JP2006064128A - 内接噛合遊星歯車構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】部品点数を減少させると共に組立の手間を簡略化することを可能とし、且つ、差し輪を省略したことによって生ずる新たな問題をも同時に解決する。
【解決手段】外歯歯車116が内歯歯車118の内側で軸方向に複数並べて配置された内接噛合遊星歯車構造において、前記外歯歯車116が、隣接する外歯歯車116と対向する面に、自身と該隣接する外歯歯車との軸方向の位置規制を行い得る凸部180を、円周方向に不連続に有している。
【選択図】図3

Description

本発明は、外歯歯車を複数備えた内接噛合遊星歯車構造に関する。
内歯歯車と、該内歯歯車と僅少の歯数差をもって内接噛合する外歯歯車を備えた内接噛合遊星歯車構造が広く実用化されている。この種の歯車構造としては、外歯歯車は歯車構造全体に必要な伝達容量を確保するために、前記内歯歯車の内側で軸方向に複数並べて配置されることが多い。
特許文献1に、図9及び図10に示されるような遊星歯車減速装置が開示されている。
この遊星歯車減速装置10は、入力軸12、偏心体14、2枚の外歯歯車16(16A、16B)、該外歯歯車16が内接する内歯歯車18、及び出力軸22を主な構成要素として備える。
各外歯歯車16は、内歯歯車18よりも僅かだけ少ない歯数を有し、該内歯歯車18に揺動しながら内接噛合するように組み込まれている。また、外歯歯車16は、該外歯歯車16を貫通する内ピン孔30を備え、この内ピン孔30と、前記出力軸22のフランジ部22Aに圧入・固定され該内ピン孔30に遊嵌する内ピン40との遊嵌により、外歯歯車16の自転成分がフランジ部22A側に取り出されるようになっている。なお、内ピン40の外側には、摺動促進部材として内ローラ42が配置されている。
図示せぬモータによって入力軸12が回転されると、偏心体14が該入力軸12と一体的に回転する。偏心体14の外周は入力軸の軸心に対して偏心しているため、入力軸12が1回回転すると該偏心体14の外周に装着されている外歯歯車16が1回揺動する。この結果、内歯歯車18に対して外歯歯車16が両歯車18、16の歯数差に相当する分だけ相対回転する。この相対回転が、内ピン孔30、内ローラ42及び内ピン40を介して出力軸22のフランジ部22A側に取り出される。外歯歯車16の揺動成分は、内ピン孔30と内ピン40との遊嵌によって吸収される。この結果、(内歯歯車18と外歯歯車16の歯数差)/(外歯歯車の歯数)に相当する減速比の減速を実現することができる。
ところで、2枚の外歯歯車16A、16Bは、内歯歯車18の内側で軸方向に複数並べて配置されており、揺動の位相は互いに180度ずれている。そのため、両外歯歯車16A、16Bを直接接触させると、強い摺動摩擦が発生してしまうことから、両外歯歯車16A、16Bの軸方向中央には、互いの軸方向の位置を規制すると共に、当該摩擦の発生を抑制するための差し輪25が配置されている。
特開昭63−214542号公報
しかしながら、このように、外歯歯車と外歯歯車との間に差し輪を介在させる構造は、部品点数が多くなるだけでなく、組立の手間も多く掛かるようになるため、コスト増大の一因となっていた。
本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、部品点数を減少させると共に組立の手間を簡略化することを可能とし、且つ、差し輪を省略したことによって生ずる(後述するような)新たな問題をも同時に解決することのできる内接噛合遊星歯車構造を提供することをその課題としている。
本発明は、内歯歯車と、該内歯歯車と僅少の歯数差をもって内接噛合する外歯歯車を備え、且つ、該外歯歯車が前記内歯歯車の内側で軸方向に複数並べて配置された内接噛合遊星歯車構造において、前記外歯歯車は、隣接する外歯歯車と対向する面に、自身と該隣接する外歯歯車との軸方向の位置規制を行い得る凸部を、円周方向に不連続に有していることにより、上記課題を解決したものである。
本発明においては、従来外歯歯車同士の軸方向の位置規制を行うために別途設けられていた差し輪を省略し、外歯歯車自体にその歯部付近において軸方向に突出して差し輪の機能を果たし得る凸部を形成するようにした。これにより、部品点数の削減及び組み付け工数の削減を実現できる。
ところが、実際にこの様な凸部を外歯歯車の側面の全周に亘って形成した場合、新たな不具合が発生することが判明した。すなわち、一般に、この種の内接噛合遊星歯車構造の減速機の場合、潤滑材の供給は、内歯歯車を半径方向に貫通して形成した潤滑材供給孔を介して行われるが、この潤滑材供給孔から供給した潤滑材が、当該凸部の存在により減速機の内部にまで良好に充填されないという不具合が発生することが新たに判明したものである。
推測するに、従来の差し輪の場合は、当該差し輪の両サイドに内ピン孔の一部が順次(交互に)臨むため、この現象が現れにくかったものと解される。ところが、凸部を外歯歯車と一体的に設ける場合、該凸部の側面に内ピン孔の一部が順次回ってくるというような現象は生じない。そのため、ケーシング(内歯歯車)の外側から封入された潤滑材がこの凸部の存在により、該凸部の半径方向内側にまで入り込むのが困難になるという状況が発生したと考えられる。
本発明においては、この不具合を、当該位置規制を行い得る凸部を、円周方向に「不連続に」形成するようにして解決した。この結果、潤滑材を潤滑材供給孔から減速機の半径方向中央部にまで容易に拡散・充填することができ、減速機内の各部を良好に潤滑できるようになると共に、凸部自体の表面の潤滑をも良好にできるようになった。
部品点数を減少させると共に組立の手間を簡略化することを可能とし、且つ、差し輪を省略したことによって生ずる新たな問題をも同時に解決することができる。
以下図面に基づいて、本発明の実施形態の例を詳細に説明する。
図1は、図9相当の縦断面図であり、本発明の実施形態の一例に係る内接噛合遊星歯車構造を有する遊星歯車減速装置が示されている。
この遊星歯車減速装置110は、入力軸112、偏心体114、3枚の外歯歯車116、内歯歯車118、及び出力軸(150)を主な構成要素として備える。なお、この実施形態では、第1支持フランジ150が出力軸として機能している。
前記入力軸112は、第1、第2支持フランジ150、160に組み込まれた軸受152、162によって回転自在に両持ち支持されている。この入力軸112は、中央に大径の中空部112Aを備え(ホロー構造)、図示せぬモータのモータ軸とスプライン112Bを介して連結されている。
前記偏心体114は、入力軸112と一体的に成形されている。偏心体114は、3枚の外歯歯車116の軸方向位置に対応して3つの偏心部114A〜114Cを備える。各偏心部114A〜114 Cの外周の中心OeA〜OeCは、それぞれ入力軸12の軸心Oiに対してΔEだけ偏倚(偏心)している。また、各偏心部114A〜114Cの偏心位相は互いに120度ずれている。
前記3枚の外歯歯車116(116A〜116C)は、軸方向に並べて配置されている。外歯歯車116が軸方向に3枚並列に配置されているのは、伝達容量の増大を意図したためである。各外歯歯車116A〜116Cは、隣接する外歯歯車116と対向する面においてその歯形部分を含む最外周部に帯状(リング状)に突出する凸部180を備える。この凸部180は、図2及び図3に示されるように、その円周方向の一部に切欠部182を有し、半径方向に切欠かれている。その結果、凸部180は円周方向に不連続に形成された構造となっている。切欠部182は、この実施形態では、円周方向に60度の間隔で配置され、合計6個形成されている。切欠部182における切欠面182Aは、外歯歯車116の凸部180以外の他の面184と面一である。
なお、この実施形態では、軸方向において一番外側に位置する外歯歯車116A、116Cの外側面においても外側凸部181を形成しているが、この外側凸部181に関しては、切欠部は形成していない。
各外歯歯車116A〜116Cは、偏心体114の各偏心部114A〜114Cに軸受117A〜117Cを介してそれぞれ回転自在に装着されている。軸受117A〜117Cは、それぞれ内輪117A1〜117C1及びローラ117A2〜117C2のみを有し、外輪は各外歯歯車116A〜116Cと一体化されている。すなわち、外歯歯車116が外輪の機能を兼用している。軸受117A〜117Cは、入力軸112を支持している軸受152、162によってその軸方向の位置決めがなされている。各外歯歯車116は、該外歯歯車116を貫通する内ピン孔130を備える。
前記内歯歯車118は、遊星歯車減速装置110のケーシング111と一体化されている。ケーシング111は、この実施形態では外部部材に固定されている。内歯歯車118の内歯118Aは、具体的にはローラ状のピンによって構成されている。
前記第1支持フランジ150及び第2支持フランジ160は、軸受154、164によってケーシング111にそれぞれ回転自在に支持されている。第1支持フランジ150には駆動対象である外部機器(図示略)が、図示せぬボルト等を用いて連結可能とされている。また、第1支持フランジ150は内ピン140を、(自身の一部として)一体的に備える。各内ピン140の外周には内ローラ142が回転自在に装着されている。即ち、内ピン孔130と内ピン140は、具体的にはこの内ローラ142を介して動力伝達を行う構成とされている。
なお、図1の符号185は潤滑材(グリス、或いはオイル)を封入するための封入孔(潤滑材供給孔)、187はシール部材である。潤滑材の封入孔185は、ケーシング111(内歯歯車118)を半径方向に貫通して形成されている。また符号170は第1、第2支持フランジ150、160を連結する際に、その位置決め用に用いるノックピン、172は、該ノックピン170を打込むための穴、174は連結ボルトである。
次に、この遊星歯車減速装置110の作用を説明する。
図示せぬモータ軸の回転により、入力軸112が回転すると、該入力軸112と一体化されている偏心体114が回転する。偏心体114の外周は入力軸112の軸心Oiに対してΔEだけ偏心されているため、該偏心体114の回転により軸受117A〜117Cを介して3枚の外歯歯車116がそれぞれ120度の位相差をもって内歯歯車118に内接しながら揺動回転する。この例では、内歯歯車118がケーシング111と一体化され、かつ外部部材に固定されているため、入力軸112が1回回転することによって外歯歯車116が1回揺動回転すると、該外歯歯車116は、内歯歯車118に対して両歯車116、118の歯数差に相当する分だけ相対的に回転(自転)することになる。
この相対回転は、内ピン孔130、内ローラ142、及び内ピン140を介して第1、第2支持フランジ150、160側に取り出される。外歯歯車116の揺動成分は、内ピン孔130と内ピン140(内ローラ142)との遊嵌によって吸収される。この結果、(内歯歯車118と外歯歯車116の歯数差)/(外歯歯車の歯数)に相当する減速比の減速を僅か一段で実現することができる。
この実施形態に係る遊星歯車減速装置110においては、第1支持フランジ150と駆動対象である外部機器(図示略)とを、図示せぬボルト等を用いて連結するようにしてあるため、結局、該第1支持フランジ150側を介して外部機器を駆動することができる。なお、第1支持フランジ150を固定して、ケーシング111自体を出力部材(いわゆる枠回転構造)として活用することも可能である。この場合には、前記内ピン140(及び内ローラ142は、外歯歯車116の自転を拘束する機能を提供することになる。
ここで、各外歯歯車116A〜116Cは、隣接する外歯歯車と対向する面においてその歯形部分を含む最外周部に帯状に突出する凸部180を備えるため、各外歯歯車116A〜116Cの軸方向の位置規制に当たって従来の「差し輪」を必要としない。そのため、部品点数が少なく、また組付け工数も少ない。しかも、凸部180は、円周方向の6カ所に該凸部180を半径方向に横断する切欠部182を有しているため、封入孔185から供給される潤滑材を円滑に遊星歯車減速装置110の内部にまで導くことができる。しかも、3枚の外歯歯車116A〜116Cは、それぞれ120度の位相差をもって交互に揺動しながらゆっくりと自転していることから、この切欠部182が潤滑材の循環を促進するポンプ的な機能を果たすため、該潤滑材の環流を一層良好に行わせることができる。
また、この潤滑材の機能により、凸部180の表面も潤滑されるため、隣接する外歯歯車116の凸部180同士の摩擦係数も低く維持することができる。
図4及び図5に本発明の他の実施形態の例を示す。この遊星歯車減速機210は、凸部280を、隣接する外歯歯車216と対向する面において歯形部分を除く最外周部において帯状(リング状)に突出形成している。凸部280には先の実施形態と同様に、切欠部282が形成され、結果として、凸部280は円周方向に不連続に形成された構造となっている。従って、潤滑材は、この切欠部282を介して凸部280の外側から内側へと容易に移動することができる。
この実施形態では、更に、凸部280の外周と内歯歯車218の内歯(ローラ状のピン)118Aとで形成される空間Sに潤滑材を保持することができるため(図4参照)、特に外歯歯車116と内歯歯車118との噛合面を豊富な潤滑材によって良好に潤滑することができる。また、先の実施形態と同様に、該凸部280によって外歯歯車216の位置規制が行われるため、差し輪を別途組み込む必要はない。その他の構成については、先の実施形態と同様であるため、先の実施形態と同一または類似する部分に下2桁が同一の符号付すにとどめ、重複説明を省略する。
図6〜図8に、本発明の更に他の実施形態の例を示す。なお、図6は、図7の矢視VI−VI線に沿う断面に相当している。この遊星歯車減速装置310では、凸部380を、円周方向における内ピン孔340と内ピン孔340との間に点在させるようにして形成している。図示の例では内ピン孔340は円周方向に6個設けられており、その丁度中央に凸部380が合計6個設けられている。この実施形態においても、凸部380は、結果として円周方向に不連続に形成されていることになる。従って、潤滑材はこの凸部380の形成されていない部分を通ってより中央部へと容易に移動することができる。また、差し輪が不要という効果も同様に得られる。
なお、この実施形態では、凸部380は、内ピン孔340と同一円周上に形成されているが、必ずしも同一円周上である必要はない。また、形成個数も内ピン孔340の間に1個である必要もない。
その他の構成については、先の実施形態と同様であるため、先の実施形態と同一または類似する部分に下2桁が同一の符号付すにとどめ、重複説明を省略する。
本発明は、上記実施形態のような揺動内接噛合型の遊星減速機構のみならず、例えば、外歯歯車が撓むことによって内歯歯車と噛合する撓み噛み合い式の遊星減速機構にも適用可能である。
本発明は、潤滑材としてグリスが用いられているときも、またオイルが用いられているときも適用可能である。特に、オイルが用いられているときに本発明を適用すると、凸部の不連続部分が該オイルを高速で回転する中央部に供給・循環させる作用が顕著に得られるため、当該中央部の冷却機能を一層助長することができる。
潤滑特性を従来と同等、あるいはそれ以上に確保しながら、より低コストな内接噛合遊星歯車構造を得ることができるため、従来と同様の分野に適用できるのは勿論、その適用分野をより広げることができる可能性がある。
本発明の実施形態の一例に係る遊星歯車減速装置の縦断面図 図1の矢視II−II線に沿う断面図 図1の外歯歯車の凸部の切欠部付近を示す部分斜視図 本発明の他の実施形態の一例に係る遊星歯車減速装置の縦断面図 図4の外歯歯車の凸部の切欠部付近を示す部分斜視図 本発明の更に他の実施形態の一例に係る遊星歯車減速装置の縦断面図 図6の矢視VII−VII線に沿う断面図 図6の外歯歯車の凸部の切欠部付近を示す部分斜視図 従来の遊星歯車減速装置の一例を示す縦断面図 図9の矢視X−X線に沿う断面図
符号の説明
110…遊星歯車減速装置
112…入力軸
114…偏心体
116…外歯歯車
118…内歯歯車
130…内ピン孔
140…内ピン
150…第1支持フランジ(出力軸)
160…第2支持フランジ
180、280、380…凸部
182、280…切欠部

Claims (4)

  1. 内歯歯車と、該内歯歯車と僅少の歯数差をもって内接噛合する外歯歯車を備え、且つ、該外歯歯車が前記内歯歯車の内側で軸方向に複数並べて配置された内接噛合遊星歯車構造において、
    前記外歯歯車は、隣接する外歯歯車と対向する面に、自身と該隣接する外歯歯車との軸方向の位置規制を行い得る凸部を、円周方向に不連続に有していることを特徴とする内接噛合遊星歯車構造。
  2. 請求項1において、
    前記外歯歯車は、前記隣接する外歯歯車と対向する面の歯形部分を含む最外周部において帯状に突出する前記凸部を備え、且つ、この帯状に突出する凸部の円周方向の一部が半径方向に切欠かれていることを特徴とする内接噛合遊星歯車構造。
  3. 請求項1において、
    前記外歯歯車は、前記隣接する外歯歯車と対向する面の歯形部分を除く最外周部において帯状に突出する前記凸部を備え、且つ、この帯状に突出する凸部の円周方向の一部が半径方向に切欠かかれていることを特徴とする内接噛合遊星歯車構造。
  4. 請求項1において、
    前記外歯歯車は、該外歯歯車の自転成分の取り出し又は自転の拘束を行うための内ピン孔を複数備え、前記凸部が、円周方向における当該内ピン孔と内ピン孔との間に点在されていることを特徴とする内接噛合遊星歯車構造。
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