JP2006071904A - 電子写真感光体の製造装置、電子写真感光体の製造方法、及び電子写真感光体 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子写真感光体用基材のホーニング処理において、研磨材の基材表面への付着を防止する。
【解決手段】円筒状の電子写真感光体用基材の表面を研磨材により粗面化するホーニング処理を行うための電子写真感光体の製造装置であって、基材の少なくとも上端を保持する保持手段と、基材の表面に研磨材を吹き付ける吹付手段と、基材への研磨材の付着を防止する付着防止手段と、を有し、付着防止手段は、基材の外径より大きな径を有して基材の少なくとも上端部を覆うことにより、基材表面への研磨材の付着を防止する。
【選択図】図1
【解決手段】円筒状の電子写真感光体用基材の表面を研磨材により粗面化するホーニング処理を行うための電子写真感光体の製造装置であって、基材の少なくとも上端を保持する保持手段と、基材の表面に研磨材を吹き付ける吹付手段と、基材への研磨材の付着を防止する付着防止手段と、を有し、付着防止手段は、基材の外径より大きな径を有して基材の少なくとも上端部を覆うことにより、基材表面への研磨材の付着を防止する。
【選択図】図1
Description
本発明は、電子写真感光体用基材の表面の粗面化処理を行うための電子写真感光体の製造装置、電子写真感光体の製造方法、及びその装置を用いて製造された電子写真感光体に関する。
近年、電子写真プリンタ、電子写真複写機等の電子写真装置において、電子写真感光体上への画像形成にレーザ光が用いられることが多くなっている。このような、レーザ光をライン走査する方式の電子写真装置においては、レーザ光を用いて形成する画像に干渉縞模様が現れるという特有の問題がある。この干渉縞の発生は、電子写真感光体の感光層内で吸収されなかったレーザの透過光が感光層内あるいは感光体基材で多重反射され、感光層表面において入射光と干渉することに起因するものとされている。
この干渉縞の発生を防止する手段として、特許文献1において、感光体基材又は感光層の表面を粗面化し、これらの表面に光散乱性を付与する技術が示されている。そして、そのような、感光体基材表面又は感光層の表面に光散乱性を付与する方法として、陽極酸化法、バフ研磨法、ホーニング法等が知られている。このうち、ホーニング法としては、研磨材をノズルから噴射させて、基材の表面に衝突させることにより、基材の表面を粗面化する乾式ホーニング法、研磨材を水等に均一に分散させた研磨液を、圧縮空気によりノズルから噴射させて、基材の表面に衝突させることにより、基材の表面を粗面化する湿式ホーニング法が知られている。例えば、特許文献2〜特許文献6等には、湿式ホーニング法の例が記載されている。
湿式ホーニング法は、短時間の加工で容易に安定して粗面化させることが出来ること、所望の粗さを正確に得ることが出来ること、及び塗膜欠陥の原因となる異常凹凸部が極めて少ない均一な粗さを持つ粗面が得られること等の生産上の観点から、また、干渉縞模様をより低減することができ画質安定性に優れる点等から、陽極酸化法あるいはバフ研磨法等の他の粗面化処理法に比べて優れているものである。
しかし、湿式ホーニング法において、湿式ホーニング処理用の研磨材の平均粒子径が塗膜厚さに比較して大きいので、研磨材が少しでも基材表面に残存してしまうと白点や黒点の画質欠陥を発生させてしまう。そのため、近年の電子写真の高画質化に対応するためには、湿式ホーニング処理後の電子写真感光体の基材表面(円筒状基材の内面及び外面)に付着した多数の研磨材をより高い精度で除去することが必要とされる。しかしながら、後工程で洗浄を行ったとしても基材表面の研磨材を完全に除去することは困難である。
また、基材面への研磨材の付着は、基材外面に研磨材が付着するホーニング処理時だけでなく、ホーニング処理終了後に基材を保持していたチャック装置を基材からアンチャックする際にも発生することがわかっている。これは、アンチャック直後に研磨液がチャック装置を伝わってその真下に置かれた基材に滴り落ちることで研磨材が円筒状基材の内外面に付着するというものである。ホーニング処理中は基材内面に研磨材は殆ど付着せず清浄状態であるが、チャック装置からの研磨液が落下することにより基材外面だけでなく清浄状態である基材内面にも研磨材が付着してしまう。その基材内外面に付着した研磨材が後工程の濯ぎ洗浄にて洗浄液中に浮遊し、基材表面に再付着することで研磨材が基材面に残存し、基材に残存する研磨材が原因で感光体の塗膜欠陥が発生する。したがって、ホーニング処理時、特にホーニング処理終了後のアンチャック時に研磨液の落下による基材表面への研磨材の付着を防止する必要がある。また、湿式ホーニング法に比べると可能性は少ないが、乾式ホーニング法においてもチャック装置等に付着した研磨材が落下して基材の表面に付着することが起こり得る。
本発明は、電子写真感光体用基材のホーニング処理において、研磨材の基材表面への付着を防止して、基材表面への研磨材の残存による塗膜欠陥の発生を抑制することができる電子写真感光体の製造装置、電子写真感光体の製造方法、及びその装置、方法により製造される電子写真感光体である。
本発明は、円筒状の電子写真感光体用基材の表面を研磨材により粗面化するホーニング処理を行うための電子写真感光体の製造装置であって、前記基材の少なくとも上端を保持する保持手段と、前記基材の表面に前記研磨材を吹き付ける吹付手段と、前記基材への前記研磨材の付着を防止する付着防止手段と、を有し、前記付着防止手段は、前記基材の外径より大きな径を有して前記基材の少なくとも上端部を覆うことにより、前記基材表面への前記研磨材の付着を防止する。
また、前記電子写真感光体の製造装置において、前記付着防止手段は、前記保持手段に設けられていることが好ましい。
また、前記電子写真感光体の製造装置において、前記付着防止手段は、覆い形状を有し、前記覆い形状の最外縁端部と、前記基材の外周面との間隔は、3mm以上であることが好ましい。
また、前記電子写真感光体の製造装置において、前記付着防止手段の前記覆い形状の上面と、前記基材の外周面とのなす角度は、90°以下であることが好ましい。
また、前記電子写真感光体の製造装置において、前記付着防止手段の前記覆い形状の最外縁端部により構成される面と、前記基材の外周面とのなす角度は、100°以下であることが好ましい。
また、本発明は、前記電子写真感光体の製造装置を用いて製造された電子写真感光体である。
さらに、本発明は、円筒状の電子写真感光体用基材の表面を研磨材により粗面化するホーニング処理を行う電子写真感光体の製造方法であって、前記基材の少なくとも上端を保持する工程と、前記基材の表面に前記研磨材を吹き付ける工程と、を含み、前記基材の外径より大きな径を有する付着防止手段により、前記基材の少なくとも上端部を覆うことにより、前記基材表面への前記研磨材の付着を防止する。
本発明において、基材への研磨材の付着を防止する付着防止手段を備えることにより、ホーニング中及びホーニング処理終了後に研磨材、研磨液の落下による基材表面への研磨材の付着を防止することで、基材表面への研磨材の残存による塗膜欠陥の発生を抑制することができる電子写真感光体の製造装置、電子写真感光体の製造方法、及びその装置により製造される電子写真感光体を提供する。
本発明の実施の形態について以下説明する。
本実施形態に係る電子写真感光体の製造装置は、円筒状の電子写真感光体用基材の表面を研磨材により粗面化するホーニング処理を行うための電子写真感光体の製造装置であって、基材の少なくとも上端を保持する保持手段と、基材の表面に研磨材を吹き付ける吹付手段と、基材への研磨材の付着を防止する付着防止手段と、を有し、付着防止手段は、基材の外径より大きな径を有して基材の少なくとも上端部を覆うことにより、基材表面への研磨材の付着を防止する。
本実施形態に係る電子写真感光体の製造装置の一例の概略を図1に示す。本実施形態に係る電子写真感光体の製造装置1は、チャック装置10、基材設置台12、噴射ノズル18、研磨液導入管20、圧縮空気導入管22、ポンプ24、湿式ホーニング槽26等を含んで構成される。ここでは、円筒状の基材32のチャック方式としてエアーを利用したチャック方式を例にとり説明するが、本実施形態はこの方式に限定されるものではない。
図2には、エアーを利用したチャック方式によるチャック装置10の一例の概略図を示す。基材32を保持する保持手段であるチャック装置10は、支持体14、カバー16、ガイド28、チャック本端30等を含んで構成される。支持体14の下部にカバー16が設けられ、支持体14の先端でカバー16の下にチャック本端30が設けられ、その下にガイド28が設けられている。チャック本端30は、ゴム等の弾性体でできた風船状のものであり、エアーを出し入れする事により膨張、収縮させ、基材32の内周面をチャッキングするものである。
基材32のチャッキングは、チャック本端30を収縮させた状態でチャック装置10を下降させ、ガイド28により基材32上部からチャック本端30を挿入し、基材32の上端をカバー16に押し当てる。チャック本端30にエアーを導入して膨張させ、基材32をチャック装置10に固定させる。
エアーを利用したチャック以外のチャッキング方式としては、例えば、つめ等の保持手段により円筒状基材32の内面を固定する方式、等その他公知のチャッキング方式が挙げられる。
本実施形態に係る電子写真感光体の製造装置1による湿式ホーニング処理において、まず、基材設置台12に置かれた基材32の上端をチャック装置10により保持する。チャック装置10を上昇させることにより基材32を上昇させ、湿式ホーニング槽26の所定の位置に配置する。チャック装置10を基材32の軸中心に回転させると共に、基材32を垂直方向(軸方向)に移動させ、ポンプ24により撹拌槽34から送液される研磨液36を、エアの圧力を利用して噴射ノズル18から噴射させることによって、基材32の表面の粗面化を行う。このとき、基材32を垂直方向に移動させずに、噴射ノズル18を基材32の垂直方向に沿って移動させてもよい。
ホーニング処理終了後、チャック装置10を下降させ、基材32をアンチャックして、基材32を基材設置台12に置く。基材設置台12上の基材32を別の基材32に入れ替え、同様のホーニング処理を行うことができる。
本実施形態に係る電子写真感光体の製造装置において、基材32への研磨材の付着を防止する付着防止手段として、基材32の外径より大きな径を有して基材32の少なくとも上端部を覆うカバー16を備える。カバー16の取り付け場所としては、基材32の表面への研磨材の付着を防止することができる場所であれば特に制限はないが、基材32を保持する保持手段であるチャック装置10に設けられることが好ましい。
チャック装置10が上昇する際、チャック装置10の支持体14及びカバー16等に付着した研磨液がカバー16を伝わって落下することがある。その際、研磨液はチャック装置10の下部に置かれた基材32の外側に落下するため、研磨液は基材32に付着しにくい。従来の装置のようにカバー16を有さない場合は、研磨液がチャック装置10の支持体14等を伝わって、その真下に置かれた基材32に滴り落ちることで研磨材が基材32の内外面に付着していた。そのため、ホーニング処理中は基材内面に研磨材は殆ど付着せず清浄状態であったが、ホーニング処理後にチャック装置10からの研磨液が落下することにより基材32の外面だけでなく、基材32の清浄状態である内面にも研磨材が付着してしまっていた。しかし、本実施形態に係る電子写真感光体の製造装置1において、円筒状の基材32の外径よりも大きな径を有するカバー16を設置することにより、基材32の表面、特に内面への研磨材の付着を防止することができる。
カバー16の形状としては、基材32の外径より大きな径を有して基材32の表面への研磨材の付着を防止することができる形状であれば、特に制限はないが、覆い形状を有することが好ましい。カバー16の形状としては、例えば、図1,2に外観図、及び図3に拡大図を示すように、カバー16が傘状となっているものが挙げられる。この場合、傘の最外縁端部が円筒状基材32の外径よりも大きくなるようにカバー16を設置してあるが、図3に示すように、傘の最外縁端部と円筒状基材32の外周面との間隔Lが、3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。傘の最外縁端部と基材外周面との間隔Lが3mm未満であると、チャック装置から落下してくる研磨液が基材内面に付着しやすくなり、白点、黒点の画質欠陥を増加させてしまう場合がある。また、傘の最外縁端部と基材外周面との間隔Lの上限は、装置上の制約が無い限り特に制限はないが、必要以上に大きくする必要はない。間隔Lは、湿式ホーニング槽26の大きさ等の装置の仕様に応じて決めればよい。
カバー16の形状としては、その他に、例えば、図4,図5のような形状を挙げることができるが、研磨液がカバー16の覆い形状の上部に溜らないように、図3、図4のようにカバー上部から下部にかけて傾斜をつけて研磨液が下に落ちるような形状、つまりカバー16の覆い形状の上面(傾斜面)の延長面と、基材の外周面の延長面とのなす角度θは、90°以下であることが好ましく、60°以下であることがより好ましい。
カバー16において、カバー16の覆い形状の上面(傾斜面)の延長面と、基材の外周面の延長面とのなす角度θは、5°以上であることが好ましく、30°以上であることがより好ましく、45°以上であることがさらに好ましい。角度θが5°未満であるとチャック装置10等に付着した研磨液がカバー16の傘の下を伝わって基材32に落下し、基材32の内外面に研磨材が付着してしまう場合がある。
また、カバー16の形状としては、上部に研磨液が溜らないように、上部に図5のような平坦部を有さないことが好ましいが、逆に、カバー16の上部に溝部、受け部等を設け、研磨液を溜める構造にしてもよい。
また、基材32の外面の延長面と、カバー16の覆い形状の最外縁端部により構成される面の延長面とのなす角度φは、100°以下であることが好ましい。なお、ここで、カバー16の覆い形状の最外縁端部により構成される面は、カバー16の覆い形状の最外縁端部が複数種類ある場合(図4、図5のカバー形状の場合は、最外縁端部が2種類ある)には、最下端の最外縁端部により構成される面とする。また、図6のように下端部に傾斜面を有するカバー形状の場合には、カバー16の覆い形状の最外縁端部により構成される面とは、最下端の最外縁端部と下端部とにより構成される面とする。図6のように角度φが100°より大きいと、チャック装置10等に付着した研磨液がカバー16の傘の下を伝わって基材32に落下し、基材32の内外面に研磨材が付着してしまう場合がある。角度φは、30°〜90°であることがより好ましい。なお、図3〜図6において、基材32は、チャック装置10からアンチャックされた状態を示している。
チャック装置10のカバー16の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂またはそれらの材料を2種類以上混合したもの;ステンレス等の金属;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。カバー16の材質が硬すぎると摩耗材の破砕が起きる可能性がある点、またカバー16の耐摩耗性の点等から、カバー16の材質は、樹脂であることが好ましい。
円筒状の電子写真用感光体の基材32としては、銅,アルミニウム,ニッケル,鉄等の金属基材が好ましく挙げられ、この中でもアルミニウムが特に好ましい。
ホーニング処理における研磨材としては、粒径が10μm〜100μmの範囲にある微粉末が用いられ、形状は特に制限がないが、球状のものが好ましく用いられる。研磨材の材質としては、鉄、ガラス、酸化アルミニウム、フェライト、ジルコニア、酸化クロム、炭化珪素、炭化ホウ素、窒化ホウ素等の無機微粉末、エポキシ樹脂、PMMA樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン系粒子、メラミン樹脂粒子等の有機微粉末が挙げられる。
湿式ホーニング処理においては、上記研磨材を水等の溶媒に懸濁させ、高速度で円筒状の基材32に吹き付けて、基材32の表面の粗面化を行う。この場合、ホーニング処理による基材32の表面粗さの程度は、吹き付け時の圧力及び速度、使用する研磨材の量、種類、形状、大きさ、比重、及び粒度分布等の諸条件を適宜選択することにより制御することができる。
ここでは、ホーニング処理方法として湿式ホーニング法を例として説明したが、乾式ホーニング法においても、本実施形態のようなカバー16を備えることにより、基材32の表面への研磨材の付着を抑制することが可能である。
また、上記のホーニング処理の後、水等の洗浄液を用いて基材32の洗浄を行うことが好ましいが、研磨液36よりも低濃度(好ましくは0.1〜1.0重量%)の研磨材を含有する洗浄液を噴射ノズル18から噴射させて感光体基材32の表面を洗浄することが、後述する洗浄工程において洗浄の精度及び効率が向上する傾向にあるのでより好ましい。
また、粗面化された基材32は、基材32の表面に付着した研磨材を除去する為にブラシやスポンジなどの摺擦部材での洗浄及び水による濯ぎ洗浄等がさらになされることが好ましい。
濯ぎ洗浄等された基材32は、感光層の塗布前に基材32に付着した水分を除去する為に乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、送風乾燥、温風乾燥、自然乾燥等が挙げられるが、温風乾燥機を使用した温風乾燥が好ましい。水滴の残留は基材32上にシミを発生させ、画質欠陥の原因となる可能性がある。乾燥後の基材32は放冷等により冷却され、塗布工程へ移載される。
塗布工程においては、基材32の表面に下引き層を含む感光層を塗布する。例えば、基材32上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層等を構成する。塗布方法については、浸漬塗布、スプレ塗布、フローコート塗布等の様々な塗布方法があるが、感光層の塗布液の特性に応じた塗布方法を選択するものであり、塗布方法を限定するものではない。また、1層塗布毎に塗液面を乾燥させる必要があるが、塗液の種類により強制乾燥が不要なものもあるため、必ずしも乾燥機を使用する必要はない。
以上のような塗布工程によって基材32上に感光層が積層され、その結果、電子写真感光体が製造される。
本実施形態に係る電子写真感光体の製造装置、及び電子写真感光体の製造方法おいて、基材の外径より大きな径を有して基材への研磨材の付着を防止する付着防止手段を備えた上記チャック装置10を用いることにより、円筒状の基材30の表面、特に円筒状の基材30の内面への研磨材の残留を十分に防止することができるため、白点、黒点および干渉縞模様等の画質欠陥の発生を抑制することができ、極めて高品質な電子写真感光体を得ることができる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。電子写真感光体用の基材を湿式ホーニング処理する方法について具体的に説明する。
<電子写真感光体の製造>
(実施例1)
アルミニウムを主成分とする基材(以下、アルミニウム管とする)をダイヤモンドバイトを用いて外径60mm、内径57mmに切削加工した後、表面粗さRaが0.03μm〜0.06μmの範囲の平滑面に仕上げた。切削工程終了後、脱脂洗浄、濯ぎ洗浄そして温純水引き上げ、乾燥工程の順で処理を行った。脱脂洗浄工程及び濯ぎ洗浄工程は35kHz〜40kHzの超音波発振機により洗浄中の基材に超音波を印加した。脱脂洗浄工程においては、界面活性剤として非イオン性界面活性剤を使用した。脱脂洗浄工程においては、水として0.1μS/cm以下のイオン交換水を使用した。
(実施例1)
アルミニウムを主成分とする基材(以下、アルミニウム管とする)をダイヤモンドバイトを用いて外径60mm、内径57mmに切削加工した後、表面粗さRaが0.03μm〜0.06μmの範囲の平滑面に仕上げた。切削工程終了後、脱脂洗浄、濯ぎ洗浄そして温純水引き上げ、乾燥工程の順で処理を行った。脱脂洗浄工程及び濯ぎ洗浄工程は35kHz〜40kHzの超音波発振機により洗浄中の基材に超音波を印加した。脱脂洗浄工程においては、界面活性剤として非イオン性界面活性剤を使用した。脱脂洗浄工程においては、水として0.1μS/cm以下のイオン交換水を使用した。
次に、図1に示す電子写真感光体の製造装置1を使用して、湿式ホーニング法により、このアルミニウム管の基材32の表面の粗面化処理を行った。チャック装置10に図3に示すような傘状のカバー16を設置した。カバー16の上面と基材32とのなす角度θは5°、カバー16の傘の最外縁端部と基材32の外面との間隔Lは3mm、カバー16の底面と基材32とのなす角度φは90°とした。ホーニング時の基材32の回転数は100rpmとし、基材32の上端から粗面化を開始した。その粗面化処理においては、酸化アルミニウムを主成分とする研磨材(昭和電工株式会社製、アルナビーズ(CB−A35S)、平均粒径35μm)を10重量%で水に懸濁させて研磨液36とし、これを10kg/minの流量で噴射ノズル18にポンプ24で送り込んで、基材32の軸方向の処理速度1000mm/min、圧縮空気圧0.1MPa〜0.2MPaで基材32の表面に吹き付け、表面粗さRa:0.1〜0.3μm、Rz:1.0〜2.0μmになるようにした。表面粗さは、表面粗さ測定装置(株式会社東京精密製、サーフコーム1400A型)により測定した。
この粗面化した基材32について、以下の洗浄処理を行った。粗面化した基材32に対し、まず水でシャワを吹きかけ、その後、水を吹きかけながら、処理部材としてのナイロン製ブラシを基材32に接触させ、基材32と共に同方向に100rpmで回転させながら60秒間押付処理を行った。次に導電度0.1μS/cm〜1.0μS/cm、温度18℃〜25℃の純水による濯ぎ洗浄を行い、50℃の温純水引き上げ後に135℃で熱風乾燥を行った。
次に、これらの洗浄処理を行った基材32上に、有機ジルコニウム化合物(商品名:オルガチックスZC540、松本製薬(株)製)100部、シランカップリング剤(商品名:A1100、日本ユニカ(株)製)10部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−S、積水化学(株)製)10部及びn−ブチルアルコール130部を混合し、得られた塗布液を、浸漬塗布法により塗布し、140℃で15分間加熱して、1.0μmの下引き層を形成した。
次に、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学(株)製)の2%シクロヘキサノン溶液に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料を、顔料と樹脂との比を2:1となるように混合して、次いでサンドミルにより3時間分散処理を行った。得られた分散液をさらに酢酸n−ブチルで希釈して下引き層上に浸漬塗布し、0.15μm厚の電荷発生層を形成した。
次に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(m−トリル)ベンジジン4部及びポリカーボネートZ樹脂6部を、モノクロロベンゼン36部に溶解させた溶液を、電荷発生層上に浸漬塗布し、115℃で40分間乾燥して、24μm厚の電荷輸送層を形成した。以上のようにして電子写真感光体Aを得た。
(実施例2)
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを60°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔Lを3mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Bを得た。
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを60°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔Lを3mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Bを得た。
(実施例3)
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを90°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔Lを3mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Cを得た。
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを90°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔Lを3mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Cを得た。
(実施例4)
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを60°、カバー16底面と基材32とのなす角度φを100°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔Lを3mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Dを得た。
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを60°、カバー16底面と基材32とのなす角度φを100°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔Lを3mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Dを得た。
(実施例5)
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを60°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔Lを7mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Eを得た。
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを60°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔Lを7mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Eを得た。
(実施例6)
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを90°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔を2mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Fを得た。
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを90°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔を2mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Fを得た。
(実施例7)
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを60°、カバー16の底面と基材32とのなす角度φを120°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔を3mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Gを得た。
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを60°、カバー16の底面と基材32とのなす角度φを120°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔を3mmとして、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Gを得た。
(比較例1)
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを90°、カバー16の底面と基材32とのなす角度φを90°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔を0mm(傘の無い状態)として、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Hを得た。
チャック装置10のカバー16の上面と基材32とのなす角度θを90°、カバー16の底面と基材32とのなす角度φを90°、カバー16の傘の最外縁端部と基材外面との間隔を0mm(傘の無い状態)として、それ以外の条件は実施例1と同様にしてホーニング処理し、電子写真感光体Hを得た。
<評価結果>
実施例1〜7、及び比較例1により得られた電子写真感光体各々500本について、CCDカメラと顕微鏡とからなる表面欠陥評価装置(富士ゼロックス社内製)を用いて感光体表面の研磨材残存数を測定し、残存率を算出した。結果を表1に示す。研磨材残留による欠陥発生率が0%〜1.0%を○、1.1%〜2.0%を△、2.1%以上を×とした(小数点第2位以下は四捨五入した。)。表1からわかるように、実施例1〜5において研磨材の残存率は0.3%〜1.0%、実施例6,7の場合は1.8〜1.9%となったのに対し、比較例1の場合は2.4%となった。これにより、実施例1〜7の方が、研磨材残存率を十分に低減できることが分かった。
実施例1〜7、及び比較例1により得られた電子写真感光体各々500本について、CCDカメラと顕微鏡とからなる表面欠陥評価装置(富士ゼロックス社内製)を用いて感光体表面の研磨材残存数を測定し、残存率を算出した。結果を表1に示す。研磨材残留による欠陥発生率が0%〜1.0%を○、1.1%〜2.0%を△、2.1%以上を×とした(小数点第2位以下は四捨五入した。)。表1からわかるように、実施例1〜5において研磨材の残存率は0.3%〜1.0%、実施例6,7の場合は1.8〜1.9%となったのに対し、比較例1の場合は2.4%となった。これにより、実施例1〜7の方が、研磨材残存率を十分に低減できることが分かった。
1 電子写真感光体製造装置、10 チャック装置、12 基材設置台、14 支持体、16 カバー、18 噴射ノズル、20 研磨液導入管、22 圧縮空気導入管、24 ポンプ、26 ホーニング槽、28 ガイド、30 チャック本端、32 電子写真用感光体用の基材、34 撹拌槽、36 研磨液。
Claims (5)
- 円筒状の電子写真感光体用基材の表面を研磨材により粗面化するホーニング処理を行うための電子写真感光体の製造装置であって、
前記基材の少なくとも上端を保持する保持手段と、
前記基材の表面に前記研磨材を吹き付ける吹付手段と、
前記基材への前記研磨材の付着を防止する付着防止手段と、
を有し、
前記付着防止手段は、前記基材の外径より大きな径を有して前記基材の少なくとも上端部を覆うことにより、前記基材表面への前記研磨材の付着を防止することを特徴とする電子写真感光体の製造装置。 - 請求項1に記載の電子写真感光体の製造装置であって、
前記付着防止手段は、前記保持手段に設けられていることを特徴とする電子写真感光体の製造装置。 - 請求項1または2のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造装置であって、
前記付着防止手段は、覆い形状を有し、前記覆い形状の最外縁端部と、前記基材の外周面との間隔は、3mm以上であることを特徴とする電子写真感光体の製造装置。 - 請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真感光体の製造装置を用いて製造されたことを特徴とする電子写真感光体。
- 円筒状の電子写真感光体用基材の表面を研磨材により粗面化するホーニング処理を行う電子写真感光体の製造方法であって、
前記基材の少なくとも上端を保持する工程と、
前記基材の表面に前記研磨材を吹き付ける工程と、
を含み、
前記基材の外径より大きな径を有する付着防止手段により、前記基材の少なくとも上端部を覆うことにより、前記基材表面への前記研磨材の付着を防止することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004254383A JP2006071904A (ja) | 2004-09-01 | 2004-09-01 | 電子写真感光体の製造装置、電子写真感光体の製造方法、及び電子写真感光体 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009136966A (ja) * | 2007-12-06 | 2009-06-25 | Showa Denko Kk | 筒状ワークの液体ホーニング加工装置 |
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2004
- 2004-09-01 JP JP2004254383A patent/JP2006071904A/ja active Pending
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