸が存在すれば、内歯揺動体に揺動運動を与えることができる。このため、駆動は最低2本は必要であるが、2本の偏心体軸だけであると、内歯揺動体からの出力トルク負荷をバランスよく受け止めて支持することは難しい場合がある。そこで、本発明では2本の駆動用偏心体軸を確保すると共に、少なくとももう1本の偏心体軸を追加し、これを駆動用に用いずに従動専用としてい用いる。
【0017】
このように従動専用の偏心体軸を設けた場合、それについては伝動歯車が不要であるから、同じ本数の駆動専用の偏心体軸を有した従来装置よりも、部品点数を減らすことができ、特に複数の容量や変速比をシリーズとして用意する場合には、全体の在庫部品点数を激減させることができる。
【0018】
また、例えば3本の偏心体軸のうち1本の偏心体軸を従動専用とした場合は、2個の伝動歯車に対してのみピニオンを噛合させればよいことになるので、ピニオン及び入力軸の位置を、必ずしも歯車装置の中心部に設ける必要性がなくなって、歯車装置の中心部から障害物を排除し、該中心部に配管や配線等の貫通スペースを容易に設けることができるようになると共に、相手部材との干渉を避けることができるようになる。そのため、例えば産業用のロボットの関節駆動の用途等において有益である。
【0019】
また、上の理由によりピニオンの位置を自由に設定できることから、減速比を変更する場合にも、伝動歯車は共通のものを用いながら、ピニオン径とピニオン位置の変更によって、所望の減速比を得ることができる。よって、伝動歯車を共通化できる分、部品点数の減少させることができる。
【0020】
また、駆動用の偏心体軸には、入力トルク負荷と出力トルク負荷の両方がかかるが、従動専用の偏心体軸には、入力トルク負荷はかからず、出力トルク負荷のみがかかるので、従動専用の偏心体軸に関しての負荷の減少を図ることができ、それに応じて従動専用の偏心体軸の小径化が可能になる(請求項5)。
【0021】
なお、本願発明においては、前記偏心体軸を、外歯歯車を中心とする円周方向に不等間隔で配置するようにするとよい。この理由は以下の通りである。
【0022】
ここで、3本の偏心体軸を備える場合を考えてみる。
【0023】
3本の偏心体軸を円周方向に等配すると120度間隔になるが、本発明では、例えば2本の偏心体軸を120度より小さい間隔で片側に寄せて配置し、残りの1本の偏心体軸をそれらと反対側に配置する。そうすると、片側に寄せた2本の偏心体軸同士が互いに接近するので、それらを結ぶ直線方向の装置寸法が縮小できるようになる。従来は、偏心体軸を円周方向に等配する関係上、装置が円形を基本とする形状になっていたが、本発明では、偏心体軸を不等間隔で配置することにより、偏心体軸の配置の自由度が増すので、それに応じて歯車装置全体の形状の設計自由度が大きくとれるようになり、前述したように、出力軸の正面から見た場合の装置の幅寸法を小さくすることができ、全体として細長い形状のコンパクトな歯車装置を作ることが可能になる。この不等配置は、従動のものはどこに位置していても駆動系の連結を必要としないので相乗効果が大きい。
【0024】
請求項2の発明は、偏心体軸を3本備え、そのうちの2本の偏心体軸を120度より小さい間隔で互いに接近させて配置し、残る1本を前記従動専用のものとして、これを、前記互いに接近した2本の偏心体軸と反対側に配置したことにより、上記課題を解決したものである。
【0025】
即ち、駆動用の偏心体軸は互いに接近して配置することにより、伝動歯車によって連動回転させやすくし、駆動に関与しない従動専用の偏心体軸は、駆動用の偏心体軸から離れた位置に配置することで、内歯揺動体からの出力トルク反力をバランスよく支持できるようにしている。
【0026】
また、偏心体軸は必ずしも外歯歯車の中心に対して同一円周上に配置する必要はなく、偏心体軸のうちの少なくとも1本を、他の偏心体軸とは異なる径の円周上に配置してもよい(請求項3)。そうした場合は一層、設計の自由度が広がる。
【0027】
また、偏心体軸を不等配置した場合にも、各偏心体軸や偏心体に対する負荷のかかり方が変わって来る可能性があるので、負荷のかかり方に応じて偏心体軸(偏心体の概念を含む)の径を異ならせてもよく(請求項4)、それに応じて偏心体の径や軸受のサイズを変えてもよい。例えば、偏心体軸の配置により守備範囲の広くなった偏心体軸や偏心体については大径とするのがよい。しかし、守備範囲の広くなった偏心体軸が従動専用の場合は、トルク負荷が少ないために小径化が可能である。そこで、大径化の必要性と小径化の必要性の高低(強弱)を計りながら偏心体軸の軸径を設定するのがよい。但し、偏心体軸の軸径を異ならせる場合にも、偏心体の偏心量は他と揃える必要がある。
【0028】
また、上記の発明を適用することにより、歯車装置の中央部に入力用のモータを配置する必要がなくなることから、請求項5の発明では、外歯歯車の中心部に貫通孔を形成し、その貫通孔を、各種の配管や配線等を行うためのスペースとして有効利用するのが極めて容易になる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
〔参考例〕
図1は参考例に係る内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置(以下、単に「歯車装置」ともいう)100の要部断面図である。
【0031】
この歯車装置100では、ケーシング101で支持することにより、歯車装置100の中心Oの周りに、3本の偏心体軸110、111、111を円周方向に等間隔(120度間隔)で配置している。ここまでは従来のものと同じである。しかし、この歯車装置100では、3本の偏心体軸110、111、111のうち、2本の偏心体軸111、111のみを駆動及び出力トルク反力受用とし、残る1本の偏心体軸110は、入力軸に対して非連結とすることにより、内歯揺動体112Aの揺動に応じて従動回転しつつ内歯揺動体112Aを支持する従動専用(出力トルク反力受専用)のものとしている。
【0032】
従って、駆動用の2本の偏心体軸111、111の端部には、歯車装置100の中心Oに配置したピニオン106Aと噛合する伝動歯車107が結合されているが、従動専用の偏心体軸110には伝動歯車は設けられていない。
【0033】
その他の構成については、前述した図10、図11の従来例と基本的に同じであるため、同一または類似の部材に下2桁が同一の符号を図中で付すこととし、説明を省略する。
【0034】
次に作用を説明する。
【0035】
図示しない入力軸の回転は、ピニオン106Aを介して2つの伝動歯車107に与えられ、伝動歯車107によって2本の偏心体軸111、111が回転させられる。偏心体軸111の回転により偏心体111Aが回転させられると、内歯揺動体112Aが揺動回転する。このため、内歯揺動体112Aと噛合する外歯歯車121が減速回転されるものとなる。この場合、内歯揺動体112Aの1回の揺動回転によって、該内歯揺動体112Aと外歯歯車121はその歯数差だけ位相がずれるので、その位相差に相当する自転成分が外歯歯車121の(減速)回転となり、出力軸(図示略)から減速出力が取り出される。
【0036】
上記の動作の際、従動専用とされた偏心体軸110は、内歯揺動体112Aの揺動回転に伴って従動回転し、内歯揺動体112Aに伝わる出力トルク反力を支持する。従って、負荷トルクの反力については、駆動、従動を含めた全ての偏心体軸110、111、111でバランスよく支持することができる。
【0037】
この歯車装置100の場合、2本の偏心体軸111、111にだけ伝動歯車107を設ければよいので、伝動歯車107の個数を3個から2個に減らすことができ、部品点数の減少を図ることができる。
【0038】
また、図1、図2を比較して見れば分かるように、複数の減速比に対応する減速機シリーズの提供を考えたとき(図1が減速比1/4、図2が減速比1/2)、同一の伝動歯車107を使用しながら、径の異なるピニオン106A、106Bを用意して、ピニオン106A、106Bつまり入力軸の配置を変えるだけで、複数の減速比の減速装置を提供することができる。このため、従来では伝動歯車とピニオンをセットで変更しなければならなかったが、ピニオン106A、106Bだけ変更すればよくなることで、対応が簡単になり、部品点数を減らすことができる。
【0039】
〔第1実施形態〕
図2は、本発明の第1実施形態に係るもので、入力軸つまりピニオン106Bの中心位置O1を歯車装置100の中心Oからオフセットした場合を示している。このように、2つの伝動歯車107に噛合させるだけでよいため、ピニオン106Bの位置は適当に選べる。
【0040】
そこで、図3、図4では、ピニオン(歯車)106Cを歯車装置100の中心Oから外側にずらした例を示している。
【0041】
この例では、ピニオン(歯車)106Cが、外歯歯車121の中央部の支障にならない位置に配されている。そして、伝動歯車107Cも、それに応じて径が設定されている。
【0042】
このように1本の偏心体軸110を従動とすることにより、ピニオン106Cの位置を歯車装置100の中心Oからオフセットさせることができるようになるため、入力用のモータも片側に配設できるようになり、コンパクトな配置が可能になる。また、歯車装置100の中心部に障害物(入力軸)がなくなるため、外歯歯車121や出力軸120に、例えば直径Dの大きな貫通孔121Pを形成して、それを配線や配管等のスペースとして有効利用することもできるようになる。なお、図4の118、119は、偏心体軸111を回転支持する軸受である。
【0043】
〔第2実施形態〕
図5〜図8は本発明の第2実施形態の歯車装置600の構成図である。
【0044】
この歯車装置600は、ボルト等の締結部材602によって互いに結合された第1支持ブロック601Aと第2支持ブロック601Bとからなるケーシング601を有している。ケーシング601内の外周側の位置には、歯車装置600の中心、即ち外歯歯車621の中心Oの周りに、3本の偏心体軸610、611、611(図5では偏心体611Aで示してあり、図7では偏心体軸611を支持するためのケーシング601に設けた貫通孔611Pで示してある)が、軸受608、609、618、619を介してそれぞれ回転自在に配されている。ここでは、3本の偏心体軸610、611、611のうちの1本の偏心体軸610が従動専用に設定され、残り2本の偏心体軸611、611だけが駆動用に設定されている。
【0045】
図5に示すように、3本の偏心体軸610、611、611のうち2本の駆動用の偏心体軸611、611は、120度より小さい角度間隔(本例では極めて小さい角度)で片側に寄せて配置され、残りの従動専用の1本の偏心体軸610は、それらと歯車装置600の中心Oを挟んで反対側に離れて配置されている。なお、離れた方の偏心体軸610は、他の2本の偏心体軸611、611とのバランスを考慮して、両偏心体軸611、611から等角度の位置に配置されている。
【0046】
従って、3本の偏心体軸610、611、111は、外歯歯車621の中心Oを基準とした円周方向に不等間隔で配置されている。しかも、従動専用の偏心体軸610は、他の2本の偏心体軸611、611とは中心Oに対して異なる円周上に配されている。
【0047】
また、2本の偏心体軸611、611のみを駆動すればよいことから、駆動用の2本の偏心体軸611、611の端部に設けた伝動歯車607、607に回転を与えるためのピニオン606及び入力軸605は、偏心体軸611、611を結ぶ直線よりも歯車装置600の中心Oから見て外側に配置している。その結果、このような配置により歯車装置600の中心部付近の空間を広く活用することができるため、外歯歯車621の中心部に大径の貫通孔621Pを形成し、この貫通孔621Pを、各種の配線や配管のスペースとして利用する、いわゆる出力軸ホローシャフトタイプの歯車装置としている。
【0048】
前記外歯歯車621は、図6に示すように、ケーシング601の内周に軸受665、666を介して回転自在に支持されており、この軸受665、666は両端のボルト680で固定されたフランジ661、662によって軸方向に移動しないよう保持されている。そして、一方のフランジ662に形成したボルト孔682に、図示しない出力側部材(相手機械)を結合することにより、外歯歯車621の出力を外部に取り出せるようになっている。この場合、入力軸605が2つの偏心体軸661、661を結ぶラインから外側にシフトされているため、相手機械と入力軸605との空間的な干渉をそれだけ低減できる。
【0049】
入力軸605は、2本の偏心体軸611、611から等距離の位置に配され、ケーシング601及びその端面に固定されたモータ650の固定フランジ655に軸受652、653で回転自在に支持され、モータ650の回転軸651と結合されている。この入力軸605の端部にはピニオン606が設けられており、このピニオン606は、各偏心体軸611、611に結合された伝動歯車607と噛合している。そして、入力軸605の回転を受けて伝動歯車607が回転することにより、各偏心体軸611、611が回転するようになっている。
【0050】
各偏心体軸610、611、611は、ケーシング601内に収容した2枚の内歯揺動体612A、612Bの貫通孔をそれぞれ貫通しており、各偏心体軸610、611、611の軸方向中間部に隣接して形成された2段の偏心体610A、610B、611A、611Bの外周と、内歯揺動体612A、612Bの貫通孔の内周との間にはコロ614が設けられている。
【0051】
外歯歯車621のピンからなる円弧歯形の外歯623には、内歯揺動体612A、612Bのトロコイド歯形よりなる内歯613が噛合している。内歯揺動体612A、612Bは、偏心体610A、610B、611A、611Bを支持する部分と内歯613部分を除いて、残りの余分な部分を切り欠いた形状に形成されており、図5に示すように、軽量化のための肉落とし孔612Pも設けられている。
【0052】
次に作用を説明する。
【0053】
入力軸605の回転が減速回転となって外歯歯車621に取り出される動作については第1実施形態の歯車装置100と同じである。即ち、離れた位置にある偏心体軸610は、入力軸605と非連結であり、内歯揺動体612A、612Bの駆動は2本の偏心体軸611、611だけで行う。そして、離れた位置にある偏心体軸610は、内歯揺動体612A、612Bの揺動に応じて従動回転しつつ内歯揺動体612A、612Bを支持する従動専用の機能を果たす。
【0054】
この場合、駆動用の2本の偏心体軸611、611には、入力トルク負荷と出力トルク負荷がかかるが、従動専用の偏心体軸610には、入力トルク負荷はかからず出力トルク負荷のみがかかる。従って、従動専用の偏心体軸610に関しては、負荷が小さいので、小径化することも可能である。
【0055】
このように、従動専用の偏心体軸610を設けた場合は、そのものについては入力のための伝動機構(伝動歯車607等)を設けずにすむため、部品点数の減少を図ることができる。また、出力トルク負荷については、3本の偏心体軸610、611、611で平均して受けることができるので、動作の安定を図ることができる等の効果を奏することができる。
【0056】
また、この歯車装置600の場合は、外歯歯車621の中心の貫通孔621Pを配線等の有効スペースとして利用できるので、用途を広げることができる。
【0057】
また、この歯車装置600では、偏心体軸610、611、611を円周方向に不等間隔で配置しており、特に片側に寄せた2本の偏心体軸611、611同士を互いに極めて接近して配置しているので、それらを結ぶ直線方向(紙面左右方向)の装置寸法を大幅に縮小できるようになる。例えば、第1実施形態では偏心体軸を円周方向に等配する関係上、装置が円形を基本とする形状になっていたが、本歯車装置600では、内歯揺動体612A、612Bを始めとして、ケーシング601も円形ではなく、細長い形状にすることができ、装置の幅寸法を大幅に短縮することができて、全体として薄く細長い形状の歯車装置600を作ることができる。
【0058】
従って、本歯車装置600によれば、内歯揺動体612A、612Bを駆動するものを2本の偏心体軸611、611のみの構成としたこと、また、偏心体軸610、611、611を不等間隔で配置したことにより、ピニオン606及び入力軸605の配置を含めて、形状設計の自由度を広げることができる。
【0059】
〔第3実施形態〕
図9は本発明の第3実施形態の歯車装置700の要部断面図である。この歯車装置700では、3本の偏心体軸710、711、711を不等間隔で配置すると共に、従動専用の偏心体軸710を、他の偏心体軸711より大径なものとしている。
【0060】
前述したように従動専用の偏心体軸710は、入力トルク負荷がかからないのでこの点では駆動用の偏心体軸711、711よりも小さくできる。しかしながら、3本の偏心体710、711、711は不等間隔で配置されているため、この点で偏心体軸710はその守備範囲が最も大きく出力トルク負荷は大きくなる。そこでこの第3実施形態では、このように偏心体軸710を従動専用としたこと、及び偏心体軸710、711、711を不等間隔で配したことにより、各偏心体軸710、711、711への負荷のかかり方が異なってくることを考慮して、その対策として偏心体710A、710B、711A、711Bの径や軸受のサイズを異ならせたものである。但し、偏心体710A、710B、711A、711Bの偏心量は全部揃えている。
【0061】
その他の構成については、前述した第1実施形態と基本的に同じであるため、同一または類似の部材に下2桁が同一の符号を図中で付すこととし、説明を省略する。
【0062】
このように、必要に応じて異径の偏心体軸710、711、711を採用すれば、各偏心体軸710、711、711や軸受の負担を平均化して、寿命の均等化を図ることができる。
【0063】
なお、内歯揺動体の枚数、偏心体軸の本数、歯形等については、安定した動作を実現できる範囲であれば、任意に変更可能である。また、外歯歯車は同位相の外歯にすれば一体成形が可能であるが、別位相にして別製作したものを組み合わせてもよい。
【0064】
また、内歯揺動体を揺動回転させるためには、2本以上の偏心体軸を同期して同位相で回転する必要があるが、従動専用の偏心体軸を2本同期回転させるように構成すれば、駆動は1本の偏心体軸で行うことも可能である。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、伝動歯車の個数を減らすことにより部品点数の減少を図りながら、必要に応じて装置の中心部に配線や配管等の貫通スペースを容易に確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考例に係る歯車装置100の構成を示す要部断面図
【図2】本発明の第1実施形態の歯車装置の構成図
【図3】同実施形態の歯車装置の中心部に貫通孔を形成した場合の例を示す図
【図4】図3のIV−IV矢視断面図
【図5】本発明の第2実施形態の歯車装置600の構成を示す要部断面図
【図6】図5のVI−VI矢視断面図
【図7】図6のVII −VII 矢視図
【図8】図6のVIII−VIII矢視図
【図9】本発明の第3実施形態の歯車装置700の構成を示す要部断面図
【図10】従来の歯車装置の構成を示す側断面図
【図11】図19のXI−XI矢視断面図
【図12】同歯車装置の減速比を変更した場合の構成図
【図13】同歯車装置の減速比を変更した場合の構成図
Claims (5)
- ケーシングと、該ケーシング内に配された出力部材としての外歯歯車と、該外歯歯車の外周側に配され前記ケーシングに回転自在に支持された複数の偏心体軸と、該偏心体軸に設けられた偏心体と、前記外歯歯車と噛合し前記偏心体が貫通すると共に該偏心体の回転によって揺動回転させられることで前記外歯歯車を回転させる内歯揺動体とを備えた内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置において、
前記複数の偏心体軸のうちの少なくとも2本を、該偏心体軸を回転駆動する入力軸と連結して同時に回転させるピニオンを備え、
前記複数の偏心体軸のうちの少なくとも1本が、該ピニオンと非連結とされることにより、内歯揺動体の揺動に応じて従動回転しつつ内歯揺動体を支持する従動専用とされ、且つ、前記ピニオンが、当該歯車装置の中心からオフセットされていることを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。 - 請求項1において、
前記偏心体軸を3本備え、そのうちの2本の偏心体軸を120度より小さい間隔で互いに接近させて配置し、残る1本を前記従動専用のものとして、これを前記互いに接近した2本の偏心体軸と反対側に配置したことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。 - 請求項1または2において、
前記従動専用の偏心体軸を、他の偏心体軸とは異なる径の円周上に配置したことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。 - 請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記従動専用の偏心体軸を、前記外歯歯車の中心に対して他の偏心体軸と異径にしたことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。 - 請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記外歯歯車の中心部に貫通孔を形成したことを特徴とする内歯揺動型内接噛合遊星歯車装置。
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