JP6815361B2 - 内接式遊星歯車機構を組み合わせた変速装置 - Google Patents
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Description
変速装置全体の断面図である図8(a)に示すとおり、この遊星歯車式変速装置は、左方の縦断面図で右側の第1遊星歯車機構と左側の第2遊星歯車機構とを軸方向に組み合わせて設置したものである。第1遊星歯車機構は、入力軸ISに連なる太陽歯車SGと、太陽歯車SGの周囲を公転しながら自転する第1遊星歯車PG1と、第1遊星歯車PG1に噛み合う内歯を形成した第1リング歯車RG1とを備えており、第1リング歯車RG1は回転不能に固定される。第2遊星歯車機構は、第2遊星歯車PG2と、その外方に噛み合う第2リング歯車RG2とを備え、第2リング歯車RG2が出力軸OSに連結される。
第1遊星歯車PG1と第2遊星歯車PG2とは一体的に結合されて遊星歯車体PBをなしており、キャリアCAの支持軸SSに軸支されて同一回転数で回転する。キャリアCAの斜視図である図8(b)にも示すとおり、キャリアCAは、2枚の円板DKを3本の支柱PLで結合して構成され、支柱PLの間に、支持軸SSを中心として回転可能な3個の遊星歯車体PBが配置される。
両方の遊星歯車は、入出力軸の中心軸を内部に含む相対的に径の大きい歯車(歯形はハイポサイクロイド)であって、それぞれ1個ずつ配置されており、第1遊星歯車PG1が固定の第1リング歯車RG1に噛み合って第1内接式遊星歯車機構を構成し、第2遊星歯車PG2が出力軸OSに連結された第2リング歯車RG2と噛み合って第2内接式遊星歯車機構を構成する。この減速機においても、図8の遊星歯車式減速機と同様に、入力軸ISの回転が減速されて出力軸OSに伝達される。
図9に示す回転伝達装置では、リング歯車RG1、RG2に対してそれぞれ単一の遊星歯車(PG1、PG2)を内接するよう配置しているため、遊星歯車の径と歯のモジュールとを大きな値とすることが可能であり、入力軸から出力軸に伝達するトルクを増大することができる。しかし、単一の遊星歯車体が偏心して回転するので、アンバランスに起因し、回転伝達中に振動が生じやすく、軸の傾きや振れによるいわゆるスリコギ運動(歳差運動)が生じることもある。振動などを防止するようハウジング等の固定部材を回転可能に保持するのは、遊星歯車体が公転しながら自転するため、困難である。
ただし、変速装置においては入力軸と出力軸のトルクが回転数に反比例することから、増速機として使用する場合は、出力側の負荷トルクが入力側に増幅して作用する。そのため、出力軸側に振動等に起因して摩擦抵抗が発生したときはそれが増幅して入力軸に大きなトルクが作用し、円滑な回転が阻害されたり出力軸への回転伝達が不能となったりする事態が生じる。
「固定されたハウジングと、共通の中心軸の回りに回転する第1回転軸及び第2回転軸とを備え、前記ハウジングの内部空間に第1内接式遊星歯車機構と第2内接式遊星歯車機構とを軸方向に並列して設置し、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間で変速して回転を伝達する変速装置であって、
前記第1回転軸には、前記中心軸から偏心した位置を中心とする円形断面の偏心部材が一体的に固着され、
前記偏心部材には、前記第1内接式遊星歯車機構の第1遊星歯車と前記第2内接式遊星歯車機構の第2遊星歯車とを有する遊星歯車体が回転可能に嵌め込まれ、前記第1遊星歯車が外歯歯車として形成されるとともに前記第2遊星歯車が内歯歯車として形成され、
前記第1内接式遊星歯車機構には、前記ハウジングに固定されて前記第1遊星歯車と噛み合う固定リング歯車が設置され、前記第2内接式遊星歯車機構には、前記第2回転軸と連結された中心歯車が、前記第2遊星歯車と噛み合う外歯歯車として前記第2遊星歯車の内部に設置され、さらに、
前記ハウジングと前記遊星歯車体との間には、前記遊星歯車体の前記共通の中心軸の回りにおける遊星運動を案内する案内機構が設置されており、
前記案内機構は、共通の中心軸の回りに回転可能に前記ハウジングに嵌め込まれ、内周と外周とが同心円の環状部材と、前記環状部材に設けた複数の円形凹所内に嵌め込まれ、偏心した挿入孔が形成された円形断面のスペーサとを備え、
前記遊星歯車体の端面には、前記挿入孔に挿入される円形断面の突起が形成されている」ことを特徴とする変速装置となっている。また、本願の第二発明は、
「固定されたハウジングと、共通の中心軸の回りに回転する第1回転軸及び第2回転軸とを備え、前記ハウジングの内部空間に第1内接式遊星歯車機構と第2内接式遊星歯車機構とを軸方向に並列して設置し、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間で変速して回転を伝達する変速装置であって、
前記第1回転軸には、前記中心軸から偏心した位置を中心とする円形断面の偏心部材が一体的に固着され、
前記偏心部材には、前記第1内接式遊星歯車機構の第1遊星歯車と前記第2内接式遊星歯車機構の第2遊星歯車とを有する遊星歯車体が回転可能に嵌め込まれ、前記第1遊星歯車が外歯歯車として形成されるとともに前記第2遊星歯車が内歯歯車として形成され、
前記第1内接式遊星歯車機構には、前記ハウジングに固定されて前記第1遊星歯車と噛み合う固定リング歯車が設置され、前記第2内接式遊星歯車機構には、前記第2回転軸と連結された中心歯車が、前記第2遊星歯車と噛み合う外歯歯車として前記第2遊星歯車の内部に設置され、
前記遊星歯車体は円板状の中間壁を有し、前記中間壁の一方の面には前記第1遊星歯車が設けられ、他方の面には前記第2遊星歯車を形成した周壁が設けられるとともに、前記中間壁の他方の面には、前記中心歯車の一方の軸方向端面が当接しており、
前記中心歯車の他方の軸方向端面が前記ハウジングの内部空間の一方側の面に当接し、前記第1遊星歯車の端面が前記ハウジングの内部空間の反対側の面に当接し、さらに、
前記ハウジングと前記遊星歯車体との間には、前記遊星歯車体の前記共通の中心軸の回りにおける遊星運動を案内する案内機構が設置されている」
ことを特徴とする変速装置となっている。
つまり、本発明の遊星歯車体は、第2遊星歯車が外歯歯車を囲むリング状の内歯歯車となっているのでその径が大きく、また、遊星歯車体が、直接、ハウジング内部空間の内面に対向する状態となり、遊星運動をガイドする案内機構をハウジングとの間に設置することが容易となる。そして、案内機構を設置することにより、遊星歯車体が、固定されたハウジングに保持されて両端を支持されながら遊星運動を行うこととなり、遊星歯車体の軸と第1回転軸又は第2回転軸との相対的な傾き、あるいは回転中の振動やスリコギ運動を防止することができる。したがって、本発明の変速装置を増速機として使用する場合であっても、振動等に伴う摩擦抵抗の増大はなく、円滑な回転伝達が可能となる。
N2/N1=1−(Zr1・Zp2/Zp1・Zc2) :式1
ここで、
Zr1:第1内接式遊星歯車機構における、固定された固定リング歯車の歯数
Zp1:第1内接式遊星歯車機構における、第1遊星歯車の歯数
Zp2:第2内接式遊星歯車機構における、第2遊星歯車の歯数
Zc2:第2内接式遊星歯車機構における、第2回転軸に連結の中心歯車の歯数
本発明の変速装置では、上記の歯車の歯数を変更することにより変速比を適宜設定することが可能であるが、第1、第2内接式遊星歯車機構の外歯歯車の歯数がこれを囲む内歯歯車の歯数よりも小さく、Zr1>Zp1、Zp2>Zc2であることから、変速比は負の値となる。つまり、本発明の変速装置は、回転方向を反転させる反転装置でもあって、変速しながら逆転させる回転伝達用の機器として好適に用いることができる。
遊星歯車体4は、円板状の中間壁41を有しており、中間壁41の一方の面の、偏心部材21用のボールベアリングBRの外方に外歯歯車である第1遊星歯車p1が設けられ、他方の面には、円板状の中間壁41の周縁に周壁42が形成されるとともに、周壁42の内面に内歯歯車である第2遊星歯車p2が設けられる。偏心部材21に遊星歯車体4が嵌め込まれた状態で第1回転軸2がハウジング1内に配置されたときは、図1の断面A−Aに示すとおり、第1遊星歯車p1が固定リング歯車r1と噛み合って第1内接式遊星歯車機構を構成することとなる。
また、第1回転軸2の偏心部材21には、中心軸oと同心の延長軸22が第2回転軸3側に延びるように形成してあり(図3も参照)、延長軸22は、中心歯車c2にボールベアリングBRを介して軸受される。これにより、第1回転軸2と第2回転軸3との相対的な傾きや振動の発生が防止される。
図3に示すように、遊星歯車体4の周壁42の一端4L(シールド板12側の端部)には、円形断面の6個の突起43が形成されている。突起43は、図4に示すとおり、円形断面のスペーサ5に設けられた挿入孔51に挿入される。挿入孔51は、円形断面のスペーサ5に偏心して形成されていて、その偏心量は、第1回転軸2に固着された偏心部材21の偏心量eに等しい。スペーサ5は、内周と外周とが同心円の環状部材6に設けられた6個の孔に嵌め込まれ、この環状部材6が、ハウジング1のシールド板12に形成された環状溝12Gに嵌め込まれて、共通の中心軸oの回りに回転可能となっている(図1の上段中央の縦断面図及び断面C−Cも参照)。
モーター等の駆動源により第1回転軸2が、例えば、時計方向に回転したときは、第1回転軸2の偏心部材21に軸支された遊星歯車体4が中心軸oの回りを公転し、遊星歯車体4の第1遊星歯車p1が、ハウジング1の固定リング歯車r1と噛み合って反時計方向に自転しながら、固定リング歯車r1に内接して移動する(第1内接式遊星歯車機構)。内歯歯車である遊星歯車体4の第2遊星歯車p2は、第1遊星歯車p1と同一の回転数で公転及び自転を行い、第2回転軸3に固着された中心歯車c2を回転させることとなる(第2内接式遊星歯車機構)。
上記のように歯数が設定された第1実施例の変速装置において、第1回転軸2の回転数N1と第2回転軸3の回転数N2の比である変速比は、式1により、
N2/N1=−81/1600≒−1/20
と計算される。つまり、第1実施例の変速装置は、第1回転軸を入力、第2回転軸を出力として減速機とした場合には、回転数を約1/20に減速しながら回転方向を反転させる減速機となり、逆に、第2回転軸を入力、第1回転軸を出力とした場合は、20倍に増速して反転させる増速機となって、大きな変速比を実現することが可能である。
図7に示すように、第2実施例の案内機構における中間輪7は、内周と外周とが偏心したリング状の部材であって、その偏心量は、遊星歯車体4の中心軸oからの偏心量であるeに等しい。中間輪7の外周と内周には、転動部材であるボール8がリテーナ81に組み込まれて設置されており、これらの部材がハウジング1に取り付けられたときは、図5の断面B−Bに示すとおり、ハウジング1と遊星歯車体4との間隙が案内機構によって埋められることとなる。第2実施例の変速装置では、案内機構がハウジング1と遊星歯車体4との間に置かれるため、遊星歯車体4の端面には第1実施例のような突起は設けられておらず、また、シールド板12には円周溝は設けられていない。
上記の実施例では、内接式遊星歯車機構の内歯歯車の歯数を41、外歯歯車の歯数を40とし歯数差を1としているが、歯数や歯数差を変更して変速装置の変速比の設定を変えることができるのは言うまでもない。歯数差が大きいときは、歯車の歯形を実施例のトロコイド歯形に変えてインボリュート歯形を採用することができる。また、各歯車を遊星歯車体等に直接形成しているが、歯車部分を別体で製作して部品に組み付けるなど、上記実施例に対し各種の変形が可能であるのは明らかである。
2:第1回転軸
21:偏心部材
3:第2回転軸
4:遊星歯車体
41:中間壁
42;周壁
5:スペーサ(第1実施例の案内機構の)
6:環状部材(第1実施例の案内機構の)
7:中間輪(第2実施例の案内機構の)
r1:固定リング歯車(第1内接式遊星歯車機構の)
p1:第1遊星歯車(第1内接式遊星歯車機構の)
p2:第2遊星歯車(第2内接式遊星歯車機構の)
c2:中心歯車(第2内接式遊星歯車機構の)
Claims (5)
- 固定されたハウジングと、共通の中心軸の回りに回転する第1回転軸及び第2回転軸とを備え、前記ハウジングの内部空間に第1内接式遊星歯車機構と第2内接式遊星歯車機構とを軸方向に並列して設置し、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間で変速して回転を伝達する変速装置であって、
前記第1回転軸には、前記中心軸から偏心した位置を中心とする円形断面の偏心部材が一体的に固着され、
前記偏心部材には、前記第1内接式遊星歯車機構の第1遊星歯車と前記第2内接式遊星歯車機構の第2遊星歯車とを有する遊星歯車体が回転可能に嵌め込まれ、前記第1遊星歯車が外歯歯車として形成されるとともに前記第2遊星歯車が内歯歯車として形成され、
前記第1内接式遊星歯車機構には、前記ハウジングに固定されて前記第1遊星歯車と噛み合う固定リング歯車が設置され、前記第2内接式遊星歯車機構には、前記第2回転軸と連結された中心歯車が、前記第2遊星歯車と噛み合う外歯歯車として前記第2遊星歯車の内部に設置され、さらに、
前記ハウジングと前記遊星歯車体との間には、前記遊星歯車体の前記共通の中心軸の回りにおける遊星運動を案内する案内機構が設置されており、
前記案内機構は、共通の中心軸の回りに回転可能に前記ハウジングに嵌め込まれ、内周と外周とが同心円の環状部材と、前記環状部材に設けた複数の円形凹所内に嵌め込まれ、偏心した挿入孔が形成された円形断面のスペーサとを備え、
前記遊星歯車体の端面には、前記挿入孔に挿入される円形断面の突起が形成されていることを特徴とする変速装置。 - 固定されたハウジングと、共通の中心軸の回りに回転する第1回転軸及び第2回転軸とを備え、前記ハウジングの内部空間に第1内接式遊星歯車機構と第2内接式遊星歯車機構とを軸方向に並列して設置し、前記第1回転軸と前記第2回転軸との間で変速して回転を伝達する変速装置であって、
前記第1回転軸には、前記中心軸から偏心した位置を中心とする円形断面の偏心部材が一体的に固着され、
前記偏心部材には、前記第1内接式遊星歯車機構の第1遊星歯車と前記第2内接式遊星歯車機構の第2遊星歯車とを有する遊星歯車体が回転可能に嵌め込まれ、前記第1遊星歯車が外歯歯車として形成されるとともに前記第2遊星歯車が内歯歯車として形成され、
前記第1内接式遊星歯車機構には、前記ハウジングに固定されて前記第1遊星歯車と噛み合う固定リング歯車が設置され、前記第2内接式遊星歯車機構には、前記第2回転軸と連結された中心歯車が、前記第2遊星歯車と噛み合う外歯歯車として前記第2遊星歯車の内部に設置され、
前記遊星歯車体は円板状の中間壁を有し、前記中間壁の一方の面には前記第1遊星歯車が設けられ、他方の面には前記第2遊星歯車を形成した周壁が設けられるとともに、前記中間壁の他方の面には、前記中心歯車の一方の軸方向端面が当接しており、
前記中心歯車の他方の軸方向端面が前記ハウジングの内部空間の一方側の面に当接し、前記第1遊星歯車の端面が前記ハウジングの内部空間の反対側の面に当接し、さらに、
前記ハウジングと前記遊星歯車体との間には、前記遊星歯車体の前記共通の中心軸の回りにおける遊星運動を案内する案内機構が設置されていることを特徴とする変速装置。 - 前記案内機構が、前記ハウジングの内周面と前記遊星歯車体の前記第2遊星歯車の部分の外周面との間に設置され、内周と外周とが偏心したリング状の中間輪である請求項2に記載の変速装置。
- 前記中間輪の外周面と前記ハウジングの内周面との間、及び、前記中間輪の内周面と前記遊星歯車体の外周面との間には、それぞれ転動部材が設置されている請求項3に記載の変速装置。
- 前記第1遊星歯車、前記第2遊星歯車、前記固定リング歯車及び前記中心歯車が、トロコイド歯形の歯車である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の変速装置。
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