JP2006062434A - ステアリングコラム固定支持のための締結構造 - Google Patents

ステアリングコラム固定支持のための締結構造 Download PDF

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Abstract

【課題】 ステアリングコラムを設定された大きさを超える荷重の作用によって移動可能に車体の一部に固定支持させるための締結構造において、それの実用性を向上させる。
【解決手段】 例えば、スロット82を設けたコラム側被締結部64と穴84を設けた車体側被締結部80とを、ボルト92とナット94とによって締結する締結構造において、面形状が円錐台周面の形状とされた皿ばね120を介装させる。皿ばね12の形状が単純であり、製造上有利である。また、その皿ばね120を塑性変形域において変形させて使用すれば、締結荷重が安定化する。さらに、皿ばね120とコラム側締結部64との間にワッシャ122を介装させれば、皿ばね120の食込みが防止され、2つの被締結部64,80のスロット82の延びる方向に沿った相対移動が円滑化される。また、ワッシャ122の外縁部を折曲げることで、皿ばね120の位置ずれを防止することもできる。
【選択図】 図6

Description

車両用ステアリングシステムを構成するステアリングコラムを、設定された大きさを超える荷重の作用によって移動可能な状態で車体の一部に固定支持させるための締結構造に関する。
車両用ステアリングシステムを構成するステアリングコラム(以下、「コラム」と略する場合がある)は、インストゥルメントパネルのリインフォースメント(以下、「インパネR/F」と略す場合がある)等の車体の一部に固定支持される。コラムは、高剛性に、つまり、しっかりと固定支持されることが望ましいが、車両衝突に依拠する運転者のステアリングホイールへの二次衝突等の際に車体の一部から離脱等させるべく、設定された大きさの荷重が作用した場合に移動可能に支持されることが望まれている。コラムの固定支持は、コラム側に設けられた被締結部と車体側に設けられた被締結部とを締結することによってなされるのが一般的であり、その締結構造において、車体の一部に対してコラムが移動可能となるような手段が設けられる。そのような締結構造に関して、例えば、下記特許文献に記載されたような技術が存在する。
特許第3431821号公報 特開2000−335430号公報
上記特許文献のうち、特に、特許文献1には、皿ばねが採用された具体的な締結構造の実施例が記載されてる。皿ばねは、比較的小型である割には比較的大きな締結力(「締結荷重」ということもできる)が得られるという利点があり、ステアリングコラム固定支持のための締結構造において好適な手段となる。しかし、特許文献1に記載された締結構造において採用されている皿ばねは、径方向断面において波打つ形状をなしており、その形状の複雑さから、製造上の困難性を伴い、製造コストの点で不利である。したがって、上記特許文献1に記載された皿ばねを用いた締結構造に関しては、製造上の観点において、改善の余地が残されている。ここに掲げた問題はほんの一例に過ぎないが、皿ばねを用いた従来の締結構造においては、種々の観点からの改善を行うことによって、実用性の向上が期待できる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、コラムを移動可能に車体に固定支持させるための締結構造であって、実用性の高い締結構造を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の締結構造は、ステアリングコラムを設定された大きさを超える荷重の作用によって移動可能に車体の一部に固定支持させるために、ステアリングコラムに設けられたコラム側被締結部と車体の一部に設けられた車体側被締結部とを締結する締結構造であって、締結具と皿ばねとを含んで構成され、その皿ばねが、面形状が円錐台周面の形状とされたものであることを特徴とする。
面形状が円錐台周面の形状とされた皿ばねは、単純な形状の皿ばねであることから、製造し易いものであり、また、製造コストも比較的安価である、したがって、上記形状の皿ばねを用いた締結構造は、製造上有利であり、その点において実用的な締結構造となる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、下記(1)項は、請求可能発明ではなく、請求可能発明の前提となる構成を示した項であり、(1)項を引用する(2)項以下の各項が請求可能発明に相当する。種々の態様とされた請求可能発明のうち、(2)項が請求項1に相当し、請求項1に(3)項を従属さたものが請求項2に、請求項1または請求項2に(4)項を従属させたものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれかに(6)項を従属させたものが請求項4に、請求項4に(7)項を従属させたものが請求項5に、請求項4または請求項5に(8)項,(9)項および(10)項を従属させたものが請求項6に、請求項6に(11)項および(12)項を従属させたものが請求項7に、それぞれ相当する。
(1)ステアリングコラムを設定された大きさを超える荷重の作用によって移動可能に車体の一部に固定支持させるために、ステアリングコラムに設けられたコラム側被締結部と車体の一部に設けられた車体側被締結部とを締結する締結構造であって、
(a)前記コラム側被締結部と前記車体側被締結部との一方である第1被締結部を、前記コラム側被締結部と前記車体側被締結部との他方である第2被締結部との間で挟持する挟持体と、(b)前記第1締結部に設けられて前記ステアリングコラムの移動可能方向に延びるスロットを貫通し、前記第2被締結部と前記挟持体との各々と結合された軸体とを有して、前記第1被締結部と前記第2被締結部とを締結する締結具と、
前記軸体を貫通させるとともに変形させられた状態で配設され、前記第1被締結部と前記第2被締結部とを締結するための締結力を発生させる皿ばねと
を含んで構成された締結構造。
先に説明したように、本項は、請求可能発明の前提となる構成を示した項である。本項における「ステアリングコラム」は、その形状,構造が特に限定されるものではなく、例えば、ステアリングホイール等のステアリング操作部材(以下、単に「操作部材」という場合がある)を一端部において保持するシャフトと、そのシャフトを回転可能に保持するチューブとを含んで構成されるような構造のものを採用することが可能である。コラムが固定支持される「車体の一部」も、特に限定されるものではなく、例えば、先に説明したようにインパネR/Fを始め、操作部材の操作に支障なくコラムをしっかりと固定可能な箇所であればよい。本項にいう「コラム側被締結部」,「車体側被締結部」は、コラムが車体の一部に固定支持される場合に、それらにおいて互いに締結される部分を意味する。それらの具体的な構成は、特に限定されるものではなく、例えば、コラム設けられたブラケットとインパネR/Fに設けられたブラケットとが互いに締結されてコラムが車体の一部にされる場合、それらブラケットの各々あるいはそれら各々の一部分が、コラム側被締結部,車体側締結部となる。また、コラムは、操作部材への運転者の二次衝突の衝撃等、ある程度大きな荷重によって、車体の一部に対して移動するように固定支持されるものであるが、その場合のコラムの移動は、コラムの一部分の移動をも含む概念である。例えば、伸縮可能とされたコラムの操作部材側の部分が車体に固定支持される場合において、その固定支持されている部分のみがコラムの伸縮を伴って車両前方側へ移動することも、本項にいう「コラムの移動」に相当するのである。
本項の態様の締結構造によれば、コラム側被締結部と車体側被締結部とは、互いに相対移動可能に締結される。その相対移動の方向を規制するために、それら2つの被締結部の一方にスロットが設けられており、本項の態様では、それら2つの締結部を区別するために、スロットが設けられている一方の被締結部を「第1被締結部」と、他方の被締結部を「第2被締結部」と呼ぶ。コラム側被締結部と車体側被締結部とのいずれが第1被締結部とされてもよい。「スロット」は、締結具の有する軸体が貫通して、その軸体の移動方向をガイドするものであり、例えば、長穴、切欠き等であればよい。なお、第2被締結部は、第1被締結部と同様に軸体を貫通するスロットが設けられたものであってもよいが、構造の簡便さの観点からすれば、軸体の軸直方向(径方向)の変位を禁止あるいは規制するような構成のものとすることが望ましい。
「締結具」は、例えば、ボルト・ナット、リベットといった種々のものを採用可能である。例えば、締結具としてボルトナットを採用する場合、ボルトの軸部が、「軸体」に該当することになる。また、その場合、ボルト・ナットにおけるいずれの構成部分が「挟持体」となるかは、ボルトの形状,ナットと第1被締結部および第2被締結部との位置関係等によって異なることになる。図1は、板状の第1被締結部および第2被締結部を締結具であるボルト・ナットによって締結する締結構造におけるバリエーションを概念的に示す図であり、以下に、その図を用いて締結具についてさらに詳しく説明する。なお、図1の各図において、2つの被締結部のうち、上方に描かれているものが、第2被締結部PL2であり、下方に描かれているものが、スロットSLを有する第1被締結部PL1である。
図1(a)に示す締結構造では、第2被締結部PL2に穴が穿設されており、ボルトBTは、その穴と第1被締結部PL1とを軸部Rが貫通する状態で、第2被締結部PL2側から挿し込まれており、ナットNTは、軸部Rの先端部に形成された雄ねじに螺合させられている。この態様の締結構造では、ナットNTが挟持体となる。つまり、軸体であるボルトBTの軸部Rは、ボルトBTの頭部Hが第2被締結部PL2に掛合することで、第2被締結部PL2と結合し、挟持体であるナットNTと螺合によって結合するものとされている。図1(b)に示す締結構造では、ボルトBTは、頭部を有しないスタッドボルトであり、第2被締結部PL2に接合されて立設されている。ボルトBTの軸部Rは、第1被締結部PL1のスロットSLを貫通する状態とされ、ナットNTは、軸部Rに形成された雄ねじと螺合させられている。この態様の締結構造でもナットNTが挟持体となるが、軸体であるボルトBTの軸部Rは、第2被締結部PL2と接合によって結合し、挟持体であるナットNTと螺合によって結合するものとされている。図1(c)に示す締結構造では、第2被締結部PL2に穴が穿設されており、ボルトBTは、その丸穴と第1被締結部PL1のスロットSLとを軸部Rが貫通する状態で、第1被締結部PL1側から差し込まれており、ナットNTは、軸部Rの先端部に形成された雄ねじに螺合させられている。この態様では、ボルトBTの頭部Hが、挟持体となる。軸体である軸部Rは、それに螺合するナットNTが第2被締結部PL2に掛合することで、第2被締結部PL2と係合し、挟持体である頭部Hと一体化された状態で結合するものとなっている。図1(d)に示す締結構造では、第2被締結部PL2にボスが形成されており、このボスに雌ねじが形成されていることにより、そのボスがナットNTとして機能するものとなっている。ボルトBTは、第1被締結部PL1の側から軸部RがスロットSLを貫通するように挿し込まれており、軸部Rの先端に形成された雄ねじが、ボスに形成された雌ねじと螺合するようにされている。この態様の締結構造では、ボルトBTの頭部Hが挟持体とされており、軸体であるボルトBTの軸部Rは、挟持体である頭部Hと一体化されて結合し、軸部Rと第2被締結部PL2とは螺合により結合するものとされている。
以上説明したように、第1被締結部,第2被締結部と締結具との関係については、図に掲げたものを始めとして種々のバリエーションが考えられ、本項の態様においては、その種々のバリエーションのうちから適宜適切なものを選択して採用することが可能である。また、本項にいう「第2被締結部と挟持体との各々と結合された」とは、第2被締結部と挟持体との各々に対して軸体が軸線方向の移動を禁止されていること、あるいは、第1被締結部と第2被締結部とが締結具によって締結された状態において第2被締結部と挟持体との各々に対して軸体が軸線方向の移動を禁止される状態とされることを意味する。具体的な結合の態様には、上述したように、螺合,係合,掛合,接合,一体化等、種々の態様が存在する、それらの中から、締結具の構成等に応じて適切な結合態様を選択して採用することができる。
本項に記載の態様において、「皿ばね」が配設される位置が特に限定されるものではない。前述の図1を例にとって説明すれば、例えば、図1(a)の態様では、ボルトBTの頭部Hと第2被締結部PL2との間、第2被締結部PL2と第1被締結部PL1との間、第1被締結部PL1と挟持体であるナットNTとの間のいずれに配設してもよい。また、例えば、図1(b)の態様では、第2被締結部PL2と第1被締結部PL1との間、第1被締結部PL1と挟持体であるナットNTとの間のいずれに配設してもよい。さらに、例えば、図1(c)の態様では、ナットNTと第2被締結部PL2との間、第2被締結部PL2と第1被締結部PL1との間、第1被締結部PL1と挟持体であるボルトBTの頭部Hとの間のいずれに配設してもよい。さらにまた、例えば、図1(d)の態様では、第2被締結部PL2と第1被締結部PL1との間、第1被締結部PL1と、挟持体であるボルトBTの頭部Hとの間のいずれに配設してもよい。
(2)前記皿ばねが、面形状が円錐台周面の形状とされたものである(1)項に記載の締結構造。
本項に記載の態様で採用可能な皿ばねは、具体的には、例えば、図2に示すような形状の介装部材である。つまり、軸方向において背向する2つの面が、軸線を含むいずれの切断面で切断した場合でも、傾斜する直線として現れる形状の皿ばねである。つまり、例えば、図3(a)に示すような皿ばね、つまり、面形状(上記2つの面の形状)が径方向において湾曲するあるいは波打つような皿ばねではなく、また、図3(b)に示すようなウェーブワッシャと異なり、軸線に対して対称であり、径方向において真直ぐに傾斜する面形状を有する皿ばねである。以下、本明細書では、本項の皿ばねを「円錐台形状皿ばね」ということにする。
円錐台形状皿ばねは、比較的単純な面形状をなしており、簡便に製造することが可能であり、また、安価に製造することができるため、製造上の観点から有利な皿ばねである。したがって、上記皿ばねを使用する本項に記載の態様によれば、製造上の観点において実用的な締結構造が実現する。また、本態様において使用する皿ばねは、形状が単純化されているため、製造された皿ばねの寸法形状のばらつきが少なく、皿ばねによって発揮される締結力を安定させることが可能である。その観点からも、本項に記載の締結構造は実用的なものとなる。
(3)前記皿ばねが、塑性変形域において変形させられた状態で配設された(1)項または(2)項に記載の締結構造。
皿ばねは、軸方向に押されて変形することにより締結力を発揮する。皿ばねは、一般的には、弾性変形のみさせる態様で用いられるが、皿ばねの形状,材質等を適正化することにより、変形量が小さい場合において弾性変形のみさせられ、変形量がある量を超える場合に塑性変形させられるような皿ばねとすることができる。変形量に対する締結力の変化勾配(締結力勾配)を考えた場合、弾性変形域における変化勾配より、塑性変形における変化勾配のほうが小さくなる。このことは、塑性変形域で皿ばねを使用した場合、締結具による締結量(締め量、例えば、挟持体と第2被締結部との間隔等で定義できる)のばらつきによっても締結力があまりばらつかないようにすることができる。つまり、本項に記載の態様によれば、締結具の締結量のばらつきを効果的に吸収可能な締結構造を実現することができ、その締結構造は実用的なものとなる。なお、後の実施例において説明するが、円錐台形状皿ばねを使用した場合、塑性変形域において締結力の変化が殆どないような締結構造を実現することも可能であり、その場合には、特に、良好な特性の締結構造が得られることになる。
(4)前記皿ばねが、押し潰されていない状態で配設された(1)項ないし(3)項のいずれかに記載の締結構造。
皿ばねを押し潰した状態(以下、「セッチング状態」という場合がある)から、さらに強く締結すれば、締結具によるの締結力は、皿ばねによって発生する締結力を超えた大きさの締結力となる。この場合は、先の締結力勾配は、極めて大きくなり、締結具による締結量がばらつく場合に、締結力が大きくばらつくことになる。したがって、本項に記載の態様では、締結力のばらつきを小さくすることが可能であり、その点において、本項の態様の締結構造は、実用的なものとなる。
(5)当該締結構造が、前記皿ばねの変形量を規制する変形量規制手段を含んで構成された(2)項ないし(4)項のいずれかに記載の締結構造。
本項に記載の態様によれば、皿ばねの変形量が規制されているため、締結力のばらつきが比較的小さな締結構造が実現する。本項にいう、変形量規制手段は、締結具による締結量を規制する締結量規制手段、具体的には例えば、後に説明するカラー等、第2被締結部と挟持体との離間距離を規制する手段であってもよい。
(6)前記皿ばねが、前記挟持体と前記第2被締結部とのいずれかと前記第1被締結部との間に介装され、当該締結構造が、前記第1被締結部と前記皿ばねとの間に前記第1被締結部に接する状態で介装された座金を含んで構成された(1)項ないし(5)項のいずれかに記載の締結構造。
皿ばねが、挟持体と第2被締結部とのいずれかと第1被締結部との間に介装されている場合、第1被締結部と第2被締結部とが相対移動する際、皿ばねと第1被締結部とが相対移動する。皿ばねが直接第1被締結部に接している場合、皿ばねが第1被締結部に食い込こむことが考えられ、そのときには、皿ばねと第1被締結部との相対移動が阻害されることで、コラムの車体の一部に対する円滑な移動が阻害されることがある。本項に記載の態様では、座金が第1被締結部と皿ばねとの間に介装されているため、第1被締結部への食い込みが防止され、コラムの車体の移動に対する円滑な移動が担保されることになる。本項に記載の態様は、そのような点において、実用的な締結構造となる。なお、皿ばねの第1被締結部への食い込みは、皿ばねの形状等に依存する。例えば、先に説明した円錐台形状皿ばねの場合には、それの端部の第1被締結部への食い込みの程度が大きいため、本項に記載の態様は、円錐台形状皿ばねを採用する締結構造に対して特に好適である。
(7)前記座金が、前記皿ばねと前記軸体とのクリアランスより小さいクリアランスで前記軸体を貫通させるものであり、外縁部に設けられて前記皿ばねの外周部の位置を規制することで前記皿ばねの前記軸体に対する径方向の位置を規制する皿ばね位置規制部を有する(6)項に記載の締結構造。
皿ばねの軸体に対する径方向の位置ずれ、つまり、皿ばねの軸心と軸体の軸心とのずれは、締結構造の特性に影響する。例えば、締結構造を構成するいずれかの構成要素との関係よっては、皿ばねが傾いて挟まれる等して周方向において均等に変形しないような現象が生じる場合がある。そのような場合は、適切な締結力が得られなかったり、第1被締結部と第2被締結部との円滑な相対移動が阻害されるような場合があるからである。本項に記載の態様によれば、皿ばねの軸体に対する径方向の位置ずれが抑制されるため、良好な特性の締結構造が得られることになる。なお、本項における皿ばね位置規制部は、座金の外周部に、皿ばねの外周が当接することでストッパとして機能する部材を付設したり、あるいは、外縁部の少なくとも一部を軸方向に折り曲げる等して、その折り曲げ部を上記ストッパとして機能させるような態様とすることが可能である。なお、皿ばねと軸体とのクリアランスおよび座金と軸体とのクリアランスは、後に説明するように、カラーを介して皿ばねおよび座金が軸体を貫通させる場合、カラーとのクリアランスを同義となる。
(8)当該締結構造が、
前記軸体に外嵌させられるとともに前記第1被締結部の前記スロット,前記皿ばねおよび前記座金を貫通する状態で、かつ、両端部の各々が前記第2被締結部と前記挟持体との各々に当接させられた状態で配設され、前記第2被締結部と前記挟持体との間隔を規制するカラーを含んで構成された(6)項または(7)項に記載の締結構造。
本項に記載の態様によれば、締結具による締結量を安定化させることができるため、締結力のばらつきの少ない締結構造が実現する。なお、本項におけるカラーは、先に説明したように、締結具による締結量を規制する締結量規制手段として機能するものであり、皿ばねの変形量を規制する変形量規制手段として機能するものといえる。
(9)前記カラーが、一端部においてフランジを有し、前記皿ばねがそのフランジと前記座金との間に介装された(8)項に記載の締結構造。
本項に記載の態様によれば、皿ばねが前述の座金によって第1被締結部と直接接しない状態に加え、第2被締結部あるいは挟持体とも直接接しない状態となる。第2被締結部あるいは挟持体への皿ばねの食い込みが抑制されるため、本項に記載の態様によれば、例えば、ボルト・ナットを締結具として採用する場合に、締結作業が比較的容易に行えることになる。
(10)前記座金と前記カラーとがしまり嵌合させられている(9)項に記載の締結構造。
前述のうようにフランジを有するカラーを備える態様においては、皿ばねは、フランジと座金との間に介装される。そのような態様において、本項に記載の態様を採用すれば、カラーと、皿ばねと、座金とを容易に一部品化することができ、その一部品化したものを用いれば、コラムの車体の一部への組付作業の簡便化を図ることが可能である。また、一部品化すれば、上記組付作業における皿ばねの組み付け忘れを防止することが可能である。本項に記載の態様によれば、組付作業の観点から見て実用的な締結構造が実現する。なお、先に説明した塑性変形域において変形させられる皿ばねを採用する場合、一部品化された状態、つまり、締結される前の状態においては、皿ばねが変形させられていないことが望ましい。
(11)前記カラーが、前記フランジを有する側の前記一端部が前記挟持体に、他端部が第2被締結部に当接する状態で配設され、前記皿ばねが、前記第1被締結部と前記挟持体との間において前記座金と前記フランジとに挟まれる状態で介装されており、
当該締結構造が、前記軸体を貫通させるとともに外周部において前記第1被締結部の前記スロットに嵌り込むボス部を有して前記第1被締結部と前記第2被締結部との間にそれら両者に接する状態で挟持された樹脂製のスペーサを含んで構成され、
前記カラーが前記スペーサのボス部に嵌入して配設された(9)項または(10)項のいずれかに記載の締結構造。
本項に記載の態様によれば、スペーサによって、第1被締結部と第2被締結部との相対移動が円滑化される。また、スペーサのボス部がスロットに嵌り込むように構成されていることで、第1被締結部と第2被締結部との相対位置、詳しく言えば、スロットの延びる方向と交差する方向の相対位置を規制することが可能であり、コラムの車体の一部への組付位置の精度を向上させることができる。
(12)前記カラーと前記スペーサの前記ボス部とがしまり嵌合させられるものとされた(11)項に記載の締結構造。
本項に記載の態様によれば、例えば、特に、カラーが下方から装着されるようにして組付作業が行われるような場合に、作業中におけるカラーの離脱が防止できるため、効率のよい組付作業を行うことが可能となる。
(13)前記第1被締結部の前記スロットが、前記スペーサのボス部が嵌り込むことによって第1被締結部と第2被締結部との相対位置を規制する相対位置規制部と、前記ボス部の外径より小さくかつ前記カラーの外径より大きな幅を有して前記カラーが外嵌された前記軸体の通過を可能とする通過可能部とを有し、
当該締結構造が、前記第1被締結部と前記第2被締結部とを前記ボス部が前記位置規制部に嵌り込んだ位置で締結し、前記設定された大きさを超える荷重の作用によって、前記ボス部の変形を伴うところの前記カラーが外嵌された前記軸体の前記通過可能部の通過を許容することで、前記第1被締結部と前記第2被締結部との前記スロットの延びる方向への相対移動を許容する構造とされた(11)項または(12)項に記載の締結構造。
本項に記載の態様によれば、第1被締結部と第2被締結部との相対位置、詳しくいえば、スロットの延びる方向と交差する方向の相対位置に加え、スロットの延びる方向の相対位置をも効果的に規制することができる。そのため、コラムの車体の一部への組付位置の精度をより一層向上させることができ、また、コラムの車体の一部への組付作業の効率化をより一層向上させることが可能である。なお、ボス部は、樹脂により形成されているため、比較的容易に変形可能なものすることができ、本項に記載の態様を、ボス部の変形が第1被締結部と第2被締結部との相対移動を阻害しないように構成することが可能である。
以下、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
<ステアリングシステムの全体構成>
図4に実施例の締結構造が採用されるステアリングシステムの全体構成を示す。本ステアリングシステムは、ステアリングコラム10を主体として構成されるものであり、そのコラム10は、車幅方向において互いに離間してインパネR/F12に設けられた1対のコラム取付ブラケット(以下、「取付ブラケット」と略す場合がある)14において、車体の一部であるインパネR/F12に固定支持される。コラム10は、支持された状態では、図に示すように、車両前方側が下方に位置するように傾斜した姿勢で配置されることになる。コラム10は、主として、コラム本体20と、コラム本体20の軸線方向における中間部に設けられたブレークアウェイブラケット(以下、「B.A.BKT」と略す場合がある)22と、前方部に設けられた前方ブラケット24とを含んで構成されており、B.A.BKT22と前方ブラケット24との各々が、取付ブラケット14に取付られることで、コラム10は、2箇所において支持される。支持されたコラム10は、後方に位置する部分がインパネ30から車両後方に突出する状態とされる。その突出する後端部には、ステアリング操作部材であるステアリングホイール32が取り付けられており、コラム10はステアリングホイール32を操作可能に保持するものとなっている。また、コラム10の前端部は、図示を省略するインタミディエイトシャフトを介し、車室外に存在する転舵装置に接続される。
コラム本体20の構造を簡単に説明すれば、コラム本体20は、シャフトと、そのシャフトを挿通させた状態で支持するチューブとを含んで構成されている。シャフトは、車両後方側に位置させられる後部シャフト40と車両前方側に位置させられる前部シャフト42とを含んで構成され、チューブは、車両後方側に位置させられる後部チューブ44と、車両前方側に位置させられる前部チューブ46とを含んで構成されている。後部シャフト40は後部チューブ44に、前部シャフト42は前部チューブ46に、それぞれ回転可能に保持され、シャフトとチューブとはともに伸縮可能とされていることで、コラム本体20は伸縮可能とされている。
コラム本体20は、後部チューブ44,前部チューブ46のそれぞれにおいて、車体の一部に取り付けられる。前部チューブ46の前方端部には、先に説明した前方ブラケット24が固定的に設けられており、この前方ブラケット24と1対の取付ブラケット14にに設けられた軸受部材50とが支持軸52によって連結されることにより、コラム10のが揺動可能に車体の一部に支持される。一方、後部チューブ44は、チルト・テレスコピック機構56を介してB.A.BKT22に保持され、そのB.A.BKT22が1対の取付ブラケット14に取り付けられることで、車体の一部に固定支持される。B.A.BKT22の斜視を示す図5をも参照しつつ詳しく説明すれば、後部チューブ44には、被保持部材60が固定的に設けられており、この被保持部材60が、B.A.BKT22の構成部材であるチャンネル形状(コの字形状)をなす保持部材62によって保持されるとともに、B.A.BKT22のもう1つの構成部材である被支持プレート64が1対の取付ブラケット14に締結されることで、後部チューブ44が車体の一部に固定支持されるのである。このB.A.BKT22と取付ブラケット14との締結に、後に詳しく説明する実施例の締結構造70が採用されている。
締結構造70は、運転者が二次衝突することによってステアリングホイール32に衝撃が加わった場合において、B.A.BKT22のコラム10の軸線方向への移動、詳しくは、インパネR/F12に設けられた取付ブラケット14に対する移動を可能とする構造とされている。本ステアリングシステムでは、B.A.BKT22が移動することによって、コラム10の車両後方側部分、詳しくは、後部シャフト40,後方チューブ44を含んで構成されるコラム本体20の後方部分およびB.A.BKT22(以下、それらを総称して「コラム移動部」という場合がある)が、車体の一部に対してコラム10の軸線方向に移動し、車体の一部から離脱するように構成されている。なお、離脱したコラム移動部は、さらに車両前方に移動するが、本ステアリングシステムは、取付ブラケット14から離脱したコラム移動部の移動に伴って二次衝突の衝撃のエネルギを吸収する衝撃エネルギ吸収装置(以下、「EA装置」と略す場合がある)72を備えており、そのEA装置72によって、二次衝突の衝撃エネルギは効果的に吸収されることになる。ちなみに、EA装置72は、図5に示すU字形状のEAプレート76の変形に伴う衝撃エネルギ吸収荷重(以下、「EA荷重」という場合がある)によって衝撃エネル吸収を行う装置である。詳しい説明は省略するが、コラム移動部の車体の一部から離脱の際、EAプレート76の立設する端部が取付ブラケット14に設けられた係止部材(図示は省略する)に係止され、その係止された状態におけるコラム移動部の移動に伴って、EAプレート76はB.A.BKT22の前端部分によって変形させられる。この変形に要する荷重として、EAプレート76はEA荷重を発生させるのである。
<締結構造>
B.A.BKT22と取付ブラケット14との締結構造70の断面図を図6に、分解斜視図を図7に、それぞれ示す。締結構造70は、B.A.BKT22の被支持プレート64の車幅方向の両端部の各々と、1対の取付ブラケット14の各々の下面壁を構成する下鍔部80の各々とを締結するものであり、本ステアリングシステムでは、被支持プレート64の端部と、取付ブラケット14の下鍔部80とが、それぞれ、コラム側被締結部、車体側被締結部とされている。詳しく言えば、被支持プレート64の両端部の各々には、コラム10の軸線方向に延びて車両後方側に開口するスロット82が設けられ、また、1対の取付ブラケット14の各々の下鍔部80には、丸穴である締結穴84が設けられており、それらスロット82と締結穴84とに軸部90を貫通させたボルト92と、そのボルト92の軸部90に形成された雄ねじに螺合するフランジ付きのナット94とによって、被支持プレート64の両端部の各々と1対の取付ブラケット14の各々の下鍔部80とが締結されているのである。そのような構造から、本締結構造70においては、被支持プレート64の端部が第1被締結部とされ、取付ブラケット14の下鍔部80が第2被締結部とされており、ボルト92およびナット94が締結具を構成するものとされているのである。なお、ボルト92の軸部90は軸体として機能し、ナット94が挟持体として機能する。また、ボルト92の頭部96は、取付ブラケット14の下鍔部80に溶接にて固定されており、そのことによって、ボルト92の軸部90と下鍔部80とが結合されるような構造となっている。
さらに詳しく説明すれば、スロット80は、スロット部100と、スロット部100の車両前方側の端部にスロット部100の幅寸法より大きな径の丸穴状に形成された丸穴部102を含む形状に形成されており、この丸穴部102にボルト92の軸部90が貫通する位置において、被支持プレート64の端部と取付ブラケット14の下鍔部80とが締結されている。本締結構造70においては、被支持プレート64と下鍔部80との間には、中央にボス部106を有して矩形状をなす樹脂製のスペーサ108が介装されている。スペーサ108のボス部106の外径は、スロット82の丸穴部102の内径より僅かに大きくされ、しまり嵌合の状態でボス部106が丸穴部102に嵌り込むようにされている。また、本締結構造70においては、ボルト92の軸部90には、フランジ110を有するカラー112が、遊隙を有して外嵌させられている。カラー112は、スロット82の丸穴部102を貫通する状態で、かつ、フランジ110の端面がナット94に当接し、フランジ110が設けられていない側の端面が取付ブラケット14の下鍔部80の下面に当接する状態で配設されており、下鍔部80とナット94との間隔を規制するものとなっている。つまり、ボルト92とナット94とによる締結量を規制する締結量規制手段として機能するものとされているのである。また、カラー112の外径は、スペーサ108のボス部106を貫通する貫通穴の内径より僅かに大きくされており、カラー112は、ボス部106に、しまり嵌合の状態で嵌入させられている。なお、カラー112の外周面およびスペーサ108の内周面には、互いの嵌合を容易にする手段,抜けを防止するための手段として、傾斜面,掛止条,溝等が設けられている(図8参照)。
また、本締結構造70においては、ナット94と被支持プレート64との間に、図2に示すような面形状が円錐台周面の形状とされた皿ばね120が、変形させられた状態で介装されている。詳しく言えば、本締結構造70では、皿ばね120と被支持プレート64との間に座金であるワッシャ122が介装されており、皿ばね120は、そのワッシャ122と、カラー112のフランジ110との間に介装されている。ワッシャ122は、一方の面を被支持プレート64に接する状態で、つまり、被支持プレート64と面接触状態で介装されており、皿ばね120の外周部のエッジが被支持プレート64に食い込むことを防止している。
カラー112は、皿ばね120およびワッシャ122を貫通する状態とされている。ボルト92の軸部90に対するクリアランスで言えば、皿ばね120とのクリアランスCL1に対して、ワッシャ122とのクリアランスCL2のほうが小さくされているのである。詳しく言えば、ワッシャ122の内径はカラー112の外径より若干小さくされており、ワッシャ122とカラー112とはしまり嵌合させられており、それに対し、皿ばね120の内径はカラー112の外径より幾分大きくされている。そのことから、皿ばね120は径方向に位置変動可能とされている。皿ばね120の径方向の位置ずれが大きい場合は、皿ばね120の内周のエッジが、カラー112のフランジ110の基端部に形成されているコーナRに乗り上げる状態となり、皿ばね120の変形が周方向において均一ではない状態となる。そのことは、適切な締結力が得られない要因や、後に説明する被支持プレート64の取付ブラケット14に対する円滑な移動を妨げる要因となる。そのことを防止すべく、ワッシャ122の外縁部は、全周にわたって曲げ起こされた立設部124とさている。皿ばね120の外周部がその立設部124に当接することで、立設部124はストッパとして機能し、皿ばね120の径方への大きな位置ずれが防止される。言い換えれば、立設部124は、皿ばね120の軸部90に対する径方向の位置を規制する皿ばね位置規制部として機能するもとなっているのである。
また、本締結構造70においては、ワッシャ122とカラー112とのしまり嵌合を利用して、ワッシャ122,カラー112,皿ばね120が一部品化されている。図8に、その一部品化されたものを示す。図は、取付ブラケット14の下鍔部80と被支持プレート64との締結に供される前の状態のものを示している。なお、その状態では、締結に供された状態と異なり、皿ばね120は変形させられいない状態で一部品化されている。
皿ばね120は、変形させられることで、本締結構造70における締結力を生じさせる。図9に、皿ばね120の変形量(厚さの減少量)と締結力との関係をグラフで示す。図の横軸が変形量を示し、縦軸が締結力、つまり、締結荷重を示す。図に示すように、皿ばね120が押されて変形を開始した場合、その比較的初期の段階(図に示す弾性変形域RA)においては皿ばね120は弾性変形し、変形量に対する締結力の変化勾配は比較的大きいものとなる。弾性変形域RAをを超えて変形させられる場合には、降伏点あるいは降伏点を超えて塑性変形が生じる(図に示す塑性変形域RB)。塑性変形域RBにおいては、締結力の変化は比較的小さいものとなる(本皿ばね120では、変形量を増加させても締結力が殆ど変化しない状態となる)。さらに変形量が増加させた場合、皿ばね120は、平らに押し潰された状態、つまり、セッチング状態となる(セッチング変形量が図におけるPSである)。セッチング状態を過ぎれば、締結力の変化勾配は極めて大きくなる(図におけるセッチング域RC)。このような特性から考えれば、例えば、塑性変形域RBにおける締結力を含む範囲を適正な締結力の範囲ΔWとして設定すれば、幅広い変化量の範囲において適正な締結力が得られることになる。そのことに考慮して、本締結構造70では、皿ばね120が塑性変形域RBにおける中間の変形量P0で変形させられた状態となるように、カラー112の長さ寸法等が決定されている。そのため、例えば、取付ブラケット14の下鍔部80の厚さ寸法,被支持プレート64の厚さ寸法,カラー112の長さ寸法等がばらついて、変形量がばらつくような場合であっても、ばらつきのない安定した締結力が発揮されることになる。つまり、本締結構造70は、変化量のばらつきを効果的に吸収するような構造とされているのである。
なお、皿ばね120を一旦塑性変形域に至るまで変形させた後に締結を解除した場合、例えば、図における鎖線に沿って締結力が減少し、締結力が0となっても、塑性変形による変形分が残留することになる(図における残留変形量ΔP)。この皿ばね120を再度締結に供した場合は、締結力は上記鎖線に沿って増加するため、上述のばらつきを吸収することの可能な変形量の範囲が小さくなる。そのため、一度締結に供した皿ばね120は、再度使用しないことが望ましい。また、本締結構造70において、皿ばね120は、セッチングしない状態となるようにカラー112の長さ寸法等が決定されていることから、ボルト92とナット94の締め過ぎによって締結力が過大となることが防止されているのである。
本締結構造70を用いることで、コラム10は、皿ばね120による締結力に依拠する摩擦力の作用でインパネR/F12にしっかりと固定支持される。また、本締結構造70によれば、車両衝突によって運転者がステアリングホイール32に二次衝突したような場合、その衝突の衝撃荷重が設定された大きさを超えるときには、被支持プレート64の取付ブラケット14に対する移動が許容される。詳しく説明すれば、概ね、被支持プレート64とスペーサ108との間の摩擦力および被支持プレート64とワッシャ122との間の摩擦力を超える衝撃荷重が加わった場合に、被支持プレート64の移動が許容されるのである。コラム10が固定支持されている状態では、カラー112が外嵌されたボルト92の軸部92は、被支持プレート64に設けられたスロット82の丸穴部102を貫通する位置に位置させられている。カラー112の外径寸法は、スロット82のスロット部100の幅寸法より小さくされており、上記衝撃荷重により、スペーサ108のボス部106が変形して(樹脂製であるため変形荷重は殆ど発生しない)、カラー112が外嵌された軸部92は、スロット部100に移行し、スロット部100によってガイドされる状態となる。つまり、スロット82の丸穴部82は、被支持プレート64と取付ブラケット14の下鍔部80との相対位置を規制する相対位置規制部として機能し、スロット部100は、ボルト92の軸部90の通過を可能とする通過可能部として機能するものとなっている。上記動作により、被支持プレート64は、スロット82の延びる方向であるコラム10の軸線方向に移動し、インパネR/F12から離脱することになる。
本締結構造70によれば、前述したように、皿ばね120による締結力がばらつきなく安定するため、設定された大きさを超える荷重が作用する場合に、コラム10が正確に移動可能となる。なお、被支持ブラケット64と取付ブラケット14の下鍔部80との間に介装された樹脂製のスペーサ108も、締結力を安定させる機能を果たしている。さらに、スペーサ108と被支持ブラケット64との摺動はスムーズであることから、被支持プレート64の円滑な移動が担保されている。さらにまた、本締結構造70では、前述したように、ワッシャ122の存在により、皿ばね120が被支持プレート64に食い込むことが防止され、ワッシャ122と被支持プレート64との面接触が確保されている。そのため、ワッシャ122と被支持プレート64との摺動もスムーズなものとされることで、被支持ブラケット64の円滑な移動が担保されているのである。
本締結構造70を採用した場合におけるコラム10のインパネR/F12への取付作業は、次のように行われる。まず、スロット82の丸穴部102にボス部106を嵌め込むようにして、被支持プレート64にスペーサ108を組み付ける。丸穴部102とボス部106とはしまり嵌合とされているため、スペーサ108の脱落は防止される。スペーサ108を組み付けた後、コラム10を、取付ブラケット14の下方から、ボルト92の軸部90をスペーサ108に貫通させるようにして宛がう。続いて、カラー112,皿ばね120,ワッシャ122が一部品化されたものを、ボルト92の軸部90を貫通させる状態で、スペーサ108に嵌め込む。スペーサ108とカラー122とはしまり嵌合とされているため、その一部品化したもの脱落は防止されることになる。また、この作業は、カラー112,皿ばね120,ワッシャ122が一部品化されているため、迅速にかつ簡便に行うことが可能である。その後、ナット94をボルト92に螺合させて、カラー112によって規制された締結量まで、ナット94を締め込む。このような一連の作業によりコラム10のインパネR/F12への取付けが完了するが、その一連の作業は、簡便であり、また、迅速な作業である。なお、コラム10を下方からインパネR/F12に取り付ける作業は、コラム10を一方の手で保持しつつ行わなければならないため、一般的には、困難なものである。しかし、その取付作業も、本締結構造70を採用すれば、上述したように、丸穴部102とボス部106とがしまり嵌合とされていること、カラー112,皿ばね120,ワッシャ122が一部品化されていること、スペーサ108とカラー122とがしまり嵌合とされていること等によって、容易なものとなる。
板状の第1被締結部および第2被締結部を締結具であるボルト・ナットによって締結する締結構造を概念的に示す図である。 面形状が円錐台周面の形状とされた皿ばねの正面図および断面図である。 面形状が円錐台周面の形状とされた皿ばね以外の介装部材を示す正面図および断面図である。 実施例の締結構造が採用されるステアリングシステムの全体構成を示す正面図である。 図4に示すステアリングコラムを構成するブレークアウェイブラケットを示す斜視図である。 本発明の一実施例としての締結構造を示す断面図である。 図6に示す締結構造の分解斜視図である。 図6に示す締結構造において、ワッシャ,カラー,皿ばねが一部品化されたものを示す側面一部断面図である。 図6に示す締結構造における皿ばねの変形量と締結力との関係を示すグラフである。
符号の説明
10:ステアリングコラム 12:インパネリインフォースメント(車体の一部) 14:コラム取付ブラケット 20:コラム本体 22:ブレークアウェイブラケット 32:ステアリングホイール 64:被支持プレート(コラム側被締結部,第1被締結部) 70:締結構造 80:下鍔部(車体側被締結部,第2被締結部) 82:スロット 90:軸部(軸体) 92:ボルト(締結具) 94:ナット(締結具,挟持体) 100:スロット部(通過可能部) 102:丸穴部(相対位置規制部) 108:スペーサ 110:フランジ 112:カラー(変形量規制手段) 120:皿ばね 122:ワッシャ(座金) 124:立設部(皿ばね位置規制部) CL1,CL2:クリアランス RB:塑性変形域 PS:セッチング変形量

Claims (7)

  1. ステアリングコラムを設定された大きさを超える荷重の作用によって移動可能に車体の一部に固定支持させるために、ステアリングコラムに設けられたコラム側被締結部と車体の一部に設けられた車体側被締結部とを締結する締結構造であって、
    (a)前記コラム側被締結部と前記車体側被締結部との一方である第1被締結部を、前記コラム側被締結部と前記車体側被締結部との他方である第2被締結部との間で挟持する挟持体と、(b)前記第1締結部に設けられて前記ステアリングコラムの移動可能方向に延びるスロットを貫通し、前記第2被締結部と前記挟持体との各々と結合された軸体とを有して、前記第1被締結部と前記第2被締結部とを締結する締結具と、
    面形状が円錐台周面の形状とされ、前記軸体を貫通させるとともに変形させられた状態で配設され、前記第1被締結部と前記第2被締結部とを締結するための締結力を発生させる皿ばねと
    を含んで構成された締結構造。
  2. 前記皿ばねが、塑性変形域において変形させられた状態で配設された請求項1に記載の締結構造。
  3. 前記皿ばねが、押し潰されていない状態で配設された請求項1または請求項2記載の締結構造。
  4. 前記皿ばねが、前記挟持体と前記第2被締結部とのいずれかと前記第1被締結部との間に介装され、当該締結構造が、前記第1被締結部と前記皿ばねとの間に前記第1被締結部に接する状態で介装された座金を含んで構成された請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の締結構造。
  5. 前記座金が、前記皿ばねと前記軸体とのクリアランスより小さいクリアランスで前記軸体を貫通させるものであり、外縁部に設けられて前記皿ばねの外周部の位置を規制することで前記皿ばねの前記軸体に対する径方向の位置を規制する皿ばね位置規制部を有する請求項4に記載の締結構造。
  6. 当該締結構造が、
    前記軸体に外嵌させられるとともに前記第1被締結部の前記スロット,前記皿ばねおよび前記座金を貫通する状態で、かつ、両端部の各々が前記第2被締結部と前記挟持体との各々に当接させられた状態で配設され、前記第2被締結部と前記挟持体との間隔を規制するカラーを含んで構成されたものであり、
    そのカラーが、一端部においてフランジを有し、前記皿ばねがそのフランジと前記座金との間に介装されており、
    かつ、前記座金と前記カラーとがしまり嵌合させられている請求項4または請求項5に記載の締結構造。
  7. 前記カラーが、前記フランジを有する側の前記一端部が前記挟持体に、他端部が第2被締結部に当接する状態で配設され、前記皿ばねが、前記第1被締結部と前記挟持体との間において前記座金と前記フランジとに挟まれる状態で介装されており、
    当該締結構造が、前記軸体を貫通させるとともに外周部において前記第1被締結部の前記スロットに嵌り込むボス部を有して前記第1被締結部と前記第2被締結部との間にそれら両者に接する状態で挟持された樹脂製のスペーサを含んで構成され、
    前記カラーが前記スペーサのボス部にしまり嵌合の状態で嵌入して配設された請求項6に記載の締結構造。
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